説明

フレキシブルプリント配線基板

【課題】半導体素子を封止する樹脂のクラックの発生を抑止することで、信頼性の向上を図ることが可能なフレキシブルプリント配線基板を提供する。
【解決手段】樹脂封止される矩形状のドライバIC20が配置される矩形状のデバイスホール14が形成され、デバイスホール14の内周辺からドライバIC20へ向かって突出するインナーリード15が設けられたフレキシブルプリント配線基板において、デバイスホール14の4つの角部に、デバイスホール14の内周辺に対して傾斜し、かつドライバIC20の角部に向かって突出するアライメントリード16が設けられている。このアライメントリード16は、ドライバIC20と接続しないダミーリードであり、デバイスホール14の位置認識用に貫通孔16aが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスホールに設けられたインナーリードにより半導体素子を接続して、この半導体素子を樹脂封止するTAB(Tape Automated Bonding)用のフレキシブルプリント配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
LCD(Liquid Crystal Display)やPDP(Plasma Display Panel)などでは、ドライバIC(Integrated Circuit)を接続するために、ドライバICのベアチップをパネルに直付けするCOG(Chip On Glass)実装以外に、TCP(Tape Carrier Package)タイプのICを、配線パターンが形成されたフィルムキャリアテープにTAB実装したものを接続する方法が採用されている。このようなTAB実装に用いられるICに関して特許文献1に記載されたTAB半導体装置がある。
【0003】
TAB実装は、フレキシブルプリント配線基板が連接されたフィルムキャリアテープのデバイスホールと呼ばれる矩形状の開口部に櫛歯状に突出させたインナーリードと、ドライバIC表面にめっき法などで形成されたバンプ端子とを位置合わせし、ボンディングツールにて一括加圧、加熱することにより接続して、ドライバICを樹脂により封止することで、ドライバICをフィルムキャリアテープに実装している。
【特許文献1】特開平10−321668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のフレキシブルプリント配線基板は、矩形状のデバイスホールに設けられた櫛歯状のインナーリードが、矩形状に形成された半導体素子に向かって、デバイスホールの各内周辺から垂直に突出するように形成されているので、デバイスホールの角部と半導体素子の角部との間にインナーリードが配線されていない隙間ができる。半導体素子をデバイスホールに位置させてインナーリードと接続した後に、半導体素子を封止するための樹脂を、半導体素子を含むデバイスホール全体を覆うようにポッティングすると、この隙間部分に位置する樹脂が、自重で沈み込んで樹脂厚の薄い凹部ができることがある。
【0005】
この状態で、樹脂を加熱して硬化させると、硬化時の熱収縮で薄くなった部分を起点に硬化した樹脂にクラックが発生することがある。また樹脂封止した後に加わるLCDやPDPへの接続時の応力や搬送時の応力によって、やはり薄くなった部分を起点にクラックが発生してしまうことがある。
【0006】
クラックが発生すると、封止樹脂の強度が低下してインナーリードの切断の原因となったり、クラック部分からインナーリードや半導体素子の回路形成面が露出して、半導体素子の回路形成面に傷が付く原因となったりして、樹脂の保護機能が果たせなくなり信頼性の低下を招いてしまう。
【0007】
そこで本発明は、半導体素子を封止する樹脂のクラックの発生を抑止することで、信頼性の向上を図ることが可能なフレキシブルプリント配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のフレキシブルプリント配線基板は、樹脂封止される矩形状の半導体素子が配置される矩形状のデバイスホールが形成され、前記デバイスホールの内周辺から前記半導体素子へ向かって突出するインナーリードが設けられたフレキシブルプリント配線基板において、前記デバイスホールの少なくとも1以上の角部に、前記デバイスホールの内周辺に対して傾斜し、かつ前記半導体素子の角部に向かって突出する樹脂担持リードが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフレキシブルプリント配線基板は、半導体素子を封止する樹脂が熱硬化性であれば熱収縮時のクラックの発生や、搬送時または実装時のクラックの発生を抑止することができるので、信頼性の向上を図ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本願の第1の発明は、樹脂封止される矩形状の半導体素子が配置される矩形状のデバイスホールが形成され、デバイスホールの内周辺から半導体素子へ向かって突出するインナーリードが設けられたフレキシブルプリント配線基板において、デバイスホールの少なくとも1以上の角部に、デバイスホールの内周辺に対して傾斜し、かつ半導体素子の角部に向かって突出する樹脂担持リードが設けられていることを特徴としたものである。
【0011】
樹脂担持リードが、デバイスホールの内周辺に対して傾斜し、かつ半導体素子の角部に向かって突出するように設けられていることで、樹脂担持リードが、樹脂担持リード上の樹脂を担持し、デバイスホールの角部と半導体素子の角部との間のインナーリードが配線されていない隙間を区分けして個々の隙間として面積を減少させる。従って、半導体素子を封止するために樹脂をポッティングしても、区分けされた1つの隙間の面積を狭くすることで、樹脂の自重による沈み込み量を減少させることができるので、凹部の発生を抑止して樹脂厚みが薄くなることを抑止することができる。よって、半導体素子を封止する樹脂が熱硬化性であれば熱収縮時のクラックの発生や、搬送時または実装時のクラックの発生を抑止することができる。
【0012】
本願の第2の発明は、樹脂担持リードは、半導体素子と接続しないダミーリードであることを特徴としたものである。
【0013】
樹脂担持リードを、半導体素子と接続しないダミーリードとすることで、樹脂の沈み込みを防止するための方策を半導体素子に対して講じる必要がない。
【0014】
本願の第3の発明は、ダミーリードは、デバイスホールの位置認識用のアライメントリードであることを特徴としたものである。
【0015】
デバイスホールの位置確認用のアライメントリードが設けられているフレキシブルプリント配線基板であれば、このアライメントリードを、デバイスホールの内周辺に対して傾斜し、かつ半導体素子の角部に向かって突出するように設けることで、樹脂担持リードとすることができる。
【0016】
本願の第4の発明は、樹脂担持リードは、インナーリードより幅広に形成されていることを特徴としたものである。
【0017】
樹脂担持リードをインナーリードより幅広に形成することで、樹脂を担持する面積を広く確保することができるので、より樹脂の沈み込みを防止することができる。
【0018】
本願の第5の発明は、樹脂担持リードとインナーリードとの間に、更に補助リードが設けられていることを特徴としたものである。
【0019】
樹脂担持リードの他に、補助リードを設けることで、更に隙間の面積を減少させることができるので、更に樹脂の沈み込みを抑止することができる。
【0020】
(実施の形態)
本発明の実施の形態に係るフレキシブルプリント配線基板を図1から図3に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るフレキシブルプリント配線基板が連接されたフィルムキャリアテープを示す図である。図2は、図1におけるフレキシブルプリント配線基板のA部拡大図である。図3は、図2におけるB部拡大図である。
【0021】
図1に示すように、フィルムキャリアテープ1は、可撓性のプラスチックフィルムから形成され、フレキシブルプリント配線基板10が列状に連接され、TAB実装用に用いられる。また、フィルムキャリアテープ1の長手方向に沿った両側部には、搬送用のスプロケットピンが挿入されるスプロケット搬送用穴2が形成されている。
【0022】
フレキシブルプリント配線基板10は、プラスチックフィルム11をベースフィルムとしてベースフィルム上に配線パターン(図示せず)が形成され、この配線パターンを覆うようにレジスト膜12(図1においては斜線部分)が形成された絶縁配線基板である。フレキシブルプリント配線基板10は、ドライバIC20を搭載してPDPの制御を行うものである。フレキシブルプリント配線基板10は、配線パターンがレジスト膜12から露出することで電極13a,13bが形成されている。
【0023】
電極13aは、配線パターンの一端側に形成され、LCDやPDPなどの電極と接続される。電極13bは、配線パターンの他端側に形成され、制御基板と接続される。これらの電極13a,13bは配線パターンによりドライバIC20と接続されている。
【0024】
フレキシブルプリント配線基板10の電極13aは、LCDやPDPに形成された電極と、異方性導電フィルムや異方性導電ペーストなどを介して接続される。また、フレキシブルプリント配線基板10の電極13bは、制御基板に形成された電極と半田付けなどで接続される。
【0025】
またフレキシブルプリント配線基板10には、矩形状のドライバIC20が配置される開口部であるデバイスホール14が矩形状に設けられている。
【0026】
図2および図3に示すように、デバイスホール14には、インナーリード15が櫛歯状に設けられている。このインナーリード15は、幅が0.03mmで、デバイスホール14の内周辺からドライバIC20へ向かって突出するように形成され、ドライバIC20表面にめっき法などで形成されたバンプ端子と接続する。
【0027】
また、デバイスホール14の4つの角部に、デバイスホール14の内周辺に対して傾斜し、かつドライバIC20の角部に向かって突出するアライメントリード16が平面視してドライバIC20と重ならないように設けられている。このアライメントリード16は、樹脂担持リードとして機能するもので、ドライバIC20の端子と接続されないダミーリードである。アライメントリード16は、幅が0.16mmで先端部が円弧状に形成され、先端部にインナーリード15の位置を確認するための貫通孔16aが設けられている。
【0028】
アライメントリード16は、両側に2本ずつ設けられた補助リード17と、インナーリード15群の一部としてドライバIC20に2本ずつ接続されたサブリード15aとに、接続部18を介して接続されている。
【0029】
補助リード17は、インナーリード15に平行するようにデバイスホール14の内周辺から垂直にドライバIC20に向かって突出するように形成されている。補助リード17は、ドライバIC20のバンプ端子に接続されないダミーリードである。サブリード15aは、ドライバIC20に設けられたダミーのバンプ端子に接続されるダミーリードである。従って、サブリード15aは、補助リード17よりも長く形成されている。
【0030】
ドライバIC20は、矩形状に形成されたLCDやPDPの画面データを制御する半導体素子である。
【0031】
以上のように構成される本発明の実施の形態に係るフレキシブルプリント配線基板にドライバICを配置して樹脂封止したときの状態を、更に図4を参照しながら説明する。図4は、図3をC方向から見て、ドライバICを樹脂封止したときの状態を示す部分拡大断面図である。
【0032】
図1から図4に示すように、まず、フレキシブルプリント配線基板10にドライバIC20を接続する。この接続は、フレキシブルプリント配線基板10のインナーリード15とドライバIC20のバンプ端子とを位置合わせし、ボンディングツールにて一括加圧、加熱することにより行われる。
【0033】
次に、ドライバIC20がインナーリード15の下側に位置するようにして、インナーリード15側から封止用の樹脂50を、デバイスホール14全体を覆うようにポッティングする。
【0034】
樹脂50は、インナーリード15同士の隙間から流れ、ドライバIC20に伝わるようにして広がりドライバIC20の下面を覆う。樹脂50は、粘性が高く、ポッティング量が調整されているので、ドライバIC20の側面が濡れる程度で広がりが止まり、ドライバIC20から滴下しない。このようにドライバIC20が樹脂50で封止されるので、ドライバIC20の側面にはデバイスホール14の周囲に山の裾野のような樹脂フィレット51が形成される。
【0035】
アライメントリード16は、ポッティングされた樹脂50のうちアライメントリード16上の樹脂50を担持する。そして、デバイスホール14の角部とドライバIC20の角部との間のインナーリード15が配線されていない隙間を、アライメントリード16と共に補助リード17が区分けして個々の隙間(S1,S2)として面積を減少させるので、区分けされた隙間の面積を狭くすることで、樹脂50の自重による沈み込み量を減少させることができる。従って、隙間(S1,S2)に凹部の発生を抑止することができるので、樹脂厚みが薄くなることを抑止することができる。
【0036】
アライメントリード16は、インナーリード15より幅広に形成されている。これはアライメントリード16を樹脂担持リードとして機能させるために、樹脂50を担持する面積が広い方が望ましいのと、隙間をより狭く区分するのに望ましいためである。
【0037】
また、アライメントリード16を樹脂担持リードとしているので、フレキシブルプリント配線基板に形成される配線パターンのレイアウトを変更するだけで対応することが可能ある。そして、アライメントリード16や補助リード17は、ドライバIC20に接続しないダミーリードであるので、ドライバIC20の設計変更は不要である。
【0038】
このように、アライメントリード16が、デバイスホール14の内周辺に対して傾斜し、かつドライバIC20の角部に向かって突出するように設けられていることで、樹脂封止の沈み込みを抑止することでクラックの発生を抑えることが可能である。従って、封止した樹脂の保護機能を損なわないので、信頼性の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、半導体素子を封止する樹脂のクラックの発生を抑止することで、信頼性の向上を図ることが可能なので、デバイスホールに配置された半導体素子をインナーリードで接続して、この半導体素子を樹脂封止するTAB用のフレキシブルプリント配線基板に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態に係るフレキシブルプリント配線基板が連接されたフィルムキャリアテープを示す図
【図2】図1におけるフレキシブルプリント配線基板のA部拡大図
【図3】図2におけるB部拡大図
【図4】ドライバICを樹脂封止したときの状態を示す部分拡大断面図
【符号の説明】
【0041】
1 フィルムキャリアテープ
2 スプロケット搬送用穴
10 フレキシブルプリント配線基板
11 プラスチックフィルム
12 レジスト膜
13a,13b 電極
14 デバイスホール
15 インナーリード
15a サブリード
16 アライメントリード
16a 貫通孔
17 補助リード
18 接続部
20 ドライバIC
50 樹脂
51 フィレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂封止される矩形状の半導体素子が配置される矩形状のデバイスホールが形成され、前記デバイスホールの内周辺から前記半導体素子へ向かって突出するインナーリードが設けられたフレキシブルプリント配線基板において、
前記デバイスホールの少なくとも1以上の角部に、前記デバイスホールの内周辺に対して傾斜し、かつ前記半導体素子の角部に向かって突出する樹脂担持リードが設けられていることを特徴とするフレキシブルプリント配線基板。
【請求項2】
前記樹脂担持リードは、前記半導体素子と接続しないダミーリードであることを特徴とする請求項1記載のフレキシブルプリント配線基板。
【請求項3】
前記ダミーリードは、前記デバイスホールの位置認識用のアライメントリードであることを特徴とする請求項2記載のフレキシブルプリント配線基板。
【請求項4】
前記樹脂担持リードは、前記インナーリードより幅広に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかの項に記載のフレキシブルプリント配線基板。
【請求項5】
前記樹脂担持リードと前記インナーリードとの間に、更に補助リードが設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれかの項に記載のフレキシブルプリント配線基板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate