説明

ブタジエン/ビニル芳香族コポリマーを臭素化する方法

所定の4級アンモニウム三臭化物を臭素化剤として用いてブタジエンコポリマーを臭素化する。臭素化プロセスは穏やかな条件下で容易に進行し、そして優れた熱安定性を有する臭素化生成物を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、米国特許仮出願第60/838,087(2006年8月16日出願)および60/902,204(2007年2月20日出願)の利益を主張する。
【0002】
本発明は、ブタジエンコポリマー、例えばスチレンとブタジエンとの臭素化ブロック、ランダムまたはグラフトコポリマーの臭素化方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ヘキサブロモシクロドデカン等の臭素化化合物は、種々のポリマー系用の難燃剤(FR)添加物として一般的に使用される。FR添加剤はポリマー系の限界酸素指数(LOI)を増大させ、そのようなポリマー系から形成された物品が標準燃焼試験を通過できるようにする。ヘキサブロモシクロドデカンは規制下および公的圧力下にあり、これがその使用に制限を与えるため、そのための代替物を見出す動機がある。ヘキサブロモシクロドデカンの代替の1つの候補は臭素化されたポリブタジエンのポリマーまたはコポリマーである。
【0004】
実際のFR添加剤は、溶融加工条件(この間に、FR添加剤は230〜250℃以上という高温に暴露される場合がある)にさらされる場合にも受ける熱分解が極めて少なく、好ましくは全くないための十分な熱安定性を有さなければならない。FR添加剤は更に他の鍵となる特徴、例えば他のポリマーおよび他の添加剤(特に発泡剤)との親和性等を有さなければならない。ポリマー発泡用途において、FR添加剤は、発泡プロセスまたは生成した気泡、特に発泡セル構造および発泡セルサイズにおいて顕著な負の影響を有さないのがよい。
【0005】
臭素化されたポリブタジエンのポリマーおよびコポリマーは公知物質である。これらのポリマーの高温での安定性は、これらをポリマー系中でFR添加剤として使用するのには適切でない傾向がある。しばしば、臭素化されたポリブタジエンポリマーが温度200℃またはこれより更に低温にさらされる場合に顕著な分解が見られる。230℃まで、およびより好ましくは240℃まで、および更により好ましくは250℃以上までの温度安定性が所望される。
【0006】
ポリブタジエンホモポリマーを臭素化するための1つの方法は、フランス国特許第FR1506872号に記載されている。臭素化は、元素臭素を溶媒混合物としての四塩化炭素およびブチルアルコールとともに用いて行なう。ドイツ国特許第DD137308号は、元素臭素を四塩化炭素およびメタノールまたはエタノールとともに反応混合物として用いた、「低粘度」(3000〜4000センチポイズ)のポリブタジエンホモポリマーの臭素化を記載する。
【0007】
他のプロセスは、アルケン、ジエンまたはポリブタジエンを臭素化するために用いられてきた。G.Dall’Asataらは、Die Makromolekulare Chemie,154,279−290(1972)にて、塩化メチレンを溶媒として用いて不所望のフリーラジカル反応を回避することを記載する。H.Kawaguchiらは、Polymer,26,1257−1264(1985)にて、0℃かつ酸素不存在下で、塩化メチレンとテトラヒドロフラン(THF)との混合物中、希1,2−ジブロモエタンを用いて、ハイシス−1,4−ポリブタジエンを臭素化することを記載する。Ceausescuらは、J.Macromolecular Science−Chemistry,A22(5−7),803−818(1985)にて、元素臭素で調製された臭素化ポリブタジエンの熱安定性が乏しく、かつ室温であっても臭素を放出してピンクまたは茶色になると思われることを観察する。Ceausescuの観察は、低い(5%)および高い(60%)1,2−異性体量の両者を有する臭素化ポリブタジエンに関係する。
【0008】
三臭化アンモニウム、例えば三臭化ピリジニウムは、穏やかで選択的な臭素化剤として公知である。例えばAdvanced Organic Chemistry(March,2nd Edition,1977),p.741を参照のこと。三臭化アンモニウムは固体物質である傾向があり、取り扱いが元素臭素よりも容易である。臭素化反応において用いられてきた他の三臭化アンモニウムとしては、テトラメチルアンモニウムブロミド(Journal of Organic Chemistry,28,3256(1963))、フェニルトリメチルアンモニウムトリブロミド(Chem.Letters,第627頁(1987);Tetrahedron,50,第6433頁(1994))、セチルトリメチルアンモニウムトリブロミドおよびテトラブチルアンモニウムトリブロミド(Journal of the American Chemical Society(JACS),73,第4525頁(1951)、ならびに1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−テトラブチルアンモニウムトリブロミド(Journal of Organic Chemistry,57,第2740頁(1992))が挙げられる。リサイクル可能なトリブロミド反応物質1,2−ジピリジニウムトリブロミド−エタン(DPTBE)は、回収および再利用できる溶媒不存在条件下で穏やかで効率的な臭素化剤として報告されている。Journal of Organic Chemistry,70,第4267頁(2005)を参照のこと。
【0009】
Tet Letters,35,7429−7432(1994)は、水相と有機基質を含む2相系中での穏やかで選択的な臭素化を報告する。水相は過酸化水素、触媒量のメタバナジン酸アンモニウム(NH4VO3)および臭化カリウムを含む。有機基質または二重結合含有化合物はクロロホルム中に溶解する。臭素化は報告によれば末端オレフィンの二臭化物について98%超の収率を与える。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、一側面において、a)少なくとも1種のフェニルトリアルキルアンモニウムトリブロミド、ベンジルトリアルキルアンモニウムトリブロミドまたはテトラアルキルアンモニウムトリブロミド、b)5〜90質量パーセントの重合ビニル芳香族モノマー単位と10〜95質量パーセントの重合ブタジエン単位とを含み、重量平均分子量が少なくとも1000である、少なくとも1種のブタジエン/ビニル芳香族コポリマー、および、c)ブタジエン/ビニル芳香族コポリマーのための少なくとも1種の溶媒、を含む反応混合物を、ブタジエン/ビニル芳香族コポリマー中の非芳香族二重結合の少なくとも50パーセントを臭素化するのに十分な条件に供することを含む方法である。
【0011】
他の側面において、本発明は、a)少なくとも1種のフェニルトリアルキルアンモニウム一臭化物塩、ベンジルトリアルキルアンモニウム一臭化物塩またはテトラアルキルアンモニウム一臭化物塩、b)5〜90質量パーセントの重合ビニル芳香族モノマー単位と10〜95質量パーセントの重合ブタジエン単位とを含み、重量平均分子量が少なくとも1000である、少なくとも1種のブタジエン/ビニル芳香族コポリマー、および、c)ブタジエン/ビニル芳香族コポリマーのための少なくとも1種の溶媒、を含む反応混合物を臭素とブレンドし、得られるブレンド物を、ブタジエン/ビニル芳香族コポリマー中の非芳香族二重結合の少なくとも50パーセントを臭素化するのに十分な条件に供することを含む方法である。
【0012】
他の側面において、本発明は、a)少なくとも1種のフェニルトリアルキルアンモニウム一臭化物塩、ベンジルトリアルキルアンモニウム一臭化物塩またはテトラアルキルアンモニウム一臭化物塩、b)5〜90質量パーセントの重合ビニル芳香族モノマー単位と10〜95質量パーセントの重合ブタジエン単位とを含み、重量平均分子量が少なくとも1000である、少なくとも1種のブタジエン/ビニル芳香族コポリマー、および、c)ブタジエン/ビニル芳香族コポリマーのための少なくとも1種の溶媒を含む反応混合物を臭素とブレンドし、ブタジエン/ビニル芳香族コポリマー中の非芳香族二重結合を臭素化するのに十分な条件下でブレンド工程を行なうことを含む方法である。
【0013】
他の側面において、本発明は、a)少なくとも1種のフェニルトリアルキルアンモニウム一臭化物塩、ベンジルトリアルキルアンモニウム一臭化物塩またはテトラアルキルアンモニウム一臭化物塩、b)5〜90質量パーセントの重合ビニル芳香族モノマー単位と10〜95質量パーセントの重合ブタジエン単位とを含み、重量平均分子量が少なくとも1000である、少なくとも1種のブタジエン/ビニル芳香族コポリマー、および、c)ブタジエン/ビニル芳香族コポリマーのための少なくとも1種の溶媒を含む反応混合物を臭素と連続的または間欠的にブレンドし、ブタジエン/ビニル芳香族コポリマー中の非芳香族二重結合の少なくとも50パーセントを臭素化するのに十分な条件下で該連続的または間欠的なブレンド工程を行なうことを含む方法である。
【0014】
本発明の種々の側面の臭素化プロセスは、穏やかな条件下、ポリマー中の芳香環の臭素化を殆どまたは全く伴わない脂肪族炭素−炭素二重結合の臭素化に対する優れた選択性での容易かつ迅速な臭素化、およびポリマー中の1,2−ブタジエン単位の良好な臭素化等の幾つかの利点を与える。加えて、臭素化ポリマーは、下記の熱重量分析(TGA)法によって示される優れた熱安定性を示す傾向がある。本発明に従って形成される臭素化ポリマーは、多くの場合、下記のTGA法に従って評価される5%重量減少温度200℃超、より典型的には230℃超、多くの場合240℃超およびある場合には250℃以上を示す。本発明の特定の側面は、連続的または半連続的な操作を容易に行なうのに役立つ。本発明の他の利点は、ハロゲン化アルカン、3級炭素原子に結合する水素原子を含まない環状アルカンおよびハロゲン化芳香族化合物等の溶媒が通常好ましいことであり;これらの溶媒の使用によって、酸素化溶媒を用いる場合に時々起こるようなポリマー上のエーテル基の形成が排除される。驚くべきことに、ハロゲン化溶媒を用いる場合、ハロゲン交換は、80℃超の高温を用いる特定の場合を除いて溶媒と臭素化ポリマーとの間では殆ど生じないと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図面は、本発明に係る連続プロセスの態様の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ブタジエン/ビニル芳香族コポリマー出発物質は、ブタジエンおよび少なくとも1種のビニル芳香族モノマーのランダム、ブロックまたはグラフトコポリマーである。「ビニル芳香族」モノマーは、芳香環の炭素原子に直接結合した重合可能なエチレン性不飽和基を有する芳香族化合物である。ビニル芳香族モノマーとしては、スチレンおよびビニルナフタレン等の非置換物質、更にエチレン性不飽和基で置換され(例えばアルファ−メチルスチレン等)および/または環置換されている化合物が挙げられる。環置換されたビニル芳香族モノマーとしては、芳香環の炭素原子に直接結合したハロゲン、アルコキシル、ニトロまたは非置換もしくは置換アルキル基を有するものが挙げられる。このような環置換されたビニル芳香族モノマーの例としては、2−または4−ブロモスチレン、2−または4−クロロスチレン、2−または4−メトキシスチレン、2−または4−ニトロスチレン、2−または4−メチルスチレンおよび2,4−ジメチルスチレンが挙げられる。好ましいビニル芳香族モノマーはスチレン、アルファ−メチルスチレン、パラ−メチルスチレン、およびこれらの混合物である。
【0017】
「ビニル芳香族単位」は、ビニル芳香族モノマーが重合される場合に形成される出発物質中の繰り返し単位を意味する。出発コポリマーは5〜90質量パーセントの重合ビニル芳香族モノマー単位を含む。
【0018】
ブタジエン/ビニル芳香族コポリマーは、少なくとも10質量%の重合ブタジエンを含む。ブタジエンは重合して2種の繰り返し単位を形成する。1種は本明細書で「1,2−ブタジエン単位」といい、
【0019】
【化1】

【0020】
の形をとるため、側鎖不飽和基をポリマーに導入する。第2の型は本明細書で「1,4−ブタジエン」単位といい、−CH2−CH=CH−CH2−の形をとり、ポリマー主鎖中に不飽和を導入する。ブタジエン/ビニル芳香族ポリマーは、少なくとも幾つかの1,2−ブタジエン単位を含む。ブタジエン/ビニル芳香族ポリマーのブタジエン単位のうち、少なくとも10%、好ましくは少なくとも15%およびより好ましくは少なくとも20%およびさらにより好ましくは少なくとも25%が1,2−ブタジエン単位である。1,2−ブタジエン単位は、ブタジエン/ビニル芳香族コポリマー中のブタジエン単位の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%または少なくとも70%を構成できる。1,2−ブタジエン単位の割合は、コポリマー中のブタジエン単位の85%超または更に90%超であることができる。便宜上、1,2−ブタジエン単位がブタジエン単位総量の少なくとも50%を構成するコポリマーを本明細書において「ハイ1,2−ブタジエンコポリマー」ということもある。
【0021】
制御された1,2−ブタジエン量でブタジエン/ビニル芳香族ポリマーを製造する方法は、J.F.HendersonおよびM.SzwarcによってJournal of Polymer Science(D,Macromolecular Review),Volume 3,第317頁(1968)、Y.Tanaka,Y.Takeuchi,M.KobayashiおよびH.TadokoroによってJ.Polym.Sci.A−2,9,43−57(1971),J.Zymona,E.SantteおよびH.HarwoodによってMacromolecules,6,129−133(1973),ならびにH.AshitakaらによってJ.Polym.Sci.,Polym.Chem.,21.1853−1860(1983)に記載されている。
【0022】
ブタジエン/ビニル芳香族コポリマーは、ランダム型、ブロック型(例えば、ジブロック型またはトリブロック型等のマルチブロック)またはグラフト型のコポリマーであることができる。スチレン/ブタジエンブロックコポリマーは、商業的な量で広範に入手できる。Dexco Polymersから商号VECTOR(商標)で入手できるものは好適である。スチレン/ブタジエンランダムコポリマーは、A.F.HalasaによってPolymer,Volume 46,第4166頁(2005)に記載されるプロセスに従って調製できる。スチレン/ブタジエングラフトコポリマーは、A.F.HalasaによってJournal of Polymer Science(Polymer Chemistry Edition),Volume 14,第497頁(1976)に記載される方法に従って調製できる。スチレン/ブタジエンランダムおよびグラフトコポリマーはまた、HsiehおよびQuirkによってAnionic Polymerization Principles and Practical Applications,Marcel Dekker,Inc.,New York,1996の第9章に記載される方法に従って調製できる。
【0023】
ブタジエン/ビニル芳香族ポリマーは、ブタジエンおよびビニル芳香族モノマー以外のモノマーを重合させることによって形成される繰り返し単位を含むこともできる。このような他のモノマーとしては、オレフィン、例えばエチレンおよびプロピレン、アクリルまたはアクリレートモノマー、例えばメチルメタクリレート、メチルアクリレート、アクリル酸等が挙げられる。これらのモノマーは、ビニル芳香族モノマーおよび/もしくはブタジエンとランダムに重合でき、重合してブロックを形成でき、またはブタジエン/ビニル芳香族コポリマー上にグラフトできる。
【0024】
ブタジエン/ビニル芳香族コポリマーの重量平均分子量(MW)は、1,000〜400,000、好ましくは2,000〜300,000、より好ましくは5,000〜200,000および更により好ましくは、少なくとも市販で入手可能であるという観点から、50,000〜175,000の範囲である。本発明の目的のために、分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される、ポリスチレン標準に対応した、見掛けの分子量である。GPC分子量評価は、直列に接続した2つのPolymer Laboratories PLgel 5マイクロメートルMixed−CカラムおよびAgilent G1362A屈折率検出器を備えたAgilent 1100シリーズ液体クロマトグラフを用い、溶離液として、1ml/分の速度で流れ温度35℃に加熱されるテトラヒドロフラン(THF)を用いて行なうことができる。
【0025】
最も好ましい型のブタジエン/ビニル芳香族コポリマーは、1種以上のポリスチレンブロックおよび1種以上のポリブタジエンブロックを含むブロックコポリマーである。これらの中で、中心ポリブタジエンブロックおよび末端ポリスチレンブロックを有するブロックコポリマーが特に好ましい。
【0026】
臭素化反応は、ブタジエン/ビニル芳香族コポリマーのための溶媒の存在下で行なう。好適な溶媒としては、エーテル、例えばテトラヒドロフラン;ハロゲン化アルカン、例えば四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ブロモクロロメタンおよび1,2−ジクロロエタン;炭化水素、例えばシクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタンおよびトルエン、ならびにハロゲン化芳香族化合物、例えばブロモベンゼン、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼンが挙げられる。好ましい溶媒は沸点(大気圧で)100℃未満(特に80℃未満)が実質的に水中に混合せず、非プロトン性で、かつ3級炭素原子に結合する水素原子または酸素のいずれも含まない。従って、ハロゲン化溶媒および炭化水素溶媒は酸素含有溶媒と比べて好ましい。穏やかな反応条件を用いる場合には、ハロゲン交換反応が顕著な量では起こらず、そしてこの理由で塩素化溶媒は本発明において用いるのに極めて好適であることを見出した。ハロゲン化アルカン、3級炭素原子に結合する水素原子を有さない環状アルカン及びハロゲン化芳香族化合物は、特に好ましい溶媒である。特に好ましい溶媒は水よりも揮発性であり、従って容易に水から除去される。2つの特に好ましい溶媒はジクロロエタンおよびシクロヘキサンである。
【0027】
臭素化剤は、フェニルトリアルキルアンモニウムトリブロミド、ベンジルトリアルキルアンモニウムトリブロミド、またはテトラアルキルアンモニウムトリブロミドである。これらの例としては、フェニルトリメチルアンモニウムトリブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムトリブロミド、テトラメチルアンモニウムトリブロミド、テトラエチルアンモニウムトリブロミド、テトラプロピルアンモニウムトリブロミド、テトラ−n−ブチルアルミニウムトリブロミド等が挙げられる。
【0028】
三臭化物臭素化剤は、対応する4級アンモニウム一臭化物塩を元素臭素と混合することによって調製できる。一臭化物塩は通常水溶性であり、よって三臭化物を形成する簡便な手法は、元素臭素を一臭化物塩の水性溶液に添加することである。この反応は、ほぼ室温で良好に起こるが、所望であればより高温またはより低温を用いることもできる。三臭化物は、水相から沈殿しやすく、よって任意の便宜的な固液分離法によって液相から回収できる。三臭化物は、上記の塩素化溶媒等の有機溶媒中に可溶であり、そして所望であればこのような溶媒中に溶解させてブタジエン/ビニル芳香族コポリマーおよび臭素化溶媒とのブレンドを促進できる。
【0029】
加えて、三臭化物は、以下でより完全に説明するように、溶媒および/またはブタジエン/ビニル芳香族コポリマーの存在下、in situで形成できる。この方法は、ポリマーに添加される臭素を運ぶ働きをする高価な化合物の使用量が少ないという利点を有し、そしてこれは好ましい。
【0030】
反応は、ブタジエン/ビニル芳香族コポリマー、溶媒および4級アンモニウム三臭化物を一緒に混合し、そして所望の割合のブタジエン単位が臭素化されるまで混合物を反応させることによって行なう。三臭化物およびブタジエン/ビニル芳香族コポリマーを最初に混合する場合を除いて、添加量は特に重要でなく、顕著な反応が起こる前に溶媒を添加することが好ましい。
【0031】
溶媒は、反応の条件下でブタジエン/ビニル芳香族コポリマーを溶解させるのに十分な量で用いる。溶媒中のコポリマーの濃度は、例えば、1〜50質量%、特に5〜35質量%の範囲であることができる。コポリマー中のブタジエン単位のモル当たり約0.5〜約5モルの三臭化物臭素化剤は好適に用いられ、より好適な量は、約0.9〜約2.5モル/モルであり、そして更により好適な量は1〜1.5モル/モルである。
【0032】
一般的に、臭素化を行なうためには穏やかな条件が必要とされるのみである。臭素化温度は、−20℃〜100℃の範囲であることができ、そして好ましくは、0℃〜85℃、そして特に10℃〜40℃である。100℃超の温度も使用できるが、必要でなく、そして選択性の損失および/または副生成物の増大を招来する場合がある。反応が進行するにつれて、三臭化物は対応する4級アンモニウム一臭化物塩に変換される。
【0033】
反応時間は、所望の量の臭素化を実現するのに十分である。典型的には、コポリマー中のブタジエン単位の少なくとも25%で臭素化が起きる。より好ましくは、ブタジエン単位の少なくとも50%およびより好ましくは少なくとも70%および更により好ましくは少なくとも80%が臭素化される。ブタジエン単位の100%以下を臭素化できる。好ましくは、ブタジエン単位の95%以下または99%以下が臭素化される。臭素化の程度はプロトンNMR法を用いて評価できる。残存二重結合パーセント、重合したスチレンモノマー量および1,2−異性体量は、適切なプロトン(残存二重結合プロトンは、4.8〜6ppmの間(テトラメチルシラン(TMS)に対して)であり、スチレン芳香族プロトンは6.2〜7.6ppmの間であり、そして臭素化されたポリブタジエンについてのプロトンは3.0〜4.8ppmの間である)によるシグナルの積分面積を比較することによって評価できる。Varian INOVA(商標)300 NMRスペクトロメーターまたは同等の装置がこのような評価に有用であり、遅延時間30秒で操作して定量的積分のためにプロトンの緩和を最大化する。重クロロホルムまたはd5−ピリジン等の重陽子置換溶媒が、NMR分析用に試料を希釈するのに好適である。
【0034】
特に、押出物品(発泡材、フィルム、繊維、成形体等)の製造のために臭素化コポリマーを他のポリマー(ポリビニル芳香族ポリマー等)とブレンドする場合、臭素化ポリマー中の残存二重結合は、不所望の架橋反応を招来する可能性がある。架橋は、ゲル形成、および加工設備の汚染を招来する場合がある。ゲルの存在は、物理的特性の低下、表面もしくは光学特性の欠陥または着色の増大を招来する場合がある。特にブレンド物を発泡させる場合、ゲルは、ブレンド物の溶融加工の能力に影響する場合がある。
【0035】
特定の溶媒および特定のコポリマーに応じて、コポリマーが臭素化されるにつれて反応混合物中でのコポリマーの溶解性がより低くなる場合があり、そして反応混合物から沈殿する場合がある。反応中に形成する4級アンモニウム一臭化物塩が反応混合物から沈殿する場合もある。
【0036】
本発明の特定の態様において、4級アンモニウム三臭化物は、元素臭素および対応する4級アンモニウム一臭化物塩を別個に添加することによってin situで反応混合物中に形成される。臭素および一臭化物塩は、一緒に混合される際に三臭化物を形成し、次いで、得られる三臭化物はブタジエン/ビニル芳香族コポリマーと反応してコポリマーを臭素化し、そして一臭化物塩を再生すると考えられる。この一連の反応で元素臭素が消費されるにつれて、更なる臭素を反応混合物に連続的または間欠的に添加して三臭化物を再生成して反応を維持してもよい。
【0037】
in situで4級アンモニウム三臭化物を形成する能力は、連続的または半連続的なプロセスの操作に役立ち、ここでは、反応において三臭化物が消費されて一臭化物塩が再生されるにつれて、元素臭素を反応混合物中に連続的または任意の数の段階で供給する。元素臭素は、再生した一臭化物塩と組合せて三臭化物を再形成する。半連続または連続のプロセスはまた、臭素化コポリマーと4級アンモニウム一臭化物塩との間の溶解性の差が大きい場合に好ましい。例えば、臭素化反応で使用される溶媒中で臭素化コポリマーが不溶性または若干溶解性であるのみであるが一臭化物塩が溶媒中で可溶である場合、一臭化物塩が溶液中に残存する一方で臭素化ポリマーが形成につれて沈殿するように条件を選択できる。このような条件下で、未使用出発ポリマーは、連続的または間欠的に反応ゾーンに臭素化ポリマー沈殿物として導入できる。よって、特に好ましい方法において、未使用出発コポリマーおよび元素臭素は、溶媒と4級アンモニウム一臭化物塩とを収容する反応ゾーンに連続的または間欠的に添加され、そして臭素化ポリマーは、反応混合物から沈殿するか、またはそうでなければ連続的または間欠的にそこから取出される。沈殿した臭素化コポリマーは、固/液分離法によって反応混合物から容易に取出される。
【0038】
これに代えて、臭素化ポリマーが溶解したままである一方で一臭化物塩が反応溶液から沈殿してもよい。このような場合の例は、4級アンモニウム一臭化物塩としてテトラエチルアンモニウムモノブロミドを用い、かつ溶媒として1,2−ジクロロエタンまたは塩化メチレンのいずれかを用いる場合である。これらの溶解性の利点を有する連続プロセスの寄与としては、沈殿した4級アンモニウム一臭化物塩を再循環させてプロセスを通じて(スラリーとしてまたは水性溶液としてのいずれかで)戻し、可溶性三臭化物を再生させることが挙げられる。アンチソルベントを用い、水蒸気蒸留または沈殿でプロセス溶液から可溶性ポリマーを単離できる。上記のように、出発ポリマーおよび臭素を連続的または間欠的に反応混合物中に添加して4級アンモニウム三臭化物を連続的に再生させることができる。
【0039】
幾つかの具体的な連続プロセス体系を行なうのに好適な設備を図1に示す。図1において、プロセス設備は、水性テトラエチルアンモニウムモノブロミドを収容するタンク1、連続反応器2、溶解したポリブタジエンコポリマーのための保持タンク3、ろ過装置4、および沈殿装置または揮発物除去装置5を含む。テトラエチルアンモニウムモノブロミドは、臭素をタンク1内(またはタンク1と連続反応器2とを接続する管路内)に添加することによって、プロセスを通じて連続的に再循環させ、テトラエチルアンモニウムトリブロミドを発生させ、これは水中に不溶であるが反応溶媒中に可溶である。反応溶媒をタンク1に連続的に供給してテトラエチルアンモニウムトリブロミドを溶解させ、これを、連続反応器2内に導入される安定流としてサイホン抜きする。溶解したテトラエチルアンモニウムトリブロミド溶液とともに、溶解したブタジエンコポリマーもまた連続的に保持タンク3から連続反応器2に添加する。テトラエチルアンモニウムトリブロミドおよびブタジエンコポリマーの流れを混合して連続反応器3を通じて続ける。テトラエチルアンモニウムモノブロミドは連続反応器3内で再形成されるにつれて溶液から沈殿し、これにより反応混合物はスラリーになる。フィルター4は、固形分をタンク1内に流し戻し、一方溶解した臭素化ポリマーは、フィルター4を経て沈殿装置または揮発物除去装置5に通過する。ここで溶媒を回収し、蒸留ユニット6内で蒸留して、再循環させてタンク1および保持タンク3に戻す。
【0040】
テトラブチルアンモニウムトリブロミドはまた、このようなプロセスで臭素化剤として使用できる。その場合、再生されたテトラブチルアンモニウムブロミドよりむしろ臭素化ポリマーが溶液から沈殿する。従って、この場合、ポリマー固体はフィルター4で回収し、濃縮ユニット5に送る。これはポリマー固体を溶媒から分離する。テトラブチルアンモニウムモノブロミドの濃縮溶液は、三臭化物への再生のためにタンク1に戻す。
【0041】
これに代えて、タンク1は、テトラエチルアンモニウムモノブロミドのスラリーを反応溶媒中(説明したばかりの水性溶液よりも)に保持することができる。蒸留ユニット6からタンク1に反応溶媒が再循環されるにつれて、テトラエチルアンモニウムモノブロミド固体は、フィルター4からタンク1に再循環され、臭素がタンク1に添加され、テトラエチルアンモニウムトリブロミドが形成される。三臭化物は反応溶媒中で可溶であるため、スラリーがタンク1内に形成される。スラリーは、溶解したテトラエチルアンモニウムトリブロミドを含む上層液を含む。上層液は、反応のためのテトラエチルアンモニウムトリブロミドの原料として連続反応器2に与えられる。繰り返すが、このようなプロセスにおいて臭素化剤としてテトラブチルアンモニウムトリブロミドを使用できる。テトラブチルアンモニウムモノブロミドよりむしろポリマーが沈殿する。従って、この場合、ポリマー固体はフィルター4で取出されて濃縮器ユニット5に送られ、これはポリマー固体を溶媒から分離する。テトラブチルアンモニウムモノブロミドの濃縮溶液は、三臭化物への再生のためにタンク1に戻す。
【0042】
幾つかの態様において、4級アンモニウムモノブロミドを固体支持体に固定し、そして支持体の表面で三臭化物を形成させる。次いで反応条件下で出発ポリマーを支持体と接触させつつ通過させて臭素化を生じさせる。
【0043】
幾つかの点で、上記の条件下で臭素化反応は高度に選択的である傾向がある。芳香環上では臭素化が殆どまたは全く起こらない。そうでなければ、1,2−および1,4−ブタジエン単位の両者の炭素−炭素二重結合で臭素化が起こる傾向があり、そして臭素化は、3級炭素原子で臭素化が殆ど生じないように起こる傾向がある。臭素化は、3級炭素原子での不所望の臭素の導入の傾向があるフリーラジカル機構よりもむしろイオン的機構を介して生じると考えられる。これらの3級臭素は、臭素化コポリマーの温度安定性に不利に影響すると考えられる。
【0044】
臭素化ポリマーが反応混合物中で不溶性である場合、生成物は、任意の簡便な固/液分離法、例えばろ過、デカンテーション等を用いて回収できる。臭素化ポリマーが反応混合物中での溶解性を維持している場合、これは好適な方法、例えば溶媒の蒸留、または臭素化コポリマーを不溶性にさせて沈殿させるアンチソルベントの添加等で混合物から簡便に単離できる。このようなアンチソルベントの例としては、メタノール、エタノールならびに1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノールおよびt−ブタノール等の低級アルコールが挙げられる。
【0045】
特定用途についての所望または必要に応じて、単離されたポリマーを精製して残存する臭素、臭素化剤、溶媒および副生成物を除去できる。溶解したポリマーをシリカゲルまたはイオン交換樹脂床に通すことによって臭化物塩を除去できる。亜硫酸水素ナトリウム水溶液でポリマーを洗浄して、存在する場合がある未反応臭素化剤を中和またはクエンチできる。これは、残存する臭素または臭素化合物による、ポリマー中に存在する場合があるいずれのオレンジ色も効果的に除去または排除する。これに代えて、ポリマー溶液を水または塩溶液、例えば重炭酸ナトリウム水で洗浄して残存臭化物種を除去できる。
【0046】
本発明の方法は、優れた熱安定性を有する臭素化コポリマー生成物を生成しやすい。熱安定性の有用な指標は、5%重量減少温度であり、これは以下の熱重量分析によって測定される:TA装置、モデルHi−Res TGA 2950または同等の装置を用い、気体状窒素流毎分60ミリリットル(ml/分)、室温(公称25℃)から600℃に亘る範囲で加熱速度10℃/分で、10ミリグラムのポリマーを分析する。加熱ステップの間試料によって損失する質量をモニターし、そして試料がその初期質量の5%を損失する温度を5%重量減少温度(5%WLT)と規定する。この方法は、試料が初期試料重量基準で累積重量損失5wt%を受ける温度を与える。臭素化コポリマーは、好ましくは5%WLT少なくとも200℃を示す。5%WLTは、好ましくは少なくとも220℃であり、より好ましくは少なくとも230℃であり、更により好ましくは少なくとも240℃であり、そして更により好ましくは少なくとも250℃である。ブタジエン単位の少なくとも85%が臭素化された臭素化コポリマー、およびこのような5%WLT値を有するものは、特に注目すべきものである。
【0047】
熱安定性の更なる増大は、アルカリ金属塩基で臭素化コポリマーを処理する場合に見られることがある。アルカリ金属塩基は、例えば、ヒドロキシドまたはカーボネートであることができる。アルカリ金属塩基は、好ましくはアルカリ金属アルコキシドであり、アルカリ金属アルコキシドは、幾つかの他の塩基、例えばアルカリ金属のヒドロキシド、カーボネートまたはカルボキシレートよりも多く熱安定性を増大させる傾向がある。幾つかの場合において、5%WLTの3〜12℃以上の増大は、アルカリ金属アルコキシドで臭素化コポリマーを処理する場合に見られる。5%WLTの1〜6℃の増大は、典型的には、アルカリ金属ヒドロキシド、アルカリ金属カーボネートおよびアルカリ金属カルボキシレートでの処理で見られる。
【0048】
アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウムまたはセシウムであることができる。リチウム、ナトリウムおよびカリウムは好ましい。
【0049】
塩基は、好ましい態様においてはアルカリ金属アルコキシドである。アルコキシドイオンは、1〜8個、好ましくは1〜4個の炭素原子を含むことができ、メトキシドおよびエトキシドは特に好ましい。特に好ましいアルカリ金属アルコキシドは、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシドおよびカリウムエトキシドである。
【0050】
臭素化コポリマーは、(臭素化されたまたは臭素化されていない)コポリマー中の重合ブタジエン単位のモル当たりアルカリ金属塩基0.01モルという少量で処理できる。アルカリ金属塩基の量に上限はないが、コポリマー中の重合(臭素化されたまたは臭素化されていない)ブタジエン単位のモル当たりアルカリ金属塩基約1モル超を使用しないことでコストおよび取り扱い性の考慮が軽減される。好ましい量は0.03〜0.50モル/重合(臭素化されたまたは臭素化されていない)ブタジエン単位のモル、そして特に好ましい量は、0.05〜0.20モル/モルである。
【0051】
アルカリ金属塩基は、臭素化および後続の生成物回収プロセスの種々の段階で添加できる。例えば、アルカリ金属塩基は、臭素化反応の間に存在でき、その場合、臭素化剤を出発コポリマーに導入する時点の前、同時または後に添加する。この場合、アルカリ金属塩基(またはその分解物もしくは反応生成物)は、少なくとも初期生成物回収工程を経てコポリマーとともに運ばれる。アルカリ金属塩基(またはその分解物もしくは反応生成物)は、下流の回収プロセス、例えば洗浄および溶媒からの沈殿の間に回収できる。
【0052】
アルカリ金属塩基は、臭素化反応が完了した後、臭素化コポリマーが溶液中にある間に導入することがより好ましい。好ましいプロセスにおいて、臭素化コポリマー溶液は、まず、存在する水相(あれば)から分離し、次いでコポリマー溶液をアルカリ金属塩基と接触させる。アルカリ金属塩基は幾つかの手法で添加できる。微細化された固体として臭素化コポリマーに添加でき、この場合混合物をよく撹拌してアルカリ金属塩基とコポリマー溶液との良好な接触を与えるのがよい。
【0053】
アルカリ金属塩基は適切な溶媒(例えばメタノール、エタノールまたは2−プロパノール)(これは好ましくは臭素化コポリマー溶液と混和性のものである)中の溶液に添加できる。アルカリ金属塩基用の溶媒が臭素化コポリマーのアンチソルベントである場合、処理工程は、溶液からのコポリマーの沈殿と組合せることができる。アルカリ金属塩基またはその溶液は、溶液または水中混合物として添加でき、この場合、繰り返すが、塩基を臭素化コポリマーと確実に接触させるために良好な混合が必要とされよう。好ましいアルカリ金属ヒドロキシドは、水中で加水分解してアルコキシド、対応するアルカリ金属ヒドロキシド、およびアルコキシドイオンに対応するアルコールの複合混合物を形成し得ることに留意される。よって、この場合には、臭素化コポリマーは実際にはアルカリ金属アルコキシドと対応のアルカリ金属ヒドロキシドとの混合物で処理されると考えられる。
【0054】
次いで上記のように沈殿させること、または他の簡便な方法(アルカリ金属塩基処理と同時には沈殿をさせない場合)によって溶液からコポリマーを回収できる。アルカリ金属塩基の分解物および/または反応生成物を除去するために、処理されたコポリマーは、コポリマーを沈殿させる前に1回以上洗浄できる。水または希薄な水性の酸での1回以上の洗浄はこの目的に好適である。これらの洗浄は、アルカリ金属塩基処理と同時にまたはその後に行なうことができる。
【0055】
アルカリ金属塩基処理の間の温度は、例えば、−10℃〜100℃であることができ、そして好ましくは約10℃〜約60℃である。アルカリ金属塩基は、有効であるために短時間、典型的には数分程度または更にはそれ未満コポリマーと接触すればよい。
【0056】
臭素化工程において使用した溶媒から回収した後に臭素化コポリマーを処理することも可能である。このような場合においては、アルカリ金属塩基は、コポリマーを膨潤または溶解させる溶媒中の溶液として添加できる。これに代えて、アルカリ金属塩基は(任意に溶液として)臭素化コポリマーの溶融物に添加できる。次いで、処理された臭素化コポリマーを上記のように洗浄することができる。
【0057】
所望の場合、アルカリ金属塩基の添加前に、グルコン酸ナトリウムまたは亜硫酸ナトリウム等の物質を粗臭素化コポリマー溶液に添加してもよい。これは、水またはコポリマー用の溶媒と実質的に非混和性の他の溶媒の溶液として物質を添加することによって簡便に実施される。この物質は、好ましくは、コポリマー溶液中にアルカリ金属塩基を添加する前の非混和性相の分離によって、臭素化コポリマーから除去できる。
【0058】
臭素化コポリマーは、種々の有機ポリマー用の難燃剤添加物として有用である。目的の有機ポリマーとしては、ビニル芳香族またはアルケニル芳香族ポリマー(例えばアルケニル芳香族ホモポリマー、アルケニル芳香族コポリマー、または1種以上のアルケニル芳香族ホモポリマーおよび/またはアルケニル芳香族コポリマーのブレンド物)、更に他の有機ポリマー(臭素化コポリマーが溶解性または分散して10μm未満、好ましくは5μm未満のサイズのドメインを形成できるもの)が挙げられる。好ましくは十分な臭素化コポリマーがブレンド物中に存在して臭素量がブレンド物質量基準で0.1質量パーセントから25質量パーセントの範囲内であるブレンド物を与える。
【0059】
臭素化コポリマーのブレンド物は、他の難燃剤添加物、難燃剤アジュバント、熱安定剤、紫外光安定剤、成核剤、酸化防止剤、発泡剤、酸捕捉剤および着色剤等の他の添加剤を含んでもよい。
【0060】
以下の例は本発明を説明するためであってその範囲を制限するためでなく与えられる。全ての部およびパーセントは特記しない限り質量基準である。
【0061】
例1
オーバーヘッド撹拌、濃縮器、および窒素入口を供える3L丸底フラスコに、ブロックコポリマーの20質量%を各々構成する末端ポリスチレンブロックおよびポリマーの60質量%を構成する中心ポリブタジエンブロックを含む、99.0gのスチレン−ブタジエントリブロックコポリマーを添加する。ポリマーのこの量は、約1.1モルのブタジエン単位を与える。530.6gのテトラブチルアンモニウムトリブロミド(TBAT)(Sigma−Aldrich Lot 06219AD,1.10mol)および1355gのジクロロメタン(16.0mol)もまたフラスコに添加する。温水浴中で混合物を撹拌しながら加熱(約40℃)して5時間還流させた後、撹拌を停止させて混合物を室温までゆっくり冷やす。臭素化ポリマーのうち少なくとも幾らかかが溶液から沈殿する。上層液をデカンテーションで固形分から除く。沈殿したポリマーを2003g(23.58mol)のジクロロメタン中に溶解させ、高さ3”(7.5cm)および直径3.5”(8.8cm)のカラムに充填された250gの230〜400メッシュシリカゲルを通過させ、ジクロロメタンで湿潤させて均一床を作製する。ポリマー溶液を、5時間環境条件下におき、続いて1時間穏やかな窒素圧をカラムに与えた後に溶離させ、そして次いでカラムを422gのジクロロメタンでリンスする。2864gの淡黄色溶離物の全量を収集する。ろ過物を1434gと1430gとの2つの部分に分ける。
【0062】
オーバーヘッド撹拌、添加漏斗、および窒素入口を備える5L丸底フラスコ内に2369gの2−プロパノールを入れる。ろ過物の1434g部分を添加漏斗経由で3〜4分間かけて添加し、続いて66gのジクロロメタンで若干リンスする。スラリーを臭素化ポリマー沈殿物として形成する。2Lの粗いガラスフリット漏斗上でスラリーをろ過する。若干少ないジクロロメタンリンスを用いてろ過物の1430g試料を同じ手法で処理する。2つの沈殿物からのろ過物を組合せて795gの2−プロパノールで洗浄する。湿潤ケーキ(495g)を乾燥皿に移して環境条件下で5日間ドラフト内にて乾燥させ、224.5gの臭素化コポリマーを明白色粉末として得る。
【0063】
生成物の臭素化コポリマーは、イオンクロマトグラフィーによれば3.3ppmの遊離臭素を含むことが見出される。プロトンNMR(前述の手順を用いる)は、検出可能なテトラブチルアンモニウム臭化物塩が存在しないことを示す。プロトンNMRはまた、ポリマー中のブタジエン単位の82%が臭素化されていることを示す。前述のGPCによって測定したときの重量平均分子量は135,830である。同じ方法による数平均分子量は131,200であり、得られる多分散性は1.035である。前述のTGAによって測定される5%WLTは約259℃である。
【0064】
例2
例1に記載する4gのスチレン/ブタジエンブロックコポリマー、20.3gのテトラブチルアンモニウムトリブロミド(0.042mol)および70mLのジクロロメタンを、機械撹拌器および熱電対を備える250mLの三つ口フラスコに添加して撹拌溶液を調製する。混合物を還流で4時間加熱させて室温に冷却する。次いで30mLのトルエン、続いて50mLの水をフラスコに添加する。水相を分離して、溶液100mL当たり1gの亜硫酸水素ナトリウムを含む50mLの塩化ナトリウム水溶液(25%wt/wt)で生成物を洗浄する。生成物を再び50mLの25%塩化ナトリウム溶液で洗浄する。得られるポリマー溶液をその5倍体積量のメタノールと混合することによって臭素化コポリマーを沈殿させる。沈殿したポリマーをろ過によって分離し、そして設定点温度70℃で運転する減圧オーブン内で1晩乾燥させる。
【0065】
臭素化コポリマーを100mLのトルエン中に再溶解させ、50mLの水で洗浄していずれの残存テトラブチルアンモニウムブロミド副生成物も除去し、先のようなメタノール中の沈殿により再び単離する。ろ過によって臭素化ポリマーを再び分離し、先のように1晩乾燥させる。
【0066】
プロトンNMRはまた、ポリマー中のブタジエン単位の88%が臭素化されることを示す。前述のGPCによって測定したときの重量平均分子量は139,800である。同じ方法による数平均分子量は136,100であり、得られる多分散性は1.03である。前述のTGAによって測定される5%WLTは260℃である。
【0067】
例3
オーバーヘッド撹拌、濃縮器および窒素入口を備える500mL丸底フラスコに、例1に記載する9.0gのスチレン/ブタジエンポリマー、38.7g(0.12mol)のテトラブチルアンモニウムブロミドおよび120g(16.0mol)のジクロロメタンを添加する。混合物に、16.0g(10mol)の臭素を20分間かけて添加し、これにより容器温度が20から26℃上昇する。反応混合物を温水浴中で加熱して6時間還流させ、そして次いで1晩室温まで冷やす。臭素化コポリマーの一部が沈殿してスラリーを形成し、ロータリーエバポレーターを用いて60℃/20mmHg(2.66kPa)でこれを濃縮して120gのオレンジ色混合物を生成する。粗いガラスフリット漏斗に通して混合物をろ過して黄色ペレット様固体を生成する。固体を50mLの2−プロパノールで洗浄して乾燥させ、次いで171gのジクロロメタン中に再溶解させる。溶液に28gの230〜400メッシュシリカゲルを通過させ、これを43gのジクロロメタンで予湿潤させる。シリカゲルカラムを52gのジクロロメタンでリンスし、これをコポリマー溶液からの溶離物と組合せる。組合せた溶離物を添加漏斗に添加し、117gのジクロロメタンで希釈して約250mLのコポリマー溶液を形成する。コポリマー溶液を、3分間かけて、397g(500mL)の急速撹拌2−プロパノールを収容する3L丸底フラスコに添加する。得られるスラリーをろ過し、そして固形分を40gの2−プロパノールで洗浄する。次いで固形分を、ロータリーエバポレーターを用いて65℃/20mmHg(2.66kPa)で2時間かけてタンブル乾燥させ、19.5gの明白色粉末状固体を得る。
【0068】
プロトンNMRはまた、ポリマー中のブタジエン単位の71%が臭素化されることを示す。重量平均分子量は144,640であり、数平均分子量は140,140である。多分散性は1.03である。5%WLTは約260℃である。
【0069】
例4
オーバーヘッド撹拌、濃縮器、および窒素入口を備える1L丸底フラスコに、例1に記載する9.0gのスチレン/ブタジエンコポリマー、26.3g(0.125mol)のテトラエチルアンモニウムブロミドおよび164g(16.0mol)のジクロロメタンを添加する。混合物を1℃に冷却して16.0g(0.10mol)の臭素を7分間かけて添加する。これにより容器温度が4℃に上昇する。混合物を1晩室温まで冷やす前に、反応混合物を加熱して6.5時間温水浴中で還流させる。得られるスラリーを、ロータリーエバポレーターを用いて60℃/20mmHg(2.66kPa)で濃縮して62gのオレンジ色固体を得る。固体を500mL分液漏斗に移し、289gのジクロロメタンおよび108gの水を用いて移送を助け、そして固体を溶解させる。2相混合物が形成される。完全に混合した後、787gの急速撹拌アセトニトリルを含む下方相を2L丸底フラスコに添加する。得られるスラリーをろ過し、固形分を148gのアセトニトリルで洗浄する。固形分を1L丸底フラスコ内でロータリーエバポレーターを用い65℃/20mmHg(2.66kPa)で2時間タンブル乾燥させて22.1gの明白色粉末状固体を得る。
【0070】
プロトンNMRはまた、ポリマー中のブタジエン単位の88%が臭素化されることを示す。重量平均分子量は136,740であり、数平均分子量は130,720である。多分散性は1.05である。5%WLTは約244.5℃である。
【0071】
例5
オーバーヘッド撹拌、添加漏斗、および窒素入口を備える500mLの丸底フラスコに、例1に記載する9.0gのスチレン/ブタジエンコポリマーおよび165g(1.95mol)のジクロロメタンを添加する。固形分が溶解した後、溶液を3℃に冷却する。添加漏斗に、38.5g(0.12mol)のテトラブチルアンモニウムブロミドおよび39.5gの脱イオン水を添加する。15.9g(0.10mol)の臭素を溶液に添加し、褐赤色固体を生成する。64.8gのジクロロメタンを添加することによって固体を溶解させ、2相液体系を得る。下方の暗赤色相を丸底フラスコ内の反応混合物に7分間かけて添加して容器温度を4℃に上げる。得られる濁オレンジ色混合物を環境条件で週末いっぱいかけて撹拌する。得られる混合物を97gのトルエンで希釈し、次いでロータリーエバポレーター上で148gのスラリーに濃縮する。スラリーを500mLの分液漏斗に移し、61gのトルエンおよび102gの水を用いて移送を助けて固形分を溶解させる。2相混合物が形成される。完全に混合した後、下方水性層を除去して上方有機相を51gの水で抽出する。洗浄した有機溶液を、1分間かけて、503gの急速撹拌メタノールを収容する2L丸底フラスコに添加する。得られるスラリーをろ過し、固形分を160gのメタノールで洗浄する。洗浄した固形分を1L丸底フラスコ内でロータリーエバポレーターを用いて65℃/20mmHg(2.66kPa)で2時間タンブル乾燥させて20.9gの鈍白色固体を得る。
【0072】
プロトンNMRはまた、ポリマー中のブタジエン単位の91%が臭素化されることを示す。重量平均分子量は129,230であり、数平均分子量は125,570である。多分散性は1.03である。5%WLTは約255℃である。
【0073】
例6
オーバーヘッド撹拌、添加漏斗、および窒素入口を備える500mL丸底フラスコに、例1に記載する9.0gのスチレン/ブタジエンコポリマー(ポリブタジエンの0.1mol当量)および167g(1.97mol)のジクロロメタンを添加する。固形分が溶解した後、溶液を4℃に冷却する。25.2g(0.12mol)のテトラエチルアンモニウムブロミドおよび25gの脱イオン水を添加漏斗に添加する。16.0g(0.10mol)の臭素を添加し、そして褐赤色固体を生成する。62gのジクロロメタンを添加することによって固体を溶解させ、2相液体系を得る。下方暗赤色層を反応混合物に8分間かけて添加し、容器温度の6℃への上昇が生じる。得られる混合物を加熱して温水浴中で3.5時間還流させる。スラリーが形成され、これを500mL分液漏斗に移し、64gのジクロロメタンおよび100gの水を用いて移送を助け、固形分を溶解させる。完全に混合した後、上方水層を除去して下方有機層を100gの水で1度、次いで再び49gの水で抽出する。洗浄した有機溶液を、519gの急速撹拌2−プロパノールを収容する2L丸底フラスコに2分間かけて添加する。得られるスラリーをろ過し、そして固形分を159gの2−プロパノールで洗浄する。洗浄した固形分を2L丸底フラスコ内でロータリーエバポレーターを用いて65℃/20mmHg(2.66kPa)で2時間タンブル乾燥させて22.1gの鈍白色固体を得る。
【0074】
プロトンNMRはまた、ポリマー中のブタジエン単位の92%が臭素化されることを示す。重量平均分子量は133,080であり、数平均分子量は128,250である。多分散性は1.04である。5%WLTは約253℃である。
【0075】
例7
オーバーヘッド撹拌、添加漏斗、および窒素入口を備える250mL丸底フラスコに、例1に記載する9.0gのスチレン/ブタジエンコポリマー(ポリブタジエンの0.1mol当量)および66gのジクロロメタンを添加する。別個の250mL丸底フラスコに25.2g(0.12mol)のテトラエチルアンモニウムブロミドおよび41gの脱イオン水を添加する。16.0g(0.10mol)の臭素を添加し、これは褐赤色固体を生成し、溶液の温度を31℃に上昇させる。12gのジクロロメタンを添加することによって固体を溶解させ、2相液体系が得られ、そして溶液の温度が34℃に更に上昇する。2相溶液を添加漏斗に移し、16gのジクロロメタンを用いて移送を助ける。全溶液(有機層および水層の両者)を1回の急速添加でポリマー溶液に添加し、ポリマー溶液の温度は26℃から34℃に上昇する。2時間後、反応分割量物を2−プロパノール中に沈殿させ、得られるスラリーをろ過し、そして固形分を2−プロパノールで洗浄する。乾燥後、固体試料をプロトンNMRによって分析し、これは二重結合の95.1%臭素化を示す。
【0076】
例8
重量平均分子量70,000、数平均分子量67,000を有し、かつブタジエン単位の81%が1,2−ブタジエン単位である47%スチレン/53%ブタジエンブロックコポリマーを臭素化する。4gのコポリマーと20.3gのテトラブチルアンモニウムトリブロミドとを70mLのジクロロメタン中に溶解させ、4時間混合および還流させる。トルエン(30mL)を添加してポリマー溶液を亜硫酸水素ナトリウム水溶液で洗浄する。溶液をその5倍体積量のメタノールと混合して生成物を沈殿させることによって、得られる臭素化コポリマーを改質溶液から単離する。沈殿した臭素化コポリマーを回収し、100mLのトルエン中に再溶解させ、50mLの水で洗浄していずれの残存テトラブチルアンモニウムブロミド副生成物も除去し、そして先のようにメタノール中で沈殿させることによって再び単離する。次いで沈殿した生成物を回収して乾燥させる。この生成物の5%WLTは260℃である。
【0077】
例9
前掲の例において説明したのと同様の手法で調製される(および5%重量減少温度が248℃である)臭素化ポリ(スチレン/ブタジエン)トリブロックコポリマー(12.5g)および1,2−ジクロロエタン(73.5g)を250mLガラス瓶に充填する。コポリマーが溶解した後、25%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(1.1g)を添加し、得られる鈍白色溶液を約1.5時間撹拌する。次いで溶液を2−プロパノール(196g)および水(25.8g)の混合物中に注いで処理済コポリマーを沈殿させる。混合後、粗いガラスフリット漏斗経由でスラリーをろ過し、そして固形分を2−プロパノール(78g)で洗浄する。固形分を一定質量(11.9g)まで乾燥させる。得られる生成物は5%重量減少温度259℃を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)フェニルトリアルキルアンモニウムトリブロミド、ベンジルトリアルキルアンモニウムトリブロミドまたはテトラアルキルアンモニウムトリブロミドから選択される少なくとも1種の三臭化物臭素化剤、b)5〜90質量パーセントの重合ビニル芳香族モノマー単位と10〜95質量パーセントの重合ブタジエン単位とを含み、重量平均分子量が少なくとも1000である、少なくとも1種のブタジエン/ビニル芳香族コポリマー、および、c)ブタジエン/ビニル芳香族コポリマーのための少なくとも1種の溶媒
を含む反応混合物を、ブタジエン/ビニル芳香族コポリマー中の非芳香族二重結合の少なくとも50パーセントを臭素化するのに十分な条件に供することを含む方法。
【請求項2】
溶媒が、ハロゲン化アルカン、3級炭素原子に結合する水素原子を含まない環状アルカンまたはハロゲン化芳香族化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
三臭化物臭素化剤が、フェニルトリメチルアンモニウムトリブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムトリブロミド、テトラエチルアンモニウムトリブロミド、テトラプロピルアンモニウムトリブロミド、テトラ−n−ブチルアンモニウムトリブロミドまたはこれらの2種以上の混合物である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
コポリマー中の重合ブタジエン単位の少なくとも50%が1,2−ブタジエン単位である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記条件が温度0〜85℃を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ブタジエン/ビニル芳香族コポリマーが、重量平均分子量1,000〜400,000のスチレン/ブタジエンブロックコポリマーである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
三臭化物臭素化剤が、フェニルトリメチルアンモニウムトリブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムトリブロミド、テトラエチルアンモニウムトリブロミド、テトラ−n−ブチルアンモニウムトリブロミドまたはこれらの2種以上の混合物である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
a)フェニルトリアルキルアンモニウム一臭化物塩、ベンジルトリアルキルアンモニウム一臭化物塩またはテトラアルキルアンモニウム一臭化物塩から選択される少なくとも1種の一臭化物塩、b)5〜90質量パーセントの重合ビニル芳香族モノマー単位と10〜95質量パーセントの重合ブタジエン単位とを含み、重量平均分子量が少なくとも1000である、少なくとも1種のブタジエン/ビニル芳香族コポリマー、および、c)ブタジエン/ビニル芳香族コポリマーのための少なくとも1種の溶媒
を含む反応混合物に臭素を添加して、得られるブレンド物を、ブタジエン/ビニル芳香族コポリマー中の非芳香族二重結合の少なくとも50パーセントを臭素化するのに十分な条件に供する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
溶媒が、ハロゲン化アルカン、3級炭素原子に結合する水素原子を含まない環状アルカンまたはハロゲン化芳香族化合物である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
一臭化物塩が、フェニルトリメチルアンモニウムモノブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムモノブロミド、テトラメチルアンモニウムモノブロミド、テトラエチルアンモニウムモノブロミド、テトラプロピルアンモニウムモノブロミド、テトラ−n−ブチルアンモニウムモノブロミド、またはこれらの2種以上の混合物である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
コポリマー中の重合ブタジエン単位の少なくとも50%が1,2−ブタジエン単位である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記条件が温度0〜85℃を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ブタジエン/ビニル芳香族コポリマーが、重量平均分子量1,000〜400,000のスチレン/ブタジエンブロックコポリマーである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
一臭化物塩が、フェニルトリメチルアンモニウムモノブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムモノブロミド、テトラエチルアンモニウムモノブロミド、テトラ−n−ブチルアンモニウムモノブロミド、またはこれらの2種以上の混合物である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
フェニルトリアルキルアンモニウム一臭化物塩、ベンジルトリアルキルアンモニウム一臭化物塩またはテトラアルキルアンモニウム一臭化物塩から選択される一臭化物塩、b)5〜90質量パーセントの重合ビニル芳香族モノマー単位と10〜95質量パーセントの重合ブタジエン単位とを含み、重量平均分子量が少なくとも1000である、少なくとも1種のブタジエン/ビニル芳香族コポリマー、および、c)ブタジエン/ビニル芳香族コポリマーのための少なくとも1種の溶媒を含む反応混合物を臭素とブレンドし、ブタジエン/ビニル芳香族コポリマー中の非芳香族二重結合の少なくとも50パーセントを臭素化するのに十分な条件下でブレンド工程を行なう、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
溶媒が、ハロゲン化アルカン、3級炭素原子に結合する水素原子を含まない環状アルカンまたはハロゲン化芳香族化合物である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
一臭化物塩が、フェニルトリメチルアンモニウムモノブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムモノブロミド、テトラメチルアンモニウムモノブロミド、テトラエチルアンモニウムモノブロミド、テトラプロピルアンモニウムモノブロミド、テトラ−n−ブチルアンモニウムモノブロミド、またはこれらの2種以上の混合物である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
コポリマー中の重合ブタジエン単位の少なくとも50%が1,2−ブタジエン単位である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記条件が温度0〜85℃を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ブタジエン/ビニル芳香族コポリマーが、重量平均分子量1,000〜400,000のスチレン/ブタジエンブロックコポリマーである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
一臭化物塩が、フェニルトリメチルアンモニウムモノブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムモノブロミド、テトラエチルアンモニウムモノブロミド、テトラ−n−ブチルアンモニウムモノブロミド、またはこれらの2種以上の混合物である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
臭素を連続的または間欠的に反応混合物とブレンドする、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
ブタジエン/ビニル芳香族コポリマーを連続的または間欠的に反応混合物中に供給する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ブタジエン/ビニル芳香族コポリマーを連続的または間欠的に反応混合物中に供給する、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
臭素化されたコポリマーをアルカリ金属塩基と接触させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
ブタジエン/ビニル芳香族コポリマーに、これらを臭素化する前にアルカリ金属塩基を添加し、そして該アルカリ金属塩基が臭素化反応の間存在する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
アルカリ金属塩基が臭素化反応の間存在する、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
ブタジエン/ビニル芳香族コポリマーに、これらを臭素化した後にアルカリ金属塩基を接触させる、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
臭素化されたコポリマーを反応溶液から回収することを更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
臭素化されたコポリマーをアルカリ金属塩基と接触させ、次いで反応溶液から回収する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
臭素化されたポリマーを反応溶液から回収し、次いでアルカリ金属塩基と接触させる、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
アルカリ金属塩基がアルキル金属アルコキシドである、請求項25〜31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
コポリマー中の臭素化されたまたは臭素化されていないブタジエン繰り返し単位のモル当たり少なくとも0.01モルのアルカリ金属アルコキシドを、臭素化されたコポリマーと接触させる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
コポリマー中の臭素化されたまたは臭素化されていないブタジエン繰り返し単位のモル当たり0.03〜0.50モルのアルカリ金属アルコキシドを、臭素化されたコポリマーと接触させる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
コポリマー中の臭素化されたまたは臭素化されていないブタジエン繰り返し単位のモル当たり0.05〜0.20モルのアルカリ金属アルコキシドを、臭素化されたコポリマーと接触させる、請求項33に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−502771(P2010−502771A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524676(P2009−524676)
【出願日】平成19年8月14日(2007.8.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/018110
【国際公開番号】WO2008/021417
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】