説明

フレキシブルプリント基板及びその製造方法

【課題】液晶ポリマー又はフッ素樹脂によるカバーレイを用いつつ、カバーレイの剥がれを生じさせることが無く、且つ十分な回路保護機能を実現する。
【解決手段】フレキシブルプリント基板1は、可撓性のベース基板4と、このベース基板4を被覆するカバーレイ10とを有する。カバーレイ10は、外側の層11が内側の層12よりも融点が高い液晶ポリマー又はフッ素樹脂からなる2層のカバーレイ層を含む。ベース基板は、ビアホールまたスルーホール20を構成する凹部を有し、2層のカバーレイ層のうちの内側の層12は、凹部を埋めている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フレキシブルプリント基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品等に広く用いられるフレキシブルプリント基板などの配線基板は、ベース基板の上をカバーレイで被覆することにより回路を保護している。ベース基板にはポリイミドが用いられ、カバーレイにはポリイミドフィルムが用いられ、ポリイミドフィルムは接着剤層を介してベース基板に接着される。一方、近年、高速信号伝送の要求から、伝送損失がポリイミドよりも少ない液晶ポリマーを用いたフレキシブルプリント基板も用いられるようになってきた。液晶ポリマーを使用したフレキシブルプリント基板としては、例えば下記特許文献1の配線基板が知られている。この配線基板は、配線パターンが形成されたベース基板を液晶ポリマーにより構成し、カバーレイをこの液晶ポリマーより融点の低い他の液晶ポリマーにより構成している。そして、カバーレイを、その融点よりも高い温度でベース基板に熱圧着する。これにより、カバーレイをベース基板に貼り付ける接着剤層を不要としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3490309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された配線基板では、スルーホール部をカバーレイで覆わない構造であるため、スルーホール部の保護を図ることができない。仮に、スルーホールのような凹凸を覆うようにカバーレイを形成することになると、次の問題がある。すなわち、従来のポリイミド(PI)のカバーレイを用いた場合には、溶融した接着剤がスルーホールに埋まって穴の部分が完全に塞がる。しかし、液晶ポリマーのカバーレイを使用した場合には、接着剤により穴を塞ぐことができないため、図12に示すように、ベース基板101に形成されたスルーホール103にカバーレイ102が完全に埋まらずに空隙104が残ってしまう。このように空隙104が残ると、温度変化による空気の膨張・収縮の繰り返しによって、カバーレイが剥がれてしまうという問題がある。また、このような空隙104が生じないように、真空中でカバーレイ102を無理に熱圧着しようとすると、図13に示すように、スルーホール103の配線105付近のカバーレイ102の肉厚が薄くなり、配線105が露出する可能性がある。このような液晶ポリマーと同様にフッ素樹脂を用いたカバーレイにおいても同様の問題が生じる。
【0005】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、液晶ポリマー又はフッ素樹脂によるカバーレイを用いつつ、カバーレイの剥がれを生じさせることが無く、且つ十分な回路保護機能を果たすことが可能なフレキシブルプリント基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るフレキシブルプリント基板は、凹部を有する可撓性のベース基板と、このベース基板を前記凹部を含めて被覆するカバーレイとを有するフレキシブルプリント基板において、前記カバーレイが、外側の層が内側の層よりも融点が高い液晶ポリマー又はフッ素樹脂からなる2層のカバーレイ層を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明に係るフレキシブルプリント基板によれば、カバーレイ層が2層構造となっており、外側のカバーレイ層の融点が内側のカバーレイ層の融点よりも高くなっているので、外側のカバーレイ層でカバーレイの形状を保持しつつ、内側のカバーレイ層が凹部に空隙無く埋め込まれる構造となっている。このため、2層のカバーレイ層のうち外側の層の融点よりも低く、内側の層の融点よりも高い温度で、カバーレイをベース基板に熱圧着することにより、ベース基板の凹部等に空隙を残さずにカバーレイを接着することができ、接着信頼性を向上させることができる。
【0008】
前記凹部がビアホール又はスルーホールである場合についても、2層のカバーレイ層の内側の層は、前記凹部を空隙無く埋めている。
【0009】
また、本発明に係るフレキシブルプリント基板の製造方法は、凹部を有する可撓性のベース基板に、外側の層が内側の層よりも融点が高い液晶ポリマー又はフッ素樹脂からなる2層のカバーレイ層を含むカバーレイを、前記ベース基板を前記凹部を含めて被覆するように前記内側のカバーレイ層の融点よりも高く、前記外側のカバーレイ層の融点よりも低い温度で熱圧着する工程を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液晶ポリマー又はフッ素樹脂によるカバーレイを用いつつ、カバーレイの剥がれを生じさせることが無く、且つ十分な回路保護機能を果たすことが可能なフレキシブルプリント基板及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るフレキシブルプリント基板の断面図である。
【図2】同フレキシブルプリント基板の製造工程を示すフローチャートである。
【図3】同フレキシブルプリント基板の伝送損失特性を他の材料による比較例と比較して示すグラフである。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るフレキシブルプリント基板の断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るフレキシブルプリント基板の断面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係るフレキシブルプリント基板の断面図である。
【図7】本発明の実施例に係るフレキシブルプリント基板のカバーレイの材料及び融点を示す図である。
【図8】同実施例における2層構造のカバーレイの試作後の観察結果を示す図である。
【図9】同実施例における2層構造のカバーレイの試作後の観察結果を示す図である。
【図10】同実施例における3層構造のカバーレイの試作後の観察結果を示す図である。
【図11】同実施例における3層構造のカバーレイの試作後の観察結果を示す図である。
【図12】従来例の問題点を示す断面図である。
【図13】従来例の問題点を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して、本発明に係るフレキシブルプリント基板及びその製造方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るフレキシブルプリント基板を示す断面図で、同図(a),(b)は、それぞれカバーレイの熱圧着前後の断面図である。
【0014】
図1(b)に示すように、本実施形態に係るフレキシブルプリント基板(以下、「FPC」と呼ぶ。)1は、ベース基材2の両面に配線3がパターン形成されたベース基板4と、このベース基板4の両面に貼り付けられたカバーレイ10とを備える。
【0015】
ベース基材2は、液晶ポリマー(LCP)からなる。また、カバーレイ10も、液晶ポリマーからなる2層のカバーレイ層、すなわちA層11及びB層12から構成されている。外側のA層11は、内側のB層12よりも融点が高い。
【0016】
図2は、FPC1の製造工程を示すフローチャートである。まず、ベース基材2上に配線3を形成したベース基板4を用意する(ステップS100)。ベース基板4は、図1(a)に示すように、ベース基材2の上に銅箔31を貼り付けた銅張積層板(CCL)にスルーホール20を空け、このスルーホール20を含めて表面に銅のめっき層32を形成し、フォトエッチングにより銅箔31とめっき層32とに必要なパターンを形成することにより形成される。パターン形成された銅箔31とめっき層32とで配線3が構成される。
【0017】
次に、A層11及びB層12を圧着してカバーレイ10を形成する(ステップS102)。そして、カバーレイ10を、真空中で、B層12がベース基板4に対向するようにベース基板4の両面に配置して、両面からベース基板4に所定の温度で熱圧着する(ステップS104)。熱圧着の温度は、A層11の融点よりも低く、B層12の融点よりも高い温度に設定する。
【0018】
このような熱圧着工程により、カバーレイ10は、B層12が溶融して細かな凹凸を有するベース基板4のベース基材2の表面や配線3との接触面或いは段差面などとのアンカー効果によりベース基板4に確実に密着する。同時に、図1(b)に示すように、溶融したB層12が、ベース基板4のスルーホール20の内部に完全に埋まるため、空隙が形成されることがない。これに対し、A層11は溶融しないので、カバーレイ10の形状が保持される。このため、空隙が温度変化で膨張・収縮することによるカバーレイ10の剥がれ及び配線3の露出による回路保護機能の低下を防止することができる。
【0019】
また、本実施形態によれば、ベース基材2及びカバーレイ10に液晶ポリマーを使用している。液晶ポリマーは、ポリイミドと比べると誘電率、誘電正接(tanδ)及び吸水率がそれぞれ低く、伝送損失を抑えて高周波特性に優れている。具体的には、材料物性値に関して、ポリイミドの誘電率が3.3〜3.6であるのに対し、液晶ポリマーの誘電率は3.0であるので、高周波特性に優れている。また、ポリイミドの誘電正接が0.005〜0.02であるのに対し、液晶ポリマーの誘電正接は0.002であるので、誘電損失が小さい。更に、ポリイミドの吸水率が1.0〜1.5であるのに対し、液晶ポリマーへの吸水率は0.04であるので、吸湿し難く損失が少ない。
【0020】
図3は、ベース基材とカバーレイの材質別の伝送損失を示すグラフである。このグラフは、3種類のサンプルについて伝送損失を測定したものである。3種類のサンプルは、それぞれ、液晶ポリマーのベース基材+液晶ポリマーのカバーレイ、液晶ポリマーのベース基材+ポリイミド樹脂のカバーレイ、及びポリイミド樹脂のベース基材+ポリイミド樹脂のカバーレイである。
【0021】
そして、各サンプルを差動インピーダンスが100Ωに整合するように設計し、各サンプルの伝送損失を、ベクトルネットワークアナライザを用いて測定した。その結果、図2に示すように、ベース基材及びカバーレイを液晶ポリマーで構成したサンプルが、最も伝送損失が少なく、良好な高周波特性を備えていることが判明した。従って、本実施形態に係るFPC1は、伝送損失が少なく、良好な高周波特性を有することは明らかである。
【0022】
[第2の実施形態]
図4は、本発明の第2の実施形態に係るFPCを示す断面図で、同図(a),(b)は、それぞれカバーレイの熱圧着前後の断面図である。
第1の実施形態に係るFPC1では、層間接続をスルーホール20により行っていたが、第2の実施形態に係るFPC1Aは、ベース基板4に層間接続を行うための配線としてビアホール30が形成されている点が、第1の実施形態に係るFPC1と相違している。
【0023】
第2の実施形態に係るFPC1Aにおいて、ベース基板4は、図4(a)に示すように、ベース基材2の上に銅箔31を貼り付けた銅張積層板(CCL)にレーザ加工により下側の銅箔31の上面までのビアホール30を形成し、このビアホール30を含めて表面に銅のめっき層32を形成し、フォトエッチングにより銅箔31とめっき層32とに必要なパターンを形成することにより形成される。パターン形成された銅箔31とめっき層32とで配線3が構成される。
【0024】
本実施形態においても、A層11及びB層12を圧着してカバーレイ10を形成する。そして、カバーレイ10を、真空中で、B層12がベース基板4に対向するようにベース基板4の両面に配置して、両面からベース基板4に所定の温度で熱圧着する。熱圧着の温度は、A層11の融点よりも低く、B層12の融点よりも高い温度に設定する。
【0025】
このような熱圧着により、カバーレイ10のB層12が溶融し、ビアホール30の開口側のカバーレイ10のB層12がビアホール30の内部を埋め尽くす。このため、図4(b)に示すように、空隙が生じることは無い。これにより、先の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0026】
[第3の実施形態]
図5は、本発明の第3の実施形態に係るFPCを示す断面図で、同図(a),(b)は、それぞれカバーレイの熱圧着前後の断面図である。
第1の実施形態に係るFPC1では、カバーレイとして2層構造のカバーレイ10を使用したが、第3の実施形態に係るFPC1Bは、カバーレイ10Aが、融点の異なるC層13、D層14及びE層15の3層構造からなる点が、図4に示したFPC1と相違している。
【0027】
この実施形態では、カバーレイ10Aを構成する3層の外側からC層13、D層14及びE層15とすると、これらの融点が、C層13の融点≧E層15の融点>D層14の融点となるように材料が選択されている。
【0028】
この実施形態によれば、D層14の融点よりも高く、C層13、E層15の融点よりも低い温度でカバーレイ10Aを真空中でベース基板4に熱圧着する。これにより、中間のD層14が溶融し、ベース基板4側のE層15を引き延ばしてスルーホール20の中心の方に押し込みながらスルーホール20の内部に充填されていく。これにより、空隙が形成されることなく、カバーレイ10Aがスルーホール20に埋め込まれる。
【0029】
なお、第3の実施形態において、カバーレイ10Aを構成する各層の融点を、C層13の融点>D層14の融点>E層15の融点に設定しても良い。この場合には、圧着温度を、E層15の融点よりも高く設定し、C層13又はD層の融点14よりも低く設定すれば良い。
【0030】
[第4の実施形態]
図6は、本発明の第4の実施形態に係るFPCの断面図である。
先の実施形態では、ベース基板4として両面配線基板を使用したが、この実施形態では、FPC1Cが、片面配線基板のベース基板4Aを用いている。
この場合にも、カバーレイ10を2層構造とし、外側のA層11の融点よりも内側のB層12の融点の方を低くする。そして、A層11の融点よりも低く、B層12の融点よりも高い温度で熱圧着する。
これにより、ベース基材2上の配線3による凹凸の隙間に空隙を形成させずにカバーレイ10を形成することができる。
【0031】
[その他の実施形態]
以上の各実施形態では、ベース基材2及びカバーレイ10,10Aに液晶ポリマーを使用したが、いずれか一方又は双方を、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂に置き換えても同様の効果を得ることができる。
また、ベース基材2については、例えばポリイミド等、他の絶縁材料を使用することも可能である。
【実施例】
【0032】
以下、実施例によりFPC1,1Bについて具体的に説明する。本実施例においては、2層構造のカバーレイ10と3層構造のカバーレイ10Aとを用意した。また、カバーレイ10,10Aの材料として、図7に示すように、融点の異なる3種類の液晶ポリマー(イ)〜(ハ)を用意した。
【0033】
液晶ポリマー(イ)は融点が285℃、液晶ポリマー(ロ)は融点が325℃、液晶ポリマー(ハ)は融点が335℃のものであり、それぞれの液晶ポリマー(イ)〜(ハ)について12.5μm、25μm、50μmの厚さのサンプルを用意し、これらを組み合わせてカバーレイ10,10Aを構成した。
【0034】
また、ベース基板4は、厚さ50μmの所定の液晶ポリマーからなるベース基材2の両面に、厚さ18μmの銅箔31を貼り付けた。更に、所定箇所にドリル加工を施してスルーホール20を形成し、めっき処理により厚さ15μmのめっき層32を形成した。
【0035】
なお、ベース基材2の厚さは、12.5μm、25μm、50μmなどが想定されるが、厚さが厚い方が液晶ポリマーでスルーホール20を埋め込むことがより困難となる。このため、より厳しい条件下での試験を実施するために、ベース基材2の厚さは50μmに設定した。また、ベース基材2の材料は、液晶ポリマーの他に、上述したような絶縁性樹脂とすることもできる。
【0036】
スルーホール20の穴径は、穴径が小さいとカバーレイ10,10Aの液晶ポリマーが入り込み難くなることが予想され、逆に穴径が大きいと空隙の埋め込みが難しくなることが予想された。このため、いずれの影響が大きいかを判定するために、ドリル加工により100μm、150μm、200μm、及び500μmの4種類の穴径のものを用意した。
【0037】
そして、めっき層32を形成したスルーホール20を有する各サンプルに、カバーレイ10,10Aを、これらを構成する液晶ポリマー(イ)〜(ロ)の中で最も低い融点を有するものの融点よりも5℃高い温度で熱圧着した。各サンプルについて、熱圧着後のスルーホール20の断面における埋め込み状態を、以下の2通りの方法により観察した。
【0038】
すなわち、観察方法Aでは、スルーホール20内の空隙の有無の確認を行い、各サンプルについて、いずれかの穴径にて空隙があるものを×、全ての穴径において空隙がないものを○とした。また、観察方法Bでは、観察方法Aにおいて、空隙がないサンプルについてスルーホール20以外の部分と比較して、スルーホール20上の液晶ポリマーの凹み具合を測定した。具体的には、凹み量を、波長測定機能を備えた顕微鏡を用いて測定し、観察結果において全ての穴径における凹み量の中での最大値を記載した。
【0039】
まず、2層構造のカバーレイ10については、図8及び図9に示すような結果となった。図8から明らかなように、A層11を液晶ポリマー(イ)で構成し、B層12を液晶ポリマー(ロ)で構成したサンプル2−1〜2−3については、観察方法Aによる観察結果が全て×となった。また、A層11を液晶ポリマー(ロ)で構成し、B層12を液晶ポリマー(イ)で構成したサンプル2−4〜2−8については、観察方法Aによる観察結果が全て○となった。そして、これらサンプル2−4〜2−8の中で、観察方法Bの凹み量が0μmとなったサンプル2−6が最も平坦であることが確認できた。
【0040】
また、図9に示すように、A層11を液晶ポリマー(ロ)で構成し、B層12を液晶ポリマー(ハ)で構成したサンプル2−9〜2−11については、観察方法Aによる観察結果が全て×となった。更に、A層11を液晶ポリマー(ハ)で構成し、B層12を液晶ポリマー(ロ)で構成したサンプル2−12〜2−16については、観察方法Aによる観察結果が全て○となった。そして、これらのサンプル2−12〜2−16の中で、観察方法Bの凹み量が0μmとなったサンプル2−13及び2−14が最も平坦であることが確認できた。
【0041】
以上のような結果から、2層構造のカバーレイ10については、ベース基板4に接する側のB層12の液晶ポリマーの融点がA層11の液晶ポリマーの融点よりも低い場合に、B層12の液晶ポリマーがスルーホール20に完全に埋め込まれて空隙がなくなることが判明した。また、このような場合に、凹み量が3μm以下と非常に小さくなるので、カバーレイ10の平坦性を確保できることが確認できた。
【0042】
次に、3層構造のカバーレイ10Aについては、図10及び図11に示すような結果となった。まず、図10に示すように、C層13を液晶ポリマー(イ)で構成し、D層14を液晶ポリマー(ロ)で構成し、E層15を液晶ポリマー(ハ)で構成したサンプル3−1〜3−3において、観察方法Aによる観察結果が全て×となった。
【0043】
一方、C層13を液晶ポリマー(ハ)で構成し、D層14を液晶ポリマー(ロ)で構成し、E層15を液晶ポリマー(イ)で構成したサンプル3−4〜3−6については、観察方法Aによる観察結果が全て○となった。そして、これらのサンプル3−4〜3−6の中で、観察方法Bの凹み量が0μmとなったサンプル3−6が最も平坦で好適なものとなった。
【0044】
また、図11に示すように、C層13を液晶ポリマー(ハ)で構成し、D層14を液晶ポリマー(イ)で構成し、E層15を液晶ポリマー(ロ)で構成したサンプル3−7〜3−9については、観察方法Aによる観察結果が全て○となった。そして、これらのサンプル3−7〜3−9の中で、観察方法Bの凹み量が2μmとなったサンプル3−8及び3−9が最も平坦であることが確認できた。
【0045】
更に、C層13及びE層15を液晶ポリマー(ロ)で構成し、D層14を液晶ポリマー(イ)で構成したサンプル3−10〜3−12については、観察方法Aによる観察結果が全て○となった。そして、これらのサンプル3−10〜3−12の中で、観察方法Bの凹み量が2μmとなったサンプル3−12が最も平坦であることが判明した。
【0046】
以上のような結果から、3層構造のカバーレイ10Aについては、ベース基板4に接するE層15の融点、或いは中間層のD層14の融点がそれぞれC層13の融点よりも低い場合にスルーホール20が完全に埋め込まれて空隙がなくなることが確認できた。また、前者の場合は、凹み量が2μm以下と非常に小さくなるので、カバーレイ10Aの平坦性を確保できると共に、後者の場合は凹み量が4μm以下と小さくなるので、同様に平坦性を確保できることが確認できた。
【符号の説明】
【0047】
1,1A,1B,1C フレキシブルプリント基板(FPC)
2 ベース基材
3 配線
4 ベース基板
10,10A カバーレイ
11 A層
12 B層
13 C層
14 D層
15 E層
20 スルーホール
30 ビアホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有する可撓性のベース基板と、
このベース基板を前記凹部を含めて被覆するカバーレイと
を有するフレキシブルプリント基板において、
前記カバーレイは、外側の層が内側の層よりも融点が高い液晶ポリマー又はフッ素樹脂からなる2層のカバーレイ層を含む
ことを特徴とするフレキシブルプリント基板。
【請求項2】
前記凹部はビアホール又はスルーホールであり、
前記2層のカバーレイ層の内側の層は、前記凹部を埋めている
ことを特徴とする請求項1記載のフレキシブルプリント基板。
【請求項3】
凹部を有する可撓性のベース基板に、外側の層が内側の層よりも融点が高い液晶ポリマー又はフッ素樹脂からなる2層のカバーレイ層を含むカバーレイを、前記ベース基板を前記凹部を含めて被覆するように前記内側のカバーレイ層の融点よりも高く、前記外側のカバーレイ層の融点よりも低い温度で熱圧着する工程を備えた
フレキシブルプリント基板の製造方法。
【請求項4】
前記凹部は形成されたビアホール又はスルーホールであり、
前記熱圧着する工程により、前記凹部に前記内側の層を埋め込む
ことを特徴とする請求項3記載のフレキシブルプリント基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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