説明

ブラインド内蔵型多重ガラスサッシの動力伝達装置

【課題】 ブラインドのスラットを昇降したり傾動するための動力を確実に伝達しながら、ブラインドを多重ガラスサッシへ容易に着脱することができ、また窓ガラスの破損を防止しつつ衛生面で体裁のよいブラインド内蔵型多重ガラスサッシの動力伝達装置を提供する。
【解決手段】 ヘッドボックス21の内部でラダーコードを懸装する従動軸27aと、右側枠4d寄りに架設され、且つ従動軸27aと連結機構28を介して連結される駆動軸26aと、右側枠4dに配設されるチルト操作ダイヤル13とを備える。連結機構28を柱状の駆動側継ぎ手26と従動側継ぎ手27とで構成する。駆動側継ぎ手26と従動側継ぎ手27の接合面のそれぞれに、S極とN極のマグネットを複数個ずつ周方向に交互に埋設する。駆動側継ぎ手26と従動側継ぎ手27とをマグネットのスラスト方向の吸着力により直接連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サッシ内部に離間して配置される複数枚の窓ガラスの間にブラインドを内蔵したブラインド内蔵型多重ガラスサッシであって、詳しくはブラインドのスラットを昇降したり室内外へ傾動するための動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラインド内蔵型の多重ガラスサッシにあっては、ブラインドのスラットを昇降したり室内外方向へ傾動する場合に、室内側に設けられる操作部の操作力をサッシ内部に密閉されたブラインドにどのような構造で伝達するかが技術的な問題となる。
【0003】
例えば、サッシの一方の側枠上部に駆動軸を設けて、該駆動軸の一端をサッシ内部の空間部へ突出させ、該駆動軸の一端側にマグネットを固着するとともに、該マグネットの外側に内筒を被着して外部駆動回転体とし、駆動軸の延長線上に位置する従動軸の一端には前記外部駆動回転体を覆う外筒を突設し、該外筒の内周面にマグネットを固着して内部従動回転体とした動力伝達装置がある(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
また、サッシの窓ガラスの間の空間部にブラインドと操作体を設け、室内側の窓ガラスを隔てて前記操作体と対向する位置に操作部を固着し、該操作部と前記操作体のそれぞれに昇降自在な可動枠体を設けて、これら可動枠体のそれぞれに環状のマグネットを室内外方向の中心軸上に配設し、前記操作部の室内側に操作ハンドルを設けて該操作ハンドルを操作部側のマグネットに軸着し、前記ブラインド上部のヘッドボックスには、昇降プーリを室内外方向の中心軸に設けるとともに、揺動プーリと天秤とをスラット長手方向の中心軸に設けて、天秤の両端にはラダーコードを連結し、揺動プーリと前記操作体の昇降枠とを連結コードにて連結し、操作体のマグネットと一体の巻き上げプーリとブラインドのボトムレールとを昇降コードで連結してその間に前記昇降プーリを介在させ、前記操作具の操作ハンドルを把持して上昇または下降すると、操作具側の可動枠体が一体に上昇または下降して双方のマグネットの吸着により操作体側の可動枠体が一体に上昇または下降し、連結コードが前記天秤を揺動してスラットを室内側または室外側に傾かせ、また操作具の操作ハンドルを回転させると、双方のマグネットの吸着により操作体側のマグネットと一体の巻き上げプーリが回転して昇降コードを巻き上げもしくは解き放してストラットを昇降する動力伝達装置が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
さらに、サッシの窓ガラスの間の空間部にブラインドを設け、該ブラインドのヘッドボックス内部に配設されるブラインド操作用の回転軸の一部にウォームを形成し、その上部にウォームと歯合するウォームホイールを室内外方向の中心軸上に固着し、室内側の窓ガラスを隔てて前記ウォームホイールと対向する位置に操作部として駆動プーリをウォームホイールと同一軸上に配設し、該駆動プーリに操作チェーンを懸装するとともに、ウォームホイールと駆動プーリの内部にそれぞれS極とN極のマグネットを複数個ずつ周方向に交互に埋設し、操作チェーンによって駆動プーリとその内部のマグネットを回転させることにより、双方のマグネットの吸着によりウォームホイールとその内部のマグネットを一体に回転し、さらにウォームを通して回転軸を回転させて、スラットの昇降や傾動を行う動力伝達装置も提案されている(例えば、特許文献4参照)。
上述の特許文献1〜4は、いずれもブラインド内蔵型の多重ガラスサッシを前提とし、またブラインドのスラットの昇降や傾動を操作する動力の伝達にマグネットを用いている点で共通している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5−94244号公報
【特許文献2】特開平7−194092号公報
【特許文献3】実開昭61−123192号公報
【特許文献4】特開2000−179257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1,2の動力伝達装置は、内部従動回転体と外部駆動回転体とが内外に入れ子式に嵌合し、さらに外部駆動回転体の駆動軸がサッシの一方の側枠を貫通して設けられることから、ブラインドを組み立て後のサッシに後付けしたりサッシとは別体に取り外すことはできない。すなわち、特許文献1及び2では、ブラインドをサッシの組み立ての途中で装着するものであり、サッシ装着後にブラインドをメンテナンスしたり交換する場合には、サッシを途中まで分解しなければブラインドを着脱することができないという甚だ作業性のわるいものであった。
【0008】
これに対して特許文献3,4の動力伝達装置は、駆動側と従動側との動力の伝達をマグネットの吸着で行い、これらの間を室内側の窓ガラスが隔てるために直接的な連続関係を持たないが、特許文献3の動力伝達装置は、従動側の操作体を窓ガラス間の所定位置に固定する必要があるために、特許文献1,2と同様にブラインドを単独で容易に着脱できるものとはいえない。
一方、特許文献4の動力伝達装置は、室内側の駆動プーリとマグネットがサッシの上部、すなわち高所に取り付けられることから、使用者が操作しやすいように駆動プーリから操作チェーンが垂設されるが、ブラインド内蔵型の多重ガラスサッシは、その構成や体裁から浴室やキッチンに使用されることが多いために、このように室内側に操作チェーンが露出していると、操作チェーンが水濡れしたり汚損やカビの発生を招く虞があって衛生的に好ましくない。
また、駆動側と従動側のマグネットの間には窓ガラスが介在していて、動力の伝達は間接的に行われるため、動力がロスしたり従動側の回転にタイムラグを生じることが懸念される。
【0009】
さらに、特許文献3では操作部を室内側の窓ガラスに、また特許文献4では駆動側と従動側の双方を室内側の窓ガラスにそれぞれ固定することから、室内側の窓ガラスに取り付け加工を行う際や、過度な操作力によって窓ガラスを破損してしまう虞があり、窓ガラスを破損した場合には動力伝達装置の構成自体も損なわれることとなる。また、特許文献3,4のいずれも、窓ガラス間の空間部に配置した従動側部材や昇降コード,ラダーコードといった部材が室内側の窓ガラスを通して見えてしまうことから体裁のわるいものであった。
【0010】
本発明は、かかる実情を背景にしてなされたもので、その目的とするところは、スラットを昇降したり傾動するための動力を確実に伝達しながらもブラインドを多重ガラスサッシへ容易に着脱することができ、また窓ガラスの破損を防止しつつ衛生面で体裁のよいブラインド内蔵型多重ガラスサッシの動力伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明は、矩形のサッシ内部に所定の空間部を置いて複数枚の窓ガラスが室内外に並設される多重ガラスサッシと、前記サッシの上部枠下側に設けられた受け金具にヘッドボックスを傾脱して前記空間部に着脱自在に装着されるブラインドと、前記ヘッドボックスの内部に架設され、且つ前記ブラインドのスラットにつながれたラダーコードまたはボトムレールにつながれた昇降コードが懸装される従動軸と、前記ヘッドボックスに隣接して一方の側枠寄りに架設され、且つ前記ヘッドボックス内部の従動軸と連結機構を介して連結される駆動軸と、前記サッシの一方の側枠内部に配設され、前記ブラインドのスラットを昇降または室内外方向へ傾動操作するために、前記連結機構を介して前記駆動軸と前記従動軸とを一体に回転する操作部とを備え、前記連結機構は、前記駆動軸と前記従動軸の相隣る端部に軸着された柱状の駆動側継ぎ手と従動側継ぎ手とを備え、これら駆動側継ぎ手と従動側継ぎ手の接合面のそれぞれにS極とN極のマグネットが複数個ずつ周方向に交互に埋設されており、駆動側継ぎ手と従動側継ぎ手の極性の異なるマグネット同士が吸着することにより、前記駆動軸と前記従動軸とが一体に回転することを特徴としている。
【0012】
本発明の動力伝達装置は、スラットの昇降と傾動のどちらにも用いることができる。駆動側のマグネットと従動側のマグネットとで分断されるため、ブラインドを多重ガラスサッシの構成とは拘わりなく多重ガラスサッシに単独で着脱することが可能である。また駆動側と従動側とは、周方向へ交互に連続する異なる極性同士がスラスト方向に直接接続されるので、動力の損失やタイムラグがない。
【発明の効果】
【0013】
本発明のブラインド内蔵型多重ガラスサッシの動力伝達装置は、駆動側のマグネットと従動側のマグネットとで分断されるため、多重ガラスサッシの構成とは拘わりなくブラインドを窓ガラス間の空間部に単独で着脱することができ、組み付け時やメンテナンス時の作業性に優れる。また、駆動側と従動側とは、周方向へ交互に連続する異なる極性同士がスラスト方向に直接接続されるので動力の損失やタイムラグがなく、円滑で確実な作動が期待できる。さらに、動力伝達装置の取り付けに窓ガラスを利用しないから窓ガラスを破損したり動力伝達装置を分解してしまうといった虞がない。また、操作部をサッシの一方の側枠内部に収容するため、水濡れや汚損,カビの発生といった不具合がなく衛生的であり、しかも操作部やこれに連なる構成部材が側枠内部に収容されるので体裁もよい。さらに、構成が単純であるから製品全体を安価に製作できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一形態例を示す室内側から見た多重ガラスサッシ右上部の拡大断面平面図である。
【図2】本発明の一形態例を示す動力伝達装置の3つ具体例の模式図である。
【図3】本発明の一形態例を示す室内側から見た多重ガラスサッシの立面図である。
【図4】本発明の一形態例を示す多重ガラスサッシの断面側面図である。
【図5】本発明の一形態例を示す多重ガラスサッシの断面平面図である。
【図6】本発明の一形態例を示す室内側から見た多重ガラスサッシ右上部の拡大断面立面図である。
【図7】本発明の一形態例を示す受け金具とヘッドレールとの連結部分の拡大断面側面図である。
【図8】本発明の一形態例を示す受け金具とヘッドレールとの連結部分の拡大断面立面図である。
【図9】本発明の一形態例を示す受け金具とヘッドレールとの連結部分の拡大断面平面図である。
【図10】本発明の一形態例を示す左側枠上部の断面側面図である。
【図11】本発明の一形態例を示すスライダ近傍の立面図である。
【図12】本発明の一形態例を示す図11のXII−XII断面図である。
【図13】本発明の一形態例を示す図11のXIII−XIII断面図である。
【図14】本発明の一形態例を示すスライダ本体近傍を内側から見た立面図である。
【図15】本発明の一形態例を示すチルト操作ダイヤル近傍の立面図である。
【図16】本発明の一形態例を示すチルト操作ダイヤル近傍の断面立面図である。
【図17】本発明の一形態例を示すチルト操作ダイヤル近傍の断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜図17に示す本形態例は、本発明の動力伝達装置をブラインド8のスラット14を室内外方向へ傾動するのに用いており、多重ガラスサッシ1は、建物の窓用開口部(図示しない)に組み込み固定される外枠2と、該外枠2内に室内が手方向へ回動可能に配置されるサッシ本体3とからなっている。
サッシ本体3は、前記外枠2の内部にシールパッキンを介して液密に収容される内枠4と、該内枠4の内部に組み付け固定される室内側ガラス5及び室外側ガラス6と、これら室内外のガラス5,6の間に画成される空間部7と、該空間部7に昇降時材に配置される遮光用のブラインド8とを備えたブラインド内蔵型で、サッシ本体3の室内側に別製のブラインドを配置することがむずかしい、例えば浴室やキッチン等で採光とプライバシーの双方を確保するのに適している。
【0016】
サッシ本体3の内枠4は、上枠4aと下枠4b及び左右の側枠4c,4dとを、アルミ押出成形で形成された多数の型材を内外に組み合わせして縦長の矩形に構成されている。図1に示すように、内枠4の室内側には室内側レール4eが周設されており、該室内側レール4eの内側に、一枚の板ガラスを用いた前述の室内側ガラス5がシールパッキン10を用いて液密に固着されている。内枠4の室外側には、室外側レール4fと中間レール4gとが若干の間隔をおいて周設されており、これら両レール4f,4gの間に二枚の板ガラスを用いた前述の室外側ガラス6がシールパッキン11を用いて液密に固着されている。
なお本形態例では、ブラインド8をサッシ本体3に対して後付けしたりメンテナンス等で単独に着脱できるよう、室内側ガラス5と室外側ガラス6のいずれかを開閉できるようにしている。
【0017】
図3に示すように、右側枠4dの室内側上下には、ブラインド用のスライダ12とチルト操作ダイヤル13とが設けられており、前記ブラインド8は、スライダ12を上下方向へスライド操作することによって昇降し、また本発明の操作部であるチルト操作ダイヤル13を回動操作することによって、ブラインド8のスラット14が室内外方向へ開閉するようになっている。
下枠4dの室内側ほぼ中央にはサッシ本体用の開閉操作レバー15が設けられており、前記サッシ本体3は、開閉操作レバー15の回転により上枠4a及び下枠4bから上下方向へ突出する支軸(図示しない)を支点に室外方向へ開閉できるようなっている。
【0018】
図3〜図7に示すように、ブラインド8は、受け金具20を用いて上枠4aの下側に固着されるヘッドボックス21と、該ヘッドボックス21を通して前記空間部7に垂設される4本のラダーコード22及び2本の昇降コード23と、これらコード22,23の下端に固着されるボトムレール24と、該ボトムレール24及び前記ヘッドボックス21との間でラダーコード22に支持される複数枚の前記スラット14と、該スラット14及びボトムレール24を操作する前記スライダ12及びチルト操作ダイヤル13とを備えている。
【0019】
図1,3,5,6に示すように、ヘッドボックス21の内部上下には、ラダーコード用の動力伝達装置25と昇降コード23とが配設されている。動力伝達装置25は、チルト操作ダイヤル13の操作力をブラインド8に伝達してスラット14を室内外方向へ傾動するためのもので、サッシ本体3側に設けられる駆動側機構26とヘッドボックス21側に設けられる従動側機構27とからなっている。
駆動側機構26は、ガラス5,6間の空間部7と右側枠4dの内部空間とに跨って配設される駆動軸26aと、ガラス5,6間の空間部7で駆動軸26aの一端に固着される駆動側継ぎ手26bと、右側枠4dの内部空間で駆動軸26aの一端に固着される巻き掛けボス部26cとで構成され、また従動側機構27は、ヘッドボックス21の長手方向に沿って架設される従動軸27aと、該従動軸27aの右側枠端に固着される従動側継ぎ手27bとで構成されている。
【0020】
駆動軸26aと従動軸27aには、回転力を確実に伝えるために六角棒が用いられており、また駆動側継ぎ手26bと従動側継ぎ手27bとで本発明の連結機構28が構成される。駆動軸26a端部の巻き掛けボス部26cには伝動コード30の中間部が懸装され、該伝動コード30は右側枠4dの内部空間を垂下して、その両端は前記チルト操作ダイヤル13と連動する一対のラック31,31に連結されている。
【0021】
従動軸27aにはスペーサ33,33が軸着され、各スペーサ33の両端がそれぞれ軸受けブロック26に軸支されている。スペーサ33には、軸受けブロック26の開口部よりヘッドボックス21の内部に取り込まれたラダーコード22が懸装され、スペーサ33が従動軸27aと一体に回転することにより、スラット14の両端に位置するラダーコード22のいずれか一方が上昇または下降し、他方がこれと反対方向へ移動して、ラダーコード22が室内方向または室外方向へ開閉する。
【0022】
各昇降コード23は、軸受けブロック26の開口部を通してヘッドボックス21の内部に取り込まれ、さらに軸受けブロック26と右側枠4dの内部空間上部に軸支されるガイドローラ34,35を通して2本一緒になって右側枠4dの内部空間を下降し、前記スライダ12と一体のガイドローラ12jを懸回したのち右側枠4dの内部空間を上昇し、その端部が側枠4dのガイドローラ35近傍に係着されている。
【0023】
図3,図11〜図17に示すように、右側枠4dの室内側面には、やや幅広のスリット36が縦方向に開設されており、このスリット36の中間部あたりに、ブラインド昇降用のスライダ12が昇降可能に設けられ、またスリット36の下端にスラット開閉用のチルト操作ダイヤル13が固設されている。
スライダ12は、右側枠4dの任意の高さにとどまって、ブラインド8の昇降状態を確保するロック機能付きで、右側枠4dの内部空間に収容され、その一部がスリット36から右側枠4dの室内側へ突出して設けられる縦長のスライダ本体12aと、該スライダ本体12aの突出部と右側枠4dの室内側で嵌合するカバー12bと、該カバー12b及びスライダ本体12aの間に位置し、カバー12bからスライダ本体12aへ突出するガイドバー12c,12cに上下方向の移動をガイドされる一対のプッシュロッド12d,12dと、ガイドバー12c,12cの内側に位置し、スライダ本体12aに支軸12eを用いて回転自在に軸支される転動ローラ12f,12fと、両転動ローラ12f,12fの間でスライダ本体12aに支軸12gを用いて回転自在に軸支されるロックレバー12h,12hと、プッシュロッド12d,12dの内端近傍に突出するロックレバー12h,12hの作用腕12h1,12h1間に縮設されるコイル状のリターンスプリング12iと、スライダ本体12aの上端に回転自在に軸支される前述のガイドローラ12jとを備えている。
【0024】
各ロックレバー12hは、作用腕12h1とブレーキ片12h2とをL字状に連ねて形成されており、スライダ本体12aに上下逆向きに配設されている。ロックレバー12h,12hにはリターンスプリング12iからの弾発力が常時作用しており、これらロックレバー12h,12hをそれぞれ支軸12g回りに作用方向へ回動させて、それぞれのブレーキ片12h2,12h2を右側枠4dの仕切壁4hに圧接させるとともに、作用腕12h1,12h1を介してプッシュロッド12d,12dを外方向へ弾発し、該プッシュロッド12d,12dの外端をスライダ本体12aの上下に突出させている。
プッシュロッド12d,12dの外端がスライダ本体12aの上下に突出する上述の状態では、ロックレバー12h,12hのブレーキ片12h2,12h2が右側枠4dの仕切壁4hに強く圧接しているため、スライダ12は右側枠4dの任意の高さに固定され、ブラインド8の昇降位置が保持される。
【0025】
また、プッシュロッド12d,12dの外端をスライダ本体12aの内部に押し込むと、ロックレバー12h,12hのそれぞれがリターンスプリング12iの弾発力に抗して支軸12g回りに反作用方向へ回動し、ブレーキ片12h2,12h2が仕切壁4hから離間する。これにより、スライダ12の昇降が可能となり、ブラインド8の昇降状態を変更することができる。
【0026】
前記チルト操作ダイヤル13は、右側枠4dの内部空間に固定される保持枠40aにツマミ41が室内側へ突出して設けられ、該ツマミ41の内端にピニオン42が固着されている。保持枠40bの内部では、伝動コード30,30に連結されたラック31,31がピニオン42の両側に歯合しており、ツマミ41を操作してピニオン42が左右いずれかに回転するとラック31,31が上下反対方向へ移動し、これらにつながる伝動コード30,30を同じく上下逆方向へ移動させて、駆動側機構26の軸端26cを左右いずれかに回転させ、さらに従動側機構27の従動軸27aを同方向へ回転させて、ラダーコード22を室内方向または室外方向へ開閉する。
【0027】
図1,3,5,6に示すように、連結機構28を構成する駆動側継ぎ手26bと従動側継ぎ手27bは、六角棒を用いた駆動軸26aや従動軸27aよりも大径の円柱体に形成されており、これら継ぎ手26b,27bの接合面のそれぞれにS極とN極のマグネットが複数個ずつ周方向に交互に埋設されている。駆動側継ぎ手26bと従動側継ぎ手27bに対するマグネットの配設は、図2の(a)(b)(c)に示す態様があり、いずれもS極とN極とを交互に配設して極性の異なるマグネット同士をスラスト方向に直接吸着させることにより、駆動側機構26からの動力が従動側機構27へ確実に伝達するようにしている。
【0028】
図7に示すように、前記受け金具20は、室内外に対向する一対のリム20a,20bと、両リム20a,20bの上縁間をつなぐウェブ20cとを有し、室内側に配設される一方のリム20aには、内側へ突出する係止突部20dがハーフピアス等によって形成されている。室外側に配設される他方のリム20bには、一方のリム側へ平行に位置する切り欠き片20eが設けられ、該切り欠き片20eとこの切り欠き片20eから一方のリム側へ膨出するボス部20fの内周面にめねじ孔(図示しない)が開設されるとともに、他方のリム20bの下側を外側へ直角に折曲して第1係止片20gとなしている。
また、前記ヘッドボックス21は、室内外に対向する一対のリム21a,21bと、両リム21a,21bの下縁間をつなぐウェブ21cとを有し、室内側に配設される一方のリム21aを内側へクランク状に折曲し、その上部外側に受け金具20の係止突部20dを囲繞する収容凹部44を設けるととに、他方のリム21bの上部を内側へ直角に折曲して第2係止片21dとなしている。
【0029】
受け金具20は、止めねじ45を用いて上枠4aの下面に固着される。また、ヘッドボックス21は、一方のリム21aの上部を受け金具20の一方のリム20aの内側へ平行に差し込んで、該リム20aの係止突部20dを収容凹部44内に嵌合するとともに、他方のリム21bの第2係止片21dを受け金具20の第1係止片20gの上部に係止する。
つぎに、受け金具20のめねじ孔に他方のリム20bの外側より止めねじ46をねじ込んで、該止めねじ46の先端をヘッドボックス21の一方のリム21aの上部内側に押圧することにより、ブラインド8が空間部7に取り付けされる。
【0030】
このようにして、サッシ本体3に取り付けられたブラインド8は、駆動側機構26と従動側機構27とが同一軸線上に位置し、連結機構28の駆動側継ぎ手26bと従動側継ぎ手27bが極性の異なるマグネット同士の吸着により直接連結される。また、係止突部20dと収容凹部44との嵌め込みにより、ヘッドボックス21をその長さ方向において所定の取り付け位置へ容易に位置決めされる。さらに、ブラインド8の取り付け後には、取り付けの要となる止めねじ46が一方のリム21aの上部を押圧して係止突部20dと収容凹部44との嵌合状態をよく保つとともに、ム21aからの反力が止めねじ46の緩め止めとなり、スラット14が室内外方向へ開閉したり空間部7を昇降する際の振動を受けても、ブラインド8の取り付け状態を長期間よく保つ。
また、このようにして室内側ガラス5と室外側ガラス6との間の空間部7に装着したブラインド8は、上述の取り付けとは逆の手順によって取り外され、連結機構28はサッシ本体3側の駆動側継ぎ手26bとブラインド8側の従動側継ぎ手27bとに分断される。
【0031】
本形態例は、以上のように構成されており、ブラインド8をサッシ本体3に取り付けしたのち、図3,15,16に示すチルト操作ダイヤル13を左右いずれかに回転すると、駆動軸41を通してピニオン42がチルト操作ダイヤル13と同方向へ回転し、ピニオン42の両側に歯合するラック31,31を互いに上下反対方向へ移動して、これらにつながる伝動コード30,30がラック31,31と同方向へ移動し、駆動側機構26の駆動軸26aを左右いずれかに回転させる。
連結機構28の駆動側継ぎ手26bと従動側継ぎ手27bは、内部に埋設した異なる極性のマグネットがスラスト方向に直接吸着しているため、駆動軸26aの回転力は、動力の伝達ロスやタイムラグを生じることなく、駆動側継ぎ手26bから従動側継ぎ手27bを通して従動側機構27の従動軸27aへ確実に伝達され、該従動軸27aが駆動側機構26と同方向へ回転し、スラット14の両側に位置するラダーコード22,22を互いに上下反対方向へ移動させて、スラット14を室内方向または室外方向へ傾動させることにより室内への採光量が調整される。
【符号の説明】
【0032】
1…多重ガラスサッシ
3…サッシ本体
4…内枠
4a…上枠
4b…左側枠
4d…右側枠
4c…下枠
5…室内側ガラス
6…室外側ガラス
7…空間部
8…ブラインド
12…スライダ
13…チルト操作ダイヤル(本発明の操作部)
14…スラット
15…開閉操作レバー
20…受け金具
21…ヘッドボックス
22…ラダーコード
23…昇降コード
25…動力伝達装置
26…駆動側機構
26a…駆動軸
26b…駆動側継ぎ手
27…従動側機構
27a…従動軸
27b…従動側継ぎ手
28…連結機構
30…伝動コード
31…ラック
36…スリット
41…ツマミ
42…ピニオン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形のサッシ内部に所定の空間部を置いて複数枚の窓ガラスが室内外に並設される多重ガラスサッシと、
前記サッシの上部枠下側に設けられた受け金具にヘッドボックスを傾脱して前記空間部に着脱自在に装着されるブラインドと、
前記ヘッドボックスの内部に架設され、且つ前記ブラインドのスラットにつながれたラダーコードまたはボトムレールにつながれた昇降コードが懸装される従動軸と、
前記ヘッドボックスに隣接して一方の側枠寄りに架設され、且つ前記ヘッドボックス内部の従動軸と連結機構を介して連結される駆動軸と、
前記サッシの一方の側枠内部に配設され、前記ブラインドのスラットを昇降または室内外方向へ傾動操作するために、前記連結機構を介して前記駆動軸と前記従動軸とを一体に回転する操作部とを備え、
前記連結機構は、前記駆動軸と前記従動軸の相隣る端部に軸着された柱状の駆動側継ぎ手と従動側継ぎ手とを備え、これら駆動側継ぎ手と従動側継ぎ手の接合面のそれぞれにS極とN極のマグネットが複数個ずつ周方向に交互に埋設されており、駆動側継ぎ手と従動側継ぎ手の極性の異なるマグネット同士が吸着することにより、前記駆動軸と前記従動軸とが一体に回転する
ことを特徴とするブラインド内蔵型多重ガラスサッシの動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−222928(P2010−222928A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73970(P2009−73970)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000101776)アルメタックス株式会社 (22)
【出願人】(390027498)株式会社ヨコタ (29)
【Fターム(参考)】