説明

ブラインド用スラット

【課題】 電波障害を生じさせない非金属素材製であって、耐熱性と耐候性に優れたブラインド用スラットを提供すること。
【解決手段】構造の一部に下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂を主成分とする層を少なくとも1層有するブラインド用スラットの作製。


(但し、前記式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波障害を起こさず耐候性に優れたブラインド用スラットに関し、より詳細には特定構造のポリカーボネート樹脂を含む樹脂組成物からなる層を有するブラインド用スラットに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の窓等の開口部内面に、日除けや目隠しのために、ブラインドが広く用いられてきた。従来は専らスチール製やアルミ製が用いられてきたが、これらは電波を反射しやすいためテレビや携帯電話を使用するうえで電波障害の原因となるという問題が起こっていた。
かかる状況から、代替材としてアクリル樹脂や塩化ビニル樹脂等からなるプラスチック製、織布や不織布等からなる繊維製、あるいは紙製のブラインドが提案されるようになった(特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭48−64247号公報
【特許文献2】実開昭49−78224号公報
【特許文献3】特開平7−158365号公報
【特許文献4】特開2000−199391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら前記プラスチック製ブラインドは耐熱性に乏しく、夏場等に経時変化により捻れや自重垂れが生じることがあり、繊維製や紙製のブラインドは汚れを掃除しにくく強度も不十分である等の不具合があり、更にいずれも耐候性が不十分で経年劣化により黄変等が進行するなど、従来の金属製ブラインドの代替として満足のいくものがなかった。
かかる状況から本発明の目的は、電波障害を生じさせない非金属素材製であって、耐熱性と耐候性に優れたブラインド用スラットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定構造のポリカーボネート樹脂を主成分とする層を少なくとも1層有するブラインド用スラットが上記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
本発明において「主成分とする」とは、当該部位における対象成分の比率が50重量%以上、好ましくは75重量%以上、特に好ましくは90重量%以上であって100質量%を含む概念をいう。
【0006】
第1の発明によれば、構造の一部に下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂を主成分とする層を少なくとも1層有するブラインド用スラットが提供される。
【0007】
【化1】

【0008】
(但し、前記式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
第2の発明によれば、第1の発明において、前記ポリカーボネート樹脂を主成分とする層を少なくとも一方の表層に有する多層構造であるブラインド用スラットが提供される。
第3の発明によれば、第1又は第2の発明において、前記ジヒドロキシ化合物が下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物であるブラインド用スラットが提供される。
【0009】
【化2】

【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電波障害を生じさせない非金属素材製であって、かつ耐熱性と耐候性に優れたブラインド用スラットが提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の1つの例としてのブラインド用スラットについて説明する。但し、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
<ポリカーボネート樹脂を主成分とする層>
本発明のブラインド用スラットは、構造の一部に下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂を主成分とする層を少なくとも1層有することが重要である。
【0012】
【化3】

【0013】
(但し、前記式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
すなわち、前記ジヒドロキシ化合物は、二つのヒドロキシル基と、更に前記式(1)の部位を少なくとも含むものをいう。
構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物の主成分としては、分子内に式(1)で表される構造を有していれば特に限定されるものではないが、具体的には、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物や、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物および下記式(3)で表されるスピログリコール等で代表される環状エーテル構造を有する
ジヒドロキシ化合物が挙げられる。これらのなかでも環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物が好ましく、環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物のなかでも特に式(2)で表されるような無水糖アルコールが好ましい。より具体的には、式(2)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられる。また、下記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物としては、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン(慣用名:スピログリコール)、3,9−ビス(1,1−ジエチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9−ビス(1,1−ジプロピル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカンなどが挙げられる。
これらは単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0014】
【化4】

【0015】
【化5】

【0016】
(式中、R〜Rはそれぞれ独立に、炭素数1から炭素数3のアルキル基である。)
前記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物は、生物起源物質を原料として糖質から製造可能なエーテルジオールである。とりわけイソソルビドは澱粉から得られるD−グルコースを水添してから脱水することにより安価に製造可能であって、資源として豊富に入手することが可能である。これら事情によりイソソルビドが最も好適に用いられる。
【0017】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は前記式(1)で表される構造単位以外の構造単位を更に含むこともでき、例えば国際公開第2004/111106号パンフレットに記載の脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位や、国際公開第2007/148604号パンフレットに記載の脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を挙げることができる。
【0018】
前記脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の中でもエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、及び1,6−ヘキサンジオールから選択される少なくとも1種のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことが好ましい。
前記脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の中でも5員環構造又6員環構造を含むことが好ましく、特に6員環構造は共有結合によって椅子型又は舟型に固定されていてもよい。これら構造の脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことによって、得られるポリカーボネート樹脂の耐熱性を高めることができる。脂環式ジヒドロキシ化合物に含まれる炭素原子数は通常70以下、好ましくは50以下、更に好ましくは30以下である。
【0019】
前記5員環構造又は6員環構造を含む脂環式ジヒドロキシ化合物としては、前記パンフレットに記載のものを例示でき、中でもシクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール及びペンタシクロペンタデカンジメタノールが好ましく、更にはシクロヘキサンジメタノール又はトリシクロデカンジメタノールが経済性や耐熱性などから最も好ましい。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0020】
尚、シクロヘキサンジメタノールの中でも工業的に入手が容易である、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂の、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、また好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下である。かかる範囲とすることで、カーボネート構造に起因する着色、生物資源物質を用いる故に微量含有する不純物に起因する着色等を抑制することができ、可視光透過性を有するポリカーボネート樹脂として十分使用することができる。また、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位のみで構成されるポリカーボネート樹脂では達成が困難な、適当な成形加工性や機械強度、耐熱性等の物性バランスを取ることができる。
【0021】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位、又は脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位とからなることが好ましいが、本発明の目的を損なわない範囲で、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が含まれていてもよい。例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称:ビスフェノール−A)等を、少量共重合させたりこれを含むポリカーボネート樹脂等をブレンドさせたりすることが挙げられ、耐熱性や成形加工性を効率よく改善できることが期待できるが、こうした芳香族化合物を用いると、一般に耐候性に不具合が生じる傾向があるため、その使用量を最低限とするか、追加成分として紫外線吸収剤を相当量添加するなどの工夫が必要となる。
【0022】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により測定され、通常45℃以上155℃以下、好ましくは80℃以上155℃以下、更に好ましくは100℃以上155℃以下である。また通常単一のガラス転移温度を有し、重合組成比を適宜調整することで、かかるガラス転移温度に調整することが可能である。
【0023】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、一般に行われる重合方法で製造することができ、ホスゲン法、炭酸ジエステルと反応させるエステル交換法のいずれでもよい。中でも、重合触媒の存在下に、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物とその他のジヒドロキシ化合物とを、炭酸ジエステルと反応させるエステル交換法が好ましい。エステル交換法は、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル、塩基性触媒、該触媒を中和させる酸性物質を混合し、エステル交換反応を行う重合方法である。
【0024】
炭酸ジエステルは、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ビフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等が例示でき、中でもジフェニルカーボネートが好適に用いられる。
【0025】
このようにして得られた、本発明で用いる構造の一部に前記式(1)で表される部位を
有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂の分子量は、還元粘度で表すことができ、還元粘度は、通常0.30dL/g以上であり、0.35dL/g以上が好ましく、還元粘度の上限は、1.20dL/g以下、1.00dL/g以下がより好ましく、0.80dL/g以下が更に好ましい。ポリカーボネート樹脂の還元粘度が低すぎると成形品の機械的強度が小さい可能性があり、大きすぎると、成形する際の流動性が低下し、生産性や成形性を低下させる傾向がある。
【0026】
還元粘度は、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート濃度を0.6g/dLに精密に調製し、温度20.0℃±0.1℃でウベローデ粘度管を用いて測定する。
本発明におけるポリカーボネート樹脂を主成分とする層は、前記ポリカーボネート樹脂以外のその他の樹脂を含有することができる。含有することができるその他の樹脂の種類については、本発明の特徴である耐熱性や耐候性を損なわないものであれば特に限定されるものではなく、公知の樹脂を用いることができる。
【0027】
また、前記その他の樹脂の含有量についても、前述の通り前記ポリカーボネート樹脂が当該層の主成分となり、かつ本発明の特徴である耐熱性や耐候性を損なわない範囲であれば、特に限定されるものではない。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、可視光〜近紫外波長領域において光吸収が小さく、受光による黄変劣化に関して耐候性が優れるため、該樹脂自体の黄変劣化を抑制するための紫外線吸収剤を使用しないか、使用したとしてもその量を著しく低減することが可能となる。本発明に使用するポリカーボネート樹脂以外のその他の樹脂を含有するなど、黄変劣化の対策が必要な場合については、これを抑制するための必要最低限の紫外線吸収剤を添加すればよい。
【0028】
この場合、前記ポリカーボネート樹脂を主成分とする層の全樹脂100重量%に対する紫外線吸収剤の添加量は0.0001〜10重量%の範囲であることが好ましい。また、0.0005重量%以上、1重量%以下の割合で使用することがより好ましく、0.001重量%以上、0.5重量%以下の割合で配合することがさらに好ましく、0.01重量%以上、0.2重量%以下の割合で配合することが特に好ましい。0.0001重量%以上であれば紫外線吸収の性能を十分に発現することができ、また10重量%以下であれば、樹脂の着色を抑制できたり、原料コストの低減を図ることができたりする。更に、かかる範囲で紫外線吸収剤の量を調節することにより、本発明のブラインド用スラットの表面への紫外線吸収剤のブリードアウトや、本発明のブラインド用スラットの機械特性低下を生じることなく、本発明のブラインド用スラットの耐候性を向上することができる。
【0029】
<紫外線吸収剤>
本発明に用いるポリカーボネート樹脂に必要に応じて添加する紫外線吸収剤は、各種市販のものを使用できるが、従来公知の芳香族ポリカーボネート樹脂への添加用に専ら用いられるものを好適に用いることができる。一例としては例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル) ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブ
チル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)などのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)などのベンゾオキサジン系紫外線吸収剤、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノールなどのヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線吸収剤の融点としては、特に120〜250℃の範囲にあるものが好ましい。融点が120℃ 以上の紫外線吸収剤を使
用すると、成形品表面のガスによる曇りが減少し改善される。
【0030】
より具体的には、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
、2−(2 '−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル) −5−クロ
ロベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−(3",4",5",6"−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5'−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビ
ス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2
−イル)フェノール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤や2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノールなどのヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が使用され、これらのうちでも、特に、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル) −6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フ
ェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノールが好ましい。これらの紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
本発明におけるポリカーボネート樹脂を主成分とする層には、その他の添加剤成分として、耐熱安定剤、耐光安定剤、着色剤等を、本発明の特徴を損なわない範囲で添加してもよい。
<ブラインド用スラット>
本発明のブラインド用スラットは、前記ポリカーボネート樹脂を主成分とする層が耐熱性と耐候性に優れるため、当該層単層のみからなるものでも良い。また、当該層を少なくとも一方の表層に有してなる多層構造としてもよい。
【0032】
当該層を少なくとも一方の表層に有する場合、当該層を太陽光の直接照射される面に向けた場合に、熱による変形や紫外線による黄変劣化などの不具合を生じにくいため好ましい。特に、両方の表層に有する場合には、成形加工時のカール等の問題が生じにくい上に、ブラインドの向きに関わらず熱による変形や紫外線による黄変劣化などの不具合を生じにくいため好ましい。
【0033】
本発明のブラインド用スラットを多層構造とする場合、前記ポリカーボネート樹脂を主成分とする層以外のその他の層は、熱可塑性樹脂からなる樹脂層、紙、織布、不織布などの公知の材料から、ブラインド用スラットの軽量化、補強、模様等の意匠性付与、等の目的で適宜選択することができる。
耐熱性が十分でない樹脂等からなるブラインド用スラットは、湾曲形状による構造剛性を付与したり、線状の補強構造を備えたり等の策を施さないと、日中太陽光を浴び続けたときに軟化して熱垂れを起こすことが問題となるが、本発明のブラインド用スラットは耐熱性に優れており、上記対策を特に講じずとも熱垂れを起こすことがない。
【0034】
従来の樹脂製または紙製等のブラインド用スラットは、太陽光を浴び続けると紫外線黄変により黄変劣化が徐々に進行するため、こうした外観上の劣化を抑制するために種々の紫外線吸収剤を内部に添加したり、表面に紫外線吸収機能を有するコート剤を塗布したりする策を施す必要があるが、本発明のブラインド用スラットは耐候性に優れており、上記対策を特に講じずとも著しい黄変劣化を起こすことがない。
【0035】
具体的には、UV照射強度:75mW/cm、照射温度:63℃、照射湿度:50%RHの条件において50時間UV照射後と、UV照射前とのYI値(黄色度)の差であるΔYIを、好ましくは1.0未満、より好ましくは0.5未満とすることができる。
本発明のブラインド用スラットの厚みは、特に限定されるものではないが、通常0.2〜2mmの範囲であることが好ましい。厚みが0.2mm以上であれば好適に形状を保持
することができる。また、厚みが2mm以下であれば製品重量が過度に重くなることがない。
【0036】
本発明のブラインド用スラットを多層構造とする場合は、本発明のポリカーボネート樹脂を主成分とする表層の厚みを50μm以上とし、全層の厚さを前記範囲とすることが好ましい。前記表層厚み範囲であれば、多層構造のスラットであっても十分な耐熱性や耐候性を有することができる。なお両表層に本発明のポリカーボネート樹脂を主成分とする層を有してなる場合は、各表層の厚みが同じであればカール等の不具合が生じにくくなるため好ましい。
【0037】
<製造方法>
ブラインド用スラットは、一般に上に凸の湾曲形状を有しており、これより形状剛性を付与して自重による垂れを防ぐ等の工夫がなされている。
本発明のブラインド用スラットが、前記ポリカーボネート樹脂を主成分とする層単層のみからなる場合は、押出成形、カレンダー成形等の公知の成形方法によって平板状の原反を成形した後、これを逐次または連続で、熱成形、真空成形、圧空成形等の公知の成形方法によって所定形状に成形して製品とすることができる。
【0038】
また、押出機の口金出口の形状を所定形状の断面として、異形押出成形して直接製品を得ることもできる。
また、本発明のブラインド用スラットを多層構造とする場合、前記ポリカーボネート樹脂を主成分とする層と前記その他の層を積層させる方法は特に限定されるものではなく、共押出成形により熱接着させてもよいし、個別に押出成形等により得た各層を積層させて逐次または連続で熱接着させてもよいし、接着剤や粘着剤等を層間に塗布して積層接着させてもよく、用いる素材などにより適宜選択される。
【0039】
この場合、平板状で積層させてから、単層の場合と同様に所定形状に成形して製品とすることもできるし、共押出成形が可能であれば、単層の場合と同様に異形押出成形して直接製品を得ることもできる。
本発明のブラインド用スラットを製造する過程での押出成形やカレンダー成形等において、前記ポリカーボネート樹脂や前記その他の樹脂、前記添加剤を混合する方法は特に限定されるものではない。具体的には成形前にドライブレンドしてもよく、あらかじめ全ての樹脂を溶融混練してペレット化しておいてもよく、あらかじめ前記その他の樹脂や前記添加剤が高濃度のマスターバッチペレットを作製しておき、これに前記ポリカーボネート樹脂をドライブレンドして希釈することもできる。
【実施例】
【0040】
本発明をより具体的かつ詳細に説明するために、以下に実施例を示すが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
<材料>
樹脂成分として、以下の材料を用いた。
(a−1)ジヒドロキシ化合物としてイソソルビドと、1,4−シクロヘキサンジメタノールを用い、イソソルビドに由来する構造単位:1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位=70:30(モル%)となるように溶融重合法により得た、還元粘度
0.51dl/gのポリカーボネート樹脂。
(a−2)鉛系硬質塩化ビニル樹脂。
(a−3)ポリメタクリル酸メチル樹脂である、三菱レイヨン社製「アクリペットVH5」。
(a−4)ジヒドロキシ化合物として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを用い、界面重合法により得たポリカーボネート樹脂である、三菱エンジニアリングプラ
スチックス社製「ユーピロンS3000」。
【0041】
<評価方法>
(1.耐候性)
(a−1)〜(a−4)の各樹脂を単軸押出機で加熱溶融させた後、Tダイ口金を通じて押出し、厚さ0.5mm、幅25mmの平板状に引き取りながら冷却してスラット用シートとした。試験機として岩崎電気製アイスーパUVテスターSUV−W151を用いて、UV照射強度:75mW/cm、照射温度:63℃、照射湿度:50%RHの条件により前記のシートをサンプルとしてUVを照射した。UV照射前と照射50時間後のサンプルのYI値(黄色度)をJIS−K7103に基づいて分光測色計(「SC−T」、スガ試験機(株)製)を用いて測定し、測定前後の差であるΔYIを算出した。このΔYIの数値に基づいて、各サンプルの耐候性を以下の基準で評価し、結果を表1に示した。
【0042】
○:ΔYIが0以上1.0未満
×:ΔYIが1.0以上
【0043】
【表1】

【0044】
(2.耐熱性)
次にスラット用シートを長さ500mmで切り出し、円弧状断面になるよう熱成形し、両側100mmずつ突き出るよう支点間距離300mmで2点支持し、70℃の熱風乾燥機中に24時間静置し、形状変化を目視観察し、以下の基準で評価し、結果を表2に示した。
【0045】
○:変形のないもの
×:大きく垂れたもの
【0046】
【表2】

【0047】
上記の通り、本発明のブラインド用スラットを例示した実施例は、目的の耐候性と耐熱性を十分達成することができている。
一方、比較例1の塩化ビニル樹脂を使用したブラインド用スラットは耐候性も耐熱性も不十分である。また比較例2のアクリル樹脂を使用したブラインド用スラットは、耐候性
は優れるが耐熱性は不十分である。従来公知の補強技術としてガラス繊維不織布等を内部に積層するなどの方法で耐熱性を改善する手法が提案されているが、層厚が厚くなる、比重が重くなる、廃棄時の分別が困難である、等看過できない課題が多い。比較例3の芳香族ポリカーボネート樹脂を使用したブラインド用スラットは耐候性が不十分である。比較例1及び比較例3に例示した耐候性が不十分な構成においては、多量の紫外線吸収剤等を添加すれば、限定的に耐候性を付与することも可能ではあるが、原料価格が非常に高価になる、添加剤成分が経時的にブリードアウトして表面汚れが著しくなる、一般に商品寿命が長いブラインドにとってはこうした耐候性付与手段を以てしても不十分である等、抜本的な解決には至らない。
【0048】
以上、現時点において、最も実践的であり、且つ好ましいと思料する実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うブラインド用スラットもまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造の一部に下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂を主成分とする層を少なくとも1層有するブラインド用スラット。
【化1】

(但し、前記式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
【請求項2】
前記ポリカーボネート樹脂を主成分とする層を少なくとも一方の表層に有してなる多層構造である、請求項1に記載のブラインド用スラット。
【請求項3】
前記ジヒドロキシ化合物が、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のブラインド用スラット。
【化2】


【公開番号】特開2012−67230(P2012−67230A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214476(P2010−214476)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】