説明

フロアシート

【課題】 本発明では、車両の総重量の増加を抑えることができるとともに、吸音性向上およびその剛性も高めることができるフロアシートを提供することを目的とする。
【解決手段】 フロアシート1は、二枚の薄板11,12のそれぞれに形成された複数の中空の凸部13,14を当接させてなる中間部材10と、この中間部材10を挟み込む二つのシート部材20とで主に構成されている。また、上側のシート部材20には、フローリング部材30が固着され、下側のシート部材20には、インシュレータ40が固着されている。そして、このフロアシート1の一面側には、外部とハニカム構造体2内の空間とに連通する吸音孔Hが開けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両や家屋などの床に配設されるフロアシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、家屋の室内のフロアシートとして、合板に木目調のフローリング部材を貼り付けてなるフロアシートがある(例えば、特許文献1参照)。このようなフロアシートは、車両用のフロアシートして使用されるカーペットに比べ、意匠性に富み、かつ、ウォッシャブルであるため、ミニバンなどの車両で適用されることが望まれている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−62197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のような家屋に用いるフロアシートは、吸音性向上およびその剛性を高めるために厚めに形成されているので、このように厚めに形成されたフロアシートをそのまま車室のフロアに敷くことは、車両の総重量が増加するため好ましくかった。
【0005】
そこで、本発明では、車両の総重量の増加を抑えることができるとともに、吸音性向上およびその剛性も高めることができるフロアシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明のうち請求項1に記載のフロアシートは、複数の中空の凸部が形成された少なくとも一つの薄板からなる中間部材と、この中間部材を挟み込む二つのシート部材とを備えるハニカム構造体を含んで構成されることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、中間部材と二つのシート部材によって内部に複数の空間が形成されたハニカム構造体は、その重量が小さく、かつ、剛性が高いという特性を持っているため、このようなハニカム構造体を備えたフロアシートを例えば車両のフロアに適用すると、車両の総重量を抑えることができる他、フロアシート自体の吸音性や剛性も高くすることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のフロアシートであって、前記中間部材は、前記薄板を複数有し、各薄板に形成された複数の前記凸部が互いに当接されて構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、凸部の高さを高くせずに、中間部材に形成される空間を大きくすることができるので、剛性が高められるとともに、衝撃吸収性や吸音性をも向上させることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のフロアシートであって、前記フロアシートの少なくとも一面側に、外部とハニカム構造体内の空間とに連通する連通孔を開けたことを特徴とする。
【0011】
ここで、「一面側に連通孔を開ける」とは、一面側のうちシート部材と薄板の板状部分とが重なり合う部分においては、これら両方の部材に連通孔を開けることをいい、一面側のうちシート部材と中空の凸部(シート部材側から見ると凹部となっている)とが重なり合う部分においては、シート部材のみに連通孔を開けることをいう。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、フロアシートの少なくとも一面側に連通孔が開けられているので、例えば、その一面側のシート部材が通気性を有さない部材であっても、そのシート部材側で発生する騒音を連通孔から取り込んでハニカム構造体内で良好に吸収することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載のフロアシートであって、前記連通孔が開けられたシート部材は、前記連通孔に開口する貫通孔を有した木材または樹脂からなる表面材を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、通常、通気性を有さない表面材に、シート部材の連通孔へ開口する貫通孔が開いているので、例えば、車室内の騒音を床材としてのハニカム構造体によって良好に吸収することができるとともに、その車の所有者が自分の好みにあった表面材を自由に選択して快適性を向上させることもできる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、重量が小さく、かつ、剛性が高いという特性を持ったハニカム構造体をフロアシートの構成要素とするため、このようなフロアシートを例えば車両のフロアに適用すると、車両の総重量を抑えることができる他、フロアシート自体の吸音性や剛性も高くすることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、凸部の高さを高くせずに、中間部材に形成される空間を大きくすることができるので、剛性が高められるとともに、衝撃吸収性や吸音性をも向上させることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、フロアシートの少なくとも一面側に連通孔が開けられているので、例えば、その一面側のシート部材が通気性を有さない部材であっても、そのシート部材側で発生する騒音を連通孔から取り込んでハニカム構造体内で良好に吸収することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、通常、通気性を有さない表面材に、シート部材の連通孔へ開口する貫通孔が開いているので、例えば、車室内の騒音を床材としてのハニカム構造体によって良好に吸収することができるとともに、その車の所有者が自分の好みにあった表面材を自由に選択して快適性を向上させることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。参照する図面において、図1は本実施形態に係るフロアシートが配設された車両を示す斜視図であり、図2は図1のフロアシートの詳細を示す分解斜視図である。また、図3は、図2のフロアシートを重ね合わせた状態を示す斜視図(a)と、図3(a)のA−A断面図(b)である。
【0020】
図1に示すように、フロアシート1は、車両Cの床材として利用されている。具体的に、このフロアシート1は、図2に示すように、中間部材10と、この中間部材10を挟み込む二枚のシート部材20と、で主に構成されている。そして、二枚のシート部材20のうち上側のシート部材20には、フローリング部材(表面材)30が固着され、下側のシート部材20には、インシュレータ40が固着されている。なお、前記した中間部材10と、二枚のシート部材20とでハニカム構造体2が形成されるようになっている。
【0021】
図2に示すように、中間部材10は、上下に配設された二枚の薄板11,12で構成されている。この各薄板11,12には、互いに対応し合う複数の中空の凸部13,14が千鳥状に形成されており、これらの凸部13,14の先端同士は、それぞれ当接して固着されるようになっている(図3参照)。また、上側の薄板11の平板部11a(凸部13が形成されていない部分)には、上下に貫通する第1吸音孔(連通孔)H1が開けられている。さらに、この第1吸音孔H1は、薄板11の面に沿った一方向(凸部13が直線状に並ぶ方向)に所定のピッチαで形成されるとともに、前記した一方向とは直交する他方向に所定のピッチβで形成されている。
【0022】
シート部材20は、シート状に形成された通気性を有さない部材であり、前記した中間部材10の上下面に固着されている。そして、これら二枚のシート部材20のうち上側のシート部材20には、前記した第1吸音孔H1と同形状、同ピッチとなる第2吸音孔(連通孔)H2が第1吸音孔H1に対応するように開けられている。
【0023】
なお、このシート部材20や前記した中間部材10の材料としては、ポリプロピレン(PP)を採用するのが望ましいが、本発明はこれに限らず、例えばエンプラ(エンジニアリング・プラスチック)やポリプロピレン以外の他のオレフィン系の樹脂などを採用してもよい。ここで、ポリプロピレン以外の他のオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、TPO(PPとゴム成分の混合物)などが挙げられる。また、エンプラとしては、ポリカーボネート、ポリアミド、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイドなどが挙げられる。なお、このようなハニカム構造体2の製造方法としては、特開2000−326430号公報で開示した真空成形装置による製造方法や、射出成型による製造方法など、どのような製造方法を採用してもよい。
【0024】
フローリング部材30は、その表面30aに木目調などの模様が施された通気性を有さない部材であり、前記した上側のシート部材20に固着されている。そして、このフローリング部材30には、前記した第2吸音孔H2と同形状、同ピッチとなる第3吸音孔(貫通孔)H3が第2吸音孔H2に対応するように開けられている。
【0025】
なお、前記した第1吸音孔H1、第2吸音孔H2および第3吸音孔H3(以下、これらの孔を単に「吸音孔H」ともいう)は、中間部材10、シート部材20およびフローリング部材30を重ね合わせて固着した後に、外部からハニカム構造体2内の空間へと同時に開けるのが望ましい。また、吸音孔Hの大きさや数は、任意であり、吸収したい騒音の大きさや周波数などに応じて適宜設定することができる。
【0026】
インシュレータ40は、吸音材であり、主に、路面側からの騒音(ロードノイズ)を吸音している。
【0027】
次に、本実施形態に係るフロアシート1の吸音作用について説明する。
図3(b)に示すように、車室内で音が発生すると、その音は、吸音孔Hを介して中間部材10の空間(薄板11,12の平板部11a,12aと各凸部13,14の外周面とで形成される空間)内に入っていく。そして、このように中間部材10の空間内に入ってきた音は、各凸部13,14にぶつかって反射するときに、各凸部13,14を振動させるエネルギに変換されることで、徐々に弱められていき、この中間部材10によって吸音されることとなる。
【0028】
以上によれば、本実施形態において、次のような効果を得ることができる。
通気性を有さない部材である薄板11、シート部材20およびフローリング部材30に吸音孔Hを開けるので、車室内の騒音をフロアシート1によって良好に吸収することができるとともに、その車の所有者が自分の好みにあったフローリング部材30を自由に選択して快適性を向上させることもできる。
【0029】
また、剛性が高く、吸音性を有し、かつ、軽量であるという特性を有するハニカム構造体2をフロアシート1の構成部材として使用したので、従来フロアに設けていた重いメルシート(遮音材)を設ける必要がなくなり、車両全体の軽量化を図ることができる。
さらに、内部が複雑な構造であるハニカム構造体2をフロアシート1の構成部材として利用することによって、そのフロアシート1に難燃性を持たせることができる。
【0030】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されることなく、様々な形態で実施される。
本実施形態では、フロアシート1を車両のフロアに適用したが、本発明はこれに限定されず、例えば家屋の床に適用してもよい。また、中間部材10およびシート部材20の材質は、樹脂ではなく、例えば鉄などであってもよい。
【0031】
本実施形態では、上側の薄板11、上側のシート部材20およびフローリング部材30を貫通するように吸音孔Hを開けたが、本発明はこれに限定されず、例えば吸音孔を中空の凸部13とシート部材20との間に形成される空間に開口させる場合には、シート部材20とフローリング部材30のみを貫通するように吸音孔を開けてもよい。また、吸音孔は、本実施形態のように各板状の部材11,20,30の面に対して直交するように開ける必要はなく、例えば面に対して斜めになるように開けてもよい。
【実施例】
【0032】
次に、前記実施形態に係るフロアシート1による吸音作用についての実施例(実験結果)を説明することとする。最初に、この実験の条件を示すこととする。
【0033】
〔条件〕
(1)中間部材10およびシート部材20の材質:ポリプロピレン(PP)
(2)インシュレータ40の材質:ウレタン
(3)吸音孔Hの直径:2mm
(4)吸音孔Hのピッチα:40mm
(5)吸音孔Hのピッチβ:30mm
(6)凸部13,14の高さ:5.5mm
(7)凸部13,14の先端面の直径:2mm
(8)凸部13,14の基端部の直径(開口部の直径):7mm
(9)凸部13,14のピッチ:11mm
(10)薄板11,12の厚さ:0.5mm
(11)シート部材20の厚さ:5.5mm
(12)フローリング部材30の厚さ:2mm
(13)インシュレータ40の厚さ:20mm
なお、吸音孔Hを前記したピッチα,βで形成することで、単位面積(1m2)当たりに形成される吸音孔Hの数は、8つとなっている。
【0034】
〔実験結果〕
続いて、前記した条件となるフロアシート1による吸音性能について、図4を参照して説明する。
図4に示すように、このフロアシート1(吸音孔H有り)によれば、吸音孔Hがないフロアシート(吸音孔H以外は、前記実施形態のフロアシート1と同様の構成となるフロアシート)に比べ、周波数が約800〜4000Hz(ヘルツ)となる音に関する吸音性能が向上していることが分かる。特に、1000〜2000Hzの音に関しては、吸音孔Hがないフロアシートの吸音性能よりも、本実施例のフロアシート1の吸音性能の方が約20%以上も向上することが分かる。ここで、吸音性能は、音の吸収率(吸収された音のエネルギ/発生した音のエネルギ)のことを意味する。
【0035】
以上より、本実施例によれば、フロアシート1に所定の吸音孔Hを開けることで、所定の周波数の音を効率良く吸収することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施形態に係るフロアシートが配設された車両を示す斜視図である。
【図2】図1のフロアシートの詳細を示す分解斜視図である。
【図3】図2のフロアシートを重ね合わせた状態を示す斜視図(a)と、図3(a)のA−A断面図(b)である。
【図4】フロアシートの吸音性能を示すグラフである。
【符号の説明】
【0037】
1 フロアシート
2 ハニカム構造体
10 中間部材
11,12 薄板
11a 平板部
13,14 凸部
20 シート部材
30 フローリング部材
40 インシュレータ
H 吸音孔
H1 第1吸音孔
H2 第2吸音孔
H3 第3吸音孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の中空の凸部が形成された少なくとも一つの薄板からなる中間部材と、この中間部材を挟み込む二つのシート部材とを備えるハニカム構造体を含んで構成されることを特徴とするフロアシート。
【請求項2】
請求項1に記載のフロアシートであって、
前記中間部材は、前記薄板を複数有し、各薄板に形成された複数の前記凸部が互いに当接されて構成されていることを特徴とするフロアシート。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のフロアシートであって、
前記フロアシートの少なくとも一面側に、外部とハニカム構造体内の空間とに連通する連通孔を開けたことを特徴とするフロアシート。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載のフロアシートであって、
前記連通孔が開けられたシート部材は、前記連通孔に開口する貫通孔を有した木材または樹脂からなる表面材を備えることを特徴とするフロアシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−103403(P2006−103403A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−289818(P2004−289818)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】