説明

フロート式スチームトラップ

【課題】 排気弁口の内面に付着した異物を掃除できるようにする。
【解決手段】 入口5と出口7を有する本体1に蓋部材2を締結して、内部に入口5に連通するトラップ室6と出口7に連通する出口通路8を有するトラップケーシングを形成する。トラップ室6を出口通路8側に連通する排水弁口16をトラップ室6の下部に設け、トラップ室6の液位に応じて排水弁口16を開閉するフロート19をトラップ室6内に収容する。トラップ室6を出口通路8側に連通する排気弁口21をトラップ室6の上部に設け、トラップ室6の温度に応じて排気弁口21を開閉する温度応動部材25をトラップ室6内に収容する。蓋部材2にねじ結合したプラグ33に外部から進退操作せしめられる操作部材34をねじ結合する。操作部材34はプラグ33を貫通し、排気弁口21の先端小径部の下流に位置する先端部34aが前進によりトラップ室6内に突出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気輸送管や蒸気使用機器等の蒸気配管系に発生する復水をフロートの浮上降下により自動的に排出するフロート式スチームトラップに関し、排気弁口の内面に付着した異物を掃除できるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
フロート式スチームトラップは、気体と液体の比重差を利用して蒸気は排出せず復水を自動的に排出するものであるが、トラップ室内に空気が充満するとフロートが排水弁口を閉じるので、いわゆるエアバインディングを起こしてしまう問題点があった。そこで従来から、温度応動部材を用いてエアバインディングを防止することが行われている。その一例が特開2002−276893に示されている。これは、入口と出口を有するトラップケーシングに入口に連通するトラップ室と出口に連通する出口通路を形成し、トラップ室を出口通路側に連通する排水弁口をトラップ室の下部に設け、トラップ室の液位に応じて排水弁口を開閉するフロートをトラップ室内に収容し、トラップ室を出口通路側に連通する排気弁口をトラップ室の上部に設け、トラップ室の温度に応じて排気弁口を開閉する温度応動部材をトラップ室内に収容したものである。
【0003】
上記従来技術のフロート式スチームトラップにおいては、排水弁口の内面及び排気弁口の内面に流体中のゴミやスケール等の異物が付着堆積し、弁口が次第に狭められて排出流量の減少、ひいては弁口が詰まってしまうという問題点があった。そこで従来から、操作部材を用いて異物を掃除することが行われている。その一例が実公昭49−36747号公報に示されている。これは、外部から進退操作可能な操作部材を排水弁口内に配置したもので、操作部材を進退せしめて排水弁口の内面に付着した異物を掃除するものである。上記従来技術のものにおいては、排水弁口の内面に付着した異物を掃除できるものであるが、排気弁口の内面に付着した異物を掃除できない問題点があった。
【特許文献1】特開2002−276893
【特許文献2】実公昭49−36747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の技術的課題は、排気弁口の内面に付着した異物を掃除できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、入口と出口を有するトラップケーシングに入口に連通するトラップ室と出口に連通する出口通路を形成し、トラップ室を出口通路側に連通する排水弁口をトラップ室の下部に設け、トラップ室の液位に応じて排水弁口を開閉するフロートをトラップ室内に収容し、トラップ室を出口通路側に連通する排気弁口をトラップ室の上部に設け、トラップ室の温度に応じて排気弁口を開閉する温度応動部材をトラップ室内に収容したものにおいて、外部から進退操作可能な操作部材を排気弁口内に配置したことを特徴とするフロート式スチームトラップが提供される。この外部から進退操作可能な操作部材を排気弁口内に配置した本発明によれば、操作部材を外部から進退せしめることにより、排気弁口の内面に付着した異物を掃除することができる。
【発明の効果】
【0006】
上記のように、本発明によれば、排気弁口の内面に付着した異物を掃除することができるので、排出流量の減少や弁口の詰りを生じることがないという優れた効果を生じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
上記の技術的手段の具体例を示す実施形態を説明する(図1参照)。本実施形態はフリーフロート式スチームトラップに適用したものである。本体1に蓋部材2をボルト3で締結してケーシングを形成する。ケーシングの内部は仕切壁4で、入口5の連通するトラップ室6と出口7の連通する出口通路8に隔てる。入口5と出口7は同一軸上に形成する。入口5はトラップ室6の上部に開口し、スクリーン9及び通孔10を開けたフロートカバー11を介して連通する。
【0008】
本体1の側壁開口から出口通路8及び仕切壁4を貫通して先端がトラップ室6に突出する弁座14を挿入し、本体1にねじ結合する弁座保持部材15で弁座14を保持する。弁座14は軸方向の中心に貫通した排水弁口16を有し、周壁に通孔17を有する。弁座14と本体1の仕切壁4の間に気密保持用のOリング18を設ける。トラップ室6内に中空球形のフロート19を自由状態で配置する。フロート19はトラップ室6の液位に従って浮上降下し、その外表面で排水弁口16を開閉する。本体1の底壁にフロート座20を形成する。フロート座20はフロート13が排水弁口16を閉じた位置でフロート13を保持する。
【0009】
蓋部材2に排気弁口21を開けた排気弁座22を間に保持ガイド23を挟んでねじ結合する。保持ガイド23に係止するバネ24で温度応動部材25を保持ガイド23に係止する。温度応動部材25はほぼ円板状の密閉体カプセルで図示はしていないが内部に薄板ダイヤフラムと熱膨張収縮液を充填して形成する。排気弁口21は蓋部材2に形成した排気通路26を通して出口通路8に連通する。
【0010】
蓋部材2に排気弁座22と同一軸上にプラグ33をねじ結合する。プラグ33に外部から進退操作せしめられる操作部材34をねじ結合する。操作部材34はプラグ33を貫通し、排気弁口21の先端小径部の下流に位置する先端部34aが前進によりトラップ室6内に突出する。操作部材34の後端部に六角形の連結部34bを形成する。プラグ33と操作部材34の間に操作部材34の気密を保つシール部材としてのパッキング35を配置し、プラグ33にパッキング押え36をねじ結合する。プラグ33の外周との間にシール部材としてのOリング38を配置した流体遮蔽部材39により操作部材34を気密的に覆う。流体遮蔽部材39に操作部材34の連結部34bに嵌り合い操作部材34を進退操作せしめる六角形の凹部39aを形成する。操作部材34の先端部34aの外径は排気弁口21の先端小径部の内径よりも僅かに小径に形成し、前進させたときに先端部34aで排気弁口21の先端小径部の内面を掃除する。流体遮蔽部材39にピン40を圧入して抜け出しを防止する。
【0011】
上記フリーフロート式スチームトラップの作動は次の通りである。蒸気と復水及び空気が入口5からトラップ室6に流入し、蒸気と空気が上部に復水が下部に分離して溜まる。トラップ室6内の温度が高い場合、温度応動部材25は膨張して排気弁口21を閉じる。トラップ室6内の温度が低くなると、温度応動部材25は収縮して排気弁口21を開き、トラップ室6内の復水や空気を排気弁口21から排気通路26、出口通路8を通して出口6へ排出する。トラップ室6内の液位が上昇すると、フロート19は浮上して排水弁口16を開き、トラップ室6内の復水を排水弁口16から通孔17、出口通路8を通して出口6へ排出する。復水の排出によってトラップ室6内の液位が低下すると、フロート19は降下して外表面で排水弁口16を直接閉じる。排気弁口21の先端小径部の内面に付着した異物を掃除する場合、流体遮蔽部材39を回転させ操作部材34をねじ込んで前進させる。これにより、操作部材34の先端部34aで排気弁口21の先端小径部の内面に付着した異物を掃除する。このとき、パッキング35から排出ドレンが噴出しても、流体遮蔽部材39により排出ドレンが流体遮蔽部材39の外部に噴出することを防ぐことができ、火傷することを防止できる。掃除完了後は流体遮蔽部材39を逆方向に回転させて操作部材34を後退させ、操作部材34の先端部34aを排気弁口21の先端小径部の下流に位置させる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による実施形態のフリーフロート式スチームトラップの断面図。
【符号の説明】
【0013】
1 本体
2 蓋部材
5 入口
6 トラップ室
7 出口
8 出口通路
12 抵抗部材
16 排水弁口
19 フロート
21 排気弁口
25 温度応動部材
34 操作部材
34a 操作部材の先端部
39 流体遮蔽部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口と出口を有するトラップケーシングに入口に連通するトラップ室と出口に連通する出口通路を形成し、トラップ室を出口通路側に連通する排水弁口をトラップ室の下部に設け、トラップ室の液位に応じて排水弁口を開閉するフロートをトラップ室内に収容し、トラップ室を出口通路側に連通する排気弁口をトラップ室の上部に設け、トラップ室の温度に応じて排気弁口を開閉する温度応動部材をトラップ室内に収容したものにおいて、外部から進退操作可能な操作部材を排気弁口内に配置したことを特徴とするフロート式スチームトラップ。


【図1】
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【公開番号】特開2008−45615(P2008−45615A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−220124(P2006−220124)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000133733)株式会社テイエルブイ (913)
【Fターム(参考)】