説明

フロントコンポーネント組立システムおよびフロントコンポーネント組立方法

【課題】ダッシュボードをホイールハウスハウジングおよびサイドフレームに高精度で位置決めできるフロントコンポーネントの組立システムを提供すること。
【解決手段】フロントコンポーネント組立システムは、ダッシュボード14、バルクヘッド13、ホイールハウスハウジング12、およびサイドフレーム11からなる自動車のフロントコンポーネント10を組み立てる。このフロントコンポーネント組立システムは、バルクヘッド13、ホイールハウスハウジング12、およびサイドフレーム11を互いに位置決めした状態で支持する搬送台車22と、ダッシュボード14を把持するダッシュボード把持ハンド53と、ダッシュボード把持ハンド53を移動するアーム54と、を備える。搬送台車22は、ダッシュボード把持ハンド53の第1位置決めピン534および突出部536が接続される位置決めピン嵌合部243および突出部嵌合部244を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントコンポーネントの組立システムおよびフロントコンポーネント組立方法に関する。詳しくは、ダッシュボード、バルクヘッド、ホイールハウスハウジング、およびサイドフレームからなる自動車のフロントコンポーネント組立システムおよびフロントコンポーネント組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の製造工程では、ダッシュボード、バルクヘッド、ホイールハウスハウジング、およびサイドフレームからなるフロントコンポーネントを製造することが行われる。
具体的には、このフロントコンポーネントは、平面視で矩形枠状であり、エンジンを囲むものである。具体的には、このフロントコンポーネントは、エンジンの側方に位置する一対のサイドフレームと、このサイドフレームの上に設けられる一対のホイールハウスハウジングと、エンジンの前方に位置するバルクヘッドと、エンジンの後方に位置するダッシュボードと、を備える(特許文献1参照)。
【0003】
このフロントコンポーネントを製造する手順は、以下の通りである。
まず、セット治具を用意し、このセット治具にホイールハウスハウジングおよびサイドフレームをセットする。以降、これらホイールハウスハウジングおよびサイドフレームを組み合わせたものを、サイドメンバと呼ぶ。これにより、サイドメンバとセット治具との相対位置を決定する。
【0004】
次に、ダッシュボードをセット治具にセットするとともに、バルクヘッドをセット治具にセットする。これにより、セット治具とダッシュボードとの相対位置を決定する。
具体的には、ダッシュボードの特定の孔を位置決め孔とするとともに、セット治具に位置決めピンを設けておく。そして、ダッシュボードを位置決めピンに接近させ、ダッシュロアの位置決め孔に位置決めピンを挿入することで、セット治具とダッシュボードとの相対位置を決定する。
【0005】
このようにして、セット治具を用いて、サイドメンバ、ダッシュボード、バルクヘッドの相対位置が決定されると、これらを互いに溶接して接合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−151174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、フロントコンポーネントの精度を確保するため、サイドメンバとダッシュボードとの接合部分の位置決め精度が重要となる。
しかしながら、位置決め孔として接合部分から離れた孔を利用する必要があり、サイドメンバとダッシュボードとを高精度で位置決めできなかった。
その理由は、第1に、左ハンドル車用のダッシュボードと右ハンドル車用のダッシュボードとでは、一部の構造が異なるが、セット治具の汎用性を考慮すると、左ハンドル車用のダッシュボードと右ハンドル車用のダッシュボードとで共通の構造となる部分に位置決め孔を設ける必要がある。そのため、ダッシュボードの位置決め孔の位置が制約されるからである。
第2に、セット治具がサイドメンバとダッシュボードとの接合部分から離れているため、セット治具に位置決めピンを設けようとしても、接合部分の近傍に位置決めピンを設けることができないので、ダッシュボードの接合部分近傍の孔を位置決め孔として利用できないからである。
【0008】
本発明は、ダッシュボードをホイールハウスハウジングおよびサイドフレームに高精度で位置決めできるフロントコンポーネントの組立システムおよび組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のフロントコンポーネントの組立システム(例えば、後述のフロントコンポーネント組立システム1)は、ダッシュボード(例えば、後述のダッシュボード14)、バルクヘッド(例えば、後述のバルクヘッド13)、ホイールハウスハウジング(例えば、後述のホイールハウスハウジング12)、およびサイドフレーム(例えば、後述のサイドフレーム11)からなる自動車のフロントコンポーネント(例えば、後述のフロントコンポーネント10)を組み立てるフロントコンポーネント組立システムであって、前記バルクヘッド、前記ホイールハウスハウジング、および前記サイドフレームを互いに位置決めした状態で支持する治具(例えば、後述の搬送台車22)と、前記ダッシュボードを把持するダッシュボード把持部(例えば、後述のダッシュボード把持ハンド53)と、当該ダッシュボード把持部を移動する移動部(例えば、後述のアーム54)と、を備え、前記治具は、前記ダッシュボード把持部が接続される接続部(例えば、後述の位置決めピン嵌合部243および突出部嵌合部244)を備え、前記ダッシュボード把持部により前記ダッシュボードを把持し、この状態で、前記移動部により前記ダッシュボード把持部を移動して前記治具の接続部に接続することで、前記ダッシュボードを、前記バルクヘッド、前記ホイールハウスハウジング、および前記サイドフレームに対して位置決めすることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、ダッシュボード把持部によりダッシュボードを把持し、この状態で、移動部により、ダッシュボード把持部を移動して接続部に接続した。
したがって、従来のようにダッシュボードを治具に対して直接位置決めせず、ダッシュボードを把持したダッシュボード把持部を治具に対して位置決めすることで、ダッシュボードを間接的に治具に対して位置決めした。
よって、位置決め箇所の選択の自由度が高くなり、ダッシュボードとサイドフレームおよびホイールハウスハウジングとの接合部分の近傍をダッシュボード把持部で支持できるので、ダッシュボードをホイールハウスハウジングおよびサイドフレームに高精度で位置決めできる。
【0011】
この場合、前記治具は、前記ホイールハウスハウジングおよび前記サイドフレームを支持するメイン治具(例えば、後述のメイン治具24)と、前記バルクヘッドを支持するサブ治具(例えば、後述のサブ治具25)と、当該サブ治具を前記メイン治具に向かって進退させる進退部(例えば、後述の進退機構26)と、を備え、前記メイン治具にホイールハウスハウジングおよびサイドフレームを互いに位置決めした状態で支持させて、この状態で、前記進退部により前記サブ治具を前記メイン治具に接近させることで、前記バルクヘッドを、前記ホイールハウスハウジングおよび前記サイドフレームに対して位置決めすることが好ましい。
【0012】
従来では、セットステーションに治具を位置させておき、この状態で、治具にホイールハウスハウジングおよびサイドフレームをセットし、次に、搬送ロボットにより、バルクヘッドを把持して治具に搬送し、バルクヘッドを治具にセットする。そして、この治具を溶接ステーションに移動させて、溶接ステーションで溶接していた。
これに対し、この発明によれば、例えば、セットステーションに治具を位置させておき、この状態で、メイン治具にホイールハウスハウジングおよびサイドフレームをセットするとともに、サブ治具にバルクヘッドをセットする。そして、これら治具を溶接ステーションに向かって移動させながら、進退部によりサブ治具をメイン治具に接近させる。よって、バルクヘッドのセットとホイールハウスハウジングおよびサイドフレームのセットとを同時に行うことができるので、従来に比べて、ホイールハウスハウジング、サイドフレーム、およびバルクヘッドを組み立てる時間を短縮できる。
【0013】
本発明のフロントコンポーネント組立方法は、ダッシュボード、バルクヘッド、ホイールハウスハウジング、およびサイドフレームからなる自動車のフロントコンポーネントを組み立てるフロントコンポーネント組立方法であって、治具により、前記バルクヘッド、前記ホイールハウスハウジング、および前記サイドフレームを互いに位置決めした状態で支持する第1手順と、ダッシュボード把持部により、前記ダッシュボードを把持する第2手順と、前記ダッシュボード把持部を移動して前記治具に接続することで、前記ダッシュボードを、前記バルクヘッド、前記ホイールハウスハウジング、および前記サイドフレームに対して位置決めする第3手順と、を備えることを特徴とする。
【0014】
この場合、前記治具を、前記ホイールハウスハウジングおよび前記サイドフレームを支持するメイン治具と、前記バルクヘッドを支持するサブ治具と、を含んで構成し、前記第1手順では、前記メイン治具により、ホイールハウスハウジングおよびサイドフレームを互いに位置決めした状態で支持して、前記サブ治具により前記バルクヘッドを支持して、前記サブ治具を前記メイン治具に接近させることで、前記バルクヘッドを、前記ホイールハウスハウジングおよび前記サイドフレームに対して位置決めすることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ダッシュボード把持部によりダッシュボードを把持し、この状態で、移動部によりダッシュボード把持部を移動して接続部に接続した。したがって、従来のようにダッシュボードを治具に対して直接位置決めせず、ダッシュボードを把持したダッシュボード把持部を治具に対して位置決めすることで、ダッシュボードを間接的に治具に対して位置決めした。よって、位置決め箇所の選択の自由度が高くなり、ダッシュボードとサイドフレームおよびホイールハウスハウジングとの接合部分の近傍をダッシュボード把持部で支持できるので、ダッシュボードをホイールハウスハウジングおよびサイドフレームに高精度で位置決めできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るフロントコンポーネント組立システムにより組み立てられるフロントコンポーネントの斜視図である。
【図2】前記実施形態に係るフロントコンポーネント組立システムの平面図である。
【図3】前記実施形態に係るフロントコンポーネント組立システムの部分拡大斜視図である。
【図4】前記実施形態に係るフロントコンポーネント組立システムの動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るフロントコンポーネント組立システムにより組み立てられるフロントコンポーネント10の斜視図である。
フロントコンポーネント10は、矩形枠状であり、自動車の前側部分に取り付けられる。このフロントコンポーネント10に囲まれた空間は、エンジンが収納されるエンジンルームとなる。
【0018】
このフロントコンポーネント10は、エンジンの側方に位置する一対のサイドフレーム11と、この一対のサイドフレーム11の上に設けられる一対のホイールハウスハウジング12と、エンジンの前方に位置するバルクヘッド13と、エンジンの後方に位置するダッシュボード14と、を備える。
以降、サイドフレーム11およびホイールハウスハウジング12を組み合わせたものを、サイドメンバ15と呼ぶ。よって、フロントコンポーネント10は、一対のサイドメンバ15を備えることになる。
【0019】
ダッシュボード14は、左ハンドル車用と右ハンドル車用とで一部の構造が異なる。ダッシュボード14は略矩形状であるが、このダッシュボード14の中央下端側には凹部が形成されて、この凹部は、センタートンネル部141となっている。
また、ダッシュボード14の中央上端側近傍には、ダッシュボード14の中心線に対して線対称に一対の位置決め孔142が形成され、さらに、ダッシュボード14の両端側には、ダッシュボード14の中心線に対して線対称に一対の位置決め孔143が形成されている。
これら位置決め孔143は、サイドメンバ15との接合部分の近傍に位置している。
【0020】
このフロントコンポーネント10は、以下の手順で形成される。すなわち、まず、一対のサイドフレーム11を互いに対向して配置し、各サイドフレーム11の上にホイールハウスハウジング12を載置して、一対のサイドメンバ15を形成する。
次に、この一対のサイドメンバ15に対して前後からバルクヘッド13およびダッシュボード14を位置決めして、溶接する。
【0021】
図2は、フロントコンポーネント組立システム1の平面図である。
フロントコンポーネント組立システム1は、セットステーション2と、溶接ステーション3と、セットステーション2から溶接ステーション3にワークを搬送するワーク搬送装置20と、セットステーション2の周囲に配置された2台のサイドメンバ搬送ロボット30と、セットステーション2の周囲に配置された1台のバルクヘッド搬送ロボット40と、セットステーション2と溶接ステーション3との間でかつワーク搬送装置20の上方に設けられたダッシュボード搬送装置50と、溶接ステーション3の周囲に配置された6台の溶接ロボット60と、を備える。
【0022】
サイドメンバ搬送ロボット30は、サイドフレーム11およびホイールハウスハウジング12からなるサイドメンバ15を把持するサイドメンバ把持ハンド31と、このサイドメンバ把持ハンド31の3次元空間上の位置および姿勢を変化させるアーム32と、を備える。
【0023】
バルクヘッド搬送ロボット40は、バルクヘッド13を把持するバルクヘッド把持ハンド41と、このバルクヘッド把持ハンド41の3次元空間上の位置および姿勢を変化させるアーム42と、を備える。
【0024】
溶接ロボット60は、サイドフレーム11、ホイールハウスハウジング12、バルクヘッド13、およびダッシュボード14を互いに溶接する溶接ハンド61と、この溶接ハンド61の3次元空間上の位置および姿勢を変化させるアーム62と、を備える。
【0025】
ダッシュボード搬送装置50は、セットステーション2と溶接ステーション3との間でかつワーク搬送装置20の走行路21を跨いで設けられた走行路51と、この走行路51上を走行するダッシュボード搬送ロボット52と、を備える。
【0026】
図3は、ダッシュボード搬送装置50およびワーク搬送装置20の拡大斜視図である。
ダッシュボード搬送ロボット52は、ダッシュボード14を把持するダッシュボード把持部としてのダッシュボード把持ハンド53と、このダッシュボード把持ハンド53の3次元空間上の位置および姿勢を変化させる移動部としてのアーム54と、を備える。
【0027】
ダッシュボード把持ハンド53は、アーム54の先端フランジ面に支持されたフレーム531と、このフレーム531に設けられてダッシュボード14の中央上端側を把持する第1把持部532と、フレーム531に設けられてダッシュボード14のセンタートンネル部141を把持する第2把持部533と、フレーム531に設けられてダッシュボード14の位置決め孔142に挿通される第1位置決めピン534と、フレーム531に設けられてダッシュボード14の位置決め孔143に挿通される第2位置決めピン535と、を備える。
ここで、フレーム531の下端は、前方に突出する突出部536となっている。
【0028】
ワーク搬送装置20は、セットステーション2と溶接ステーション3との間に敷設された走行路21と、この走行路21上を走行する治具としての搬送台車22と、を備える。
搬送台車22は、走行路21上を走行する走行部23と、この走行部23の上に設けられてサイドメンバ15を支持するメイン治具24と、メイン治具24の前方に設けられてバルクヘッド13を支持するサブ治具25と、サブ治具25をメイン治具24に向かって水平方向に進退させる進退部としての進退機構26と、を備える。
【0029】
メイン治具24は、走行部23上に設けられた基部241と、この基部241に設けられてサイドメンバ15を把持することでメイン治具24に対する相対位置を固定するサイドメンバ位置固定部242と、基部241に設けられてダッシュボード搬送ロボット52の第1位置決めピン534が嵌合して接続される接続部としての位置決めピン嵌合部243と、基部241に設けられてダッシュボード搬送ロボット52の突出部536が嵌合して接続される接続部としての突出部嵌合部244と、ダッシュボード14の両側下端縁を把持することでメイン治具24に対する相対位置を固定するダッシュボード位置固定部245と、を備える。
【0030】
サブ治具25は、基部251と、この基部251に設けられてバルクヘッド13を外側から把持することでサブ治具25に対する相対位置を固定するバルクヘッド位置固定部252と、を備える。
【0031】
進退機構26は、サブ治具25をメイン治具24に向かって移動して、バルクヘッド13をサイドメンバ15に位置決めする。
【0032】
以上のフロントコンポーネント組立システム1によりフロントコンポーネント10を組み立てる手順について、図4を参照しながら説明する。
初期状態では、搬送台車22をセットステーション2に位置させておく。
【0033】
ステップS1では、図4(a)に示すように、サイドメンバ搬送ロボット30のサイドメンバ把持ハンド31によりサイドメンバ15を把持して、このサイドメンバ15を搬送台車22のメイン治具24に搬送する。そして、このサイドメンバ15をメイン治具24のサイドメンバ位置固定部242にセットする。これにより、サイドメンバ15はメイン治具24に対して位置決めされる。
【0034】
また、バルクヘッド搬送ロボット40のバルクヘッド把持ハンド41によりバルクヘッド13を把持して、このバルクヘッド13を搬送台車22のサブ治具25に搬送する。そして、このバルクヘッド13をサブ治具25のバルクヘッド位置固定部252にセットする。これにより、バルクヘッド13はサブ治具25に対して位置決めされる。
【0035】
また、ダッシュボード搬送ロボット52のダッシュボード把持ハンド53によりダッシュボード14を把持する。具体的には、ダッシュボード14の位置決め孔142に第1位置決めピン534を挿通するとともに、ダッシュボード14の位置決め孔143に第2位置決めピン535を挿通する(図3参照)。そして、第1把持部532によりダッシュボード14の中央上端側を把持し、第2把持部533によりダッシュボード14のセンタートンネル部141を把持する。
その後、ダッシュボード搬送ロボット52を移動させて、ワーク搬送装置20の走行路21の直上に位置させておく。
【0036】
ステップS2では、図4(b)に示すように、搬送台車22を走行させて、溶接ステーション3に向かって移動する。この移動期間中、搬送台車22の進退機構26を駆動して、サブ治具25をメイン治具24に接近させて、バルクヘッド13をメイン治具24に対して位置決めする。上述のようにサイドメンバ15はメイン治具24に対して既に位置決めされているので、これにより、バルクヘッド13はサイドメンバ15に対して位置決めされることになる。
【0037】
また、ダッシュボード搬送ロボット52のダッシュボード把持ハンド53を搬送台車22のメイン治具24に接近させて、ダッシュボード把持ハンド53の第1位置決めピン534を位置決めピン嵌合部243に接続するとともに、ダッシュボード把持ハンド53の突出部536を突出部嵌合部244に接続して、ダッシュボード14をメイン治具24に対して位置決めする(図3参照)。上述のようにサイドメンバ15はメイン治具24に対して既に位置決めされているので、これにより、ダッシュボード14はサイドメンバ15に対して位置決めされることになる。
以上のステップS2が完了すると、図4(c)に示す状態となる。
【0038】
ステップS3では、搬送台車22が溶接ステーション3に到達すると同時に、ダッシュボード位置固定部245によりダッシュボード14を把持して、ダッシュボード14をメイン治具24に固定する。次に、溶接ロボット60により、サイドフレーム11、ホイールハウスハウジング12、バルクヘッド13、およびダッシュボード14を互いに溶接する。その後、第1把持部532および第2把持部533によるダッシュボード14の把持を解除して、ダッシュボード把持ハンド53をダッシュボード14から脱離させる。
以上により、フロントコンポーネント10が形成される。
【0039】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)ダッシュボード把持ハンド53によりダッシュボード14を把持し、この状態で、アーム54によりダッシュボード把持ハンド53を移動して、ダッシュボード把持ハンド53の第1位置決めピン534および突出部536を位置決めピン嵌合部243および突出部嵌合部244に嵌合した。
したがって、従来のようにダッシュボードを治具に対して直接位置決めせず、ダッシュボード14を把持したダッシュボード把持ハンド53をメイン治具24に対して位置決めすることで、ダッシュボード14を間接的にメイン治具24に対して位置決めした。
よって、位置決め箇所の選択の自由度が高くなり、ダッシュボード14とサイドフレーム11およびホイールハウスハウジング12との接合部分の近傍をダッシュボード把持ハンド53で支持できるので、ダッシュボード14を高精度で位置決めできる。
【0040】
(2)セットステーション2に搬送台車22を位置させておき、この状態で、メイン治具24にサイドメンバ15をセットするとともに、サブ治具25にバルクヘッド13をセットする。そして、搬送台車22を溶接ステーション3に向かって移動させながら、進退機構26によりサブ治具25をメイン治具24に接近させる。このように、バルクヘッド13のセットとサイドメンバ15のセットとを同時に行うことができるので、従来に比べて、サイドメンバ15およびバルクヘッド13を組み立てる時間を短縮できる。
【0041】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、本実施形態では、ダッシュボード把持ハンド53の第1位置決めピン534および突出部536をメイン治具24に接続したが、これに限らず、第1把持部532など、ダッシュボード把持ハンド53の他の部分をメイン治具に接続してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 フロントコンポーネント組立システム
10 フロントコンポーネント
11 サイドフレーム
12 ホイールハウスハウジング
13 バルクヘッド
14 ダッシュボード
22 搬送台車(治具)
24 メイン治具
25 サブ治具
26 進退機構(進退部)
53 ダッシュボード把持ハンド(ダッシュボード把持部)
54 アーム(移動部)
243 位置決めピン嵌合部(接続部)
244 突出部嵌合部(接続部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダッシュボード、バルクヘッド、ホイールハウスハウジング、およびサイドフレームからなる自動車のフロントコンポーネントを組み立てるフロントコンポーネント組立システムであって、
前記バルクヘッド、前記ホイールハウスハウジング、および前記サイドフレームを互いに位置決めした状態で支持する治具と、
前記ダッシュボードを把持するダッシュボード把持部と、
当該ダッシュボード把持部を移動する移動部と、を備え、
前記治具は、前記ダッシュボード把持部が接続される接続部を備え、
前記ダッシュボード把持部により前記ダッシュボードを把持し、この状態で、前記移動部により前記ダッシュボード把持部を移動して前記治具の接続部に接続することで、前記ダッシュボードを、前記バルクヘッド、前記ホイールハウスハウジング、および前記サイドフレームに対して位置決めすることを特徴とするフロントコンポーネント組立システム。
【請求項2】
請求項1に記載のフロントコンポーネント組立システムにおいて、
前記治具は、前記ホイールハウスハウジングおよび前記サイドフレームを支持するメイン治具と、
前記バルクヘッドを支持するサブ治具と、
当該サブ治具を前記メイン治具に向かって進退させる進退部と、を備え、
前記メイン治具にホイールハウスハウジングおよびサイドフレームを互いに位置決めした状態で支持させて、この状態で、前記進退部により前記サブ治具を前記メイン治具に接近させることで、前記バルクヘッドを、前記ホイールハウスハウジングおよび前記サイドフレームに対して位置決めすることを特徴とするフロントコンポーネント組立システム。
【請求項3】
ダッシュボード、バルクヘッド、ホイールハウスハウジング、およびサイドフレームからなる自動車のフロントコンポーネントを組み立てるフロントコンポーネント組立方法であって、
治具により、前記バルクヘッド、前記ホイールハウスハウジング、および前記サイドフレームを互いに位置決めした状態で支持する第1手順と、
ダッシュボード把持部により、前記ダッシュボードを把持する第2手順と、
前記ダッシュボード把持部を移動して前記治具に接続することで、前記ダッシュボードを、前記バルクヘッド、前記ホイールハウスハウジング、および前記サイドフレームに対して位置決めする第3手順と、を備えることを特徴とするフロントコンポーネント組立方法。
【請求項4】
請求項3に記載のフロントコンポーネント組立方法において、
前記治具を、前記ホイールハウスハウジングおよび前記サイドフレームを支持するメイン治具と、前記バルクヘッドを支持するサブ治具と、を含んで構成し、
前記第1手順では、前記メイン治具により、ホイールハウスハウジングおよびサイドフレームを互いに位置決めした状態で支持して、
前記サブ治具により前記バルクヘッドを支持して、
前記サブ治具を前記メイン治具に接近させることで、前記バルクヘッドを、前記ホイールハウスハウジングおよび前記サイドフレームに対して位置決めすることを特徴とするフロントコンポーネント組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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