説明

フルオロアルキルアイオダイドテロマーの製造方法

【課題】所望の鎖長のフルオロアルキルアイオダイドテロマーを効率的に得ることができる新規なフルオロアルキルアイオダイドテロマーの製法方法を提供する。
【解決手段】一般式RfI(式中、Rfは炭素数1〜10のフルオロアルキル基である)で表されるフルオロアルキルアイオダイドをテロゲンとして、テトラフルオロエチレンをタキソゲンとして用い、これらを蒸留器に供給し、蒸留器中間部に位置する反応部内で金属触媒の存在下に加熱状態にてテロメル化反応させて、一般式Rf(CFCFI(式中、Rfは上記と同じであり、nは1〜4の整数である)で表されるフルオロアルキルアイオダイドテロマーを生じさせ、およびフルオロアルキルアイオダイドテロマーを含むフラクションを蒸留分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロアルキルアイオダイドテロマーの製造方法、より詳細には、フルオロアルキルアイオダイドをテロゲンとし、テトラフルオロエチレンをタキソゲンとして用いてテロメル化反応によりフルオロアルキルアイオダイドテロマーを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素数6〜12程度のフルオロアルキルアイオダイドは、界面活性剤の原料や、繊維の撥水撥油処理剤の原料として有用な化合物である。
【0003】
このようなフルオロアルキルアイオダイドは、工業的には、以下の式に従ってテロメル化反応によって製造されている。
【化1】

上記式中、Rfはフルオロアルキル基を示し、nは重合度を示し、望ましくは1〜4の整数である。
【0004】
このテロメル化反応において、一般式RfIで表されるフルオロアルキルアイオダイドがテロゲンであり、テトラフルオロエチレンがタキソゲンであり、生成する一般式Rf(CFCFIで表されるフルオロアルキルアイオダイドがテロマーである。本発明において、テロゲンのフルオロアルキルアイオダイドと区別するために、テロメル化反応により生じたフルオロアルキルアイオダイドをフルオロアルキルアイオダイドテロマーと呼ぶものとし、本明細書において単にテロマーとも言うものとする。また、本明細書において、テロゲンのフルオロアルキルアイオダイドをフルオロアルキルアイオダイドテロゲンまたは単にテロゲンとも言い、テトラフルオロエチレンをテトラフルオロエチレンタキソゲンまたは単にタキソゲンとも言うものとする。
【0005】
上記のテロメル化反応は、加熱によりまたは遊離基開始剤(フリーラジカル生成剤などとも呼ばれる)を用いて進行することが知られている(例えば特許文献1〜5および非特許文献1を参照のこと)。
【0006】
加熱による場合、テロメル化反応は触媒の存在下に実施される。このような触媒としては、亜鉛、マグネシウム、バナジウム、レニウム、ロジウム、ルテニウム、白金または銀を用い得(特許文献3)、あるいは、触媒として銅を用いると共に共触媒として別の遷移金属を用い得る(特許文献4)。
【0007】
【特許文献1】特開平6−305995号公報
【特許文献2】米国特許第5068471号明細書
【特許文献3】特開平8−239335号公報
【特許文献4】特開平8−239336号公報
【特許文献5】特許第3800677号公報
【非特許文献1】キン−ユン・チェン(Qing-Yun Chen)、外3名、「テトラフルオロエチレンのフルオロアルキルアイオダイドとの銅誘起テロメリゼーション(Copper-induced telomerization of tetrafluoroethylene with fluoroalkyl iodides)」、ジャーナル・オブ・フルオリン・ケミストリ(Journal of Fluorine Chemistry)、1987年、第36巻、p.483−489
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
テロメル化反応は鎖長伸長反応であり、反応後の反応混合物中には、鎖長の異なるフルオロアルキルアイオダイド(テロゲンおよびテロマーを包含し得る)が広範に含まれる。所望の鎖長よりも長いテロマーの生成を避けるには、タキソゲンに対するテロゲンの割合を高くすることが考えられるが、これは転化率の低下を招くという難点がある。そこで、所望の鎖長(または重合度)のフルオロアルキルアイオダイドテロマーを効率的に得るために様々な提案がなされている。
【0009】
例えば、特許文献5には、蒸留塔を備えた反応器を用いて、フルオロアルキルアイオダイドテロゲンを還流させながら蒸留塔内で遊離基開始剤の存在下にテロメル化反応を行うことが記載されている。
【0010】
しかしながら、遊離基開始剤を用いると、テロゲンと遊離基開始剤の望ましくない副反応により、一般式RfHで表わされる副生成物が生じ、また、用いた遊離基開始剤自身も分解し、この分解による副生成物も生じるので、これらを分離除去する必要が生じる。
【0011】
従来提案されているいずれの方法も、所望の鎖長のフルオロアルキルアイオダイドテロマーを効率的に得るのに十分満足できるものではない。
【0012】
本発明の目的は、所望の鎖長のフルオロアルキルアイオダイドテロマーを効率的に得ることができる新規なフルオロアルキルアイオダイドテロマーの製法方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の1つの要旨によれば、一般式RfIで表されるフルオロアルキルアイオダイドをテロゲンとして、テトラフルオロエチレンをタキソゲンとして用い、これらを蒸留器に供給し、蒸留器中間部に位置する反応部内で金属触媒の存在下に加熱状態にてテロメル化反応させて、一般式Rf(CFCFIで表されるフルオロアルキルアイオダイドテロマーを生じさせ、および
フルオロアルキルアイオダイドテロマーを含むフラクションを蒸留分離する
ことを含む、フルオロアルキルアイオダイドテロマーの製造方法が提供される。本発明に関し、上記式中、Rfは炭素数1〜10のフルオロアルキル基とし、n(重合度)は1〜4の整数とする。また、「〜を含むフラクション」は、当該物質を主成分として含み、好ましくは当該物質から実質的に成る流体部分を言う。
【0014】
本発明の上記製造方法によれば、蒸留器中間部を反応部として利用することによって、この反応部で金属触媒の存在下にテロメル化反応を進行させ、その後、所望の鎖長のフルオロアルキルアイオダイドテロマーの沸点に応じて、フルオロアルキルアイオダイドテロマーを含むフラクションを蒸留分離により反応部から移動させることができ、これにより、更なる鎖長伸長(または重合)を防止することが可能となり、得られる上記フラクションに含まれるフルオロアルキルアイオダイドの鎖長分布を十分に狭くできて、所望の鎖長のフルオロアルキルアイオダイドテロマーを高い選択率で得ることができる。また、本発明の上記製造方法によれば、テロメル化反応を金属触媒の存在下に実施しているので、望ましくない副生成物を生じる副反応を低減でき、特に、遊離基開始剤を用いていないので一般式RfHで表わされる副生成物も遊離基開始剤自身の分解による副生成物も生じず、従って、これらを分離除去する必要がない。
従って、本発明の上記製造方法によれば、所望の鎖長のフルオロアルキルアイオダイドテロマーを効率的に得ることができる。
【0015】
本発明の1つの態様において、反応部の温度および圧力を、フルオロアルキルアイオダイドテロゲンが液体状態となる温度および圧力とする。これにより、テロメル化反応を液相テロゲン中で進行させることができ、気相テロメル化反応の反応温度に比べて反応温度が低くなることから、工業的に好ましく、また熱的に不安定なテトラフルオロエチレンが分解しにくい利点もある。
【0016】
また、本発明の上記製造方法は、テトラフルオロエチレンが反応部を通って循環するように、テトラフルオロエチレンを含むフラクションを蒸留分離した後に蒸留器に戻すことを更に含んでいてよい。このようにしてテトラフルオロエチレンタキソゲンを反応部に通じて循環させることにより、テロメリ化反応で消費されなかったテトラフルオロエチレンを再利用することができる。
【0017】
本発明の1つの態様において、フルオロアルキルアイオダイドテロゲンおよびテトラフルオロエチレンタキソゲン(蒸留分離されたフラクションの形態を含む)を蒸留器に連続的に供給し、フルオロアルキルアイオダイドテロマーを含むフラクションを蒸留器から連続的に抜き出す。これにより、本発明の製造方法を連続的に実施できるので、工業的に好ましい。
【0018】
本発明の1つの態様において、金属触媒は銀または銅である。銀や銅は比較的安価でありながら、本発明の製造方法において金属触媒として用いれば、高い触媒活性および選択率が得られるので、工業的に好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明においては、フルオロアルキルアイオダイドテロゲンとテトラフルオロエチレンタキソゲンとを蒸留器に供給し、蒸留器中間部に位置する反応部内で金属触媒の存在下に加熱状態にてテロメル化反応させてフルオロアルキルアイオダイドテロマーを生じさせつつ、フルオロアルキルアイオダイドテロマーを含むフラクションを蒸留分離している。このような本発明によれば、蒸留器中間部を反応部として利用することにより反応部でテロメル化反応を進行させ、その後、所望の鎖長のフルオロアルキルアイオダイドテロマーが生じた時点でこれを含むフラクションを蒸留分離により反応部から移動させることができ、これにより、所望の鎖長のフルオロアルキルアイオダイドテロマーを高い選択率で得ることができる。また、本発明によれば、テロメル化反応を金属触媒の存在下に実施しているので、望ましくない副生成物を生じる副反応を効果的に低減でき、特に、遊離基開始剤を用いていないので一般式RfHで表わされる副生成物も遊離基開始剤自身の分解による副生成物も生じず、これらを分離除去する必要がない。従って、本発明によれば、所望の鎖長のフルオロアルキルアイオダイドテロマーを効率的に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の1つの実施形態について以下に詳述する。
【0021】
まず、本実施形態において用いる反応原料のテロゲンおよびタキソゲン、金属触媒、ならびに蒸留器を準備する。
【0022】
テロゲンには、一般式RfI(式中、Rfは炭素数1〜10のフルオロアルキル基である)で表されるフルオロアルキルアイオダイドを用い得、パーフルオロアルキルアイオダイドが好ましい。具体例としては、2−ヨードパーフルオロプロパン、1−ヨードパーフルオロエタン、1−ヨードパーフルオロブタン、1−ヨードパーフルオロヘキサン等を挙げることができる。テロゲンは、このような化合物を一種単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
タキソゲンには、テトラフルオロエチレンを用いる。
【0024】
金属触媒には、本実施形態においては比較的安価な銀または銅を用いる。
しかしながら、本発明はこれに限定されず、金属触媒には、フルオロアルキルアイオダイドテロゲンとテトラフルオロエチレンタキソゲンとのテロメル化反応に対して実質的に触媒作用を示す金属を用い得る。このような金属の具体例としては、銅、錫、亜鉛、マグネシウム、バナジウム、レニウム、ロジウム、ルテニウム、白金および銀;これらの群から選択される2種以上の金属の合金または混合物;またはこれらの群から選択される1種または2種以上の金属に遷移金属を少量添加した合金などが挙げられる。遷移金属には、それ自身は触媒作用を示さないか、触媒作用が非常に小さい金属を用いることができ、例えば鉄、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、チタンなどが挙げられる。
【0025】
金属触媒の形状は、フルオロアルキルアイオダイドテロゲンとテトラフルオロエチレンタキソゲンとのテロメル化反応に実質的に触媒作用を示す形状であれば特に限定されない。例えば板状、塊状、線状、球状粉体、鱗片状粉体、焼結状または被覆状などであってよい。また、触媒作用を示すまたは示さない担体上に固定させた金属触媒を用いることもできる。特に、比表面積が大きい金属触媒、例えばハニカム状または焼結体状の金属触媒が、設備規模を小さくできるので、工業的に好ましい。
【0026】
蒸留器には、本実施形態においては蒸留塔を用いる。蒸留塔の中間部に位置する反応部に金属触媒を予め充填しておく。蒸留塔のその他の部分には蒸留分離のための任意の適切な充填物が充填され得る。
しかしながら、本発明に用いる蒸留器は蒸留塔に限定されず、中間部分をテロメリ化反応のための反応部として利用でき、かつ全体として蒸留操作を実施し得るものであれば好適に用い得る。
【0027】
この蒸留塔にフルオロアルキルアイオダイドテロゲンおよびテトラフルオロエチレンタキソゲンを連続的に供給し、反応部にて金属触媒の存在下に、加熱状態にてテロメル化反応を進行させる。
【0028】
これらテロゲンおよびタキソゲンの供給割合は、特に限定されるものではないが、例えばテロゲンに対してタキソゲン約0.01〜10モル%、好ましくは約0.3〜3モル%とし得る。このように、テロゲンよりタキソゲンを多量とすることにより、高い転化率を得ることができる。
【0029】
テロゲンおよびタキソゲンの供給は、フルオロアルキルアイオダイドテロゲン中にテトラフルオロエチレンタキソゲンを溶解させた状態で蒸留塔に供給し得る。あるいは、フルオロアルキルアイオダイドテロゲンと、テトラフルオロエチレンタキソゲンとを別個に蒸留塔に(好ましくは、蒸留塔の中間部に位置する反応部よりやや下方にして)供給し得る。
【0030】
テトラフルオロエチレンタキソゲンを含む低沸点フラクションを、蒸留塔の上部から連続的に抜き出した後に蒸留塔に戻し、これによりテトラフルオロエチレンタキソゲンが反応部を通って循環するようになっている。
【0031】
蒸留塔内の圧力は、約−0.95〜5MPa(ゲージ圧)とすることが好ましい。蒸留塔内の圧力を約−0.95MPa(ゲージ圧)以上とすると、蒸留塔内の温度および用いるテロゲンにもよるが、通常、そのテロゲンの蒸留塔内の温度における蒸気圧より約0.01MPa以上高い圧力となり、このような圧力となるようにテトラフルオロエチレンを供給することにより、高い空時収率(即ち、単位時間、単位触媒重量当りの収率)が得られる。また、約5MPa(ゲージ圧)以下とすることにより、高いテロメル化反応選択性が得られ、更に安全かつ低コストである。しかしながら、このような範囲外の圧力においてもテロメル化反応を進行させ得ることに留意されたい。
【0032】
蒸留塔内の温度は、位置によって異なり得るが、少なくとも反応部は、フルオロアルキルアイオダイドテロゲンが液体状態となるように、圧力に見合った温度に維持することが好ましい。これにより、テロメル化反応を液相テロゲン中で進行させることができ、気相テロメル化反応の反応温度に比べて反応温度が低くなることから、工業的に好ましく、また熱的に不安定なテトラフルオロエチレンが分解しにくい利点もある。
【0033】
テロメル化反応のための反応部の温度は、圧力などにもよるが、例えば約60〜160℃であり、好ましくは約80〜140℃である。約60℃以上とすることにより、十分な反応速度を得ることができる。また、約160℃以下とすることにより、望ましくない副反応を効果的に低減することができ、更に安全かつ低コストである。そのような副反応としては、例えば、発生するフルオロアルキルラジカルが2量化してフルオロアルカンを生じる反応、テロマー同士が反応してフルオロアルカンおよびヨウ素を生じる反応(ヨウ素は反応器の腐食や配管などの閉塞をもたらし得る)、熱的に不安定であるテトラフルオロエチレンの熱分解(これは安全性の点で特に望ましくない)などが挙げられる。しかしながら、このような範囲外の温度においてもテロメル化反応を進行させ得ることに留意されたい。
【0034】
これにより、フルオロアルキルアイオダイドテロゲンとテトラフルオロエチレンタキソゲンとが、反応部内で金属触媒の存在下に加熱状態にて以下の式に示すテロメル化反応し、フルオロアルキルアイオダイドテロマーを生じる。
【化2】

生成するフルオロアルキルアイオダイドテロマーは一般式Rf(CFCFI(式中、Rfは反応原料に用いたフルオロアルキルアイオダイドテロゲンにおけるRfと同じであり、nは1〜4の整数である)で表されるものである。
【0035】
このテロメル化反応は鎖長伸長反応であり、所望の鎖長のフルオロアルキルアイオダイドテロマー(重合度を示すnが1〜4の範囲内)が生成した時点で、フルオロアルキルアイオダイドテロマーを含むフラクションを蒸留分離により蒸留塔から取り出す。このような分離操作は、重合度の異なるフルオロアルキルアイオダイドテロマーがそれぞれ異なる沸点を有し、各沸点に応じて蒸留平衡によって移動することを利用して、所望の鎖長のフルオロアルキルアイオダイドテロマーの沸点に対応する高沸点フラクションを蒸留分離することにより実施できる。
【0036】
このようなフルオロアルキルアイオダイドテロマーを含む高沸点フラクションは、蒸留塔の下部から連続的に抜き出される。
【0037】
以上、本実施形態により、フルオロアルキルアイオダイドテロマーが製造される。これにより得られた高沸点フラクション中のフルオロアルキルアイオダイドの鎖長分布は狭く、所望の鎖長のフルオロアルキルアイオダイドテロマーを高い選択率で得ることができる。また、本実施形態では金属触媒を用い、遊離基開始剤を用いていないので、一般式RfHで表わされるような副生成物も遊離基開始剤自身の分解による副生成物も生じず、従って、これらを分離除去する必要がない。このような製造方法は、安全かつ低コストであり、工業的実施に好ましく適用される。
【0038】
本発明の1つの実施形態について上述したが、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の改変が可能であろう。例えば、上記実施形態では蒸留塔を用いたが、これに代えて、管型反応器を利用した装置などを用いてもよい。また、上記実施形態ではフルオロアルキルアイオダイドテロマーを含むフラクションを蒸留塔から単独で連続的に取り出すこととしたが、本発明の効果は所望の鎖長のフルオロアルキルアイオダイドテロマーを蒸留分離により反応部から移動させることにより得られるものであるので、バッチ式で実施して、フルオロアルキルアイオダイドテロマーを含むフラクションを他の全てのフラクションと一緒に蒸留塔から缶出液(反応混合物)として抜き出すようにしても同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0039】
(実施例)
蒸留器として外径6/8インチのステンレス製管型反応器を縦型設置して用い、この中間部に位置する反応部に金属触媒として球状銅粉の焼結体(直径1mm、長さ10mm)200gを充填し、それより下部に蒸留分離用の充填物を充填した。そしてこの蒸留器の底部に、テロゲンとして1−ヨードパーフルオロブタン(C49I)692gを仕込んだ。
【0040】
蒸留器の頂部(塔頂)温度が100℃になるように加熱しながら、頂部圧力が0.3MPa(ゲージ圧)で一定となるよう保持し、1−ヨードパーフルオロブタンを還流させた状態で、蒸留器の反応部よりやや下方よりタキソゲンとしてテトラフルオロエチレンを徐々に供給した(尚、還流物にはテトラフルオロエチレンも含まれるようになる)。テトラフルオロエチレンを全部で36g供給した時点で供給停止し、その後冷却し、蒸留器内の全ての液状物(高沸点フラクションを含む)を缶出液(反応混合物)として取り出した。
【0041】
これにより得られた反応混合物をガスクロマトグラフにより組成分析した。分析結果より求めたテロゲン(C49I)の転化率ならびに反応混合物におけるフルオロアルキルアイオダイド(C(CFCFI)の重合度分布を表1に示す。
【0042】
(比較例)
撹拌機を有する容量230mlのステンレス製加圧反応器に、テロゲンとして1−ヨードパーフルオロブタン(C49I)300gおよび金属触媒として銅粉11gを仕込んだ。
【0043】
反応器内の液相温度が100℃になるように加熱しながら、圧力が0.38MPa(ゲージ圧)で一定となるように、タキソゲンとしてテトラフルオロエチレンを適宜追加供給した。テトラフルオロエチレンを全部で50g供給した時点で供給停止し、その後冷却し、反応混合物を反応器から取り出した。
【0044】
これにより得られた反応混合物をガスクロマトグラフにより組成分析した。分析結果より求めたテロゲン(C49I)の転化率ならびに反応混合物におけるフルオロアルキルアイオダイド(C(CFCFI)の重合度分布を表1に示す。
【0045】
【表1】

表中、記号「-」は検出限界未満であることを示す。
【0046】
表1を参照して、この実施例によれば、所望の鎖長のフルオロアルキルアイオダイドである1−ヨードパーフルオロヘキサン(n=1)が比較例より高い選択率で得られることが確認された。また、この実施例によれば、所望の鎖長より長いフルオロアルキルアイオダイド(n=2以上)は比較例より顕著に少なく、鎖長分布が極めて狭くなっていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明により製造されるフルオロアルキルアイオダイドテロマーは、界面活性剤の原料や、繊維の撥水撥油処理剤の原料などとして利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式RfI(式中、Rfは炭素数1〜10のフルオロアルキル基である)で表されるフルオロアルキルアイオダイドをテロゲンとして、テトラフルオロエチレンをタキソゲンとして用い、これらを蒸留器に供給し、蒸留器中間部に位置する反応部内で金属触媒の存在下に加熱状態にてテロメル化反応させて、一般式Rf(CFCFI(式中、Rfは上記と同じであり、nは1〜4の整数である)で表されるフルオロアルキルアイオダイドテロマーを生じさせ、および
フルオロアルキルアイオダイドテロマーを含むフラクションを蒸留分離する
ことを含む、フルオロアルキルアイオダイドテロマーの製造方法。
【請求項2】
反応部の温度および圧力は、テロゲンとして用いるフルオロアルキルアイオダイドが液体状態となる温度および圧力である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
テトラフルオロエチレンが反応部を通って循環するように、テトラフルオロエチレンを含むフラクションを蒸留分離した後に蒸留器に戻すことを更に含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
テロゲンのフルオロアルキルアイオダイドおよびタキソゲンのテトラフルオロエチレンを蒸留器に連続的に供給し、フルオロアルキルアイオダイドテロマーを含むフラクションを蒸留器から連続的に抜き出す、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
金属触媒が銀または銅である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2009−242317(P2009−242317A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92078(P2008−92078)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】