説明

フレネルレンズシート用成形型の洗浄装置及び洗浄方法

【課題】 フレネルレンズシート用成形型の製造時に生じるバリを効率良く除去し、且つ、成形型を万遍なく洗浄できるようにするために解決せられるべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明は該課題を解決することを目的とする。
【解決手段】 この発明は上記目的を達成するために、フレネル刃列が同心円状に相対的に形成されるフレネルレンズシート用成形型4の洗浄装置であって、該洗浄装置は洗浄剤を吐出するノズル8を有し、該ノズル8を自動制御にて前記成形型4の同心円の接線に対する直角方向に保ち、さらに、該ノズルと該成形型との相対位置を、移動して該成形用型の全面を洗浄するように構成したフレネルレンズシート用成形型の洗浄装置および洗浄方法を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は背面投写型テレビジョン等に用いられるフレネルレンズシートを成形するための成形型の洗浄装置及び洗浄方法に関するものであり、特に、切削バイトを用いてフレネルレンズシート用成形型を製作するときに生じるバリを効率良く除去洗浄できるようにした成形型の洗浄装置及び洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、背面投写型テレビジョンに用いられる透過型スクリーン1は図1(本件発明の実施例の説明にも用いられる。)に示すようにフレネルレンズシート2とレンチキュラーレンズシート3とから成る。通常、該フレネルレンズシート2とレンチキュラーレンズシート3はレンチキュラーレンズシート3のレンズ面3aがフレネルレンズシート2のレンズ面2aに対峙し、相互に密着されて前記透過型スクリーン1が構成される。而して、前記フレネルレンズシート2は、前記レンズ面2aを構成するフレネル刃列が等間隔で同心円状の微細ピッチに形成されて成る(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
又、フレネルレンズシート2は、図2(本発明の実施例の説明にも用いられる。)に示す成形型4を用いて成形される。該成形型4は例えば、真鍮等の長方形状金属ブロックを被加工品5として採択し、該被加工品5をチャック等の固定手段によって四方から固定し、そして、該被加工品5表面に、図3(本発明の実施例の説明に用いられる)に示す切削バイト6を用いて、フレネルレンズシート2のレンズ面2aに対する逆の凹凸形状部4a,4a…を形成して製造される。従って、該凹凸形状部4a,4a…は同心円状に所定ピッチを有して形成される。そして、該凹凸形状部4a,4a…を熱プレス製法又は光硬化樹脂による転写法等によって光透過性材料の表面に転写することによってフレネルレンズが生産される。
【0004】
又、該成形型4の前記凹凸形状部4a,4a…の形状を転写した樹脂製の成形型を作成し、更に、該成形型を用いて前記凹凸形状部4a,4a…と同一形状に形成されたフレネルレンズシート用成形型とすることもある。
【0005】
上記フレネルレンズシート2用の成形型4は、切削バイト6によって切削加工される関係上、どうしても前記凹凸形状部4a,4a…の各凸部4b,4b…上端部にバリ7,7…が生じる。そこで、この成形型4を用いてフレネルレンズのレンズ面2aを転写成形する場合には、前記バリ7,7…が筋状の斑点模様に形成されて外観品位を低下させる。
【0006】
依って、該バリ7,7…は予め之を除去する必要があるが、例えばエアジェット又はウォータジェット等から成るノズル8を用い、該ノズル8から高圧の水流を噴射し、その噴射圧によって該バリ7,7…を除去する方法も知られている。
【0007】
又、近年、例えばテレビジョン映像の精細化の要求に伴い、フレネルレンズ面2aを構成するフレネル刃列の各ピッチが従来は0.2mm〜0.1mmから0.1mm〜0.05mmと微細化している。このため、単位面積当たりの前記フレネル刃列(レンズ列数)が増し、従って、之に順応して前記バリ7,7…の本数も増大している。
【0008】
又、最近は表示装置の薄型化のため、従来用いられていた出射面屈折型のフレネルレンズ方式に代え、入射面に全反射型のフレネル刃列を備えた全反射型フレネルレンズが用いられるようになっているが、該全反射型フレネルレンズの刃先は一般に屈折型フレネルレンズのレンズ面(刃先)より鋭いため、前記バリによる外観品位低下が増すことになる。
(例えば特許文献2参照)
上記特許文献2記載の全反射型フレネルレンズの刃先は一層複雑な形状を呈しており、従って、前記バリの影響は増々甚大なものとなる。
【特許文献1】特開昭59−067748号公報
【特許文献2】特開2003−114481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来例におけるフレネルレンズシート用の金型を洗浄するとき、操作員がウォータジェット等のノズルを把持し、そして、該ノズルを成形型面に向けてジェット水を噴射し乍ら該成形型を洗浄するのであるが、噴射水の噴射にムラが生じ易く、又、単純な往復方向の操作であっても、往復方向のムラが発生し、従って、成形型の製造時に生じる前記バリを効率良く除去することはできなかった。
【0010】
そこで、フレネルレンズシート用成形型の製造時に生じたバリを効率良く除去して該成形型をムラなく洗浄できるようにするために解決せられるべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明は該課題を解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明はフレネル刃列が同心円状に形成されるフレネルレンズシート用成形型の洗浄装置であって、該洗浄装置は洗浄剤を吐出するノズルを有し、該ノズルの向きを前記成形型の同心円の接線に対する直角方向に保ち、さらに、該ノズルと該成形型との相対位置を、移動して該成形用型の全面を洗浄するように構成されたフレネルレンズシート用成形型の洗浄装置を提供するものである。
【0012】
この構成によれば該成形型に同心円状に成形された凹凸形状部に対して常に直角方向から洗浄剤がノズルから噴射され、さらに、該ノズルを制御して前記同心円状の各凹凸形状部全域に及んで洗浄剤が万遍なく噴射される。
【0013】
請求項2記載の発明は前記洗浄剤を吐出するノズルはウォータージェットノズルであるフレネルレンズシート用成形型の洗浄装置を提供するものである。
【0014】
この構成によれば、前記ノズルはウォータージェットノズルを採択しているので、成形型の同心円状の各凹凸形状部は強力な洗浄剤の噴射をうけることになる。
【0015】
請求項3記載の発明は前記ノズルの洗浄剤の吐出方向は前記成形型の平面に垂直な線に対して10°〜85°の範囲で傾斜させることができるように構成されたフレネルレンズシート用成形型の洗浄装置を提供するものである。
【0016】
この構成によれば、ノズルの洗浄剤の吐出方向を成形型の平面に垂直な線に対して傾斜させて該ノズルによる洗浄剤の噴射を実行するので、成形型に生じているバリに対する除去作用が有効に働くことになる。
【0017】
請求項4記載の発明は前記成形型の同心円中心を回転中心として該成形型を回転できるように構成され、前記ノズルが該成形型の直径方向に沿って移動できるように構成されたフレネルレンズシート用成形型の洗浄装置を提供するものである。
【0018】
この構成によれば、成形型の同心円中心を回転中心として該成形型を回転させることにより、ノズルは単に同心円中心から外周方向へ、又は外周から中心方向へ移動させるのみ
で該成形型の同心円状の凹凸形状部の全域に及んで洗浄剤を噴射させることができる。
【0019】
請求項5記載の発明はフレネル刃列が同心円状に相対的に形成されるフレネルレンズシート用成形型の洗浄方法であって、洗浄剤を吐出するノズルの向きを前記成形型の同心円の接線に対する直角方向、かつ、前記成形型の平面に垂直な線に対して10°〜85°の範囲で傾斜させた方向に保ち、さらに、該ノズルと該成形型との相対位置を、移動して該成形用型の全面を洗浄するフレネルレンズシート用成形型の洗浄方法を提供するものである。
【0020】
この方法によれば、ノズルの噴射方向は前記成形型の同心円の接線に対する直角方向、かつ、成形型の平面に垂直な線に対して10°〜85°の範囲で傾斜させた方向に保たれるので、成形型に生じているバリが効果的に除去される方向へ洗浄剤が噴射されることになる。
【0021】
請求項6記載の発明は前記ノズルにて前記成形型を洗浄するとき、該成形型を固定し、該ノズルを該成形型の全面を直線状に走査して順次移動しながら洗浄するフレネルレンズシート用成形型の洗浄方法を提供するものである。
【0022】
この構成によれば、成形型は固定された状態でノズルの位置を直線状に成形型全面を走査するよう制御することにより前記凹凸形状部の全域に及んで洗浄する。
【0023】
請求項7記載の発明は、前記成形型は、前記同心円中心を回転中心として回転されながら、前記ノズルを成形型の同心円の外周から中心方向又は中心から外周方向へ移動させて該ノズルにて該成形型を洗浄するフレネルレンズシート用成形型の洗浄方法を提供するものである。
【0024】
この構成によれば、成形型を同心円中心を回転中心として回転させ、ノズルは中心から外周方向又は外周から中心方向に移動させることによって、洗浄剤を成形型の凹凸形状部の全域に及んで噴射することができる。
【発明の効果】
【0025】
請求項1記載の発明は、成形型に同心円状に形成されている凹凸形状部に対し、ノズルを同心円の接線方向に対して直角方向を保つよう制御によって操作して移動させて、該成形型の前記凹凸形状部の該成形用型の全面を洗浄できるので、該凹凸形状部の洗浄ムラが生じることなく確実に洗浄される。このとき、該凹凸形状部の凸部に生じているバリは該洗浄剤の噴射をうけて除去されることができる。こうして、成形型の前記凹凸形状部を転写したフレネルレンズは前記バリによる筋状の斑点が視認されず、外観品位が向上する。
【0026】
請求項2記載の発明は、前記ノズルはウォータージェットノズルによって構成されているので、請求項1記載の発明の効果に加え、洗浄効果及びバリ除去の効果が一層確実なものとなる。
【0027】
請求項3記載の発明は、ノズルの洗浄剤吐出方向を成形型の平面に垂直な線に対して10°〜85°の範囲で傾斜させることができるので、請求項1又は2記載の効果に加え、成形型の凹凸形状部の凸部上端部に生じているバリを一層効果的に除去することができる。
【0028】
請求項4記載の発明は、成形型の同心円中心を回転中心として該成形型を回転させることができるように構成され、前記ノズルが該成形型の直径方向に沿って移動できるように構成されているので、請求項1、2又は3記載の発明の効果に加え該成形型を回転させる
ことにより、ノズルは単に外周から中心方向又は中心から外周方向へ向かって移動させるのみで該成形型の同心円状の凹凸形状部を万遍なく洗浄し、かつ、バリもより効果的に除去できる。この場合は装置も単純で、かつ、効率が極めて高い。
【0029】
請求項5記載の発明は、成形型表面に形成されている同心円状の凹凸形状部を洗浄するとき、洗浄剤を吐出するノズルの向きを前記成形型の同心円の接線に対する直角方向、かつ、前記成形型の平面に垂直な線に対して10°〜85°の範囲で傾斜させた方向に保ち、さらに、該ノズルと該成形型との相対位置を、移動して該成形用型の全面を洗浄するので該凹凸形状部はムラなく洗浄され、かつ、該凹凸形状部に生じているバリも効率良く除去することができる。また、該成形型の前記凹凸形状部を転写したフレネルレンズは該バリに基づく筋状の斑点が視認されず、外観品位が向上する。
【0030】
請求項6記載の発明は、ノズルによって成形型を洗浄するとき、該成形型を固定するので、人間やロボットが行うなど、ノズル操作の自由度が高い場合に装置の構成が簡単になる。
【0031】
請求項7記載の発明は、成形型を同心円中心を回転中心として回転されるので、請求項5記載の発明の効果に加え、同心円形状の凹凸形状部を洗浄するとき、ノズルの位置を半径方向へのみ直線状に移動することで当該同心円形状の凹凸形状部の全域に及んで洗浄することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明は、フレネルレンズシート用成形型の製造時に生じたバリを効率良く除去して該成形型をムラなく洗浄できるようにするという目的を、フレネル刃列が同心円状に相対的に形成されるフレネルレンズシート用成形型の洗浄装置であって、該洗浄装置は洗浄剤を吐出するノズルを有し、該ノズルの向きを前記成形型の同心円の接線に対する直角方向に保ち、さらに、該ノズルと該成形型との相対位置を、移動して該成形用型の全面を洗浄するように構成されたことを特徴とするフレネルレンズシート用成形型の洗浄装置及び、洗浄方法を提供することによって達成した。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の好適な実施例を図1乃至図8に基づいて詳述する。尚、図1〜図3に示す従来例は本発明の実施例を説明する前提事項に相当する。
【0034】
先ず、図1〜図3を参照し、本発明の実施例について説明する。図において、フレネルレンズシート2のフレネル刃列に相当するレンズ面2aは既に説明したように、同心円状の微細ピッチで等間隔で形成されるのであるが、このフレネルレンズシート2は図2に示す成形型4に形成されている同心円状の凹凸形状部4a,4a…を熱プレス製法または光硬化樹脂材料の表面に転写することによって生産される。また、該成形型4の製造手段についても既に述べた通りであるが、該成形型4の製造時に生じるバリ7,7…は前記フレネルレンズシート2のレンズ面2aにも影響を及ぼし、外観品位低下を来すことになる。
【0035】
そこで、先ずこのバリ7,7…の発生について図3に従って説明する。切削バイト6を用いて被加工品5の表面に前記同心円状の凹凸形状部4a,4a…を形成するとき、例えば、前記切削バイト6によって被加工品5を図3において右側(外周方向)から左側(中心方向)に、矢印の如く順次切削し乍ら前記凹凸形状部4a,4a…を切削加工すれば、該凹凸形状部4a,4a…の各凸部4b,4b…の斜辺4c,4c…の延長線上に前記バリ7,7…が生じる。又、反対に前記切削バイト6を中心方向から外周方向(図3において左方向から右方向)に向かって前記凹凸形状部4a,4a…を順次切削加工するときには、前記バリ7,7…は他の斜辺4d,4d…の延長線上に生じる。
【0036】
しかも、これらバリ7,7…は図2に示すように、成形型4の前記凹凸形状部4a,4a…が同心円中心Pから離れるに従い順次角度が大となっているので、前記バリ7,7…の突出角度も異なって現われる。
【0037】
そこで、該バリ7,7…を除去するための最適の方法について図4を参照して説明する。同図に示すバリ7,7…は、図3において切削バイト6を外周方向から中心方向に向かって順次前記凹凸形状部4a,4a…を切削加工した状態を示す。しかも、同心円状に形成されるこれら凹凸形状部4a,4a…は図2に示すように中心部から外周方向へ従って順次傾斜角が大となるように形成されている。よって、前記バリ7,7…の突出及び角度も前記凹凸形状部4a,4a…に対応して順次相異して形成される。
【0038】
そこで、例えば図4に示す成形型4の凹凸形状部4a,4a…の表面の洗浄およびバリ7,7…の除去について説明する。該バリ7,7…は斜辺4cの延長線上に突出した状態で生じている。したがって、このバリ7,7…を除去するために、バリ7,7…の上面から(図4において上から下へ)ウォータージェットノズル8を向けて洗浄剤を噴射すれば、同図において中央部に図示されているように、該バリ7は他の斜辺4d側へ塑性変形して接合し、該バリ7の除去が返って困難となる。そこで、ウォータージェットノズル8を右側から前記他の斜辺4dに向けて洗浄剤を噴射すれば、同図において右側に示すように該バリ7は噴射圧によって分離除去されることになる。このとき、同時に、斜辺4dの一面が万遍なく洗浄されることは当然である。
【0039】
また、図5に示すバリ7,7…は図3において説明したように、切削バイト6を中心から外周方向へ向かって順次前記凹凸形状部4aを切削加工した状態を示す。したがって、バリ7,7…は斜辺4dの延長線上に突出した状態で生じる。そこで、このバリ7,7…を除去するために、同図の中央部に図示しているように、ノズル8を該バリ7の上面から下方へ向かって洗浄剤を噴射しても該バリ7は切損することなく残存し、バリ7,7…の除去が困難となる。そこで、同図右側に図示しているように、ノズル8をバリ7の左側上方からバリ7に向けて洗浄剤を噴射すれば、該バリ7は噴射圧をうけて分離除去されることになる。このとき、同時に前記斜辺4cの一面も万遍なく洗浄されることができるのは当然である。
【0040】
図6は前記成形型4を固定し、ノズル8を移動させて該成形型4の前記凹凸形状部4a,4a…を順次洗浄し、そして、前記バリ7,7…を除去する方法を示す。同図において、ノズル8は、最外周部の同心円状の凹凸形状部4aを先ず洗浄し、そして、図4に示す最外周のバリ7を分離除去しながら最外周部の該凹凸形状部4aを洗浄し、そして、中心方向へ向かって順次凹凸形状部4a,4a…に生じているバリ7,7…を除去すると同時に、該凹凸形状部4a,4a…を洗浄して最中心部の凹凸形状部4aにおよびのである。したがって、凹凸形状部4a,4aのどの位置であってもすべて半径方向に向いているノズル8により洗浄剤の噴射が行われるので、凹凸形状部4a,4a…は万遍なく洗浄されると同時に略凹凸形状部4a,4a…に生じているバリ7,7…も効率良く分離除去されることができる。
【0041】
また、図5に示すバリ7,7…の場合は、前記ノズル8の向きを最中心部から最外周へ向けて洗浄剤を噴射することによりバリ7,7…の除去と洗浄が万遍なく実施される。
【0042】
図7は、前記成形型4の回転中心Pとフレネル光学中心とを一致させて該成形型4を回転させ、そして、ノズル8を最外周から最中心部に向けて移動させて同心円状の凹凸形状部4a,4a…を洗浄し、該凹凸形状部4a,4a…に生じているバリ7,7…を分離除去する方法を示す。
【0043】
また、同図は図4に示すバリ7,7…の除去に適用されるのであるが、図5に示すバリ7,7…を除去する場合は、ノズル8を最中心部から最外周へ向けて洗浄剤を噴射することにより、各凹凸形状部4a,4a…の洗浄とバリ7,7…の除去が可能となる。図7に示すバリ7,7…の除去の場合は、成形型4を回転させるのであるからノズル8を最外周から半径方向に向けて洗浄剤を噴射することになるが、先ず、同心円状の最外周の凹凸形状部4aのバリ7の除去と洗浄を行い、そして、中心方向へノズル8を順次移動させてすべての同心円状の凹凸形状部4a,4a…を万遍なく洗浄すると同時に、バリ7,7…も効率良く除去することになる。
【0044】
なお、ノズル8を図7に示すように最外周から半径方向即ち、最中心部に向かって移動しながら各同心円状の凹凸形状部4a,4a…を順次洗浄し、かつ、バリ7,7…を除去する場合は、既に述べたように各凹凸形状部4a,4a…の傾斜角が、最外周から最中心部にいくに従い順次緩やかになるので、ノズル8の噴射角度も水平面に対して順次小さい角度に制御して、より効率のよいバリ除去および洗浄効果を発揮できるように構成されている。また、最中心部から最外周方向へノズルを移動させる場合はノズルの噴射角度は前記の角度と逆になる。
【0045】
また、既に述べたように、ノズル8はウォータージェットノズルがバリ7,7…の除去の観点からは最も好適である。即ち、洗浄剤はウォータージェットノズルから強力な噴射圧を有してバリ7,7…に噴射されるので、バリ7,7…が極めて効率良く除去されるからである。
【0046】
また、洗浄剤としては水以外に有機溶剤、酸性液体、アルカリ性液体、またはこれらの混合体を用いることもできる。さらに、ノズル8の径は、0.1〜3mmであり、圧力は1〜500MPaが好適であるが、ノズル8の噴射方向は既に述べたように半径位置によって変更されることがバリ7,7…の除去の面から最も好ましく、その傾斜角は成形型の平面に垂直な線に対して10°〜85°の範囲であるのが良い。即ち、フレネルレンズは半径位置によってフレネル刃の角度、形状が異なるのでバリ7,7…を除去し易くする水流方向が半径位置によって異なる場合があるからである。
【0047】
また、ノズル8の噴射方法については既に述べた方法が好適であるが、これ以外にノズル8の位置を固定し、成形型4を移動させて前記同心円状の凹凸形状部4a,4a…を順次洗浄し、バリ7,7…を除去することも考えられる。
【0048】
さらにまた、成形型4を回転させる場合は既に述べたように、光学中心が成形型4の内にある場合、または、該成形型4以外にある場合のいずれの場合においても、回転中心を光学中心と一致させることが好ましい。
【0049】
また、本発明は前記切削バイト6によって切削加工された金型から成る成形型4のみならず、該成形型4を転写した転写型に対しても適用されることができる。
【0050】
なお、図8中、9は金型4の回転手段である。
[具体的実施例]
フレネルレンズシート用成形型を下記条件で外周から内周へ切削した。(図3において右側が外周に相当し、左側が内周に相当する。)
1) 成形型の材質:真鍮
2) 成形型寸法:1000mm×1000mm
3) レンズピッチ(フレネル刃列ピッチ):0.05mm
4) レンズ形状:頂角90〜40度、高さ0.001mm〜0.06mm
次いで、下記条件にて、最外周〜光学中心〜最外周へとノズルを1往復して洗浄した。この間およそ10分であった。
【0051】
5) 水が成形型に当たるスポット半径:約50mm
6) ノズルと成形型との距離:300mm
7) 成形型回転速度:10rpm
8) ノズル半径方向移動速度:200mm/分
9) ノズル(ジェット)噴射方向:成形型に対して外周から内周方向へ45度傾斜
10) ジェット噴射圧力:10MPa
[比較例]
成形型を固定し、ノズルを手で把持して、ジェット噴射方向を成形型の表面に対して垂直にして該成形型の上下左右に数回往復洗浄した以外は上具体的実施例と同様にし、15分間のジェット洗浄を行った。
[具体的実施例と比較例との対比]
それぞれの成形型を用い、熱プレス法によってレンズ形状を転写したアクリル樹脂製フレネルレンズシートを作製し、プロジェクションTVに装着して筋状ムラを目視評価した結果、本発明の具体的実施例の成形型を用いたフレネルレンズシートは良好な外観を呈していたが、比較例の成形型を用いたフレネルレンズシートは筋状の斑点が目立ち、外観品位を低下させる結果となっていた。
【0052】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】フレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートとを結合して成る透過型スクリーンの解説図。
【図2】フレネルレンズシート用成形型の縦断側面図。
【図3】成形型を切削バイトにて切削加工する状態を示す解説図。
【図4】成形型に生じているバリを除去するためのノズルの噴射方向を示す解説図。
【図5】成形型に生じているバリを除去するためのノズルの他の噴射方向を示す解説図。
【図6】成形型を固定し、ノズルを移動させて成形型に生じているバリの除去及び洗浄操作の状態を示す解説図。
【図7】光学中心と一致させた成形型の同心円中心を回転中心として成形型を回転させ、さらにノズルを外周から中心方向(半径方向)へ移動させて成形型に生じているバリの除去および洗浄操作の状態を示す解説図。
【図8】ノズルを半径方向へ移動させてバリの除去及び洗浄操作を実施するときノズルの角度を示す解説図。
【符号の説明】
【0054】
1 透過型スクリーン
2 フレネルレンズシート
2a フレネルレンズシートのレンズ面
3 レンチキュラーレンズシート
3a レンチキュラーレンズシートのレンズ面
4 成形型
4a 同心円状の凹凸形状部
4b 凸部
4c 斜辺
5 被加工品
6 切削バイト
7 バリ
8 ノズル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレネル刃列が同心円状に形成されるフレネルレンズシート用成形型の洗浄装置であって、該洗浄装置は洗浄剤を吐出するノズルを有し、該ノズルの向きを前記成形型の同心円の接線に対する直角方向に保ち、さらに、該ノズルと該成形型との相対位置を、移動して該成形用型の全面を洗浄するように構成されたことを特徴とするフレネルレンズシート用成形型の洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄剤を吐出するノズルはウォータージェットノズルであることを特徴とする請求項1記載のフレネルレンズシート用成形型の洗浄装置。
【請求項3】
前記ノズルの洗浄剤の吐出方向は前記成形型の平面に垂直な線に対して10°〜85°の範囲で傾斜させることができるように構成されたことを特徴とする請求項1又は2記載のフレネルレンズシート用成形型の洗浄装置。
【請求項4】
前記成形型の同心円中心を回転中心として該成形型を回転できるように構成され、前記ノズルが該成形型の直径方向に沿って移動できるように構成されたことを特徴とする請求項1、2又は3記載のフレネルレンズシート用成形型の洗浄装置。
【請求項5】
フレネル刃列が同心円状に相対的に形成されるフレネルレンズシート用成形型の洗浄方法であって、洗浄剤を吐出するノズルの向きを前記成形型の同心円の接線に対する直角方向、かつ、前記成形型の平面に垂直な線に対して10°〜85°の範囲で傾斜させた方向に保ち、さらに、該ノズルと該成形型との相対位置を、移動して該成形用型の全面を洗浄することを特徴とするフレネルレンズシート用成形型の洗浄方法。
【請求項6】
前記ノズルにて前記成形型を洗浄するとき、該成形型を固定し、該ノズルを該成形型の全面を直線状に走査して順次移動しながら洗浄することを特徴とする請求項5記載のフレネルレンズシート用成形型の洗浄方法。
【請求項7】
前記成形型は、前記同心円中心を回転中心として回転されながら、前記ノズルを成形型の同心円の外周から中心方向又は中心から外周方向へ移動させて該ノズルにて該成形型を洗浄することを特徴とする請求項5記載のフレネルレンズシート用成形型の洗浄方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−152588(P2007−152588A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−347093(P2005−347093)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】