説明

フルベストラント異性体の分離

本発明は、逆相カラム又はキラルカラムを用いてHPLC上にフルベストラント(fulvestrant)試料を置く工程、その試料を第一移動相と第二移動相を有する溶離物にてその試料を溶離する工程、そしてカラムからフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)A又はフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bの純化された留分を収集する工程を含むフルベストラント(fulvestrant)の異性体を分離する方法を含む。本発明は、HPLCにより決定される99.5%の純度のフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)A又はフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆相HPLC方式およびキラルHPLC方式を用いてフルベストラント(fulvestrant)のジアステレオマーを分離する方法を含み、そしてその方法にて生成されるジアステレオマーを純化したフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Aとフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bとを含む。
【背景技術】
【0002】
多くの胸部ガンはエストロゲン受容体(ER)を有し、そしてこうした腫瘍の増殖がエストロゲンにより刺激されることになる。フルベストラント(fulvestrant)は、エストロゲン受容体アンタゴニストであり、エストラジオールに適応可能な親和性にて競合的にエストロゲン受容体に結合する。フルベストラント(fulvestrant)は、人の胸部ガン細胞のEPタンパク質を下方調節する。
【0003】
フルベストラント(fulvestrant)の化学名は、7-α-[9-(4,4,5,5,5,-ペンタフルオロペンチルスルフィニル)ノニル]エストラ-1,3,5-(10)-トリエン-3,17-β-ジオールであり、それは以下の化学構造を有する。
【0004】
【化1】

【0005】
フルベストラント(fulvestrant)は、FASLODEX(商標)の名称にて商業的に入手可能である。初期胸部ガンを有する閉経後の女性に外科手術する15日〜22日前にFASLODEX(商標)を単一投与し治療した臨床試験において、投与量の増大に伴いERの下方調節が増大することを実証した。
【0006】
これは、エストロゲン調節タンパク質としてのプロゲステロンの発現において投与量と関連した減少に関係する。さらにER経路に及ぼすこれらの影響は、細胞増殖の指標であるKi67標識指数の減少と関連している。
【0007】
フルベストラント(fulvestrant)は、側鎖の硫黄原子においてエピマーである2種類のジアステレオマーの混合体として存在する。これら2種類のジアステレオマーは、フルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Aおよびフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bとして知られている。1の純粋なジアステレオマーの合成の合成経路は、文献においても又は提案されている方法においても全く記載されていない。本発明は、フルベストラント(fulvestrant)ジアステレオマーの有効な分離方法を提供する必要性を解決するために提示する。
【発明の開示】
【0008】
発明の簡単な説明
本発明の1例としては、逆相系(reverse phase system)を用いるHPLC上にフルベストラント(fulvestrant)試料を置き、第一移動相と第二移動相を有する非直線勾配方式を用い、試料を2の移動相において溶出し、そしてHPLCで分離された異性体を検出する工程を含み、ここで第一移動相が水または水性緩衝液であり、そして第二移動相がアセトニトリル、テトラヒドロフラン、又はメタノールである、フルベストラント(fulvestrant)ジアステレオマーの検出方法を含む。
【0009】
フルベストラント(fulvestrant)試料は、ラセミ混合物などのフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Aとフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bとの混合物、又はフルベストラント(fulvestrant)スルホキシドAとフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bとのうちいずれかが強化された混合物で可能である。
【0010】
逆相カラムの充填剤は、C8(オクチル)、C18(オクタデシル)、フェニル、ペンタフルオロフェニル、又はフェニルヘキシルでよく、そして好ましくはC8(オクチル)又はC18(オクタデシル)にて良い。その方法は、第一移動相は、約40容量%〜約70容量%の初期量を有し、そして第二移動相は、約30容量%〜約60容量%の初期量を有する。好ましくは、第一移動相は、約40容量%〜約0容量%の最終量を有し、そして第二移動相は、約100容量%〜約50容量%の最終量を有する。
【0011】
本発明の別の例は、キラルカラム方式を有するHPLC上にフルベストラント(fulvestrant)試料を置き、第一移動相と第二移動相を有する定量溶媒系を用いる2の移動相により試料を溶出し、そしてカラムからフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)A又はフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bを純化した画分を収集する工程を含み、ここで第一移動相が少なくとも1種のC5〜C10のアルカンであり、そして第二移動相がC3のアルコールである、フルベストラント(fulvestrant)ジアステレオマーを分離する方法を含む。
【0012】
キラルカラムの充填剤は、アミローストリス(3,5-ジメチルフェニルカルバメイト)、β-シクロデキストリン、セロビオヒドロラーゼ、セレクタ R-(-)-N-(3,5-ジニトロベンゾイル)-フェニルグリシン、又はセルローストリス(3,5-ジメチルフェニルカルバメイト)であり、そして好ましくはキラルカラムの充填剤は、アミローストリス(3,5-ジメチルフェニルカルバメイト)である。カラムは、粒子の粒度が約3μm〜約10μmの充填剤を有し、そして好ましくは、カラムは、粒子の粒度が約5μmの充填剤を有す。好ましくは、キラルカラム方式を使用した場合、第一移動相はn-ヘキサンであり、そして第二移動相はイソプロパノールである。第一移動相は、約75容量%〜約95容量%の量を提示し、そして第二移動相は、約5容量%〜25容量%の量を提示する。好ましくは、第一移動相は、約85容量%の量を提示し、そして第二移動相は、約15容量%の量を提示する。
【0013】
キラルカラムを用いてフルベストラント(fulvestrant)ジアステレオマーを分離する方法は、有機溶媒中にフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)A又はフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bを溶解し混合物を形成し、そしてその混合物からフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)A又はフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bを沈殿させることにより、純化した留分からフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)A又はフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bを結晶化することをさらに含むことができる。
【0014】
典型的な有機溶媒は、酢酸エチル又はトルエンである。混合物を還流するように加熱し、その後約0℃〜約25℃まで冷却する、好ましくは混合物を約4℃の温度まで冷却する。さらに本発明の別の例は、HPLCにより決定されるように、異性体の純度が99.5%であるフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)A又はフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の詳細な説明
本発明は、フルベストラント(fulvestrant)の異性体を検出および/又は分離する方法を含む。その方法は、フルベストラント(fulvestrant)の異性体の一方を増強するため、又は完全に単離するために使用することができる。その方法は、調製規模又は工業規模の異性体分離を含め、小規模又は大規模で使用できる。
【0016】
フルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)異性体の分離方法は、フルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)の標準的な調製に使用でき、ここで標準的なスルホキシドは、1のフルベストラント・スルホキシド(Fulvestrant・Sulfoxide)異性体である。標準物質は、フルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Aおよび/又はフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bの存在を質的又は量的に決定するために使用できる。
【0017】
本発明は、カラムおよび2の移動相にて逆相方式かキラル方式のいずれかを用い、HPLC構成にフルベストラント(fulvestrant)試料を置くことによるフルベストラント(fulvestrant)ジアステレオマーの分離方法を含む。移動相の選択は、以下詳細に記載するように使用されるカラム方式にて決定される。本発明の1例は、逆相方式を用いるHPLC上にフルベストラント(fulvestrant)試料を置き、第一移動相と第二移動相とを有する非直線勾配方式を用いて試料を2の移動相にてより溶出し、そしてHPLCにより分離した異性体を検出する工程を含み、第一移動相が水または水性緩衝液であり、そして第二移動相がアセトニトリル、テトラヒドロフラン、又はメタノールである、フルベストラント(fulvestrant)ジアステレオマーの検出方法を含む。
【0018】
本発明の別の例は、キラルカラム方式を有するHPLC上にフルベストラント(fulvestrant)試料を置き、第一移動相と第二移動相を有するアイソクラチック溶媒系を用いる2の移動相により試料を溶出し、そしてそのカラムから分離した異性体の留分を収集する工程を含み、ここで第一移動相が少なくとも1のC5〜C10のアルカンであり、そして第二移動相がC3のアルコールである、フルベストラント(fulvestrant)のジアステレオマーの分離方法を含む。
【0019】
典型的には、本方法における開始物質として使用されるフルベストラント(fulvestrant)は、フルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Aとフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bとの混合物である。この混合物は、2の異性体のラセミ混合物又は45:55の混合異性体など、2の異性体の一方を強化した混合物であっても良い。従ってフルベストラント(fulvestrant)は、純化されているか、異性体が分離されるがまだ純化されないフルベストラント(fulvestrant)で良い。
【0020】
或いは、フルベストラント(fulvestrant)試料は、たとえば結晶化後に得られた純化されたフルベストラント(fulvestrant)であって良く、そのため異性体が上記方法を用いることにより分離される。分離において開始物質として使用されるフルベストラント(fulvestrant)は、本明細書に引用により組み入れられた米国特許番号第4,659,516号などの技術的に開示された方法を用いて生成することができる。
【0021】
HPLCのカラムは、分離中に使用される移動方式を決定することになる。1例において本発明は、固体担体粒子を有する逆相カラムを用いフルベストラント(fulvestrant)ジアステレオマーの検出を含む。典型的に固体担体粒子はシリカ誘導体である。
適切なシリカ誘導体は、C8(オクチル)、C18(オクタデシル)、フェニル、ペンタフルオロフェニル、又はフェニルヘキシルを含むがそれに限定されない。好ましくは、シリカ誘導体は、C8(オクチル)又C18(オクタデシル)であり、たとえばAlltechによる商業的に入手できるAllitima C18などであり。選択肢としてカラムはキラルカラムにて可能である。
【0022】
典型的なキラルカラムは、アミローストリス(3,5-ジメチルフェニルカルバメイト)、β-シクロデキストリン、セロビオヒドロラーゼ、セレクタ R-(-)-N-(3,5-ジニトロベンゾイル)-フェニルグリシン、又はセルローストリス(3,5-ジメチルフェニルカルバメイト)を含むがそれに限定されない。好ましくは、キラルカラムは、アミローストリス(3,5-ジメチルフェニルカルバメイト)である。
【0023】
商業的に入手可能なキラルカラムは、ChiraDex(Merek KGaA,Germany)、Chiracell(登録商標)OD(Daicel Chemical Industries,Ltd.,Japan)、Chiral−CBH(ChromTech,Ltd.,UK)、Bakerbond(登録商標)DNBPG(covalent)(J.T.Baker,USA)、およびChiralpak(登録商標) AD-H (Daicel Chemical Industries,Ltd.,Japan)を含むがそれに限定されない。
キラルカラムは、一般式:
【0024】
【化2】

【0025】
(式中「n」は重合体を示す)
の固定充填剤である。
上記の商業的に入手可能なキラルカラムで、重合体の長さは、試料中の含有に応じて変化させることができる。典型的にカラムに充填する粒子は、約3μm〜約10μmの粒度である。好ましくはカラムに充填する粒子は、約5μmの粒度である。典型的にカラムの長さは、約100mm〜約250mmであり、そして直径が約4.0mm〜約20mmである。
【0026】
ジアステレオマーを分離する条件は、その方法が逆相カラムを使用するかキラルカラムを使用するかに依存することになる。従ってそれぞれを以下別々に記載する。
逆相カラム使用する場合、溶離系は非直線勾配である。換言すると2の移動相のそれぞれの量が時間に伴い変化する。典型的には移動相は、第一移動相と第二移動相とを含む2相方式である。典型的には、第一移動相は水又は緩衝性水溶液である。好ましくは、第一移動相は水である。
【0027】
この系のために適切な緩衝性水溶液は、水中0.1%のH3PO4(Sol,85%)、水中0.1%又は0.01%のトリフルオロ酢酸、水中0,1%の蟻酸、pH3.2のリン酸緩衝液(たとえば1800mlの水中7.2gのNaH2PO4に、水中2.5g/mlのH3PO4を含む200mlの溶液を加え、必要であればpH値を調整し、そして0.2μmのフイルターを通す)、又はイオン対緩衝液(たとえば、1000mlの水2.9gのラウリル硫酸ナトリウムと2.3gのH3PO4(Sol,85%))、を含むがこれらに限定されない。
【0028】
典型的には、第二移動相は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、又はメタノールである。好ましくは、第二移動相はアセトニトリルである。第一移動相は、初期量を約40容量%〜約70容量%と変化することができ、そして好ましくは初期量を約50容量%〜約60容量%と変化することができる。第一移動相は、最終量を約40容量%〜約0容量%と変化することができ、そして好ましくは最終量を約30容量%に変化することができる。
【0029】
第二移動相は、初期量を約30容量%〜約60容量%と変化することができ、そして好ましくは初期量を約40容量%〜約50容量%とへ変化することができる。第二移動相は、最終量を約100容量%〜約50容量%と変化することができ、そして好ましくは最終量を溶媒混合液の容量当り約100%〜約70%と変化することができる。より好ましくは、最初に溶離剤は、第一移動相の約50容量%と第二移動相の約50容量%とであり、それが60分間溶出される。その後、次の40分間、溶離剤は30容量%の第一移動相と70容量%の第二移動相との混合物へと直線的に変化する。
【0030】
典型的な逆相カラムの温度は約10℃〜約40℃であり、そして好ましくは約15℃〜約20℃である。典型的には流速は、約0.5ml/分〜約1.5ml/分であり、そして好ましくは約0.5 ml/分〜約1.0ml/分である。
【0031】
キラルカラムを使用する場合、溶出方式は無勾配方式である。換言すると移動相は、時間に伴い変化しない固定した量の少なくとも2の溶媒を含む。溶媒の組み合わせは、溶媒の混合物として、あるいは第一移動相と第二移動相とを固定比率で組み合わされた少なくとも2の移動相として提示できる。溶媒方式が移動相の組み合わせである場合、第一移動相はC5〜C10アルカンであり、そして第二移動相は1-プロパノール又は2-プロパノールなどのC3アルコールである。好ましくは、第一移動相は、n-ヘキサンそして/又はヘプタンであり、そして第二移動相はイソプロパノールである。溶媒の構成は、2の移動相を組み合わせる場合において、2相のうち第一移動相を約75容量%〜約95容量%の量で、そして第二移動相を約5容量%〜約25容量%の量にて組み合わせる。好ましくは組み合わされた場合、溶媒方式は、約85容量%の第一移動相、及び15容量%の第二移動相である。典型的な溶出時間は約45分である。
【0032】
典型的なキラルカラムの温度は、約10℃〜約40℃であり、そして好ましくは、カラム温度は約30℃〜約35℃である。典型的に流速は約0.2ml/分〜約5ml/分である。好ましくは、流速は約0.6ml/分〜約1.3ml/分であり、そしてより好ましくは、流速は約0.75ml/分〜約0.9ml/分である。この方式のための検出器は、商業的に入手可能なUV方式で可能である。典型的には検出器は、220nmおよび/又は240nmに設定される。
【0033】
さらに本発明は、フルベストラント(fulvestrant)ジアステレオマーのそれぞれを結晶化することを含む。いったん各ジアステレオマーが、ラセミ混合物の状態に分離され、そして溶離相を蒸発させた後に油性残渣が得られると、各ジアステレオマーが有機溶媒から沈殿又は結晶化される。適切な有機溶媒は、酢酸又はトルエンを含むがそれに限定されない。典型的に溶媒が残渣に加えられ、そして還流するように加熱しその後冷却する。
【0034】
好ましくは加熱された溶媒を約0℃〜約25℃に冷却し、そしてより好ましくは加熱された溶媒を約4℃に冷却する。結晶形ジアステレオマーを、ろ過法など通常当業者が周知の方法にて収集することができる。従ってその方法により、クロマトグラフィとして純化した固体フルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)A又はフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bが得られる。上記方法は、HPLCにてジアステレオマーの少なくとも1を99.5%以上の純度にて生成できる。
【0035】
従って本発明の別の例は、実質的に異性体として純粋なフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)A又は実質的に異性体として純粋なフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bを含む。本明細書に使用される場合、特に断らない限り、「実質的に異性体として純粋」とは、HPLCの面積により決定される場合、70%以上の1の異性体を有するフルベストラント(fulvestrant)の意味である。
【0036】
好ましくは「実質的に異性体として純粋」とは、HPLCの面積により決定される場合、80%以上の1の異性体を有するフルベストラント(fulvestrant)の意味であり、より好ましくは「実質的に異性体として純粋」とは、HPLCの面積により決定される場合に、80%以上の1の異性体を有し、より好ましくは90%より多く、さらにより好ましくは95%より多く有するフルベストラント(fulvestrant)の意味である。最も好ましくは、「実質的に異性体として純粋」の用語は、HPLCの面積により決定される場合に、99%以上の1の異性体を有するフルベストラント(fulvestrant)の意味である。
【0037】
さらに本発明は、実質的に異性体として純粋なフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)A又はフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)B、および医薬的に受け入れ可能な賦形剤を含む医薬組成物を含む。さらに上記方法は、Simulated Moving Bed方式を使用して工業規模で適応することができる。これは、無勾配調製による精製法として適切な装置である。たとえばキラル方式を用いフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide) Aとフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bとの混合物を有するフルベストラント(fulvestrant)を純化するために適用することができる。
【0038】
特定の好ましい例を参照し本発明が記載されているが、別の例は、本明細書を考慮することにより当業者が明らかになるであろう。本発明は、本発明の方法を詳細に記載した以下の実施例を引用することでさらに明確にされ得る。物質にも方法にも共に多くの変更が、本発明の範囲を逸脱することなく実施できることは、当業者に明らかになるであろう。
【実施例】
【0039】
実施例1:勾配逆相HPLC法
5μmの粒度(Alltima C18,Alltech)を有するキラルカラムC18(250mm x 4.6mm)を備えた、Agilent Technologies Mod.1100液体クロマトグラフ上にて、分離が行なわれた。2の移動相がHPLCユニットに用いられた。第一移動相は水であり、そして第二移動相アセトニトリルである。溶離物の流速を0.5ml/minに設定し、そしてカラム温度を15℃に設定した。試験試料は、アセトニトリルとメタノールとの容量比が50:50の溶液中に1.0mg/mlのフルベストラント(fulvestrant)を含む。注入容量は2μlであった。
【0040】
最初に50%の第一流動層と50%の第二流動層を、本構成を介して60分間(0分から60分間の時間)ポンプ送液した。60分から100分の時間後に、溶離組成物を、50%の第一移動相と50%の第二移動相から30%の第一移動相と70%の第二移動相へ直線的な系で変化させた。HPLCは、bw = 10nmにてλ = 220nmで、基準信号 = 450nm, bw = 80nmのDAD検出器を具備していた。フルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Aの保持時間は、62.4分であり、そしてフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bの保持時間は、63.1分である。
【0041】
図1は、本分離のHPLCクロマトグラムを示している。観察できるように、分離体は、1のピークが保持時間62.38分(フルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)A)で現れ、そして第二ピークが63.12分(フルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)B)で現れるように、実質的に分離されない2個のピークを有する。この方法は、異性体の比率を決定するに十分な精度であるが、調製スケールでフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Aとフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bとに分離しない。
【0042】
実施例2:キラルHPLC法
本分離は、5μmの粒子の粒度(CHIRALPAK AD-H,CHIRAL)を有するシリカゲルに被覆されたアミロース・トリス(3,5-ジメチルフェニルカルバメイト)(250mm x 4.6mm)で、キラルカラムを備えたAgilent Technies Mod.1100 液体クロマトグラフ上で行われた。2の移動相が用いられた、すなわち第一移動相がn-ヘキサンであり、そして第二移動相は1-プロパノールであった。溶離相の流速を0.9ml/分に設定し、そしてカラム温度を30℃に設定した。
【0043】
50mgのフルベストラント(fulvestrant)を含む試験試料を、n-ヘキサン/1-プロパノールの容量比が85:15の混合物50mlにて希釈した。注入容量は10μlであった。85%の第一移動相と15%の第二移動相の混合物を、等量方式で45分間(すなわち0分から45分の時間)ポンプ送液した。
HPLCは、λ = 220nmのDAD検出器を備えていた。図2は、キラルカラムを用いた分離を示している。フルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Aの保持時間が17.97分、そしてフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bの保持時間が21.58分であった。
【0044】
実施例3:キラル調製HPLC法
本分離は、5μmの粒子の粒度(CHIRALPAK AD-H,CHIRAL)を有するシリカゲルに被覆されたアミロース・トリス(3,5-ジメチルフェニルカルバメイト)(250mm x 4.6mm)で、キラルカラムを備えたAgilent Technies Mod.1100 液体クロマトグラフ上で行われた。2の移動相が用いられ、すなわち第一移動相がn-ヘキサンであり、そして第二移動相は1-プロパノールであった。溶離相の流速を0.75ml/minに設定し、そしてカラム温度を35℃に設定した。
【0045】
5mg/mlのフルベストラント(fulvestrant)を含む試験試料を、n-ヘキサン/1-プロパノールの容量比が85:15(v/v)の混合物にて希釈した。注入容量は600μlであった。85%の第一移動相と15%の第二移動相の混合物を、等量方式で30分間(すなわち0分〜30分の時間)ポンプ送液した。
HPLCが、λ = 220nm、および240nmのDAD検出器を備えていた。フルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Aの保持時間が17.9分、そしてフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bの保持時間が21.2分であった。分留物を自動装置にて0.5分ごとに収集した。
【0046】
フルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Aを含む留分を収集し、そして溶媒を、回転式蒸発器を用いて蒸発乾燥することで除去し残留油性物が得られた。2の油性物を、フルベストラント(fulvestrant)APIの純度コントロールとして適用された RP HPLC分析法により分析し、両異性体が99.9%を越えるHPLCの純度を示した。この実施例において、図3および図4がそれぞれの異性体のHPLCのクロマトグラムを示すように分離が終了する。
【0047】
図3は、フルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)AのHPLCのクロマトグラムを示し、そして図4は、フルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)BのHPLCのクロマトグラムを示している。分析法は、以下の表に記載されている。
【0048】
【表1】

【0049】
実施例1の条件を用い、各異性体のHPLCのクロマトグラムが得られた。もし存在すれば実施例1のHPLCの条件が、第二の異性体の存在を示すことができるが、しかしながらクロマトグラムは1の異性体のみを含む。図5は、フルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Aのクロマトグラムを示し、図6は、フルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bのクロマトグラムを示す。
【0050】
実施例4:ジアステレオマー的に純粋なフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Aの結晶化
2のジアステレオマー残渣を、酢酸エチル又はトルエンなどの有機溶媒にて個別に結晶化し、そして沈殿し、そして2の固体ジアステレオマー異性体をろ過することにより収集した。2の油性残留物を、それぞれ2の油性残渣を、酢酸エチル(0.4gの残渣に対し4ml)にて処理するようにそれぞれ提示した。処理は、混合物を溶解するまで還流温度に加熱、その後4℃で24時間冷却することを含む。固体をろ過することで収集した。
【0051】
或いは、固体を室温でトルエン(0.4gの残渣に対し4ml)にて処理し沈殿を迅速に導き、それが4℃で24時間後に完了した。固体フルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Aおよびフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bを、結晶構造および絶対配置を決定するためにNMRおよびXDRを用い分析した。
【0052】
実施例5:キラルHPLC法
フルベストラント(fulvestrant)異性体の混合物の分離は、10μm粒度の粒子(CHIRALPAK OD,DAICEL)を有するシリカゲルに被覆されたセルロース・トリス(3,5-ジメチルフェニルカルバメイト)(250mm x 4.6mm)で、キラルカラムを備えたWaters 600 E 液体クロマトグラフ上で行われた。2の移動相が用いられた、すなわち第一移動相がn-ヘキサンで、そして第二移動相は2-プロパノールであった。溶離物の流速を1.0ml/minに設定し、そしてカラム温度を25℃に設定した。
【0053】
67mgのフルベストラント(fulvestrant)を含む試験試料を、n-ヘキサン/2-プロパノールの容量比が85:15の50mlの混合物にて希釈した。注入容量は5μlであった。85%の第一移動相と15%の第二移動相の混合物を、等量方式で20分間(すなわち0分〜20分の時間)ポンプ送液した。HPLCが、λ = 210nmのPAD検出器を備えていた。
HPLCを介し試料を処理した後、各異性体を分離した。フルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Aの保持時間が10.1分、そしてフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bの保持時間が11.7分であった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、実施例1において得られたフルベストラント(fulvestrant)のHPLCクロマトグラムを示している。
【図2】図2は、実施例2において得られたフルベストラント(fulvestrant)のHPLCクロマトグラムを示している。
【図3】図3、実施例3において得られたフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Aに対するHPLCクロマトグラムを示している。
【図4】図4は、実施例3において得られたフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)BのHPLCクロマトグラムを示している。
【図5】図5は、実施例3の方法により分離され、そして実施例1のHPLC方法を用いて得られたフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)AのHPLCクロマトグラムを示している。
【図6】図6は、実施例3の方法により分離され、そして実施例1のHPLC方法を用いて得られたフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)BのHPLCクロマトグラムを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルベストラント(fulvestrant)ジアステレオマーの検出方法において、
逆相方式を用いHPLC上にフルベストラント(fulvestrant)試料を置き、
第一移動相と第二移動相を有する非直線勾配方式を用いる2の移動相により試料を溶出し、そして
HPLCにより分離した異性体を検出する、
工程を含み、第一移動相が水または水性緩衝液であり、そして第二移動相がアセトニトリル、テトラヒドロフラン又はメタノールである、検出方法。
【請求項2】
逆相カラムの充填剤が、C8(オクチル)、C18(オクチルデシル)、フェニル、ペンタフルオロフェニル、又はフルオロフェニルである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
逆相カラムの充填剤が、C8(オクチル)又はC18(オクチルデシル)である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記第一移動相の初期量が約40容量%〜約70容量%であり、そして前記第二移動相の初期量が約30容量%〜約60容量%である、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記第一移動相の最終量が約40容量%〜約0容量%であり、そして前記第二移動相の最終量が約100容量%〜約50容量%である、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記フルベストラント(fulvestrant)試料が、フルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Aとフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bの混合物である、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記フルベストラント(fulvestrant)試料が、フルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Aとフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bとのラセミ混合物、又はそのいずれかが強化された混合物である、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
カラム温度が、約10℃〜約40℃である請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
フルベストラント(fulvestrant)ジアステレオマーの分離方法において、
キラルカラム方式を有するHPLC上にフルベストラント(fulvestrant)試料を置き、
第一移動相と第二移動相とを有する定量溶媒方式を用いる2の移動相により試料を溶出し、そして
フルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)A又はフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bを純化した画分をカラムから収集する、
工程を含み、ここで前記第一移動相は少なくとも1のC5〜C10アルカンであり、そして前記第二移動相はC3アルコールである、ジアステレオマー分離方法。
【請求項10】
前記キラルカラムの充填剤が、アミロース・トリス(3,5-ジメチルフェニルカルバメイト)、β-シクロデキストリン、セロビオヒドロラーゼ、セレクタ R-(-)-N-(3,5-ジニトロベンゾイル)-フェニルグリシン、又はセルローストリス(3,5-ジメチルフェニルカルバメイト)である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記キラルカラムの充填剤が、アミロース・トリス(3,5-ジメチルフェニルカルバメイト)である、請求項8または9記載の方法。
【請求項12】
前記カラムが、粒子の粒度が約3μm〜10μmの充填剤を有する請求項8〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記カラムが、粒子の粒度が約5μmの充填剤を有する請求項8〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記第一移動相がn-ヘキサンであり、そして前記第二移動相がイソプロパノールである、請求項8〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記第一移動相が、約75容量%〜約95容量%の量を提示し、そして前記第二移動相が、約5容量%〜25容量%の量を提示する請求項8〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記第一移動相が、約85容量%の量を提示し、そして前記第二移動相が、約15容量%の量を提示する請求項8〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
充填剤が一般化学式:
【化1】

(式中「 n 」は重合体を示す)、
を有する、請求項8〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
フルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)A、又はフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bを有機溶媒中に溶解し混合物を生成し、そしてその混合物からフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)A、又はフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bを沈殿させることにより、純化した画分からフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)A、又はフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bを結晶化することをさらに含む請求項8〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記有機溶媒が、酢酸エチル又はトルエンである請求項18記載の方法。
【請求項20】
混合物を還流するように加熱し、その後約0℃〜約25℃の温度に冷却する、請求項18〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
混合物を約4℃の温度に冷却する、請求項18〜20のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
フルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)A又はフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bが、HPLCにより決定された場合に99.5%の純度である、請求項18〜21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
HPLCにより決定される場合に、40%以下、好ましくは20%以下、そしてより好ましくは10%以下のフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bを有するフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)A。
【請求項24】
HPLCにより決定される場合に、5%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、そして最も好ましくは0.2%以下のフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bを有する、請求項23記載のフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)A。
【請求項25】
HPLCにより決定される場合に、40%以下、好ましくは20%以下、そしてより好ましくは10%以下のフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Aを有するフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)B。
【請求項26】
HPLCにより決定される場合に、5%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、そして最も好ましくは0.2%以下のフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Aを有する、請求項25記載のフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)B。
【請求項27】
請求項23又は24記載のフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)A、および医薬的に受け入れ可能な賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項28】
請求項25又は26記載のフルベストラント・スルホキシド(fulvestrant・sulfoxide)Bおよび医薬的に受け入れ可能な賦形剤を含む医薬組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2008−521941(P2008−521941A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544658(P2007−544658)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/039389
【国際公開番号】WO2007/044662
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(505216117)シコール インコーポレイティド (35)
【Fターム(参考)】