説明

ブリスタ−防止自動車用塗装シ−リング剤

【構成】塩化ビニル系樹脂(PVC)を含有するが発泡剤を含有しない非発泡型の自動車用塗装シ−リング剤であって、当該自動車用塗装シ−リング剤の塗装、当該塗装後の仮焼き又は乾燥、当該仮焼き又は乾燥後の放置、当該放置後の中塗り及び(又は)上塗り後に当該塗装塗膜に発生するブリスタ−を防止できる自動車用塗装シ−リング剤において、酸化マグネシウム(MgO)を次の式1で算出される表面積の総和値の3.5〜6.2mの範囲を充足するように当該自動車用塗装シ−リング剤中に添加するようにしてなることブリスタ−防止自動車用塗装シ−リング剤。
【化1】


【効果】塩化ビニル系樹脂を含有する非発泡型自動車用塗装シ−リング剤において、式1で算出される3.5〜6.2mの表面積の総和の範囲内で酸化マグネシウム(MgO)を添加するとブリスタ−を防止でき、フクレも発生しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリスタ−防止自動車用塗装シ−リング剤に関し、特に、塩化ビニル系樹脂の非発泡型の自動車用塗装シ−リング剤において、当該シ−リング剤にて塗装し、ドライ放置後に中塗り・上塗り塗装したときに発生するブリスタ−を防止できる自動車用塗装シ−リング剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車における水密性の確保などの目的から自動車車体の組立工程においてシ−リング剤やアンダ−コ−ト剤が使用されている。
例えば、自動車の鋼板合わせ目部分に、水の侵入等を阻止する為に、ボディシ−ラ−と呼ばれるシ−リング剤を塗装してその合わせ目部分に充填させてシ−リングしたり、自動車の床裏部やホイルハウス(タイヤハウス)部における走行中の石ハネ,砂ハネにより生じる石ハネ音,砂ハネ音を防止する目的で、自動車の当該防止すべき箇所にアンダ−コ−トを施したりすることが行われている。
当該シ−リング工程やアンダ−コ−ト工程は、シ−リング剤やアンダ−コ−ト剤を塗装後に、予備乾燥、中塗り、上塗り、次いで仕上げの焼成工程で行われたりする。
この場合、作業現場の都合、連休等により一連の工程の途中で数日〜数週間作業が中断される場合がある。
この作業現場の都合、連休等の中断による放置が、シ−リング剤の塗装(シ−ラ−塗装)後に、比較的に長時間の放置であったりすると、塗装が生のままの状態で放置されるWet(ウェット)状態で放置されることになり、この状態を経て、以後の乾燥、焼成を行うと、吸収された水分が気泡化して膨張し、得られる塗膜に膨れを生じさせることがある。
その原因は、数日〜数週間の作業停止期間中に塗装面が空気中の湿気を吸収し、塗料内部にまで水分が取り込まれ、この状態で以後の乾燥、焼成を行うと吸収された水分が気泡化して膨張し、得られる塗膜に膨れを生じさせるといわれている。
このような膨れは、発泡型塗料において特に著しく、これは発泡剤が吸湿性であるためと考えられる。
当該膨れ現象を回避するために、従来から、吸水剤とか吸湿剤とか吸湿発泡防止剤等と称される吸湿防止剤を添加することが行われている。
当該吸湿防止剤としては、酸化カルシウム(CaO)や酸化マグネシウム(MgO)等が提案されている。
【0003】
(1)特開2001−40270号公報では、塩化ビニル系樹脂、発泡剤、充填剤、可塑剤を含有する塩化ビニル系で発泡型の自動車用アンダ−コ−ト剤において、平均粒径が0.5μm以下の吸湿発泡防止剤を配合することが提案され、当該吸湿発泡防止剤としては、吸水性を示す化合物であれば特に制限はないが、例えば水和反応により水と結合する酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の粉末が好適に使用できるとされ、又、当該吸湿発泡防止剤の配合量をアンダ−コ−ト剤全体の10〜16重量%とすることが好ましいことが提案されているが、当該アンダ−コ−ト剤では、その実施例において、アンダ−コ−ト剤を自動車鋼板の床裏部に発泡後の厚みが1〜3mmとなるよう塗布し、気温30℃,湿度80%の条件下、10日間放置した後、A:ウェットのまま放置、B:110℃×7分仮焼き、C:110℃×7分仮焼き後、140℃×20分加熱乾燥という当該条件A〜Cの乾燥又は仮焼きを行ったときの塗装面の膨れの状態を目視により評価している。
即ち、当該公報によるアンダ−コ−ト剤は、塩化ビニル系であっても、発泡型であること、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の粉末が好適に使用できるとしていても、その実施例では、酸化カルシウム(CaO)の使用に止まっていること、アンダ−コ−ト剤の適用に際しては、前記のように、アンダ−コ−ト剤を塗装後に、予備乾燥、中塗り、上塗り、次いで仕上げの焼成工程で行われたりすることが記載されてはいるが、その実施例では、上記のように、ウェットのまま放置等による塗装面の膨れの状態を評価したに過ぎず、更にその上の中塗り、上塗り工程後の膨れの状態については触れられていない。
【0004】
(2)特開平8−20697号公報では、塩化ビニル系樹脂及び可塑剤と、酸化カルシウムからなる吸水剤と、メルカプト系シランカップリング剤とを必須成分とする塩化ビニル系プラスチゾル組成物が提案され、当該塩化ビニル系プラスチゾル組成物に酸化カルシウムを配合することによって塗膜の加熱焼付時の割れ、膨れ等が発生することを防止できることが記載され、その実施例では、具体的には下記のような試験ではあるが、上記のように酸化カルシウム(CaO)を配合してなるプラスチゾル組成物を塗布した後、そのままの状態で高温高湿下に放置した試験(ゾル放置)と、プラスチゾル組成物を塗布した後一旦プレヒ−トして焼付硬化し、次いで同様に高温高湿下に放置した試験(プレヒ−ト後放置)と、プラスチゾル組成物を塗布した後一旦プレヒ−トして焼付硬化し、更に、中塗り塗料を塗布し焼付乾燥を行った後、高温高湿下に放置した試験(中塗後放置)との三種類の吸湿割れ・膨れ性の評価試験を行っている。
〔ゾル放置〕プラスチゾル組成物を試験板に1mm厚で、幅10mm×長さ100mmの形状に塗布し、そのまま30℃×80%RHの温湿条件で96時間(4日間)放置した。そして、120℃×10分のプレヒ−トを行い塗膜を焼付硬化し、その時の塗膜の割れ、膨れ等を観察し、評価した。
〔プレヒ−ト後放置〕上記と同様にプラスチゾル組成物を試験板に1mm厚で塗布し、放置することなく直ちに120℃×10分のプレヒ−トを行って塗膜を焼付硬化した後、上記と同じ30℃×80%RHの条件で96時間(4日間)放置した。そして、これを140℃×30分の加熱条件で再度焼付を行い、その時の塗膜の割れ、膨れ等を観察し、評価した。
〔中塗後放置〕上記と同様に、プラスチゾル組成物を試験板に1mm厚で塗布し、直ちに120℃×10分のプレヒ−トを行い塗膜を焼付硬化した後、アミノ・ポリエステル系の中塗り塗料を重ねて塗布し(乾燥膜厚20μm)、140℃×30分の加熱条件で焼付乾燥を行った。そして、これを30℃×80%RHの温湿条件で96時間(4日間)放置した。次いで、中塗塗料塗膜の水研ぎを行った後、上塗塗料の一般の焼付条件である165℃×15分の加熱条件で再度の焼付乾燥を行い、その時の塗膜の割れ、膨れ等を観察し、評価した。
当該評価結果に依れば、塗料塗布後に長時間放置しても塗膜に膨れを生じることがなかったことが記載されている。
当該公報によるアンダ−コ−ト剤は、塩化ビニル系で非発泡型で、酸化カルシウム(CaO)の他に酸化マグネシウム(MgO)等の吸湿剤が使用できることは記載されているが、その実施例では、酸化カルシウム(CaO)の使用に止まっている。
【0005】
(3)特開平7−316484では、塩化ビニル系の被覆用プラスチゾル組成物に関し、
吸湿剤として酸化カルシウムの粉末を組成物の全体量に対して1.5〜8.5重量%程度の割合で添加することを提案しており、吸湿剤として酸化カルシウム(CaO)の粉末を添加してなる耐チッピング塗料を塗布した後、そのままの状態で温湿下に放置した試験(ゾル放置)と、耐チッピング塗料を塗布した後一旦焼付硬化し、次いで温湿下に放置した試験(硬化後放置)との二種類で試験を行ったことが記載されている。尚、それぞれの試験は、具体的には次のものである。
(ゾル放置)・・・耐チッピング塗料を試験板に1mm厚で塗布し、そのまま35℃×80%RHの温湿下で10日間放置した。そして、140℃×20分の加熱条件で焼付を行い、塗膜の発泡、膨れ等の有無を観察し、評価した。
(硬化後放置)・・耐チッピング塗料を試験板に1mm厚で塗布した後、直ちに140×20分の焼付を行い、上記と同じ条件で吸湿させた後、上記と同じ加熱条件で再度焼付を行い、塗膜の発泡、膨れ等の有無を観察し、評価した。
しかし、当該公報による被覆用プラスチゾル組成物は、塩化ビニル系で非発泡型で、酸化カルシウム(CaO)の他に酸化マグネシウム(MgO)等の吸湿剤が使用できることは記載されているが、その実施例では、酸化カルシウム(CaO)の使用に止まり、酸化マグネシウム(MgO)の使用についての記載はなく、又、中塗り、上塗り工程後の膨れの状態についても触れられていない。
【0006】
(4)特開平6−16891号公報では、塩化ビニル系プラスチゾル組成物において、充填材として酸化カルシウム(CaO)粉末を組成物全量の1.5〜8.5重量%の量で含有してなる塩化ビニル系プラスチゾル組成物が提案され、充填材中に所定量の酸化カルシウム粉末を含有させることにより、この組成物を鋼板に塗布してシ−リング材とし、その後に高湿度下で放置した場合にも、酸化カルシウム粉末が吸湿された水分と直ちに水和して水分を水酸化カルシウムとして捕捉するので、シ−リング材に発泡が生じるような不具合を防止できるとされている。当該公報の実施例では、このプラスチゾル組成物を電着塗膜をもつ鋼板表面にリボン状に塗布した後、35℃湿度95%の恒温恒湿機内で最大72時間放置し、一定時間毎に取り出して140℃×30分焼き付け、発泡の有無を目視で観察したとしている。又、このプラスチゾル組成物を上記と同様に塗布し、95℃×10分予備加熱した後、上塗り塗料を全体に塗布し140℃×30分焼き付け乾燥させた後塗膜表面を指で触れ、硬化状態を判定していて、酸化カルシウム(CaO)の使用により、塗料塗布後に長時間放置しても塗膜に膨れを生じることがなかったことが記載されている。
【0007】
(5)特開2000−119637号公報は、上記の塩化ビニル系ではないポリスチレンとポリオレフィンからなるブロック共重合体系において、発泡防止剤として酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)及びモレキュラシ−ブから成る群より選ばれる少なくとも1種の発泡防止剤を使用することが提案され、当該発泡防止剤 として5〜 20重量部を含有させることを提案している。
【0008】
確かに、これら従来例からは、酸化カルシウム(CaO)や酸化マグネシウム(MgO)を添加・配合することにより、吸湿による発泡防止効果があることが提案されているが、本発明者らの鋭意検討に依れば、酸化カルシウム(CaO)や酸化マグネシウム(MgO)を添加・配合することにより吸湿による発泡防止効果があるのは、膨れ(フクレ)防止効果であって、当該膨れ(フクレ)現象を鋭意観察すると、その発生メカニズムは、材料内部から空隙が発生して起こる現象であること、又、当該膨れ(フクレ)現象は、自動車車体の組立工程における自動車用塗装シ−リング剤塗装後の中塗り・上塗り塗料による塗装が無い時にも発生する現象であること、更には、その膨れ(フクレ)の大きさが直径5mm位からなるものであることが判明した。
一方、本発明者らの鋭意検討に依れば、同じような膨れ現象ではあるが、その発生箇所や大きさなどが異なる塗膜の外観不良が存在することが判明した。即ち、上記の膨れ(フクレ)現象が、材料内部から空隙が発生して起こる現象であるのに対して、当該膨れによる外観不良は、材料と中塗り・上塗り塗装との界面付近にて空隙が発生して起こる現象であること、又、上記の膨れ(フクレ)現象が、中塗り・上塗り塗料の塗装が無い時にも発生する現象であるのに対して、当該膨れによる外観不良は、上記のような中塗り・上塗り塗装をするとほぼ起こり、当該中塗り・上塗り塗装無しでは発生しないこと、又、上記の膨れ(フクレ)の大きさが直径5mm位からなるものであるのに対して、当該膨れの大きさは、1mm程度とフクレよりも小さいものであることが判明した。
即ち、当該膨れ現象はブリスタ−(Blister)であって、膨れ(フクレ)とは区別されるべきものである。尚、当該ブリスタ−とフクレとの差異の理解を容易にする為に、後述のように、これらブリスタ−とフクレとの両者の写真を図面にて示した。
更に、本発明者らは当該膨れ(フクレ)現象や当該ブリスタ−(Blister)による膨れ現象について鋭意検討したところ、酸化カルシウム(CaO)の添加により、当該膨れ(フクレ)現象を抑制することができても、当該ブリスタ−(Blister)による膨れ現象を抑制することができないことを知った。
更に又、本発明者らは当該膨れ(フクレ)現象や当該ブリスタ−(Blister)による膨れ現象について鋭意検討したところ、当該膨れ(フクレ)現象は、シ−リング剤を塗装後に、直ちに、仮焼き又は乾燥をせずに、当該仮焼き又は乾燥の前に、シ−リング剤が生のままの状態で比較的に長時間なり放置(Wet放置)する場合の当該Wet放置により生じる膨れであるのに対して、当該ブリスタ−(Blister)による膨れは、当該シ−リング剤塗装後に仮焼き又は乾燥をし、当該仮焼き又は乾燥後に放置(Dry放置)し、次いで、当該ドライ放置後に中塗り及び(又は)上塗りを行うと発生するものであることが判った。
【0009】
【特許文献1】特開2001−40270号公報、特開平8−20697号公報、特開平7−316484、特開平6−16891号公報、特開2000−119637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術に鑑み、ブリスタ−(Blister)による膨れ防止という新規の課題を解決することができる技術を提供することを目的としたものである。
又、本発明は、上記従来技術に鑑み、塩化ビニル系樹脂の非発泡型の自動車用塗装シ−リング剤において、当該シ−リング剤にて塗装し、当該塗装後に仮焼き又は乾燥し、その仮焼き又は乾燥後に放置し、次いで、当該放置後に中塗り及び(又は)上塗りを行うと発生する当該ドライ放置後のブリスタ−を防止できる自動車用塗装シ−リング剤を提供することを目的としたものである。
本発明の他の目的や新規な特徴については本件明細書及び図面の記載からも明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の特許請求の範囲は、次の通りである。
(請求項1) 塩化ビニル系樹脂(PVC)を含有するが発泡剤を含有しない非発泡型の自動車用塗装シ−リング剤であって、当該自動車用塗装シ−リング剤の塗装、当該塗装後のシ−ラ−炉にての仮焼き又は乾燥、当該仮焼き又は乾燥後の放置、当該放置後の中塗り及び(又は)上塗り後に当該塗装塗膜に発生するブリスタ−を防止できる自動車用塗装シ−リング剤において、酸化マグネシウム(MgO)を次の式1で算出される表面積の総和値の3.5〜6.2mの範囲を充足するように当該自動車用塗装シ−リング剤中に添加するようにしてなることを特徴とするブリスタ−防止自動車用塗装シ−リング剤。
【0012】
【化2】







【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、塩化ビニル系樹脂の非発泡型の自動車用塗装シ−リング剤において、ブリスタ−(Blister)による膨れ防止という新規の課題を解決することができ、特に、当該シ−リング剤にて塗装し、当該塗装後に仮焼き又は乾燥し、その後に放置し、次いで、当該放置後に中塗り及び(又は)上塗りを行うと発生するドライ放置後のブリスタ−(Blister)を防止できる技術を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明において酸化マグネシウム(MgO)は、次の式1で算出される表面積の総和値の3.5〜6.2mの範囲を充足するように当該自動車用塗装シ−リング剤中に添加される。





【0015】
【化3】







【0016】
酸化マグネシウム(MgO)は、吸水の度合いとして比表面積が考えられる。
当該自動車用塗装シ−リング剤中の当該酸化マグネシウム(MgO)の添加量(g)と上記の酸化マグネシウム(MgO)の比表面積とを掛け合わせれば、当該自動車用塗装シ−リング剤中に添加された当該酸化マグネシウム(MgO)の合計の表面積が算出される。
しかし、当該酸化マグネシウム(MgO)には、その比表面積を異にするものが何種類か存在する。
その場合、当該酸化マグネシウム(MgO)の比表面積が異なっていれば、その比表面積の相違に応じて当該酸化マグネシウム(MgO)の合計の表面積も異なってくる。
上記式1に示すように、使用した酸化マグネシウム(MgO)は、その比表面積との関係が問われ、当該酸化マグネシウム(MgO)の比表面積が式1中に算入される。
当該酸化マグネシウム(MgO)の比表面積は、その単位がm/gであり、単位体積当たりの比表面積ではなく、単位質量当たりの比表面積である。
当該酸化マグネシウム(MgO)の比表面積の測定法には、BET法(Brunauer、Emmett及びtellerの3名による比表面積の測定法)が用いられる。
当該酸化マグネシウム(MgO)については、塩化ビニル系の自動車用塗装シ−リング剤中に添加され、当該塩化ビニル系樹脂(PVC)の添加量(g)との関係が問われる。
当該酸化マグネシウム(MgO)の合計の表面積を算出する場合に、塩化ビニル系樹脂(PVC)の添加量(g)との関係が問われ、その関係が式1中に算入される。
式1では、MgOの添加量(g)をPVCの添加量(g)で割った値が算入される。
式1では、更に、自動車用塗装シ−リング剤構成成分の合計量(g)を100で除した値との関係が問われ、当該自動車用塗装シ−リング剤構成成分の合計量(g)を100で除した値が掛け合わせられる。
従って、上記式1に示すように、当該自動車用塗装シ−リング剤中に当該酸化マグネシウム(MgO)を添加する場合、使用した酸化マグネシウム(MgO)の比表面積m/gに、酸化マグネシウム(MgO)の添加量(g)を塩化ビニル系樹脂(PVC)の添加量(g)で除した数値を掛け合わせ、更に、その自動車用塗装シ−リング剤構成成分の合計量(g)を100で除した値と掛け合わせる。
式1の算出に際して、MgOの添加量(g)をPVCの添加量(g)で割った値は、計算上、小数点4桁以下を四捨五入し、又、式1の左辺の計算上の数値は、小数点2桁以下を四捨五入して算出するものとする。
得られた数値は、当該自動車用塗装シ−リング剤中の当該添加された酸化マグネシウム(MgO)の適切な表面積の総和であり、その総和値の3.5〜6.2mの範囲内の全表面積となるように当該酸化マグネシウム(MgO)を添加する。
本発明によれば、上記式のように、当該自動車用塗装シ−リング剤中の個々の当該酸化マグネシウム(MgO)の当該自動車用塗装シ−リング剤中における合計(総和)の表面積を、特定の範囲内とすることにより、前記ブリスタ−(Blister)による膨れ防止という新規の課題を解決することができ、又、本発明によれば、特に、塩化ビニル系樹脂の非発泡型の自動車用塗装シ−リング剤において、当該シ−リング剤にて塗装し、当該塗装後に仮焼き又は乾燥し、その後に放置し、次いで、当該放置後に中塗り及び(又は)上塗りを行うと発生するドライ放置後のブリスタ−を防止することができる。
【0017】
ここに、計算例を示す。但し、ここに例示の自動車用塗装シ−リング剤は、後述の実施例2に示す配合に従ったもので、その酸化マグネシウム(MgO)は、その比表面積がBET法による80m/gのもので、酸化マグネシウム(MgO)の添加量は1.5g、PVCの添加量は26.0g、当該自動車用塗装シ−リング剤を構成する全体成分の合計量は、100.0gとする。
【0018】
【化4】







【0019】
上記式1から算出された数値は、4.6mで、当該数値は、当該自動車用塗装シ−リング剤中の当該酸化マグネシウム(MgO)の表面積の総和で、その総和が、3.5〜6.2mの範囲内に入っているので、当該酸化マグネシウム(MgO)の当該自動車用塗装シ−リング剤中での表面積の総和(m)は適切であって、後述のように、ブリスタ−の発生を抑えることができると共に、フクレの発生をも抑えられ、特に、塩化ビニル系樹脂の非発泡型の自動車用塗装シ−リング剤において、当該シ−リング剤にて塗装し、当該塗装後に仮焼き又は乾燥し、その後に放置し、次いで、当該放置後に中塗り及び(又は)上塗りを行うと発生するドライ放置後のブリスタ−を防止することができる。
【0020】
上記計算例に従うと、後述の比較例1のように、同じ比表面積がBET法による80m/gの酸化マグネシウム(MgO)を用いても、MgOの添加量(g)が1gでは、当該自動車用塗装シ−リング剤中の当該酸化マグネシウム(MgO)の表面積の総和が適切でないので、ブリスタ−の発生もフクレの発生も抑えられないことを示している。
他の例のように、当該酸化マグネシウム(MgO)の当該自動車用塗装シ−リング剤中での表面積の総和(m)が、上記のような適切な範囲内ならば、当該酸化マグネシウム(MgO)の比表面積が異なったものであっても、同様にブリスタ−の発生を抑えることができると共に、フクレの発生をも抑えられ、特に、塩化ビニル系樹脂の非発泡型の自動車用塗装シ−リング剤において、当該シ−リング剤にて塗装し、当該塗装後に仮焼き又は乾燥し、その後に放置し、次いで、当該放置後に中塗り及び(又は)上塗りを行うと発生するドライ放置後のブリスタ−を防止することができる。
【0021】
本発明の自動車用塗装シ−リング剤は、塩化ビニル系樹脂をベ−スポリマ−としたものである。当該塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルモノマ−の合成により生成され、懸濁重合などにより重合される。当該塩化ビニル系樹脂には、酢酸ビニルなどとの共重合体も包含される。
当該塩化ビニル系樹脂の配合量は、特に限定されないが、自動車用塗装シ−リング剤全体の20〜30重量%である。
【0022】
当該自動車用塗装シ−リング剤は、例えば、塩化ビニル系樹脂をベ−スポリマ−とし、可塑剤、合成樹脂(付着付与剤)、充填剤、希釈剤により構成される。
本発明の自動車用塗装シ−リング剤は、塩化ビニル系樹脂をベ−スポリマ−としたものであるが、発泡剤を含有しない非発泡型のシ−リング剤について適用される。
当該非発泡型のシ−リング剤には、上記のように、酸化マグネシウム(MgO)が、その表面積の総和が3.5〜6.2m範囲内となるように添加される。
【0023】
当該可塑剤としては、例えば、
(a)エステル型
(a−1)フタル酸エステル系可塑剤
例えば、ジ−2−エチルヘキシルフタレ−ト(DOP)、ジブチルフタレ−ト(DBP)、ジヘキシルフタレ−ト(DHP)、ジ−n−オクチルフタレ−ト(DnOP)、ジイソオクチルフタレ−ト(DIOP)等
(a−2)安息香酸エステル系可塑剤
例えば、ジプロピレングリコ−ルベンゾエ−ト、N−ブチルベンゾエ−ト、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオ−ルイソブチレ−トベンゾエ−ト、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオ−ルジベンゾエ−ト等
(a−3)トリメリット酸エステル系可塑剤
例えば、トリ−(2−エチルヘキシル)トリメリテ−ト(TOTM)、トリ−n−オクチルトリメリテ−ト、トリイソデシルトリメリテ−ト、トリイソオクチルトリメリテ−ト等
(a−4)ポリエステル系可塑剤
例えば、アジピン酸ポリエステル、フタル酸系ポリエステル等
(a−5)燐酸エステル系可塑剤
例えば、トリクレジルホスフェ−ト(TCP)、トリオクチルホスフェ−ト(TOF)、トリキシレニルホスフェ−ト(TXP)、モノオクチルジフェニルホスフェ−ト、モノブチル−ジキシレニルホスフェ−ト(B−Z−X)等
可塑剤は、スプレ−塗布時の作業性や塗膜物性を良好にする等の目的で配合される。
可塑剤の配合量は、特に限定されないが、自動車用塗装シ−リング剤全体の20〜30重量%である。
【0024】
本発明の自動車用塗装シ−リング剤を構成する合成樹脂(付着付与剤)は、通常、粘着付与剤と称されるもので、例えば、脂肪族飽和炭化水素樹脂、水添テルペン樹脂、テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、水添ロジンエステル、芳香族系樹脂、スチレン系樹脂等が挙げられる。
当該粘着付与剤の配合量は、特に限定されないが、自動車用塗装シ−リング剤全体の0.5〜2重量%である。
当該粘着付与剤は、塗膜の密着性等を良好にする。
【0025】
本発明の自動車用塗装シ−リング剤を構成する充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレ−、珪藻土、シリカ、タルク等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。必要により、ガラスバル−ン、樹脂バル−ン等の中空粒子を配合することもできる。
当該充填剤の配合量は、特に限定されないが、自動車用塗装シ−リング剤全体の30〜50重量%である。
【0026】
本発明の自動車用塗装シ−リング剤を構成する希釈剤としては、例えば、高沸点溶剤を使用することができる。
当該希釈剤の配合量は、特に限定されないが、自動車用塗装シ−リング剤全体の1.0〜5.0重量%である。
希釈剤は、当該シ−リング剤の流動性、噴霧性などを適宜なものとすることができる。
【0027】
本発明の自動車用塗装シ−リング剤には、必要に応じて、その他の各種添加剤、例えば、密着剤、着色剤、チキソ性付与剤、老化防止剤等を適量配合することができる。
当該密着剤としては、例えば、ポリアミドアミン、ブロックイソシアネ−ト等が挙げられる。当該密着剤は、塗装面への密着性能を向上させることができる。
当該着色剤として、例えば、カ−ボンブラック、酸化チタン、カドミウムイエロ−、フタロシアニンブル−等の顔料を用いることができる。
当該チキソ性付与剤としては、例えば、二酸化ケイ素などを使用することができる。
当該老化防止剤としては、例えば、ナフチルアミン系、p−フェニレンジアミン系、キノリン系、フェノ−ル系等老化防止剤等を用いることができる。
【0028】
当該自動車用塗装シ−リング剤は、例えば、塩化ビニル系樹脂をベ−スポリマ−とし、可塑剤、合成樹脂(付着付与剤)、充填剤、希釈剤、酸化マグネシウム(MgO)及びその他の各種添加剤を混練することにより調製できる。
【0029】
本発明において、上記の塩化ビニル系樹脂の自動車用塗装シ−リング剤を用いた自動車の組立工程の一例を説明する。
自動車車体に当該塩化ビニル系樹脂の自動車用塗装シ−リング剤を塗装後、仮焼き又は乾燥後、中塗り・上塗り塗料を塗装して焼付を行う。
自動車車体としては、乗用車、トラック、オ−トバイ、バスなどが適用される。
自動車用塗装シ−リング剤は、例えば、スプレ−塗付等により塗装される。
電着塗膜の形成や耐チッピング塗料を介在させてもよい。
【0030】
塩化ビニル系樹脂の自動車用塗装シ−リング剤を塗装後の中塗り塗料及び上塗り塗料の例は次の通りである。
中塗り塗料:
当該中塗り塗料としては溶剤型および水分散型を使用できる。
溶剤型中塗り塗料;
当該溶剤型中塗り塗料としては、例えば樹脂、硬化剤及び顔料を有機溶剤に混合分散してなる熱硬化型塗料が例示でき、必要に応じて各種添加剤を添加することができる。
当該熱硬化型塗料に使用される樹脂としては、例えばアルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの変性樹脂が挙げられる。
硬化剤としては、アミノ樹脂やイソシアネ−トプレポリマ−などが挙げられる。
上記熱硬化型塗料に使用できる顔料は特に限定されない。体質顔料としては、マイカ、アルミナ、タルク及びシリカ等を挙げることができ、タルクがチッピング性能の観点から好ましい。着色顔料として、例えば、有機系のアゾキレ−ト系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロ−ル系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等が挙げられ、無機系では黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、カ−ボンブラック、二酸化チタン等を用いることができる。
上記熱硬化型塗料に使用できる有機溶剤は特に限定されない。用いられる溶媒の具体例としては、例えば、トルエン、キシレン、ソルベッソなどの芳香族系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ミネラルスピリットなどの脂肪族系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ジエチルエ−テル、イソプロピルエ−テル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコ−ルジメチルエ−テル、エチレングリコ−ルジエチルエ−テル、ジエチレングリコ−ルジメチルエ−テル、ジエチレングリコ−ルジエチルエ−テル、プロピレングリコ−ルモノメチルエ−テル、アニソ−ル、フェネト−ルなどのエ−テル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコ−ルジアセテ−トなどのエステル系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒;メタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、ブタノ−ル、2−エチルヘキサノ−ルなどのアルコ−ル系溶媒;などが挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、また混合して用いてもよい。
水分散型中塗り塗料;
当該水分散型中塗り塗料としては、例えば水溶性樹脂、水分散性樹脂、硬化剤及び顔料を水に混合分散してなる熱硬化型塗料が例示でき、必要に応じて各種添加剤と有機溶剤を添加することができる。当該熱硬化型塗料に使用される樹脂としては、例えばアクリルエマルション、ウレタンエマルション、ポリエステルエマルションなどの水分散性樹脂が挙げられる。硬化剤としては、アミノ樹脂やイソシアネ−トプレポリマ−などが挙げられる。上記熱硬化型塗料に使用できる顔料および有機溶剤は上記溶剤型中塗り塗料と同様のものが使用できる。
【0031】
上塗り塗料:
当該上塗り塗料はベ−スコ−ト塗料とクリヤコ−ト塗料をウェットオンウェットで塗り重ねる上塗り塗料およびモノコ−トソリッド塗料を使用できる。
ベ−スコ−ト塗料;
当該ベ−スコ−ト塗料としては溶剤型および水分散型を使用できる。
溶剤型ベ−スコ−ト塗料;
当該溶剤型ベ−スコ−ト塗料としては、例えば樹脂、硬化剤及び顔料を有機溶剤に混合分散してなる熱硬化型塗料が例示でき、必要に応じて各種添加剤を添加することができる。
当該熱硬化型塗料に使用される樹脂としては、例えばアルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの変性樹脂が挙げられる。
硬化剤としては、アミノ樹脂やイソシアネ−トプレポリマ−などが挙げられる。
上記熱硬化型塗料に使用できる顔料は特に限定されない。
光輝性顔料(メタリック顔料)としては、形状は特に限定されず、また着色されていてもよいが、例えば、平均粒径(D50)が2〜50μmであり、かつ厚さが0.1〜5μmであるものが好ましい。光輝性顔料の平均粒径(D50)は、レ−ザ−回折・散乱法によって測定することができる(具体的にはマイクロトラック(日機装社製)にて測定できる。)。また、平均粒径が10〜35μmの範囲のものが光輝感に優れ、さらに好適に用いられる。具体的には、アルミニウム、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、スズ、酸化アルミニウム等の金属または合金等の無着色あるいは着色された金属製光輝材およびその混合物が挙げられる。この他に干渉マイカ顔料、ホワイトマイカ顔料、グラファイト顔料などもこの中に含めるものとする。
体質顔料、着色顔料、有機溶剤は中塗りと同様のものが使用できる。
水分散型ベ−スコ−ト塗料;
当該水分散型ベ−スコ−ト塗料としては、例えば水溶性樹脂、水分散性樹脂、硬化剤及び顔料を水に混合分散してなる熱硬化型塗料が例示でき、必要に応じて各種添加剤と有機溶剤を添加することができる。当該熱硬化型塗料に使用される樹脂としては、例えばアクリルエマルション、ウレタンエマルション、ポリエステルエマルションなどの水分散性樹脂が挙げられる。硬化剤としては、アミノ樹脂やイソシアネ−トプレポリマ−などが挙げられる。上記熱硬化型塗料に使用できる顔料および有機溶剤は上記溶剤型ベ−ス塗料と同様のものが使用できる。
クリヤコ−ト塗料;
当該クリヤコ−ト塗料を構成するクリヤ−塗料組成物は特に限定されず、塗膜形成性樹脂および硬化剤等を含有するクリヤ−塗料組成物を利用できる。更に下地の意匠性を妨げない程度であれば着色顔料を含有することもできる。このクリヤ−塗料組成物の形態としては、溶剤型、水性型および粉体型のものが挙げられる。
上記溶剤型クリヤ−塗料組成物の好ましい例としては、透明性あるいは耐酸エッチング性等の点から、アクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂とアミノ樹脂及び/またはイソシアネ−トとの組合わせ、あるいはカルボン酸・エポキシ硬化系を有するアクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂系等が挙げられる。
また、上記水性型クリヤ−塗料組成物の例としては、上記溶剤型クリヤ−塗料組成物の例として挙げたものに含有される塗膜形成性樹脂を、塩基で中和して水性化した樹脂を含有するものを挙げることができる。この中和は重合の前又は後に、ジメチルエタノ−ルアミンおよびトリエチルアミンのような3級アミンを添加することにより行うことができる。
一方、粉体型クリヤ−塗料組成物としては、熱可塑性及び熱硬化性粉体塗料組成物のような通常の粉体塗料組成物を用いることができる。良好な物性の塗膜が得られるため、熱硬化性粉体塗料組成物が好ましい。熱硬化性粉体塗料組成物の具体的なものとしては、
エポキシ系、アクリル系及びポリエステル系の粉体クリヤ−塗料組成物等が挙げられるが、耐候性が良好なアクリル系粉体クリヤ−塗料組成物が特に好ましい。
更に、上記クリヤ−塗料組成物には、塗装作業性を確保するために、粘性制御剤が添加されていることが好ましい。粘性制御剤は、一般にチクソトロピ−性を示すものを使用できる。このようなものとして、例えば、上述の水性ベ−スコ−ト組成物のところで述べたものを使用することができる。また、必要により、硬化触媒、表面調整剤等を含むことができる。
モノコ−トソリッド塗料;
当該モノコ−トソリッド塗料としては溶剤型および水分散型を使用できる。
溶剤型モノコ−トソリッド塗料としては、上記溶剤型中塗り塗料と同様の樹脂、硬化剤、顔料、有機溶剤が使用できる。
水分散型モノコ−トソリッド塗料としては、上記水分散型中塗り塗料と同様の樹脂、硬化剤、顔料、有機溶剤が使用できる。
【0032】
本発明では、上記中塗り塗料及び上塗り塗料の塗装後の加熱焼付硬化は、例えば、焼付硬化温度100〜180℃、好ましくは、110〜160℃で行われる。
【0033】
中塗り塗料及び上塗り塗料の塗装方法としては、例えば、噴霧塗装が用いられる。当該噴霧塗装としては、例えば、エア−スプレ−塗装、エアレス塗装、静電塗装が挙げられる。当該エアレス塗装では、塗料に高圧を掛けてノズルから噴霧させる。静電塗装は、エア−スプレ−に静電気を掛け、霧化と被塗物への塗料の付着の促進を図るもので、当該エア−スプレ−塗装と共に、上塗り塗装に適している。
【0034】
自動車用塗装シ−リング剤、中塗り塗料及び上塗り塗料(ベ−ス塗料及びクリヤ−塗料)による塗膜の乾燥膜厚は、例えば、自動車用塗装シ−リング剤0.5〜1.5mm、中塗り塗料5〜40μm、上塗り塗料のベ−ス塗料5〜35μm、上塗り塗料のクリヤ−塗料10〜40μmである。
当該塗装に際しては、中塗り塗装や上塗り塗装後に各乾燥工程を加味してもよい。
【0035】
本発明は、上記の塗装工程において、次のドライ(Dry)放置+中塗り及び(又は)上塗り塗装について有効である。
(1)塩化ビニル系樹脂(PVC)を含有するが発泡剤を含有しない非発泡型の自動車用塗装シ−リング剤の塗装工程
(2)当該塗装後の仮焼き又は乾燥、
(3)当該仮焼き又は乾燥後の放置(ドライ放置)、
(4)当該ドライ放置後の中塗り及び(又は)上塗り工程
上記(2)の仮焼き又は乾燥は、例えば、シ−ラ−炉(加熱乾燥炉)にて行われ、例えば、130℃、20分間行うことができる。
上記(3)の放置は、シ−ラ−炉にての仮焼き又は乾燥(工程)を経ているので、当該シ−リング剤は、半硬化の状態になっている。
当該シ−ラ−炉での仮焼き又は乾燥の前の放置は、ウェット(Wet)放置であって、当該シ−リング剤は、生のままの状態になっている。この場合のWet放置により生じる膨れは、前記したフクレであって、当該膨れ(フクレ)は、材料内部から空隙が発生して起こり、又、自動車車体の組立工程における自動車用塗装シ−リング剤塗装後の中塗り・上塗り塗料による塗装が無い時にも発生する現象であること、更には、その膨れ(フクレ)の大きさが直径5mm位からなるものであるのに対し、本発明は、上記のようなドライ(Dry)放置+中塗り及び(又は)上塗り塗装により生じる膨れ(ブリスタ−)防止に有効である。
フクレもブリスタ−も同じような膨れ現象ではあるが、当該膨れ(フクレ)現象が、材料内部から空隙が発生して起こる現象であるのに対して、当該膨れ(ブリスタ−)は、材料と中塗り・上塗り塗装との界面付近にて空隙が発生して起こる現象であること、又、上記の膨れ(フクレ)現象が、中塗り・上塗り塗料の塗装が無い時にも発生する現象であるのに対して、当該膨れ(ブリスタ−)は、上記のような中塗り・上塗り塗装をすると起こり、当該中塗り・上塗り塗装無しでは発生しないこと、又、上記の膨れ(フクレ)の大きさが直径5mm位からなるものであるのに対して、当該膨れ(ブリスタ−)の大きさは、1mm程度とフクレよりも小さいものであり、その発生箇所や大きさなどが異なる塗膜の外観不良である。
ドライ放置は、例えば、常温で長時間放置、高温高湿度例えば30℃×80%RHの温湿条件で放置などで行われる。
本発明によるブリスタ−防止は、上記(1)及び(2)の工程後、中塗りのみ又は上塗りのみでも有効である。
【0036】
図3に、酸化カルシウム(CaO)や酸化マグネシウム(MgO)を各々添加した場合及びそれら酸化カルシウム(CaO)や酸化マグネシウム(MgO)が無添加の場合での当該膨れ(フクレ)現象や当該ブリスタ−(Blister)による膨れ現象について、水の吸水やその放出と絡めて図示した。
図3(C)に示すように、酸化カルシウム(CaO)や酸化マグネシウム(MgO)のような吸湿剤が無添加の場合には、放置中のシ−リング剤(シ−ラ−)1には、吸水が行われ、次いで、焼付中には、その吸水された水分が放出されるが、当該吸湿剤が無添加の場合には、上記ブリスタ−2やフクレ3が起こる。
図3(A)に示すように、酸化カルシウム(CaO)が添加された場合には、放置中のシ−リング剤(シ−ラ−)1には、吸水が行われ、当該放置後に中塗り及び(又は)上塗りを行い、次いで、焼付を行うと、その吸水された水分が放出され、上記フクレ3の発生は防止できるが、ブリスタ−2の発生は防止できない。
図3(B)に示すように、酸化マグネシウム(MgO)を添加した場合には、放置中のシ−リング剤(シ−ラ−)1には、吸水が行われ、次いで、焼付中には、その吸水された水分が放出されるが、当該中塗り及び(又は)上塗りされたシ−リング剤(シ−ラ−)1には、上記ブリスタ−2やフクレ3の現象が起こらず、当該ブリスタ−2のみならず、当該フクレ3の発生も防止できる。
【実施例】
【0037】
以下に実施例を挙げ本発明のより詳細な理解に供する。当然のことながら本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
実施例1
【0038】
表1の配合に従い非発泡型自動車用塗装シ−リング剤を調製し、テストピ−スに乾燥膜厚10mmで塗布し、シ−ラ−炉にて130℃、20分間の仮焼き又は乾燥後、5日間常温で放置し、当該テストピ−スに中塗り塗料を20μm(乾燥膜厚)塗付し、次いで、上塗り塗料のベ−ス塗料を15μm(乾燥膜厚)及び上塗り塗料のクリヤ−塗料を30μm(乾燥膜厚)塗付し、140℃で加熱焼付した。
当該自動車用塗装シ−リング剤を構成する可塑剤にはフタル酸エステル系可塑剤を、粘着付与剤として商品名エスコレッツ(エクソン化学社製)を、充填剤には重質炭酸カルシウムを、酸化マグネシウム(MgO)には、BET法による比表面積が80m/gの商品名キョ−ワマグ(協和化学工業社製)を、希釈剤として高沸点溶剤を用い自動車用塗装シ−リング剤を調製した。
酸化マグネシウム(MgO)の添加量は1.1gで、前記式1により算出の酸化マグネシウム(MgO)の表面積の総和(m2)は、3.5mであった。
焼付後の塗装面の膨れ(ブリスタ−及びフクレ)の状態を目視により評価した。
その結果を、表1に示す。
実施例2
【0039】
実施例1において、酸化マグネシウム(MgO)の添加量を1.1gから1.5gに代えた以外は、実施例1と同様にして、表1の配合に従い自動車用塗装シ−リング剤を調製し、テストピ−スに塗布し、シ−ラ−炉にて130℃、20分間の仮焼き又は乾燥後、5日間常温で放置し、中塗り塗料及び上塗り塗料のクリヤ−塗料を塗付し、加熱焼付を行った。
実施例1と同じBET法による比表面積が80m/gの酸化マグネシウム(MgO)を用いたが酸化マグネシウム(MgO)の添加量を1.1gから1.5gに代えたので、
前記式1により算出の酸化マグネシウム(MgO)の表面積の総和は、4.6m2となった。
焼付後の塗装面の膨れ(ブリスタ−及びフクレ)の状態を目視により評価した。
その結果を、表1に示す。
実施例3
【0040】
実施例1において、酸化マグネシウム(MgO)の添加量を1.1gから2.0gに代えた以外は、実施例1と同様にして、表1の配合に従い自動車用塗装シ−リング剤を調製し、テストピ−スに塗布し、シ−ラ−炉にて130℃、20分間の仮焼き又は乾燥後、5日間常温で放置し、中塗り塗料及び上塗り塗料のクリヤ−塗料を塗付し、加熱焼付を行った。
実施例1と同じBET法による比表面積が80m/gの酸化マグネシウム(MgO)を用いたが酸化マグネシウム(MgO)の添加量を1.1gから2.0gに代えたので、
前記式1により算出の酸化マグネシウム(MgO)の表面積の総和は、6.2mとなった。
焼付後の塗装面の膨れ(ブリスタ−及びフクレ)の状態を目視により評価した。
その結果を、表1に示す。
実施例4
【0041】
実施例1において、BET法による比表面積が80m/gの酸化マグネシウム(MgO)に代えて、BET法による比表面積が148m/gの酸化マグネシウム(MgO)とし、又、酸化マグネシウム(MgO)の添加量を1.1gから0.8gに代えた(成分合計量99.3g)以外は、実施例1と同様にして、表1の配合に従い自動車用塗装シ−リング剤を調製し、テストピ−スに塗布し、シ−ラ−炉にて130℃、20分間の仮焼き又は乾燥後、5日間常温で放置し、中塗り塗料及び上塗り塗料のクリヤ−塗料を塗付し、加熱焼付を行った。
前記式1により算出の酸化マグネシウム(MgO)の表面積の総和は、4.6mであった。
焼付後の塗装面の膨れ(ブリスタ−及びフクレ)の状態を目視により評価した。
その結果、ブリスタ−もフクレも発生せず、良好であった。
実施例5
【0042】
実施例1において、BET法による比表面積が80m/gの酸化マグネシウム(MgO)に代えて、BET法による比表面積が44m/gの酸化マグネシウム(MgO)とし、又、酸化マグネシウム(MgO)の添加量を1.1gから2.2gに代えた(成分合計量100.7g)た以外は、実施例1と同様にして、表1の配合に従い自動車用塗装シ−リング剤を調製し、テストピ−スに塗布し、シ−ラ−炉にて130℃、20分間の仮焼き又は乾燥後、5日間常温で放置し、中塗り塗料及び上塗り塗料のクリヤ−塗料を塗付し、加熱焼付を行った。
前記式1により算出の酸化マグネシウム(MgO)の表面積の総和は、3.8mであった。
焼付後の塗装面の膨れ(ブリスタ−及びフクレ)の状態を目視により評価した。
その結果、ブリスタ−もフクレも発生せず、良好であった。
比較例1
【0043】
実施例1において、酸化マグネシウム(MgO)の添加量を1.0gに代えた以外は、実施例1と同様にして、表1の配合に従い自動車用塗装シ−リング剤を調製し、テストピ−スに塗布し、シ−ラ−炉にて130℃、20分間の仮焼き又は乾燥後、5日間常温で放置し、中塗り塗料及び上塗り塗料のクリヤ−塗料を塗付し、加熱焼付を行った。
実施例1と同じBET法による比表面積が80m/gの酸化マグネシウム(MgO)を用いたが、酸化マグネシウム(MgO)の添加量を1.1gから1.0gに代えたので、前記式1により算出の酸化マグネシウム(MgO)の表面積の総和は、3.1mとなった。
焼付後の塗装面の膨れ(ブリスタ−及びフクレ)の状態を目視により評価した。
その結果を、表1に示す。
当該塗膜のブリスタ−及びフクレの状態を写真に撮影し、図1及び図2に示す。
比較例2
【0044】
実施例1において、酸化マグネシウム(MgO)の添加量を2.2gに代えた以外は、実施例1と同様にして、表1の配合に従い自動車用塗装シ−リング剤を調製し、テストピ−スに塗布し、シ−ラ−炉にて130℃、20分間の仮焼き又は乾燥後、5日間常温で放置し、中塗り塗料及び上塗り塗料のクリヤ−塗料を塗付し、加熱焼付を行った。
実施例1と同じBET法による比表面積が80m/gの酸化マグネシウム(MgO)を用いたが酸化マグネシウム(MgO)の添加量を1.1gから2.2gに代えたので、
前記式1により算出の酸化マグネシウム(MgO)の表面積の総和は、6.8mとなった。
焼付後の塗装面の膨れ(ブリスタ−及びフクレ)の状態を目視により評価した。
その結果を、表1に示す。
比較例3
【0045】
比較例1において、酸化マグネシウム(MgO)1.0gに代えて酸化カルシウム(CaO)1.0gを使用した以外は、比較例1と同様にして、表1の配合に従い自動車用塗装シ−リング剤を調製し、テストピ−スに塗布し、シ−ラ−炉にて130℃、20分間の仮焼き又は乾燥後、5日間常温で放置し、中塗り塗料及び上塗り塗料のクリヤ−塗料を塗付し、加熱焼付を行った。
酸化カルシウム(CaO)には、BET法による比表面積が26m/gの商品名CML−35(近江化学工業社製)を使用した。表1における酸化カルシウム(CaO)の表面積の総和(m2)は、上記式1において、酸化マグネシウム(MgO)の添加量に代えて酸化カルシウム(CaO)の添加量を、又、酸化マグネシウム(MgO)の比表面積に代えて酸化カルシウム(CaO)の比表面積を代入して算出した。
焼付後の塗装面の膨れ(ブリスタ−及びフクレ)の状態を目視により評価した。
その結果を、表1に示す。
比較例4
【0046】
比較例1において、酸化カルシウム(CaO)1.0gに代えて酸化カルシウム(CaO)5.0gを使用した以外は、比較例1と同様にして、表1の配合に従い自動車用塗装シ−リング剤を調製し、テストピ−スに塗布し、シ−ラ−炉にて130℃、20分間の仮焼き又は乾燥後、5日間常温で放置し、中塗り塗料及び上塗り塗料のクリヤ−塗料を塗付し、加熱焼付を行った。
酸化カルシウム(CaO)には商品名CML−35(近江化学工業社製)を使用した。
焼付後の塗装面の膨れ(ブリスタ−及びフクレ)の状態を目視により評価した。
その結果を、表1に示す。
比較例5
【0047】
比較例1において、酸化カルシウム(CaO)1.0gに代えて酸化カルシウム(CaO)14.0gを使用し、充填剤を30.0gとした以外は、比較例1と同様にして、表1の配合に従い自動車用塗装シ−リング剤を調製し、テストピ−スに塗布し、シ−ラ−炉にて130℃、20分間の仮焼き又は乾燥後、5日間常温で放置し、中塗り塗料及び上塗り塗料のクリヤ−塗料を塗付し、加熱焼付を行った。
酸化カルシウム(CaO)には商品名CML−35(近江化学工業社製)を使用した。
焼付後の塗装面の膨れ(ブリスタ−及びフクレ)の状態を目視により評価した。
その結果を、表1に示す。
【0048】
【表1】










【0049】
上記の表1に示すように、塩化ビニル系樹脂を含有する非発泡型自動車用塗装シ−リング剤において、式1で算出される3.5〜6.2mの表面積の総和の範囲内で酸化マグネシウム(MgO)を添加することにより、ブリスタ−もフクレも発生せず良好であることが示されている(実施例1、実施例2及び実施例3)。又、表面積の異なる酸化マグネシウム(MgO)を添加しても式1で算出される3.5〜6.2mの表面積の総和の範囲内で酸化マグネシウム(MgO)を添加することにより、ブリスタ−もフクレも発生せず良好であることが示されている(実施例4及び実施例5)。
しかし、当該表面積の総和の範囲を逸脱すると、酸化マグネシウム(MgO)を添加しても、ブリスタ−やフクレが発生してしまうことが示されている(比較例1及び比較例2)。酸化マグネシウム(MgO)を添加せず、比較例3に示すように、酸化カルシウム(CaO)を少量1,0g添加したのでは、フクレを抑えられないだけでなく、ブリスタ−も発生し、又、比較例4に示すように、酸化カルシウム(CaO)を5,0g添加したのでは、フクレの発生を抑えられても、ブリスタ−は発生することが示されている。更に、比較例5に示すように、酸化カルシウム(CaO)を14.0g添加した場合、フクレは防止できても、ブリスタ−の発生を防止できないことが示されている。当該酸化カルシウム(CaO)の添加量14.0gは、特開2001−40270号公報に記載の塩化ビニル系樹脂を用いたアンダ−コ−ト剤における好ましいとされた酸化カルシウム(CaO)の配合量10〜16重量%に入るもので、フクレの発生は防止できても、ブリスタ−の発生を防止できないことが示されている。
上記のように、酸化カルシウム(CaO)のみを添加して表面積の総和を変えてみた結果、フクレを抑制できる条件は確認できたが、ブリスターを抑制できる条件は確認できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、広くは、自動車の鋼板合わせ目部分への水の侵入等を阻止する技術に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】ブリスタ−の状態を説明する写真である。
【図2】フクレの状態を説明する写真である。
【図3】ブリスタ−やフクレの発生のメカニズムを説明する図である。(A)は、酸化カルシウム(CaO)の添加の場合、(B)は、酸化マグネシウム(MgO)の添加の場合、及び、(C)は、当該酸化カルシウム(CaO)や酸化マグネシウム(MgO)のような吸湿防止剤無添加の場合を表す。
【符号の説明】
【0052】
1 シ−リング剤(シ−ラ−)塗膜
2 ブリスタ−
3 フクレ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂(PVC)を含有するが発泡剤を含有しない非発泡型の自動車用塗装シ−リング剤であって、当該自動車用塗装シ−リング剤の塗装、当該塗装後の仮焼き又は乾燥、当該仮焼き又は乾燥後の放置、当該放置後の中塗り及び(又は)上塗り後に当該塗装塗膜に発生するブリスタ−を防止できる自動車用塗装シ−リング剤において、酸化マグネシウム(MgO)を次の式1で算出される表面積の総和値の3.5〜6.2mの範囲を充足するように当該自動車用塗装シ−リング剤中に添加するようにしてなることを特徴とするブリスタ−防止自動車用塗装シ−リング剤。
【化1】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−14682(P2013−14682A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148122(P2011−148122)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000232542)日本特殊塗料株式会社 (35)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】