説明

フレキシブル基板及び撮像装置

【課題】フレキシブル基板面内の配線方向と交差する方向における正方向へ変位させる力と負方向へ変位させる力をほぼ等しくすることができるフレキシブル基板及び撮像装置を得る。
【解決手段】フレキシブル基板30は、基材81が可撓性を有しており、長穴84があることによって、フレキシブル基板30面内の配線方向(X)と、配線方向と交差する方向(Y)の2方向に変位可能となっている。また、裏側には、長穴84の両側にシールド部材94、96が設けられており、フレキシブル基板30の剛性が高くなっている。ここで、シールド部材94、96によって、長穴84の両側でフレキシブル基板30の剛性がほぼ等しくなっているので、フレキシブル基板30面内のY方向へ変位させる力を、正方向と負方向でほぼ等しくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル基板及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ、時計、ノートパソコン、プリンタ等の各種電子機器にプリント基板が用いられている。プリント基板は、硬質のリジット基板と、可撓性を有するフレキシブル基板の2種類あるが、プリント基板の設置の自由度を増やしたい場合は、可撓性を有するフレキシブル基板が用いられている。
【0003】
ここで、フレキシブル基板の利用例として、デジタルカメラの手振れ補正機構にフレキシブル基板を用いたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1のフレキシブル基板は、配線と同方向に切り込みが形成されており、この切り込みによって、撮像素子が移動する際のフレキシブル基板による負荷抵抗を軽減している。
【特許文献1】特開2007−43129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のフレキシブル基板は、配線のノイズをシールドするシールド部材については開示されていない。
【0006】
本発明は、フレキシブル基板面内の配線方向と交差する方向における正方向へ変位させる力と負方向へ変位させる力をほぼ等しくすることができるフレキシブル基板及び撮像装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係るフレキシブル基板は、可撓性を有する基材と、前記基材に設けられた配線と、前記配線の配線方向に沿って前記基材に形成された長穴部と、を有し、前記配線の配線方向と交差する折り線で複数回折り曲げられて面内方向に変位可能とされるフレキシブル基板において、前記基材における前記配線の裏側で、且つ前記長穴部の両側に、前記配線をシールドするシールド部材を設けたことを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、フレキシブル基板は、基材が可撓性を有しており、長穴部があることによって、フレキシブル基板面内の配線方向と、配線方向と交差する方向の2方向に変位可能となっている。また、裏側には、配線のノイズを低減するためのシールド部材が設けられているため、フレキシブル基板の剛性が高くなっている。
【0009】
ここで、配線と対応する領域にのみシールド部材を設けると、長穴部の片側にだけシールド部材が設けられることがあり、フレキシブル基板面内の配線方向と交差する方向へ変位させる力が、正方向と負方向で異なる。
【0010】
本発明では、長穴部の両側にシールド部材を設けているので、長穴部の両側でフレキシブル基板の剛性がほぼ等しくなり、フレキシブル基板面内の配線方向と交差する方向へ変位させる力を、正方向と負方向でほぼ等しくすることができる。
【0011】
本発明の請求項2に係るフレキシブル基板は、前記シールド部材の面形状が、前記長穴部の両側で対称であることを特徴としている。
【0012】
上記構成によれば、シールド部材の面形状が、長穴部の両側で対称であるため、剛性の高いシールド部材がフレキシブル基板を覆う面積が、長穴部の両側で均等になる。これにより、フレキシブル基板面内の配線方向と交差する方向へ変位させる力を、正方向と負方向でほぼ等しくすることができる。
【0013】
本発明の請求項3に係るフレキシブル基板は、前記シールド部材が、前記長穴部側に寄せて配置されていることを特徴としている。
【0014】
上記構成によれば、シールド部材が長穴部に寄せて配置されているため、フレキシブル基板の外縁部の剛性が中央部より低くなる。これにより、フレキシブル基板面内の配線方向と交差する方向へ変位させるのに必要な力を低減することができる。
【0015】
本発明の請求項4に係る撮像装置は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフレキシブル基板と、前記フレキシブル基板の配線が接続された撮像素子と、前記フレキシブル基板の配線が接続され前記撮像素子を駆動する駆動回路と、を有することを特徴とする撮像装置。
【0016】
上記構成によれば、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフレキシブル基板を用いることで、撮像素子を移動させる方向によってフレキシブル基板から受ける反力が変動するのを抑えられる。これにより、撮像素子を移動させて撮像の修正を行う手ぶれ防止機能が、手ぶれの方向によって変わらない。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上記構成としたので、フレキシブル基板面内の配線方向へ変位させる力と、配線方向と交差する方向へ変位させる力をほぼ等しくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のフレキシブル基板及び撮像装置の第1実施形態を図面に基づき説明する。
【0019】
図1は、本実施形態における撮像装置としてのデジタルカメラ10が示されている。
【0020】
デジタルカメラ10は、デジタルカメラ10の本体を構成する前カバー12及び後カバー14を有している。
【0021】
前カバー12は、被写体の画像を結像するためのレンズ16が挿通される開口部18が形成されている。前カバー12の内側には、デジタルカメラ10の各部に電源を供給する電源部20と、撮影時に必要に応じて発光されるフラッシュ装置22と、撮影動作を開始するスイッチボタン24と、が設けられている。
【0022】
一方、後カバー14の内側には、レンズ16から入射された光を受光し、撮像データに変換するCCD素子36を有する撮像モジュール26が設けられている。撮像モジュール26の内部には、所定の回路パターンが形成され、CCD素子36が実装されたフレキシブル基板30が配置されている。また、撮像モジュール26の一方の側面(紙面左側)からは、フレキシブル基板30の自由端部80(図3参照)が突出されている。
【0023】
フレキシブル基板30の自由端部80の先端側に設けられた接続端子部82(図3参照)は、所定の回路パターンが形成され撮像モジュール26を駆動する駆動回路28に設けられた上接点タイプのコネクタ29に接続されている。これにより、撮像モジュール26及び駆動回路28が電気的に接続されている。また、撮像モジュール26におけるCCD素子36の前面側には、前述のレンズ16が配置されている。
【0024】
駆動回路28は、所定の回路パターンが形成されたリジット基板38上に、IC等からなるプログラムユニット40が設けられている。
【0025】
プログラムユニット40は、前述のスイッチボタン24が押されると、図示しないオートフォーカス機構を駆動してレンズ16を焦点方向に移動させるとともに、CCD素子36を動作させて画像データを取り込み、図示しないSDカード等の記憶手段に画像データを記憶させるようになっている。
【0026】
図2a及び図2bに示すように、撮像モジュール26は、フレキシブル基板30と、フレキシブル基板30が固定され矢印X方向に変位可能な第1ステージ32と、第1ステージ32が内側に取り付けられ矢印Y方向に変位可能な第2ステージ34と、で構成されている。
【0027】
第1ステージ32は、フレキシブル基板30におけるCCD素子36の実装部37が載置され、実装部37の裏面側(CCD素子36と反対側)が接着等により固定される載置部42が形成されている。載置部42を囲むようにして立設された第1ステージ32の側壁44のうち、下方側に配置された側壁44の外面には、外形が略コの字形状で凹部47を有する係合部46が一体成型により形成されている。
【0028】
また、側壁44のうち、駆動回路28と対向する部分には、フレキシブル基板30の幅と略等しい幅の切欠部48が形成されている。そして、フレキシブル基板30の自由端部80(図3参照)が、切欠部48から引き出されるようになっている。なお、フレキシブル基板30の自由端部80は、山折り線A、Cと、谷折り線Bで折り曲げられている。
【0029】
第2ステージ34は、第1ステージ32を内側に収容する収容部50が形成されている。収容部50の底面上には、前述の駆動回路28によって矢印X方向に駆動される第1アクチュエータ部52が設けられている。
【0030】
第1アクチュエータ部52は、駆動回路28によって通電される圧電素子(図示せず)が設けられた駆動部54と、収容部50の底面上に立設された平板状の支持部55との間に架設され、駆動部54の圧電素子の変位によって矢印X方向(正方向、負方向)に変位されるシャフト部56とを有している。シャフト部56は、収容部50の底面と略平行に配置されている。
【0031】
また、シャフト部56は、外径の大きさが、前述の係合部46の凹部47の内形の大きさと略等しくなっており、シャフト部56の軸方向と交差する方向に、図示しない溝部が形成されている。
【0032】
ここで、第1ステージ32が収容部50に収容され、凹部47がシャフト部56の溝部と係合されることにより、係合部46とシャフト部56が一体で変位可能となり、第1ステージ32が第2ステージ34に対して、矢印X方向(正、負)に変位可能となっている。なお、収容された第1ステージ32の上側の側壁44には、収容部50に形成された図示しない略L字形状のガイドレール部が接触しており、第1ステージ32を略鉛直方向に保持している。
【0033】
また、第2ステージ34には、CCD素子36の表面が露出され、前述のレンズ16(図1参照)と対向するように、開口部58が形成されている。さらに、第2ステージ34の右側の側壁60の外面には、外形が略コの字形状で凹部62を有する係合部64が一体成型により形成されている。
【0034】
一方、図2aに示すように、後カバー14の内壁面上には、前述の駆動回路28によって矢印Y方向に駆動される第2アクチュエータ部66が設けられている。
【0035】
第2アクチュエータ部66は、駆動回路28によって通電される圧電素子(図示せず)が設けられた駆動部68と、後カバー14の内壁面上に立設された平板状の支持部70との間に架設され、駆動部68の圧電素子の変位によって矢印Y方向(正方向、負方向)に変位されるシャフト部72とを有している。シャフト部72は、後カバー14の内壁面と略平行に配置されている。
【0036】
また、シャフト部72は、外径の大きさが、前述の係合部64の凹部62の内形の大きさと略等しくなっており、シャフト部72の軸方向と交差する方向に、図示しない溝部が形成されている。
【0037】
ここで、第2ステージ34が、第1ステージ32及びフレキシブル基板30を収容した状態で、凹部62がシャフト部72の溝部と係合されることにより、係合部64とシャフト部72が一体で変位可能となり、第2ステージ34が、後カバー14の内壁面に対して矢印Y方向(正、負)に変位可能となっている。
【0038】
なお、第2ステージ34の左側の側壁74には、後カバー14の内壁面に形成された図示しない略L字形状のガイドレール部が接触しており、第2ステージ34を略鉛直方向に保持している。
【0039】
一方、図1において、駆動回路28には図示しない加速度センサが設けられており、撮影者の手振れによって、デジタルカメラ10の光軸が矢印X、Y方向にぶれたとき、矢印X、Y方向の本来の光軸からのずれ量を検出するようになっている。
【0040】
駆動回路28は、この検出されたX、Y方向のずれ量に応じて、第1アクチュエータ部52及び第2アクチュエータ部66を駆動して、第1ステージ32及び第2ステージ34をX、Y方向へ変位させる。これにより、CCD素子36が、X、Y方向に変位して、デジタルカメラ10の手振れ補正が行なわれるようになっている。
【0041】
次に、フレキシブル基板30について説明する。
【0042】
図3aは、フレキシブル基板30を表面側から見た状態を示しており、図3bは、裏面側から見た状態を示している。また、図3cは、フレキシブル基板30の自由端部80(実装部37を除く領域)における配線方向と直交する面内の断面図を示している。
【0043】
図3a及び図3bに示すように、フレキシブル基板30は、CCD素子36が実装された実装部37と、実装部37の一方の外縁部から外方向へ延設された自由端部80の2つの領域で構成されている。
【0044】
自由端部80の先端側には、駆動回路28(図1参照)のコネクタ29に接続される各端子が露出した接続端子部82が設けられている。また、自由端部80の略中央部には、抜き加工によって、フレキシブル基板30の配線方向に沿って表面から裏面に貫通した長穴84が形成されている。長穴84の両端部は、R形状となっており、クラックが入りにくくしてある。
【0045】
自由端部80は、Y方向の折り線A、B、Cにおいて折り曲げられている。これにより、自由端部80は、矢印X方向へ伸縮可能となっている。
【0046】
図3a及び図3cに示すように、フレキシブル基板30は、ポリイミドフィルム、あるいは、PETフィルム等の樹脂からなるベースフィルム81を基材としている。
【0047】
ベースフィルム81の一方の面(下面)には、銅箔からなる配線としての信号ライン92が形成されている。信号ライン92の表面(下面)には、ポリイミドフィルムからなるカバーレイ85が載置され、加熱及び圧着処理されて信号ライン92を覆っている。信号ライン92は、CCD素子36から出力された30〜40MHzの水平信号を、図示しない画像処理部へ伝送させる配線である。
【0048】
一方、図3b及び図3cに示すように、ベースフィルム81の他方の面(上面)には、信号ライン92よりも幅広の銅箔からなり、信号ライン92に対する放射ノイズ及び不要輻射を低減するシールド部材94が設けられている。シールド部材94の表面(上面)には、ポリイミドフィルムからなるカバーレイ85が載置され、加熱及び圧着処理されてシールド部材94を覆っている。
【0049】
シールド部材94は銅箔で構成されているため、ベースフィルム81、カバーレイ85よりも剛性が高くなっている。
【0050】
なお、本発明では、シールド部材とは、信号ラインに対する放射ノイズ及び不要輻射を低減する部材を総称したものである。このため、シールド部材は、シールド部材94のように、両面に銅箔が用いられたフレキシブル基板の片面の銅箔であってもよく、また、他の金属部材(箔)をフレキシブル基板に設けたものであってもよい。
【0051】
ここで、シールド部材94がGNDラインとして接地されることにより、信号ライン92における放射ノイズの影響及び不要輻射が低減され、高周波信号の伝送が可能となる。
【0052】
フレキシブル基板30には、信号ライン92の他に、CCD素子36に電源供給するための電源ライン90と、CCD36の制御を行うための複数種類の制御ライン86、88が設けられている。信号ライン92、電源ライン90、及び制御ライン86、88は、CCD素子36の所定の端子(図示せず)に接続されている。
【0053】
電源ライン90は、ノイズの影響を除くため、裏面にシールド部材94と同じ銅箔で、同一形状、面積のシールド部材96が設けられている。なお、制御ライン86、88は、シールド不要としている。
【0054】
ここで、シールド部材94及びシールド部材96は、同一形状、同一面積で、長穴84の両側(紙面上下方向)に設けられており、長穴84の中心軸に対して対称配置となっている。
【0055】
次に、本発明の第1実施形態の作用について説明する。
【0056】
まず、図4aに示すように、本発明との比較例として、シールド部材が、長穴の片側にのみ設けられたフレキシブル基板200の変位について説明する。
【0057】
フレキシブル基板200は、CCD素子36が実装され、配線方向(矢印X方向)に沿って長穴204が形成されている。また、フレキシブル基板200の裏面側で且つ長穴204の片側(紙面上側)には、所定の配線をシールドするシールド部材202が設けられている。シールド部材202は、銅箔で構成されている。
【0058】
フレキシブル基板200におけるCCD素子36の実装領域は、図示しないアクチュエータが設けられたステージに固定されており、フレキシブル基板200は、矢印X、Y方向に変位可能となっている。
【0059】
また、フレキシブル基板200の自由端部(CCD素子36の実装部を除く領域)は、配線方向と交差する方向(Y方向)に3箇所折り曲げられている。
【0060】
ここで、フレキシブル基板200を、矢印X方向における正方向(+)又は負方向(−)へ変位させると、自由端部の折り曲げ箇所が伸縮することにより、CCD素子36に作用する正方向の負荷(F3)と、負方向の負荷(F4)は、ほぼ等しくなる。
【0061】
一方、フレキシブル基板200を、矢印Y方向における正方向(+)又は負方向(−)へ変位させると、シールド部材202によって、長穴204の上側の剛性が下側の剛性よりも高くなっているため、正方向の負荷(F1)が、負方向の負荷(F2)よりも大きくなる。
【0062】
これにより、アクチュエータがY方向における正方向及び負方向に等しい推進力でCCD36を変位させると、正方向には十分な変位が行えなくなるため、手ぶれ補正がばらつき、必要な画像が得られにくくなる。
【0063】
一方、図2及び図4bに示すように、本発明のフレキシブル基板30は、駆動回路28が、第1アクチュエータ52を駆動し、第1ステージ32を配線方向である矢印X方向における正方向(+)又は負方向(−)へ変位させるとき、自由端部80の折り曲げ箇所が伸縮することにより、CCD素子36に作用する正方向の負荷(F3)と、負方向の負荷(F4)は、ほぼ等しくなる。
【0064】
また、駆動回路28が、第2アクチュエータ66を駆動し、第2ステージ34を配線方向と交差する方向である矢印Y方向における正方向(+)又は負方向(−)へ変位させるとき、剛性の高いシールド部材94、96の面形状及び配置が、長穴84の両側で対称となっており、フレキシブル基板30を覆う面積及び剛性が長穴84の両側で均等となっているので、矢印Y方向へCCD素子36を変位させる力が、正方向(F1)と負方向(F2)でほぼ等しくなる。
【0065】
これにより、デジタルカメラ10(図1参照)において、CCD素子36を移動させる方向によってフレキシブル基板30から受ける反力が変動するのを抑えられ、CCD素子36を移動させて撮像の修正を行う手ぶれ防止機能が、手ぶれの方向によって変わるのを抑えることができる。
【0066】
次に、本発明のフレキシブル基板及び撮像装置の第2実施形態を図面に基づき説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一のものには、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0067】
図5aは、フレキシブル基板100を表面側から見た状態を示しており、図5bは、裏面側から見た状態を示している。なお、フレキシブル基板100は、前述のデジタルカメラ10のフレキシブル基板30を置き換えたものである。
【0068】
図5a及び図5bに示すように、フレキシブル基板100は、CCD素子36が実装された実装部102と、実装部102の一方の外縁部から外方向へ延設された自由端部104の2つの領域で構成されている。
【0069】
自由端部104の先端側には、駆動回路28(図1参照)のコネクタ29に接続される各端子が露出した接続端子部106が設けられている。また、自由端部104の略中央部には、抜き加工によって、フレキシブル基板100の配線方向に沿って表面から裏面に貫通した長穴108が形成されている。長穴108の両端は、R形状となっており、クラックが入りにくくしてある。
【0070】
フレキシブル基板100は、ポリイミドフィルム、あるいは、PETフィルム等の樹脂からなるベースフィルム(図示せず)を基材としている。
【0071】
ベースフィルムの一方の面には、銅箔が貼り付けられエッチング加工されることによって、導体層からなる配線である複数の信号ライン114が形成されている。信号ライン114は、CCD素子36から出力された30〜40MHzの水平信号を、図示しない画像処理部へ伝送させる配線である。
【0072】
また、フレキシブル基板100には、信号ライン114と同様にして、CCD素子36に電源供給するための電源ラインと、CCD36の制御を行うための制御ラインの一部とからなる電源制御ライン116が設けられている。信号ライン114と電源制御ライン116は、長穴108に寄せて配置されている。
【0073】
信号ライン114及び電源制御ライン116の外側(フレキシブル基板100の外縁側)には、信号ライン114及び電源制御ライン116と同様の方法で、残りの制御ライン110、112が設けられている。信号ライン114、電源制御ライン116及び制御ライン110、112は、CCD素子36の所定の端子(図示せず)に接続されている。
【0074】
一方、フレキシブル基板100の裏面側には、信号ライン114及び電源制御ライン116よりも幅広の銅箔からなり、信号ライン114及び電源制御ライン116に対する放射ノイズ及び不要輻射を低減するシールド部材118、120が設けられている。各配線及びシールド部材118、120は、前述のカバーレイ85(図3c参照)によって覆われている。
【0075】
ここで、シールド材118、120がGNDラインとして接地されることにより、信号ライン114及び電源制御ライン116における放射ノイズの影響及び不要輻射が低減され、高周波信号の伝送が可能となっている。
【0076】
フレキシブル基板100における実装部102は、図示しないアクチュエータが設けられ、独立してX、Yの2方向へ変位可能なステージに固定されており、フレキシブル基板100は、矢印X、Y方向に変位可能となっている。
【0077】
また、フレキシブル基板100の自由端部104は、Y方向の折り線A、B、Cにおいて折り曲げられている。
【0078】
次に、本発明の第2実施形態の作用について説明する。
【0079】
図2及び図5に示すように、フレキシブル基板100は、駆動回路28が、第1アクチュエータ52を駆動し、第1ステージ32を配線方向である矢印X方向における正方向又は負方向へ変位させるとき、自由端部104の折り曲げ箇所が伸縮することにより、CCD素子36に作用する正方向の負荷と、負方向の負荷は、ほぼ等しくなる。
【0080】
また、駆動回路28が、第2アクチュエータ66を駆動し、第2ステージ34を配線方向と交差する方向である矢印Y方向における正方向又は負方向へ変位させるとき、剛性の高いシールド部材118、120の面形状及び配置が、長穴108の両側で対称となっており、フレキシブル基板100を覆う面積及び剛性が長穴108の両側で均等となっているので、矢印Y方向へCCD素子36を変位させる力が、正方向と負方向でほぼ等しくなる。
【0081】
これにより、デジタルカメラ10(図1参照)において、CCD素子36を移動させる方向によってフレキシブル基板100から受ける反力が変動するのを抑えられ、CCD素子36を移動させて撮像の修正を行う手ぶれ防止機能が、手ぶれの方向によって変わるのを抑えることができる。
【0082】
さらに、シールド部材118、120が長穴108に寄せて配置されているため、フレキシブル基板100の外縁部の剛性が中央部より低くなる。これにより、フレキシブル基板100面内のY方向へ変位させるのに必要な力を低減することができる。
【0083】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0084】
例えば、フレキシブル基板30、100の他の実施例として、図6a〜図6cに示すフレキシブル基板130、150、及び170についても、同様の効果を得ることができる。
【0085】
図6aに示すように、フレキシブル基板130は、CCD素子36が実装された実装部132と、実装部132の一方の外縁部から外方向へ延設された自由端部134の2つの領域で構成されている。
【0086】
自由端部134の先端側には、駆動回路28(図1参照)のコネクタ29に接続される各端子が露出した接続端子部136が設けられている。また、自由端部134の略中央部には、抜き加工によって、フレキシブル基板130の配線方向に沿って表面から裏面に貫通した長穴138が形成されている。
【0087】
フレキシブル基板130の表面には、信号ライン140、電源ライン142、及び複数の制御ライン144、145が形成されている。
【0088】
一方、フレキシブル基板130の裏面の外縁側には、信号ライン140及び電源ライン142に対する放射ノイズ及び不要輻射を低減するシールド部材146、148が設けられている。
【0089】
ここで、シールド部材146の面積が、シールド部材148の面積よりも少し小さく、例えば、0.9倍程度に設定されていても、フレキシブル基板130の外縁部を高い剛性で支持するため、Y方向における正、負方向の変位がほぼ均等になる。
【0090】
図6bに示すように、フレキシブル基板150は、CCD素子36が実装された実装部152と、実装部152の一方の外縁部から外方向へ延設された自由端部154の2つの領域で構成されている。
【0091】
自由端部154の先端側には、駆動回路28(図1参照)のコネクタ29に接続される各端子が露出した接続端子部156が設けられている。また、自由端部154の略中央部には、抜き加工によって、フレキシブル基板150の配線方向に沿って表面から裏面に貫通した2つの長穴158、159が形成されている。
【0092】
フレキシブル基板150の表面には、信号ライン160、電源ライン162、及び制御ライン161が形成されている。
【0093】
一方、フレキシブル基板150の裏面には、信号ライン160、電源ライン162、及び制御ライン161に対する放射ノイズ及び不要輻射を低減するシールド部材164、166、及び168が設けられている。
【0094】
ここで、シールド部材166を中心として、シールド部材164、シールド部材168が対称配置となっているため、Y方向における正、負方向の変位がほぼ均等になる。
【0095】
図6cに示すように、フレキシブル基板170は、CCD素子36が実装された実装部172と、実装部172の一方の外縁部から外方向へ延設された自由端部174の2つの領域で構成されている。
【0096】
自由端部174の先端側には、駆動回路28(図1参照)のコネクタ29に接続される各端子が露出した接続端子部176が設けられている。また、自由端部174の略中央部には、抜き加工によって、フレキシブル基板170の配線方向に沿って表面から裏面に貫通した2つの長穴177、179が形成されている。
【0097】
長穴177、179は、折り線A、B、Cに対応する箇所に、略円形の節部178、180が形成されており、折り曲げが容易となっている。
【0098】
フレキシブル基板170の表面には、信号ライン182、電源ライン184、及び制御ライン186が形成されている。
【0099】
一方、フレキシブル基板170の裏面には、信号ライン182及び電源ライン184に対する放射ノイズ及び不要輻射を低減するシールド部材188及び190が設けられている。
【0100】
ここで、制御ライン186を中心として、シールド部材188、190が対称配置となっているため、Y方向における正、負方向の変位がほぼ均等になる。
【0101】
なお、フレキシブル基板に形成される長穴の数は、単数、複数のいずれであってもよい。さらに、CCD素子36以外に、CMOS型の撮像素子を用いてもよく、他の撮像素子を用いてもよい。
【0102】
また、シールド部材は、長穴の領域を除いて、フレキシブル基板の自由端部又は可撓部の前面を覆うものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の第1実施形態に係るデジタルカメラの分解図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る撮像モジュールの斜視図及び分解図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るフレキシブル基板の模式図である。
【図4】(a)比較例のフレキシブル基板に作用する負荷状態を示した模式図ある。(b)本発明の第1実施形態に係るフレキシブル基板に作用する負荷状態を示した模式図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るフレキシブル基板の模式図である。
【図6】本発明のフレキシブル基板の他の実施例を示した模式図である。
【符号の説明】
【0104】
10 デジタルカメラ(撮像装置)
28 駆動回路(駆動回路)
30 フレキシブル基板(フレキシブル基板)
36 CCD素子(撮像素子)
81 ベースフィルム(基材)
84 長穴(長穴部)
90 電源ライン(配線)
92 信号ライン(配線)
94 シールド部材(シールド部材)
96 シールド部材(シールド部材)
100 フレキシブル基板(フレキシブル基板)
108 長穴(長穴部)
114 信号ライン(配線)
116 電源制御ライン(配線)
118 シールド部材(シールド部材)
120 シールド部材(シールド部材)
130 フレキシブル基板(フレキシブル基板)
150 フレキシブル基板(フレキシブル基板)
170 フレキシブル基板(フレキシブル基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する基材と、
前記基材に設けられた配線と、
前記配線の配線方向に沿って前記基材に形成された長穴部と、
を有し、
前記配線の配線方向と交差する折り線で複数回折り曲げられて面内方向に変位可能とされるフレキシブル基板において、
前記基材における前記配線の裏側で、且つ前記長穴部の両側に、前記配線をシールドするシールド部材を設けたことを特徴とするフレキシブル基板。
【請求項2】
前記シールド部材の面形状が、前記長穴部の両側で対称であることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル基板。
【請求項3】
前記シールド部材が、前記長穴部側に寄せて配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフレキシブル基板。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフレキシブル基板と、
前記フレキシブル基板の配線が接続された撮像素子と、
前記フレキシブル基板の配線が接続され前記撮像素子を駆動する駆動回路と、
を有することを特徴とする撮像装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−10259(P2009−10259A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171900(P2007−171900)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】