説明

フレキシブル印刷回路基板用粘着テープ

【課題】ハンダリフロー工程のような高温工程を経た後であっても、千切れることなく剥離ライナーを剥離できるフレキシブル印刷回路基板用粘着テープを提供する。
【解決手段】本発明のフレキシブル印刷回路基板用粘着テープは、粘着剤層の少なくとも一方の面に剥離ライナーを有する粘着テープであって、前記剥離ライナーの長さ方向の引張強度が50〜150MPaであり、前記剥離ライナーの280℃で5分間加熱後の長さ方向の引張強度が20〜120MPaであることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル印刷回路基板の固定用途に用いるための粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器では、配線回路基板が用いられており、このような配線回路基板としては、フレキシブル印刷回路基板(「FPC」と称する場合がある)が広く利用されている。FPCは、通常、電子機器の筺体や補強板(アルミニウム板、ステンレス板、ポリイミド板など)に固定された状態で用いられる。上記筺体や補強板への固定(貼り合わせ)の際には粘着テープ(感圧性接着テープ)が使用されている(特許文献1参照)。
【0003】
上記電子機器の製造においては、FPCをハンダリフロー工程のような高温工程で処理することがあるが、このような高温工程を経る間、上記FPCには剥離ライナーを有した状態の粘着テープが貼付されている場合がある。具体的には、例えば、一方の粘着面が剥離ライナーに保護された状態の両面粘着テープの他方の粘着面をFPCに貼付し、当該両面粘着テープ付きのFPCを高温工程で処理した後、上記剥離ライナーを剥離して、露出させた粘着面を筺体等に貼り合わせる場合などが挙げられる。
【0004】
しかしながら、剥離ライナーを有する粘着テープを貼付したFPCを高温工程にて処理した場合、上記剥離ライナーが高温工程で熱劣化してしまい、剥離する際に上記剥離ライナーが千切れる(破断する)などの問題が発生していた。このような問題の発生は、高温工程における加熱温度が高くなればなるほど顕著であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−302941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、ハンダリフロー工程のような高温工程を経た後であっても、千切れることなく剥離ライナーを剥離できるフレキシブル印刷回路基板用粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、粘着剤層の少なくとも一方の面に、長さ方向の引張強度を特定範囲に制御し、かつ280℃で5分間加熱後の長手方向の引張強度を特定範囲に制御した剥離ライナーを有する粘着テープとすることによって、高温工程を経た後であっても千切れることなく上記剥離ライナーを剥離できる、フレキシブル印刷回路基板用粘着テープが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、粘着剤層の少なくとも一方の面に剥離ライナーを有する粘着テープであって、前記剥離ライナーの長さ方向の引張強度が50〜150MPaであり、前記剥離ライナーの280℃で5分間加熱後の長さ方向の引張強度が20〜120MPaであることを特徴とするフレキシブル印刷回路基板用粘着テープを提供する。
【0009】
さらに、前記のフレキシブル印刷回路基板用粘着テープにおいては、前記剥離ライナーが、グラシン紙又は樹脂コート紙の少なくとも一方の表面側にシリコーン系剥離剤により形成された剥離処理層を有する剥離ライナーであることが好ましい。
【0010】
さらに、前記のフレキシブル印刷回路基板用粘着テープにおいては、前記粘着剤層が、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対し、下記式(I)で表されるアクリル系単量体の含有量が50重量%以上であるモノマー成分より構成されたアクリル系ポリマーを必須成分として含む粘着剤層であることが好ましい。
【化1】

(式(I)中、R1は水素原子又はメチル基、R2は炭素数4〜14のアルキル基を示す)
【0011】
さらに、前記のフレキシブル印刷回路基板用粘着テープにおいては、前記剥離ライナーの、60℃、90%RHの雰囲気下に24時間保存前後の長さ方向および幅方向の寸法変化率がともに2.0%以下であることが好ましい。
【0012】
さらに、前記のフレキシブル印刷回路基板用粘着テープは、280℃にて5分間加熱した後、剥離角度90°、引張速度300mm/分の条件で前記剥離ライナー(幅30mm)を剥離した際に、千切れることなく前記粘着剤層表面から剥離可能であることが好ましい。
【0013】
さらに、前記のフレキシブル印刷回路基板用粘着テープにおいては、前記シリコーン系剥離剤が熱硬化型シリコーン系剥離剤であることが好ましい。
【0014】
さらに、前記のフレキシブル印刷回路基板用粘着テープは、プルタブ付きの粘着テープであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のフレキシブル印刷回路基板用粘着テープは、前記構成を有しているので、高温工程を経た後であっても千切れることなく剥離ライナーを剥離でき、剥離ライナーの剥離作業性に優れる。このため、本発明のフレキシブル印刷回路基板用粘着テープを用いると、FPCを有する電子機器の生産性や品質が向上する。なお、本明細書において「剥離作業性」とは、剥離ライナーの「剥離のしやすさ、剥離作業のしやすさ」を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、プルタブ付きの本発明のフレキシブル印刷回路基板用粘着テープを被着体に貼付した状態の一例を表す概略図(平面図)である。
【図2】図2は、プルタブ付きの本発明のフレキシブル印刷回路基板用粘着テープを被着体に貼付した状態の一例を表す概略図(図1におけるA−A断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のフレキシブル印刷回路基板用粘着テープ(以下、単に「本発明の粘着テープ」と称する場合がある)は、粘着剤層(感圧性接着剤層)の少なくとも一方の面(表面)に、長さ方向の引張強度(引張強さ)が50〜150MPaであり、かつ280℃で5分間加熱後の長さ方向の引張強度(引張強さ)が20〜120MPaである剥離ライナー(「本発明の剥離ライナー」と称する場合がある)を有する。なお、本明細書においては、「粘着テープ」という場合には原則的に剥離ライナー(セパレータ)を含んだものを指すこととし、「粘着テープから剥離ライナーを剥離した残りの部分」を「粘着体」と称する場合がある。また、粘着体の粘着剤層表面を「粘着面」と称する場合がある。本明細書において「粘着テープ」という場合には、シート状のもの、即ち、「粘着シート」も含むものとする。
【0018】
本発明の粘着テープは、両側の表面が粘着面となっている粘着体(両面粘着体)の少なくとも一方の粘着面に本発明の剥離ライナーが設けられた両面粘着テープであってもよいし、一方の表面のみが粘着面となっている粘着体(片面粘着体)の該粘着面に本発明の剥離ライナーが設けられた片面粘着テープであってもよい。中でも、FPCと電子機器の筺体や補強板とを貼り合わせる観点からは、両面粘着テープが好ましい。
【0019】
本発明の粘着テープが両面粘着テープの場合、粘着体の少なくとも一方の粘着面に本発明の剥離ライナーが設けられていればよく、他方の粘着面には必ずしも剥離ライナーが設けられていなくてもよい。粘着体(両面粘着体)の一方の粘着面に本発明の剥離ライナーが設けられ、他方の粘着面に剥離ライナーが設けられない場合(いわゆる「シングルセパレータタイプ」の場合)は、本発明の粘着テープをロール状に巻回することによって、粘着体の両側の粘着面が本発明の剥離ライナーの両表面によって保護された形態をとってもよい。一方、粘着体(両面粘着体)の両側の粘着面にそれぞれ剥離ライナーが設けられる場合(いわゆる「ダブルセパレータタイプ」の場合)は、粘着体の両側の粘着面に設けられた剥離ライナーがともに本発明の剥離ライナーであってもよいし、いずれか一方が本発明の剥離ライナー以外の剥離ライナー(以下、「他の剥離ライナー」と称する場合がある)であってもよい。
【0020】
[本発明の剥離ライナー]
本発明の剥離ライナーの長さ方向の引張強度(「長さ方向の引張強度(初期)」と称する場合がある)は50〜150MPaであり、好ましくは60〜140MPa、より好ましくは65〜135MPaである。長さ方向の引張強度(初期)を50MPa以上とすることにより、剥離時に剥離ライナーが千切れにくく、剥離作業性が向上する。一方、長さ方向の引張強度(初期)を150MPa以下とすることにより、粘着テープの柔軟性を保つことができ、作業性が向上する。なお、通常、本発明の粘着テープの長さ方向(長尺方向、MD)(本発明の粘着テープの製造工程における製造ライン方向(流れ方向))は、本発明の剥離ライナーの長さ方向と一致する。
【0021】
本発明の剥離ライナーの、280℃で5分間加熱後の長さ方向の引張強度(「長さ方向の引張強度(加熱後)」と称する場合がある)は20〜120MPaであり、好ましくは30〜110MPa、より好ましくは40〜105MPaである。長さ方向の引張強度(加熱後)を20MPa以上とすることにより、高温工程を経た後であっても、剥離ライナーを剥離する際に千切れや破断等の不具合が生じないため、高温工程後でも優れた剥離作業性を発揮できる。一方、長さ方向の引張強度(加熱後)を120MPa以下とすることにより、粘着テープの柔軟性を保つことができ、作業性が向上する。
【0022】
本発明の剥離ライナーの、長さ方向の引張強度(初期)および長さ方向の引張強度(加熱後)は、特に限定されないが、ライナー基材の種類(材質)、ライナー基材の厚み、ライナー基材の坪量、ライナー基材の密度などによって制御することができる。
【0023】
本発明の剥離ライナーの幅方向の引張強度(「幅方向の引張強度(初期)」と称する場合がある)は、特に限定されないが、30〜120MPaが好ましく、より好ましくは35〜100MPaである。幅方向の引張強度(初期)を30MPa以上とすることにより、剥離時に剥離ライナーが千切れにくく、剥離作業性が向上する。一方、幅方向の引張強度(初期)を120MPa以下とすることにより、粘着テープの柔軟性が保たれ、作業性が向上する。
【0024】
本発明の剥離ライナーの、280℃で5分間加熱後の幅方向の引張強度(「幅方向の引張強度(加熱後)」と称する場合がある)は、特に限定されないが、10〜100MPaが好ましく、より好ましくは15〜90MPaである。幅方向の引張強度(加熱後)を10MPa以上とすることにより、高温工程を経た後であっても、剥離ライナーを剥離する際に千切れや破断等の不具合が発生しにくく、高温工程後の剥離作業性が向上する。一方、幅方向の引張強度(加熱後)を100MPa以下とすることにより、粘着テープの柔軟性が保たれ、作業性が向上する。
【0025】
本発明の剥離ライナーの、幅方向の引張強度(初期)および幅方向の引張強度(加熱後)は、特に限定されないが、ライナー基材の種類、ライナー基材の厚み、ライナー基材の坪量、ライナー基材の密度などによって制御することができる。
【0026】
上述の引張強度(引張強度(初期)及び引張強度(加熱後))は、JIS P8113に準拠して測定することができる。詳しくは、後述の(評価)の「(1)剥離ライナーの引張強度(初期)」および「(2)剥離ライナーの引張強度(加熱後)」に記載の方法によって測定することができる。
【0027】
本発明の剥離ライナーの、60℃、90%RHの雰囲気下に24時間保存前後の長さ方向の寸法変化率(「寸法変化率(長さ方向)」と称する場合がある)は、特に限定されないが、2.0%以下(例えば、0〜2.0%)が好ましく、より好ましくは0〜1.5%である。寸法変化率(長さ方向)を2.0%以下とすることにより、加湿後に寸法変化してシワや折れや損傷等の接着不良が発生することを防止できる。
【0028】
本発明の剥離ライナーの、60℃、90%RHの雰囲気下に24時間保存前後の幅方向の寸法変化率(「寸法変化率(幅方向)」と称する場合がある)は、特に限定されないが、2.0%以下(例えば、0〜2.0%)が好ましく、より好ましくは0〜1.5%である。寸法変化率(幅方向)を2.0%以下とすることにより、加湿後に寸法変化してシワや折れや損傷等の接着不良が発生することを防止できる。
【0029】
本発明の剥離ライナーの上述の寸法変化率(長さ方向)および寸法変化率(幅方向)は、特に限定されないが、ライナー基材の種類(材質)、ライナー基材の厚み、ライナー基材の坪量、ライナー基材の密度などによって制御することができる。
【0030】
上記寸法変化率は、初期寸法(23℃、50%RHの雰囲気下に少なくとも24時間保存後の寸法)に対する、60℃、90%RHの雰囲気下に24時間保存後の寸法変化の割合であり、下記式にて表される。
寸法変化率(%)=(L1−L0)/L0 × 100
(上記式において、L0は初期寸法であり、L1は60℃、90%RHの雰囲気下に24時間保存後の寸法である)
【0031】
本発明の剥離ライナーは、長さ方向の引張強度(初期)および長さ方向の引張強度(加熱後)が上記範囲に制御されていればよく、特に限定されない。本発明の剥離ライナーとしては、例えば、ライナー基材の少なくとも一方の表面側に剥離処理層が形成された剥離ライナー、フッ素系ポリマーからなる低接着性の剥離ライナー、無極性ポリマー(例えば、オレフィン系ポリマーなど)からなる低接着性の剥離ライナーなどが挙げられる。中でも、剥離ライナーの引張強度や剥離力を制御しやすい等の点で、ライナー基材の少なくとも一方の表面側に剥離処理層が形成された剥離ライナーが好ましい。なお、本明細書において、「ライナー基材」とは剥離ライナーの基材を意味し、「セパレータ原紙」と称する場合もある。
【0032】
(ライナー基材)
本発明の剥離ライナーにおけるライナー基材としては、特に限定されないが、例えば、プラスチック系基材、紙系基材、繊維系基材などの各種基材を用いることができる。また、上記ライナー基材は、単層、複層体のいずれの形態を有していてもよい。上記プラスチック系基材としては、各種のプラスチック系基材を適宜選択して用いることができ、例えば、ポリオレフィン系基材(ポリエチレン系基材、ポリプロピレン系基材等)、ポリエステル系基材(ポリエチレンテレフタレート系基材、ポリエチレンナフタレート系基材、ポリブチレンテレフタレート系基材等)、ポリアミド系基材(いわゆる「ナイロン」系基材)、セルロース系基材(いわゆる「セロハン」系基材)などが挙げられる。また、紙系基材としては、各種の紙系基材を適宜選択して用いることができ、例えば、和紙、洋紙、上質紙、グラシン紙、クラフト紙、クルパック紙、クレープ紙、クレーコート紙、合成紙、これらの原紙の表面に樹脂をコーティングした紙(以下、「樹脂コート紙」又は「樹脂コーティング紙」という)などが挙げられる。上記繊維系基材としては、各種の繊維系基材を適宜選択して用いることができ、例えば、布、不織布、フェルト、ネットなどが挙げられる。上記の中でも、耐熱性の観点で、紙系基材が好ましく、より好ましくは耐熱グラシン紙、耐熱樹脂コート紙である。
【0033】
上記ライナー基材としては、特に加熱による強度低下が小さい点で、耐熱樹脂コート紙が好ましい。上記耐熱樹脂コート紙をライナー基材として用いることにより、本発明の剥離ライナーの長手方向の引張強度(初期)および長手方向の引張強度(加熱後)を上述の範囲に制御しやすく、高温工程後において剥離ライナーを剥離する際に千切れや破断等の不具合が発生しにくいため、高温工程後の剥離作業性が向上する。
【0034】
なお、本明細書において、耐熱樹脂コート紙とは、中性紙である上質紙の表面に、アクリル樹脂等の耐熱樹脂をコーティングした樹脂コート紙をいう。上記耐熱樹脂コート紙としては、例えば、商品名「HCB−90(WH)」(新巴川製紙(株)製)などの市販品も使用することができる。
【0035】
上記ライナー基材が上述の耐熱グラシン紙又は耐熱樹脂コート紙の場合、上記ライナー基材の坪量は、特に限定されないが、50〜150g/m2が好ましく、より好ましくは60〜140g/m2、さらに好ましくは70〜130g/m2である。坪量を50g/m2以上とすることにより、剥離ライナーの強度が向上するため、高温工程後の剥離の際に上記剥離ライナーの千切れや破断等が発生しにくい。一方、坪量を150g/m2以下とすることにより、加工性が向上する。
【0036】
上記ライナー基材には、必要に応じて、表面にコロナ放電処理等の各種表面処理を施したり、エンボス加工等の各種表面加工を施したりすることができる。
【0037】
上記ライナー基材の厚さは、特に限定されないが、25〜150μmが好ましく、より好ましくは50〜140μm、さらに好ましくは70〜130μmである。厚さを25μm以上とすることによって、剥離ライナーの強度が向上するため、高温工程後の剥離の際に上記剥離ライナーの千切れや破断等が発生しにくい。一方、厚さを150μm以下とすることによって、加工性が向上する。
【0038】
(剥離処理層)
本発明の剥離ライナーにおける剥離処理層は、特に限定されないが、例えば、剥離性をコントロールしやすい点で、シリコーン系剥離剤(シリコーン系剥離処理剤)により形成された剥離処理層(シリコーン系剥離処理層)が好ましい。
【0039】
上記シリコーン系剥離剤としては、特に限定されないが、例えば、熱硬化型シリコーン系剥離剤、紫外線硬化型シリコーン系剥離剤などの電離性放射線硬化型シリコーン系剥離剤等が挙げられる。上記の中でも、粘着剤層に対する剥離ライナーの剥離力をより小さくしやすく、剥離作業性(特に、高温工程後の剥離作業性)を向上させやすい点で、熱硬化型シリコーン系剥離剤が好ましい。一方、シリコーン系剥離剤として紫外線硬化型シリコーン系剥離剤を用いた場合、剥離力が比較的大きくなってしまうため、特に、高温工程後の剥離時に剥離ライナーの千切れ等の不具合が発生しやすくなることがある。
【0040】
上記熱硬化型シリコーン系剥離剤としては、加熱によって架橋反応(硬化反応)が進行するタイプのシリコーン系剥離剤であれば特に限定されないが、剥離力の安定性の観点で、加熱による付加反応型の架橋により硬化して剥離性被膜を形成するタイプの熱付加反応型シリコーン系剥離剤が好ましい。なお、上記熱硬化型シリコーン系剥離剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
上記熱付加反応型シリコーン系剥離剤としては、例えば、分子中にアルケニル基を含有するポリオルガノシロキサン(「アルケニル基含有シリコーン」と称する場合がある)、及び分子中に官能基としてヒドロシリル基を含有するポリオルガノシロキサン(「ヒドロシリル基含有シリコーン」と称する場合がある)を必須の構成成分とするシリコーン系剥離剤が挙げられる。
【0042】
上記アルケニル基含有シリコーンとしては、主鎖又は骨格を形成しているケイ素原子(例えば、末端のケイ素原子や、主鎖内部のケイ素原子など)にアルケニル基が結合している構造を有するポリオルガノシロキサンが好ましく、特に、分子中(1分子中)に主鎖又は骨格を形成しているケイ素原子に結合しているアルケニル基を2個以上有しているポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0043】
上記アルケニル基としては、特に限定されないが、例えば、ビニル基(エテニル基)、アリル基(2−プロペニル基)、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などが挙げられる。中でも、ビニル基、ヘキセニル基が好ましい。
【0044】
また、上記アルケニル基含有シリコーンにおける主鎖又は骨格を形成しているポリオルガノシロキサンとしては、特に限定されないが、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリメチルエチルシロキサン等のポリアルキルアルキルシロキサン(ポリジアルキルシロキサン)や、ポリアルキルアリールシロキサンの他、複数種のケイ素原子含有モノマーの共重合体[例えば、ポリ(ジメチルシロキサン−ジエチルシロキサン)等]などが挙げられる。中でも、ポリジメチルシロキサンが好ましい。即ち、上記アルケニル基含有シリコーンとしては、具体的には、ビニル基を官能基として有するポリジメチルシロキサン、ヘキセニル基を官能基として有するポリジメチルシロキサン、又はこれらの混合物が好ましい。
【0045】
上記ヒドロシリル基含有シリコーンとしては、主鎖又は骨格を形成しているケイ素原子(例えば、末端のケイ素原子や、主鎖内部のケイ素原子など)に結合している水素原子を有しているポリオルガノシロキサンが好ましく、特に、分子中(1分子中)に主鎖又は骨格を形成しているケイ素原子に結合している水素原子を2個以上有しているポリオルガノシロキサンが好ましい。また、上記のヒドロシリル基含有シリコーンとしては、具体的には、ポリメチルハイドロジェンシロキサンやポリ(ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン)などが好ましい。
【0046】
上記シリコーン系剥離剤(特に、熱硬化型シリコーン系剥離剤)は、有機溶剤を含有することが好ましい。即ち、上記シリコーン系剥離剤は、溶剤型シリコーン系剥離剤であることが好ましい。上記有機溶剤としては、特に限定されないが、シリコーン系剥離剤の構成成分を均一に溶解する観点から、例えば、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶剤(脂環式炭化水素類や脂肪族炭化水素類など);トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤(芳香族炭化水素類など);酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル系溶剤(エステル類);アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤(ケトン類);メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶剤(アルコール類)などが挙げられる。上記有機溶剤は単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0047】
上記シリコーン系剥離剤としては、例えば、商品名「KS−847T」(信越化学工業(株)製、熱付加反応型シリコーン系剥離剤)、商品名「KS−774」(信越化学工業(株)製、熱付加反応型シリコーン系剥離剤)、商品名「KS−841」(信越化学工業(株)製、熱付加反応型シリコーン系剥離剤)などの市販品を用いることもできる。
【0048】
また、上記シリコーン系剥離剤(特に、熱硬化型シリコーン系剥離剤)は、触媒(硬化触媒)を含有することが好ましい。上記触媒としては、特に限定されないが、例えば、白金系触媒、錫系触媒などが挙げられる。中でも、白金系触媒が好ましく、より好ましくは塩化白金酸、白金のオレフィン錯体、塩化白金酸のオレフィン錯体から選ばれた少なくとも1つの白金系触媒である。上記白金系触媒としては、例えば、商品名「PL−50T」(信越化学工業(株)製)などの市販品を用いることもできる。
【0049】
上記シリコーン系剥離剤(特に、熱硬化型シリコーン系剥離剤)は、室温における保存安定性を付与するために反応抑制剤を含有していてもよい。例えば、3,5−ジメチル−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−インなどの反応抑制剤が使用できる。
【0050】
また、上記シリコーン系剥離剤(特に、熱硬化型シリコーン系剥離剤)は、上記成分の他にも必要に応じて、剥離コントロール剤等を含有していてもよい。例えば、MQレジンなどの剥離コントロール剤、アルケニル基及びヒドロシリル基のいずれも有しないポリオルガノシロキサン(トリメチルシロキシ基末端封鎖ポリジメチルシロキサンなど)等を含んでいてもよい。上記剥離コントロール剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、主剤(例えば、熱付加反応型シリコーン系剥離剤の場合には、アルケニル基含有シリコーン及びヒドロシリル基含有シリコーン)(100重量部)に対して、10〜50重量部が好ましい。
【0051】
さらに、上記シリコーン系剥離剤は、必要に応じて、各種添加成分(添加剤)を含有していてもよい。上記添加成分としては、特に限定されないが、例えば、充填剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、着色剤(染料や顔料など)等が挙げられる。
【0052】
本発明の剥離ライナーは公知乃至慣用の方法により製造することができ、特に限定されないが、例えば、ライナー基材の少なくとも一方の表面側に剥離処理層を形成することにより製造できる。より具体的には、例えば、本発明の剥離ライナーは、上記ライナー基材の表面に上記シリコーン系剥離剤を塗布(塗工)した後、乾燥及び/又は硬化させて剥離処理層を形成することによって、製造することができる。
【0053】
上記シリコーン系剥離剤の塗布(塗工)に際しては、慣用の塗工機(例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなど)を用いることができる。
【0054】
本発明の剥離ライナーにおける剥離処理層(ライナー基材の一方の表面側の剥離処理層)の塗布量は、特に限定されないが、10g/m2以下(例えば、0.01〜10g/m2)が好ましく、より好ましくは0.05〜5g/m2、さらに好ましくは0.1〜3g/m2である。塗布量を0.01g/m2以上とすることにより、剥離力を低くすることができ、剥離作業性(特に、高温工程後の剥離作業性)が向上する。一方、塗布量を10g/m2以下とすることにより、剥離力が小さくなり過ぎず、粘着剤層を適切に保護することができる。また、粘着テープ(粘着体)からのシロキサンガスの発生が抑制される。なお、上記「剥離処理層の塗布量」は、「剥離処理層の単位面積(1m2)当たりの重量」を意味する。
【0055】
本発明の剥離ライナーの特に好ましい具体的構成としては、例えば、下記の(1)や(2)の剥離ライナーなどが挙げられる。ただし、これに限定されるものではない。
(1)耐熱グラシン紙の少なくとも一方の表面側に、熱硬化型シリコーン系剥離剤により形成された剥離処理層が形成された剥離ライナー。
(2)耐熱樹脂コート紙の少なくとも一方の表面側に、熱硬化型シリコーン系剥離剤により形成された剥離処理層が形成された剥離ライナー。
【0056】
特に限定されないが、本発明の粘着テープがダブルセパレータタイプの両面粘着テープである場合、少なくとも本発明の剥離ライナーは、後に剥離される側の剥離ライナーであることが好ましい。この場合、特に、まず両面粘着テープの一方の剥離ライナー(先に剥離される側の剥離ライナー)を剥離して露出させた粘着面(一方の粘着面)をFPCに貼付し、他方の粘着面には本発明の剥離ライナーを有したままの状態で上記両面粘着テープ付きのFPCを高温工程にて処理した後、上記両面粘着テープから本発明の剥離ライナーを剥離して筺体等に貼り合わせる工程を含む電子機器の製造工程において、本発明の粘着テープを好ましく使用できる。上記製造工程においては、高温工程後に本発明の剥離ライナーを剥離する際に、千切れや破断等の不具合が生じないため、作業性(特に、剥離作業性)や生産性が向上する。
【0057】
[他の剥離ライナー]
上述のように、本発明の粘着テープは、両面粘着テープである場合に他の剥離ライナー(本発明の剥離ライナー以外の剥離ライナー)を有していてもよい。上記他の剥離ライナーとしては、特に限定されず、公知乃至慣用の剥離ライナーを使用できる。
【0058】
特に限定されないが、本発明の粘着テープがダブルセパレータタイプの両面粘着テープであって他の剥離ライナーを有する場合には、他の剥離ライナーは、先に剥離される側の剥離ライナーとして使用されることが好ましい。
【0059】
[粘着体]
本発明の粘着テープにおける粘着体は、基材(基材層)を有しない「基材レスタイプの粘着体」であってもよいし、基材を有する「基材を有するタイプの粘着体」であってもよい。上記の基材レスタイプの粘着体としては、例えば、粘着剤層のみからなる粘着体(両面粘着体)などが挙げられる。一方、基材を有するタイプの粘着体としては、例えば、基材の一方の表面側にのみ粘着剤層を有する粘着体(片面粘着体)や、基材の両方の表面側に粘着剤層を有する粘着体(両面粘着体)などが挙げられる。
【0060】
上記粘着体の厚さは、特に限定されないが、10〜70μmが好ましく、より好ましくは15〜65μm、特に好ましくは20〜60μmである。厚さを10μm以上とすることにより、貼付時に発生する応力が分散されやすく、剥がれが生じにくくなる。一方、厚さを70μm以下とすることにより、製品の小型化や薄膜化に有利となる。
【0061】
(粘着剤層)
上記粘着体における粘着剤層を形成するための粘着剤としては、特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤などの公知の粘着剤を使用することができる。上記粘着剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、上記粘着剤は、いずれの形態を有している粘着剤であってもよく、例えば、エマルジョン型粘着剤、溶剤型(溶液型)粘着剤、活性エネルギー線硬化型粘着剤、熱溶融型粘着剤(ホットメルト型粘着剤)などが使用できる。
【0062】
中でも、上記粘着剤層を形成するための粘着剤としては、耐熱性、高温工程後の剥離作業性の観点で、アクリル系粘着剤が好ましい。即ち、上記粘着剤層は、アクリル系ポリマーを必須成分として含む粘着剤層(アクリル系粘着剤層)であることが好ましい。さらに、上記粘着剤層(アクリル系粘着剤層)は、アクリル系ポリマーを必須成分として含む粘着剤組成物(アクリル系粘着剤組成物)から形成された粘着剤層(アクリル系粘着剤層)であることが好ましい。上記粘着剤層(アクリル系粘着剤層)(100重量%)中のアクリル系ポリマーの含有量は、特に限定されないが、65重量%以上(例えば、65〜90重量%)が好ましく、より好ましくは68〜87重量%である。
【0063】
上記アクリル系ポリマーとしては、下記式(I)で表されるアクリル系単量体を必須のモノマー成分(単量体成分)として構成されるアクリル系ポリマーが好ましい。
【化2】

上記式(I)において、R1は水素原子又はメチル基である。また、R2は炭素数4〜14のアルキル基である。R2としては、例えば、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基などが挙げられる。
【0064】
具体的には、上記式(I)で表されるアクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシルなどが挙げられる。上記式(I)で表されるアクリル系単量体は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。上記の中でも、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)、アクリル酸n−ブチルが好ましい。なお、上記の「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」(「アクリル」及び「メタクリル」のうち、いずれか一方又は両方)を表し、他も同様である。
【0065】
上記式(I)で表されるアクリル系単量体の含有量は、特に限定されないが、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、50重量%以上(例えば、50〜99重量%)が好ましく、より好ましくは80〜98重量%、さらに好ましくは85〜98重量%である。含有量を50重量%以上とすることにより、アクリル系ポリマーとしての特性(粘着性など)を発揮させやすくなる。
【0066】
上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分には、さらに、極性基含有単量体、多官能性単量体やその他の単量体が共重合モノマー成分(式(I)で表されるアクリル系単量体に対する共重合モノマー成分)として含まれていてもよい。これらの共重合モノマー成分を用いることにより、例えば、被着体への接着力を向上させたり、粘着剤層の凝集力を高めたりすることができる。
【0067】
上記極性基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有単量体(無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有単量体も含む);(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、ビニルアルコール、アリルアルコールなどのヒドロキシル基(水酸基)含有単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有単量体;アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリンの他、ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール等の複素環含有ビニル系単量体;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系単量体;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有単量体;2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェートなどのリン酸基含有単量体;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有単量体;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有単量体などが挙げられる。なお、上記極性基含有単量体は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、極性基含有単量体としては、カルボキシル基含有単量体が好ましく、より好ましくはアクリル酸(AA)である。
【0068】
上記極性基含有単量体の含有量は、特に限定されないが、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、1〜50重量%が好ましく、より好ましくは2〜20重量%、さらに好ましくは2〜15重量%である。極性基含有単量体の含有量を1重量%以上とすることにより、凝集力が向上する。一方、極性基含有単量体の含有量を50重量%以下とすることにより、粘着剤層が硬くなり過ぎず、粘着力が向上する。
【0069】
上記多官能性単量体は、分子中(1分子中)に2以上のエチレン性不飽和基(炭素−炭素二重結合を含む有機基)を有する単量体である。上記エチレン性不飽和基としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基(ビニル基(エテニル基)、アリル基(2−プロペニル基)、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基など)などが挙げられる。上記多官能性単量体としては、具体的には、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。
【0070】
上記多官能性単量体の含有量は、特に限定されないが、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、0.5重量%以下(例えば、0〜0.5重量%)が好ましく、より好ましくは0〜0.3重量%である。多官能性単量体の含有量を0.5重量%以下とすることにより、粘着剤層の凝集力が高くなり過ぎず、粘着力が向上する。なお、架橋剤を用いる場合には多官能性単量体を用いなくてもよいが、架橋剤を用いない場合には、多官能性単量体の含有量は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、0.001〜0.5重量%が好ましく、より好ましくは0.002〜0.1重量%である。
【0071】
また、上記極性基含有単量体や上記多官能性単量体以外のその他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピルなどのアルキル基の炭素数が1〜3の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどのアルキル基の炭素数が15〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;フェニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン又はジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニルなどが挙げられる。
【0072】
上記アクリル系ポリマーは、上記のモノマー成分を公知乃至慣用の重合方法により重合して調製することができる。アクリル系ポリマーの重合方法としては、例えば、溶液重合方法、乳化重合方法、塊状重合方法や活性エネルギー線照射による重合方法(活性エネルギー線重合方法)などが挙げられる。上記の中でも透明性、耐水性、コストなどの点で、溶液重合方法、活性エネルギー線重合方法が好ましく、より好ましくは溶液重合方法である。
【0073】
上記の溶液重合に際しては、各種の一般的な溶剤を用いることができる。このような溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などの有機溶剤が挙げられる。溶剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0074】
上記アクリル系ポリマーの重合に際して用いられる重合開始剤などは、特に限定されず、公知乃至慣用のものの中から適宜選択して使用することができる。より具体的には、重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン等の過酸化物系重合開始剤などの油溶性重合開始剤が好ましく例示される。重合開始剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量としては、特に限定されず、従来、重合開始剤として利用可能な範囲であればよい。
【0075】
上記アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、−70〜−30℃が好ましく、より好ましくは−65〜−35℃である。ガラス転移温度を−70℃以上とすることにより、耐熱性が向上する。一方、ガラス転移温度を−30℃以下とすることにより、粘着剤層が硬くなり過ぎず、粘着力が向上する。なお、上記アクリル系ポリマーのガラス転移温度は、例えば、アクリル系ポリマーを構成するモノマーの種類や含有量などによって制御することができる。
【0076】
上記アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、下記式で表されるガラス転移温度(理論値)である。
1/Tg = W/Tg+W/Tg+・・・+W/Tg
上記式中、Tgはアクリル系ポリマーのガラス転移温度(単位:K)、Tgはモノマーiがホモポリマーを形成した際のガラス転移温度(単位:K)、Wはモノマーiの全モノマー成分中の重量分率を表す(i=1、2、・・・・n)。なお、上記はアクリル系ポリマーがモノマー1、モノマー2、・・・、モノマーnのn種類のモノマー成分から構成される場合の計算式である。
【0077】
上記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、特に限定されないが、40万〜150万が好ましく、より好ましくは45万〜140万、さらに好ましくは50万〜130万である。アクリル系ポリマーの重量平均分子量を40万以上とすることにより、凝集力が向上する。一方、150万以下とすることにより、塗工性が向上する。なお、アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、重合開始剤の種類やその使用量、重合の際の温度や時間の他、モノマー濃度、モノマー滴下速度などによりコントロールすることができる。
【0078】
上記の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定することができる。具体的には、例えば、下記の方法及び条件に従って、測定することができる。
(サンプルの調製方法)
アクリル系ポリマーを下記の溶離液に溶解させて0.1%DMF溶液とし、1日放置した後、0.45μmメンブレンフィルターにてろ過し、ろ液についてGPC測定を行った。
(測定条件)
GPC装置:HLC−8120GPC(東ソー(株)製)
カラム:TSKgel superAWM−H,TSKgel superAW4000,TSKgel superAW2500(東ソー(株)製)
カラムサイズ:各6mmφ×15cm、計45cm
カラム温度:40℃
溶離液:10mM−LiBr、10mM−りん酸/DMF
流速:0.4mL/min
入口圧:4.6MPa
注入量:20μL
検出器:示差屈折計
標準試料:ポリエチレンオキサイド
データ処理装置:GPC−8020(東ソー(株)製)
【0079】
本発明の粘着テープの粘着剤層を形成するための粘着剤組成物は、架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤を用いることにより、粘着剤層を構成するベースポリマー(例えば、アクリル系ポリマー)を架橋させ、粘着剤層の凝集力を一層大きくすることができる。上記架橋剤は、公知乃至慣用のものの中から適宜選択して使用することができ、特に限定されない。具体的には、例えば、多官能性メラミン化合物(メラミン系架橋剤)、多官能性エポキシ化合物(エポキシ系架橋剤)、多官能性イソシアネート化合物(イソシアネート系架橋剤)などが好ましく使用される。上記架橋剤は単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。上記の中でも、反応性の観点で、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が好ましく、より好ましくはエポキシ系架橋剤である。
【0080】
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類などが挙げられ、その他、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートL」]、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートHL」]なども用いられる。
【0081】
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などが挙げられる。市販品としては、例えば、三菱ガス化学(株)製、商品名「テトラッドC」を用いることができる。
【0082】
上記粘着剤組成物における架橋剤の含有量は、特に限定されないが、エポキシ系架橋剤の場合には、上記アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.02〜0.1重量部が好ましく、より好ましくは0.03〜0.08重量部である。架橋剤の含有量を0.02重量部以上とすることにより、粘着剤層の凝集力が向上する。一方、含有量を0.1重量部以下とすることにより、粘着剤層が硬くなり過ぎず粘着力が向上する。
【0083】
また、上記粘着剤組成物は、粘着性向上の観点から、粘着付与樹脂(粘着付与剤)を含有することが好ましい。上記粘着付与樹脂としては、例えば、テルペン系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、ロジン系粘着付与樹脂、石油系粘着付与樹脂などが挙げられる。上記の中でも、テルペン系粘着付与樹脂が好ましい。これら粘着付与樹脂は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
上記テルペン系粘着付与樹脂としては、例えば、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体などのテルペン系樹脂や、これらのテルペン系樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性など)した変性テルペン系樹脂(例えば、テルペンフェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂など)などが挙げられる。
【0085】
上記フェノール系粘着付与樹脂としては、各種フェノール類(例えば、フェノール、m−クレゾール、3,5−キシレノール、p−アルキルフェノール、レゾルシンなど)とホルムアルデヒドとの縮合物(例えば、アルキルフェノール系樹脂、キシレンホルムアルデヒド系樹脂など)、前記フェノール類とホルムアルデヒドとをアルカリ触媒で付加反応させたレゾールや、前記フェノール類とホルムアルデヒドとを酸触媒で縮合反応させて得られるノボラックの他、ロジン類(未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体など)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジン変性フェノール樹脂などが挙げられる。
【0086】
上記ロジン系粘着付与樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの未変性ロジン(生ロジン)や、これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合などにより変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンの他、その他の化学的に修飾されたロジンなど)の他、各種のロジン誘導体などが挙げられる。なお、前記ロジン誘導体としては、例えば、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したロジンのエステル化合物や、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなどの変性ロジンをアルコール類によりエステル化した変性ロジンのエステル化合物などのロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなど)を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなど)、不飽和脂肪酸変性ロジン類や不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシル基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体等のロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩などが挙げられる。
【0087】
上記石油系粘着付与樹脂としては、例えば、芳香族系石油樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂(脂肪族環状石油樹脂)、脂肪族・芳香族系石油樹脂、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加石油樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂等の公知の石油樹脂を用いることができる。具体的には、芳香族系石油樹脂としては、例えば、炭素数が8〜10であるビニル基含有芳香族系炭化水素(スチレン、o−ビニルトルエン、m−ビニルトルエン、p−ビニルトルエン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、インデン、メチルインデンなど)が1種のみ又は2種以上用いられた重合体などが挙げられる。芳香族系石油樹脂としては、ビニルトルエンやインデン等の留分(いわゆる「C9石油留分」)から得られる芳香族系石油樹脂(いわゆる「C9系石油樹脂」)を好適に用いることができる。また、脂肪族系石油樹脂としては、例えば、炭素数4〜5のオレフィンやジエン[ブテン−1、イソブチレン、ペンテン−1等のオレフィン;ブタジエン、ピペリレン(1,3−ペンタジエン)、イソプレン等のジエンなど]が1種のみ又は2種以上用いられた重合体などが挙げられる。脂肪族系石油樹脂としては、ブタジエン、ピペリレンやイソプレン等の留分(いわゆる「C4石油留分」や「C5石油留分」など)から得られる脂肪族系石油樹脂(いわゆる「C4系石油樹脂」や「C5系石油樹脂」など)を好適に用いることができる。脂環族系石油樹脂としては、例えば、脂肪族系石油樹脂(いわゆる「C4系石油樹脂」や「C5系石油樹脂」など)を環化二量体化した後重合させた脂環式炭化水素系樹脂、環状ジエン化合物(シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ジペンテン、エチリデンビシクロヘプテン、ビニルシクロヘプテン、テトラヒドロインデン、ビニルシクロヘキセン、リモネンなど)の重合体又はその水素添加物、前記の芳香族系炭化水素樹脂や、下記の脂肪族・芳香族系石油樹脂の芳香環を水素添加した脂環式炭化水素系樹脂などが挙げられる。脂肪族・芳香族系石油樹脂としては、スチレン−オレフィン系共重合体などが挙げられる。脂肪族・芳香族系石油樹脂としては、いわゆる「C5/C9共重合系石油樹脂」などを用いることができる。
【0088】
上記粘着付与樹脂としては、市販品を用いることが可能であり、例えば、商品名「YSポリスターS145」(ヤスハラケミカル(株)製、テルペンフェノール系樹脂、軟化点145℃)などを使用することができる。
【0089】
上記粘着剤組成物中の粘着付与樹脂の含有量は、特に限定されないが、アクリル系ポリマー(100重量部)に対して、10〜50重量部が好ましく、より好ましくは12〜45重量部である。含有量を10重量部以上とすることにより、粘着力が向上する。一方、含有量を50重量部以下とすることにより、粘着剤層の凝集力が向上する。
【0090】
また、上記粘着剤組成物は、必要に応じて、架橋促進剤、老化防止剤、充填剤、着色剤(顔料や染料など)、紫外線吸収剤、連鎖移動剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤などの公知の添加剤や溶剤(前述のアクリル系ポリマーの溶液重合の際に使用可能な溶剤など)を含有していてもよい。
【0091】
上記粘着剤組成物は、特に限定されないが、例えば、アクリル系ポリマー(又はアクリル系ポリマー溶液)、架橋剤やその他の添加剤を混合することによって、調製することができる。
【0092】
本発明の粘着テープにおける粘着体の粘着剤層の形成方法としては、特に限定されないが、上記粘着剤組成物を、基材又は剥離ライナー上に塗布(塗工)し、必要に応じて、乾燥及び/又は硬化させる方法を挙げることができる。
【0093】
なお、上記粘着剤層の形成方法における塗布(塗工)には、公知のコーティング法を用いることが可能であり、慣用のコーター、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーターなどを用いることができる。
【0094】
上記粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、10〜70μmが好ましく、より好ましくは15〜65μm、さらに好ましくは20〜60μmである。厚さを10μm以上とすることにより、貼付時に発生する応力が分散されやすく、剥がれが生じにくくなる。一方、厚さを70μm以下とすることにより、製品の小型化や薄膜化に有利となる。
【0095】
上記粘着剤層のゲル分率は、特に限定されないが、20〜70%(重量%)が好ましく、より好ましくは28〜65%である。上記ゲル分率は、酢酸エチル不溶分として求めることができ、具体的には、粘着剤層を酢酸エチル中に23℃で7日間浸漬した後の不溶成分の、浸漬前の試料に対する重量分率(単位:重量%)として求められる。ゲル分率を20%以上とすることにより、粘着剤層の凝集力が向上する。一方、ゲル分率を70%以下とすることにより、粘着剤層が硬くなり過ぎず、粘着力が向上する。
【0096】
上記ゲル分率(溶剤不溶分の割合)は、具体的には、例えば、以下の「ゲル分率の測定方法」により算出される値である。
(ゲル分率の測定方法)
本発明の粘着テープから粘着剤層:約0.1gを採取し、平均孔径0.2μmの多孔質テトラフルオロエチレンシート(商品名「NTF1122」、日東電工(株)製)に包んだ後、凧糸で縛り、その際の重量を測定し、該重量を浸漬前重量とする。なお、該浸漬前重量は、粘着剤層(上記で採取した粘着剤層)、テトラフルオロエチレンシート及び凧糸との総重量である。また、テトラフルオロエチレンシートと凧糸の総重量も測定しておき、該重量を包袋重量とする。
次に、粘着剤層をテトラフルオロエチレンシートで包み凧糸で縛ったもの(「サンプル」と称する)を、酢酸エチルで満たした50ml容器に入れ、23℃にて7日間静置する。その後、容器からサンプル(酢酸エチル処理後)を取り出して、アルミニウム製カップに移し、130℃で2時間、乾燥機中で乾燥して酢酸エチルを除去した後、重量を測定し、該重量を浸漬後重量とする。
そして、下記の式からゲル分率を算出する。
ゲル分率(重量%)=(A−B)/(C−B)×100
(上記式において、Aは浸漬後重量であり、Bは包袋重量であり、Cは浸漬前重量である。)
【0097】
なお、上記ゲル分率は、例えば、アクリル系ポリマーのモノマー組成や重量平均分子量、架橋剤の使用量(添加量)等により制御することができる。
【0098】
上記粘着剤層の、動的粘弾性測定により測定される損失正接(tanδ)のピーク温度(損失正接(tanδ)が極大値を示す温度)は、特に限定されないが、−20〜30℃が好ましく、より好ましくは−18〜25℃、さらに好ましくは−15〜20℃である。損失正接(tanδ)のピーク温度を−20℃以上とすることにより、耐熱性が向上する。一方、損失正接(tanδ)のピーク温度を30℃以下とすることにより、粘着剤層が硬くなり過ぎず粘着力が向上する。上記粘着剤層の損失正接(tanδ)のピーク温度は、動的粘弾性測定により測定される。例えば、粘着剤層を厚さ約1.5mm程度になるように複数層を積層し、Reometric Scientific社製「Advanced Reometric Expansion System(ARES)」にて、せん断モードで、周波数1Hzの条件で、−70〜200℃の範囲で昇温速度5℃/分で測定することができる。
【0099】
なお、上記粘着剤層の損失正接(tanδ)のピーク温度は、例えば、アクリル系ポリマーのモノマー組成、粘着付与樹脂の種類や含有量等により制御することができる。
【0100】
(基材)
本発明の粘着テープにおける粘着体が、基材を有するタイプの粘着体である場合、上記基材としては、特に限定されないが、例えば、耐熱性を有する基材が好ましく、具体的には、布、不織布、フェルト、ネットなどの繊維系基材;各種の紙などの紙系基材;金属箔、金属板などの金属系基材;各種樹脂(ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィドなど)によるフィルムやシートなどのプラスチック系基材;ゴムシートなどのゴム系基材;発泡シートなどの発泡体や、これらの積層体等の適宜な薄葉体を用いることができる。なお、上記基材は単層の形態を有していてもよいし、複層の形態を有していてもよい。
【0101】
上記基材としては、耐熱性、粘着剤層の投錨性、コストなどの観点から、繊維系基材が好ましく、特に不織布がより好ましい。不織布としては、耐熱性を有する天然繊維による不織布を好ましく使用することができ、中でもマニラ麻を含む不織布(マニラ麻系不織布)がより好ましい。
【0102】
上記基材の厚さとしては、特に限定されないが、5〜40μmが好ましく、より好ましくは10〜30μm、さらに好ましくは10〜20μmである。厚さを5μm以上とすることにより、粘着テープの強度が向上する。一方、厚さを40μm以下とすることにより、製品の小型化、薄膜化に有利となる。
【0103】
上記基材が不織布である場合、不織布の坪量は、特に限定されないが、5〜15g/mが好ましく、より好ましくは6〜10g/mである。坪量を5g/m以上とすることにより、粘着テープの強度が向上する。一方、坪量を15g/m以下とすることにより、基材の厚さを上記範囲に制御しやすくなる。
【0104】
なお、上記基材の強度は、特に限定されないが、長手方向(MD)の引張強度が2N/15mm以上であることが好ましく、より好ましくは5N/15mm以上である。なお、引張強度は、剥離ライナーの引張強度と同様に、JIS P8113に準拠して測定することができる。
【0105】
上記基材の表面には、必要に応じて、粘着剤層との密着性を高めるため、公知乃至慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的方法による酸化処理等が施されていてもよく、下塗り剤によるコーティング処理等が施されていてもよい。
【0106】
本発明の粘着テープにおける粘着体は、上記粘着剤層や上記基材以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層(例えば、中間層、下塗り層など)を有していてもよい。
【0107】
本発明の粘着テープにおける粘着体の粘着面の、引張速度300mm/分で測定されるガラスエポキシ樹脂に対する180°引き剥がし粘着力は、特に限定されないが、8N/20mm以上(例えば、8〜30N/20mm)が好ましく、より好ましくは10〜30N/20mmである。上記180°引き剥がし粘着力を8N/20mm以上とすることにより、被着体に対して強固に固定することができる。なお、本発明の粘着テープが両面粘着テープの場合には、いずれの粘着面をガラスエポキシ樹脂に貼り合わせた場合にも、180°引き剥がし粘着力が上記範囲を満たすことが好ましい。上記180°引き剥がし粘着力は、例えば、JIS Z0237(2000)に準拠し、引張試験機を用いて、23℃、50%RHの雰囲気下において、ガラスエポキシ樹脂(ガラスエポキシ基板、商品名「FR−4」、日立化成工業(株)製)を被着体とした粘着テープ(粘着体)の180°剥離試験(圧着:2kgのゴムローラーを1往復、引張速度:300mm/分)を行うことにより、測定することができる。
【0108】
なお、上記180°引き剥がし粘着力は、アクリル系ポリマーのモノマー組成や分子量、粘着付与樹脂の種類や添加量などによって制御することができる。
【0109】
[粘着テープ]
本発明の粘着テープは、上記粘着体の少なくとも一方の粘着面に本発明の剥離ライナー
が設けられた構成を有する。即ち、本発明の粘着テープは、少なくとも粘着体と、上記粘着体の少なくとも一方の粘着面に設けられた本発明の剥離ライナーとを有する。
【0110】
本発明の粘着テープは公知乃至慣用の方法を用いて製造することができ、特に限定されないが、例えば、本発明の粘着テープにおける粘着体が基材を有しない場合には、例えば、本発明の剥離ライナー上に粘着剤層を形成することにより製造することができる。一方、本発明の粘着テープにおける粘着体が基材を有する場合には、例えば、基材の表面に粘着剤層を直接形成してもよいし(直写法)、本発明の剥離ライナー上に粘着剤層を形成した後、基材に転写する(貼り合わせる)ことにより、基材上に粘着剤層を設けてもよい(転写法)。
【0111】
本発明の粘着テープは、長さ方向の引張強度(初期)および長さ方向の引張強度(加熱後)が上述の範囲に制御された本発明の剥離ライナーを有するため、本発明の剥離ライナーを有したままの粘着テープを貼付したFPCを、ハンダリフロー工程のような高温工程で処理した場合でも、高温工程後に千切れることなく本発明の剥離ライナーを剥離でき、優れた剥離作業性を発揮できる。このため、本発明の粘着テープを用いると、電子機器の生産性や品質が向上する。
【0112】
本発明の粘着テープは、280℃にて5分間加熱した後、剥離角度90°、引張速度300mm/分の条件で本発明の剥離ライナー(幅:30mm)を剥離した際に、千切れる(破断する)ことなく粘着剤層表面から剥離することができる。従って、本発明の粘着テープは、ハンダリフロー工程のような高温工程を経た後であっても、剥離ライナーの剥離作業性に優れる。なお、上記の本発明の剥離ライナーの剥離は、例えば、JIS Z0237(2000)に準拠し、引張試験機を用いて、23℃、50%RHの雰囲気下において、幅30mm×長さ130mmのサイズに切り出した粘着テープを用いて実施できる。
【0113】
本発明の粘着テープは、剥離ライナーの剥離がしやすい点で、プルタブ付きの粘着テープ(プルタブ加工された粘着テープ)であることが好ましい。上記プルタブ(剥離用プルタブ)とは、粘着テープから剥離ライナーを剥離する際に、掴み代として使用される部分をいい、上記プルタブを有することによって剥離ライナーの剥離が容易となる。
【0114】
上記プルタブは、通常、粘着テープにおける剥離ライナーの周縁の一部を粘着体から突出させた部分(当該部分は粘着体とは接触していない)によって構成される。中でも、上記プルタブは、少なくとも本発明の剥離ライナーの一部を粘着体から突出させることによって形成されたプルタブであることが好ましい。具体的には、例えば、本発明の粘着テープにおけるプルタブは、本発明の剥離ライナーの長さ方向の端部の一部又は全部を粘着体から突出させることによって形成されたプルタブであることが好ましい。
【0115】
図1は、プルタブ付きの本発明の粘着テープ(本発明の剥離ライナーを剥離するためのプルタブを有する本発明の粘着テープ)を被着体に貼付した状態の一例を表す概略図(平面図)である。また、図2は、図1におけるA−A断面図である。図1、図2において、1は本発明の剥離ライナーを表し、11は、プルタブ(剥離用プルタブ)を表す。また、2は本発明の粘着テープにおける粘着体を表し、3は粘着テープ(両面粘着テープ)を表す。4は、例えば、FPCや電子部品の筺体等の被着体を表し、表面に粘着テープ3の一方の粘着面が貼付されている。図1、図2に示す状態の粘着テープ3においては、プルタブ11を掴み、引き上げることによって、本発明の剥離ライナー1を容易に剥離することができる。このように、プルタブが形成されることによって、一層優れた剥離作業性を発揮できる。
【0116】
上記プルタブのサイズは特に限定されないが、一般的には、剥離作業時の掴みやすさ等の観点から、図1に示すように、粘着テープの幅よりも細幅の形状に形成される。また、プルタブが形成される位置やプルタブの数は、粘着テープの使用態様に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。
【0117】
上記プルタブは、特に限定されず、公知乃至慣用のプルタブの形成方法(プルタブ加工の方法)により形成することができる。プルタブ付きの本発明の粘着テープの製造方法としては、例えば、粘着剤層(両面粘着体)の両粘着面にセパレータが形成された粘着テープを打ち抜き加工する時に、片側セパレータ及び粘着剤層のみを切断し、切断したセパレータ及び粘着剤層を剥がす方法などが挙げられる(即ち、上記プルタブは、切断されていない方のセパレータの一部により構成される)。
【0118】
本発明の粘着テープは、上述のように、高温工程を経た後に本発明の剥離ライナーを剥離する際に千切れや破断等の不具合が生じることがないため、剥離作業性に優れる。さらに、本発明の粘着テープをプルタブ付きの粘着テープとした場合には、高温工程後の本発明の剥離ライナーの剥離の際に千切れや破断等の不具合が生じないことに加えて、プルタブを有することによって上記剥離ライナーの剥離が容易となって、一層優れた剥離作業性を発揮する。
【0119】
これに対して、従来の粘着テープは、高温工程を経た後に剥離ライナーを剥離する際に、該剥離ライナーの熱劣化によって千切れや破断等の不具合が生じるという問題を有していた。特に、剥離のしやすさを目的としてプルタブ付きの粘着テープとした場合には、比較的細幅に形成されたプルタブ部分において容易に千切れや破断が生じやすく、著しく剥離作業性が低下するという問題が発生していた。
【0120】
本発明の粘着テープは、FPCを被着体に固定する用途に用いられるフレキシブル印刷回路基板用粘着テープ(フレキシブル印刷回路基板固定用粘着テープ)である。本発明の粘着テープによりFPCを固定する被着体は、特に限定されないが、例えば、携帯電話の筐体、モーター、ベース、基板、カバーなどが挙げられる。また、本発明の粘着テープを用いて、FPCを上記の被着体に貼付固定することにより、ハードディスクドライブ、携帯電話、モーターなどが製造される。
【0121】
上記フレキシブル印刷回路基板(FPC)は、特に限定されないが、電気絶縁体層(「ベース絶縁層」と称する場合がある)と、上記ベース絶縁層上に所定の回路パターンとなるように形成された導電体層(「導体層」と称する場合がある)、および、必要に応じて、上記導体層上に設けられた被覆用電気絶縁体層(「カバー絶縁層」と称する場合がある)から構成される。なお、複数の回路基板が積層された構造の多層構造を有していてもよい。
【0122】
上記ベース絶縁層は、電気絶縁材により形成された電気絶縁体層である。ベース絶縁層を形成するための電気絶縁材としては、特に限定されず、公知のフレキシブル印刷回路基板で用いられている電気絶縁材の中から適宜選択して用いることができる。具体的には、電気絶縁材としては、例えば、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエーテルニトリル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂など)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアミド系樹脂(いわゆる「アラミド樹脂」など)、ポリアリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、液晶ポリマー等のプラスチック材などが好ましく挙げられる。なお、電気絶縁材は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、ポリイミド系樹脂が好適である。ベース絶縁層は、単層、積層体のいずれの形態を有していてもよい。ベース絶縁層の表面には、各種の表面処理(例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、粗面化処理、加水分解処理など)が施されていてもよい。ベース絶縁層の厚みとしては、特に限定されないが、3〜100μmが好ましく、より好ましくは5〜50μm、さらに好ましくは10〜30μmである。
【0123】
上記導体層は、導電材により形成された導電体層である。導体層は、上記ベース絶縁層上に所定の回路パターンとなるように形成されている。このような導体層を形成するための導電材としては、特に限定されず、公知のフレキシブル印刷回路基板で用いられている導電材の中から適宜選択して用いることができる。具体的には、導電材としては、例えば、銅、ニッケル、金、クロムの他、各種の合金(例えば、はんだ)や、白金等の金属材や、導電性プラスチック材などが挙げられる。なお、導電材は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、金属材(特に、銅)が好適である。導体層は、単層、積層体のいずれの形態を有していてもよい。導体層の表面には、各種の表面処理が施されていてもよい。導体層の厚みとしては、特に限定されないが、1〜50μmが好ましく、より好ましくは2〜30μm、さらに好ましくは3〜20μmである
【0124】
上記導体層の形成方法としては、特に限定されず、公知の形成方法(例えば、サブトラクティブ法、アディティブ法、セミアディティブ法などの公知のパターニング法)から適宜選択することができる。例えば、導体層がベース絶縁層の表面に直接的に形成されている場合、導体層は、無電解メッキ法、電解メッキ法、真空蒸着法、スパッタリング法などを利用して、所定の回路パターンとなるように、導電材をベース絶縁層上にメッキや蒸着等させることにより、形成することができる。
【0125】
上記カバー絶縁層は、電気絶縁材により形成され且つ導体層を被覆する被覆用電気絶縁体層(保護用電気絶縁体層)である。カバー絶縁層は、必要に応じて設けられ、必ずしも設けられている必要はない。上記カバー絶縁層を形成するための電気絶縁材としては、特に限定されず、ベース絶縁層の場合と同様に、公知のフレキシブル印刷回路基板で用いられている電気絶縁材の中から適宜選択して用いることができる。具体的には、カバー絶縁層を形成するための電気絶縁材としては、例えば、上記ベース絶縁層を形成するための電気絶縁材として例示の電気絶縁材などが挙げられ、ベース絶縁層の場合と同様に、プラスチック材(特に、ポリイミド系樹脂)が好適である。なお、上記カバー絶縁層を形成するための電気絶縁材は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。カバー絶縁層は、単層、積層体のいずれの形態を有していてもよい。カバー絶縁層の表面には、各種の表面処理(例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、粗面化処理、加水分解処理など)が施されていてもよい。カバー絶縁層の厚みとしては、特に限定されないが、3〜100μmが好ましく、より好ましくは5〜50μm、さらに好ましくは10〜30μmである。
【0126】
上記カバー絶縁層の形成方法としては、特に限定されず、公知の形成方法(例えば、電気絶縁材を含む液状物又は溶融物を塗布し乾燥させる方法、導体層の形状に対応し且つ電気絶縁材により形成されたフィルム又はシートを積層させる方法など)から適宜選択することができる。
【実施例】
【0127】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0128】
実施例1
(粘着剤組成物の調製)
アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA):90重量部、及びアクリル酸(AA):10重量部を、210重量部の酢酸エチル中で、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル:0.4重量部の共存下、かつ窒素置換下で、60〜80℃で攪拌しながら溶液重合処理して、アクリル系ポリマーを含むアクリル系ポリマー溶液(粘度:約120ポイズ、重合率:99.2%、固形分:30.0重量%)を調製した。
上記アクリル系ポリマー溶液に、アクリル系ポリマー100重量部に対して、テルペンフェノール系粘着付与樹脂(商品名「YSポリスターS145」、ヤスハラケミカル(株)製、軟化点145℃)20重量部と、エポキシ系架橋剤(商品名「テトラッドC」、三菱ガス化学(株)製)0.05重量部とを添加して混合し、粘着剤組成物を得た。
(剥離ライナーの調製)
ライナー基材として耐熱樹脂コート紙(商品名「HCB−90(WH)」、新巴川製紙(株)製)を用いた。また、シリコーン系剥離剤として、熱硬化型シリコーン系剥離剤[商品名「AST−8」(荒川化学工業(株)製)と商品名「CATA12070」(Bluestar Silicones製)の混合物]を用いた。上記ライナー基材の一方の表面に上記シリコーン系剥離剤を、塗布量(固形分換算)を2.5g/mとして塗布し、120℃で1分間加熱した後、50℃で72時間エージングして剥離処理層を形成し、剥離ライナーを作製した。
(両面粘着テープの調製)
上記剥離ライナーの表面(剥離処理層側の表面)に、上記粘着剤組成物を塗布した後、130℃で5分間乾燥処理して、厚さ30μmの粘着剤層(感圧性接着剤層)を形成し、粘着テープ(基材レス両面粘着テープ)を得た。
【0129】
比較例1
表1に示すように、ライナー基材をクラフト紙(商品名「クラフト CPK」、王子製紙(株)製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、粘着テープ(基材レス両面粘着テープ)を得た。
【0130】
(評価)
実施例および比較例で得られた粘着テープについて、下記の測定方法又は評価方法により測定又は評価した。結果は表1に示した。
【0131】
(1)剥離ライナーの引張強度(初期)
実施例および比較例で得られた粘着テープから剥離ライナーを剥離し、該剥離ライナーを幅10mm×長さ100mmのサイズに切り出して、短冊状の測定用サンプルを作製した。なお、上記測定用サンプルは、剥離ライナーの長さ方向(即ち、粘着テープの長さ方向)が測定用サンプルの長さ方向となるように切り出した。
23℃、50%RHの雰囲気下、引張試験機を使用し、チャック間距離(初期長)を100mm、引張速度を300mm/分として、上記測定用サンプルを長さ方向に引っ張り、引張強度を測定した。なお、試験回数(n数)は3回とし、それぞれの平均値を算出した。結果は、表1の「剥離ライナーの引張強度」の「初期」の欄に示した。
【0132】
(2)剥離ライナーの引張強度(加熱後)
実施例および比較例で得られた粘着テープから剥離ライナーを剥離し、該剥離ライナーを幅10mm×長さ100mmのサイズに切り出して、短冊状のサンプル片を得た。なお、上記サンプル片は、剥離ライナーの長さ方向(即ち、粘着テープの長さ方向)がサンプル片の長さ方向となるように切り出した。次いで、上記サンプル片を280℃で5分間オーブン中で加熱し、測定用サンプルを作製した。
23℃、50%RHの雰囲気下、引張試験機を使用し、チャック間距離(初期長)を100mm、引張速度を300mm/分として、上記測定用サンプルを長さ方向に引っ張り、引張強度を測定した。なお、試験回数(n数)は3回とし、それぞれの平均値を算出した。結果は、表1の「剥離ライナーの引張強度」の「加熱後」の欄に示した。
【0133】
(3)剥離ライナーの寸法変化率
実施例および比較例で得られた粘着テープから剥離ライナーを剥離し、該剥離ライナーを幅240mm×長さ240mmのサイズに切り出し、測定用サンプルを作製した。なお、上記測定用サンプルは、剥離ライナーの長さ方向(即ち、粘着テープの長さ方向)が測定用サンプルの長さ方向となるように切り出した。
次に、上記測定用サンプルを、恒温恒湿槽を用いて23℃、50%RHの雰囲気下で2時間放置した後、標線を入れた(標線間隔:L(約240mm))。次いで、測定用サンプルを60℃、90%RHの雰囲気下に移し、24時間放置した後、標線間隔(L)を測定し、下記式に従って寸法変化率を算出した。
寸法変化率(%)=(L−L)/L × 100
なお、寸法変化率の測定は、測定用サンプルの長さ方向と幅方向の両方(即ち、剥離ライナーの長さ方向と幅方向の両方)について実施した。結果は表1の「剥離ライナーの寸法変化率」の欄にそれぞれ示した。
【0134】
(4)剥離ライナーの千切れの有無(剥離作業性)
実施例および比較例で得られた粘着テープを幅10mm×長さ100mmのサイズに切り出した後、280℃で5分間加熱し、次いで、加熱後の粘着テープから剥離ライナーを剥離した。剥離時の剥離ライナーの状態(破れ(千切れ)の有無)を確認し、高温工程を経た後の剥離ライナーの剥離作業性を下記の基準で評価した。結果は表1の「剥離ライナーの千切れの有無」の欄に示した。
○(剥離作業性良好) : 剥離ライナーに破れ(千切れ)なし
×(剥離作業性不良) : 剥離ライナーに破れ(千切れ)あり
【0135】
【表1】

【0136】
表1の結果から明らかなように、実施例の粘着テープの剥離ライナーは、長手方向の引張強度(初期)及び長手方向の引張強度(加熱後)がともに高く、高温工程を経た後に剥離した場合にも千切れることなく、剥離作業性に優れていた。一方、剥離ライナーの長手方向の引張強度(加熱後)が低すぎる場合(比較例)は、高温工程を経た後に剥離した場合に千切れが生じ、剥離作業性に劣っていた。
【符号の説明】
【0137】
1 本発明の剥離ライナー
11 プルタブ(剥離用プルタブ)
2 粘着体
3 粘着テープ(プルタブ付きの粘着テープ)
4 被着体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層の少なくとも一方の面に剥離ライナーを有する粘着テープであって、前記剥離ライナーの長さ方向の引張強度が50〜150MPaであり、前記剥離ライナーの280℃で5分間加熱後の長さ方向の引張強度が20〜120MPaであることを特徴とするフレキシブル印刷回路基板用粘着テープ。
【請求項2】
前記剥離ライナーが、グラシン紙又は樹脂コート紙の少なくとも一方の表面側にシリコーン系剥離剤により形成された剥離処理層を有する剥離ライナーである請求項1に記載のフレキシブル印刷回路基板用粘着テープ。
【請求項3】
前記粘着剤層が、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対し、下記式(I)で表されるアクリル系単量体の含有量が50重量%以上であるモノマー成分より構成されたアクリル系ポリマーを必須成分として含む粘着剤層である請求項1又は2に記載のフレキシブル印刷回路基板用粘着テープ。
【化1】

(式(I)中、Rは水素原子又はメチル基、Rは炭素数4〜14のアルキル基を示す)
【請求項4】
前記剥離ライナーの、60℃、90%RHの雰囲気下に24時間保存前後の長さ方向および幅方向の寸法変化率がともに2.0%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のフレキシブル印刷回路基板用粘着テープ。
【請求項5】
280℃にて5分間加熱した後、剥離角度90°、引張速度300mm/分の条件で前記剥離ライナー(幅:30mm)を剥離した際に、千切れることなく前記粘着剤層表面から剥離可能である請求項1〜4のいずれか1項に記載のフレキシブル印刷回路基板用粘着テープ。
【請求項6】
前記シリコーン系剥離剤が熱硬化型シリコーン系剥離剤である請求項2〜5のいずれか1項に記載のフレキシブル印刷回路基板用粘着テープ。
【請求項7】
プルタブ付きの粘着テープである請求項1〜6のいずれか1項に記載のフレキシブル印刷回路基板用粘着テープ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−224821(P2012−224821A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96181(P2011−96181)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】