説明

ブルームの鋳造方法

【課題】狭面側のバルジングの発生を抑えることでブルームの内部割れや表面割れをより抑制する。
【解決手段】垂直曲げ型のブルーム連続鋳造機1で、鋳造するブルームの狭面サイズが250mm〜450mm、炭素成分が0.4%〜1.0%、クロム成分が0.2〜1.6%のブルームを鋳造するブルームの鋳造方法であって、ブルーム連続鋳造機1の鋳造速度、鋳型4から最上流側の狭面サポートロール7までの距離、各種位置での狭面中央部での表面温度及び冷却速度を適宜規定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブルームの鋳造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、垂直曲げ型のブルーム連続鋳造機によって、ブルームを鋳造する連続鋳造方法は数多く開発されている。ブルームの鋳造においては、鋳型から引き抜かれた鋳片の広面を広面サポートロールでサポートすると共に、鋳片の狭面を狭面サポートロールでサポートすることによって、バルジングの発生の抑制や防止を図っている。
ブルーム(鋳片)の狭面側は広面側に比べて厚みが小さく、狭面側ではバルジングが発生し難いとのことから、垂直曲げ型のブルーム連続鋳造機にあっては、狭面サポートロールを鋳型から数m程度しか設置していないのが実情である。
【0003】
しかしながら、近年、生産性を上げるために、ブルームの大断面化、鋳造速度の高速化が進んでおり、この結果、バルジングが発生し難い狭面側においても、バルジングの発生を無視できなくなってきている。
そこで、ブルームの狭面側のバルジングの発生を抑制することで、当該ブルームの内部割れや表面割れなどを抑制する技術が数多く考えられている(例えば、特許文献1)。
特許文献1では、狭面サポートロールを鋳型の下端の2.5mの位置までの範囲に配備し、狭面サポートロールの設置ピッチを、広面サポートロールの設置ピッチよりも大きく、且つ、鋳型の下端からの距離によって規定される値よりも小さい値に設定することで、狭面側のバルジングの発生を抑え、ブルームの内部割れを抑制している。
【特許文献1】特開2006−239769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、狭面側のバルジングの発生を抑えるこでブルームの内部割れなどを抑制することができるものの、他に考慮するファクターなどがあり、実機に適用するには未だ改善の余地が残されているのが実情である。
そこで、本発明では、狭面側のバルジングの発生を抑えることでブルームの内部割れなどをより抑制することができるブルームの鋳造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明は、次の手段を講じた。
即ち、垂直曲げ型のブルーム連続鋳造機で、鋳造するブルームの狭面サイズが250mm〜450mm、炭素成分が0.4%〜1.0%、クロム成分が0.2〜1.6%のブルームを鋳造するブルームの鋳造方法であって、前記ブルーム連続鋳造機の鋳造速度を0.6〜1.2m/minの範囲で、且つ、式(1)〜式(5)を満たす条件下でブルームを鋳造する点にある。
【0006】
【数2】

【0007】
図3はバルジングが発生した際のブルームの狭面側の断面図を示す図である。この図に示すように、バルジングが発生した状態では、狭面中央部20の凝固界面には圧縮歪みが作用するため内部割れは発生しないが、凝固シェル(鋳片)の基部界面21はバルジングによって引っ張り歪が作用するため、この基部21に内部割れ22が発生することになる。
ここで、内部割れを抑制するために、狭面サポートロールの直下で過剰に冷却を行うと、鋳片のコーナ部は過冷却されて当該コーナ部の温度が脆化温度域に入ってしまい、鋳片のアウト側(曲げの外側)に表面割れが発生してしまうことになる。そのため、バルジングによる内部割れを抑制する場合であっても、鋳片の狭面側の表面温度を所定以上にする必要がある。
【0008】
以上のことから、発明者は、鋳片の基部における内部割れの抑制すると共に、表面割れの防止するための条件を様々な観点から検証した。
その結果、鋳型から最上流側の狭面サポートロールまでの長さ、鋳造速度、各種位置での狭面中央部での表面温度及び冷却速度、ブルームの狭面サイズ、ブルームの炭素成分及びクロム成分を適宜規定することで、内部割れの抑制でき且つ表面割れの防止できるようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、狭面側のバルジングの発生を抑えることでブルームの内部割れや表面割れをより抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のブルームの鋳造方法について説明する。
図1は、垂直曲げ型のブルーム連続鋳造機を示していて、本発明のブルームの鋳造方法を行う装置である。なお、ブルーム連続鋳造機は、次に示す装置に限定されない。
図1に示すように、連続鋳造機1は、溶鋼2を一時的に貯留するタンディッシュ3と、このタンディッシュ3からの溶鋼2が供給される鋳型4と、鋳型4により鋳造された鋳片5の広面をサポートする広面サポートロール6と、鋳片5の狭面をサポートする狭面サポートロール7と、鋳片5を冷却する冷却手段(冷却ノズル)8とを有している。
【0011】
タンディッシュ3は、全体として有底箱形となっており、タンディッシュ3の底部に浸漬ノズル9が設けられている。浸漬ノズル9は、スライドバルブにより開閉可能となっており、浸漬ノズル9の開閉により鋳型4への溶鋼2の注入及び停止が行われる。
広面サポートロール6は、鋳型4から下流側に向けて鋳片5の広面をサポートするように複数配置されている。即ち、このブルーム連続鋳造機1は、広面サポートロール6が鋳型4から下流側に向けて垂直方向に並べられた垂直部10と、広面サポートロール6が垂直部10から続いて曲がって並べられた曲げ部11と、広面サポートロール6が曲げ部11から続いて円弧状に並べられた円弧部12と、広面サポートロール6が円弧部12から続いて並べられた矯正部13とを備えている。
【0012】
言い換えれば、ブルーム連続鋳造機1は、鋳型4の直下で鋳片5を垂直に支持する垂直部10と、垂直部10に続いて鋳片5を曲げ始める曲げ部11と、曲げ部11に続いて鋳片5を一定の曲率で円弧状にする円弧部12と、円弧部12に続いて鋳片を直線状に矯正する矯正部13とを備えている。
狭面サポートロール7は鋳型4から下流側に向けて鋳片5の狭面をサポートするように複数配置されている。広面サポートロール6は、垂直部10から矯正部13までの広範囲に亘って配置されているが狭面サポートロール7の配置領域は広面サポートロール6の領域よりも狭く、狭面サポートロール7は、例えば、鋳型4の下面から下流側に向けて少なくとも2mまでの領域に配置されている。
【0013】
冷却ノズル8は、鋳型4で1次冷却された鋳片5を、鋳型4の下流側で2次冷却するものであって、冷却媒体(例えば、水)を鋳片5に吹き付けることによって鋳片5の広面側及び狭面側を冷却することができ、冷却媒体の水量、圧力などは適宜設定可能である。
この連続鋳造機1では、転炉や二次精錬設備等から出鋼された溶鋼2を取鍋によってタンディッシュ3まで搬送し、搬送された取鍋内の溶鋼2をタンディッシュ3へ注入後、浸漬ノズル9を開いて溶鋼2を鋳型4に装入することで鋳造することができる。鋳型4で鋳造された鋳片5は、広面サポートロール6及び狭面サポートロール7によって支持されながら下流側に引き抜かれると共に、冷却ノズル8によって徐々にその表面及び内部が冷却される。
【0014】
以下、本発明のブルームの鋳造方法について説明する。
ブルームを鋳造するにあたっては、ブルームの狭面サイズ(鋳片の狭面側の幅)は、250mm〜450mmとしている。鋳造するブルームの鋼種の成分は、炭素が0.4%〜1.0%、クロムが0.2〜1.6%含むものとしている。鋳造速度は、0.6〜1.2m/minとしている。
さらに、鋳造するにあたっては、式(1)及び式(2)を満たす条件下で鋳造するものとしている。
【0015】
【数3】

【0016】
図1に示すように、式(1)は、鋳片5から最下流側に位置する狭面サポートロール(最下流狭面ロールということがある)7aまでの距離(狭面サポート長さということがある)Lと、鋳造速度Vcと、最下流狭面ロール7aから下流側へ1m進んだエリア(以降、第1温度制御エリアということがある)E1における鋳片5の幅方向狭面中央部の表面温度の最大値Tmax1との関係を示したものである。
ブルームを鋳造する際は、まず、狭面サポート長さL、鋳造速度Vcを上述した条件(L≧2、Vc=0.6〜1.2m/min)を満たすように予め設定する。その上で、鋳造中は、第1温度制御エリアE1での最大表面温度Tmax1が式(1)を満たすように、第1温度制御エリアE1に配置された冷却ノズル8の水量、圧力、散布状況(スプレー、シャワー、ミスト)などを制御する。
【0017】
式(1)は実験により求めたものである。表1は、式(1)を満たすようにブルームを鋳造した実験と、式(1)を満たさないようにブルームを鋳造した実験とをまとめたものである。
【0018】
【表1】

【0019】
【表2】

【0020】
実験1〜実験21において、鋳造するブルームの鋼種は、表2に示す鋼種のうち、鋼種Aで示されるものとした。また、狭面サポート長さLは2.0m、鋳型4の長さ(上下高さ)は900mm、メニスカスは鋳型4の上端から100mmとした。
この実験では、放射温度計にて第1温度制御エリアE1での最大表面温度Tmax1を測定した。放射温度計は、(株)チノー製のIR−FAINLNで、測定範囲が300℃〜1300℃である。測定誤差は±5℃又は±0.5%の大きい方とした。
また、図2に示すように、この実験では、鋳片5のコーナ部において表面から30mm〜70mmの深さでの内部割れ22の長さの総合計が20mm以下(内部割れ評点が20以下)であるものを、良品(表の「○」)、内部割れ評点が20以上であるものを、不良品(表の「×」)とした。
【0021】
ブルーム鋳造後の加工時における大きな内部割れの防止や製品製作後の品質を保つといった様々な観点から内部割れ22の長さの総合計(内部割れ評点)が20以下となることが必要とされているため、評価の基準とした。
表1に示すように、鋼種A、L=2.0mにおいて、第1温度制御エリアE1の最大表面温度Tmax1が式(1)を満たすように、ブルームを鋳造した場合、内部割れ評点が20以下とすることができ、ブルームの内部割れを非常に抑制することができた。
一方で、鋼種Aにおいて、第1温度制御エリアE1の最大表面温度Tmax1が式(1)を満たさない場合は、内部割れ評点が20よりも大きくなり、必要とされている内部割れの基準を満たすことができなかった(内部割れを抑制することができない)。
【0022】
表3は、上記実験に対して、鋼種を変更したもので、表2に示す鋼種Bにて実験を行った結果をまとめたものである。
【0023】
【表3】

【0024】
表3に示すように、鋼種B、L=2.0mにおいても、第1温度制御エリアE1の最大表面温度Tmax1が式(1)を満たすように、ブルームを鋳造した場合、内部割れ評点が20以下とすることができた。
表4は、上記実験に対して、鋼種を変更したもので、表2の鋼種Cにて実験を行った結果をまとめたものである。
【0025】
【表4】

【0026】
表4に示すように、鋼種C、L=2.0mにおいても、第1温度制御エリアE1の最大表面温度Tmax1が式(1)を満たすように、ブルームを鋳造した場合、内部割れ評点が20以下とすることができた。
表1〜表4の実験によって、炭素成分が0.4%〜1.0%、クロム成分が0.2〜1.6%を含むブルームを鋳造するにあたっては、L=2.0m、鋳造速度0.7〜1.1m/min及び式(1)を満たすようにすれば、内部割れ評点が20以下とすることができる。なお、鋳造速度を1.2m/minに変更したり、鋼種Dを鋳造した場合であっても、内部割れ評点20以下であることを確認している。
【0027】
表5〜6は、狭面サポート長さL=2.0mのみでなく、L≧2.0mした場合について検証した実験結果を示したものである。
表5は、鋼種Aを鋳造するにあたって狭面サポート長さLを変更した結果をまとめたものである。表5において、実験36〜実験56ではL=4.0mとし、実験57〜実験70ではL=7.0mとして鋼種Aの鋳造を行った。
【0028】
【表5】

【0029】
表5に示すように、鋼種Aを鋳造するにあたっては、上述したようにL=2.0mに限らず、L≧2.0mあれば、内部割れを防止することができる。
表6は、狭面サポート長さL≧2.0mとし、他の鋼種についても実験を行った結果をまとめたものである。即ち、表6において、L=4.0mに固定し、実験71〜77は鋼種B、実験78〜84は鋼種C、実験85〜105は鋼種Dの結果を示したものである。
【0030】
【表6】

【0031】
以上、表5〜表6の実験によって、各鋼種A〜Dを鋳造するにあたってL=2.0mだけでなくL>2.0mと(L≧2.0m)すれば、内部割れを防止できる。
また、ブルームを鋳造するにあたっては、上述した条件の他に式(3)を満たす条件下で鋳造を行うようにしている。
【0032】
【数4】

【0033】
図1に示すように、式(3)は、最下流狭面ロール7aの直下の1.5mから曲げ終了位置(曲げ部11の終了)までのエリア(以降、第2温度制御エリアということがある)E2における鋳片5の幅方向狭面中央部の表面温度T1の範囲を示したものである。言い換えれば、式(3)は、第1温度制御エリアE1の最下流端から0.5mの時点〜曲げ部11の終了までの表面温度T1を示したものである。
ブルームを鋳造する際は、鋳造中は、第2温度制御エリアE2での表面温度T1が式(3)を満たすように、第1温度制御エリアE1に配置された冷却ノズル8の水量などや第2温度制御エリアE2に配置された冷却ノズル8の水量などを制御する。
【0034】
式(3)は実験により求めたものである。表7は、式(3)を満たすようにブルームを鋳造した実験と、式(3)を満たさないようにブルームを鋳造した実験とをまとめたものである。
表7において、L=2.0mに固定し、実験106〜実験112は鋼種A(鋳造速度Vc=0.7m/min)、実験113〜実験119は鋼種A(鋳造速度Vc=1.1m/min)、実験120〜実験125は鋼種B(鋳造速度Vc=0.7m/min)、実験126〜実験131は鋼種C(鋳造速度Vc=0.7m/min)の結果を示したものである。
【0035】
図2に示すように、この実験では、鋳片5のコーナ部において表面から70mm〜90mmの深さでの内部割れ22の長さの総合計が20mm以下(内部割れ評点が20以下)であるものを、良品(表の「○」)、内部割れ評点が20以上であるものを、不良品(表の「×」)とした。
また、鋳片5のコーナ部において表面割れ23が生じていないものを、良品(表の「○」)、表面割れ23が発生しているものを、不良品(表の「×」)とした。
【0036】
【表7】

【0037】
表7に示すように、鋼種A〜C、L=2.0mにおいて、第2温度制御エリアE2の表面温度T1が式(3)を満たすように、ブルームを鋳造した場合、内部割れ評点が20以下とすることができ、ブルームの内部割れを非常に抑制することができると共に、コーナ部の表面割れを防止することができた。
一方で、第2温度制御エリアE2の表面温度が式(3)を満たさず、表面温度T1が1150℃を超えると内部割れ評点が20よりも大きくなり、必要とされている内部割れの基準を満たすことができなかった。また、第2温度制御エリアE2の表面温度が式(3)を満たさず、表面温度T1が1040℃未満であると、コーナ部の表面割れが発生した。
【0038】
表8は、狭面サポート長さLを変更した結果をまとめたものである。表8において、L=4.0mに固定し、実験132〜138は鋼種A(鋳造速度Vc=0.7m/min)、実験139〜145は鋼種A(鋳造速度Vc=1.1m/min)、実験146〜実験152は鋼種B(鋳造速度Vc=1.1m/min)、実験153〜実験159は鋼種C、実験160〜実験169は鋼種D(鋳造速度Vc=0.7m/min)の結果を示したものである。
【0039】
【表8】

【0040】
表8に示すように、鋼種A〜Dにおいて、L=2.0だけでなくL>2.0であっても、の表面温度T1が式(3)を満たすように、ブルームを鋳造した場合、内部割れを抑制することができると共に、コーナ部の表面割れを防止することができた。
さらに、ブルームを鋳造するにあたっては、上述した条件の他に式(4)を満たす条件下で鋳造を行うようにしている。
【0041】
【数5】

【0042】
図1に示すように、式(4)は、矯正開始位置から矯正終了位置(矯正部13の開始から矯正部13の終わり)までのエリア(以降、第3温度制御エリアということがある)E3における鋳片5の幅方向狭面中央部の表面温度T2の範囲を示したものである。
ブルームを鋳造する際は、鋳造中は、第3温度制御エリアE3での表面温度T2が式(4)を満たすように、第1温度制御エリアE1に配置された冷却ノズル8の水量、圧力や第2温度制御エリアE2に配置された冷却ノズル8の水量、圧力を制御する。
式(4)は実験により求めたものである。表9は、式(4)を満たすようにブルームを鋳造した実験と、式(4)を満たさないようにブルームを鋳造した実験とをまとめたものである。
【0043】
表9において、L=2.0mに固定し、実験170〜実験180は鋼種A(鋳造速度Vc=0.7m/min)、実験181〜実験191は鋼種C(鋳造速度Vc=0.7m/min)の結果を示したものである。表9の内部割れ評点1は第1温度制御エリアE1での評点を示しており、内部割れ評点2は第2温度制御エリアE2での評点を示している。
表9での実験では、鋳片5のコーナ部において表面から90mm以上の深さでの内部割れ22の長さの総合計が20mm以下(内部割れ評点3が20以下)であるものを、良品(表の「○」)、内部割れ評点が20以上であるものを、不良品(表の「×」)とした。また、鋳片5のコーナ部(内側のコーナ部)において表面割れ23が生じていないものを、良品(表の「○」)、表面割れが発生しているものを、不良品(表の「×」)とした。
【0044】
【表9】

【0045】
表9に示すように、鋼種A、Cにおいて、第3温度制御エリアE3の表面温度T2が式(4)を満たす条件下でブルームを鋳造した場合、内部割れ評点3が20以下とすることができ、ブルームの内部割れを非常に抑制することができると共に、コーナ部の表面割れを防止することができた。
一方で、第3温度制御エリアE3の表面温度が式(4)を満たさず、表面温度T2が100℃を超えると内部割れ評点3が20よりも大きくなり、必要とされている内部割れの基準を満たすことができなかった。また、第3温度制御エリアE3の表面温度が式(4)を満たさず、表面温度T2が750℃未満であると、コーナ部の表面割れが発生した。
【0046】
他の鋼種についても、狭面サポート長さL、鋳造速度等を変更して鋳造を行ったが、L≧2.0m、鋳造速度0.6〜1.2m/minで式(4)を満たせば、90mm以上の深さの内部割れを抑制することができ且つコーナ部の表面割れを防止することができることを確認している。
また、ブルームを鋳造するにあたっては、上述した条件の他に式(5)を満たす条件下で鋳造を行うようにしている。
【0047】
【数6】

【0048】
図1に示すように、式(5)は、曲げ終了位置から矯正開始位置(円弧部12の開始から円弧部12の終わり)までのエリア(以降、第4温度制御エリアということがある)E4における鋳片5の幅方向狭面中央部の平均冷却温度Rを示したものである。
ブルームを鋳造する際は、鋳造中は、第4温度制御エリアE4での平均冷却温度R2が式(5)を満たすように、第1温度制御エリアE1に配置された冷却ノズル8の水量、圧力や第2温度制御エリアE2に配置された冷却ノズル8の水量、圧力を制御する。
式(5)は実験により求めたものである。表10は、式(5)を満たすようにブルームを鋳造した実験と、式(5)を満たさないようにブルームを鋳造した実験とをまとめたものである。
【0049】
表10において、L=2.0mに固定し、実験192〜実験205は鋼種A(鋳造速度Vc=0.7m/min)、実験206〜219は鋼種C(鋳造速度Vc=0.7m/min)の結果を示したものである。
表10での実験では、鋳片5のコーナ部において表面から90mm以上の深さでの内部割れ22の総合計が20mm以下(内部割れ評点3が20以下)であるものを、良品(表の「○」)、内部割れ評点が20以上であるものを、不良品(表の「×」)とした。また、鋳片5のコーナ部(内側のコーナ部)において熱応力による割れが生じていないものを、良品(表の「○」)、表面割れ23が発生しているものを、不良品(表の「×」)とした。
【0050】
【表10】

【0051】
表10に示すように、鋼種A、Cにおいて、第4温度制御エリアE4の冷却速度Rが式(5)を満たす条件下でブルームを鋳造した場合、内部割れ評点3が20以下とすることができ、ブルームの内部割れを非常に抑制することができると共に、コーナ部の熱応力による割れを防止することができた。
一方で、第4温度制御エリアE4の冷却速度が式(5)を満たさず、冷却速度Rが2.0m未満であると内部割れ評点3が20よりも大きくなり、必要とされている内部割れの基準を満たすことができなかった。また、第4温度制御エリアE4の冷却速度Rが式(5)を満たさず、冷却速度Rが28よりも大きくなると、コーナ部に熱応力による割れが発生した。
【0052】
他の鋼種についても、狭面サポート長さL、鋳造速度等を変更して鋳造を行ったが、L≧2.0m、鋳造速度0.6〜1.2m/minで式(5)を満たせば、90mm以上の深さの内部割れを抑制することができ且つコーナ部における熱応力による割れを防止することができることを確認している。
以上、本発明のブルームの鋳造方法によれば、鋳造するブルームの鋼種の成分を、炭素成分が0.4%〜1.0%、クロム成分が0.2〜1.6%を含むものとし、鋳造速度を0.6〜1.2m/minとし、式(1)〜式(5)を満たす条件下で鋳造することによって、ブルームの内部割れを抑制することができると共に、コーナ部の割れを防止することができる。
【0053】
なお、上記の実験では、ブルームのサイズは、600×300mm、400×300mmで行った。ここで、梁の曲げモデルを用いてバルジングの変位量と鋳片5の狭面側の幅との関係を求めると図4に示すものとなる。即ち、梁の曲げモデルにおいて狭面サポートロール7のロールピッチを330mmとし、凝固界面基部(基部21)の歪みに対する鋳片5の狭面側の厚み(狭面側の幅)を求めると図4のようになった。なお、梁の曲げモデルでは、鋳片5の狭面側の幅が300mmの場合での凝固界面基部(基部21)の歪みを1.0として規格化(正規化)した。
【0054】
図4に示すように、鋳片5の狭面側の幅が300mmであるときの歪みを1.0としたとき、バルジングによって発生する歪みが0.9となる鋳片5に対しては同等のものとして適用できると考えられる。即ち、歪みが0.9以上となる鋳片5狭面側の幅の範囲は、250mm〜450mmであり、この範囲においては上記実験と殆ど変わらず同等と考えられるため、ブルームの狭面サイズは250mm〜450mmとする範囲で同様の効果を得ることができる。実際にブルームの狭面サイズが250mm又は450mmとなるブルームに対して本発明と同様の実験を行った結果、内部割れ及び表面割れに関する効果は、上述した実験と同じであることも確認している。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】連続鋳造機の概念図である。
【図2】鋳型の内面割れ及び表面割れを示した図である。
【図3】鋳片の厚みと凝固界面基部歪みとの関係を示す図である。
【図4】バルジングが発生した際のブルームの狭面側の断面図を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1 ブルーム連続鋳造機
2 溶鋼
3 タンディッシュ
4 鋳型
5 鋳片
6 広面サポートロール
7 狭面サポートロール
7a 最下流狭面ロール
8 冷却ノズル
9 浸漬ノズル
E1 第1温度制御エリア
E2 第2温度制御エリア
E3 第3温度制御エリア
E4 第4温度制御エリア
L 狭面サポート長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直曲げ型のブルーム連続鋳造機で、ブルームの狭面サイズが250mm〜450mm、炭素成分が0.4%〜1.0%、クロム成分が0.2〜1.6%のブルームを鋳造するブルームの鋳造方法であって、
前記ブルーム連続鋳造機の鋳造速度を0.6〜1.2m/minの範囲で、且つ、式(1)〜式(5)を満たす条件下でブルームを鋳造することを特徴とするブルームの鋳造方法。
【数1】


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate