説明

フレキシブルエレクトロニクスデバイス基板およびその製造方法

【課題】フレキシブルデバイス加工を行う際の耐熱寸法安定性に優れたフレキシブルエレクトロニクスデバイス基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス板の片面に粘着層を有する工程部材およびその粘着層面に二軸配向ポリエステルフィルムが積層された積層体からなり、積層体を200℃で30分間熱処理した後の積層体の最大寸法変化率が0.0%以上0.1%以下であって、該積層体を用いてフレキシブルエレクトロニクスデバイス加工を行い、該加工後に工程部材を剥離して得られるフレキシブルエレクトロニクスデバイス基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフレキシブルエレクトロニクスデバイス基板およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、フレキシブルデバイス加工を行う際の耐熱寸法安定性に優れたフレキシブルエレクトロニクスデバイス基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートの二軸延伸フィルムは、優れた機械的性質、耐熱性、耐薬品性を有するため、磁気テープ、強磁性薄膜テープ、写真フィルム、包装用フィルム、電子部品用フィルム、電気絶縁フィルム、金属ラミネート用フィルム、ガラスディスプレイ等の表面に貼るフィルム、各種部材の保護用フィルム等の素材として広く用いられている。
【0003】
液晶ディスプレイに代表される画像表示装置には、従来ガラス基板が用いられてきた。しかし、近年、画像表示装置は薄型、軽量化、大画面化、形状の自由度、曲面表示という要求から、重くて割れやすいガラス基板から高透明高分子フィルム基板への検討が行われてきている。
特に近年では有機ELに代表される自発光素子の開発が進み、液晶ディスプレイのようにバックライトを採用せざるを得ないがために多くの部材を必要とする画像表示装置にとって変わろうとしており、このような用途でもガラスの欠点のひとつである割れ易さや重さを改良したいという要求が年々高まってきている。
【0004】
そこで、高分子フィルム基板としてポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートを含む様々な熱可塑性樹脂が検討されているが、これら高分子フィルム基板はガラス基板に較べて一般に熱に対する寸法変化が大きく、フレキシブルデバイス加工時に高分子フィルム基板に寸法変化が生じ、高繊細なディスプレイの実現が困難であった。そのため、より耐熱寸法安定性の高い材料の1つとして例えば特許文献1のようにポリエチレンナフタレートフィルムが検討されている。また、温度変化に対する寸法安定性を高めることで高繊細なディスプレイを実現すべく、例えば特許文献2において、30〜100℃における温度膨張係数(αt)がフィルムの長手方向および幅方向のいずれも15ppm/℃以下である二軸配向ポリエステルフィルムが提案されている。
【0005】
このように、従来の検討はポリエステルフィルム自体の耐熱特性を改良することにより、フレキシブルデバイス加工における基板の寸法変化を抑制しようとする試みであったが、適用できるポリエステルフィルムが限られ、またそのようなポリエステルフィルムでもまだ十分に対応できないことがあった。
そこで、フレキシブルデバイス加工を行う際のフィルム基板の耐熱寸法安定性について、さらなる向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−9362号公報
【特許文献2】国際公開第2005/110718号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、かかる従来技術の課題を解消し、フレキシブルデバイス加工を行う際の耐熱寸法安定性に優れたフレキシブルエレクトロニクスデバイス基板およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、フレキシブルエレクトロニクスデバイス加工基板の寸法変化は、フレキシブルデバイス加工時に専ら生じるため、高温加工時の寸法変化を抑制することができれば、その後の加工工程および使用環境で更に寸法変化が生じにくいという知見に基き、フレキシブルデバイス加工時にガラス板を含む工程材を一定の耐熱寸法安定性を有するポリエステルフィルムに貼り付けて加工を行えば、加工時の寸法変化を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明の目的は、ガラス板の片面に粘着層を有する工程部材およびその粘着層面に二軸配向ポリエステルフィルムが積層された積層体からなり、積層体を200℃で30分間熱処理した後の積層体の最大寸法変化率が0.0%以上0.1%以下であって、該積層体を用いてフレキシブルエレクトロニクスデバイス加工を行い、該加工後に工程部材を剥離して得られるフレキシブルエレクトロニクスデバイス基板によって達成される。
【0010】
本発明のフレキシブルエレクトロニクスデバイス基板は、その好ましい態様として、積層体を構成する二軸配向ポリエステルフィルムの200℃、30分熱処理後の熱収縮率が0.1%以上1.0%以下であること、二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステルがポリエチレンナフタレンジカルボキシレートであること、フレキシブルエレクトロニクスデバイスがフレキシブル有機ELディスプレイ、電子ペーパー、太陽電池からなる群から選ばれる少なくとも1つであること、のいずれか少なくとも1つを具備する。
【0011】
また本発明は、ガラス板の片面に粘着層を有する工程部材およびその粘着層面に二軸配向ポリエステルフィルムが積層された積層体であり、該積層体を200℃で30分間熱処理した後の積層体の最大寸法変化率が0.0%以上0.1%以下であるフレキシブルエレクトロニクスデバイス用積層体を包含してなる。
【0012】
また本発明は、ガラス板の片面に粘着層を有する工程部材およびその粘着層面に二軸配向ポリエステルフィルムが積層された積層体からなり、積層体を200℃で30分間熱処理した後の積層体の最大寸法変化率が0.0%以上0.1%以下であって、該積層体を用いてフレキシブルエレクトロニクスデバイス加工を行い、該加工後に工程部材から二軸配向ポリエステルフィルムを剥離するフレキシブルエレクトロニクスデバイス基板の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフレキシブルエレクトロニクスデバイス基板は、一定の耐熱寸法安定性を有するポリエステルフィルムをガラス板を含む工程材に貼り付けてフレキシブルデバイス加工を行うことで加工時の寸法変化が抑制され、高繊細なデバイス加工を施すことができ、その後ガラス板を含む工程材を剥離することでフレキシブル性を有する基板として使用できるため、高繊細なディスプレイに好適なフレキシブルエレクトロニクスデバイス基板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳しく説明する。
<工程部材>
(ガラス板)
本発明の工程部材を構成するガラス板は、通常使用される無機ガラス板で構成される。ガラス板の厚みは0.01mm以上10mm以下であることが好ましく、0.5mm以上5mm以下であることがさらに好ましい。ガラス板の厚みはデバイス加工時に破損が生じない範囲内で薄い方がより好ましい。
【0015】
(粘着層)
本発明の工程部材を構成する粘着層は、ガラス基材およびポリエステルフィルムとの粘着性または接着性を有しており、デバイス加工時に粘着特性または接着特性を維持でき、デバイス加工後にポリエステルフィルムから剥離可能であれば特に限定されない。
例えば熱圧着させるタイプの粘着剤、熱または光で硬化させるタイプの粘着剤を用いた層が挙げられ、例えばアクリル系粘着剤を用いることができる。またポリエステルフィルムと剥離する際、そのまま剥離する方法だけでなく、粘着力または接着力を弱める処理を行った上で剥離する方法も含まれる。
【0016】
粘着層の厚みは特に限定されないが、好ましくは3μm以上50μm以下の範囲である。
粘着層はガラス板の片面に塗布して形成され、工程部材を構成する。ガラス板を含む工程部材と二軸配向ポリエステルフィルムを積層する際、粘着層面に二軸配向ポリエステルフィルムが積層される。
【0017】
<二軸配向ポリエステルフィルム>
(ポリエステル)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、芳香族二塩基酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルである。
かかるポリエステルの具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを例示することができる。これらのポリエステルのうち、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートが熱的特性、力学的物性や光学物性等のバランスが良いので好ましい。特に、耐熱性が高く、高い機械的強度を有し、またガスバリア性に優れる、などの点でポリエチレンナフタレンジカルボキシレートが好ましく、さらにポリエチレン−2,6−ジカルボキシレートが最も好ましい。
【0018】
ポリエステルは、ホモポリマー、第三成分を共重合した共重合体、他の樹脂とのブレンドのいずれでもよいが、ホモポリマーが好ましい。
ポリエステルが共重合体である場合、共重合成分として、イソフタル酸、テレフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、p−オキシ安息香酸が例示され、ジオール成分としてはトリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールスルホンのエチレンオキサイド付加物が例示される。かかる共重合成分は、二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステルの全酸成分又は全ジオール成分を基準として10mol%以下であることが好ましく、さらに好ましくは5mol%以下である。
またブレンドの場合は、ポリエステルの具体例の中から、主たる成分以外の種類のポリエステルを用いることができる。
【0019】
本発明のポリエステルは、従来公知の方法、例えばジカルボン酸成分とジオール成分との反応で直接低重合度ポリエステルを得、続いて重合触媒の存在下で重合反応を行う方法で得ることができる。また、他の従来公知の方法として、ジカルボン酸の低級アルキルエステルとジオール成分とをエステル交換触媒を用いて反応させた後、続いて重合触媒の存在下で重合反応を行う方法で得ることができる。
ポリエステルの固有粘度は0.40dl/g以上であることが好ましく、上限は0.90dl/g以下であることが更に好ましい。固有粘度が0.40dl/g未満では工程切断が多発することがある。また固有粘度が0.9dl/gより高いと溶融粘度が高いため溶融押出しが困難であるうえ、重合時間が長く不経済である。
また二軸配向フィルムに製膜した後のポリエステルの固有粘度は0.45dl/g以上0.85dl/g以下であることが好ましく、0.47dl/g以上0.80g/dl以下であることがさらに好ましい。
なお、固有粘度はo−クロロフェノールを溶媒として用いて、35℃で測定した値(単位:dl/g)である。
【0020】
(滑剤)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、滑剤を含有しないか、含有しても本発明の透明性および接着性の課題に影響を与えないような小粒径、少量であることが好ましい。
滑剤を含有する場合、フィルムの重量を基準として1.0重量%以下で含有することが好ましい。また滑剤の平均粒径は特に限定されないが、0.001〜1μmであることが好ましい。
また滑剤の種類は特に特定されず、例えば炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、カオリン、シリカ、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子が挙げられる。
【0021】
(フィルム特性)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、二軸方向に延伸された配向フィルムである。未延伸または一軸ポリエステルフィルムの場合、基板加工温度下で、未延伸方向の収縮が大きく、ガラス板を含む工程部材との貼り合せが剥離する。
【0022】
二軸配向ポリエステルフィルムは、200℃で30分間熱処理した後の熱収縮率が0.1%以上1.0%以下であることが好ましい。かかる熱収縮率は、0.5%以上〜0.60%以下の範囲であることがさらに好ましい。該熱収縮率特性は、フィルムの長手方向(以下、連続製膜方法、縦方向、MD方向と称することがある)、フィルムの幅方向(以下、横方向、TD方向と称することがある)の両方向とも満たすことが好ましい。
フィルムの熱収縮率がかかる範囲にあることにより、工程部材と貼り合せた積層体の状態でフレキシブルデバイス加工を行った際、積層体としての最大寸法変化率特性を満たすことができ、高繊細なデバイス加工を施すことができる。
二軸配向ポリエステルフィルムの熱収縮率をかかる範囲にするためには、延伸倍率2.5倍〜4.0倍で縦方向および横方向に延伸処理を行う方法が挙げられ、さらに、熱固定処理、熱弛緩処理を行うことでより熱収縮率を小さくすることができる。
【0023】
本発明における二軸配向ポリエステルフィルムの厚みは、5μm以上250μm以下であることが好ましい。フィルム厚みがかかる範囲内にあることにより、フレキシブルエレクトロニクスデバイスの基板として使用する場合に必要な強度と屈曲性を具備することができる。該フィルムの厚みが下限に満たない場合は基板に使用したときに十分な強度を発現できないことがある。また該フィルムの厚みが上限をこえる場合は基板に使用したときに自由な屈曲性を得られなくなることがある。
二軸配向ポリエステルフィルムは、100〜180℃における温度膨張係数(αt)が10ppm/℃〜30ppm/℃の範囲にあることが好ましい。
かかるαtは、フィルム長手方向および幅方向のαtを求め、その平均値から求められる。二軸配向ポリエステルフィルムの100〜180℃における温度膨張係数(αt)の上限値は、好ましくは25ppm/℃であり、さらに好ましくは20ppm/℃である。温度膨張係数(αt)がかかる範囲からはずれる場合、工程部材と貼り合せた積層体の状態でフレキシブルデバイス加工を行った際に工程部材との温度膨張係数差が大きくなり、デバイス加工時に積層体のガラス板とポリエステルフィルム間に剥がれが生じることがある。
【0024】
なお、本発明の温度膨張係数は、TMA装置を用い、チャック間距離20mmで40mNの荷重をかけた状態で180℃の温度条件下で30分間前処理後、室温まで降温させ、その後100℃から180℃まで5℃/分の昇温速度で昇温させてフィルムの寸法変化を測定し、下記式(1)により算出した寸法変化率によって求められる。
αt={〔(L2−L1)×106〕/(L1×ΔT)} ・・・(1)
(上式中、L1は100℃時のサンプル長(mm)、L2は180℃時のサンプル長(mm)、ΔTは測定温度差である80(=180℃−100℃)をそれぞれ表す)
かかる温度膨張係数は、フィルムの長手方向、フィルムの幅方向の少なくとも一方について満たすことが好ましく、両方向とも満たすことがさらに好ましい。
【0025】
(塗布層)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、片面に塗布層が形成されていてもよい。塗布層は、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル系樹脂から選ばれる少なくとも1種の水溶性または水分散性高分子樹脂からなることが好ましく、特にポリエステル樹脂とアクリル樹脂の両方を含むのが好ましい。塗布層のポリエステル樹脂は、ガラス転移点(Tg)が0〜100℃、更に好ましくは10〜90℃のものである。該ポリエステル樹脂は、水に可溶性または分散性のポリエステルが好ましい。
【0026】
かかるポリエステル樹脂としては、以下のような多塩基酸またはそのエステル形成誘導体と、ポリオールまたはそのエステル形成誘導体から成る。
多塩基酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2、6ーナフタレンジカルボン酸、1、4ーシクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等が挙げられる。これら酸成分を2種以上用いて共重合ポリエステル樹脂を合成する。
【0027】
また、ポリオール成分としては、エチレングリコール、1、4ーブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1、6ーヘキサンジオール、1、4ーシクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジメチロールプロパン、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加体等が挙げられる。また、これらモノマーが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0028】
本発明で用いる塗布層のアクリル樹脂は、ガラス転移点(Tg)が−50〜50℃、更に好ましくは−50〜25℃のものである。該アクリル樹脂は、水に可溶性または分散性のアクリルが好ましい。
【0029】
アクリル樹脂を形成するモノマーとしては、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、2ーヒドロキシアルキルアクリレート、2ーヒドロキシアルキルメタクリレート、グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートなどのエポキシ基を含有するアクリルモノマー、カルボキシ基またはその塩を含有するアクリルモノマー、アミド基を含有するアクリルモノマー、酸無水物を含有するアクリルモノマー、イソシアネート類、スチレン類、ビニルエーテル類、ビニルトリアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマール酸モノエステル、アルキルイタコン酸モノエステル、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ブタジエン等のモノマーが挙げられる。
【0030】
かかる塗布層は、塗膜を形成させるために、水溶液、水分散液或いは乳化液等の水性塗液の形態で使用されるのが好ましい。塗膜を形成するために、必要に応じて、前記組成物以外の他の樹脂、例えばオキサゾリン基を有する重合体、メラミン、エポキシ、アジリジン等の架橋剤、帯電防止剤、着色剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、滑剤(フィラー、ワックス)などを添加することができる。特に、滑剤を添加することで滑性、耐ブロッキング性が更に良化することができる。
【0031】
水性塗液の固形分濃度は、通常20重量%以下であり、更には1重量%以上10重量%以下であることが好ましい。この割合が下限に満たないと、塗布層が均一に形成されないことがあり、一方、上限を越えると塗剤の安定性や塗布外観が悪化することがある。
【0032】
かかる塗布層は、後述するように二軸配向ポリエステルフィルムの製膜工程において設けることができる。
その後、塗布層面と工程部材の粘着層面とを貼り合せて二軸配向ポリエステルフィルムを積層し、積層体とすることができる。
【0033】
<積層体>
本発明の積層体は、ガラス板と粘着層を含む工程部材と二軸配向ポリエステルフィルムとを、粘着層を介して積層されてなる。
本発明は、該積層体を用いてエレクトロニクスデバイス加工を行うことが最大の特徴であり、フレキシブルデバイス加工が二軸配向ポリエステルフィルム面に施された後、工程部材を剥離してフレキシブルエレクトロニクスデバイス基板を得るものである。
【0034】
かかる積層体は、200℃で30分熱処理した後の積層体の最大寸法変化率が0.0%以上0.1%以下であることが必要である。ここで最大寸法変化率とは、積層体の長手方向、幅方向それぞれについて200℃で30分熱処理後の熱収縮率を求め、いずれか大きい方を最大寸法変化率とする。最大寸法変化率の上限値は0.08%であることが好ましい。最大寸法変化率が下限値に満たない場合、フレキシブルデバイス加工時に積層体が熱膨張し、パターンのアライメントずれが生じ、高精密なパターンの形成が難しい。また、最大寸法変化率が上限値を超える場合、フレキシブルデバイス加工時に積層体の熱収縮によるパターンのアライメントずれが生じ、高精密なパターンの形成が難しい。
【0035】
かかる最大寸法変化率特性は、ガラス板上に粘着層を介して一定の熱収縮率特性を有する二軸配向ポリエステルフィルムを積層させることにより得られ、粘着層を介してガラス板の耐熱寸法安定性にポリエステルフィルムが追随することにより、ポリエステルフィルム上に高繊細なファインピッチ加工を施すことができる。
【0036】
<フレキシブルエレクトロニクスデバイス基板>
本発明のフレキシブルエレクトロニクスデバイス基板は、積層体を用いてエレクトロニクスデバイス加工を行った後、工程部材を剥離して得られ、デバイス加工時はリジッドであるものの回路基板として使用される際はフレキシブル基板として用いられる。該フレキシブルエレクトロニクスデバイス基板は、二軸配向ポリエステルフィルム上に該デバイス加工が施される。また、本基板はデバイス加工時の熱による寸法変化が小さく、パターンのアライメントずれが非常に少ないためファインピッチ加工を施すことができ、高繊細なディスプレイのフレキシブルエレクトロニクスデバイス基板として好適に用いることができる。
【0037】
フレキシブルエレクトロニクスデバイスの種類として、フレキシブル有機ELディスプレイ、電子ペーパー、太陽電池、反射型液晶、有機TFT、フレキシブルプリント回路などが例示され、これらの中でも特にフレキシブル有機ELディスプレイ、電子ペーパー及び太陽電池からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく例示される。
【0038】
<ポリエステルフィルムの製膜方法>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは下記の方法により製造することができる。
二軸配向ポリエステルフィルムは、例えば前出のポリエステルをフィルム状に溶融押出し、キャスティングドラムで冷却固化させて未延伸フィルムとし、この未延伸フィルムをTg〜(Tg+60)℃で縦方向、横方向に2.5〜4.0倍の延伸倍率で2軸方向に延伸し、(Tm−100)〜(Tm―5)℃の温度で1〜100秒間熱固定することで所望のフィルムを得ることができる。ここでTgはポリエステルのガラス転移温度、Tmはポリエステルの融点をそれぞれ表す。
【0039】
延伸は一般に用いられる方法、例えばロールによる方法やステンターを用いる方法で行うことができ、縦方向、横方向を同時に延伸してもよく、また縦方向、横方向に逐次延伸してもよい。
【0040】
さらに弛緩処理を行う場合は、加熱処理をフィルムの(X−80)〜X℃の温度において行うことができる。ここでXは熱固定温度を表す。
弛緩処理の方法としては、テンターにより両エッジを保持し、オーブン内で長手方向にはクリップ間隔を狭めて、幅方向にはレール幅を狭めて弛緩処理する方法を用いることが好ましい。かかる方法を用いることにより、幅方向の耐熱寸法安定性も容易にコントロールすることができる。
【0041】
塗布層を設ける場合、以下の方法で塗設することができる。
逐次延伸の場合、一方向に延伸した一軸配向フィルムに水性塗液を塗布し、そのままもう一方向に延伸し、熱固定する方法により塗布層を設けることができる。
塗布方法としては、公知の任意の塗布法が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法及びカーテンコート法などを単独または組み合わせて用いることができる。塗布量は、走行しているフイルム1m2あたり0.5〜20g、更に1〜10gが好ましい。水性液は水分散液又は乳化液として用いるのが好ましい。
【0042】
<積層体の製造方法>
積層体は、工程部材と二軸配向ポリエステルフィルムとを別々に製造し、それらをさらに別の工程で積層させることにより製造することができる。両層を積層するに際し、粘着層を介して積層し、接着剤の種類に応じて熱圧着、熱硬化、光硬化などの方法を用いて積層体を得ることができる。
また塗布層を有する二軸配向ポリエステルフィルムと工程部材とを積層する場合は、該塗布層と粘着層とを対向させて積層し、例えば200℃に加熱したラミネータで熱圧着することができる。
【0043】
<基板の製造方法>
フレキシブルエレクトロニクスデバイス基板は、得られた積層体を用いてエレクトロニクスデバイス加工を行った後、工程部材を剥離して得ることができる。
フレキシブルデバイス加工方法として、例えばポジ型感光性樹脂組成物をスピンコーターでポリエステルフィルム上にスピン塗布し、ホットプレートでプリベークを行って塗膜を形成し、この塗膜にパターンを露光により形成し、その後アルカリ現像液で現像、純水によるリンス処理をし、その後180℃でポストベークを行ってポジ型のパターンを形成する方法が挙げられる。
【0044】
デバイス加工後、工程部材が剥離されるが、具体的な剥離方法として、機械的にポリエステルフィルムから工程部材を剥離する方法、粘着層の粘着力を弱めて剥離する方法などが挙げられる。
かかる方法により、フレキシブルエレクトロニクスデバイス基板が得られる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各特性値は以下の方法で測定した。また、実施例中の部および%は、特に断らない限り、それぞれ重量部および重量%を意味する。
【0046】
(1)フィルム厚み
電子マイクロメータ(アンリツ(株)製の商品名「K−312A型」)を用いて針圧30gにてフィルム厚みを測定した。
【0047】
(2)熱収縮率
フィルムサンプルに30cm間隔で標点をつけ、荷重をかけずに200℃に設定したオーブンで30分間熱処理を行い、熱処理後の標点間隔を測定して、フィルム連続製膜方向(MD方向)と、製膜方向に垂直な方向(TD方向)において、それぞれ下記式(1)にて熱収縮率を算出し、それらの平均値を求めた。
熱収縮率(%)={(熱処理前標点間距離−熱処理後標点間距離)/熱処理前標点間距離}×100 ・・・(1)
【0048】
(3)最大寸法変化率
積層体について、(2)熱収縮率と同様の方法で熱収縮率を求め、得られたMD方向、TD方向の熱収縮率のうちいずれか大きい方を最大変化率とした。
【0049】
(4)パターニング特性評価
ポジ型感光性樹脂組成物をスピンコーター(大日本スクリーン製造社製、Dspin636)を用いて積層体のポリエステルフィルム上にスピン塗布し、ホットプレートにて130℃、180秒間プリベークを行い、膜厚8.0μmの塗膜を形成した。膜厚は膜厚測定装置(大日本スクリーン製造社製、ラムダエース)で測定した。この塗膜に、100μm幅のラインテストパターン付きレチクルを通してi線(365nm)の露光波長を有するステッパ(ニコン社製、NSR2005i8A)を用いて露光量を段階的に変化させて露光した。これをアルカリ現像液(クラリアントジャパン社製、AZ300MIFデベロッパー、2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)を用い、23℃の条件下で現像後膜厚が6.6μmとなるように現像時間を調整して現像し、純水でリンスを行い、その後180℃×30分間ポストベークを行い、ポジ型のレリーフパターンを形成した。完成したテストパターンのズレを以下の基準で判断した。
〇: パターンズレが0.1%以下 パターニング特性良好
×: パターンズレが0.1%を超える パターニング特性不良
【0050】
(5)再剥離性
積層体サンプルを用い、ガラスからポリエステルフィルムを180°の角度でピールオフを行い、以下の基準にて判定した。
○:剥離した後のフィルムにカールが見られない。
×:剥離中にフィルムが破断、または剥離後のフィルムがカールする。
【0051】
[実施例1]
ナフタレン−2,6−ジカルボン酸ジメチルおよびエチレングリコールをモノマー原料として用い、エステル交換後、重縮合反応を行って得られた、粒子を含有しないポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(固有粘度0.61dl/g)をポリエステルとして用いた。エステル交換触媒として酢酸マンガン四水塩、重縮合触媒として三酸化アンチモンを用いた。
【0052】
得られたポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのペレットを170℃で6時間乾燥後、押出機ホッパーに供給し、溶融温度305℃で溶融し、平均目開きが17μmのステンレス鋼細線フィルターで濾過し、3mmのスリット状ダイを通して表面温度60℃の回転冷却ドラム上で押出し、急冷して未延伸フィルムを得た。このようにして得られた未延伸フィルムを120℃にて予熱し、さらに低速、高速のロール間で15mm上方より900℃のIRヒーターで加熱して縦方向に3.1倍に延伸した。続いてテンターに供給し、145℃にて横方向に3.3倍に延伸した。得られた二軸配向ポリエステルフィルムを230℃の温度で40秒間熱固定し、厚み125μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0053】
続いて、二軸配向ポリエステルフィルムの両エッジをクリップで保持出来るテンター式のオーブンにおいて、得られたフィルムの両エッジを保持させながら、処理温度200℃、長手方向(MD方向)弛緩率1.0%、幅方向(TD方向)弛緩率1.0%で弛緩処理を行った。
続いて、該フィルムを300mm四方に切り出し、厚さ3mmのガラス板に粘着剤(綜研化学社製、主剤「SKダイン1499M」、硬化剤「D−90」)を15μm塗布し、固定させて積層体を作成した。
得られた二軸配向ポリエステルフィルム及び積層体の特性を表1に示す。本実施例の積層体は200℃での寸法安定性に優れており、パターンずれも小さかった。
【0054】
[実施例2〜4、比較例1]
ポリエステルの種類、フィルム厚み、延伸条件を表1に示すように変えた以外は実施例1と同様に行った。得られたポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0055】
[比較例2]
基材フィルムとして、フィルム厚み200μmの住友ベークライト社製ポリエーテルサルフォン(PES)フィルムを用い、実施例1に準じて評価を行った。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0056】
[比較例3]
積層体評価について、工程部材を用いずに二軸配向ポリエステルフィルム単体で評価した以外は実施例1と同様に行った。
【0057】
[比較例4]
積層体評価について、工程部材を用いずに、200mm角のステンレス製の枠を2枚(1辺に3箇所、固定用のねじ穴がある)用いて二軸配向ポリエステルフィルム単体を固定して評価した以外は実施例1と同様に行った。
【0058】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のフレキシブルエレクトロニクスデバイス基板は、一定の耐熱寸法安定性を有するポリエステルフィルムをガラス板を含む工程材に貼り付けてフレキシブルデバイス加工を行うことで加工時の寸法変化が抑制され、高繊細なデバイス加工を施すことができ、その後ガラス板を含む工程材を剥離することでフレキシブル性を有する基板として使用できるため、高繊細なディスプレイに好適なフレキシブルエレクトロニクスデバイス基板を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板の片面に粘着層を有する工程部材およびその粘着層面に二軸配向ポリエステルフィルムが積層された積層体からなり、積層体を200℃で30分間熱処理した後の積層体の最大寸法変化率が0.0%以上0.1%以下であって、該積層体を用いてフレキシブルエレクトロニクスデバイス加工を行い、該加工後に工程部材を剥離して得られることを特徴とするフレキシブルエレクトロニクスデバイス基板。
【請求項2】
積層体を構成する二軸配向ポリエステルフィルムの200℃、30分熱処理後の熱収縮率が0.1%以上1.0%以下である請求項1に記載のフレキシブルエレクトロニクスデバイス基板。
【請求項3】
二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステルがポリエチレンナフタレンジカルボキシレートである請求項1または2に記載のフレキシブルエレクトロニクスデバイス基板。
【請求項4】
フレキシブルエレクトロニクスデバイスがフレキシブル有機ELディスプレイ、電子ペーパー、太陽電池からなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項1〜3のいずれかに記載のフレキシブルエレクトロニクスデバイス基板。
【請求項5】
ガラス板の片面に粘着層を有する工程部材およびその粘着層面に二軸配向ポリエステルフィルムが積層された積層体であり、該積層体を200℃で30分間熱処理した後の積層体の最大寸法変化率が0.0%以上0.1%以下であることを特徴とするフレキシブルエレクトロニクスデバイス用積層体。
【請求項6】
ガラス板の片面に粘着層を有する工程部材およびその粘着層面に二軸配向ポリエステルフィルムが積層された積層体からなり、積層体を200℃で30分間熱処理した後の積層体の最大寸法変化率が0.0%以上0.1%以下であって、該積層体を用いてフレキシブルエレクトロニクスデバイス加工を行い、該加工後に工程部材から二軸配向ポリエステルフィルムを剥離することを特徴とするフレキシブルエレクトロニクスデバイス基板の製造方法。

【公開番号】特開2010−225434(P2010−225434A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71906(P2009−71906)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】