説明

フレグランスとして有用なカルバメート類

分子量350未満の非ビニル第3級カルバメート類は、フレグランス成分として有用である。製造方法についても記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第3級カルバメート類(tertiary carbamates)およびそれらのフレグランス成分としての使用に関する。本発明はさらにそれらの製造方法およびそれらのフレグランス組成物としての使用に関する。
【0002】
攻撃的な媒体に晒されても、それに対して安定性のある、強力で新規な調香成分(perfumery ingredients)に対する継続的な要求がある。驚くべきことに、我々は、調香に有用な嗅覚特性を有する、ある種の非ビニル第3級カルバメート類が、広範なpHにわたる加水分解に対して、また酸化に対して安定であることを見出した。N−またはO−ビニルカルバメート類を例外として、第3級カルバメート類は調香産業のための貴重な成分を構成する。エノールエステル類およびエナミド類と類似して、O−およびN−ビニルカルバメート類は、酸触媒加水分解を受けやすい。さらに、この材料は、ポリマー産業にけるモノマーとしてのそれらの使用によれば、容易に重合する。前述の非ビニル第3級カルバメート類は、優れた持続性(substantivity)を備えた、スパイシー、ハーベイシアス(herbaceous)またはフローラルロージー(floral rosy)の範囲の匂いを示し、フレグランス成分として有用である。
【0003】
非ビニル第3級カルバメート類、すなわち次式:
【化1】

式中、窒素原子と共有結合した水素原子は置換されている、
で表される非ビニルカルバミン酸エステルのフレグランス成分としての使用は、過去の文献に記載されていない。
すなわち、本発明は、第1の観点において、非ビニル第3級カルバメート類、すなわちN−ビニルまたはO−ビニル置換基を有さない、分子量が350未満の、好ましくは分子量が300以下の第3級カルバメートのフレグランス成分としての使用に関する。
【0004】
好ましい一態様においては、本発明は、アルキル、アルク−(>1)−エニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、フェニル、ナフチル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニルアルキル、フェニルアルキル、およびナフチルアルキルからなる群から選択される、カルバメートのエーテル酸素原子に共有結合した基を有するN,N−置換カルバメートの、フレグランス成分としての使用に関し、前記共有結合基は、アルキル、アルケニルおよびアルコキシで随意に置換され、かつ前記の基はヘテロ原子、例えば酸素、窒素または硫黄を随意に含む。
【0005】
より具体的には、本発明は式(I)の第3級カルバメート類のフレグランス成分としての使用に関する:
【化2】

式中、
およびRは、
(a)C〜C11アルキル、好ましくはC〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル;C〜C11アルク−(>1)−エニル、好ましくはC〜Cアルケニル、例えばプロプ−2−エニル;またはC〜C11アルキニル基;および
(b)アルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換されたシクロアルキル;アルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換されたC〜Cシクロアルケニル;または芳香環がアルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換されたフェニルもしくはナフチル;および
【0006】
(c)シクロアルキル環がアルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換されたC〜C14シクロアルキルアルキル;または芳香環がアルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)によって随意に置換された、フェニルアルキルもしくはナフチルアルキル;
からなる群から独立に選択され、
Rは、
(a)C〜C11アルキル;C〜C11アルク−(>1)−エニル;またはC〜C11アルキ二ル基;および
(b)アルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換されたシクロアルキル;アルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換されたC〜Cシクロアルケニル;またはアルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換されたフェニルもしくはナフチル;および
(c)シクロアルキル環がアルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換されたC〜C14シクロアルキルアルキル;シクロアルケニル環がアルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換されたC〜C14シクロアルケニルアルキル;または芳香環がアルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換されたフェニルアルキルもしくはナフチルアルキル;および
【0007】
(d)シクロアルキル環がアルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換されているC〜C14シクロアルキルアルコキシアルキル;シクロアルケニル環がアルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換されているC〜C14シクロアルケニルアルコキシアルキル;または芳香環がアルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換されている、フェニルアルコキシアルキルもしくはナフチルアルコキシアルキル;および
(e)芳香族複素環、例えばピリジル、フリル;アリールアルキル複素環、例えばフリルメチル、ピリジルメチル、ピリジルエチル;複素環、例えばジヒドロフリル、テトラヒドロフリル;または、シクロアルキル複素環、例えば、ジヒドロフリルメチル、テトラヒドロフリルメチル;であって、環がアルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)によって随意に置換され、環が5〜6員を有し、ヘテロ原子が酸素または窒素であるもの;
からなる群から選択され、
R、RおよびRは合わせて7〜18個の炭素原子、より好ましくは7〜16個の炭素原子、最も好ましくは8〜12個の炭素原子を有するか、または
【0008】
は、
(a)C〜Cアルキル;C〜Cアルク−(>1)−エニル;またはC〜Cアルキニル基;および
(b)アルキルおよびアルケニル基(1個または2個以上)によって随意に置換されたC〜Cシクロアルキル;アルキルおよびアルケニル基(1個または2個以上)で随意に置換されたC〜Cシクロアルケニル;またはアルキルおよびアルケニル基(1個または2個以上)で随意に置換されたフェニル;および
(c)シクロアルキル環がアルキルおよびアルケニル基(1個または2個以上)で随意に置換されたC〜Cシクロアルキルアルキル;または芳香環がアルキルおよびアルケニル基(1個または2個以上)で随意に置換されたフェニルアルキル;
からなる群から選択され、
RおよびRは結合先の原子と一緒に、アルキルおよびアルケニル基(1個または2個以上)で随意に置換された5〜8員複素環を形成し;R、RおよびRは合わせて7〜18個の炭素原子、より好ましくは7〜16個の炭素原子、最も好ましくは8〜12個の炭素原子を有する。
【0009】
特に断らない限り、式(I)の化合物と関係して使用する場合には、「シクロアルキル」はC〜C、好ましくはC〜C、例えばシクロペンチル、シクロヘキシルを指し;「アルキル」は直鎖状または分枝状C〜Cアルキル、例えばn−ペンチル、sec−ペンチル、tert−ペンチル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、好ましくはC〜C、例えばメチル、エチル、i−プロピルを指し;「アルケニル」は、ビニルまたは直鎖状もしくは分枝状C〜Cアルケニル、例えばプロペン−1−イル、プロペン−2−イル、アリル、およびブタ−2−エン−1−イルを指し;「アルク−(>1)−エニル(alk-(>1)-enyl)」は、カルバメートのN原子またはエーテル酸素原子と、最も近いC−C二重結合との間に少なくとも1つのsp混成C原子が存在する、C〜C11直鎖状または分枝状アルケニル、例えばヘキシ−3−エン−1−イル、3−メチル−ブタ−2−エン−1−イルを指し;そして、「アルコキシ」は、メトキシ、エトキシ、およびイソプロポキシなどのC〜Cを指す。
【0010】
式(I)で表される化合物と関係して使用する場合に、「随意に置換された」という用語は、置換基がないか、または少なくとも1つの置換基、たとえば1または2以上のアルキル基、1または2以上のアルケニル基、または1または2以上のアルコキシ基、あるいは少なくとも2つの置換基の組合せ、例えばアルキル基とアルコキシ基、2つのアルキル基と1つのアルケニル基、1つのアルキル基と1つのアルケニル基があることを意味する。
好ましいのは式(I)による化合物であって、式中RおよびRは合わせて2〜13個の炭素原子、より好ましくは2〜9個の炭素原子、最も好ましくは2〜6個の炭素原子を有するものである。R=Rである、本発明による化合物も好ましい。
【0011】
式(I)で表される化合物は、1つまたは2つ以上のキラル中心を有し、それによって立体異性体の混合物として存在するか、または異性体的に純粋な形態として分割することができる。立体異性体を分割すると、これらの化合物の製造および精製の複雑度が増し、したがって、単に経済的な理由から、これらの化合物をその立体異性体の混合物として使用するのが好ましい。しかしながら、個々の立体異性体を調製するのが望ましい場合には、これは当該技術において周知の方法、例えば予備HPLCおよびGCによるか、または立体選択的合成によって達成することができる。
式(I)の化合物の中には、文献に記載されているものもあるが、その他は記載されておらず、新規である。
【0012】
したがって、本発明の第2の観点においては、R、RおよびRが以下の表に従って選択される式(I)で表されるの化合物が提供される。
【表1】

【0013】
本発明による化合物は、単独で使用するか、または現在利用可能な天然および人工分子の広い範囲から選択される既知の匂い物質分子(odourant molecules)、例えば精油(essential oils)、アルコール類、アルデヒド類およびケトン類、エーテル類およびアセタール類、エステル類およびラクトン類、大環状分子および複素環分子との組合せとして、および/または従来からフレグランス組成物において匂い物質と一緒に使用されている1種または2種以上の成分または賦形剤、例えば担体材料、および当該技術において一般的に使用されているその他の補助剤と混合して使用することができる。
【0014】
以下のリストは、本発明の化合物と組み合わせることができる、既知の匂い物質分子の例を含む。
・精油およびエキス、例えば、海狸香、カスタスルート油(costus root oil)、オークモスアブソリュート(oak moss absolute)、ゼラニウム油、ジャスミンアブソリュート(jasmin absolute)、パッチュウリ油(patchouli oil)、バラ油(rose oil)、ビャクダン油(sandalwood oil)、またはイランイラン香油(ylang-ylang oil);
・アルコール類、例えば、シトロネロール、Ebanol(登録商標)、オイゲノール、ゲラニオール、Super Muguet(登録商標)、リナロール、フェニルエチルアルコール、Sandalore(登録商標)、テルピネオール、またはTimberol(登録商標);
・アルデヒド類およびケトン類、例えば、α−アミルシンナムアルデヒド、Georygywood(登録商標)、ヒドロキシシトロネラール、Iso E Super(登録商標)、Isoraldeine(登録商標)、Hedione(登録商標)、マルトール、メチルセドリルケトン、メチルイオノンまたはバニリン;
・エーテルおよびアセタール類、例えば、Ambrox(登録商標)、ゲラニルメチルエーテル、ローズオキシド(rose oxide)またはSpirambrene(登録商標);
・エステル類およびラクトン類、例えば、ベンジルアセテート、セドリルアセテート、γ−デカラクトン、Helvetolide(登録商標)、γ−ウンデカラクトンまたはベチベニルアセテート(vetivenyl acetate);
・大環状分子、例えば、アンブレットリド(ambrettolide)、エチレンブラシレート(ethylene brassylate)またはExaltolide(登録商標);
・複素環分子、例えば、イソブチルキノリン。
【0015】
本発明の化合物は、広い範囲のフレグランス製品、例えば、香水、家庭用製品、洗濯用製品、ボディケア製品および化粧品などの高品質および機能性調香の任意の分野において使用することができる。これらの化合物は、特定の製品およびその他の匂い物質成分の性質および量に応じて、広範に変化する量で利用することができる。割合は、通常、その製品の0.001〜20重量%である。一態様において、本発明の化合物は、0.001〜0.05重量%の量で、織物柔軟剤(fabric softener)に使用することができる。別の態様においては、本発明の化合物は、0.1〜20重量%、より好ましくは0.1〜5重量%の量でアルコール溶液に使用することができる。しかしながら、熟練した調香師はより低いまたは高い濃度で、効果を達成するかまたは新しい調和(accord)を生成することができる可能性があるので、これらの値は、一例としてあげたものにすぎない。
【0016】
本発明の化合物は、単にフレグランス組成物をフレグランス製品と直接的に混合することによってフレグランス製品に使用するか、またはそれらを、早い段階において、例えば、ポリマー類、カプセル類、マイクロカプセル類およびナノカプセル類、リポソーム類、膜形成剤、炭素またはゼオライトなどの吸収剤、環状オリゴ糖類およびその混合物などの閉じ込め材料で閉じ込めるか、あるいは、それらを、光、酵素などの外部刺激を加えるときに、フレグランス分子を解放するように適合されている基材に化学的に結合させてから、製品に混合しもよい。
したがって、本発明はさらに、分子量350未満の第3級カルバメートをフレグランス成分として組み込むことを含む、フレグランス製品の製造方法を提供する。
【0017】
式(I)の直鎖状N,N−ジアルキルカルバメート化合物、すなわち、RおよびRが、結合先の原子と一緒に環を形成しない式(I)の化合物は、スキーム1に示すように、対応する式(IV)のクロロギ酸アルキルエステル、例えばクロロギ酸ヘキス−3−エニルエステルを、対応する式(III)のジアルキルアミン、例えばジエチルアミンと反応させることによって合成してもよく、またはそれは、対応する式(II)のジアルキルカルバモイルクロリド、例えば、ジメチルカルバモイルクロリドと、対応するアルコールROH、例えば2,3,4−トリメチル−ペンタン−3−オールとを反応させて合成してもよい。使用するのに適当な方法は、主として、開始材料の入手可能性によって決まる。その他の経路、例えば、当業者に知られているとともに、例えばDE3312498に記載されているような、アルコールROHとN−アルキルイソシアネート類との反応を利用することもできる
【0018】
スキーム1:
【化3】

さらに、式(I)の直鎖状N,N−ジアルキルカルバメート化合物は、二段階プロセスによって合成することができ、対応する第1級アミン、例えばイソプロピルアミンを、対応する式(IV)のクロロギ酸アルキルエステル、例えばクロロギ酸2−エチルヘキシルエステルと、1モル当量の塩基、例えばNaHの存在下で反応させることによって、第1段階において、対応する式(V)の第2級カルバメートが結果として得られる。対応するアルキル化剤、例えばアルキルトルエンスルホナート類、アルキルメタンスルホナート類、ジアルキル硫酸塩(例えば、硫酸ジメチル)、およびハロゲン化アルキル類を、1モル当量の塩基、例えばNaHの存在下で添加することによる第2級カルバメートのさらなるアルキル化によって、スキーム2に示すように、対応する式(I)の直鎖状N,N−ジアルキルカルバメート化合物が生じる。
【0019】
スキーム2
【化4】

スキーム2によるプロセスは、特に、式(I)の非対称N,N−ジアルキルカルバメート化合物、すなわち、RがRと異なる、本発明による化合物を製造するのに有用である。二段階プロセスを使用すると、そのような非対称N,N−ジアルキルカルバメート化合物が、中間生成物を分離することなく、1つの反応容器内で合成できるという利点がある。
【0020】
したがって、本発明のさらに別の観点は、
(a)式(VI)の第1級アミンを、塩基、例えばNaHの存在下で、式(IV)のクロロギ酸アルキルエステルと反応させて式(V)の第2級カルバメートを得る工程、およびその後の
(b)前記式(V)の第2級カルバメートを、塩基、例えばNaHの存在下で、式:
−X
式中、XはBr、Cl、J、またはR−SOであり、Rはメチルまたはトリルである、
で表されるアルキル化剤と反応させる工程
による、式(I)の化合物の製造方法であって、
R、RおよびRは上記に定義されるとおりであるとともに、工程(a)および(b)は、同一の反応容器において逐次的に行われる方法である。
【0021】
式(I)の環状カルバメート化合物、すなわちRおよびRが結合先の原子と一緒に環を形成する化合物は、アルカリアルコレート、例えばナトリウムエタノレートの存在下で、炭酸ジアルキル、例えば炭酸ジエチルおよび炭酸ジメチルと、対応する第1級アミノ−アルコール、例えば2−アミノプロパノールとを反応させ、続いて結果として得られる第2級アミンのアルキル化によって合成してもよく、これによって式(I)の環状第3級カルバメートが得られる。式(I)の環状カルバメート化合物は、当業者に周知のように、カルバメート架橋ジオレフィンの閉環メタセシス反応によって合成することもできる。
次に、以下の非限定的な例を参照して、本発明をさらに説明する。
【0022】
実施例1:ジエチル−カルバミン酸ヘキス−3−エニルエステル(表1、化合物No.1)
ジエチルアミン(9.1g、125mmol、1.25当量)を、2%NaOH水溶液(200ml)に添加し、その結果得られる混合物を0℃まで冷却した(氷浴)。この温度で、ジエチルエーテル(200ml)中のクロロギ酸ヘキス−3−エニルエステル(16.2g、100mmol)を35分間にわたって添加した。添加完了後に、冷却浴を取り除き、1.5時間にわたり攪拌を続けた。混合物を、2N HCl水溶液で酸性化し、相を分離し、有機相を塩水で洗い、MgSO上で乾燥させた。粗生成物を分割蒸留(74〜76℃/0.05mbar)によって精製して、18.2g(92%)の生成物を得た。
【0023】
【表2】

匂い性状:グリーン(green)、ペパリー(peppery)、リコリス(liquorice)
表1にリストした、その他の化合物を、上述の手順に従って調製した。
【0024】
【表3】

【0025】
【表4】

:分子イオン;括弧内:100%シグナル
【0026】
実施例2:ジメチルカルバミン酸1−イソプロピル−1,2−ジメチル−プロピルエステル(表2、化合物24)
トルエン(50ml)中の2,3,4−トリメチル−ペンタン−3−オール(13.0g、100mmol、1当量)の溶液を、トルエン(50ml)中のNaH懸濁液(鉱油中で55%、4.80g、110mmol、1.1当量)に加えた。この混合物を、100℃まで1時間加熱して、次いで0℃まで冷却した。トルエン(30ml)中のジメチルカルバモイルクロリド(12.9g、120mmol、1.2当量)の溶液を、45分間にわたって添加した。その結果として得られる懸濁液を、室温で19時間攪拌し、次いで、MTBEで希釈して実施例1に示すようにワークアップした。粗生成物を0.05mbar/52〜61℃で蒸留することによって、61%の生成物が得られた。
【0027】
【表5】

匂い性状:フルーティ、ロージー、スパイシー
上述の合成プロトコルに従って調製した別の化合物を表2にリストしてある。
【0028】
【表6】

【0029】
【表7】

:分子イオン;括弧内:100%シグナル
【0030】
実施例3:イソプロピル−メチル−カルバミン酸2−エチルーヘキシルエステル
イソプロピルアミンの溶液(2.95g、50mmol、1当量)を、室温でTHF(25ml)中のNaHの懸濁液(鉱油中で55%、2.40g、55mmol、1.1当量)に加えた。混合物を、18時間、40℃まで昇温し、次いでTHF(25ml)中のクロロギ酸2−エチル−ヘキシルエステルを、30分間にわたって滴加した。さらに4時間の攪拌の後に、THF(25ml)中のNaHの懸濁液(鉱油中で55%、2.40g、55mmol、1.1当量)を加え、続いてTHF(20ml)中の硫酸ジメチルの溶液(5.2ml、55mmol、1.1当量)を加えた。この混合物を70℃まで16時間加熱し、次いで、水(50ml)を加えて加水分解した。この加水分解混合物を、過剰な硫酸ジメチルを破壊するために、さらに70℃まで1.5時間加熱して、次いでMTBEで希釈して実施例1に記載するようにワークアップした。この粗生成物を、0.06mbar/94〜95℃で蒸留して8.8g(77%)の生成物を得た。
【0031】
【表8】

匂い性状:スパイシー、ペパリー
【0032】
実施例4:4−メチル−3−ペンチル−オキサゾリジン−2−オン
4.1.4−メチル−オキサゾリジン−2−オン(K. Rein et al., J. Am. Chem. Soc. 1989, 111, 2211.参照)
炭酸ジエチル(46.8g、397mmol、1.2当量)を、触媒量(1mol%)の新しく調製したNaOEt(76mgのNaおよび0.4mlのEtOHからのもの)に添加した。次いで、2−アミノプロパノール(24.6g、328mmol、1当量)を添加し、その結果として得られた溶液を125℃に加熱し、その時点でEtOHの留出が始まった。5時間後に、混合物を室温まで冷却して、過剰の炭酸ジエチルを高真空0.5mbar/50℃で除去して、分析的に純粋な5−メチルオキサゾリジノン33.0g(99%)を淡黄色の油として得た。
【0033】
【表9】

4.2.4−メチル−3−ペンチル−オキサゾリジン−2−オン
THF(100ml)中の4−メチル−オキサゾリジン−2−オン(18.0g、178mmol)を、滴下ロートを介してゆっくりとTHF(400ml)中のヘキサン洗浄NaH(鉱油中で60%、7.12g、178mmol、1.0当量)のスラリーに加え、そのときにH発生が観察された。純ヨードペンタン(70.51g、356mmol、2.0当量)を迅速に加えて、混合物を室温で1時間攪拌し、次いで加熱して60時間還流させた。5℃まで冷却した後に、2N HSO(180ml)をゆっくりと添加した。この混合物をMTBEで抽出して、通常どおりワークアップした。Widmerカラム(Widmer-column)上において115℃/0.08mbarで蒸留することによって、生成物を、わずかに黄色がかった液体(20.54g、73%)として得た。
【0034】
【表10】

匂い性状:セロリ、ジャスミン調
【0035】
実施例5:スパイシー・ウッディ男性用フレグランスの製造
【表11】

100重量部のジメチルカルバミン酸1,5−ジメチル−1−ビニル−ヘキス−4−エニルエステル(表2、化合物22)の添加によって、フレグランスのスパイシー・ペパリーな側面が強調され、より多くの全体的なリフトをもたらす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量が350未満である非ビニル第3級カルバメートのフレグランスとしての使用。
【請求項2】
アルキル、アルク−(>1)−エニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、フェニル、ナフチル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニルアルキル、フェニルアルキル、およびナフチルアルキルからなる群から選択される、カルバメートのエーテル酸素原子に共有結合した基を有し、該共有結合した基が、アルキル、アルケニルおよびアルコキシにより随意に置換されており、そして、該基が、随意にヘテロ原子を含む、N,N−置換カルバメートのフレグランス成分としての使用。
【請求項3】
請求項1または2に記載の、式(I)、
【化1】

式中、
およびRは、
(a)C〜C11アルキル;C〜C11アルク−(>1)−エニル;またはC〜C11アルキニル基;および
(b)アルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換されたシクロアルキル;アルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換されたC〜Cシクロアルケニル;またはアルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換されたフェニルもしくはナフチル;および
(c)シクロアルキル環がアルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換されたC〜C14シクロアルキルアルキル;または芳香環がアルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換された、フェニルアルキルもしくはナフチルアルキル
からなる群から独立に選択され、
Rは、
(a)C〜C11アルキル;C〜C11アルク−(>1)−エニル;またはC〜C11アルキニル基;および
(b)アルキル、アルケニル、およびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換されたシクロアルキル;アルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換されたC〜Cシクロアルケニル;またはアルキル、アルケニル、およびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換されたフェニルもしくはナフチル;および
(c)シクロアルキル環がアルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換されたC〜C14シクロアルキルアルキル;シクロアルケニル環がアルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換されたC〜C14シクロアルケニルアルキル;または芳香環がアルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換されたフェニルアルキルもしくはナフチルアルキル;および
(d)シクロアルキル環がアルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換されたC〜C14シクロアルキルアルコキシアルキル;シクロアルケニル環がアルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換されたC〜C14シクロアルケニルアルコキシアルキル;または芳香環がアルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換されたフェニルアルコキシアルキルもしくはナフチルアルコキシアルキル;および
(e)アルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換された芳香族複素環;アルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換されたアリールアルキル複素環;アルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換された複素環;またはアルキル、アルケニルおよびアルコキシ基(1個または2個以上)で随意に置換されたシクロアルキル複素環;であって、環が5〜6員を有し、環のヘテロ原子が酸素または窒素であるもの;
からなる群から選択され、
R、RおよびRは、合わせて7〜8個の炭素原子を有する、
で表されるカルバメートの、フレグランス成分としての使用。
【請求項4】
請求項1または2に記載の、式(I)、
【化2】

式中、
は、
(a)C〜Cアルキル基;C〜Cアルク−(>1)−エニル基;またはC〜Cアルキニル基;および
(b)アルキルおよびアルケニル基(1個または2個以上)によって随意に置換されたC〜Cシクロアルキル;アルキルおよびアルケニル基(1個または2個以上)で随意に置換されたC〜Cシクロアルケニル;またはアルキルおよびアルケニル基(1個または2個以上)で随意に置換されたフェニル;および
(c)シクロアルキル環がアルキルおよびアルケニル基(1個または2個以上)で随意に置換されたC〜Cシクロアルキルアルキル;または芳香環がアルキルおよびアルケニル基(1個または2個以上)で随意に置換されたフェニルアルキルからなる群から選択され、
RおよびRは結合先の原子と一緒に、アルキルおよびアルケニル基(1個または2個以上)で随意に置換された、5〜8員の複素環を形成し;R、RおよびRは合わせて7〜18個の炭素原子を有する、
で表されるカルバメートの、フレグランス成分としての使用。
【請求項5】
式(I)
【化3】

式中、R、RおよびRは、以下の表に従って選択される
【表1】

で表される化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに定義された非ビニル第3級カルバメートをフレグランス成分として含む、フレグランス組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに定義された非ビニル第3級カルバメートをフレグランス成分として組み入れることを含む、フレグランス製品の製造方法。
【請求項8】
フレグランス製品が、香水、家庭用製品、洗濯用製品、ボディケア製品および化粧品からなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
式(I):
【化4】

で表される化合物を、
(a)第1級アミンHNRを、塩基の存在下で、式(IV)のクロロギ酸アルキルエステルと反応させて式(V)の第2級カルバメートを得る工程、およびその後の、
【化5】

(b)前記式(V)の第2級カルバメートを、塩基の存在下で式:R−X
式中、XはBr、Cl、J、またはR−SOであり、Rはメチルまたはトリルである
で表されるアルキル化剤と反応させる工程、
により製造するための方法であって、
ここで、R、RおよびRは請求項3、4および5のいずれかに定義されるとおりであり、かつ工程(a)および(b)は同一反応容器内で逐次的に行われる、前記方法。

【公表番号】特表2006−523244(P2006−523244A)
【公表日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504173(P2006−504173)
【出願日】平成16年4月14日(2004.4.14)
【国際出願番号】PCT/CH2004/000227
【国際公開番号】WO2004/089880
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(501105842)ジボダン エス エー (158)
【Fターム(参考)】