説明

フローティングタンク屋根部の断熱構造

【課題】施工に時間と手間をかけずに、しかも、屋根部の変動に追随しやすい断熱構造を提供する
【解決手段】液体貯留タンクの液面上に浮上した状態に設置するフローティングタンク屋根部1の上面に、板状の断熱部材3を複数並べて固定し、複数並べた断熱部材3の隣接するもの及びそれらの間の目地部7の表側面に亘って、防水性のあるポリウレタンゴムの吹付け層8が連続的に覆ってある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローティングタンク屋根部の断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば重油貯留タンクなどのような液体貯留タンクは、貯留量の変化によって高さが変化する液面上に、屋根部を浮上させて覆うフローティングタンクでできており、その屋根部は、貯留する液体を所定温度下のもとで貯留しておく必要があり(例えば、液体を保温や加温して、粘性を所定範囲に調製する必要があるときなど)、そのために、断熱部材で覆うことが行われている。
【0003】
例えば、従来は、図4に示すように、フローティングタンク屋根部1の上面に、板状の断熱部材3を複数並べて固定し、それらの並べた断熱部材3夫々にフッ素樹脂などで成形された防水シート10を覆い、隣接する防水シート10の端部同士を、並べた断熱部材3間の目地部で互いに接着するか又は、接続用の防水シート11を介して接着する断熱構造があった(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平6−345180号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の断熱構造の場合、防水シート10,11同士を接着するのに時間と手間が多くかかったりする施工上の問題点がある。また、フローティングタンク屋根部1は一般的に金属板でできているために、温度変化に伴って伸縮したり、液面の変動に伴って振動したりするのであるが、それらの変化に防水シート10,11及び防水シート10,11の接着部が追随しきれず、接着部が外れたり防水シート10,11が裂けたりする問題点がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、施工に時間と手間をかけずに、しかも、屋根部の変動に追随しやすい断熱構造を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の特徴構成は、液体貯留タンクの液面上に浮上した状態に設置するフローティングタンク屋根部の上面に、板状の断熱部材を複数並べて固定し、複数並べた前記断熱部材の隣接するもの及びそれらの間の目地部の表側面に亘って、防水性のあるポリウレタンゴムの吹付け層が連続的に覆ってあるところにある。
【0008】
本発明の第1の特徴構成によれば、複数並べた断熱部材及びそれらの隣接するもの間の目地部の表側面を覆うポリウレタンゴムの吹付け層は、短時間で施工できて工期短縮が可能となるばかりか、ポリウレタンゴムの弾性により、金属板の屋根部の温度変化に伴う伸縮や、上下動に伴う振動にも追随しやすく、しかも強度が高く長期に亘って断熱部材及び目地部を覆うことができる。その上、断熱部材と目地部の表側面を連続的に覆うポリウレタンゴムの防水性により、雨水が断熱部材と金属製の屋根部との間に侵入するのを防止することができ、屋根部の腐食に伴う劣化や断熱部材の断熱性の低下を防止することができ、長期に亘る貯留液体に対する保存性能を維持できる。
【0009】
本発明の第2の特徴構成は、前記断熱部材は前記フローティングタンク屋根部に接着剤を介して固定してあり、前記ポリウレタンゴムの吹付け層は、2液硬化型のポリウレタンゴムエラストマーから成り、引っ張り強さ10N/mm2以上、引裂き強さ50N/mm2以上、伸び率200%以上、ゲル化時間20秒以内の物性を有するものであるところにある。
【0010】
本発明の第2の特徴構成によれば、断熱部材はフローティングタンク屋根部に接着剤により安定的に固定され、それらを覆うポリウレタンゴムの吹付け層は、2液硬化型ポリウレタンゴムエラストマーにより、弾性の高い断熱層を簡単に形成できる。
その上、引っ張り強さ10N/mm2以上、引裂き強さ50N/mm2以上、伸び率200%以上のポリウレタンゴムの使用により、金属製の屋根部が一般的に鉄材により形成される場合でも、その温度変化に伴う伸縮に十分追随できる。
また、ゲル化時間20秒以内の物性を有するために、吹き付け後短時間で硬化して縦方向の吹き付け面や凹凸面に対しても垂れ難くて、均一で安定した厚さの大きい被覆層が形成できる。
【0011】
本発明の第3の特徴構成は、前記フローティングタンクは、重油貯留タンクであり、前記ポリウレタンゴムの吹付け層の表面側に、帯電防止保護層を設けてあることにある。
【0012】
本発明の第3の特徴構成によれば、帯電防止保護層によりポリウレタンゴムの吹付け層の表面側が保護されることにより、貯留液が引火性の液体であっても安全に貯留できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、図面において従来例と同一の符号で表示した部分は、同一又は相当の部分を示している。
【0014】
図1は、フォローティングタンクとして重油貯蔵タンクを示す概略図で、重油貯蔵タンクは、外壁として、多数の鋼板を溶接で継ぎ合わせて構成される屋根部1及び周壁2を備えている。この屋根部1は、直径が40m乃至67m程度の円形浮き天井Bを構成している。すなわち、浮き天井Bは、4.5乃至6mm程度の厚みの鋼製デッキからなる屋根部1と、その外周部に設けられているポンツーン4と、ポンツーン4とタンク周壁2との間をシールするシール部材5とを設けて構成され、貯蔵重油Cに浮かぶ状態で、貯蔵重油量の増減に応じて昇降するよう設けられている。なお、屋根部1はその中央付近に備えつけてある排水口19に向かって勾配を設けてあり、屋根部1における雨水等の侵入水が、かかる勾配に沿って排水口19から、その排水口19に接続される排水ホース20を経て、貯留設備A外に排水され、屋根部1上にて長期間滞留し難いように構成してある。
【0015】
図2に示すように、前記屋根部1は、4.5乃至6mm程度の厚みの多数の鋼板6を溶接で継ぎ合わせて構成してあると共に、この鋼板6上に溶接線を挟んで200mm程度の間隔を隔てて、各鋼板6毎に難燃性の30倍発泡の発泡ポリエチレンから成る約25mm厚の断熱部材3を、接着固定して断熱されている。
そして、複数並べた前記断熱部材3の隣接するもの及びそれらの間の目地部7の表側面に亘って、防水性(JIS A 6021 1類に準拠)のあるポリウレタンゴムの吹付け層8が連続的に覆ってある。
【0016】
前記断熱部材3は、鋼板6の上面にエポキシ変性ウレタン樹脂から成るプライマー9を塗布した上にクロロプレン系接着剤12を介して固定されている。
また、ポリウレタンゴムの吹付け層8は、イソシアネートを主剤とすると共にポリオールを硬化剤とした2液硬化型の弾性のあるポリウレタンゴムエラストマーに特殊アミンを触媒として混入した材料から成り、無発泡で防水性があり自己消火性を有する。
また、前記吹付け層8の表面側には、帯電防止塗料を塗布して帯電防止保護層13を形成してある。
【0017】
本実施形態のポリウレタンゴムエラストマーの吹付け層8は、ショアーA硬さが89、引張り強さ12N/mm2、引裂き強さ58N/mm2、伸び率380%、15秒からゲル化し始める物性があるが、結局、鋼板6の熱膨張や屋根部1の昇降に伴う振動に追随して破損しないためには、引っ張り強さ10N/mm2以上、引裂き強さ50N/mm2以上、伸び率200%以上の物性を有する必要性がある。
更に、吹き付け塗装して断熱部材3及び目地部7の凹凸面に、塗布量2.0Kg/m2
均等な厚みの吹付け層8を形成するためには、ゲル化時間20秒以内の物性が必要である。つまり、1mm厚/m2の塗布量は1Kgで、約1〜2mm厚の吹付け層を形成するため
に、吹き付け後20秒以上かかってゲル化すれば液ダレして均等な厚みの吹付け層が形成されず、そのために、凹凸部に均一な吹付け層を形成するためには、20秒以内にゲル化する必要がある。
【0018】
次に、図3に示す施工フローに従って説明すると、まず、タンク鉄皮面を検査する第1工程、その後、タンク表面ケレンと塗装を行う第2工程、鉄板露出箇所(鋼板6及びその溶接部を含む)にプライマー9を塗布する第3工程、25mm厚の断熱部材3を接着剤12を塗布して下地の鋼板6に貼り付ける第4工程(尚、段差のある場合には、両面テープを併用する)、スプレーポンプ車の配置と養生する第5工程、超速硬化ポリウレタンゴムエラストマーを均一(平均厚み約2mm)に吹き付ける第6工程(この時の塗布量は2.0Kg/m2で、但し溶接部は1mm厚程度とする)、帯電防止塗料をローラーにて所定の
塗布量(0.2Kg/m2)を均一に塗布して帯電防止保護層13を形成する第7工程、と
を順次施工する。
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態で説明する概略全体図
【図2】本発明の実施形態を示す要部縦断面図
【図3】施工フローを示す工程図
【図4】従来の要部の縦断面図
【符号の説明】
【0020】
1 屋根部
3 断熱部材
7 目地部
8 吹付け層
13 帯電防止保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体貯留タンクの液面上に浮上した状態に設置するフローティングタンク屋根部の上面に、板状の断熱部材を複数並べて固定し、複数並べた前記断熱部材の隣接するもの及びそれらの間の目地部の表側面に亘って、防水性のあるポリウレタンゴムの吹付け層が連続的に覆ってあるフローティングタンク屋根部の断熱構造。
【請求項2】
前記断熱部材は前記フローティングタンク屋根部に接着剤を介して固定してあり、前記ポリウレタンゴムの吹付け層は、2液硬化型のポリウレタンゴムエラストマーから成り、引っ張り強さ10N/mm2以上、引裂き強さ50N/mm2以上、伸び率200%以上、ゲル化時間20秒以内の物性を有するものである請求項1記載のフローティングタンク屋根部の断熱構造。
【請求項3】
前記フローティングタンクは、重油貯留タンクであり、前記ポリウレタンゴムの吹付け層の表面側に、帯電防止保護層を設けてある請求項1または2のいずれかに記載のフローティングタンク屋根部の断熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−132329(P2010−132329A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311372(P2008−311372)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000244084)明星工業株式会社 (33)
【出願人】(506293579)ユープレックス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】