説明

ブチルフタリドのソフトカプセル及びその調製方法

【課題】本発明は新規のブチルフタリドのソフトカプセル及びその調製方法を示す。
【解決手段】ブチルフタリドのソフトカプセルはカプセル壁材料及び薬剤を含有する油からなり、薬剤を含有する油は本質的にブチルフタリド及び希釈剤としての植物油(重量比約1:0〜10)からなる。カプセル壁材料はカプセル壁マトリックス、可塑剤及び水(重量比1:0.2〜0.4:0.8〜1.3)からなる。本発明に記載のブチルフタリドのソフトカプセルはブチルフタリド特有の強い味を遮断可能であり、かつ、他の経口調製物中への油状活性薬剤の配合に伴う問題点を解消する。上記ソフトカプセルの崩壊時間は中華人民共和国の薬局方の必要条件を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブチルフタリドのソフトカプセル及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブチルフタリドはセロリ及びその種子の主成分である。ブチルフタリドは天然の植物であるセロリの種子油から直接抽出する以外にも合成により取得可能である。特許文献1中に、血栓症及び血小板凝集の治療薬の製造における左旋性ブチルフタリドの使用が開示されており、左旋性ブチルフタリドはNOS−NO−cGMP系の機能の制御及び脳虚血後の神経細胞中のアラキドン酸代謝の制御に影響を及ぼすことが明らかに示されている。特許文献2は、脳虚血により誘導される哺乳類又は人間の疾患の予防及び治療用薬剤の製造におけるブチルフタリドの使用であって、ブチルフタリドは光学活性を有さないことを特徴とする使用を開示する。ブチルフタリドはセロリの味の強い油状液体であり、次の化学式で表わす。
【0003】
【化1】

【0004】
ソフトカプセルは比較的新しい投与形態であり、油状有効成分を経口用調製物として調製し、カプセル中でこの医薬有効成分を希釈剤の中に均一に分布させるため、及び、用量を正確に分割するために特に有利である。更に、ソフトカプセルは円形で滑らかな形状であり、嚥下が容易であるため、患者にとっての有利性が増大する。
【特許文献1】中国特許第98125618.X号
【特許文献2】中国特許第93117148.2号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、ブチルフタリドの物理的及び化学的性質並びにソフトカプセルの特性の利用により、ブチルフタリドのソフトカプセルである新規ブチルフタリド調製物を開発した。
【0006】
本発明の目的はブチルフタリドのソフトカプセルの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のブチルフタリドのソフトカプセルは、カプセル壁材料及び薬剤を含有する油からなり、薬剤を含有する油は本質的にブチルフタリド及び植物油(重量比約1:0〜10)からなるものである。更に、薬剤を含有する油中に適切な酸化防止剤であるジブチルカルボキシトルエンを添加してもよい。
【0008】
用語「ブチルフタリド」は本明細書中において、ラセミ化合物のブチルフタリド、左旋性ブチルフタリド又は右旋性ブチルフタリド(いずれも油状液体)を意味する。
【0009】
植物油は、ゴマ油、トウモロコシ油、落花生油、大豆油、アーモンド油、桃仁油、綿実油、ヒマワリ油、オリーブ油の一種又はそれらの混合物であってよい。
【0010】
カプセル壁材料は本質的に、カプセル壁マトリックス、可塑剤及び水(重量比約1:0.2〜0.4:0.8〜1.3)からなる。p−ヒドロキシ安息香酸メチル又はp−ヒドロキシ安息香酸エチル等の適切な防腐剤をカプセル壁材料中に添加してもよい。
【0011】
カプセル壁マトリックスはゼラチン及びアラビアゴムの一種又はそれらの混合物であってよい。
【0012】
可塑剤はグリセリン及びソルビトールの一種又はそれらの混合物であってよい。
【0013】
本発明のブチルフタリドのソフトカプセルは、手動圧縮成形、回転圧縮成形又はドロップ成形(dropping molding)等の標準的なソフトカプセル調製法で調製可能である。一般的に、40〜50℃に制御した自動回転カプセル機を使用する回転圧縮成形等の圧縮法によって、個々のカプセルに薬学的有効量のブチルフタリドを含有させることが可能である。
【0014】
ソフトカプセルは本発明の新規ブチルフタリド調製物として調製する。上記ソフトカプセルはブチルフタリド特有の強い味を遮断可能であり、かつ、他の経口調製物中への油状活性薬剤の配合に伴う問題点を解消する。更に、ソフトカプセルは円形で滑らかな形状であり、嚥下が容易であるため、患者にとっての有利性が増大する。
【0015】
本発明のブチルフタリドのソフトカプセルは、カプセル壁材料及び薬剤を含有する油からなり、薬剤を含有する油は本質的にブチルフタリド及び植物油(重量比は好ましくは約1:1〜8、より好ましくは約1:2〜5、最も好ましくは約1:3.5)からなる。更に、薬剤を含有する油中に、酸化防止剤として、薬剤を含有する油の重量に対して約0〜0.2%のジブチルカルボキシトルエンを添加してもよい。
【0016】
好ましくは、植物油は、落花生油、大豆油、トウモロコシ油及びゴマ油である。最も好ましくは植物油は大豆油である。
【0017】
カプセル壁材料は本質的にカプセル壁マトリックス、可塑剤及び水からなり、カプセル壁マトリックスは好ましくはゼラチンであり、可塑剤は好ましくはグリセリンである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次の例示は本発明の技術的特徴を更に例証するという特定の目的のために記載するものであって、本発明に何ら制限を加えるものではない。
【実施例1】
【0019】
ブチルフタリドのソフトカプセルの調製
ゼラチン溶液の構成要素:ゼラチン100g、グリセリン30g、水130g及びp−ヒドロキシ安息香酸エチル200mg。ゼラチンを適量の水に添加し、水を吸収させて膨潤させた。グリセリン、p−ヒドロキシ安息香酸エチル及び残りの水を溶解タンク中に添加して、70〜80℃に加熱した。均一に混合後、膨張したゼラチンを添加し、撹拌して溶融させ、1〜2時間インキュベートした。得た混合物を静置して泡を浮上させた。その後、清潔な白色布でろ過することにより泡を除去し、使用するまで温度を維持した。ゼラチン溶液は一般的に2.8〜3.2rpmで調製した。
【0020】
薬剤を含有する油の調製:ブチルフタリド100gを計量して透明な大豆油350gとよく混合し、薬剤を含有する油を得た。
【0021】
ソフトカプセルの圧縮:ゼラチン溶液及び薬剤を含有する油を自動回転カプセル機の中に供給した。温度を40〜50℃で維持し、薬剤を含有する油を450mgずつ含むソフトカプセルを圧縮した。
【0022】
この比率で薬剤を含有する油と共に圧縮したソフトカプセルを試験した結果、適度な形状及び大きさであり、かつ、内容物は良好に均一であった。試験結果は下記の通りであった。
【0023】
【表1】

【実施例2】
【0024】
ブチルフタリドのソフトカプセルの調製
調製方法は、薬剤を含有する油の調製段階で植物油を添加しないこと以外は実施例1中に記載の段階と同様に実施した。最終的に圧縮したソフトカプセルは薬剤を含有する油をそれぞれ100mg含む。
【実施例3】
【0025】
ブチルフタリドのソフトカプセルの調製
ゼラチン溶液の調製:ゼラチン100g、グリセリン40g、水120g及びp−ヒドロキシ安息香酸エチル200mgを使用した。ゼラチン溶液の調製段階は実施例1中に記載の段階と同様に実施した。
【0026】
薬剤を含有する油の調製:ブチルフタリド225gを計量して透明な落花生油225gとよく混合し、薬剤を含有する油を得た。
【0027】
ソフトカプセルの圧縮:上記工程は、最終的に圧縮したソフトカプセルが薬剤を含有する油をそれぞれ200mg含むこと以外は実施例1中に記載の工程と同様に実施した。
【0028】
この比率で薬剤を含有する油と共に圧縮したソフトカプセルについて試験し、その結果は下記の通りであった。
【0029】
【表2】

【実施例4】
【0030】
ブチルフタリドのソフトカプセルの調製
調製方法は、薬剤を含有する油の調製段階で、ブチルフタリド56.25gを計量して透明な落花生油393.75gとよく混合すること以外は実施例1中に記載の方法と同様に実施した。最終的に圧縮したソフトカプセルは薬剤を含有する油をそれぞれ800mg含む。
【0031】
この比率で薬剤を含有する油と共に圧縮したソフトカプセルについて試験し、その結果は下記の通りであった。
【0032】
【表3】

【実施例5】
【0033】
ブチルフタリドのソフトカプセルの調製
ゼラチン溶液の調製:ゼラチン100g、グリセリン20g、水80g及びp−ヒドロキシ安息香酸エチル200mgを使用した。ゼラチン溶液の調製段階は実施例1中に記載の段階と同様に実施した。
【0034】
薬剤を含有する油の調製:ブチルフタリド45gを計量して透明な落花生油405gとよく混合し、薬剤を含有する油を得た。
【0035】
ソフトカプセルの圧縮:上記工程は、最終的に圧縮したソフトカプセルが薬剤を含有する油をそれぞれ1000mg含むこと以外は実施例1中に記載の工程と同様に実施した。
【実施例6】
【0036】
ブチルフタリドのソフトカプセルの調製
調製方法は、薬剤を含有する油の調製段階で、ブチルフタリド90gを計量して透明な大豆油360gとよく混合すること以外は実施例1中に記載の方法と同様に実施した。最終的に圧縮したソフトカプセルは薬剤を含有する油をそれぞれ500mg含む。
【実施例7】
【0037】
ブチルフタリドのソフトカプセルの調製
調製方法は、薬剤を含有する油の調製段階で、ブチルフタリド40.91gを計量して透明な大豆油409.09gとよく混合すること以外は実施例1中に記載の方法と同様に実施した。最終的に圧縮したソフトカプセルは薬剤を含有する油をそれぞれ1100mg含む。
【実施例8】
【0038】
ブチルフタリドのソフトカプセルの調製
調製方法は、薬剤を含有する油の調製段階で、ブチルフタリド50gを計量して透明な大豆油400gとよく混合すること以外は実施例1中に記載の方法と同様に実施した。最終的に圧縮したソフトカプセルは薬剤を含有する油をそれぞれ900mg含む。
【実施例9】
【0039】
ブチルフタリドのソフトカプセルの調製
調製方法は、薬剤を含有する油の調製段階で、ブチルフタリド150gを計量して、透明な大豆油300g及び酸化防止剤としてジブチルカルボキシトルエン0.45gとよく混合すること以外は実施例1中に記載の方法と同様に実施した。最終的に圧縮したソフトカプセルは薬剤を含有する油をそれぞれ300.3mg含む。
【実施例10】
【0040】
ブチルフタリド含量、関連材料及び崩壊時間の試験
測定方法
A)崩壊時間:実施例1中で調製したサンプルを使用した。崩壊時間アッセイ(中華人民共和国の薬局方(2000年版、第II部、付録VA))によって、溶媒として希塩酸1000ml(9〜1000)を使用し、温度を37±1℃に制御し、毎分30〜32回の割合で持ち上げて落として、操作時にバッフル板を使用することにより、各ソフトカプセルが完全に崩壊するのに要する時間を試験した。各ソフトカプセルが完全に崩壊するのに要する時間を調べた。崩壊時間は1時間を超えるべきではなく、かつ、対応する規則に順ずるべきである。
【0041】
B)関連材料:高速液体クロマトグラフィーにより試験を実施した(中華人民共和国の薬局方(2000年版、II部、付録VD)。
試験方法:カプセル内容物を適量サンプリングし、これに適量のクロロホルムを添加して溶解させた後、メタノールを添加して容量を補充した。得た溶液をメタノールで希釈し、1mL当たり内容物0.5mgを含む試験溶液を調製した。適量のブチルフタリドコントロールを別々かつ正確に計量してメタノールで溶解し、1mL当たりブチルフタリド15μgを含むコントロール溶液中に調製した。コントロール溶液20μLを液体クロマトグラフに正確に注入し、従来公知の方法で試験した。主な分画のピークが全体の10〜20%の高さとなるように検出感度を調節した。試験溶液を正確に20μL採取して同じ方法で試験した。クロマトグラフィーの主な分画のピークの保持時間の2倍の時間、クロマトグラフィーのスペクトルを記録した。クロマトグラフィーのスペクトル中に不純物が存在する場合、各不純物のピークの下の領域の合計の計算値(溶媒のピークを除く)は、コントロール溶液の上記領域(3.0%)以下であるべきである。
【0042】
C)ブチルフタリド含量の決定:高速液体クロマトグラフィーにより含量を決定した(中華人民共和国の薬局方(2000年版、II部、付録VD))。
【0043】
クロマトグラフィーの条件及びシステム適応試験:充填剤としてオクトデシルシランが結合したシリカゲルを使用し、移動相としてメタノール−水(65:35)を流速1.0mL/分で使用した。検出は波長280nmで実施した。ブチルフタリドの理論段数は1500以上であるべきである。不純物からブチルフタリドを分離する割合は関連法規に順ずるべきである。
【0044】
コントロール溶液の調製:ブチルフタリド50mgを正確に計量して50mLメスフラスコに入れた。計量したブチルフタリドをメタノールで溶解させてスケールの所定値まで希釈し、均一に混合する。得た溶液を正確に5mL採取して50mLメスフラスコに入れ、メタノールでスケールの所定値まで希釈して、コントロール溶液を得た。
【0045】
試験溶液の調製:カプセル中の内容物を適量(ブチルフタリド約50mg)採取して正確に計量した。計量した内容物を50mLメスフラスコに入れて適量のクロロホルムで溶解させ、スケールの所定値までメタノールで希釈して、よく混合した。得た溶液を正確に5mL採取して50mLメスフラスコに入れ、メタノールでスケールの所定値まで希釈して、試験溶液を得た。
【0046】
試験方法:コントロール溶液20μL及び試験溶液20μLをそれぞれ正確にサンプリングして液体クロマトグラフに注入し、従来公知の方法で試験した。クロマトグラフィーのスペクトルを記録し、ピーク面積からブチルフタリド(C1214)含量を外部標準法により計算した。
【0047】
実験データを以下に示す。
【0048】
【表4】

【0049】
本発明のソフトカプセルの加速試験及び長期試験が示すように、ソフトカプセルは長時間の保存により不適当に崩壊するという問題を有する場合が多いが、ソフトカプセルの壁は加熱処理により速く老化し、かつ、中華人民共和国の薬局方(2000年版)の関連法規によると崩壊時間が著しく変化したが依然として60分未満のままであった。生成物の外観、含量及び関連材料等の様々なパラメータは全て標準に順じ、有効期間は上限2年であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセル壁材料及び薬剤を含有する油からなり、薬剤を含有する油は本質的にブチルフタリド及び植物油(重量比約1:0〜10)からなる
ことを特徴とするブチルフタリドのソフトカプセル。
【請求項2】
ブチルフタリドと植物油の重量比が約1:1〜8である
ことを特徴とする請求項1に記載のブチルフタリドのソフトカプセル。
【請求項3】
ブチルフタリドと植物油の重量比が約1:2〜5である
ことを特徴とする請求項2に記載のブチルフタリドのソフトカプセル。
【請求項4】
ブチルフタリドと植物油の重量比が約1:3.5である
ことを特徴とする請求項3に記載のブチルフタリドのソフトカプセル。
【請求項5】
植物油は、ゴマ油、トウモロコシ油、落花生油、大豆油、アーモンド油、桃仁油、綿実油、ヒマワリ油、オリーブ油及びそれらの混合物からなる群より選択される
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のブチルフタリドのソフトカプセル。
【請求項6】
ブチルフタリドは、ラセミ化合物のブチルフタリド、左旋性ブチルフタリド及び右旋性ブチルフタリドからなる群より選択される
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のブチルフタリドのソフトカプセル。
【請求項7】
薬剤を含有する油は、酸化防止剤として、薬剤を含有する油の重量に対して0〜0.2%のジブチルカルボキシトルエンを更に含む
ことを特徴とする請求項1に記載のブチルフタリドのソフトカプセル。
【請求項8】
カプセル壁材料は本質的に、カプセル壁マトリックス、可塑剤及び水(重量比約1:0.2〜0.4:0.8〜1.3)からなる
ことを特徴とする請求項1に記載のブチルフタリドのソフトカプセル。
【請求項9】
カプセル壁マトリックスは、ゼラチン、アラビアゴム及びゼラチンとアラビアゴムの混合物からなる群より選択される
ことを特徴とする請求項8に記載のブチルフタリドのソフトカプセル。
【請求項10】
可塑剤は、グリセリン、ソルビトール及びグリセリンとソルビトールの混合物からなる群より選択される
ことを特徴とする請求項8に記載のブチルフタリドのソフトカプセル。
【請求項11】
カプセル壁材料は防腐剤を更に含む
ことを特徴とする請求項8に記載のブチルフタリドのソフトカプセル。

【公表番号】特表2007−513097(P2007−513097A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541784(P2006−541784)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【国際出願番号】PCT/CN2004/001411
【国際公開番号】WO2005/053658
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(505059226)シジャージョアン ファーマ. グループ ジョオンチ ファーマシューティカル テクノロジー(シジャージョアン)カンパニー リミテッド (7)
【出願人】(506189386)シジャージョアン ファーマ. グループ エヌビーピー ファーマシューティカル カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】