説明

フレグランス組成物の製造に好適な三置換フラン

およびRが明細書中に記載されているのと同じ意味を有する、式(I)で表される2,2−二置換5−メチル−2,5−ジヒドロ−および2,2−二置換5−メチル−テトラヒドロフランは着臭物質として有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三置換フラン、すなわち、2,2−二置換5−メチル−2,5−ジヒドロ−および2,2−二置換5−メチル−テトラヒドロフランならびに着臭剤としてのそれらの使用に関する。本発明は、さらにそれらの製造方法およびそれらを含むフレグランス組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フレグランス業界においては、臭気(odour)ノート(note)を増強または改善する、あるいは新しい臭気ノートを与える、新しい化合物に対する一定の需要がある。
ここで、ある種の三置換フランが、硫黄オフノート(off-note)の全くない、新しい強力なブラックカラント(blackcurrant)臭を構成することが見出された。フルーティなブラックカラントノートは、最初に>>Amazone<<(Hermes、1974)において用いられ、自然さと新鮮さを付与することから香料のトップノートとしてますます流行するようになり、そのためにヘスペリジック−シトラス、ラベンダーまたはアルデヒドノートの魅力的な代替物となっている。この最近の流行についての香水の例は、>>Le Monde est bea <<(Kenzo, 1997)および>>In Love Again<<(Yves Saint Laurent, 1998)を含む。それ以来、ブラックカラントノートは極めて流行するようになり、今日では、高級フレグランスのみならず、化粧品やトイレタリーの部分においても広く使用されている。しかしながら、Corps Cassis(4−メチル−4−メチルスルファニルペンタン−2−オン)およびOxane(2−メチル−4−プロピル[1,3]オキサチアン)などのほとんどのブラックカラント着臭剤は硫黄化合物であり、不快なオフノートを生じ得る強烈な硫黄臭のする副生成物である。したがって、硫黄を有しない新しいブラックカラント臭に対する特定の必要性が存在する。
【発明の開示】
【0003】
したがって、本発明は、その側面の一つにおいて、式(I)
【化1】

式中、
は、メチル、エチル、プロピルまたはイソプロピルであり;
は、分枝C〜Cアルキル、例えばtert−ブチル、ネオペンチルもしくはイソヘキシル;C〜 Cシクロアルキル、例えばシクロヘキサンおよびシクロヘプタン;あるいは、メチルシクロヘキシルおよびジメチルシクロヘキシルなどの、単置換もしく二置換C または Cシクロアルキルであり;および
C−3およびC−4の間の結合は単結合であるか、または、点線がC−3およびC−4の間の結合と共に二重結合を表す、
で表される化合物に関する。
【0004】
本発明による化合物は、いくつかのキラル中心を含み、そしてそれ自体は立体異性体の混合物として存在してもよく、または、異性体的に純粋な形態として分離されていてもよい。立体異性体の分離は、これら化合物の製造および精製の複雑性を増大させるので、経済的な理由から、それらの立体異性体の混合物として化合物を使用することが好ましい。しかしながら、各立体異性体を製造することが必要な場合には、例えば分取HPLCおよびGCなどの当分野で既知の方法にしたがって、あるいは立体選択的合成により、これを達成することができる。
【0005】
式(I)で表されるとくに好ましい化合物は、2−tert−ブチル−5−メチル−2−プロピル−2,5−ジヒドロフラン、2−tert−ブチル−5−メチル−2−プロピルテトラヒドロフラン、2−tert−ブチル−2−イソプロピル−5−メチル−2,5−ジヒドロフラン、2−tert−ブチル−2−イソプロピル−5−メチルテトラヒドロフラン、2−tert−ブチル−2−エチル−5−メチル−2,5−ジヒドロフラン、2−tert−ブチル−2−エチル−5−メチルテトラヒドロフラン、2−tert−ブチル−2,5−ジメチル−2,5−ジヒドロフラン、2−tert−ブチル−2,5−ジメチルテトラヒドロフラン、2−(3’,3’−ジメチルシクロヘキシル)−2,5−ジメチル−2,5−ジヒドロフランおよび2−(3’,3’−ジメチルシクロヘキシル)−2,5−ジメチルテトラヒドロフランである。
【0006】
本発明による化合物は、単独でまたはベース材料と組み合わせて用いることができる。本明細書において「ベース材料」は、エッセンシャルオイル、アルコール、アルデヒドおよびケトン、エーテルおよびアセタール、エステルおよびラクトン、複素環および大員環、ならびに窒素含有化合物などの現在利用できる天然製品および合成分子の広範囲から選択される既知の全ての着臭分子、および/または、例えばキャリアー材料などのフレグランス組成物中の着臭分子と組み合わせて慣用的に用いられる1種もしくは2種以上の成分または賦形剤との組み合わせ、ならびに、当分野において通常用いられる他の助剤を含む。
【0007】
下記のリストは、本発明の化合物と組み合わせてもよい既知の臭気分子の例を含む:
エッセンシャルオイルおよびエキストラクト、例えば、アンゼリカルートオイル、ベルガモットオイル、ブラックカラントアブソリュート、ブチュリーフオイル、コリアンダーオイル、ゼラニウムオイル、グレープフルーツオイル、ジャスミンアブソリュート、ラベンダーオイル、ライムオイル、ネロリオイル、オークモスアブソリュート、オリスルートオイル、パチョリオイル、プチグレンオイル、ローズオイルまたはイランイランオイル。
【0008】
アルコール、例えば、シトロネロール、ジメチルベンジルカルビノール、オイゲノール、ゲラニオール、(3Z)−ヘキサ−3−エノール、リナロール、フェニレチルアルコール、Super Muguet(登録商標)、テルピネオール、またはUndecavertol(登録商標)。
アルデヒドおよびケトン、例えば、Cetone V(登録商標)、ダマセノン、ヘリオトロピン、α−ヘキシル桂皮アルデヒド、Iso E Super(登録商標)、β−イオノン、Isoraldeine(登録商標)、Silvial(登録商標)、またはバニリン。
エーテルおよびアセタール、例えば、Ambrox(登録商標)、Oxane(登録商標)またはSpirambrene(登録商標)。
エステルおよびラクトン、例えば、酢酸ベンジル、クマリン、Hedione(登録商標)、または安息香酸ヘキシル。
複素環および大員環、例えば、アンブレットリド、エチレンブラシレート、Exaltolide(登録商標)、マルトール、Moxalone(登録商標)、またはNirvanolide(登録商標)。
窒素含有化合物、例えば、アントラニル酸メチル、Peonile(登録商標)、またはStemone(登録商標)。
【0009】
本発明の化合物は、広範囲のフレグランス製品において、例えば、香水、家庭製品、洗濯製品、ボディケア製品および化粧品などのあらゆる分野の高級および機能的香料において、用いることができる。本化合物は、特定の用途および他の着臭成分の性質および量に応じ、広範囲の可変量で用いることができる。その割合は、典型的には製品の0.001〜5重量%である。一つの態様においては、本発明の化合物は、繊維柔軟剤において0.001〜0.05重量%の量で用いることができる。他の態様においては、本発明の化合物は、高級な香料において0.1〜5重量%、より好ましくは0.1〜2重量%の量で用いることができる。しかしながら、経験豊富な香水業者はまた、より低いまたはより高い濃度で効果を達成することができ、あるいは新しい調和を創造することができるから、これらの値は例示としてのみ与えられる。
【0010】
本発明の化合物は、フレグランス製品へ、単純にフレグランス製品にフレグランス組成物を直接混合することにより使用することができ、あるいは、より早い段階で封入材料と共に封入してもよい。封入材料の例は、ポリマー、カプセル、マイクロカプセルおよびナノカプセル、リポソーム、フィルム形成剤、炭素またはゼオライトなどの吸収剤、環状オリゴ糖およびこれらの混合物を含む。あるいは、本発明の化合物は、光、酵素などの外的刺激の適用でフレグランス分子を放出するように適合した化合物に化学的に結合せしめ、そして次いで製品に混合してもよい。
【0011】
したがって、さらに本発明は、フレグランス成分としての式(I)で表される化合物を取り込むことを含む、フレグランス製品の製造方法であって、前記製品に前記化合物を直接混合すること、または、フレグランス製品に後に混合されてもよい式(I)で表される化合物を含むフレグランス組成物を、慣用の技術および方法を用いて混合することのいずれかによる、前記方法を提供する。
【0012】
本明細書において用いられるように、「フレグランス製品」は、着臭剤を含む、高級フレグランス、例えばオードパーフュームおよびオードトワレなど;家庭製品、例えば食器洗浄用洗剤、サーフェースクリーナー;洗濯製品、例えば柔軟剤、漂白剤、洗剤;ボディケア製品、例えばシャンプー、シャワージェル;ならびに化粧品、例えばデオドラント、バニッシングクリームなどのあらゆる製品を意味する。製品のこのリストは、説明のために与えられ、いかなる限定にもみなされない。
【0013】
式(I)の化合物は、当分野においてよく知られた一般的な方法にしたがって製造された3−ブチン−2−オールのマグネシウムグリニャール試薬を、アルキンジオールを生じる対応するケトン(RCO)と反応させることにより調製することができる。アルキンジオールは、次いでリンドラー触媒の存在下で水素化される。形成されたシス−構造アルケンジオールの、硫酸水素カリウムの存在下における引き続く環化により、対応する5−メチル−2,5−ジヒドロフランが形成される。さらに式Iの化合物は、ジヒドロフランの水素化により調製することができる。
【0014】
本発明について、以下の非限定的な例を参照してさらに記述する。
例1:2−tert−ブチル−5−メチル−2−プロピル−2,5−ジヒドロフラン
30分間にわたり、乾燥テトラヒドロフラン100mL中の臭化エチル40.7g(374mmol)の溶液を、乾燥テトラヒドロフラン5mL中のマグネシウムターニング(turning)9.058g(374mmol)の攪拌懸濁液に滴下添加し、ヒートガンにより時折加熱しながら反応を開始させた。次いで、反応混合物を環流によりさらに3時間攪拌した。反応を室温まで冷却し、乾燥テトラヒドロフラン80mL中のブト−3−イン−2−オール12.6g(180mmol)の溶液を攪拌しながら滴下添加した。次いで、ヒーティングバスを除去する前に、反応混合物を再度加熱して4時間環流させた。室温で、乾燥テトラヒドロフラン90mL中の2,2−ジメチルヘキサン−3−オン25.0g(195mmol)の溶液を攪拌しながら35分以内に添加し、反応混合物を攪拌しながらさらに2時間環流させた。次いで、反応混合物を室温に冷却し、水性飽和NHCl溶液500mLによりクエンチングした(quenched)。水相をそれぞれ3回エーテル500mLにより抽出し、併せた有機抽出物を硫酸ナトリウムにより乾燥させ、溶媒をロータリーエバポレータで蒸発させて、わずかに黄色のオイルとして粗5−tert−ブチルオクト−3−イン−2,5−ジオール32.3g(90%)を得た。これはさらなる精製をせずに用いた。
【0015】
エタノール300mL中の前記生成物20.8g(105mmol)の溶液を、硫酸バリウム上の10%パラジウム3.11g(2.92mmol)およびキノリン300mg(2.32mmol)の存在下、水素雰囲気において周囲気圧および周囲温度で攪拌することにより水素化した。10時間の攪拌の後、セライト(Celite)パッド上で触媒をろ別し、溶媒をロータリーエバポレータで除去して、粗(3Z)−5−tert−ブチルオクト−3−エン−2,5−ジオール20.7g(99%)を得た。このうち19.6g(98mmol)を、KHSO2.00g(14.7mmol)の存在下、155℃/280mbarまでクーゲルロール(Kugelrohr)装置中で45分間加熱した。蒸発した反応生成物は、−80℃でバルブ中に捕捉し、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル400g、ペンタン/エーテル98:2)によりさらに精製して、生成物7.26gを得た。次いでこれをクーゲルロール装置中で蒸留し、70〜80℃/20mbarで無色の臭気液体として標題化合物6.24g(34%)を得た。
【0016】
【表1】

臭気記載:ブラックカラント、ナチュラル、リッチ、ユーカリ芽、アニス、ブチュリーフ、わずかにグリーン
【0017】
例2:2−tert−ブチル−5−メチル−2−プロピルテトラヒドロフラン
周囲温度において、乾燥エーテル60mL中の2−tert−ブチル−5−メチル−2−プロピル−2,5−ジヒドロフラン2.91g(10.4mmol)および活性炭上の10%パラジウム1.06g(1.00mmol)の懸濁液を、2.5bar水素圧でパール(Parr)装置中で4時間水素化した。触媒をセライトパッド上でろ別し、溶媒を蒸発させた。得られた残渣をクーゲルロール装置中で蒸留し、無色の臭気液体として標題化合物2.43g(80%)を75〜85℃/20mbarで得た。
【0018】
【表2】

臭気記載:グリーン、パイニー(piny)、ユーカリ、ミント様のファセット(facet)を有するブラックカラント、ダマスコン、スイート、ナチュラル、リッチ。
【0019】
例3:2−tert−ブチル−2−イソプロピル−5−メチル−2,5−ジヒドロフラン
2,2,4−トリメチルペンタン−3−オンを予め調製したグリニャール試薬であるブト−3−イン−2−オールと反応させることにより、例1の一般的方法にしたがって、5−イソプロピル−6,6−ジメチルヘプト−3−イン−2,5−ジオールを78%の収率で調製した。例1にしたがって、乾燥エタノール300mL中のこの物質18.1g(90.0mmol)の溶液を、硫酸バリウム上の10%パラジウム2.20g(2.07mmol)およびキノリン320mg(2.48mmol)の存在下でリンドラー水素化を行うことにより、同様の操作の後、(3Z)−5−イソプロピル−6,6−ジメチルヘプト−3−エン−2,5−ジオール17.9g(99%)を得た。このうち、17.2g(85mmol)を、KHSO1.71g(12.5mmol)の存在下、155℃/280mbarまでクーゲルロール(Kugelrohr)装置中で加熱し、蒸発した生成物の−80℃での捕捉およびフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル400g、ペンタン/エーテル98:2)の後、無色オイル8.32gを得た。この生成物をさらにクーゲルロール蒸留により精製し、80〜90℃/20mbarで無色の臭気液体として標題化合物7.52g(48%)を得た。
【0020】
【表3】

臭気記載:わずかにメタリックグリーンのニュアンスを有するブラックカラント、フルーティ、グレープ、フレッシュ。
【0021】
例4:2−tert−ブチル−2−イソプロピル−5−メチルテトラヒドロフラン
活性炭上の10%パラジウム1.21g(1.14mmol)の存在下での水素化により、例2の一般的方法にしたがって、2−tert−ブチル−2−イソプロピル−5−メチル−2,5−ジヒドロフラン3.61g(19.8mmol)から2−tert−ブチル−2−イソプロピル−5−メチルテトラヒドロフランを調製した。85〜95℃/20mbarにおけるクーゲルロール蒸留により精製し、無色の臭気液体として標題化合物3.42g(93%)を得た。
【0022】
【表4】

臭気記載:フローラルおよび樟脳様(camphoraceous)のアンダーノートを有するブラックカラント、フルーティ、グリーン、スイート、クマリン様。
【0023】
例5:2−tert−ブチル−2−エチル−5−メチル−2,5−ジヒドロフラン
2,2−ジメチルペンタン−3−オンを予め調製したグリニャール試薬であるブト−3−イン−2−オールと反応させることにより、例1の一般的方法にしたがって、5−エチル−6,6−ジメチルヘプト−3−イン−2,5−ジオールを83%の収率で調製した。乾燥エタノール400mL中のこの物質32.1g(161mmol)の溶液を、硫酸バリウム上の10%パラジウム2.81g(2.64mmol)およびキノリン1.05g(8.12mmol)の存在下でリンドラー水素化を行うことにより、標準操作の後、(3Z)−5−エチル−6,6−ジメチルヘプト−3−エン−2,5−ジオール31.4g(97%)を得た。このうち、21.2g(112mmol)を、KHSO2.55g(18.7mmol)の存在下、155℃/280mbarで環化し、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル600g、ペンタン/エーテル98:2)による精製の後、対応するジヒドロフラン10.1gを得た。70〜80℃/20mbarで蒸留することにより、無色の臭気液体として標題化合物6.62g(36%)を得た。
【0024】
【表5】

臭気記載:グリーンメタリックおよび動物様(animalic)のニュアンスを有する樟脳様、フルーティ、ブラックカラント、フレッシュ。
【0025】
例6:2−tert−ブチル−2−エチル−5−メチルテトラヒドロフラン
活性炭上の10%パラジウム1.20g(1.12mmol)の存在下での2−tert−ブチル−2−イソプロピル−5−メチル−2,5−ジヒドロフラン3.12g(18.4mmol)の水素化により、例2の方法と同様に行った。反応生成物のクーゲルロール蒸留により、70〜80℃/20mbarにて無色の臭気液体として標題化合物3.42g(93%)を得た。
【0026】
【表6】

臭気記載:メタリックおよび動物様のアンダーノートを有するフルーティ、ミント様、樟脳様、ブラックカラント。
【0027】
例7:2−tert−ブチル−2,5−ジメチル−2,5−ジヒドロフラン
3,3−ジメチルブタン−2−オンを予め調製したグリニャール試薬であるブト−3−イン−2−オールと反応させることにより、例1の一般的方法にしたがって、5,6,6−トリメチルヘプト−3−イン−2,5−ジオールを96%の収率で調製した。乾燥エタノール200mL中のこの物質10.2g(60.0mmol)の溶液を、硫酸バリウム上の10%パラジウム960mg(0.90mmol)およびキノリン360mg(2.78mmol)の存在下でリンドラー水素化を行うことにより、通常操作の後、(3Z)−5,6,6−トリメチルヘプト−3−エン−2,5−ジオール10.2g(100%)を得た。このうち、9.80g(57.0mmol)を、KHSO1.14g(8.37mmol)の存在下、155℃/280mbarにてクーゲルロール装置中で環化し、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル200g、ペンタン/エーテル98:2)の後、対応するジヒドロフラン2.61gを得た。45〜50℃/20mbarでの真空蒸留により、無色の臭気液体として標題化合物2.35g(26%)を得た。
【0028】
【表7】

臭気記載:ブラックカラント、柑橘様、ライム様、グリーンおよびわずかに脂肪様(fatty)。
【0029】
例8:2−tert−ブチル−2,5−ジメチルテトラヒドロフラン
例2の方法にしたがい、活性炭上の10%パラジウム600mg(0.56mmol)の存在下での2−tert−ブチル−2,5−ジメチル−2,5−ジヒドロフラン1.62g(10.3mmol)の水素化による。クーゲルロール蒸留により、45〜50℃/20mbarにて無色の臭気液体として標題化合物1.37g(82%)を得た。
【0030】
【表8】

臭気記載:オレンジの花をいくらかわずかに想起させるグリーン、樟脳様、ブラックカラント様。
【0031】
例9:2−(3’,3’−ジメチルシクロヘキシル)−2,5−ジメチル−2,5−ジヒドロフラン
1−(3’,3’−ジメチルシクロヘキシル)エタノンを予め調製したグリニャール試薬であるブト−3−イン−2−オールと反応させることにより、例1の一般的方法にしたがって、2−(3’,3’−ジメチルシクロヘキシル)ヘキシ−3−イン−2,5−ジオールを62%の収率で調製した。乾燥エタノール250mL中のこの物質10.0g(44.6mmol)の溶液を、硫酸バリウム上の10%パラジウム740mg(0.695mmol)およびキノリン290mg(2.24mmol)の存在下でリンドラー水素化を行うことにより、通常操作の後、(3Z)−2−(3’,3’−ジメチルシクロヘキシル)ヘキシ−3−エン−2,5−ジオール9.82g(97%)を得て、これを、KHSO430mg(3.16mmol)の存在下、180℃/280mbarにてクーゲルロール装置中で環化した。得られた生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル200g、ペンタン/エーテル99:1)により精製し、引き続くクーゲルロール蒸留により、55〜60℃/0.1mbarで無色の臭気液体として標題化合物1.46g(16%)を得た。
【0032】
【表9】

臭気記載:リンゴおよびダイオウの側面を有するフルーティ、ブラックカラント、グレープフルーツ、ナチュラル、グリーントマトのツル(green tomato vine)。
【0033】
例10: 2−(3’,3’−ジメチルシクロヘキシル)−2,5−ジメチルテトラヒドロフラン
例2の方法にしたがい、活性炭上の10%パラジウム100mg(0.0940mmol)の存在下での2−(3’,3’−ジメチルシクロヘキシル)−2,5−ジメチル−2,5−ジヒドロフラン1.00g(4.80mmol)の水素化による。クーゲルロール蒸留により、65〜70℃/0.1mbarにて無色の臭気液体として標題化合物690mg(68%)を得た。
【0034】
【表10】

臭気記載:グリーンおよびブラックカラント様のファセットを有するスイート、フローラル−フルーティ。
【0035】
例11:女性用香水のためのフルーティ−フローラル調和
【表11】

【0036】
2-tert-ブチル-5-メチル-2-プロピルテトラヒドロフランは、このフローラル−フルーティラズベリー調和に洗練されたブラックカラントノートを加え、これは拡散性、新鮮さおよび自然性を感じさせる。さらに、この化合物は、ブラックカラント着臭剤を用いる場合に通例である不快な硫黄のニュアンスを与えることなしに、上記組成物にまるみを与え、ボリューム感(volume)を増やす。したがって、それは、この元来平板なフルーティ調和を、多面的な女性用フレグランスのための充実した基材に変える。
【0037】
例12:化粧品における使用のためのフルーティ−グリーンファンタジーフレグランス
【表12】

【0038】
2-(3’,3’-ジメチルシクロヘキシル)-2,5-ジメチル-2,5-ジヒドロフランは1%でしか使用されなくても、それは組成物をブラックカラントの洗練された、きらびやかなタッチ(sparkling touch)で調和させる。それは、上記組成物に自然性をもたらし、化粧品における使用のためのこのファンタジーフレグランスのフルーティな側面にまるみをもたらしている。
【0039】
例13:シャンプーにおける使用のためのレッドベリーフレグランス
【表13】

【0040】
【表14】

【0041】
【表15】

【0042】
1%未満の用量で、2-(3’,3’-ジメチルシクロヘキシル)-2,5-ジメチル-2,5-ジヒドロフランは、スイート、砂糖様でありながら自然調を与える上記組成物に、フルーティ、ジューシーな側面を与える。前記ジヒドロフランは、このフルーティフレグランスの他の化合物と極めてよく配合され、それをよりまるくかつより複合的にする。そのブラックカラントノートは、上記フレグランスの中心となることなく、ジャコウおよびフローラルイオノンの調和と極めてよく調和する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

式中、
は、メチル、エチル、プロピルまたはイソプロピルであり;
は、分枝C〜Cアルキル、C〜 Cシクロアルキル、あるいは、単置換もしく二置換C または Cシクロアルキルであり;および
C−3およびC−4の間の結合は単結合であるか、または、点線がC−3およびC−4の間の結合と共に二重結合を表す、
で表される化合物。
【請求項2】
2−tert−ブチル−5−メチル−2−プロピル−2,5−ジヒドロフラン、2−tert−ブチル−5−メチル−2−プロピルテトラヒドロフラン、2−tert−ブチル−2−イソプロピル−5−メチル−2,5−ジヒドロフラン、2−tert−ブチル−2−イソプロピル−5−メチルテトラヒドロフラン、2−tert−ブチル−2−エチル−5−メチル−2,5−ジヒドロフラン、2−tert−ブチル−2−エチル−5−メチルテトラヒドロフラン、2−tert−ブチル−2,5−ジメチル−2,5−ジヒドロフラン、2−tert−ブチル−2,5−ジメチルテトラヒドロフラン、2−(3’,3’−ジメチルシクロヘキシル)−2,5−ジメチル−2,5−ジヒドロフランおよび2−(3’,3’−ジメチルシクロヘキシル)−2,5−ジメチルテトラヒドロフランからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1または2により定義された通りの式(I)で表される化合物の、着臭剤としての使用。
【請求項4】
請求項1または2において定義された通りの式(I)で表される化合物を含む、フレーバーまたはフレグランス組成物。
【請求項5】
請求項1または2において定義された通りの式(I)で表される化合物を、ベース材料に取り込ませるステップを含む、フレーバーまたはフレグランス組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1または2において定義された通りの式(I)で表される化合物を取り込むことを含む、フレグランス製品の製造方法。
【請求項7】
フレグランス製品が、香水、家庭製品、洗濯製品、ボディケア製品および化粧品からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。

【公表番号】特表2007−529430(P2007−529430A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503172(P2007−503172)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【国際出願番号】PCT/CH2005/000137
【国際公開番号】WO2005/087756
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(501105842)ジボダン エス エー (158)
【Fターム(参考)】