説明

フード補強構造

【課題】フードの裏面側からの荷重に対する耐久性能を高くする。
【解決手段】フード補強構造10では、ヒンジリインフォースメント22において、内フランジ42が底板24から切り抜かれて形成されている。このため、フード12の衝突体保護性能を満たすために、外フランジ40と内フランジ42との車幅方向側幅を確保しつつ外フランジ40及び内フランジ42の底板24からの起立高さを高くしても、底板24の車幅方向側長さを長くできる。これにより、ヒンジ結合部26のみならず溶接部34Bをインナパネル16に結合することで、インナパネル16に底板24を広い範囲で結合でき、フード12の開閉耐久性能をも満たすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフードを補強するフード補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
フード補強構造としては、エンジンフードのフードストライカ固定部分の内部にリインフォースメントを設けると共に、リインフォースメントに2種類の立ち上がり部を形成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなフード補強構造では、エンジンフードの開閉時にエンジンフードへ裏面側(フードストライカ)から入力される荷重に対するエンジンフードの耐久性能を高くできるのが好ましい。
【特許文献1】特開2002−337743公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮し、フードの裏面側からの荷重に対する耐久性能を高くできるフード補強構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載のフード補強構造は、表側のアウタパネルと裏側のインナパネルとを有する車両のフードと、前記フード内に設けられ、前記フードを補強する補強部材と、前記補強部材に設けられ、前記インナパネルに結合される底部と、前記補強部材に設けられ、前記底部から前記アウタパネル側へ起立される第1起立部と、前記底部から切り抜かれて形成され、前記底部から前記アウタパネル側へ起立されると共に、前記第1起立部と対向される第2起立部と、を備えている。
【0006】
請求項2に記載のフード補強構造は、表側のアウタパネルと裏側のインナパネルとを有する車両のフードと、前記フード内に設けられ、前記フードを補強する補強部材と、前記補強部材に設けられ、前記インナパネルに結合される底部と、前記補強部材に設けられ、前記底部から前記アウタパネル側へ起立される第1起立部と、前記底部から切り抜かれて形成され、前記底部から前記アウタパネル側へ起立される第2起立部と、を備え、前記第1起立部及び第2起立部の少なくとも一方が前記アウタパネルに連結されない、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載のフード補強構造では、フードが表側のアウタパネルと裏側のインナパネルとを有しており、フード内に設けられた補強部材がフードを補強している。さらに、補強部材に設けられた底部がインナパネルに結合されており、補強部材に設けられた第1起立部及び第2起立部が、底部からアウタパネル側へ起立されている。このため、フードの上側からの衝突荷重が第1起立部及び第2起立部の少なくとも一方によって吸収される。
【0008】
ここで、第2起立部が底部から切り抜かれて形成されている。このため、底部を広い範囲でインナパネルに結合することができ、フードの裏面側からの荷重に対する耐久性能を高くすることができる。
【0009】
さらに、第1起立部と第2起立部とが対向されている。このため、フードの上側からの衝突荷重を効果的に吸収することができる。
【0010】
請求項2に記載のフード補強構造では、フードが表側のアウタパネルと裏側のインナパネルとを有しており、フード内に設けられた補強部材がフードを補強している。さらに、補強部材に設けられた底部がインナパネルに結合されており、補強部材に設けられた第1起立部及び第2起立部が、底部からアウタパネル側へ起立されている。このため、フードの上側からの衝突荷重が第1起立部及び第2起立部の少なくとも一方によって吸収される。
【0011】
ここで、第2起立部が底部から切り抜かれて形成されている。このため、底部を広い範囲でインナパネルに結合することができ、フードの裏面側からの荷重に対する耐久性能を高くすることができる。
【0012】
さらに、第1起立部及び第2起立部の少なくとも一方がアウタパネルに連結されていない。このため、第1起立部及び第2起立部の少なくとも一方のアウタパネルへの連結によるアウタパネルの損傷を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1には、本発明の実施の形態に係るフード補強構造10が車両前方から見た断面図(図3の1−1線断面図)にて示されており、図2には、フード補強構造10が車両左斜め前方から見た斜視図にて示されている。さらに、図3には、フード補強構造10が適用されて構成された車両のフード12が上方から見た平面図にて示されている。なお、図面では、車両前方を矢印FRで示し、車幅方向外方を矢印OUTで示し、上方を矢印UPで示す。
【0014】
本実施の形態におけるフード12は、車両の前部上面を閉じており、フード12は、表側(上側及び車両外側)のアウタパネル14(図4参照)と、裏側(下側及び車両内側)のインナパネル16と、を有している。アウタパネル14とインナパネル16とは、略全周において結合されており、アウタパネル14とインナパネル16との間には、空間18が形成されている。
【0015】
フード12裏面の車両後側端部は、車幅方向両端部分において、支持部材としてのフードヒンジ20に支持されており、フード12にはフードヒンジ20のヒンジアーム20Aが結合されている。ヒンジアーム20Aは車体側に固定されたヒンジベース(図示省略)に回動可能に支持されており、フード12がヒンジアーム20Aと一体にヒンジベースに対して回動されることで、フード12が開閉可能にされている。
【0016】
フード12内には、フードヒンジ20に支持される部分(車体側に支持される部分)において、補強部材としてのヒンジリインフォースメント22が設けられている。
【0017】
ヒンジリインフォースメント22には、底部としての略矩形板状の底板24が設けられている。
【0018】
底板24の車幅方向外側部分は、矩形板状のヒンジ結合部26にされており、ヒンジ結合部26は、車両後側部及び車両前後方向中間部において、ヒンジアーム20A及びインナパネル16に、ボルト28及びナット30の締結によって結合されている。ナット30は、ヒンジ結合部26の上側(アウタパネル14側)に配置されており、ボルト28のネジ形成部分28A(足部)の先端は、上側へ向けられている。さらに、ヒンジ結合部26は、車両前側部において、インナパネル16にスポット溶接32によって結合されている。
【0019】
底板24のヒンジ結合部26より車幅方向内側部分は、矩形板状の切抜形成部34にされており、切抜形成部34には、矩形状の切抜孔36が貫通形成されている。切抜形成部34には、切抜孔36の車両前側及び車両後側において、矩形板状の延伸部34Aが設けられており、延伸部34Aはヒンジ結合部26から車幅方向内側へ延伸されている。切抜形成部34には、切抜孔36の車幅方向内側において、矩形板状の溶接部34Bが設けられており、溶接部34Bは、車両前側部及び車両後側部において、インナパネル16にスポット溶接32によって結合されている。
【0020】
底板24の切抜形成部34より車幅方向内側部分は、湾曲矩形板状の湾曲部38にされており、湾曲部38は、切抜形成部34から車幅方向内側へ向かうに従い上側へ向かう方向へ湾曲されている。
【0021】
ヒンジリインフォースメント22には、第1起立部としての断面略逆L字形板状の外フランジ40が設けられている。外フランジ40には、矩形板状の外起立部40Aが設けられており、外起立部40Aは、底板24のヒンジ結合部26の車幅方向外側端から上側へ起立されている。外フランジ40には、矩形板状の外縁部40Bが設けられており、外縁部40Bは、外起立部40Aの上端から車幅方向外側へ延伸されている。また、外フランジ40は、アウタパネル14から離間されて、アウタパネル14に連結されていない。
【0022】
ヒンジリインフォースメント22には、第2起立部としての断面略逆L字形板状の内フランジ42が設けられており、内フランジ42は、底板24の切抜孔36から切り抜かれた部分が曲げ変形されて形成されている。内フランジ42には、矩形板状の内起立部42Aが設けられており、内起立部42Aは、底板24のヒンジ結合部26の車幅方向内側端から上側へ起立されている。内フランジ42には、矩形板状の内縁部42Bが設けられており、内縁部42Bは、内起立部42Aの上端から車幅方向内側へ延伸されている。また、内フランジ42は、アウタパネル14から離間されて、アウタパネル14に連結されていない。
【0023】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0024】
以上の構成のフード補強構造10では、図4に示す如く、フード12のヒンジリインフォースメント22配置部分に衝突体44(例えば歩行者の頭部)が上側から衝突した際に、フード12のアウタパネル14が凹み変形されてヒンジリインフォースメント22の外フランジ40及び内フランジ42の少なくとも一方が変形(特に倒れ変形)されることで、衝突体44の衝突荷重が吸収される。この際には、凹み変形されるアウタパネル14にボルト28のネジ形成部分28Aが貫通しないようにすることで、衝突体44を効果的に保護できる。
【0025】
したがって、衝突体44を効果的に保護できる(フード12の衝突体44保護性能を満たす)ためには、図2に示す如く、外フランジ40の車両前後方向側長さL1及び内フランジ42の車両前後方向側長さL2を長くするのみならず、外フランジ40と内フランジ42との車幅方向側幅L3を確保しつつ、外フランジ40の底板24からの起立高さL4及び内フランジ42の底板24からの起立高さL5を高くする必要がある。
【0026】
また、フード12がフードヒンジ20を中心として回動されてフード12が開閉される際(特にフード12が閉じられてヒンジアーム20Aが車体側へ衝突した際)には、フードヒンジ20(ヒンジアーム20A)からフード12のインナパネル16に荷重が入力される。このため、インナパネル16のフードヒンジ20から荷重が入力される部分は、ヒンジリインフォースメント22の底板24が結合されることで、補強されており、インナパネル16に底板24を広い範囲で結合することで、インナパネル16を効果的に補強することができる。
【0027】
したがって、インナパネル16のフードヒンジ20から荷重が入力される部分を効果的に補強する(フード12の開閉耐久性能を満たす)ためには、図2に示す如く、底板24の車両前後方向側長さL6(L1に等しい)を長くするのみならず、底板24(湾曲部38を除く)の車幅方向側長さL7を長くして、インナパネル16に底板24を広い範囲で結合する必要がある。
【0028】
ここで、内フランジ42が、底板24の切抜孔36から切り抜かれた部分によって形成されている。このため、フード12の衝突体44保護性能を満たすために、外フランジ40と内フランジ42との車幅方向側幅L3を確保しつつ外フランジ40の底板24からの起立高さL4及び内フランジ42の底板24からの起立高さL5を高くしても、底板24(湾曲部38を除く)の車幅方向側長さL7をヒンジ結合部26に切抜形成部34を加えた長さにできて長くすることができる。これにより、ヒンジ結合部26のみならず切抜形成部34の切抜孔36より車幅方向内側の溶接部34Bをインナパネル16に結合することで、インナパネル16に底板24を広い範囲で結合することができ、フード12の開閉耐久性能をも満たすことができる。
【0029】
特に、底板24(湾曲部38を除く)の車幅方向側長さL7を長くすることができるため、フードヒンジ20からインナパネル16へ入力される荷重によって、インナパネル16のヒンジ結合部26車幅方向外側端との接触部分P(図1参照)及びインナパネル16の溶接部34Bとのスポット溶接32部分へ作用する曲げモーメントが小さくなる。これにより、インナパネル16のヒンジ結合部26車幅方向外側端との接触部分P及びインナパネル16の溶接部34Bとのスポット溶接32部分の破損を抑制することができる。
【0030】
したがって、インナパネル16の肉厚を厚くすること、インナパネル16の断面係数を大きくすること、及び、底板24とインナパネル16との結合強度(スポット溶接32部分の数)を増加させることを不要にすることができる。
【0031】
また、ヒンジリインフォースメント22では、外フランジ40と内フランジ42とが互いに対向されている。このため、フード12の上側からの衝突体44の衝突荷重を効果的に吸収することができる。
【0032】
さらに、外フランジ40と内フランジ42との車幅方向側幅L3を調整することで、フード12の上側からの衝突体44の衝突荷重の吸収量を容易に調整することができる。
【0033】
また、外フランジ40及び内フランジ42がフード12のアウタパネル14に連結されていない。このため、外フランジ40及び内フランジ42のアウタパネル14への連結によるアウタパネル14の損傷を抑制することができる。
【0034】
なお、本実施の形態では、フード12のフードヒンジ20に支持される部分の内部に補強部材(ヒンジリインフォースメント22)を設けた構成としたが、これに限らず、フード12の車体側に支持される部分(例えばフードロック機構を構成するストライカの取付部分)の内部に補強部材を設けた構成であればよい。
【0035】
また、本実施の形態では、内フランジ42を底板24をから切り抜いて形成した構成としたが、外フランジ40及び内フランジ42の少なくとも一方を底板24をから切り抜いて形成した構成であればよい。
【0036】
さらに、本実施の形態では、外フランジ40及び内フランジ42がアウタパネル14に連結されない構成としたが、外フランジ40及び内フランジ42の少なくとも一方がアウタパネル14に連結されない構成であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態に係るフード補強構造を示す車両前方から見た断面図(図3の1−1線断面図)である。
【図2】本発明の実施の形態に係るフード補強構造を示す車両左斜め前方から見た斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るフード補強構造が適用されて構成された車両のフードを示す上方から見た平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るフード補強構造におけるフードへの衝突体衝突時を示す車両前方から見た断面図である。
【符号の説明】
【0038】
10 フード補強構造
12 フード
14 アウタパネル
16 インナパネル
22 ヒンジリインフォースメント(補強部材)
24 底板(底部)
40 外フランジ(第1起立部)
42 内フランジ(第2起立部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側のアウタパネルと裏側のインナパネルとを有する車両のフードと、
前記フード内に設けられ、前記フードを補強する補強部材と、
前記補強部材に設けられ、前記インナパネルに結合される底部と、
前記補強部材に設けられ、前記底部から前記アウタパネル側へ起立される第1起立部と、
前記底部から切り抜かれて形成され、前記底部から前記アウタパネル側へ起立されると共に、前記第1起立部と対向される第2起立部と、
を備えたフード補強構造。
【請求項2】
表側のアウタパネルと裏側のインナパネルとを有する車両のフードと、
前記フード内に設けられ、前記フードを補強する補強部材と、
前記補強部材に設けられ、前記インナパネルに結合される底部と、
前記補強部材に設けられ、前記底部から前記アウタパネル側へ起立される第1起立部と、
前記底部から切り抜かれて形成され、前記底部から前記アウタパネル側へ起立される第2起立部と、
を備え、
前記第1起立部及び第2起立部の少なくとも一方が前記アウタパネルに連結されない、
ことを特徴とするフード補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−308060(P2007−308060A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140411(P2006−140411)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】