説明

フローリング床用フロアーポリッシュ組成物

【課題】 密着性、耐水性、及び耐水密着性に優れ、かつ、形成するフロアーポリッシュ組成物皮膜は、表面電気抵抗値が低いため、静電気による埃の付着の少ないフローリング床用フロアーポリッシュ組成物の提供。
【解決手段】 (A)カルボン酸および/またはカルボン酸塩を含む酸価(Av)が10〜38のウレタン系樹脂分散体、(B)アクリル−スチレン共重合樹脂エマルジョン、(C)コロイダルシリカ、(D)ワックスエマルジョン、(E)アルカリ可溶性樹脂、(F)可塑剤(G)皮膜形成助剤、及び(H)水を含有するフローリング床用フロアーポリッシュ組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般住宅や、マンション、アパート等のフローリング床用のフロアーポリッシュ組成物に関する。更に詳しくは、表面硬度が高いUVフローリング床に塗布しても、良好な密着性、耐水性、及び耐水密着性を確保し、水や飲料、及び水気を含有する食材などがこぼれ、そのまま長時間放置されてもフロアーポリッシュ組成物皮膜は白化しにくく、また、濡れた床を雑巾やウェスで拭き取っても皮膜が剥がれてしまうことがないとともに、静電気による埃の付着の少ないフローリング床用フロアーポリッシュ組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、一般住宅や、マンション、アパートの床には、ハウスダストやダニ、カビ等の発生を避けるため、また日常の掃除を軽減する目的から、畳やカーペットに替わり、無垢板を用いた単層フローリング、合板や集成材または単板積層材を台板として表面に天然木化粧単板または特殊加工(印刷など)化粧紙などを張り合わせた複合フローリングを施工する傾向が高まっている。なお、JAS規格において「フローリング」とは、「主として板、その他木質系材料からなる床材であって、表面加工、その他所要の加工を施したもの」と定義されている。
【0003】
また、近年、紫外線硬化樹脂をフローリングに塗布し、紫外線(UV)を照射することにより瞬時に塗膜を硬化したUV加工フローリングを施工する傾向が高まっている。UV加工フローリングは、高光沢で、表面硬度が高く耐磨耗性にも優れているという利点を有している。
しかしながら、表面硬度が非常に高いために、従来のフロアーポリッシュ組成物では該フローリングに対する密着性が不十分なことが多く、密着性が継続せず容易に剥がれてしまう(密着性の課題)。さらに、形成されたフロアーポリッシュ組成物皮膜は水等に弱く、特にキッチンやダイニング、リビング、洗濯場、脱衣所箇所等々では、水や飲料、水気を含む食材などを扱う機会が多く、それらがこぼれたりして長時間放置されると、フロアーポリッシュ組成物皮膜が白化現象を起こす(耐水性の課題)、さらには、濡れた箇所を雑巾やウェスで拭き取ろうとするとフロアーポリッシュ組成物皮膜が容易に剥がれてしまい、外観を損ねることもある(耐水密着性の課題)。
【0004】
また、フローリング加工技術が進歩し、フローリングの表層に貼付される化粧単版の厚みが非常に薄いもの(例えば、厚さ0.5ミリメートル)が主流になっている。そしてフローリングには当然、板と板をつなぎ、張り合わせているために目地が存在する。
こうしたフローリング床材が、長期に渡り水等で晒されると、UV加工フローリングといえども表層や目地から水等が内部にシミ込むことにより、シミが発生したり、劣化して割れや反りなどの現象が発生することがある。
このような事情から、一般住宅やマンション、及びアパ−ト等に供せられるフローリング床用のフロアーポリッシュ組成物において、上記の課題を解決できる優れた密着性、耐水性、及び耐水密着性を兼ねそろえたフローリング床用フロアーポリッシュ組成物が要望されている。
【0005】
木質系床材、合成樹脂からなる化学床材、コンクリートや大理石等の石材などの床面には、床材の美観を保つとともに、床面の保護を目的として、フロアーポリッシュ組成物による皮膜が形成されている。上記フロアーポリッシュ組成物は、「JFPA(日本フロアーポリッシュ工業会)規格−00」、フロアーポリッシュ試験方法通則の用語の定義に規定されている。
【0006】
この規格において、フロアーポリッシュ組成物は、水性,乳化性,油性の3つに大別され、さらに、水性フロアーポリッシュ組成物はポリマータイプとワックスタイプに分類されている。現在、フロアーポリッシュ組成物としては、水性ポリマータイプが主流となっている。
【0007】
上記水性ポリマータイプのフロアーポリッシュ組成物は、通常、アクリル系共重合物のエマルジョン、ワックスエマルジョン、アルカリ可溶性樹脂、可塑剤、その他の成分からなることが、特公昭44−24407号公報(特許文献1を参照)、特公昭49−1458号公報(特許文献2を参照)等に示されている。
【0008】
また、木床用フロアーポリッシュに関する特許文献としては、例えば、特開昭61−115975号公報には、ワックスを主成分とし、これにHLBが8〜12である非イオン系界面活性剤を加えて、これらを溶剤に溶解または分散させ、油性ワックスにすることにより、水洗いが可能になり、モップやウェスを多数回繰り返して使用することが可能な、木床用つや出し剤が開示されている(特許文献3を参照)。
【0009】
特開平9−183939号公報には、アクリル系ポリマー及びワックスを主成分として含むつや出し成分に、フローリング床面に近い色となるように色調整されたアクリル系水性ミルベース顔料を配合し、当該顔料が被覆剤全重量に対して0.001〜0.5重量%の配合にすることにより、床面を保護し、美観を保つとともに、床面上の傷を隠して目立たなくすることが可能なフローリング床用被覆剤が開示されている(特許文献4を参照)。
【0010】
また、特開平6−93232号公報には、(A)水不溶性ポリマー0.5〜40重量%、(B)直鎖脂肪族アルコールのポリアルコキシレート、分岐脂肪酸アルコールのポリアルコキシレート、第2級アルコールのポリアルコキシレート、及びポリエーテル変性シリコ−ンから選ばれる1種以上の成分0.1〜20重量%、(C)アルカリ剤0.01〜5重量%、並びに(D)水10〜90重量%を含有する組成物であり、前記(A)成分と(B)成分の配合割合が重量比で(A)/(B)=3〜5で、組成物のpHが7〜11とすることにより、塗り伸ばし性が優れ、塗布膜の光沢が良く、見栄えが良く、さらに塗布膜の耐久性や剥離性も優れており、吐出容器の吐出口を詰まらせることもない木材用つや出し剤組成物が開示されている(特許文献5を参照)。
【0011】
さらに、特公平6−13674号公報には、アクリル酸樹脂、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、αメチルースチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、エチレン、プロピレンの少なくとも一種以上のビニルモノマーを共重合して得られる合成樹脂エマルジョン、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性エポキシ樹脂、ポリエチレンワックス、ポリエチレン−アクリルワックス、ポリプロピレン−アクリルワックスのワックス類、及びそれらの混合物からなる群から選ばれる水性樹脂組成物とカルボン酸及び/又はカルボン酸塩を含む酸価が40〜200のポリウレタン系樹脂とを含み、該ポリウレタン系樹脂と該水性樹脂組成物との乾燥重量比が1:20〜6:1の割合であることを特徴とする床用ポリッシュ用組成物が開示されている(特許文献6を参照)。
【特許文献1】特公昭44−24407号公報
【特許文献2】特公昭49−1458号公報
【特許文献3】特開昭61−115975号公報
【特許文献4】特開平9−183939号公報
【特許文献5】特開平6−93232号公報
【特許文献6】特公平6−13674号公報
【0012】
上記の特許文献の中で、密着性や耐水性を取り上げている特許文献として、特公平6−13674号公報があげられるものの、本発明が課題とする耐水密着性を兼ね備えたフローリング床用のフロアーポリッシュ組成物に関する開示や示唆はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、特に密着性、耐水性、及び耐水密着性に優れ、かつ、静電気による埃の付着の少ないフローリング床用フロアーポリッシュ組成物の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため、本発明は、(A)カルボン酸および/またはカルボン酸塩を含む酸価(Av)が10〜38のウレタン系樹脂分散体、(B)アクリル−スチレン共重合樹脂エマルジョン、(C)コロイダルシリカ、(D)ワックスエマルジョン、(E)アルカリ可溶性樹脂、(F)可塑剤(G)皮膜形成助剤、及び(H)水を含有するフローリング床用フロアーポリッシュ組成物を第1の要旨とする。
【0015】
また、本発明は、上記(B)アクリル−スチレン共重合樹脂エマルジョンの酸価(Av)が100〜150で、該共重合樹脂エマルジョンの組成中にスチレン単量体を21質量%以上含むフローリング床用フロアーポリッシュ組成物を第2の主旨とする。
【0016】
さらに、上記(A)カルボン酸および/またはカルボン酸塩を含む酸価(Av)が10〜38のウレタン系樹脂分散体と、上記(B)酸価(Av)が100〜150で、該共重合樹脂エマルジョンの組成中にスチレン単量体を21質量%以上含むアクリル−スチレン共重合樹脂エマルジョンとの組合せの固形分換算した質量比率が、(A):(B)=1:14〜2:7に設定されているフローリング床用フロアーポリッシュ組成物を第3の要旨とする。
【0017】
さらに、上記(C)コロイダルシリカが3〜500ナノメーター(nm)の微粒子状のシリカ(二酸化ケイ素)を水中に分散したものであるフローリング床用フロアーポリッシュ組成物を第4の要旨とする。
【0018】
さらに、上記(D)ワックスエマルジョンがポリエチレンワックスエマルジョンであるフローリング床用フロアーポリッシュ組成物を第5の要旨とする。
【0019】
さらに、上記(E)アルカリ可溶性樹脂が、単量体としてスチレンを含むフローリング床用フロアーポリッシュ組成物を第6の主旨とする。
【0020】
さらに、上記(F)可塑剤がアジピン酸エステル、及びリン酸エステルであるフローリング床用フロアーポリッシュ組成物を第7の要旨とする。
【0021】
さらに、上記(G)皮膜形成助剤がグリコールエーテル系の水溶性溶剤であるフローリング床用フロアーポリッシュ組成物を第8の要旨とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明のフローリング床用フロアーポリッシュ組成物は、密着性、耐水性、及び耐水密着性に優れ、建物内部に施工されたフローリングに好適に用いることができる。「密着性」とは、床材(本発明では、フローリング)と、フロアーポリッシュ組成物により形成されたフロアーポリッシュ組成物皮膜との付着強度のことを意味する。
通常、密着性の試験は、簡易的な評価方法として乾燥皮膜の表面にセロテープ(登録商標、以下「粘着テープ」と称する)を貼り付け、その直後に一気に粘着テープを剥がし、貼り付けた部分の皮膜が剥離される度合いを確認して「密着性」を判断する。「耐水性」とは、水等による皮膜の耐水白化性能のことを意味する。通常、耐水性の試験は、皮膜の表面に水を滴下して一定時間放置後、滴下部分が水により侵され、白化したり膨潤したりしないかを目視で確認し「耐水性」を判断する。
【0023】
さらに「耐水密着性」とは、水滴の滴下部分を雑巾やウェスで、拭き取った際、軟化した皮膜がそのまま剥離されてしまうか否かを問うた性能である。通常、耐水密着性の確認試験は、一定時間、水滴の付着した部分をウェス等で軽く拭き取り、水気を取り去り、拭き取り面に粘着テープを貼り付け、その直後に一気に粘着テープを剥がし、水滴が付着した部分の皮膜が剥離される度合いを確認して耐水密着性を判断する。
現実的に、施工床の居住者は、床に水滴等が付着していれば、雑巾やウェスで水滴等を拭き取り、皮膜が剥がれてしまえば美観が悪くなり問題視するので、優れた耐水密着性能を具備することはフローリング床用フロアーポリッシュ組成物にとって重要である。
【0024】
本発明のフローリング床用フロアーポリッシュ組成物は、上記の密着性、耐水性、及び耐水密着性において優れており、白化現象もなければ、皮膜が剥離されてしまうこともない。
さらに本発明のフローリング床用フロアーポリッシュ組成物は、通電性を有するコロイダルシリカを配合するので、形成した皮膜の表面電気抵抗値は低目に留まり、静電気による埃の付着の少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
上記の目的を達成するため、鋭意検討した結果、本フロアーポリッシュ組成物を見出した。すなわち、本発明のフローリング床用フロアーポリッシュ組成物(以下、「フロアーポリッシュ組成物」ともいう)は、(A)カルボン酸および/またはカルボン酸塩を含む酸価(Av)が10〜38のウレタン系樹脂分散体、(B)アクリル−スチレン共重合樹脂エマルジョン、(C)コロイダルシリカ、(D)ワックスエマルジョン、(E)アルカリ可溶性樹脂、(F)可塑剤、(G)皮膜形成助剤、及び(H)水を含有する。
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0027】
本発明が、優れた密着性、耐水性、及び耐水密着性を発揮する原理は、(A)カルボン酸および/またはカルボン酸塩を含む酸価(Av)が10〜38のウレタン系樹脂分散体と、(B)酸価(Av)が100〜150で、該共重合樹脂エマルジョンの組成中にスチレン単量体を21質量%以上含むアクリル−スチレン共重合樹脂エマルジョンとの組合せによる相乗効果により成立する。さらに、(A)成分と(B)成分の固形分換算比率が、(A):(B)=1:14〜2:7に設定されていることが好ましく、特に(A):(B)=1:7に設定されていることがさらに好ましい。
固形分換算比率が(A):(B)=1:14より(B)の比率が大きいと、耐水性、及び耐水密着性が低下する。
一方、(A):(B)=2:7より(B)の比率が小さくなると、形成した皮膜の剥離が難しくなる上、貯蔵安定性が保てなくなる。
【0028】
上記で示す(A)成分の酸価の低いウレタン系樹脂分散体自体は、密着性、耐水性、及び耐水密着性において本来優れているが、一方では、耐洗剤性が高く、配合比率を上げ過ぎるとフロアーポリッシュ組成物皮膜が剥離できなくなり、また本発明のフロアーポリッシュ組成物としての所望の貯蔵安定性が維持できなくなる。
従って、本発明のフロアーポリッシュ組成物は、その点を充分に考慮して、(A)成分と(B)成分の配合比率を最適化することにより、密着性、耐水性、及び耐水密着性が確保される。
【0029】
本発明の(A)カルボン酸および/またはカルボン酸塩を含む酸価(Av)が10〜38のウレタン系樹脂分散体としては、ポリウレタン系樹脂の鎖中に、カルボン酸及び/またはカルボン酸塩が結合して存在しているものである。このようなものは、例えば、(1)ポリウレタン樹脂の製造に際し、ジオール及びジイソシアネートにカルボン酸基を有するジオール等を加え、(必要によりカルボン酸基を中和し)重合する。(2)末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの過剰のポリアルキルアミンを反応せしめポリウレタン尿素ポリアミンを生成させ、環式ジカルボン酸無水物を反応させることによって得られる。すなわち、ポリウレタン系樹脂は、上記のようにカルボン酸基を導入することによって、水分散型あるいは、水溶性の水性ポリウレタン系樹脂にすることができる。また、必要に応じて乳化剤を加え水性化することも可能である。
なお、本発明において、ポリウレタン系樹脂に含まれるカルボン酸塩を形成する塩基は、アミン系の物質、アンモニア、アルカリ金属が使われるが、好ましくは、比較的揮発しやすい、アミン系またはアンモニアがよい。
【0030】
ポリウレタン系樹脂に含まれるカルボン酸および/またはカルボン酸塩の量は、酸価(Av)として表すことができる。本発明におけるポリウレタン系樹脂の酸価(Av)の範囲は10〜38であり、好ましくは15〜30である。ここでいう酸価とは、樹脂固形分1gに対するKOHのmg数である。酸価が10未満のポリウレタン系樹脂を加えた組成物は配合量にもよるが、洗剤で極めて剥離しにくくなり、かつ貯蔵安定性が乏しいものとなる。また、酸価が38を超えるポリウレタン系樹脂を加えた組成物は配合量にもよるが、ある程度の耐水性は確保できるものの、特に、耐水密着性の観点からは不十分なものとなる。
【0031】
なお、本発明におけるポリウレタン系樹脂として分子量、分子構造、製造方法(重合方法、溶媒の使用の有無、または溶媒の種類)のいかんにかかわらず、あらゆる種類のウレタン系樹脂、水性ポリウレタン樹脂とアクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、塩化ビニル、スチレン、酢酸ビニル等の少なくとも1種以上のビニルモノマーと共重合した水性ポリウレタン系共重合体樹脂、及び上記ビニルモノマーの共重合体と水性ポリウレタン樹脂との反応で得られる水性ポリウレタン系樹脂を使用することができる。
【0032】
さらに、上記(A)カルボン酸および/またはカルボン酸塩を含む酸価(Av)が10〜38のウレタン系樹脂分散体は、通常、固形分換算10〜40質量%濃度の水性分散液として得られ、本発明のフロアーポリッシュ組成物中に、固形分換算として0.4〜5.0質量%の範囲で添加される。
【0033】
一方、本発明の(B)アクリル−スチレン共重合樹脂エマルジョンとしては、共重合樹脂エマルジョンに必須成分としてスチレンを21質量%以上含むが、具体的なスチレン単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、2−ヒドロキシメチルスチレン、4−エチルスチレン、4−エトキシスチレン、3,4−ジメチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロー3−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、1−ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル単量体、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、アルキルフェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、アルキルフェノールエチレンオキシドアクリレート、アルキルフェノールプロピレンオキシドアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、エチレングリコールアクリレートモノフタレート、エチレングリコールアクリレートヒドロキシエチルフタレート等のポリエステルアクリレート類、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、アルキルフェノキシエチルメタクリレート、フェノキシジエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、アルキルフェノールエチレンオキシドメタクリレート、アルキルフェノールプロピレンオキシドメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタクリレート、エチレングリコールメタクリレートモノフタレート、エチレングリコールメタクリレートヒドロキシエチルフタレート等のポリエステルメタクリレート類等があげられ、これらは単独で用いてもよく、あるいは2種以上を併用することができる。好ましくはスチレン、及びα−メチルスチレンが用いられる。
【0034】
また、本発明の(B)アクリル−スチレン共重合樹脂エマルジョンの具体的なアクリルの単量体としては、α,β−不飽和カルボン酸単量体と、アクリル酸アルキルエステル単量体およびメタクリル酸アルキルエステル単量体があげられる。
【0035】
上記α,β−不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸等があげられ、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸が用いられる。これらのα,β−不飽和カルボン酸単量体は単独で用いてもよく、あるいは2種以上を併用することができる。
【0036】
また、上記アクリル酸アルキルエステル単量体およびメタクリル酸アルキルエステル単量としては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸i−アミル、アクリル酸へキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸i−ノニル、アクリル酸デシル、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシアミルアクリレート、ヒドロキシヘキシルアクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸i−アミル、メタクリル酸へキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸i−ノニル、メタクリル酸デシル、ヒドロキシメチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシアミルメタクリレート、ヒドロキシヘキシルメタクリレート等があげられる。なかでも、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルが、好適に用いられる。これらのアクリル酸エステル単量体、メタクリル酸エステル単量体は、単独で用いてもよく、あるいは2種以上を併用することができる。
【0037】
上記(B)アクリル−スチレン共重合樹脂エマルジョンは、高酸価なものが望ましい。具体的には、酸価(Av)は、100〜150の範囲であることが好ましい。酸価(Av)が100未満では、本発明のフローリング床用フロアーポリッシュ組成物として貯蔵安定性が保てないし、形成したフロアーポリッシュ組成物皮膜が汚染しやすくなる傾向がある。一方、酸価が150を超えてもフロアーポリッシュ組成物が増粘して貯蔵安定性が保てなくなる。
【0038】
また、上記(B)アクリル−スチレン共重合樹脂エマルジョンのガラス転移温度(Tg)は30〜75℃であることが好ましい。ガラス転移温度(Tg)が30℃未満では皮膜が軟らかすぎて、皮膜は汚れやすくなる。一方、75℃を超えると本発明の可塑剤や造膜助剤を加えても、常温で成膜しにくくなり、成膜しても皮膜表面に微細なひび割れ(クラック)現象等が生じて性能が保てなくなる。
【0039】
なお、(B)アクリル−スチレン共重合樹脂エマルジョンは、2種類以上のアクリル樹脂エマルジョン、及び2種類以上のスチレン樹脂エマルジョンが混合されていても良い。その場合はそれぞれの樹脂エマルジョンのガラス転移温度(Tg)と配合分率を加味した算術平均値が上記の範囲に含まれることが好ましい。
【0040】
さらに、上記(B)アクリル−スチレン共重合樹脂エマルジョンは、固形分量10〜50質量%濃度の水性分散液として得られ、本発明のフロアーポリッシュ組成物中に、固形分換算として5〜18質量%の範囲で添加される。上記アクリル系樹脂エマルジョンとしては、以下に述べるような乳化剤、重合開始剤を使用して、広く知られている乳化重合法により製造することが好ましい。
【0041】
まず、乳化剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホ琥珀酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物等のアニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン界面活性剤、スチレンスルホン酸ナトリウム、アルキルアリルスルホン酸ナトリウム、アルキルアリルスルホ琥珀酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルアリルグリセリンエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェノールアルキルグリセリンエーテルサルフェート等の反応性乳化剤、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、水溶性アクリル酸エステル共重合体、水溶性メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体およびそれらの塩、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体およびそれらの塩、ポリアクリルアミド共重合体、ポリメタクリルアミド共重合体等の高分子界面活性剤等が使用できる。これらは単独または2種以上併用して使用することができる。乳化剤の望ましい使用量は、通常単量体100質量%当たり0.05〜5質量%である。乳化剤の使用量が0.05質量%未満では乳化性に乏しく、一方5質量%を超えると耐水性に劣ることがある。
【0042】
また、重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、過酸化水素、ベンゾイルペルオキシド、t−ブチルヒドロキシペルオキシド等の過酸化物などが使用できる。これらは亜硫酸水素ナトリウム、ピロ重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート等の還元剤を併用したレドックス系として使用してもよい。
【0043】
そして、重合反応の温度は、20〜95℃が好ましく、特に40〜90℃であることが好ましい。また、重合時間は1〜10時間であることが好ましい。
【0044】
本発明の(C)コロイダルシリカとしては、3〜500ナノメーター(nm)の微粒子状のシリカ(二酸化ケイ素)を水中に分散したものが上げられる。コロイダルシリカは、通電性を有するので、形成した皮膜の表面電気抵抗値は低目に留まり、静電気による床への埃の付着傾向を緩和することができる。また、皮膜の耐ブラックヒールマーク(BHM)性も向上し、さらには、コロイダリシリカを配合することにより、本発明の組成物の貯蔵安定性を維持する効果も併せ持つ。
これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、特にアルミニウム処理を施したコロイダルシリカを用いることが好ましい。
【0045】
上記(C)のコロイダルシリカは、本発明のフロアーポリッシュ組成物中に、固形分換算として0.2〜5質量%の範囲で添加される。
【0046】
本発明の(D)成分であるワックスエマルジョンとしては、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス、蜜蝋、ラノリン、鯨ロウ等の動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックス等の合成炭化水素系ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス等の合成ワックス、エチレン−アクリル酸共重合体,エチレン−メタクリル酸共重合体,エチレン−マレイン酸共重合体,エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレン−α、β−カルボン酸共重合体等をあげることができる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、特に、耐ブラックヒールマーク(BHM)性、耐スカッフマーク(SM)性、耐滑り性の向上の点から、ポリエチレンワックスを用いることが好ましい。
【0047】
上記(D)のワックスエマルジョンは、本発明のフロアーポリッシュ組成物中に固形分換算で0.5〜4.0質量%含有するのが好ましい。
【0048】
本発明の(E)成分であるアルカリ可溶性樹脂としては、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体,スチレン−メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ロジン変性マレイン酸、シェラック等があげられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、特に、濡れ性、皮膜形成向上の点から、アルカリ可溶性樹脂が単量体としてスチレンを含むことが好ましい。
【0049】
上記(E)成分のアルカリ可溶性樹脂は、本発明のフロアーポリッシュ組成物中に、固形分換算として0.2〜3質量%の範囲で添加される。
【0050】
本発明の(F)成分の可塑剤としては、リン酸トリブチル、リン酸トリ2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレシル、リン酸トリブトキシエチル等のリン酸エステル類やアジピン酸ジブチル等が好適で任意に用いることができる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
環境問題を考慮すると、無リンのアジピン酸ジブチルの使用が特に好ましい。
【0051】
本発明の(G)成分の皮膜形成助剤としては、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール等の多価アルコール類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−メチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル等のグリコールエーテル類、α−アミノアルコール、β−アミノアルコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノイソヘキシルアルコール、N,N,−ジエチルエタノールアミン、N,N,−ジメチルエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、N,N−ブチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノール等のアミン化合物等が上げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
これらのなかでも、特に、造膜性に優れたジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル等の使用が好ましい。
【0053】
本発明のフローリング床用フロアーポリッシュ組成物は、不揮発分濃度(固形分換算濃度)が10〜30質量%であることが好ましく、特に12〜20質量%であることが好ましい。10質量%未満では充分な耐水性、耐水密着性が得られず、また光沢のムラが生じる。一方、30質量%を超えると保存安定性が低下したり、粘度が上昇しモップで塗布する際、塗布しづらく作業性が悪化する。また乾燥性も悪化する。
なお、本発明のフロアーポリッシュ組成物においては、もともと光沢度が高いUV処理されたフローリング床等に塗布されるため、不揮発分濃度の高い組成物を用いると、過剰な光沢度によって僅かな塗りムラでも目立って見え、却って外観を損なうことがある。
また、UV処理されたフローリング床への塗布回数は1平方メートル当たり10〜12mLと少な目で、塗布回数は1〜2回で所望の効果が得られる。
【0054】
また、本発明のフローリング床用フロアーポリッシュ組成物には、上記各成分以外に、適宜、濡れ性向上剤、多価金属化合物、アンモニア,アミン等のpH調整剤、防腐剤、消泡剤、抗菌剤、香料、染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤等を用いることもできる。
【0055】
上記任意成分のうち、濡れ性向上剤としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、高級アルコール硫酸エステルナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル類、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ミリスチン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミドなどの脂肪酸アルカノールアミド類、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤、ラウリルベタインなどのアルキルベタイン型両性界面活性剤、ラウロイルアミドプロピルベタイン等のアミドベタイン型両性イオン界面活性剤、2−アルキル−N−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン、2−アルキル−N−カルボキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリン型両性イオン界面活性剤、アルキルスルホベタイン型両性イオン界面活性剤、ヤシ脂肪酸アミドジメチルヒドロキシプロピルスルホベタインなどのアミドスルホベタイン型両性界面活性剤、N−アルキル−β−アミノプロピオン酸塩、N−アルキル−β−イミノジプロピオン酸塩、β−アラニン型両性界面活性剤等の両性界面活性剤があげられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
これらのなかでも、濡れ性向上の点から、特にフッ素系界面活性剤とコハク酸ジアルキルエステルスルホン酸ナトリウムとの併用が、効率的に表面張力が低下し、濡れ性が向上するので好ましい。
【0057】
また、多価金属化合物としては、酸化亜鉛、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、炭酸亜鉛アンモニア、炭酸カルシウムエチレンジアミン−アンモニア、酢酸亜鉛アンモニア、アクリル酸亜鉛アンモニア、リンゴ酸亜鉛アンモニア、アラニンカルシウムアンモニア等の金属架橋を形成するための多価金属化合物(重金属等)等が好適で任意に用いることができる。
【0058】
なお、ここでいう「多価金属」とは、2価以上の金属であり、具体的には、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、マンガン、銅、カドミウム、鉛、ビスマス、バリウム、アンチモン、ジルコニウム等があげられ、「多価金属化合物」とは、これらの多価金属を含有する化合物である。
【0059】
そして、本発明のフローリング床用フロアーポリッシュ組成物の製造方法としては、例えば、水に、可塑剤、皮膜形成助剤、濡れ性向上剤を添加した後、水性樹脂分散体、コロイダルシリカを混合することにより、好適に製造することができる。ただし、混合の順序は適宜変更できるものであり、上記順序に限定されるものではない。
【実施例】
【0060】
以下に、本発明のフローリング床用フロアーポリッシュ組成物について、実施例と比較例により、本発明を詳細に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、「%」は質量%を意味する。
【0061】
後記の表1〜表6に示す実施例1〜11、および比較例1〜13の組成のフローリング床用フロアーポリッシュ組成物(以下、単に「供試フロアーポリッシュ組成物という」を調製し、貯蔵安定性、密着性、耐水性、耐水密着性、はく離性、及び表面電気抵抗値の6項目について評価した。その結果を後記の表1〜表6に併せて示す。また、各成分は有り姿で示しており、その有効成分量(質量%)を併せて以下に示した。そして表中の成分の総和は、全体(有り姿)で100質量%となっている。
各項目の試験方法は、以下に示すとおりである。
【0062】
(1)貯蔵安定性
〔試験方法〕
JIS K 3920(フロアーポリッシュ試験方法)に準拠し、供試フロアーポリッシュ組成物を調製し容器に入れて密栓し、50℃に保った恒温槽(いすず製作所社製、型式;KAX−730)に14日間保存した後、その外観を目視により観察し、下記の判断基準で貯蔵安定性を評価した。
粘度測定:β型粘度計による(TOKI SANGYO社製、ビスコメーターRB80タイプL、測定条件:測定ローターNo.1、ローター回転数60rpm、フロアーポリッシュ組成物の液温度25℃)
〔判定基準〕
◎:ゲル化、相分離、固形分の沈殿、及び粘度の上昇等は一切なかった。
(粘度値は、10mPa・s以内に留まった)
○:ゲル化、相分離、固形分の沈殿等はなかったが、僅かな粘度の上昇がみられた。
(粘度値は、10より大きく20mPa・s以内であった)
△:ゲル化、相分離、固形分の沈殿等はなかったが、かなりの粘度の上昇がみられた。
(粘度値は、20mPa・sを上まわった)
×:ゲル化、相分離、固形分の沈殿等がみられた。
(粘度値:粘度値が20mPa・sを上回ると、塗布性が低下してモップで塗りづらくなる。)
【0063】
(2)密着性
〔試験方法〕
UV処理仕上げのフローリング片(株式会社ウッドワン社製、品番:S−1)に、供試フロアーポリッシュ用組成物をキムワイプ(登録商標)S−200(クレシア社製)で1回塗布(塗布量:12mL/mの割合)し、室温下に16時間放置した後、試験片表面に粘着テープを手指で強く貼り付け、その直後に一気に剥がし、粘着テープによる皮膜の剥がれ度合いを目視により観察し、下記の判定基準で密着性を評価した。なお、試験は3回繰り返し3回の平均残膜面積として表した。
〔判定基準〕
◎:皮膜は、粘着テープで全く剥離されなかった。残膜面積は100%であった。
○:皮膜は、粘着テープである程度剥離された。残膜面積は51〜99%であった。
△:皮膜は、粘着テープでかなり剥離されてしまった。残膜面積は1〜50%であった。(実用性に欠ける)
×:皮膜は、粘着テープで完全に剥離されてしまった。残膜面積は0%であった。(実用性なし)
【0064】
(3)耐水性
〔試験方法〕
UV処理仕上げのフローリング片(株式会社ウッドワン社製、品番:S−1)に、供試フロアーポリッシュ用組成物をキムワイプ(登録商標)S−200(クレシア社製)で1回塗布(塗布量:12mL/mの割合)し、室温下に16時間放置した後、試験片表面に0.2〜0.3mLの水滴を滴下し、1時間静置した後、キムワイプで水適をよく吸い取ってから、そのまま1時間放置した後の白化の有無を目視により観察し、下記の判定基準で耐水性を評価した。なお、試験は3回繰り返し3回平均の白化度合いとして表した。
〔判定基準〕
○:皮膜は正常で白化現象はなかった。
△:皮膜は僅かに白化した。(実用性に欠ける)
×:皮膜は白化して外観を損ねた。(実用性なし)
【0065】
(4)耐水密着性
〔試験方法〕
UV処理仕上げのフローリング片(株式会社ウッドワン社製、品番:S−1)に、供試フロアーポリッシュ用組成物をキムワイプ(登録商標)S−200(クレシア社製)で1回塗布(塗布量:12mL/mの割合)し、室温下に16時間放置した後、試験片表面に0.2〜0.3mLの水滴を滴下し、室温下に10分間静置した。静置後、キムワイプで水滴をよく吸い取り、滴下部分を完全に乾燥させた後、粘着テープを手指で強く貼り付け、その直後に一気に剥がし、粘着テープによる皮膜の剥がれ度合いを目視により観察し、下記の判定基準で密着性を評価した。なお、試験は3回繰り返し3回の平均残膜面積として表した。
〔判定基準〕
◎:皮膜は、粘着テープで全く剥離されなかった。残膜面積は100%であった。
○:皮膜は、粘着テープである程度剥離された。残膜面積は51〜99%であった。
△:皮膜は、粘着テープでかなり剥離されてしまった。残膜面積は1〜50%であった。(実用性に欠ける)
×:皮膜は、粘着テープで完全に剥離されてしまった。残膜面積は0%であった。(実用性なし)
【0066】
(5)はく離性
〔試験方法〕
コンポジションタイル(東リ社製、商品名:ニューマチコV No.33)に、供試フロアーポリッシュ用組成物をキムワイプ(登録商標)S−200(クレシア社製)で3回塗布(塗布量:12mL/mの割合)し、室温下に放置乾燥した後、さらに恒温槽(温度:50℃、大和科学社製、型式:インキュベーターIS−82)に7日間放置した。その後、フロアーポリッシュ用はく離剤(ジョンソンディバーシー社製、商品名:オールゴーHG低臭、試験倍率:5倍希釈)を用い、ウォッシャビリティー試験機(テスター産業社製、形式:AB−504)にてはく離洗浄を行い、下記の判定基準ではく離性を評価した。
〔判定基準〕
○:皮膜は完全にはく離できた。
△:皮膜は幾分か残留した。(実用性に欠ける)
×:皮膜は、ほとんどはく離できなかった。(実用性なし)
【0067】
(6)表面固有電気抵抗値
〔試験方法〕
ホモジニアスビニルタイル(東リ社製、商品名:マチコSプレーン No.5626)に、供試フロアーポリッシュ用組成物をキムワイプ(登録商標)S−200(クレシア社製)で3回塗布(塗布量:12mL/mの割合)し、室温下に放置乾燥した後、さらに恒温恒湿室(温度:20℃、湿度:60%)に24時間放置した。その後、表面固有電気抵抗測定計(横河ヒューレット・パッカード社製、型式:HIGH RESISTANCE METER 4329A、負荷電圧100V)により規定の方法で表面電気抵抗値を測定し、下記の判定基準で評価した。なお、試験は3回繰り返し3回平均の表面電気抵抗値として表した。
〔判定基準〕
○:皮膜の表面電気抵抗値は、1×1012Ω〜9.9×1012Ωであった。
△:皮膜の表面電気抵抗値は、1×1013Ω〜9.9×1013Ωであった。
×:皮膜の表面電気抵抗値は、1×1014Ω以上であった。
【0068】
なお、以下の表1〜表6に示した成分の詳細は以下のとおりであり、表中の数値は、有り姿で示したものである。固形分、有効成分量(質量%)を「%」と略して示す。
[A成分:ウレタン系樹脂分散体]
・ウレタン系樹脂分散体1(固形分37%):
酸価(Av)17
商品名:ネオレッツR9679(米国、DSMネオレジン社製)
・ウレタン系樹脂分散体2(固形分33%):
酸価(Av)30
商品名:ネオレッツR9660(米国、DSMネオレジン社製)
・ウレタン系樹脂分散体3(固形分31%):
酸価(Av)37
商品名:ネオレッツR940(米国、DSMネオレジン社製)
・ウレタン系樹脂分散体4、比較例(固形分32.5%):
モノマー組成(オレスターQ−5001E 14.6%、ジメチロールプロピオン酸3.5%、イソホロンジイソシアネート11.4%、ヘキサメチレンジアミン5.0%、トリエチルアミン24.0%)、酸価(Av)49。
なお、オレスターQ−5001Eは、三井東圧化学社製のポリエステルポリオールの商品名、分子量1000
・ウレタン系樹脂分散体5、比較例(固形分34.8%):
モノマー組成(分子量1000のポリプロピレングリコール4.9%、ジメチロールプロピオン酸7.0%、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート17.6%、ヘキサメチレンジアミン5.0%、トリエチルアミン48.0%)、酸価(Av)98
・ウレタンアクリル系樹脂エマルジョン6、比較例(固形分35.5%):酸価(Av)9.4
商品名:ネオパックE−125(米国、DSMネオレジン社製)
【0069】
[B成分:アクリル−スチレン共重合樹脂エマルジョン]
・アクリル−スチレン共重合樹脂エマルジョン1(固形分38%):
スチレン含有量51.1%、酸価(Av)143、ガラス転移温度(Tg)57.0℃
商品名:ジャクリルJF−35(ローム・アンド・ハース・ジャパン社製)
・アクリル−スチレン共重合樹脂エマルジョン2(固形分40%):
スチレン含有量39.7%、酸価(Av)126、ガラス転移温度(Tg)53.0℃
商品名:JP7220(BASFジャパン社製)
・アクリル−スチレン共重合樹脂エマルジョン3(固形分38%):
スチレン含有量35.0%、酸価(Av)117、ガラス転移温度(Tg)55.0℃
商品名:JP7213C(BASFジャパン社製)
・アクリル−スチレン共重合樹脂エマルジョン4、比較例(固形分34%):
スチレン含有量35.0%、αーメチルスチレン含有量12.0%、酸価(Av)85、ガラス転移温度(Tg)43.0℃
商品名:C41(BASFジャパン社製)
・アクリル−スチレン共重合樹脂エマルジョン5、比較例(固形分40%):
モノマー組成(スチレン20.0%、メタアクリル酸3.0%、メチルアクリレート37%、エチルアクリレート40%)、酸価(Av)20、ガラス転移温度(Tg)41℃
・アクリル−スチレン共重合樹脂エマルジョン6、比較例(固形分40%):
モノマー組成(スチレン39.7%、メタアクリル酸24.0%、メチルアクリレート9.9%、ブチルアクリレート26.4%)、酸価(Av)156、ガラス転移温度(Tg)59℃
【0070】
[C成分:コロイダルシリカ]
・コロイダルシリカ1:
商品名:スノーテックスC、固形分20%、粒子径10〜20ナノメーター(nm)、アルミニウム処理品(日産化学工業社製)
・コロイダルシリカ2:
商品名:スノーテックスCM、固形分30%、粒子径20〜30ナノメーター(nm)、アルミニウム処理品(日産化学工業社製)
【0071】
[D成分:ワックスエマルジョン]
・ポリエチレンワックスエマルジョン:
商品名:メイカテックスFHP33、固形分35%(明成化学工業社製)
【0072】
[E成分:アルカリ可溶性樹脂]
・アルカリ可溶性樹脂
アクリル酸、スチレン、α−メチルスチレンのオリゴマーのアンモニア水溶液、固形分28%
【0073】
[F成分:可塑剤]
・可塑剤1:
ジブチルアジペート
商品名:DBA(大八化学工業社製)
・可塑剤2:
トリブトキシエチルフォスフェート
商品名:TBXP(大八化学工業社製)
【0074】
[G成分:皮膜形成助剤]
・皮膜形成助剤1:
ジエチレングリコールモノエチルエーテル
商品名:シーホゾルDG−L(日本触媒社製)
・皮膜形成助剤2:
エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル
商品名:エクタソルブEEH(イーストマンケミカルジャパン社製)
【0075】
[任意成分]
・レベリング剤1:
フッ素系界面活性剤
商品名:サーフロンS−131、固形分30%(セイミケミカル社製)
・レベリング剤2:
コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸ナトリウム
商品名:サンモリンOT70、固形分70質量%(三洋化成工業社製)
・消泡剤(シリコーンエマルジョン系):
商品名:KM73E、固形分15.2%(信越化学工業社製)
・アクリルースチレン樹脂の架橋剤(多価金属化合物):
酸化亜鉛アンモニウム錯体水溶液(固形分24%)
【0076】
〔不揮発分濃度の測定方法〕
アルミニウム製のカップに調製液を約2g採り、電子天秤(商品名:HM−300、エー・アンド・ディ社製)でカップの重量を1mgまで正確に秤量した後、精密恒温器(商品名:ファインオーブンDH42、ヤマトエンジニアリング製)に入れ、145℃で30分間放置した後、取り出しシリカゲルが入っているデシケーター中で5分間放置してアルミカップを徐冷した。その後、カップの重量を1mgまで正確に秤量した後、下記の式により不揮発分濃度(W%)を算出した。
W(%)={(W2−W0)/(W1−W0)}×100
但し、W0:アルミニウムカップの重さ、W1:熱乾燥前の重さ(アルミカップ+調製液)、W2:熱乾燥後の重さ(アルミカップ+皮膜化した調製品)
【0077】
〔ガラス転移温度(Tg)の算術平均計算式〕
Tg算術平均=アクリルエマルジョン(a)のTg×アクリルエマルジョン(a)の配合分率+アクリルエマルジョン(b)のTg×アクリルエマルジョン(b)の配合分率
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
【表3】

【0081】
【表4】

【0082】
【表5】

【0083】
【表6】

【0084】
実施例品1〜11から、貯蔵安定性、密着性、耐水性、耐水密着性、はく離性、及び表面電 気抵抗値のいずれの試験項目においても良好な結果であることが判る。
つまり、本発明のフローリング床用フロアーポリッシュ組成物は、(A)カルボン酸および/またはカルボン酸塩を含む酸価(Av)が10〜38のウレタン系樹脂分散体、(B)アクリル−スチレン共重合樹脂エマルジョン、(C)コロイダルシリカ、(D)ワックスエマルジョン、(E)アルカリ可溶性樹脂、(F)可塑剤(G)皮膜形成助剤、及び(H)水を含有することにより、良好な貯蔵安定性、密着性、耐水性、及び耐水密着性を確保し、水や飲料、及び水気を含有する食材などがこぼれたり垂れたりして、そのまま長時間放置されても皮膜は白化せず、また、濡れた床を雑巾やウェスで拭き取っても皮膜が剥がれてしまうことがなく、さらに、表面電気抵抗値が低いため、静電気による埃の付着の少ない等々の効果を発揮することが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボン酸および/またはカルボン酸塩を含む酸価(Av)が10〜38のウレタン系樹脂分散体、(B)アクリル−スチレン共重合樹脂エマルジョン、(C)コロイダルシリカ、(D)ワックスエマルジョン、(E)アルカリ可溶性樹脂、(F)可塑剤、(G)皮膜形成助剤、及び(H)水を含有することを特徴とするフローリング床用フロアーポリッシュ組成物。
【請求項2】
上記(B)アクリル−スチレン共重合樹脂エマルジョンの酸価(Av)が、100〜150で、該共重合樹脂エマルジョンの組成中にスチレン単量体を21質量%以上含むことを特徴とする請求項1に記載のフローリング床用フロアーポリッシュ組成物。
【請求項3】
上記(A)カルボン酸および/またはカルボン酸塩を含む酸価(Av)が10〜38のウレタン系樹脂分散体と、上記(B)酸価(Av)が100〜150で、該共重合樹脂エマルジョンの組成中にスチレン単量体を21質量%以上含むアクリル−スチレン共重合樹脂エマルジョンとの組合せの固形分換算した質量比率が、(A):(B)=1:14〜2:7に設定されていることを特徴とする請求項1、または2に記載のフローリング床用フロアーポリッシュ組成物。
【請求項4】
上記(C)コロイダルシリカが、3〜500ナノメーター(nm)の微粒子状のシリカ(二酸化ケイ素)を水中に分散したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のフローリング床用フロアーポリッシュ組成物。
【請求項5】
上記(D)ワックスエマルジョンが、ポリエチレンワックスエマルジョンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のフローリング床用フロアーポリッシュ組成物。
【請求項6】
上記(E)アルカリ可溶性樹脂が、単量体としてスチレンを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のフローリング床用フロアーポリッシュ組成物。
【請求項7】
上記(F)可塑剤が、アジピン酸エステル、及びリン酸エステルであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のフローリング床用フロアーポリッシュ組成物。
【請求項8】
上記(G)皮膜形成助剤が、グリコールエーテル系の水溶性溶剤であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のフローリング床用フロアーポリッシュ組成物。

【公開番号】特開2008−208272(P2008−208272A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−47916(P2007−47916)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(598028648)ジョンソンディバーシー株式会社 (30)
【Fターム(参考)】