説明

フレキシブル管用継手

【課題】 フレキシブル管を接続するという作業を簡略化する。
【解決手段】 フレキシブル管用継手10は、継手本体20を備える。継手本体20は受口部を有する。フレキシブル管用継手10は、継手本体20に加え、シール材22を備える。シール材22は、継手本体20内に収容される。継手本体20が、シール材待機部と、シール材収容部とをさらに有する。シール材22が、シール作用部と、引込部とを有している。シール作用部が、シール材待機部からシール材収容部48へ移動する間にフレキシブル管の谷部にかみ合う。引込部が、受口部へ挿入されたフレキシブル管に押されることでシール作用部をシール材収容部へ引込む。フレキシブル管用継手10が、抜止部材24と、押輪26とをさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル管用継手に関し、特に、作業を簡略化できる、フレキシブル管用継手に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、フレキシブル管用継手を開示する。このフレキシブル管用継手は、継手本体と、弾性変形可能なシール材と、抜止部材と、耐火パッキンと、押輪とを備える。継手本体は受口部を有する。フレキシブル管は、受口部から継手本体内に挿入される。フレキシブル管には、山部と谷部とが設けられている。山部と谷部とは円周方向全周にわたって延びている。山部と谷部とはフレキシブル管の軸方向へ沿って交互に設けられている。シール材は、継手本体内に収容される。抜止部材も継手本体内に収容される。抜止部材はシール材と一体化している。抜止部材はフレキシブル管の谷部に係合する。継手本体内には耐火パッキンも収容される。押輪は、受口部を介して継手本体に挿入される。フレキシブル管が、押輪の中を通り抜ける。押輪は、抜止部材ごとフレキシブル管が継手本体から抜けるのを止める。継手本体は、シール材待機部と、シール材縮径案内部と、シール材収容部とを有する。シール材待機部にはシール材の少なくとも一部が予め配置される。シール材縮径案内部はシール材待機部よりも奥側に配置される。シール材収容部はシール材縮径案内部よりも奥側に配置される。シール材が、シール作用部と、係合部とを有している。シール作用部は、シール材収容部内に収容される。シール作用部は、フレキシブル管の谷部にかみ合うことによりフレキシブル管の外周面と継手本体の内周面との間をシールする。係合部は、シール作用部よりも継手本体の奥側に配置される。係合部は、シール作用部と一体化される。係合部は、受口部へ挿入されたフレキシブル管に押されることでシール作用部をシール材収容部へ移動させる。シール作用部がシール材収容部へ移動するとともに抜止部材はシール材待機部内へ移動する。この際、抜止部材はフレキシブル管の谷部に係合する。耐火パッキンが、膨張材と合成樹脂とを含有する。膨張材は、閾値を越える温度となるよう加熱されると膨張する。耐火パッキンは、シール材待機部のうち、シール作用部の移動に伴って移動中の抜止部材に接触し、かつ、加熱されるとシール材縮径案内部方向へ膨張し得る位置に配置されている。
【0003】
このフレキシブル管用継手によれば、フレキシブル管を挿入するだけのワンタッチ操作でシール状の接続が可能となる。このフレキシブル管用継手は、フレキシブル管の変形や施工後の曲げなどに対する影響が少ない。このフレキシブル管用継手は、シール性能と耐火性能とを向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−7238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたフレキシブル管継手は、フレキシブル管を挿入するだけのワンタッチ操作でシール状の接続が可能となる。ただし、そのままではフレキシブル管が抜止部材ごと継手本体から抜けることを防止できない。フレキシブル管が抜けることを防ぐには、押輪が継手本体から抜け落ちないような操作が必要である。
【0006】
本発明は、この問題点を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、フレキシブル管を接続するという作業を簡略化できる、フレキシブル管用継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
図面を参照し本発明のフレキシブル管用継手を説明する。なおこの欄で図中の符号を使用したのは発明の内容の理解を助けるためであって内容を図示した範囲に限定する意図ではない。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のある局面に従うと、フレキシブル管用継手10は、継手本体20を備える。継手本体20は受口部30を有する。フレキシブル管300が、受口部30から継手本体20内に挿入される。フレキシブル管300には、円周方向全周に延びる山部310と谷部312とが管軸方向へ交互に並設されている。フレキシブル管用継手10は、継手本体20に加え、シール材22を備える。シール材22は、継手本体20内に収容される。シール材22は、弾性変形可能である。継手本体20が、シール材待機部42と、シール材収容部48とをさらに有する。シール材待機部42は、受口部30の奥に形成される。シール材待機部42は、受口部30に連通される。シール材待機部42は、シール材22の少なくとも一部が予め配置される。シール材収容部48は、受口部30からみてシール材待機部42よりも奥側に配置される。シール材収容部48は、シール材待機部42に連通される。シール材22が、シール作用部84と、引込部82とを有している。シール作用部84は、フレキシブル管300の外周面と継手本体20の内周面との間をシールする。引込部82は、受口部30からみてシール作用部84よりも継手本体20内の奥側に配置される。引込部82は、シール作用部84に直接または間接に接続される。シール作用部84が、シール材待機部42からシール材収容部48へ移動する間にフレキシブル管300の谷部312にかみ合う。引込部82が、受口部30へ挿入されたフレキシブル管300に押されることでシール作用部84をシール材収容部48へ引込む。フレキシブル管用継手10が、抜止部材24と、押輪26とをさらに備える。抜止部材24は継手本体20内に収容される。押輪26は、受口部30を介して継手本体20内に挿入される。フレキシブル管300が、押輪26の中を通り抜けて、受口部30から継手本体20内に挿入される。抜止部材24が、受口部30から継手本体20内を見た場合の継手本体20の奥方向へフレキシブル管300が進む際にはフレキシブル管300の貫通を許容し、引込部82がシール作用部84をシール材収容部48へ引込み終わる時以前にフレキシブル管300の山部310および谷部312の少なくとも一方に係合する。押輪26が阻害部140を有する。阻害部140は、山部310および谷部312の少なくとも一方に係合した抜止部材24が継手本体20から抜けるのを止める。阻害部140は、継手本体20内の所定の位置に固定されている。
【0009】
フレキシブル管300が押輪26の中を通り抜けて継手本体20内に挿入されると、そのフレキシブル管300は、シール材22の引込部82を押す。引込部82は、フレキシブル管300に押されると、シール作用部84をシール材収容部48へ引込む。シール作用部84は、シール材待機部42からシール材収容部48へ移動する間にフレキシブル管300の谷部312にかみ合う。これにより、シール作用部84は、フレキシブル管300の外周面と継手本体20の内周面との間をシールする。シール材待機部42からシール材収容部48へシール作用部84が移動する間、継手本体20の奥方向へフレキシブル管300が進む際には抜止部材24はフレキシブル管300の貫通を許容する。引込部82がシール作用部84をシール材収容部48へ引込み終わる時以前にフレキシブル管300の山部310および谷部312の少なくとも一方に抜止部材24が係合する。阻害部140は、そのような抜止部材24が継手本体20から抜けるのを止める。阻害部140は継手本体20内の所定の位置に固定されている。これにより、フレキシブル管300を継手本体20内に挿入してシール作用部84をシール材収容部48内へ引込ませると、フレキシブル管300の外周面と継手本体20の内周面との間がシールされ、かつ、フレキシブル管300が継手本体20から抜けなくなる。阻害部140が継手本体20内の所定の位置に固定されているものなので、押輪26が継手本体20から抜け落ちないような操作は不要である。そのような操作が不要なので、フレキシブル管300を接続するという作業を簡略化できる。
【0010】
また、上述した抜止部材24が、複数の係合爪100と、弾性リング102とを有していることが望ましい。係合爪100は、継手本体20内に配置される。係合爪100は、継手本体20内のフレキシブル管300が進入する空間を環状に取囲む。係合爪100は、奥方向の力を受けると継手本体20から反力を受ける。弾性リング102は、複数の係合爪100の外周に装着される。弾性リング102は、内径の弾性的な拡大縮小が可能である。弾性リング102は、複数の係合爪100へ内径が縮小する方向の力を加える。この場合、シール材22が複数の空間維持部86をさらに有している。空間維持部86は、係合爪100の間にそれぞれ挟まれる。空間維持部86が係合爪100の間に挟まれている間、複数の係合爪100により取囲まれる空間の直径はフレキシブル管300の山部310の外径以上である。空間維持部86は、シール材22の移動に伴い移動することで、係合爪100の間から抜ける。係合爪100が、係合爪100の間から空間維持部86が抜けると、弾性リング102から力を受けてフレキシブル管300の谷部312に係合する。
【0011】
空間維持部86が係合爪100の間に挟まれている間、複数の係合爪100により取囲まれる空間の直径はフレキシブル管300の山部310の外径以上である。これにより、空間維持部86が係合爪100の間に挟まれている間、係合爪100が囲む空間をフレキシブル管300はスムーズに通り抜け得る。係合爪100の間から空間維持部86が抜けると、係合爪100はフレキシブル管300の谷部312に係合する。係合爪100が谷部312に係合するので、フレキシブル管300が継手本体20から抜けなくなる。係合爪100の間から空間維持部86が抜ける際、係合爪100は、受口部30から見た場合の継手本体20内の奥側への力を受けることとなる。継手本体20内の奥側への力を受けると、係合爪100は、継手本体20から反力を受ける。継手本体20から反力を受けるので、例えば係合爪100の間から空間維持部86が抜けないといった、抜止部材24の移動に起因する不都合は阻止される。その結果、不都合を阻止でき、かつ、フレキシブル管300を接続するという作業を簡略化できる。
【0012】
もしくは、上述した係合爪100が、受力部110と、嵌込爪部112とを有することが望ましい。受力部110は弾性リング102から力を受ける。受力部110は継手本体20から反力を受ける。嵌込爪部112は、受力部110から突出するように設けられる。嵌込爪部112は、空間維持部86が係合爪100の間から抜けるとフレキシブル管300の谷部312に嵌まる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フレキシブル管を接続するという作業を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態にかかるフレキシブル管用継手を示す半欠截断面図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる継手本体の断面図である。
【図3】本発明の実施形態にかかるシール材の斜視図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる抜止部材の斜視図である。
【図5】本発明の実施形態にかかる押輪の断面図である。
【図6】フレキシブル管が挿入されている最中における本発明の実施形態にかかるフレキシブル管用継手の断面図である。
【図7】フレキシブル管の挿入が完了した時点における本発明の実施形態にかかるフレキシブル管用継手の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態の説明>
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。図1は、本発明の実施形態にかかるフレキシブル管用継手10を、金属製のフレキシブル管300が挿入されていない状態で示す半欠截断面図である。図1を参照しつつ、本実施形態にかかるフレキシブル管用継手10の構成について説明する。
【0017】
[構造の説明]
本実施形態にかかるフレキシブル管用継手10は、フレキシブル管300に接続されるものである。後述する図6などで示すように、フレキシブル管300は、山部310と谷部312とを備える。図1に示すように、本実施形態に係るフレキシブル管用継手10は、継手本体20と、シール材22と、抜止部材24と、押輪26と、スナップリング28などとを備える。継手本体20の一端の外周には、接続用雄ねじ32が形成されている。シール材22は、継手本体20の中に収容される。抜止部材24は、継手本体20内に収容される。抜止部材24は、フレキシブル管300の山部310と谷部312とのうち少なくとも一方に係合する。押輪26は継手本体20に接続される。押輪26は、シール材22から見て接続用雄ねじ32とは反対側に配置される。押輪26の一端は継手本体20の内部に挿入されている。スナップリング28も、継手本体20内に収容される。スナップリング28は、その径方向へ拡縮可能な部材である。
【0018】
図2は継手本体20の断面図である。図2を参照しつつ、本実施形態にかかる継手本体20の構造を説明する。継手本体20の両端のうち接続用雄ねじ32が設けられた側とは反対側の端に受口部30が設けられている。受口部30は、フレキシブル管300の先端部を受け入れる口である。図2から明らかなように、継手本体20の内部は、受口部30を介して継手本体20の外部に連通している。なお、本発明の説明において、「連通」とは、通路を介して二つの空間を連続状態にすることを意味する。ここでいう「通路」には管状のものだけでなく単なる孔も含まれる。後述する説明から明らかな通り、フレキシブル管300の先端部は、押輪26が挿入された状態の受口部30から継手本体20の中に入る。
【0019】
継手本体20の内部には、シール材待機部42と、シール材案内部44と、反力部46と、シール材収容部48とが設けられている。これらの中で最も受口部30側にあるのはシール材待機部42である。これらの中で最も接続用雄ねじ32側にあるのはシール材収容部48である。シール材待機部42は、受口部30の奥に形成され、受口部30に連通される。シール材案内部44は、シール材待機部42の奥に形成され、シール材待機部42に連通される。反力部46は、シール材待機部42とシール材案内部44との境界部分を取囲むように形成される。受口部30から継手本体20の中を見た場合の反力部46の形状は環状である。抜止部材24はこの反力部46から反力を受ける。シール材収容部48は、シール材案内部44の奥に形成され、シール材案内部44に連通される。したがって、シール材収容部48の内径は、シール材待機部42の内径より小さい。後述する説明から明らかなように、シール材待機部42は、継手本体20の中にフレキシブル管300がまだ入っていないとき、シール材22の一部を収容している。シール材案内部44は、継手本体20の中にフレキシブル管300が入ると、フレキシブル管300とシール材22とをシール材収容部48へ案内する。シール材収容部48は、フレキシブル管300の先端部とこの先端部の外周のシール材22とを収容する。
【0020】
シール材待機部42には、スナップリング抜止溝50が設けられている。スナップリング抜止溝50は継手本体20内に押輪26が挿入されたとき押輪26の外周面を取囲むように設けられる。
【0021】
シール材案内部44は、座グリ部54と縮径案内部56とを有する。座グリ部54はシール材待機部42に連通される。縮径案内部56は、座グリ部54の奥に設けられている。縮径案内部56は、受口部30から離れるにつれ窄まる。
【0022】
シール材収容部48の内周には、耐火パッキン溝60が設けられている。この耐火パッキン溝60の位置は、シール材収容部48の中にシール材22が入ったときシール材22の外周を取り囲む位置である。耐火パッキン溝60には耐火パッキン70が嵌め込まれている。本実施形態において、耐火パッキン70は熱膨張性黒鉛入りゴムなどからなる。
【0023】
図3はシール材22の斜視図である。図3においてシール材22はその一部が切欠かれた状態で示されている。図3を参照しつつ、シール材22の構成を説明する。本実施形態にかかるシール材22は筒状である。シール材22は、胴部80と、引込部82と、シール作用部84と、空間維持部86とを有する。胴部80の内径はフレキシブル管300の山部310の外径とほぼ同一である。胴部80にはフレキシブル管300が挿入される。引込部82は、この胴部80の前端部に内向きに張り出している。引込部82は、胴部80に挿入されたフレキシブル管300に押されることでシール材22を継手本体20の挿入完了位置(本実施形態においてはシール材収容部48)へ移動させる部分である。シール作用部84は、胴部80の後端部に外向きに張り出している。シール作用部84がフレキシブル管300の谷部312にかみ合うことにより、継手本体20の内周面とフレキシブル管300の外周面とがシールされる。本実施形態の場合、空間維持部86は、シール材22の後方側すなわち引込部82から見て受口部30側に4箇所設けられている。空間維持部86は、円周方向に並ぶように配置される。空間維持部86同士は、所定間隔をおいて離れている。空間維持部86は、抜止部材24におけるフレキシブル管300が進入する空間をフレキシブル管300が進退自在の大きさに維持する。そのための具体的な手段については後述する。
【0024】
本実施形態の場合、胴部80と、引込部82と、シール作用部84とは、ゴム製である。これらの素材として用いられるゴムの例には、NBR(Acrylonitrile-Butadiene Rubber)、SBR(Styrene-butadiene rubber)、EPDM(ethylene propylene rubber)などがある。
【0025】
引込部82には補強芯金90が埋込まれている。本実施形態の場合、補強芯金90の材質は、黄銅製座金である。ただし、引込部82の材質は、胴部80およびシール作用部84と同一材料で形成されていてもよいし、異なる材料で形成されていてもよい。
【0026】
シール材22は、フレキシブル管300の差込み前(初期状態)において、図1に示すように配置される。これにより、初期状態において、胴部80および引込部82がシール材収容部48内に位置することとなる。初期状態において、シール作用部84がシール材案内部44からシール材待機部42までの区間内に位置することとなる。初期状態において、空間維持部86がシール作用部84よりも受口部30側に位置することとなる。
【0027】
図4は本実施形態にかかる抜止部材24の斜視図である。ただし、図4において、抜止部材24が有する4つの係合爪100のうち2つは想像線で示されている。図4を参照しつつ、抜止部材24の構成を説明する。
【0028】
抜止部材24は、係合爪100と、弾性リング102とを有する。本実施形態の場合、抜止部材24は4つの係合爪100を備える。それらの係合爪100は継手本体20内に配置される。それらの係合爪100は環状に配置される。弾性リング102は、上述した4つの係合爪100の外周に装着される。これにより、弾性リング102は、4つの係合爪100を保持することとなる。弾性リング102は、その内径の弾性的な拡大縮小が可能である。弾性リング102は4つの係合爪100へ力を加える。その力の方向は弾性リング102の内径が縮小する方向である。一方、シール材22の空間維持部86が互いに隣り合う係合爪100の間に挟まれている。空間維持部86が挟まれているので、弾性リング102が係合爪100へ力を加えてもそれら4つの係合爪100は離れたままである。これにより、それら4つの係合爪100は継手本体20内のフレキシブル管300が進入する空間を取囲むこととなる。その空間の直径はフレキシブル管300の山部310の外径以上である。継手本体20の奥側(この場合、受口部30から継手本体20内を見た場合の継手本体20の奥側)へフレキシブル管300が進んだことにより、シール材22の空間維持部86が係合爪100の間から抜けると、4つの係合爪100は、フレキシブル管300の山部310および谷部312の少なくとも一方に係合する。この状態でフレキシブル管300を引き抜こうとしても、4つの係合爪100がフレキシブル管300の後退を阻止する。
【0029】
係合爪100は、受力部110と、嵌込爪部112とを有する。受力部110は弾性リング102から力を受ける。受力部110は反力部46から反力を受ける。受力部110が反力部46から反力を受けるのは反力部46が抜止部材24の移動を阻止する際である。嵌込爪部112は受力部110から突出するように設けられる。嵌込爪部112は、空間維持部86が上述した4つの係合爪100の間から抜けるとフレキシブル管300の谷部312に嵌まる。
【0030】
受力部110は、接触部120と、リング嵌込部122と、爪基部124とを有する。接触部120は反力部46に接触する。リング嵌込部122は接触部120より受口部30側に配置される。リング嵌込部122にはリング溝130が設けられている。リング溝130には弾性リング102が嵌まる。爪基部124はリング嵌込部122より受口部30側に配置される。爪基部124には嵌込爪部112が設けられている。嵌込爪部112は爪基部124から突出している。爪基部124のうち押輪26に対向する部分は端に近づくにつれ薄くなっている。これにより、抜止部材24のうち押輪26に対向する部分は、押輪26に近づくにつれ窄まることとなる。
【0031】
図5は押輪26の断面図である。図5を参照しつつ、本実施形態にかかる押輪26について説明する。図5に示すように、押輪26は筒状である。押輪26の一端が継手本体20の中に挿入される。押輪26の中をフレキシブル管300が貫通可能である。
【0032】
押輪26の内部には、阻害部140と、被覆層突当部142と、パッキン溝144とが設けられている。阻害部140は、係合爪100の爪基部124に対向する。係合爪100が山部310および谷部312の少なくとも一方に係合した状態でフレキシブル管300が継手本体20から引き抜かれようとすると、爪基部124が阻害部140に接触する。これにより、フレキシブル管300は抜けない。すなわち、阻害部140は、山部310および谷部312の少なくとも一方に係合した抜止部材24が継手本体20から抜けるのを止める。被覆層突当部142は、押輪26の内周面から突出している。フレキシブル管300の先端部分が押輪26を貫通する際、フレキシブル管300の先端部分は被覆層突当部142によって取囲まれた空間を通過する。フレキシブル管300の被覆層314は被覆層突当部142に突き当たる。パッキン溝144は、フレキシブル管300の先端部分が押輪26を貫通する際、フレキシブル管300を取囲むように設けられる。パッキン溝144には、防水パッキン150が嵌め込まれている。防水パッキン150は、EPDMなどで作られている。防水パッキン150の断面はT形状である。防水パッキン150の円周方向数箇所には、ピン形状の選択透過性部材152が埋設されている。選択透過性部材152は、気体を透過するが固体や液体は透過しない。これにより、ガス漏れ検査が可能である。選択透過性部材152は、例えば、連続多孔質膜を含む部材、あるいは連続気孔を有する多孔質体である。前者の連続多孔質膜は、四フッ化エチレン樹脂粉体を成形することによって得られる。後者の多孔質体は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルアクリレートなどの熱可塑性樹脂粉体から成形することによって得られる。
【0033】
押輪26の外部のうち継手本体20内部に挿入されてその内周に対向する部分には、スナップリング保持溝160と防水パッキン溝162とが設けられている。スナップリング保持溝160は押輪26を取囲むように形成されている。図1に示すように、このスナップリング保持溝160にはスナップリング28が嵌め込まれる。防水パッキン溝162も押輪26を取囲むように形成されている。この防水パッキン溝162には防水パッキンが嵌め込まれる。
【0034】
本実施形態にかかるフレキシブル管用継手10の組立時に、組立作業員は、継手本体20の中へ押輪26を挿入する。この挿入に伴い、スナップリング28は、スナップリング保持溝160内に内周部が嵌め込まれたまま、継手本体20の内周面をスライドする。継手本体20の内周面をスライドするため、スナップリング28は縮径するよう弾性変形する。そして、押輪26が完全に押し込まれた時点で、スナップリング28の外周部がスナップリング抜止溝50に嵌まる。スナップリング28の外周部がスナップリング抜止溝50に嵌まる時、それまで縮径していたスナップリング28は拡径する。これにより、押輪26は継手本体20から抜けないように固定される。その結果、阻害部140は、継手本体20内の所定の位置(本実施形態の場合、図5に示す位置)に固定されることとなる。
【0035】
[接続方法の説明]
次に、上述したフレキシブル管用継手10にフレキシブル管300を接続する方法について図6と図7とを参照しつつ説明する。図6は、フレキシブル管300が挿入されている最中における本実施形態にかかるフレキシブル管用継手10の断面図である。図7は、フレキシブル管300の挿入が完了した時点における本実施形態にかかるフレキシブル管用継手10の断面図である。
【0036】
フレキシブル管300の接続に際しては、先ず、フレキシブル管300を、押輪26の入口側から継手本体20内に差し込む。なお、このフレキシブル管300の先端部分の被覆層314は、山部310が6つ露出するよう、予め剥離されている。ただし、山部310をいくつ露出させるかは、継手本体20の大きさなどに応じて定められるものである。山部310をいくつ露出させるかは、本実施形態のものに限定されない。
【0037】
継手本体20内に差し込まれたフレキシブル管300は、シール材22の中を、シール作用部84、胴部80の順に通過する。その後、図6に示すように、フレキシブル管300の先端部は、シール材22の引込部82に突き当たる。シール材22のシール作用部84は胴部80より外向きに張り出す形に形成されている。これにより、フレキシブル管300の差込み時にそのシール作用部84が障害になるようなことない。フレキシブル管300の先端部はシール材22内にスムーズに挿入できる。
【0038】
シール材22の引込部82に突き当たるまでフレキシブル管300が差込まれると、シール材22の胴部80はシール材収容部48の奥へ押込まれる。この押込みに伴い、シール材22のシール作用部84はシール材案内部44の窄まり側に移動する。シール作用部84は、シール材案内部44に押されて内向きに縮径変形する。シール作用部84は、シール材案内部44を通過してシール材収容部48内に引き込まれるや否やフレキシブル管300の谷部312にかみ合う。これにより、フレキシブル管300の先端部の外周面と継手本体20のシール材収容部48の内周面との間がシール材22によって確実に密封シールされる。そこが密封シールされることで、フレキシブル管300内を流れる流体が継手本体20から漏れ出るのを防止できる。フレキシブル管300が少々変形していたとしても、その効果はほとんど低下しない。
【0039】
シール作用部84がシール材収容部48内に引き込まれている間に空間維持部86が係合爪100の間から抜ける。空間維持部86が係合爪100の間から抜けると、図7に示すように、弾性リング102が加える力を受けた係合爪100(嵌込爪部112)は、フレキシブル管300の谷部312に嵌まる。これにより、フレキシブル管用継手10にフレキシブル管300を接続する作業は終了する。
【0040】
[本実施形態にかかるフレキシブル管用継手の効果]
以上の説明から明らかなように、本実施形態にかかるフレキシブル管用継手10によれば、フレキシブル管300を継手本体20の奥まで挿入すると、そのフレキシブル管300の接続が完了する。その結果、フレキシブル管300を接続するという作業を簡略化できる。
【0041】
<変形例の説明>
今回開示された実施形態はすべての点で例示である。本発明の範囲は上述した実施形態に基づいて制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更をしてもよいのはもちろんである。
【0042】
例えば、抜止部材の構造は上述したものに限定されない。抜止部材は、次に述べるようなものであってもよい。その抜止部材は、受口部30から継手本体20内を見た場合のその奥方向へフレキシブル管300が進む際にはフレキシブル管300の貫通を許容する。その抜止部材は、受口部30から継手本体20内を見た場合に継手本体20内の手前方向へフレキシブル管300が進もうとする際にはフレキシブル管300の谷部312にかみ合う(その結果としてフレキシブル管300が抜けなくなる)。このような抜止継手とするための具体的な構造は特に限定されないが、例えば、このような抜止継手は、フレキシブル管300が上述した奥方向へ進む際にはフレキシブル管300の谷部312にかみ合う部分がたわみ、フレキシブル管300が上述した手前方向に退く際にはフレキシブル管300の谷部312にかみ合う部分がたわまないというものが考えられる。
【符号の説明】
【0043】
10…フレキシブル管用継手、
20…継手本体、
22…シール材、
24…抜止部材、
26…押輪、
28…スナップリング、
30…受口部、
32…接続用雄ねじ、
42…シール材待機部、
44…シール材案内部、
46…反力部、
48…シール材収容部、
50…スナップリング抜止溝、
54…座グリ部、
56…縮径案内部、
60…耐火パッキン溝、
70…耐火パッキン、
80…胴部、
82…引込部、
84…シール作用部、
86…空間維持部、
90…補強芯金、
100…係合爪、
102…弾性リング、
110…受力部、
112…嵌込爪部、
120…接触部、
122…リング嵌込部、
124…爪基部、
130…リング溝、
140…阻害部、
142…被覆層突当部、
144…パッキン溝、
150…防水パッキン、
152…選択透過性部材、
160…スナップリング保持溝、
162…防水パッキン溝、
300…フレキシブル管、
310…山部、
312…谷部、
314…被覆層、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受口部を有する継手本体を備え、
フレキシブル管が、前記受口部から前記継手本体内に挿入され、
前記フレキシブル管には、円周方向全周にわたって延びる山部と谷部とが管軸方向へ交互に並設されており、
前記継手本体に加え、前記継手本体内に収容される弾性変形可能なシール材を備え、
前記継手本体が、
前記受口部の奥に形成され、前記受口部に連通され、かつ、前記シール材の少なくとも一部が予め配置されるシール材待機部と、
前記受口部からみて前記シール材待機部よりも奥側に配置され、前記シール材待機部に連通されるシール材収容部とをさらに有しており、
前記シール材が、
前記フレキシブル管の外周面と前記継手本体の内周面との間をシールするシール作用部と、
前記受口部からみて前記シール作用部よりも前記継手本体内の奥側に配置され、かつ、前記シール作用部に直接または間接に接続される引込部とを有しており、
前記シール作用部が、前記シール材待機部から前記シール材収容部へ移動する間に前記フレキシブル管の谷部にかみ合い、
前記引込部が、前記受口部へ挿入された前記フレキシブル管に押されることで前記シール作用部を前記シール材収容部へ引込むフレキシブル管用継手であって、
前記フレキシブル管用継手が、
前記継手本体内に収容される抜止部材と、
前記受口部を介して前記継手本体内に挿入される押輪とをさらに備え、
前記フレキシブル管が、前記押輪の中を通り抜けて、前記受口部から前記継手本体内に挿入され、
前記抜止部材が、前記受口部から前記継手本体内を見た場合の前記継手本体の奥方向へ前記フレキシブル管が進む際には前記フレキシブル管の貫通を許容し、前記引込部が前記シール作用部を前記シール材収容部へ引込み終わる時以前に前記フレキシブル管の前記山部および前記谷部の少なくとも一方に係合し、
前記押輪が、前記山部および前記谷部の少なくとも一方に係合した前記抜止部材が前記継手本体から抜けるのを止める阻害部を有しており、
前記阻害部が、前記継手本体内の所定の位置に固定されていることを特徴とするフレキシブル管用継手。
【請求項2】
前記抜止部材が、
前記継手本体内に配置され、前記継手本体内の前記フレキシブル管が進入する空間を環状に取囲み、かつ、前記奥方向の力を受けると前記継手本体から反力を受ける複数の係合爪と、
前記複数の係合爪の外周に装着され、内径の弾性的な拡大縮小が可能であり、かつ、前記複数の係合爪へ前記内径が縮小する方向の力を加える弾性リングとを有しており、
前記シール材が、前記係合爪の間にそれぞれ挟まれる複数の空間維持部をさらに有しており、
前記空間維持部が前記係合爪の間に挟まれている間、前記複数の係合爪により取囲まれる空間の直径は前記フレキシブル管の前記山部の外径以上であり、
前記空間維持部が、前記シール材の移動に伴い移動することで、前記係合爪の間から抜け、
前記係合爪が、前記係合爪の間から前記空間維持部が抜けると、前記弾性リングから前記力を受けて前記フレキシブル管の前記谷部に係合することを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル管用継手。
【請求項3】
前記係合爪が、
前記弾性リングから前記力を受け、かつ、前記継手本体から前記反力を受ける受力部と、
前記受力部から突出するように設けられ、かつ、前記空間維持部が前記係合爪の間から抜けると前記フレキシブル管の前記谷部に嵌まる嵌込爪部とを有することを特徴とする請求項2に記載のフレキシブル管用継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−87808(P2013−87808A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226622(P2011−226622)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【特許番号】特許第5028538号(P5028538)
【特許公報発行日】平成24年9月19日(2012.9.19)
【出願人】(000231121)JFE継手株式会社 (140)
【Fターム(参考)】