説明

フルオロポリマーとアクリルポリマーとをベースにした多層フィルム

【課題】(1)70〜100重量%、好ましくは90〜100重量%のフルオロポリマーと、0〜30重量%、好ましくは0〜10重量%のアクリルポリマーとを含む表面層と、(2)50〜100重量%のアクリルポリマーと、0〜50重量%のフルオロポリマーと、1〜10重量%の紫外線安定剤と、0〜50重量%の衝撃改質剤とを含む接着層とを有する多層フィルムの、揮発性化合物を発生する基材の保護での使用および多層フィルムで保護された基材。
【解決手段】、
上記表面層の厚さは2〜15μm、好ましくは2〜10μm、さらに好ましくは3〜8μmで、上記接着層の厚さは30〜75μm、好ましくは30〜60μm、さらに好ましくは30〜50μmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロポリマーとアクリルポリマーとをベースにした多層フィルムの基材の保護での使用、特に、揮発性化合物のトラップを多層フィルムで防止する改良された使用方法に関するものである。
本発明は特に、基材が熱可塑性材料、特にPVCまたはABSのプロフィル(異形材)や、熱硬化性材料、特に不飽和ポリエステルまたは接着剤が含浸されたセルロースまたはリグノセルロース材料の場合、特に、基材がサンドイッチパネルの場合に使用される。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリマー、特にポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)からなるフィルムは耐候性、耐放射線性、耐薬品性に優れ、物品または各種材料の保護に用いられている。被保護材料は熱可塑性材料または熱硬化性材料にすることができるが、フルオロポリマーからなるフィルムは接着性が悪いため、フィルムと被保護基材との間にアクリルポリマーか、アクリルポリマーとフルオロポリマーとの混合物の接着剤組成物を塗布する必要があることが多い。この接着剤組成物はフルオロポリマーと一緒に共押出しされて、2層フィルムになり、得られた2層フィルムを例えば熱間圧縮を用いて基材に接着する。また、上記の2層フィルムを金型中にセットし(フルオロポリマー層が金型の壁と接する)、金型中に熱硬化性材料の先駆物質を射出し、架橋してPVDFで被覆された熱硬化性材料を得ることもできる。
【0003】
上記多層フィルムの剥離を防止するためには、接着組成物はフィルムと基材とが機械的応力を受ける操作条件下で、しかも、40℃以上の温度下でも良好な熱機械的挙動を保持し且つ良好な接着性を維持する必要がある。さらに、基材上に積層された多層フィルムはその表面外観を保持しなければならない。すなわち、フィルムと基材との界面に欠陥がない状態で多層フィルムは基材を完全に被覆しなければならない。
【0004】
PVCやABSの基材の場合、特にPVCのプロフィルの場合には、塩素化溶剤(例えばトリクロロアセテート)を塗布して基材の表面を洗浄することがある。この場合には溶剤の一部が基材の材料中に捕捉されて残り、多層フィルムを積層した後に気体となって徐々に蒸発する。また、熱硬化性材料、例えば不飽和ポリエステル樹脂やフェノール樹脂の基材を保護する場合には、熱硬化性材料を高温条件下で硬化する際に揮発性化合物が放出されることが多い。例えば不飽和ポリエステル樹脂の場合には、不飽和エチレン基を有するモノマー中に不飽和ポリエステルを稀釈して混合物の粘度を調節する。この不飽和エチレン基を有するモノマーはポリエステル用溶剤と架橋剤(硬化剤)の両方の役目をするが、このモノマーは樹脂の加熱時に放出される。熱硬化性材料の他の例としては高温条件下での樹脂形成中に水を放出するフェノール樹脂がある。
【0005】
セルロース材料の基材、例えば、揮発性化合物を放出するホットメルト接着剤や水中に分散または溶解した接着剤を予め含浸したセルロース材料(例えば木材、チップボード、紙等)の基材の保護の例を挙げることもできる。
【0006】
下記文献にはPMMAシートを多層PVDFフィルムで被覆することが記載されているが、多層PVDFフィルムの厚さはシートの厚さの10分の1以下である。
【特許文献1】米国特許第4,226,904号明細書
【0007】
下記文献にはABSまたはPVCのような熱可塑性材料をPVDF/PMMA、層フィルムで被覆することが記載されている。PVDF層の厚さは10μm〜数百μmで、PMMA層の厚さは数μm〜200μmである。この特許の実施例のPVDF層の厚さは約75〜100μmである。
【特許文献2】米国特許第4,317,860号明細書
【0008】
下記文献にはABSまたは不飽和ポリエステルをベースとする熱硬化性材料からなる基材をPVDFフィルムで被覆することが記載されている。
【特許文献3】米国特許第4,364,886号明細書
【0009】
PVDFと基材との間に接着剤を有し、この接着剤はPMMAか、30重量%のPMMA、40重量%のアクリルエラストマー、25重量%のABSおよび5%の酸化亜鉛/硫化亜鉛混合物のブレンドである。この特許の実施例のPVDF層の厚さは約75〜100μmである。
下記文献にはPVDFを基材に接着させるためのPVDFと共押出し可能な組成物が記載されている。
【特許文献4】米国特許第5,242,976号明細書
【0010】
この組成物は27〜50重量%のPMMA、17.5重量%〜36.5重量%のPVDFと25〜47.45重量%のアクリルエラストマーとの混合物である。
上記の全ての従来技術には接着剤組成物中の紫外線安定剤に関する記載はない。
【0011】
下記文献に記載のABSまたは不飽和ポリエステル基材はPVDFフィルムで被覆され、このPVDFと基材との間には接着剤が配置される。
【特許文献5】米国特許第4,364,886号明細書
【0012】
この接着剤は30重量%のPMMA、40重量%のアクリルエラストマーおよび30重量%のABSの混合物である。
下記文献に記載のABSまたはPVC基材はPVDFフィルムで被覆され、このPVDFと基材との間には接着剤が存在する。
【特許文献6】米国特許第4,415,519号明細書
【0013】
この接着剤はPMMAか、40重量%のPMMA、30重量%のPVDFおよび30重量%のABSの混合物か、30重量%のPMMA、40重量%のポリアクリル誘導体および30重量%のABSの混合物にすることができる。PVDF層の厚さは10μm〜数百μmで、PMMA層の厚さは数μm〜200μmである。この特許の実施例のPVDF層の厚さは約75〜100μmである。
下記文献には基材、接着層、PVDFの紫外線/可視光遮断層およびPVDF層をこの順番で有するPVDFで被覆した基材が記載されている。
【特許文献7】欧州特許第733,475,B1号公報
【0014】
PVDFの紫外線/可視光遮断層は金属酸化物、顔料およびベンゾフェノンの中から選択される化合物をPVDFに添加することによって得られる。この特許に記載の実施例は15重量%の酸化亜鉛を充填したPVDFのみである。層の厚さは10から200〜300μmまでである。この特許の実施例では層の厚さは約50〜100μmである。
下記文献には多層基板の被覆での単層PMMAフィルムまたは二層PMMA/PVDFフィルムの使用が記載されている。
【特許文献8】欧州特許第1,388,414号公報
【0015】
このフィルムはフェノール樹脂が予め塗布された層に押圧されている。PMMA/PVDFフィルムの二層の厚さは明記されていない。また、紫外線安定剤がフィルム中に存在するという記載もない。
下記文献には熱硬化性材料からなる物品の被覆にPVDF、PMMAまたはこれらの混合物をベースにした多層フィルムを使用することが記載されている。
【特許文献9】欧州特許第1,405,872号公報
【0016】
接着層の厚さは10〜100μmで、外層の厚さは2〜50μmである。この特許の実施例には厚さは記載がない。
下記文献にはPVDF層と、PVCに接着可能なPMMA層とを含む多層フィルムが記載されているが、PVCが揮発性化合物を放出するという記載はない。
【特許文献10】日本国特許第JP 680794 A1号(Kureha Chemical)
【0017】
下記文献にはホットメルト接着剤の層に積層可能なPVDFとPMMAとの混合物を含むフィルムが記載されているが、フルオロポリマーをベースとする表面層に関する記載はない。
【特許文献11】日本国特許第JP 4202280号(Shinetsu Chemical)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記の公知文献の組成物またはフィルムには、フィルムの表面外観を損なう揮発性化合物の放出を阻止するという課題に関する記載はない。
【0019】
本出願人は、請求項1に記載の多層フィルムで被覆することによって、層間剥離を示さずに且つ揮発性化合物の捕捉問題を避けながら、効率的に基材を保護することができるということを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の対象は、(1)70〜100重量%、好ましくは90〜100重量%のフルオロポリマーと、0〜30重量%、好ましくは0〜10重量%のアクリルポリマーとを含む表面層と、(2)50〜100重量%のアクリルポリマーと、0〜50重量%のフルオロポリマーと、1〜10重量%の紫外線安定剤と、0〜50重量%の衝撃改質剤とを含む接着層とを有する多層フィルムの、揮発性化合物を発する基材の保護での使用において、上記表面層の厚さが2〜15μm、好ましくは2〜10μm、さらに好ましくは3〜8μmで、上記接着層の厚さが30〜75μm、好ましくは30〜60μm、さらに好ましくは30〜50μmであることを特徴とする使用にある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
多層フィルムは表面層の側(すなわち接着層の反対側)に剥離可能な保護層を配置することができる。この層はフィルムを基材に結合した後に剥がされる。
本発明の多層フィルムは表面層の厚さが薄いが、耐候性、耐放射性、耐薬品性および耐引掻性に優れている。さらに、本発明の多層フィルムは保護すべき基材(被保護基材)に対する接着性に優れているので、剥離する傾向がほとんどない。また、本発明の多層フィルムではフィルムと基材の界面での泡の形成を避けることができる。
【0022】
基材は熱可塑性材料、例えばPVCまたはABSプロフィルか、熱硬化性材料、例えば不飽和ポリエステルまたは接着剤を含浸したセルロースまたはリグノセルロース材料にすることができる。特に、基材はサンドイッチパネルにすることができる。
本発明の別の対象は、多層フィルムによって保護された基材を含む多層構造体にある。
【0023】
フルオロポリマーとは鎖中に重合を開始できるビニル基と、このビニル基に直接結合した少なくとも一つのフッ素原子、フルオロアルキル基またはフルオロアルコキシ基とを有する化合物の中から選択される少なくとも一種のモノマーを含む任意のポリマーを意味する。
【0024】
このモノマーの例としてはフッ化ビニル;フッ化ビニリデン(VDF、式CH2=CF2);トリフルオロエチレン(VF3);クロロトリフルオロエチレン(CTFE);1,2-ジフルオロエチレン;テトラフルオロエチレン(TFE);ヘキサフルオロプロピレン(HFP);ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)およびペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)等のペルフルオロ(アルキルビニルエーテル);ペルフルオロ(1,3-ジオキソール);ペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)(PDD);式CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2X(ここでXはSO2F、CO2H、CH2OH、CH2OCNまたはCH2OPO3H)の化合物; 式CF2=CFOCF2CF2SO2F)の化合物; 式F(CF2)nCH2OCF=CF2(ここでnは1、2、3、4または5)の化合物; 式R1CH2OCF=CF2(ここでR1は水素またはF(CF2)zで、zは1、2、3または4)の化合物; 式R3OCF=CH2(ここでR3はF(CF2)Z-で、zは1、2、3または4)の化合物;ペルフルオロブチルエチレン(PFBE);3,3,3-トリフルオロプロペンおよび2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペンを挙げることができる。
【0025】
フルオロポリマーはホモポリマーでもコポリマーでもよく、エチレン等の非フルオロモノマーを含んでいてもよい。
フルオロポリマーは下記の中から選択するのが有利である:
1) フッ化ビニリデン(VDF)のホモポリマーと、好ましくは少なくとも50重量%のVDFを含むそのコポリマー。コモノマーはクロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、トリフルオロエチレン(VF3)およびテトラフルオロエチレン(TFE)から選択される。
2) トリフルオロエチレン(VF3)のホモポリマーおよびコポリマー、
3) クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)および/またはエチレン(必要に応じてVDFおよび/またはVF3をさらに含むことができる)の残基を結合したコポリマー、特にターポリマー。
【0026】
フルオロポリマーはポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)のホモポリマーまたはコポリマーであるのが好ましい。このPVDFは少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%、さらに好ましくは少なくとも85重量%のVDFを含むのが好ましい。VDFと結合させるのが有利なコモノマーはHFPまたはCTFEである。
このPVDFの粘度は100Pa.s〜2000Pa.sの範囲であるのが有利である。粘度は細管レオメタ−を用いて100s-1の剪断速度で230℃で測定する。このPVDFは押出し成形および射出成形に特に適している。細管レオメターを用いて100s-1の剪断速度で230℃で測定したPVDFの粘度は300Pa.s〜1200Pa.sの範囲であるのが好ましい。カイナー(Kynar、登録商標)710または720または740の名称で市販のPVDF、および、カイナーフレックス(Kynarflex、登録商標)2802、2800、2850または3120の名称で市販のPVDFが適している。
【0027】
アクリルポリマーとはメチルメタクリレートのホモポリマーまたは少なくとも50重量%のメチルメタクリレートを含むコポリマーを意味する。コモノマーの例としてはアルキル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンまたはイソプレン等が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートの例は下記文献に記載されている。
【非特許文献1】カークオスマ(Kirk-Othmer)化学技術百科辞典、第4版、第1巻、第292〜293頁および第16巻、第475〜478頁
【0028】
アクリルポリマーは0〜20重量%、好ましくは5〜15重量%のメチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートおよび/または2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートの中から選択される少なくとも一種の別のアルキル(メタ)アクリレートを含むのが有利である。
【0029】
表面層および接着層と基材との間の接着を促進するために、アクリルポリマーは官能基を有することができる、すなわち、アクリルポリマーは例えば酸、酸塩化物、アルコール、無水物またはウレイド官能基を含むことができる。これらの官能基は押出機中または溶液状態でのグラフトによるか、好ましくはメチルメタクリレートとの共重合で導入できる。この官能基はアクリル酸またはメタクリル酸のコモノマーによって与えられる酸官能基であるのが有利である。互いに隣接する2つの酸官能基から水を取って下記式(ここで、mは0または1の値を有する)の無水官能基にすることができる。
【化1】

【0030】
ウレイド官能基は下記のメタクリレートによって与えることができる:
【化2】

【0031】
アクリルポリマーが官能基を有する場合、アクリルポリマーは0.5〜15重量%、好ましくは1〜10重量%の酸、酸塩化物、アルコール、無水物またはウレイド官能基を有するモノマーを含むことができる。
PMMAの230℃、3.8kgの荷重下で測定したMVI(メルトボリュームインデックス)は2〜15cm3/10分にすることができる。
【0032】
「紫外線安定剤」は公知の化合物であり、この化合物は下記文献に挙げられている。
ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンまたは蓚酸型の紫外線安定剤を用いるのが有利である。揮発性の低い紫外線安定剤も用いられる。例としてCiba Speciality Chemicals社から市販のチヌバン(TINUVIN、登録商標)213またはチヌバン(TINUVIN、登録商標)109が挙げられ、チヌバン(TINUVIN、登録商標)234を用いるのが好ましい。接着層中の紫外線安定剤の比率は1〜10重量%にするのが有利である(すなわち、紫外線安定剤は100重量部の接着層に対して1〜10重量部にする)
【特許文献12】米国特許第5,256,472号明細書
【0033】
紫外線安定剤の例としては特に下記を挙げることができる:2-[3,5-ジ-(α,α-ジメチルベンジル)-2-ヒドロキシフェニル]ベンゾトリアゾール、2-[3,5-ジ-(t-ブチル)-2-ヒドロキシフェニル]ベンゾトリアゾール、2-(3-(t-ブチル)-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ(t-ブチル)-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ(t-アミル)-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-エトキシ-2'-エチル蓚酸ビスアニリド、2-エトキシ-5-(t-ブチル)-2'-エチル蓚酸ビスアニリド、2-ヒドロキシ-4-(n-オクトキシ)ベンゾフェノン、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-テトラ-メチル-4-ピペリジル)セバケート、ジメチル-2-(4-ヒドロキシ-2,2,6,6,-テトラメチル-1-ピペリジル)エーテルまたは1-[2-3-(3,5-ジ(t-ブチル)-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン。
【0034】
衝撃改質剤とはアクリロニトリル、アルキル(メタ)アクリレートおよびコア−シェルコポリマーの中から選択される少なくとも一種のモノマーをベースにしたエラストマーである。コア/シェルコポリマーはエラストマーのコアと少なくとも1つの熱可塑性シェルとを有する微粒子の形をしており、その粒径は一般に1μm以下、好ましくは50〜300nmである。コア材料の例としてはイソプレンまたはブタジエンのホモポリマー、イソプレンと30モル%以下のビニルモノマーとのコポリマー、ブタジエンと30モル%以下のビニルモノマーとのコポリマーが挙げられる。ビニルモノマーはスチレン、アルキルスチレン、アクリロニトリルまたはアルキル(メタ)アクリレートにすることができる。コアの他の群はアルキル (メタ)アクリレートのホモポリマー、アルキル(メタ)アクリレートと別のアルキル(メタ)アクリレートから選択される30モル%以下のモノマーとのコポリマーおよびビニルモノマーで構成される。アルキル(メタ)アクリレートはブチルアクリレートであるのが有利である。
【0035】
ビニルモノマーはスチレン、アルキルスチレン、アクリロニトリル、ブタジエンまたはイソプレンにすることができる。コア−シェルコポリマーのコアは完全または部分的に架橋されていてもよい。必要なことはコアの製造中に少なくとも二官能性のモノマーを添加することだけである。このモノマーはポリオールのポリ(メタ)アクリルエステル、例えばブチレンジ(メタ)アクリレートおよびトリメチロールプロパントリメタクリレートの中から選択することができる。他の二官能性モノマーは例えばジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、酢酸ビニルおよびビニルメタクリレートである。不飽和官能性モノマー、例えば不飽和無水カルボン酸、不飽和カルボン酸および不飽和エポキシドを重合中にグラフトするか、コモノマーとして導入することによってコアを架橋することもできる。その一例としては無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸およびグリシジルメタクリレートが挙げられる。
【0036】
一つまたは複数のシェルはスチレン、アルキルスチレンまたはメチルメタクリレートのホモポリマーまたは少なくとも70モル%の上記モノマーの一つと、上記以外の他のモノマー、別のアルキル(メタ)アクリレート、酢酸ビニルおよびアクリロニトリルの中から選択される少なくとも一種のコモノマーとを含むコポリマーである。シェルは不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸および不飽和エポキシド等の不飽和官能性モノマー(例えば無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸およびグリシジルメタクリレート)を重合中にグラフトするかまたはコモノマーとして導入することによって官能化することができる。
【0037】
例えば、ポリスチレンのシェルを有するコア−シェルコポリマーおよびPMMAのシェルを有するコア−シェルコポリマーが挙げられる。さらに、ポリスチレンで作られたシェルと、PMMAで作られた外側シェルの2つのシェルを有するコア−シェルコポリマーもある。コポリマーの例およびその製造方法は下記の特許に記載されている。
【特許文献13】米国特許第4,180,494号明細書
【特許文献14】米国特許第3,808,180号明細書
【特許文献15】米国特許第4,096,202号明細書
【特許文献16】米国特許第4,260,693号明細書
【特許文献17】米国特許第3,287,443号明細書
【特許文献18】米国特許第3,657,391号明細書
【特許文献19】米国特許第4,299,928号明細書
【特許文献20】米国特許第3,985,704号明細書
【特許文献21】米国特許第5,773,520号明細書
【0038】
コアがコア−シェルコポリマーの70〜90重量%で、シェルが30〜10重量%であるのが有利である。
衝撃改質剤の例としては、(i)少なくとも93モル%のブタジエン、5モル%のスチレンおよび0.5〜1モル%のジビニルベンゼンを含むコア75〜80重量部と、(ii)ポリスチレンからなる内側シェルとPMMAからなる外側シェルを主成分とする同じ重量の2つのシェル25〜20部とで構成される衝撃改質剤が挙げられる。
【0039】
別の例としては、ポリ(ブチルアクリレート)またはブチルアクリレート/ブタジエンコポリマーのコアとPMMAシェルとを有するコポリマーが挙げられる。
これらの全てのコア−シェル型の衝撃改質剤はエラストマーのコアを有するので軟質/硬質とよばれることがある。
【0040】
さらに他の型のコア−シェル型の衝撃改質剤、例えば硬質/軟質/硬質衝撃改質剤、すなわち硬いコア、軟いシェル、硬いコアをこの順番で有する衝撃改質剤が存在する。硬い部分は上記の軟質/硬質衝撃改質剤のシェルのポリマーで構成することができ、軟い部分は上記の軟質/硬質衝撃改質剤のコアのポリマーで構成することができる。例としては下記の順番の衝撃改質剤が挙げられる:
メチルメタクリレート/エチルアクリレートコポリマーからなるコア、
ブチルアクリレート/スチレンコポリマーからなるシェルおよび
メチルメタクリレート/エチルアクリレートコポリマーからなるシェル。
【0041】
さらに他の型のコア/シェル型の衝撃改質剤、例えば硬質(コア)/軟質/半硬質の衝撃改質剤ーが存在する。上記の衝撃改質剤との違いは中間シェルと外側シェルの2つのシェルからなる「半硬質」の外側シェルにある。中間シェルはメチルメタクリレートと、スチレンと、アルキルアクリレート、ブタジエンおよびイソプレンの中から選択される少なくとも一種のモノマーとのコポリマーである。外側シェルはPMMAホモポリマーまたはコポリマーである。
例としては下記の順番の衝撃改質剤が挙げられる:
メチルメタクリレート/エチルアクリレートコポリマーからなるコア、
ブチルアクリレート/スチレンコポリマーからなるシェル、
メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/スチレンコポリマーからなるシェルおよび
メチルメタクリレート/エチルアクリレートコポリマーからなるシェル。
好ましいコア−シェル型の衝撃改質剤の例としては、本出願人アルケマ社から市販のデュラストレングス(DURASTRENGTH、登録商標)320が挙げられる。
衝撃改質剤は接着の質を高め、より良い機械的挙動をフィルムに与え、接着層に可撓性を与える。
【0042】
表面層は70〜100重量%、好ましくは90〜100重量%のフルオロポリマーと、0〜30重量%、好ましくは0〜10重量%のアクリルポリマーとを含む。最適な保護を与えるために表面層はポリマーとしてフルオロポリマーのみ(100%)にし、特にPVDFのホモポリマーまたはコポリマーのみにするのが好ましい。
表面層の厚さは2〜15μm、好ましくは2〜10μm、さらに好ましくは3〜8μmである。
【0043】
驚くべきことに、表面層は厚さが薄いにもかかわらず、表面層の保護機能を維持でき、しかも、揮発性化合物トラップの問題を避けることができる。
【0044】
接着層は50〜100重量%のアクリルポリマーと、0〜50重量%のフルオロポリマーと、1〜10重量%の紫外線安定剤と、0〜50重量%の衝撃改質剤とを含む。接着層は良好な熱機械的挙動を維持するために、フルオロポリマーを含まないのが好ましい。この場合、接着層は50〜100重量%のアクリルポリマーと、1〜10重量%の紫外線安定剤と、0〜50重量%の衝撃改質剤とを含む。
【0045】
また、特に衝撃改質剤が存在するときに生じることがある白化現象を避けるために、接着層中に衝撃改質剤を含まないようにすることもできる。この場合、接着層は90〜99重量%のアクリルポリマーと、1〜10重量%の紫外線安定剤とを含む。この場合のアクリルポリマーで満足のいく可撓性を与えるのに適した一種または複数のコモノマーの含有率は一般に5〜15%で、コモノマーはメチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートおよび/または2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートの中から選択されるの少なくとも一種のアルキル(メタ)アクリレートであるのが好ましい。
接着層の厚さは30〜75μm、好ましくは30〜60μm、さらに好ましくは30〜50μmである。
【0046】
任意層の剥離可能な保護層はフィルムのハンドリング時や基材への取付け時に層を保護する一時的な層である。この保護層は所定の表面状態を維持、促進することができる。この保護層は所望する表面状態に応じて平滑でも粗面でもよい。この保護層を用いることによってフィルムの表面状態を劣化させる危険のある離型剤の使用を避けることができる。この保護層は10〜150μmの厚さ、好ましくは50〜100μmの厚さを有することができる。この保護層を作るのに用いられる材料は(i) 飽和ポリエステル(例えばPET、PBT、コポリエステルおよびポリエーテルエステル)、(ii)ポリオレフィンのホモポリマーまたはコポリマー(例えばポリエチレンおよびポリプロピレン)、(iii)ポリアミドまたは(iv)PVCの中から選択することができる。例としてはデュポン社からマイラー(Mylar、登録商標)の名で販売されているPETが挙げられる。
【0047】
この層は種々の充填材(例えばTiO2、シリカ、カオリン、炭酸カルシウムまたはアルミ箔、これらの誘導体)を含むことができる。例えば、数mmまたは10〜20mm以下の厚さの厚い剥離層を用いることもできる。この場合、層は厳密には剥離可能な保護層というよりは一時的なものである。すなわちこの層はPVDFに接着するのではなく、支持体(裏打ち材)の役割を果たす。
【0048】
多層フィルムは接着層、表面層および任意成分としての保護層を共押出して製造することができる。この技術によって層間の良好な接着および接触を得ることができる。
本発明の多層フィルムで保護された基材は、熱可塑性材料または熱硬化性材料にすることができる。この基材は接着剤を含浸したセルロースまたはリグノセルロース材料、特にサンドイッチパネルにすることもできる。
【0049】
熱可塑性材料はPVCまたはABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー)で構成でき、特に、溶剤、例えばトリクロロアセテートを含浸したPVCまたはABSのプロフィルにすることができる。この場合に得られる多層構造体は熱可塑性材料/接着層/表面層のタイプ、特に溶剤含浸PVC/接着層/表面層のタイプである。
多層フィルムは当業者に周知の技術、例えば積層または熱間圧縮成形によって熱可塑性材料上に形成することができる。
【0050】
熱硬化性材料は下記文献に記載されているように、不飽和ポリエステルと反応性溶剤との反応で得られる。
【特許文献22】国際特許第WO 03/035754号公報
【特許文献23】日本国特許第JP 61057644号公報
【0051】
このタイプの材料は日常生活におけるあらゆる用途(スイッチ、電気コーヒーメーカー、トースター、自動車の車体部品など)で用いられている。例としては反応性溶剤、一般にスチレンモノマー、ビニルトルエンモノマーまたはアクリルモノマーと、不飽和ポリエステルプレポリマーとよばれるポリエステルプレポリマー内に含まれるフマル酸の2重結合とのラジカル共重合反応で得られる材料が挙げられる。この不飽和ポリエステルプレポリマーは二酸または無水酸と、ポリオールとのポリエステル化で得られる。不飽和プレポリマーと反応性溶剤とのラジカル共重合はラジカル開始剤(過酸化物)で開始するか、光/光開始剤の組み合わせを用いて開始できる。
【0052】
熱硬化性材料はビニルエステル樹脂と反応性溶剤との反応でも得ることができる。このビニルエステル樹脂はエポキシドとアクリル酸またはメタクリル酸との縮合で得られる。ポリエステルプレポリマーとビニルエステル樹脂との混合物を反応性溶剤と反応させて熱硬化性材料を得ることもできる。
【0053】
上記の不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂をベースとする熱硬化性材料は下記文献に記載されている。
【非特許文献2】ウルマン(Ullman)化学技術百科辞典、VCH 社編,第5版、第A21巻、第217-251頁
【0054】
得られる多層構造体は熱硬化性材料/接着層/表面層のタイプ、特に反応性溶剤を放出する不飽和ポリエステル/接着層/表面層のタイプである。
本発明の多層フィルムは例えば積層または熱間圧縮成形で熱硬化性材料上に貼り付けられる。オーバーモールド法を用いることもできる。その場合には表面層を金型壁と接するように配置した後、熱硬化性材料の先駆物質を(フィルムの接着層側の)金型中に注入し、架橋して多層フィルムで被覆された熱硬化性材料を得る。「先駆物質」とは架橋に必要な構成成分と任意の充填剤、例えばガラス繊維または炭酸カルシウムとを含む組成物である。
【0055】
単純な形の金型の場合には金型内壁上にフィルムを配置し、その上に熱硬化性材料の先駆物質を射出成形するだけでよく、フィルムをそのまま用いる。複雑な形をした金型の場合にはフィルムに応力が加わるのを避け、フィルムと金型内壁との良好な接触を確保するためにフィルムを金型にのせる前に熱成形によって予め予備成形する必要がある。同じ形の別の金型を用いることもでき、この場合には、フィルムは同じであるがポジの形状を有する部品を用いて熱成形することができ、基材の射出成形と同じ形の金型を用いることもできる。これらの中間としては、熱成形を行わずに金型上にフィルムを直接のせ、熱硬化性材料の先駆物質を射出する側に圧縮空気を吹付けてフィルムを金型内壁へ押圧する方法がある。さらに、フィルムの反対側を減圧して金型内壁に向かってフィルムを真空成形することもできる。いずれにせよ、次に架橋させて多層フィルムで被覆された熱硬化性材料を得る。
【0056】
本発明の多層フィルムは接着剤を含浸したセルロースまたはリグノセルロース材料の被覆にも用いることができる。この場合には表面または全体に接着剤を含浸したセルロースまたはリグノセルロース材料/接着層/表面層をこの順番で有する多層構造体が得られる。
セルロースまたはリグノセルロース材料は木材、紙、好ましくはクラフト紙または厚紙にすることができる。この材料は圧縮木材チップまたは繊維(チップボードを形成するより圧縮された製品の製造に使用される)にすることもできる。
【0057】
接着剤はホットメルト接着剤、例えばエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマー、ポリアミドまたはポリ−α−オレフィンをベースにしたホットメルト接着剤にすることができる。この型の接着剤は揮発性化合物、例えば溶剤またはモノマー残基を放出する。
【0058】
接着剤は尿素、ホルムアルデヒド、フェノールまたはメラミンのような反応性化合物の縮合によって得られる接着剤であるのが好ましい。この型の接着剤はセルロースまたはリグノセルロース材料に良く適している(良好な接着性および易塗布性)。この接着剤は尿素−ホルムアルデヒド(UF樹脂)、メラミンホルムアルデヒド(MF樹脂)、フェノールホルムアルデヒド(PF樹脂)、メラミン−尿素−ホルムアルデヒド(MUF樹脂)、メラミン−尿素−フェノール−ホルムアルデヒド(MUPF樹脂)またはフェノール−ホルムアルデヒド−尿素(例えばレゾールまたはノボラック型)の接着剤にすることができる。所望の用途に応じたこれらの接着剤を製造するための配合物の調節方法はリグノセルロース材料への接着剤の当業者には公知である。この型の接着剤に関してこれ以上の説明が必要な場合には下記文献を参照されたい。
【非特許文献3】ウルマン(Ullman)化学技術百科辞典、第5版、第A28巻、325頁、および第A2巻、116-141頁。
【0059】
この型の接着剤はほぼ完全な重縮合反応(縮合物または初期縮合物が形成される)で得られ、この反応はセルロースまたはリグノセルロース材料に接着剤が含浸された後にも続く。この型の接着剤は重縮合反応自体によって生じる水またはホルムアルデヒドの稀釈に用いられる水を放出する。この形の接着剤は水に分散した状態で市販され、分散体の形でセルロースまたはリグノセルロース材料上に塗布できる。この型の接着剤からは水の外に揮発性化合物、例えばフェノールも放出される。
【0060】
接着剤はセルロースまたはリグノセルロース材料の表面から含浸できる。例えば、表面が接着剤の層で被覆された一枚のクラフト紙にすることができる。また、例えばチップボードのようなセルロースまたはリグノセルロース材料の全体に接着剤を含浸させることもできる。「全体に含浸らせる」とはセルロースまたはリグノセルロース材料の粒子の結合剤として接着剤を用いることを意味する。例えばチップボードは多量の木材チップ、木質繊維または別のリグノセルロース材料と接着剤、特に尿素−ホルムアルデヒドまたはメラミン−尿素−ホルムアルデヒド接着剤との混合物を熱間圧縮して製造される。圧縮温度を一般に約100〜220℃にし、150kg/cm2以下の高圧力下で、許容可能な製造時間で、チップを良好に接着させることができる。
【0061】
多層フィルムは接着剤を表面または全体に含浸したセルロースまたはリグノセルロース材料上に形成(配置)される。得られる多層構造体はセルロースまたはリグノセルロース材料/接着剤の層/接着層/表面層をこの順番で有する多層構造体か、全体に接着剤が含浸されたセルロースまたはリグノセルロース材料/接着層/表面層をこの順番で有する多層構造体である。接着層と表面層は上記定義のものである。
【0062】
多層構造体の各層は互いに接着している。セルロースまたはリグノセルロース材料上にパターンまたは顔料が付けられていてもよい。
【0063】
サンドイッチパネル
本発明の多層フィルムは一般に「サンドイッチパネル」とよばれる多層ボードの保護に用いることができる。このパネルは屋内または屋外のファサードのクラッディングまたは床の製造で用いることが多い。
サンドイッチパネルは接着剤を含浸した一つまたは複数のセルロースまたはリグノセルロース材料(多くは紙および/またはクラフト紙)の複数の層を積層して得られる。任意成分として着色層またはパターン層(装飾層)をボード表面に有することもできる。
【0064】
接着剤は熱硬化性接着剤(UF、MF、PF、MUF、MUPF、フェノール−ホルムアルデヒド−尿素型)であるのが好ましい。接着剤はPFまたはMF型であるのが好ましい。アルカリ媒体中でフェノールとアルデヒドとをフェノール/アルデヒドモル比を1:1〜1:4にして反応させて得られるレゾール型の接着剤を用いることもできる。
【0065】
高温(120〜160℃)、高圧(数トン)条件下で約20〜60分間加圧してサンドイッチパネルを完成させる(HPL(高圧積層ボード)参照)。
サンドイッチパネルの例
サンドイッチパネルの例は下記特許に記載されている。
【特許文献24】欧州特許第1,388,414 A1号公報
【特許文献25】欧州特許第1,199,157 A1号公報
【特許文献26】英国特許第2,307,882 A号公報
【0066】
上記特許文献25(欧州特許第1,199,157 A1号公報)の実施例には下記の層を下記順番で有するパネルが記載されている:
坪量が180/290g/m2であるフェノールクラフト紙からなる層、
接着剤の層、
木材の層、
着色セルロースフィルムとメラミンを含浸したセルロースフィルムとからなり、シリカ充填剤を含む装飾層。
【0067】
別のサンドイッチパネルの例は紙の層、木材の層、任意成分としての装飾層または紙の層および装飾層をこの順番で有する。さらに別のサンドイッチパネルの例では任意成分としての装飾層、木材の層、紙の層、木材の層、任意成分としての装飾層をこの順番で有する。さらに別のサンドイッチパネルの例では装飾層、木材の層および装飾層をこの順番で有する。本発明の多層フィルムは木材の層または装飾層上に形成される。紙の層の代わりに複数の紙の積層体を用いることもできる。用いる紙はクラフト紙であるのが好ましい。
【0068】
装飾層は無地またはパターン紙にすることができる。セルロースまたはパターン紙の一つまたは複数のフィルムが対象となる。顔料が充填された熱硬化性接着剤の層も対象となる。
【0069】
市販されているサンドイッチパネルの例も挙げることができる。Prodema社から市販のパネルBAQ+(登録商標)は熱硬化性フェノール樹脂を含浸したセルロース繊維からなるコアと天然木の層とで構成される高密度パネルであることがこの会社のインターネットサイトに記載されている。Prodema社から市販のパネルMAD(登録商標)は熱硬化性フェノール樹脂を含浸した合板からなるコアと、天然木の層とで構成されるパネルと記載されている。Gurea社から市販のパネルParklex(登録商標)1000は内側が熱硬化性フェノール樹脂で処理され、高温、高圧で圧縮された木材または紙の繊維からなる高密度の木材と天然木の層とで構成される積層パネルであるとこの会社のインターネットサイトには記載されている。本発明の多層フィルムは上記木材の層上に押圧される。
【0070】
得られるサンドイッチパネルは下記の順番を有する:クラフト紙からなる基材(この基材には接着剤が含浸されている)/木材の層/接着剤が表面に含浸されたセルロースまたはリグノセルロース材料/本発明の多層フィルム。すなわち、クラフト紙からなる基材(この基材には接着剤が含浸されている)/木材の層/接着剤が表面に含浸されたセルロースまたはリグノセルロース材料/接着層/表面層。セルロースまたはリグノセルロース材料は一枚のクラフト紙であるのが好ましい。
【0071】
サンドイッチパネルの別の例は下記の順番を有する対称構造を有する:本発明の多層フィルム/表面に接着剤を含浸したセルロースまたはリグノセルロース材料/木材の層/クラフト紙からなる基材(この基材には接着剤が含浸されている)/木材の層/表面に接着剤を含浸したセルロースまたはリグノセルロース材料/本発明の多層フィルム、すなわち、表面層/接着層/表面に接着剤を含浸したセルロースまたはリグノセルロース材料/木材の層/クラフト紙からなる基材(この基材には接着剤が含浸されている)/木材の層/表面に接着剤を含浸したセルロースまたはリグノセルロース材料/接着層/表面層。
【0072】
本発明の多層フィルムによって捕捉できる揮発性化合物は、サンドイッチパネルの場合には接着剤の層から発生するであろう。しかし、この揮発性化合物が別の層から発生したり、表面へ移動する(例えばクラフト紙の基材から表面へ移動する)こともある。
【0073】
セルロースまたはリグノセルロース材料の場合、特にサンドイッチパネルの場合には本発明の多層フィルムを熱間圧縮成形で積層する。圧縮は一般に2〜30MPaの圧力下で一般に100〜180℃の温度の高温条件下に行う。
【実施例】
【0074】
実施例で用いるPVDFはアルケマ社から市販のカイナー(KYNAR、登録商標)740である。用いるPMMAはオログラス(OROGLAS、登録商標)BS-8である。これはALTUGLAS INTERNATIONAL(旧ATOGLAS)社から市販されており、コモノマーのメチルアクリレートを6重量%含むビード形のPMMAで、MVIは4.5cm3/10分(230℃、3.8kg)である。
以下の実施例では、表面にフェノールホルムアルデヒド樹脂を含浸したクラフト紙に本発明の多層フィルムを積層する。
【0075】
実施例1(本発明)
10μmのPVDFのフィルムを、90重量%のPMMAと10重量%のPVDF(40μm)との混合物上に押出吹込フィルム成形法を用いて共押出しする。得られたフィルムを一辺の長さが300mmの四角形に切断する。このフィルムをCASCO社から入手したフェノールホルムアルデヒド樹脂をコートしたクラフト紙(坪量90g/m2)上に配置する。得られた全体構造物を100kg/m2の圧力下で130℃で75分間加熱する。金型から取り出した構造体は良好な接着性および美しい表面外観を有する。得られた構造体を80℃のオーブン中に15分間入れた後、同じ温度で接着性を測定する。再測定した接着性の結果は極めて良好であった。表面外観は良好である(泡なし)。
【0076】
実施例2(比較例)
90重量%のPMMAと10重量%のPVDF(40μm)との混合物上にPVDFの30μmフィルムを押出吹込フィルム成形法を用いて共押出した。得られたフィルムを一辺の長さが300mmの四角形に切断する。このフィルムをCASCO社から入手したフェノールホルムアルデヒド樹脂をコートしたクラフト紙(坪量90g/m2)上に配置する。得られた構造体を100kg/m2の圧力下で130℃で75分間加熱する。金型から取り出した構造体は良好な接着性を有するが、表面に多数の泡を有する。次に、得られた構造体を80℃のオーブン中に15分間入れ、同じ温度で接着性を測定する。再度測定した接着性の結果は良好であったが、表面外観は完璧ではなく、泡が存在した。
この実施例から30μmという表面層の厚さは適切ではないことがわかる。
【0077】
実施例3(本発明)
97重量%のPMMAと3重量%のチヌバン(登録商標)234(45μm)との混合物上に5μmのPVDFのフィルムを押出吹込フィルム成形法によって共押出しした。得られたフィルムを一辺の長さが300mmの四角形に切断する。このフィルムをCASCO社から入手したフェノールホルムアルデヒド樹脂がコートされたクラフト紙(坪量90g/m2)上に配置する。得られた構造体を100kg/m2の圧力下で130℃で75分間加熱する。金型から取り出した構造体は良好な接着性と美しい表面外観を有する。次に、得られた構造体を80℃のオーブン中に15分間入れた後、同じ温度で接着性を測定した。再度測定した接着性の結果は極めて良好であった。表面外観も良好である(泡なし)。
【0078】
実施例4(比較例)
65重量%のPMMAと35重量%のPVDF(40μm)との混合物上に10μmのPVDFのフィルムを押出吹込フィルム成形法によって共押出しした。得られたフィルムを一辺の長さが300mmの四角形に切断する。このフィルムをCASCO社から入手したフェノールホルムアルデヒド樹脂がコートされたクラフト紙(坪量90g/m2)上に配置する。得られた構造体を100kg/m2の圧力下で130℃で75分間加熱する。金型から取り出した構造体は良好な接着性と美しい表面外観とを有する。
次に、得られた構造体を80℃のオーブン中に15分間入れ、同じ温度で接着性を測定した。この温度で測定した接着性は20℃で測定した接着性よりはるかに低い。表面外観は良好である(泡なし)が、フィルムは手で剥がれてしまう。この実施例から、熱機械的挙動は接着層中にPVDFが存在しない方が良いことがわかる。
【0079】
【表1】

【0080】
同様の結果が、実施例1〜4のCASCOのクラフト紙を有する特許文献25(欧州特許第1,199,157 A1号公報)の実施例1のサンドイッチパネルに積層されたフィルムでも得られている。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】プラスチック(PVC、ABS)のプロフィル2を被覆する本発明の多層フィルム1の横断面図。
【図2】セルロースまたはリグノセルロース材料をベースにしたサンドイッチパネルの横断面図で、サンドイッチパネル3はクラフト紙6からなる基材(この基材にはフェノール樹脂が含浸されている)と、木材の層5と、接着剤の層4とを有し、本発明の多層フィルム1は接着剤の層4上に形成される。
【図3】セルロースまたはリグノセルロース材料をベースにしたサンドイッチパネル7の横断面図で、サンドイッチパネル7はクラフト紙6からなる基材(この基材にはフェノール樹脂が含浸されている)と、2つの木材の層5、5’と、2つの接着剤の層4、4’とを有し、本発明の2枚の多層フィルム1、1’は接着剤の層4、4’上に形成される。
【図4】チップボードは接着剤を用いて互いに接着された圧縮木材チップまたは繊維から成るチップボード8を本発明の多層フィルム1で被覆した時の横断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)70〜100重量%、好ましくは90〜100重量%のフルオロポリマーと、0〜30重量%、好ましくは0〜10重量%のアクリルポリマーとら成る表面層と、(2)50〜100重量%のアクリルポリマーと、0〜50重量%のフルオロポリマーと、1〜10重量%の紫外線安定剤と、0〜50重量%の衝撃改質剤とを含む接着層とを有する多層フィルムの、揮発性化合物を放出する基材の保護での使用において、
上記表面層の厚さが2〜15μm、好ましくは2〜10μm、さらに好ましくは3〜8μmで、上記接着層の厚さが30〜75μm、好ましくは30〜60μm、さらに好ましくは30〜50μmであることを特徴とする使用。
【請求項2】
上記接着層が50〜100重量%のアクリルポリマーと、1〜10重量%の紫外線安定剤と、0〜50重量%の衝撃改質剤とを含む請求項1に記載の使用。
【請求項3】
上記接着層が90〜99重量%のアクリルポリマーと、1〜10重量%の紫外線安定剤とを含む請求項2に記載の使用。
【請求項4】
上記フルオロポリマーが鎖中に開いて重合するビニル基と、このビニル基に直接結合した少なくとも一つのフッ素原子、フルオロアルキル基またはフルオロアルコキシ基とを有する化合物の中から選択される少なくとも一種のモノマーからのポリマーである請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
上記フルオロポリマーが下記(1)〜(3)の中から選択される請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用:
(1) フッ化ビニリデン(VDF)のホモポリマーおよび好ましくはVDFを少なくとも50重量%含む、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、トリフルオロエチレン(VF3)およびテトラフルオロエチレン(TFE)から選択されるコモノマーとのコポリマー、
(2) トリフルオロエチレン(VF3)のホモポリマーおよびコポリマー、
(3) クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)および/またはエチレン単位の残基(任意成分としてVDFおよび/またはVF3をさらに含むことができる)からなるコポリマー、特にターポリマー。
【請求項6】
上記フルオロポリマーが少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%、さらに好ましくは少なくとも85重量%のPVDFを含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
上記アクリルポリマーがメチルメタクリレートのホモポリマーまたはメチルメタクリレートを少なくとも50重量%含むコポリマーである請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
上記アクリルポリマーが0〜20重量%、好ましくは5〜15重量%の少なくとも一種の別のアルキル(メタ)アクリレートを含む請求項7に記載の使用。
【請求項9】
アルキル(メタ)アクリレートがメチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートおよび/または2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートの中から選択される請求項8に記載の使用。
【請求項10】
上記アクリルポリマーが酸、酸塩化物、アルコール、無水物またはウレイド官能基を有するモノマーを含む請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
上記アクリルポリマーが0.5〜15重量%、好ましくは1〜10重量%の酸、酸塩化物、アルコール、無水物またはウレイド官能基を有するモノマーを含む請求項10に記載の使用。
【請求項12】
上記多層フィルムが上記表面層上剥離可能な保護層をさらに有する請求項1〜11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
剥離可能な保護層が、(i) 飽和ポリエステル(例えばPET、PBT、コポリエステルおよびポリエーテルエステル)、(ii)ポリオレフィンのホモポリマーまたはコポリマー(例えばポリエチレンおよびポリプロピレン)、(iii)ポリアミドまたは(iv)PVCの中から選択される材料から成る請求項12に記載の使用。
【請求項14】
被保護基材が熱可塑性材料である請求項1〜13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
上記熱可塑性材料がPVCまたはABSである請求項14に記載の使用。
【請求項16】
被保護基材が熱硬化性材料である請求項1〜13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
上記熱硬化性材料が不飽和ポリエステルまたはビニルエステル樹脂と反応性溶剤との反応で得られたものである請求項16に記載の使用。
【請求項18】
被保護基材が接着剤を含浸したセルロースまたはリグノセルロース材料である請求項1〜13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
上記のセルロースまたはリグノセルロース材料がチップボードを形成する圧縮製品を製造するための圧縮された木材、紙、厚紙、木材チップまたは繊維である請求項18に記載の使用。
【請求項20】
被保護基材が、接着剤を含浸した複数のセルロースまたはリグノセルロース材料の層を積層して得られるサンドイッチパネルである請求項1〜13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
接着剤がホットメルト型の接着剤である請求項18〜20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
接着剤が尿素、ホルムアルデヒド、フェノールまたはメラミンのような反応性化合物の縮合によって得られる請求項18〜20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
接着剤がセルロースまたはリグノセルロース材料の表面または全体に含浸される請求項18〜22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
接着剤が表面または全体に含浸されたセルロースまたはリグノセルロース材料/請求項1〜11のいずれか一項に記載の接着層/請求項1または請求項4〜11のいずれか一項に記載の表面層をこの順番で有する多層構造体。
【請求項25】
サンドイッチパネル/請求項1〜11のいずれか一項に記載の接着層/請求項1または請求項4〜11のいずれか一項に記載の表面層をこの順番で有する多層構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−531329(P2008−531329A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556573(P2007−556573)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/002196
【国際公開番号】WO2006/089805
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(591004685)アルケマ フランス (112)
【Fターム(参考)】