説明

ブラックマトリックス用感光性樹脂組成物

【課題】反応性に富む高感度の光重合開始剤と、界面活性光開始剤の両者の長所を兼ね備えた新規な光重合開始剤を含有し、高感度で十分なパターン形成能を有するブラックマトリックス用感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)アルカリ現像性バインダー樹脂、(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー、(C)少なくとも1種の界面活性光開始剤、及び(D)遮光性顔料分散体を必須の成分とし、(C)成分として、一般式(1)で表される界面活性光開始剤を配合してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフッ素系界面活性剤とオキシムエステルとを組み合わせた新規な界面活性光開始剤を用いたブラックマトリックス用感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶表示装置は、光の透過量あるいは反射量を制御する液晶部とカラーフィルターとを構成要素とするが、そのカラーフィルターの製造方法は、通常、ガラス、プラスチックシート等の透明基板の表面に黒色のマトリックスを形成し、続いて、赤、緑、青の異なる色相を順次、ストライプ状あるいはモザイク状等の色パターンで形成する方法が用いられている。パターンサイズはカラーフィルターの用途並びにそれぞれの色により異なるが赤、緑、青の画素は100μm以下へ、ブラックマトリックスは10μm以下へ細線化され、これにともなって感光性樹脂材料には高い寸法精度が求められている。ここ数年、液晶テレビ、液晶モニター、カラー液晶携帯電話などあらゆる分野でカラー液晶表示装置が用いられている。カラーフィルターは、カラー液晶表示装置の視認性を左右する重要な部材の一つであり、視認性の向上、すなわち、鮮明な画像を得るためには、カラーフィルターを構成する赤、緑、青などの画素を今まで以上に高色純度化、及び、ブラックマトリックスでは高遮光化を達成する必要があり、感光性樹脂組成物に着色剤を従来よりも多量に添加しなければならない。
【0003】
しかしながら、着色剤の含有量が増加すると、カラーフィルター形成時、特にブラックレジスト膜では紫外線領域の光が塗膜深部にまで届きにくくなり、光硬化性樹脂を含んだ組成物中の硬化不良によって、パターンの密着不良や現像時のパターン剥がれ、エッジ形状のシャープ性損失が生じる問題が発生する。
【0004】
そこで、高濃度の着色剤が含まれる場合でも硬化不良が生じないように、高感度の光重合開始剤や重合度の高いアクリルモノマーを用いたりすることがある。しかしながら、現在の技術では光重合開始剤やアクリルモノマーについて高感度化が限界に来ているのが現状であり、ブラックマトリックスの高遮光を達成させることは非常に困難となっている。そのため、光重合開始剤について、高感度化を達成し、低露光量でのパターン寸法安定性、パターン密着性、パターンのエッジ形状のシャープ性が良好なパターンを広い現像マージンで得ることが求められている。
【0005】
そこで、例えば特許文献1には、顔料濃度を高めて良好な色再現性を図りつつ感度低下を防止するために、高感度光重合開始剤としてハロメチルオキサジアゾール系化合物、ハロメチル-S-トリアジン系化合物の使用例が開示されている。しかしながら、これらの化合物は酸素による反応阻害により表面平坦性低下は改善されるものの、パターン寸法精度の点では依然として満足すべき水準には達していない。また、例えば特許文献2〜5には高感度光重合開始剤として、感光性樹脂組成物にオキシムエステル系の光重合開始剤を用いた例が開示されているが、併用されているアルカリ可溶性樹脂化合物の感度及び現像特性が十分でないため、高濃度の着色剤を含む感光性樹脂組成物では良好なパターン形成を行うことは困難である。
【0006】
また、特許文献6〜12には、光重合性モノマーとしてビスフェノールフルオレン構造を有した樹脂を含むカラーフィルター用感光性樹脂組成物の実施例が示されているが、高濃度顔料領域において良好なパターン形成をおこなうための十分な感度や密着性の点で改良の余地がある。
【0007】
一方、特許文献13〜15には界面活性機能を有する界面活性光開始剤が開示されている。これら界面活性機能を有する界面活性光開始剤では、界面活性部分の作用によって、少量でも光重合性レジスト膜の表層に光重合開始剤が集積し、光が当たる部分のみに光重合開始剤を存在させることができ、光重合に寄与しない膜内部の存在量を減らし、結果として光重合開始剤の添加量を減らすことができるため、過剰な光重合開始剤の添加による問題点を解消することができる。しかしながら、これら従来知られている界面活性光開始剤は、発生するラジカルの分子量が大きいためラジカルが拡散し難く、結果として感光性樹脂組成物の光重合が十分に進行しないため、光重合開始剤としての機能が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平1-152449号公報
【特許文献2】特開平7-278214号公報
【特許文献3】特開2001-264530号公報
【特許文献4】特開2002-323762号公報
【特許文献5】特開2003-96118号公報
【特許文献6】特開2004−10838号公報
【特許文献7】特開2003−270785号公報
【特許文献8】特開平10−301276号公報
【特許文献9】特開平9−197663号公報
【特許文献10】特開平9−95638号公報
【特許文献11】特開平7-3122号公報
【特許文献12】特開2006-276421号公報
【特許文献13】特表2004-515611号公報
【特許文献14】特表2004-515612号公報
【特許文献15】特表2004-522819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明者等は、高濃度で顔料を含む場合でも密着性に優れると共に、良好なパターン形成が実現できるカラーフィルター用感光性樹脂組成物について鋭意検討した結果、フッ素系界面活性剤とオキシムエステルとを組み合わせた新規な界面活性光重合開始剤を含有させることでこれらを達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
したがって、本発明の目的は、反応性に富む高感度の光重合開始剤と、界面活性光開始剤の両者の長所を兼ね備えた新規な光重合開始剤を含有し、高感度で十分なパターン形成能を有するブラックマトリックス用感光性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、(A)アルカリ現像性バインダー樹脂、(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー、(C)少なくとも1種の界面活性光開始剤、及び(D)遮光性顔料分散体を必須の成分として含有するブラックマトリックス用感光性樹脂組成物であって、界面活性光開始剤(C)として、下記一般式(1):
【化1】

(式中、R1は水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を示し、R2はアルキル基、アルコキシ基又は置換基を有してもよいフェニル基を示し、Rfは炭素数6〜15のパーフルオロ基を示す。)で表される界面活性光開始剤を配合してなるブラックマトリックス用感光性樹脂組成物である。
【0012】
また、本発明は、上記ブラックマトリックス用感光性樹脂組成物を硬化させて形成した硬化物である。
【0013】
更に、本発明は、上記ブラックマトリックス用感光性樹脂組成物を塗布、硬化させて得られる硬化物によって形成されたカラーフィルターである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のブラックマトリックス用感光性樹脂組成物は、開始剤としてオキシムエステル構造と界面活性効果を有するパーフルオロ基とを有する新規な界面活性光重合開始剤を含むため、カラーフィルターのブラックマトリックス形成時において、この光重合開始剤は界面活性効果によりレジスト膜表面に集約して、光重合性ブラックレジスト膜のような表層しか光が到達しない場合でも少量で光重合性を発現せしめることができる。そのため、ブラックマトリックス用感光性樹脂組成物において光重合開始剤の添加量を減少させることができ、密着性に優れると共に、良好なパターン形成が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明に係る実施例で合成した光重合開始剤のH1NMR
【図2】図2は、本発明に係る実施例で合成した光重合開始剤のIR
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の感光性樹脂組成物について詳細に説明する。
【0017】
本発明のブラックマトリックス用感光性樹脂組成物は、好適には下記一般式(5)のような(A)アルカリ可溶性樹脂(アルカリ現像性バインダー樹脂)を主成分として含有する、アルカリ現像型感光性樹脂組成物としての性質を有する樹脂組成物である。
【0018】
本発明における(A)アルカリ可溶性樹脂としては、少なくともその一成分にフルオレン骨格を有するエポキシアクリレート樹脂が用いられる。使用されるフルオレン骨格を有するエポキシアクリレート樹脂の好ましいものとしては、下記一般式(2)で表されるエポキシ(メタ)アクリレートと多塩基酸又はその酸無水物とを反応させて得られるものが挙げられる。
【化2】

(式中、式中、R3及びR4は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基、ハロゲン原子の何れかであり、Xは下記式(3)
【化3】

を示し、nは0〜10であり、AはCH2=CR'-CO-を示し、R'は水素原子又はメチル基を示す。)
【0019】
一般式(2)で表されるエポキシアクリレートと多塩基酸又はその酸無水物とを反応させて(A)成分の必須成分として優れるフルオレン骨格を有するエポキシアクリレート樹脂を製造する方法については、特に限定されるものでなく、特許文献(特開平8-278630号公報)に記載されているような公知の方法を採用することができる。有利には、エポキシアクリレートの分子中のヒドロキシ基1モル当たり酸成分が1/2モルとなるように定量的に反応させることが望ましい。また、反応温度としては、90〜130℃、好ましくは95〜125℃である。なお、本発明でいうエポキシアクリレート樹脂は、エポキシメタアクリレート樹脂等のエポキシアクリレート樹脂の誘導体を含む意味で使用される。
【0020】
ここで、多塩基酸又はその酸無水物としては、例えば、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸、メチルテトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸及びこれらの酸無水物が挙げられる。本発明においては、これら多塩基酸又はその酸無水物にa)飽和ジカルボン酸類又はb)飽和テトラカルボン酸類を用いることが特に好ましい。ここで、飽和ジカルボン酸類及び飽和テトラカルボン酸類の飽和は、カルボキシル基又は酸無水物基を構成するカルボニル基(>C=O)以外の不飽和結合(単結合以外の結合)を有しないことを意味する。好ましい飽和カルボン酸類を例示すると、ブタンテトラカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、コハク酸とこれらの酸無水物が例示される。なお、テトラヒドロフタル酸も好ましいカルボン酸類として例示される。
【0021】
a)飽和ジカルボン酸類とb)飽和テトラカルボン酸類は、それぞれ1種以上を使用することができ、a)飽和ジカルボン酸類とb)飽和テトラカルボン酸類の使用割合は、a/bのモル比として0.1〜10となる範囲、好ましくは0.2〜1となる範囲である。この使用割合は、最適分子量、アルカリ現像性、光透過性、耐熱性、対溶剤性、パターン形状の効果に適した割合を選択することができるが、飽和テトラカルボン酸類の使用割合が大きいほどアルカリ溶解性が大となり、分子量が大となる傾向がなる。なお、飽和ジカルボン酸類と飽和テトラカルボン酸類以外の、ジカルボン酸類とテトラカルボン酸類を使用する場合も、上記モル比を満足させることがよい。以下、(B)〜(D)成分について説明する。
【0022】
(B)成分の少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するモノマーや、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ジメタノールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類を挙げることができ、これらの化合物は、その1種又は2種以上を使用することができる。
【0023】
これら(B)成分と(A)成分のアルカリ現像性バインダー樹脂との配合割合については、アルカリ可溶性樹脂/(B)で20/80〜90/10であるのがよく、好ましくは40/60〜80/20であるのがよい。アルカリ可溶性樹脂の配合割合が少ないと、光硬化後の硬化物が脆くなり、また、未露光部において塗膜の酸価が低いためにアルカリ現像液に対する溶解性が低下し、パターンエッジががたつきシャープにならないといった問題が生じる。反対に、上記割合より多くなると、樹脂に占める光反応性官能基の割合が少なく架橋構造の形成が十分でなく、更に、樹脂成分における酸価度が高過ぎて、露光部におけるアルカリ現像液に対する溶解性が高くなることから、形成されたパターンが目標とする線幅より細ったり、パターンの欠落が生じや易くなるといった問題が生じるおそれがある。
【0024】
次に、(C)成分について、本発明では下記一般式(1)で表される界面活性光重合開始剤を光重合開始剤として用いる。
【化4】

(式中、R1は水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を示し、R2はアルキル基、アルコキシ基又は置換基を有してもよいフェニル基を示し、Rfは炭素数6〜15のパーフルオロ基を示す。)
【0025】
以下、本発明で使用する(C)界面活性光開始剤の合成例を示す。
第一段階として、カルバゾール-9-エタノールを原料として合成される。カルバゾール-9-エタノールに2−メチル−ベンゾイルクロリド、ジクロロメタンを混合し、塩化アセチル、塩化アルミニウムの存在下にFriedel-Crafts反応によりベンゾイル基、アセチル基を導入する。
【化5】

【0026】
このFriedel-Crafts反応においては、カルバゾール-9-エタノールの水酸基がエステル化されるため、水酸化カリウムを用いた加水分解により水酸基へと戻すことにより、フッ素官能基導入前駆体となる末端水酸基を有するジアシル体を得ることができる。
【化6】

【0027】
次に、末端水酸基に界面活性能を発現させるためパーフルオロ基(Rf)を導入するが、一般的な求核置換反応であり、目的とするRf体を得るには、1級水酸基を前駆体とし、アミン系の塩基を用いて導入する方法が挙げられる。
【0028】
ここでパーフルオロ基を導入するために好適に用いられるフッ素原子を有する化合物としては、C6141125の構造を有する基であるのが好ましく、特には、下記式で示されるものがより好ましい例として挙げることができる。
【化7】

【0029】
以下に、一例として末端水酸基に界面活性剤部分C917を導入する場合の反応例を示す。末端水酸基を有するジアシル体にC918及びトリエチルアミンを加えてパーフルオロ基を導入する。
【化8】

【0030】
ここで、界面活性部分のC917で示されるフッ素官能基は、以下のAのような構造であり、Bのような異性体が含有されることがあるが、同様の効果を示すことから、同一にフッ素含有基として効果を扱える。
【化9】

【0031】
次に、アセチル基を水酸化アンモニウムを用いてオキシム化するが、公知の方法を用いることができる。すなわち、例えばエタノール溶媒中に塩化ヒドロキシルアンモニウムと反応させることでオキシムエステル化されたオキシム化合物とすることができる。
【化10】

【0032】
さらに、得られたオキシム化合物を、t-ブチルメチルエーテル溶媒中でアセチルクロライド、トリエチルアミンの存在下にエステル化することで目的の界面活性光重合開始剤を得ることができる。
【化11】

【0033】
また、成分(C)の界面活性光重合開始剤の他に、成分(E)として非界面活性光重合開始剤を併用することができる。非界面活性光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン等のアセトフェノン類、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p'-ビスジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、2-(o-クロロフェニル)-4,5-フェニルビイミダゾール、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)ビイミダゾール、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2、4,5-トリアリールビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物類、2-トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル-5-(p-シアノスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-(p-メトキシスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチルチアゾール化合物類、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-メチル−4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-フェニル-4、6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロRメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4,5-トリメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メチルチオスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン等のハロメチル−s−トリアジン系化合物類、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(o-ベンゾイルオキシム)、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-o-ベンゾアート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-o-アセタート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1-オンオキシム-o-アセタート、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)等のo-アシルオキシム系化合物類、ベンジルジメチルケタール、チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2-イソプロピルチオキサンソン等のイオウ化合物、2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類、アゾビスイソブチルニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物、トリエタノールアミン、トリエチルアミン等の第3級アミンなどが挙げられる。これらの光重合開始剤は、その1種又は2種以上を使用することができる。
【0034】
(C)成分の光重合開始剤の使用量(必要に応じて成分(E)を用いる場合はその合計使用量)は、(A)アルカリ現像性バインダー樹脂及び(B)成分の光重合性モノマー各成分合計100重量部を基準として2〜60重量部であるのがよく、好ましくは6〜15重量部であるのがよい。光重合開始剤の配合割合が上記割合より少ないと、光重合の速度が遅くなって感度が低下し、一方、多すぎると感度が強すぎてパターン線幅がパターンマスクに対して太った状態になり、マスクに対して忠実な線幅が再現できない、又は、パターンエッジががたつきシャープにならないといった問題が生じるおそれがある。なお、(C)成分の光重合開始剤(必要に応じて添加される成分(E)の光重合開始剤を含む)には光増感作用を併せ持つものも含まれるが、別途光増感剤を添加してもなんらさしつかえない。
【0035】
成分(D)は遮光性顔料を含んだ遮光性顔料分散体であり、この成分(D)の遮光性顔料としては、黒色有機顔料、混色有機顔料又は遮光材などが挙げられる。このうち、黒色有機顔料としては、例えばペリレンブラック、シアニンブラック等が挙げられる。混色有機顔料としては、赤、青、緑、紫、黄色、シアニン、マゼンタ等から選ばれる少なくとも2種以上の顔料を混合して擬似黒色化されたものが挙げられる。遮光材としては、カーボンブラック、酸化クロム、酸化鉄、チタンブラック、アニリンブラック、シアニンブラックを挙げることができ、2種以上を適宜選択して用いることもできるが、特にカーボンブラックが、遮光性、表面平滑性、分散安定性、樹脂との相溶性が良好な点で好ましい。
【0036】
成分(D)の遮光性顔料分散体は、上記のような遮光性顔料を分散剤により分散させて得ることができる。このような分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤を挙げることができる。このうち、界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類等を挙げることができる。(D)成分の遮光性顔料の使用量は、(A)アルカリ現像性バインダー樹脂及び(B)成分の総量100重量部に対して30〜390重量部、好ましくは50〜370重量部の範囲であるのがよく、溶剤を除く(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分中の遮光性顔料及びその他の配合成分(硬化後に固形分となるものを含む)からなる全固形分中に40〜60重量%の範囲で含有することが好ましい。少ないと、遮光性が十分でなくなり、望ましい遮光率を得るためには膜厚を厚くしなければならなくなり、カラーフィルターの面平滑性が得にくい。反対に、多すぎると、(D)成分を含むカラーフィルター用感光性樹脂組成物の分散安定性が低下し、また、本来のバインダーとなる感光性樹脂の含有量も減少するため、現像特性を損なうと共に膜形成能が損なわれるという好ましくない問題が生じるおそれがある。
【0037】
(A)のアルカリ可溶性樹脂、(B)の光重合性モノマー、(C)の光重合開始剤、及び(D)の遮光性顔料分散体を必須成分として含む感光性樹脂組成物は、必要により溶剤に溶解されたり、各種添加剤が配合される。
【0038】
本発明の感光性樹脂組成物に含まれる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α−若しくはβ−テルピネオール等のテルペン類等、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N-メチル-2-ピロリドン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類等が挙げられ、これらを用いて溶解、混合させることにより、均一な溶液状の組成物とすることができる。
【0039】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて硬化促進剤、連鎖移動剤、熱重合禁止剤、可塑剤、充填材、溶剤、レベリング剤、消泡剤等の添加剤を配合することができる。連鎖移動剤としては、エチレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、イソシアヌル酸トリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラ(3−メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(3−メルカプトブチレート)等を挙げられる。熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、フェノチアジン等を挙げることができ、可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、トリクレジル等を挙げることができ、充填材としては、グラスファイバー、シリカ、マイカ、アルミナ等を挙げることができ、また、消泡剤やレベリング剤としては、例えば、シリコン系、フッ素系、アクリル系の化合物を挙げることができる。
【0040】
本発明のブラックマトリックス用感光性樹脂組成物は、溶剤を除いた全固形分(固形分には硬化後に固形分となるモノマーその他を含む)中に、(A)アルカリ現像性バインダー樹脂、(B)の光重合性モノマー、(C)の光重合開始剤、及び(D)成分中の遮光性顔料が合計で70重量%以上、好ましくは80重量%、より好ましくは90重量%以上含むことが望ましい。溶剤の量は、目標とする粘度によって変化するが、全体量に対して20〜90重量%の範囲が望ましい。
【0041】
本発明の塗膜(硬化物)は、例えば、上記感光性樹脂組成物の溶液を、基板等に塗布し、乾燥し、光(紫外線、放射線等を含む)を照射し、これを硬化させることにより得られる。光が当たる部分と当たらない部分とを設けて、光が当たる部分だけを硬化させ、他の部分をアルカリ溶液で溶解させれば、所望のパターンの塗膜が得られる。
【0042】
次に、本発明のブラックマトリックス用感光性樹脂組成物を用いたカラーフィルターの製造法について説明する。まず、基板の表面上に、画素を形成する部分を区画するように本発明のブラックマトリックス用感光性樹脂組成物を塗布し、乾燥して溶剤を除いた後、フォトマスクを介して露光したのち、アルカリ性現像液を用いて現像して未露光部を除去し、その後ポストベークすることで硬化させて遮光層を形成し、この基板上に、例えば赤色の顔料が分散された感光性樹脂組成物の液状組成物を塗布したのち、プレベークを行って溶剤を蒸発させ、塗膜を形成する。次いで、この塗膜にフォトマスクを介して露光したのち、アルカリ性現像液を用いて現像して、塗膜の未露光部を溶解除去し、その後ポストベークすることにより、赤色の画素パターンが所定の配列で配置された画素アレイを形成する。その後、緑色又は青色の顔料が分散された感光性樹脂組成物の液状組成物を用い、前記と同様にして、各液状組成物の塗布、プリベーク、露光、現像及びポストベークを行って、緑色の画素アレイ及び青色の画素アレイを同一基板上に順次形成することにより、赤色、緑色及び青色の三原色の画素アレイが基板上に配置し、更に、この上に保護膜として、感光性樹脂組成物の液状組成物を前記と同様にして、各液状組成物の塗布、プリベーク、露光、現像及びポストベークを行って、保護膜が形成されたカラーフィルターを得る。
【0043】
本発明のブラックマトリックス用感光性樹脂組成物の液状組成物を基板に塗布する際には、公知の溶液浸漬法、スプレー法の他、ローラーコーター機、ランドコーター機やスピナー機を用いる方法等の何れの方法をも採用することができる。これらの方法によって、所望の厚さに塗布した後、溶剤を除去する(プリベーク)ことにより、被膜が形成される。プリベークはオーブン、ホットプレート等による加熱、真空乾燥又はこれらの組み合わせることによって行われる。プリベークにおける加熱温度及び加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択され、例えば80〜120℃の温度で1〜10分間行われる。
【0044】
カラーフィルターを作製する際に使用される放射線としては、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を使用することができるが、波長が250〜450nmの範囲にある放射線が好ましい。また、感光性放射線を照射する露光装置は、レンズ、反射鏡等の光学部品に使用する材質により特定の波長範囲が吸収される。感光性樹脂組成物を露光するには、波長が250〜320nmの範囲にある放射線を含むことが好ましい。波長が320〜450nmの範囲にある放射線で露光すると、塗膜の光重合反応が不十分で、現像工程においてパターンが溶解、または剥離する。また、このアルカリ現像に適した現像液としては、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩の水溶液、アルカリ金属の水酸化物の水溶液等を挙げることができるが、特に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の炭酸塩を0.05〜10重量%含有する弱アルカリ性水溶液を用いて20〜30℃の温度で現像するのがよく、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて微細な画像を精密に形成することができる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗する。現像処理法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。現像条件は、常温で10〜120秒が好ましい。
【0045】
このようにして現像した後、180〜250℃の温度及び20〜100分の条件で熱処理(ポストベーク)が行われる。このポストベークは、パターニングされた塗膜と基板との密着性を高めるため等の目的で行われる。これはプリベークと同様に、オーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。本発明のパターニングされた塗膜は、以上のフォトリソグラフィー法による各工程を経て形成される。
【0046】
画素及び/又はブラックマトリックスを備えたカラーフィルターを形成する際に使用される基板としては、例えば、ガラス、透明フィルム(例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォン等)上にITO、金等の透明電極が蒸着あるいはパターニングされたもの等が用いられる。また、これらの基板には、所望により、シランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理を施しておくこともできる。
【実施例】
【0047】
以下に本発明の実施例を示す、ただし、本発明は以下の合成手段のみに限定されない。
【0048】
以下に、一般式(5)で表されるアルカリ現像性バインダー樹脂、及び一般式(1)で表される界面活性光重合開始剤の合成例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下の合成例における樹脂の評価は、断りのない限り以下の通りである。
【0049】
[固形分濃度]
樹脂溶液(樹脂組成物)1gをガラスフィルターW0gに含浸させて秤量し(W1g)、160℃にて2hr加熱した後の重量(W2g)から次式より求めた。
固形分濃度(重量%)=100 × (W2―W0)/(W1―W0
【0050】
[酸価]
樹脂溶液をジオキサンに溶解させ、フェノールフタレインを指示薬として1/10N−KOH水溶液で滴定して求めた。
【0051】
[分子量]
テトラヒドロフランを展開溶媒として、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)にて標準ポリスチレン換算値として重量平均分子量(Mw)を求めた値である。
【0052】
また、合成例で使用する略号は次のとおりである。
FHPA:ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂とアクリル酸との等当量反応物(新日鐵化学社製、ASF-400溶液:固形分濃度50wt%、固形分換算の酸価1.28mgKOH/g)
TPP:トリフェニルホスフィン
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0053】
合成例1:アルカリ現像性バインダー樹脂(A)の合成例
還留冷却器付き500ml四つ口フラスコ中にFHPAの50%PGMEA溶液206.26g(0.17mol)と、BPDA0.085mol、THPA0.085mol、PGMEA26.0g及びTPP0.45gを仕込み、120〜125℃に加熱下に6hr撹拌し、樹脂(i)を得た。得られた樹脂溶液の固形
分濃度は55.6wt%、酸価(固形分換算)は103.0mgKOH/g、GPC分析によるMwは2600であった。
【0054】
合成例2:界面活性光開始剤(C)の合成例
(ジアシル化)
カルバゾール-9-エタノール3g(14.2mmol)をジクロロメタン30mlに溶解させ、0℃に冷却、塩化アルミニウム4g(31.2mmol)、2-メチルベンゾイルクロリド3.88ml(29.8mmol)を加え、5分間攪拌した。室温に昇温し1時間攪拌、再び0℃に冷却し、塩化アルミニウム2.08g(15.6mmol)、及び塩化アセチル1.06ml(14.9mmol)を加えた。5分後、室温に昇温し、1時間攪拌した。水10mlを滴下し、反応を停止、ジクロロメタンにより抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて洗浄、乾燥、濃縮させることにより、ジアシルエステル体の粗生成物を得た。得られた粗生成物について、H1NMRで8.7付近のs、8.6付近のs、8.2付近のd、8.1付近のd、4.85付近のd、4.8付近のd、2.8付近のs、2.5付近のs、及び2.4付近のsを確認した。
【0055】
(加水分解)
上記で得られたジアシルエステル体の粗生成物5gをTHF30mlに溶解させ、メタノール30ml、及び5%水酸化カリウム水溶液を30mlを加え、室温で5時間攪拌した。攪拌後、水20ml、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止させ、酢酸エチルにより3回抽出し、有機層を乾燥、濃縮し、ジアシル体の粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、ジアシル体を4.30g(11.58mmol)得た。収率はジアシル化から加水分解までの2段階で82%だった。得られたものについて、H1NMRで8.6付近のs、8.5付近のs、8.1付近のm、4.6付近のd、4.2付近のd、2.7付近のs、及び2.4付近のsを確認した。
【0056】
(パーフルオロ基の導入)
上記で得られたジアシル体3g(8.08mmol)をアセトニトリルに溶解させ、トリエチルアミン1.69ml(12.1mmol)、C918 5.44g(12.1mmol)を加え、12時間攪拌した。水を加えて反応を停止し、酢酸エチルにより抽出し、有機層を乾燥、濃縮させることにより粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、ジアシルRf体を5.5g(6.86mmol)得た。収率は85%だった。得られたものについて、H1NMRで8.7付近のs、8.6付近のs、4.8付近のm、及び4.4付近のmを確認した。
【0057】
(アセチル基のオキシム化)
上記で得られたジアシルRf体4g(4.99mmol)をエタノール65mlに溶解させ、水20ml、酢酸ナトリウム878.4mg(6.59mmol)、及び塩化ヒドロキシルアンモニウム381.5mg(5.49mmol)を加えた。溶液を3時間加熱還流し、室温に冷却した。水20mlを加えて反応を停止させ、析出した白色固体をTHF30mlで溶解させた。溶液を酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄、乾燥濃縮し、オキシム体粗生成物を得た。得られたものについて、H1NMRで8.6付近のs、8.4付近のs、8.1付近のd、7.9付近のd、4.6付近のm、4.3付近のm、及び4.2付近のmを確認した。
【0058】
(オキシムのエステル化)
上記で得られたオキシム体粗生成物をt-ブチルメチルエーテル60mlに溶解させ、溶液を0℃に冷却、トリエチルアミン1.25ml(8.98mmol)、及び塩化アセチル0.532ml(7.49mmol)を加えた。溶液を室温に昇温し、4時間攪拌した。攪拌後、水を加えて反応を停止させ、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄、水層を酢酸エチルで3回抽出した。有機層を乾燥濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、光開始剤を3.7g(4.31mmol)得た。収率はアセチル基のオキシム化からオキシムのエステル化までの2段階で86%だった。得られたものについて、H1NMRにより目的物を確認した。図1に示すように、8.7付近のs、8.6付近のs、8.2付近のd、8.1付近のd、4.6付近のm、4.4付近のm、及び4.3付近のmのピークがそれぞれ確認された。また、IRのチャート図を図2に示す。
【0059】
[実施例1〜4、比較例1]
次に、カラーフィルター製造の実施例及び比較例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。ここで、実施例、比較例のカラーフィルターの製造で用いた原料及び略号は以下の通りである。
(i)成分:上記合成例1で得られたアルカリ可溶性樹脂〔成分(A)〕
(ii)成分:トリメチロールプロパントリアクリレート〔成分(B)〕
(iii)成分:上記合成例2で得られた界面活性光重合開始剤〔成分(C)〕
(iv)成分:オキシムエステル系光重合開始剤(チバ・ジャパン製、イルガキュアOXE02)
(v)成分:顔料濃度20.0%、総固形分25%のカーボン分散体(平均粒径100〜130nm)〔成分(D)〕
溶剤-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
溶剤-2:シクロヘキサノン
添加剤:シランカップリング剤(東レダウコーニング製SH-6040)
【0060】
上記配合成分を表1に示す割合で配合して、合成例1で得られたアルカリ可溶性樹脂を用いてブラックレジスト用感光性樹脂組成物を調製した。
【0061】
【表1】

【0062】
実施例、及び比較例における接触角、硬化層厚みの評価サンプルの作成方法は以下の通りである。
【0063】
実施例1〜4及び比較例1の感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて125mm×125mmのガラス基板上にポストベーク後の膜厚が2.0μmとなるように塗布し、80℃で1分間プリベークして塗布板を作成した。その後、テストパターンマスクを塗布板上に設置し、超高圧水銀ランプで波長365nmの積算露光量が200mJ/cm2となるよう紫外線を照射し感光部分の光硬化反応を行った。次に、この露光済み塗板を0.02wt%炭酸ソーダ水溶液中、23℃のDip現像にてパターンが現像されてからさらに90秒の現像を行い、さらにDip水洗を行い、塗膜の未露光部及び硬化層下部の未硬化部を除去した。その後、ガラス基板側から250mJ/cm2の紫外線を照射し未硬化部分の光硬化反応を行った。
【0064】
[実施例5〜8、比較例2]
実施例1〜4と同様に上記配合成分を表2に示す割合で配合して、合成例1で得られたアルカリ可溶性樹脂を用いてブラックレジスト用感光性樹脂組成物を調製した。実施例5〜8においては合成例2で得られた界面活性光重合開始剤(C)に加えて市販のオキシムエステル系光重合開始剤を併用し、比較例2では市販のオキシムエステル系光重合開始剤のみを用いた。
【0065】
実施例1〜4、比較例1における接触角の評価結果を表1に、実施例5〜7、比較例2における硬化層厚みの評価結果を表2に示す。これらの評価方法は以下の通りである。
【0066】
〔接触角〕
硬化膜上に純水を所定量滴下し、側面から観察した際の水滴の接触角を記録した。自動接触角測定装置(データフィジックス社製 商品名OCA20)を用いて測定した。
〔硬化層厚み〕
パターンを横切るようにガラス基板を切断し、パターン断面の端面部分を切断面側から観察して、現像により溶解除去されずに残った硬化層厚みを電子顕微鏡(キーエンス社製 商品名3DリアルサーフェスビューVE-8800)を用いて測定した。
〔総合評価〕
硬化層厚みと開始剤合計部数を評価し、優れた表面硬化性と配合部数の低減(○)もしくは許容範囲の表面硬化性と配合部数の低減(△)を示すことを確認した。
【0067】
【表2】

【0068】
上記表1の結果から明らかなように、実施例1〜4は比較例1と比較して接触角が高く、膜表面に光開始剤が集積している。すなわち、紫外線または電子線照射後の発生する開始剤ラジカル濃度が高いため、硬化部のアルカリ現像液に対する不溶化が進み、硬化部と未硬化部のアルカリ現像液に対する溶解度差が大きく、膜表面を選択的に硬化させる界面活性光重合開始剤を提供できることが分かった。また、上記表2の結果から明らかなように実施例5〜7は比較例2と比較して光重合開始剤の合計の添加量が少なくても同等以上の硬化層厚みが得られることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ現像性バインダー樹脂、
(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー、
(C)少なくとも1種の界面活性光開始剤、
及び
(D)遮光性顔料分散体
を必須の成分として含有するブラックマトリックス用感光性樹脂組成物であって、(C)成分として、下記一般式(1):
【化1】

(式中、R1は水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を示し、R2はアルキル基、アルコキシ基又は置換基を有してもよいフェニル基を示し、Rfは炭素数6〜15のパーフルオロ基を示す。)で表される界面活性光開始剤を配合してなることを特徴とするブラックマトリックス用感光性樹脂組成物。
【請求項2】
パーフルオロ基が下記式で示されるいずれかであることを特徴とする請求項1記載のブラックマトリックス用感光性樹脂組成物。
【化2】

【請求項3】
アルカリ現像性樹脂(A)と光重合性モノマー(B)の固形分重量比(A)/(B)が0.40〜9.00である請求項1又は2に記載のブラックマトリックス用感光性樹脂組成物。
【請求項4】
遮光性顔料分散体(D)に含まれる遮光性顔料の含有量が、組成物の全固形分中の40〜60重量%である請求項1〜3のいずれかに記載のブラックマトリックス用感光性樹脂組成物。
【請求項5】
遮光性顔料分散体(D)における遮光性顔料がカーボンブラックである請求項1〜4のいずれかに記載のブラックマトリックス用感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のブラックマトリックス用感光性樹脂組成物を硬化させて形成した硬化物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のブラックマトリックス用感光性樹脂組成物を塗布、硬化させて得られる硬化物によって形成されたカラーフィルター。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−262028(P2010−262028A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110775(P2009−110775)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】