説明

フレキシブルプリント配線板および電子機器

【課題】 コンタミ等を発生せずに折り曲げができ、その折り曲げた状態を容易に保持することができる、フレキシブルプリント配線板等を提供する。
【解決手段】 フレキシブルプリント配線板30は、銅配線2と、その銅配線の上下に位置する絶縁層1,3とを備え、上下の絶縁層の間に、銅配線2と異なる異種材料5が位置し、フレキシブルプリント配線板を折り曲げたときに折り曲げ部K,Kがその折り曲げ形状を保持することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板および電子機器に関し、より具体的には、折り曲げ部を形成してその折り曲げ部の形状を保持することが容易なフレキシブルプリント配線板および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブ(HDD)では、情報の読み出し/書き込みのために、ヘッドは、アクチュエータによって磁気ディスク上の任意の位置に移動する。そのヘッドは、ヘッドスタックアセンブリ(HSA:Head Stack Assembly)と呼ばれる部品複合体の先端部に位置する。そのヘッドスタックアセンブリは、VCMコイル、サスペンション(ヘッド、ジンバル、フレキシブルプリント配線体であるヘッド配線体など)、アーム、軸受けユニット、およびフレキシブルプリント配線板である実装配線体など、から構成される(特許文献1)。
【0003】
上記の部品のうち、サスペンションは、ヘッドを保持するジンバルを支持する板状部品(ロードビーム、マウントプレート)などの弾性金属薄板を含む機械部品と、ヘッドとの間で信号を伝達するフレキシブルプリント配線板であるヘッド配線体とを備える。ヘッド配線体は、ヘッドと、プリアンプを搭載するフレキシブルプリント配線板である実装配線体とを電気的に接続する。これによれば、ヘッドと電子回路との間の信号は、いずれもフレキシブルプリント配線板であるヘッド配線体および実装配線体から、筐体ボード上のコネクタ等を経て伝達される。実装配線体は、コネクタを含む構成の場合、コネクタを搭載した端子部が、HDDの筐体のボードに固定される。そのコネクタの実装部には、本体配線部との境目に折り曲げ部が設けられ、コネクタ搭載の実装部は筐体のボード面に螺子等で固定される。その実装部に連続する本体配線部は、折り曲げ部から幅方向を実装部の面に垂直に立てて、アームの側面へと余裕長さ部分を経て取り付けられる。アームの側面への取り付けもプリアンプ等を実装するためである。また、余裕長さ部分は、ヘッドをディスク上に移動させるとき、アームの揺動に支障を生じないように設けられる。この余裕長さ部分にも、コンパクトにフレキシブルプリント配線板をコンパクトに配置するために、切り返しのための折り曲げ部が設けられる。要約すると、実装部で筐体のボードに固定されたフレキシブルプリント配線体は、折り曲げ部によって姿勢を変えて、余裕長さ部分のもう一つの折り曲げ部を経て、アームの側面部へと延び、その面をアームの側面部に実装される。
上記のHDDとは異なり、所定の部分が、なだらかに湾曲する屈曲部を持つ携帯用小型音響機器等に用いられるフレキシブルプリント配線板の銅箔の断線を防ぐために、屈曲性を有する金属性補強板を内蔵させる方策が提案されている(特許文献2)。これによって折り曲げる角度を大きくしても応力集中は生じず銅箔は断線せず、さらに、一度折り曲げても応力を取り除けば、その基板は基の平面状態に容易に戻ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−4513号公報
【特許文献2】実開平01−171057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のHDDの筐体のボードにコネクタを含む端子部が固定されるためには、応力集中を伴う塑性曲げ変形が必要である。すなわち、特許文献2に開示した曲げ変形の態様とは異なり、折り曲げたフレキシブルプリント配線板を、その折り曲げた形状を、ほとんど永久的に保持して固定する必要がある。このため、従来は、(1)金属補強板を外側に貼ったあとに折り曲げる、または(2)成型部材等に取り付けて折り曲げ形状を固定する、などの方法が用いられていた。
しかし、(1)金属補強板を貼ったあとに折り曲げる方法では、折り曲げ時に金属補強板から酸化金属粉などのコンタミが発生し、クリーンな状態が重視される用途(たとえばHDD)などに用いることができない。(2)成型部材に取り付ける方法では、成型部材のコストが高く、また成型部材の取り付け工数を要し、ハンドリングが簡単ではない。
本発明は、コンタミ等を発生せずに折り曲げができ、その折り曲げた状態をほとんど永久的に容易に保持することができる、フレキシブルプリント配線板および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のフレキシブルプリント配線板は、銅配線と、その銅配線の上下に位置する絶縁層とを備え、上下の絶縁層の間に、銅配線と異なる異種材料が位置し、フレキシブルプリント配線板を折り曲げたときにその折り曲げ形状を保持することを特徴とする。
【0007】
上記の構成において異種材料を、塑性変形が容易で、その塑性変形後の形状をほとんど永久的に容易に保持することができる材料とすることで、折り曲げて固定する用途、および/または、余裕長さ部に切り返し等を設けて見た目にコンパクトに配置する用途に好適のフレキシブルプリント配線板を得ることができる。このフレキシブルプリント配線板を折り曲げて固定する用途等に用いることで、電子製品の製造において工程省略および製造コスト低減を得ることができる。また、異種材料は、上下の絶縁層の間に位置するので、コンタミの放出は防止される。なお、折り曲げ形状を保持するとは、外的応力がかからない限り、その折り曲げ形状を保持することをいう。折り曲げ部において、折り曲げ加工が行われることで、外部から応力がかからない限りその折り曲げ状態を保持することを前提としている。折り曲げ加工は、1回の折り曲げ加工で行う場合もあるが、深い角度の場合は、一旦浅く曲げた後に当該深い角度に折り曲げる作業がとられる。
【0008】
フレキシブルプリント配線板を折り曲げ線に沿って所定角度に折り曲げたときにその折り曲げ線を挟む両側部分がなす所定角度を保持するものとすることができる。これによって、たとえば上述したHDDの実装配線体の余裕長さ部分に鋭角の折り曲げ部を設けて、余裕長さ部分のアームに近い範囲をアーム側面に沿わせて、その鋭角の折り曲げ部で切り返して、反対側の先の範囲をアーム側面に実装することができる。その鋭角の折り曲げ部は、どこにも固定されずフリーとするので、実装配線体がアームの回転の障害になることはない。そして、見た目にコンパクトに余裕長さ部分等またはフレキシブルプリント配線板を配置することができる。HDDの所定の機種ではこの鋭角は15°〜30°程度とするが、これより大きくても小さくてもよい。
【0009】
フレキシブルプリント配線板は端に端子部を備え、該端子部とフレキシブルプリント配線板の本体配線部との境に折り曲げ線が設けられる構成をとることができる。これによって、たとえばHDDの実装配線体の実装部を、たとえば折り曲げによって角度(姿勢)を変えて、容易に筐体ボード面等に固定することができる。そして、この折り曲げにおいて、コンタミを生じることがない。
【0010】
端子部はフレキシブルプリント配線板の本体配線部の延在方向から側部に外れるように設けられ、折り曲げ線が、本体配線部の延在方向に並行するように設けられる構成をとることができる。たとえばフレキシブルプリント配線板の一方の端を第1固定面に固定した上で、本体配線部の幅方向を固定面から立てるように、配置して、他方の端を、第1固定面に直交する第2固定面に固定することができる。この結果、フレキシブルプリント配線板をコンパクトに、すなわち空間利用効率を高めて、見た目に美しく、意匠性よく、直交する異なる固定面にわたって配置することができる。
なお、上記の端子部には、コネクタを搭載してもよいし、コネクタの搭載無しであってもよい。また、筐体ボードには開口を設けて、端子部に搭載されたコネクタをその開口部から筐体ボードの裏面側に突き出すように配置してもよい。
【0011】
異種材料が、銅配線と同じ層、または銅配線と異なる層、に配置されている構成をとることができる。これによって、フレキシブルプリント配線板の多くの種類に対応して、適切な位置に異種材料を配置することができる。
【0012】
異種材料を、金属または絶縁材料で形成することができる。これによって、コスト、特性等を考慮して、材料的に最適の物を選ぶことができる。なお、金属で形成する場合、異種材料はフレキシブルプリント配線板から外に露出することがないので、銅配線と導電接触しても問題なく、折り曲げの保持に適切な異種材料の配置を設定すればよい。
異種材料を金属で形成する場合は、アルミニウム、チタン、炭素鋼、ステンレス鋼等で構成することができる。炭素鋼は、加工硬化率が大きく、折り曲げ加工によって加工部が硬化するので、折り曲げ形状を保持する上で効果的である。しかし耐食性に難点があるのでメッキ等を施したものを用いるのがよい。絶縁材料では、フレキシブルプリント配線板の製造工程での熱履歴を経て、常温で塑性変形して弾性復元しない樹脂を用いるのがよい。
【0013】
折り曲げ加工を施されて、その折り曲げ形状を保持している折り曲げ部を備えることができる。流通過程において、折り曲げ加工を施された後、その折り曲げ形状をほとんど永久的に保持したフレキシブルプリント配線板を入手することで、折り曲げ工程を省略して電子機器に組み上げることができる。
【0014】
折り曲げ部を、90°の折り曲げ角度を有するようにできる。これによって、たとえばフレキシブルプリント配線板の端を第1固定面に固定した上で、本体配線部の幅方向を固定面から立てるように、配置して、他方の端を、第1固定面に直交する第2固定面に固定することができる。この結果、フレキシブルプリント配線板をコンパクトに、すなわち空間利用効率を高めて、見た目に美しく、意匠性よく、直交する異なる固定面にわたって配置することができる。
【0015】
さらに折り曲げ加工を施された第2の折り曲げ部を備え、該第2の折り曲げ部を鋭角の折り曲げ角度を有するようにできる。これによって、直交する異なる固定面にわたって配置するとき、ともすれば見た目に無理をして曲げて配置した印象を与えがちな、フレキシブルプリント配線板の配置をコンパクトに意匠性よく、幾何学的に配置することができる。また、具体例として、コンパクトに意匠性よく幾何学的にHDD内に配置することができる実装配線板を得ることができる。
【0016】
本発明の電子機器は、上記のいずれかのフレキシブルプリント配線板が用いられるものとすることができる。これによって、品質に優れた、製造コストの低い電子機器とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によって、コンタミ等を発生せずに折り曲げができ、その折り曲げた状態をほとんど永久的に容易に保持することができる、フレキシブルプリント配線板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態のHDDにおける実装配線を示す図である。
【図2】(a)は折り曲げ加工前の断面図、(b)は折り曲げたあとの、図1のIIB−IIB線に沿う断面図、である。
【図3】図1の折り曲げ部K2の断面図である。
【図4】実装配線体の斜視図である。
【図5】実装配線体の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の実施の形態における電子機器であるHDD100を示す平面図である。HDD100は、データを記録する磁気ディスク90と、磁気ディスクとの間で、データの書き込みおよび読み出しを行う、ヘッド支持部21に支持されたヘッド(図示せず)を備えている。ヘッドは、ヘッド支持部(ロードビーム、マウントプレートなど)21に取り付けられて磁気ディスク90のトラックに対面している。ヘッド、ヘッド支持部21などは、アーム25の先に取り付けられており、ヘッドとの間で信号の伝送を行う配線体(図示せず)とともにヘッドスタックアセンブリ(HSA)を形成する。HSA50は、ボイスコイルモータ、VCMコイル23等によって駆動されるアクチュエータを構成し、磁気ディスク90の所定の位置へとヘッドを、軸受け19の回りに回転移動させる。ヘッドとの間で信号の伝送を行う配線体は、実装配線体30、および、ヘッドと実装配線体30との間を連絡するヘッド配線体15、であり、いずれもフレキシブルプリント配線板である。
HSA50は、ヘッド、ヘッド支持部21、アーム25、軸受け19、VCMコイル23、ヘッド配線体15、実装配線体30などによって構成される。
【0020】
実装配線体30は、HSA50の回転に支障をきたさないように、余裕をもって配置され、幅方向を筐体のボード41面に対して立てた本体配線部33を持つ。一方の端の端子部31は、開口部から裏面側に出るコネクタが搭載されており、床面に固定されている。他方の端の端子部32は、ヘッド配線体15と接続されて、アーム25の側面に固定される。この他方に端には、プリアンプ39が実装されて、ヘッド配線体15を経由したヘッドからの信号、またはヘッドへの信号を増幅する。
本体配線部33は、その幅方向を筐体のボード41面にほぼ直交させて立つので、一方の端子部31と本体配線部33との間に折り曲げ部Kが形成される。この折り曲げ部Kでは、折り曲げ角度はほぼ直角である。折り曲げ部Kの折り曲げ線は筐体ボード41の面に沿っている。
また、本体配線部33は、アーム25の回転移動に支障をきたさないように、長さに余裕を持ちながら、アーム25の側面部に、他方の端子部32の面を、コンパクトに沿わせるために折り曲げ部Kが形成される。折り曲げ部Kでは、アーム25の回転移動に追随移動しながらアーム側面にコンパクトに実装されるために、15°〜45°の範囲の適当な角度に折り曲げられる。すなわち折り曲げ部Kでは、折り曲げ線を挟む両側部分が15°〜45°の角度をなしている。折り曲げ部Kの折り曲げ線は、筐体ボード41の面に垂直に立つ。
図1において、実装配線体30には、これら2つの折り曲げ部K,Kが形成されている。本発明の実施の形態のHDD100中のフレキシブルプリント配線板である実装配線体30では、折り曲げ部K,Kを、外付け補強板等を用いることなく、簡単に形成でき、その折り曲げ角度をほとんど永久的に保持できる点に特徴を有する。
【0021】
図2(a)は、折り曲げ加工する前の折り曲げ部Kの断面図である。このフレキシブルプリント配線板30では、基材絶縁層1と、その上に位置する銅配線2と、これらを被覆するカバー絶縁層3とを備え、さらに、銅配線2と異なる異種材料5を、2つの絶縁層1,3の間に備える点に特徴を有する。この異種材料5は、折り曲げ部K,Kを形成するとき、塑性的に折り曲げ加工されて、その折り曲げ形状を、ほとんど永久的に保持することが容易にできる材料とするのがよい。
図2(b)は、図1における折り曲げ部KのIIB−IIB線に沿う断面図である。断面は、異種材料5を縦断する位置である。異種材料5は、折り曲げ角度θが90°をなすように折り曲げ加工を施されており、その角度θを保持している。折り曲げ角度θを保持するといっても、折り曲げ用の器具を用いて折り曲げた位置(折り曲げ加工を進行させて器具上で最も深く折り曲げた位置)での状態の形状を厳格に保持することは必要ではない。折り曲げる前の形状と折り曲げた位置での状態の形状との中間の形状を超えて元の折り曲げ前の形状に戻らない程度であればよい。しかし、その折り曲げ加工によって形成された後の折り曲げ形状は、外力がかからない限り、ほとんど永久的に保持するものとすることができる。
基材絶縁層1/銅配線2/カバー絶縁層3の積層体が複合して、上記の折り曲げ加工に服さない、弾性復元力またはスプリングバック等の力を発生している。異種材料5は、このような弾性復元力またはスプリングバックを抑えて、所定角度を保持しようとする。図2(b)の状態では、上記の積層体1,2,3による弾性復元力と、異種材料5のそれに抗する力とが均衡している。したがって、積層体1,2,3の復元力のため、折り曲げ部Kにおいて、折り曲げ加工で付与する折り曲げ角度よりも所定程度、復元して折り曲げ加工前の状態に近づくことはやむを得ない。または、その復元力を織り込んで、直角よりも大きく鋭角に折り曲げ加工してもよい。
【0022】
異種材料を金属で形成する場合は、たとえば、アルミニウム、チタン、炭素鋼、ステンレス鋼等で構成することができる。炭素鋼は、加工硬化率が大きく、折り曲げ加工によって加工部が硬化するので、折り曲げ形状を保持する上で効果的である。しかし耐食性に難点があるのでメッキ等を施したものを用いるのがよい。絶縁材料では、フレキシブルプリント配線板の製造工程での熱履歴を経て、常温で塑性変形して弾性復元しない樹脂を用いるのがよい。
【0023】
図2(b)において、端子部31はコネクタ35を搭載している。コネクタ35は、筐体ボード41に設けられた開口部41hを通って裏面側に突き出るように配置されている。そして、実装配線体30は、基材絶縁層1の側を内側にしてカバー絶縁層3の側を外側にして、折り曲げられている。
図3は、図1における折り曲げ部Kにおける異種材料5を通る断面図である。こ折り曲げ部Kにおける折り曲げ角度θは、15°〜45°の範囲の適当な角度である。このような深い角度の折り曲げ角度θを形成することで、アーム25の回転移動にスムースに追随しながらアーム側面にコンパクトに実装される。
【0024】
本実施の形態における折り曲げ部Kは筐体ボードへの実装のため、また折り曲げ部Kはアーム側面への実装のために、設けられた折り曲げ部である。したがって、折り曲げ部K,Kには、本体配線部33に隣接して固定または実装のための端子部31,32が配置される。実装または固定のための端子部31,32と本体配線部33との間に、折り曲げ部K,Kを設けることで、一つのフレキシブルプリント配線板30の一方の端を筐体ボード41の面に、そして他方の端を、筐体ボード41に直交するアーム25の側面に、固定した上で、全体的にコンパクトに、すなわち空間利用効率よく、しかも見た目にもよく(意匠性よく)、配置することができる。
【0025】
従来は、折り曲げ部K,Kの折り曲げ角度θを保持するために、外付けの金属補強部材を配置して折り曲げ加工を施していた。このため、折り曲げ加工の際に、HDDに好ましくないコンタミが発生しやすく、また金属補強部材の費用および工程数が増大していた。外付け金属補強部材は、打ち抜き加工、打ち抜き加工のための装置などの工数および費用が発生させる。異種材料5を上下の絶縁層1,3の間に配置することで、外付け補強部材を用いることなく折り曲げ角度を保持することができる。この結果、コンタミの発生を防ぎ、工程数の削減、製造コスト低減を得ることができる。
【0026】
図4は、折り曲げ加工を施した後の、フレキシブルプリント配線板または実装配線体30を示す斜視図である。コネクタ35およびプリアンプ39は、ともに、実装配線体30のカバー絶縁層3の側に配置されている。コネクタ35とプリアンプ39の配置は、必ずしも、実装配線体30の一方の面側に配置する必要はないが、実装配線体またはフレキシブルプリント配線板30の製造のしやすさからは、カバー絶縁層3の側に配置するのがよい。市場での流通は、折り曲げ加工を施す前の状態の実装配線体30であってもよいし、図4に示すように、折り曲げ加工を施した後の、折り曲げ角度を保持した状態の実装配線体であってもよい。
【0027】
図5は、本実施の形態のフレキシブルプリント配線板30の変形例を示す断面図であり、図2(a)に対応する図である。図2(a)では、異種材料5は銅配線2とは離れて配置していたが、図5に示すように、異種材料5は、銅配線2に接触していてもよい。それは、異種材料5が、上下の絶縁層1,3の間から露出しなければ、銅配線2と接触する場合、異種材料5は、金属材料または導電材料でもよいし絶縁材料でもよい。銅配線2と接触する異種材料5の配置をとるかどうかは、折り曲げ部の形態等を考慮して適切なものを選択すればよい。
【0028】
本実施の形態におけるフレキシブルプリント配線板の製造方法では、銅配線2と、その銅配線2の上下に位置する絶縁層1,3と、上下の絶縁層1,3の間に銅配線2と異なる異種材料5とを備えたフレキシブルプリント配線板30を製造する。まず、銅箔を有する絶縁基材1における銅箔をエッチングして絶縁基材1上に銅配線2を形成する工程と、絶縁基材1上に銅箔と異なる材料である異種材料5を配置する工程と、絶縁基材1、銅配線2、異種材料5をカバー絶縁樹脂層3で被覆する工程と、カバー絶縁樹脂層3で被覆されたフレキシブルプリント配線板を折り曲げて折り曲げ形状を保持する折り曲げ部Kを形成する工程を備えることを特徴とする。
【0029】
(他の実施の形態)
1.本実施の形態では、電子機器をHDDとして、そのHDDに用いられるフレキシブルプリント配線板の実装配線体の例について説明したが、HDDに用いられるフレキシブルプリント配線板に限定されず、折り曲げ状態を保持する折り曲げ部があれば、他の電子機器についても本発明のフレキシブルプリント配線板を用いることができる。
2.上記の実施の形態における折り曲げ部K,Kは、コネクタ35またはプリアンプ39を搭載する端子部に設けられたが、コネクタ35やプリアンプ39は無くてもよい。単に固定のための端子部に設けられてもよい。またコネクタを搭載する場合、筐体ボードの上面側に配置してもよいことは言うまでもない。
【0030】
上記において、本発明の実施の形態および実施例について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態および実施例は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、コンタミ等を発生せずに折り曲げができ、その折り曲げた状態を容易に保持することができ、製造コスト、工程短縮が可能な、フレキシブルプリント配線板を得ることができ、この結果、全体的にコンパクトに、すなわち空間利用効率よく、しかも見た目にもよく(意匠性よく)、当該フレキシブルプリント配線板を配置することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 基材絶縁層、2 銅配線、3 カバー絶縁層、5 異種材料、15 ヘッド配線体、19 軸受け、21 ヘッド支持部、23 VCMコイル、25 アーム、30 実装配線体(フレキシブルプリント配線板)、31 一方の端子部(筐体ボードへの固定部)、32 他方の端子部(アーム側面への固定部)、33 本体配線部、35 コネクタ、39 プリアンプ、41 筐体ボード、41h 筐体ボードの開口部、50 HSA、90 磁気ディスク、100 HDD、K 折り曲げ部、K 折り曲げ部(90°)、K 折り曲げ部(鋭角)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅配線と、その銅配線の上下に位置する絶縁層とを備えたフレキシブルプリント配線板であって、
前記上下の絶縁層の間に、前記銅配線と異なる異種材料が位置し、
前記フレキシブルプリント配線板を折り曲げたときにその折り曲げ形状を保持することを特徴とする、フレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
前記フレキシブルプリント配線板を折り曲げ線に沿って所定角度に折り曲げたときにその折り曲げ線を挟む両側部分がなす前記所定角度を保持するものであることを特徴とする、請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
前記フレキシブルプリント配線板は端に端子部を備え、該端子部と前記フレキシブルプリント配線板の本体配線部との境に前記折り曲げ線が設けられることを特徴とする、請求項1または2に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
前記端子部は前記フレキシブルプリント配線板の本体配線部の延在方向から側部に外れる部分に設けられ、前記折り曲げ線が、前記本体配線部の延在方向に並行するように設けられていることを特徴とする、請求項3に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項5】
前記異種材料が、前記銅配線と同じ層、または前記銅配線と異なる層、に配置されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項6】
前記異種材料が、金属または絶縁材料で形成されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項7】
折り曲げ加工を施されて、その折り曲げ形状を保持している折り曲げ部を備えることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項8】
前記折り曲げ部は、90°の折り曲げ角度であることを特徴とする、請求項7に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項9】
さらに折り曲げ加工を施された第2の折り曲げ部を備え、該第2の折り曲げ部は鋭角の折り曲げ角度を有することを特徴とする、請求項7または8に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板が用いられていることを特徴とする、電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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