説明

ブレーキ制御方法およびブレーキ制御装置

【課題】車両の制動性能を向上させ、制動距離を短くすることができるブレーキ制御方法およびブレーキ制御装置を提供する。
【解決手段】本発明のブレーキ制御装置は、タイヤが装着された車輪に制動力を付加して制動させるとともに、制動力を調整する機能を有するブレーキと、タイヤにかかるその半径方向の加速度信号を時系列的に検出する加速度センサと、加速度信号からタイヤの接地長を逐次算出する接地長算出部と、ブレーキによる制動力が付加されたことを検知し、検知信号を出力するブレーキセンサと、ブレーキセンサから検知信号が入力された場合、各時刻で得られたタイヤの接地長を比較して得られた比較情報に基づいて、ブレーキに制動力の調整の要不用を示す制動情報信号を出力する判定部と、判定部からの制御情報信号に基づいてブレーキに制動力を調整させる制御信号を出力するブレーキコントロールユニットとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両などに設けられ、タイヤが装着された車輪に制動力を付加して制動させるとともに、制動力を調整する機能を有するブレーキのブレーキ制御方法およびブレーキ制御装置に関し、特に、タイヤの接地長に基づいて制動力の調整を行い、制動距離を短縮するブレーキ制御方法およびブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非常に滑り易い路面で、車両を制動させた場合、車輪がロックして、ハンドル操作が不能となることが発生する虞がある。仮に、車輪がロックしてしまうと、前方にある障害物に対して危険回避動作が不可能となり、安全上大変危険な状態に陥る。このため、現在では、殆どの車両にアンチロックブレーキシステム(以下、ABSという)が装着されている。
ここで、タイヤは、スリップ率が小さい範囲では、スリップ率の増加に伴い、摩擦力も増加するが、ある程度スリップ率が大きくなると、極大値に達する。そして、更にスリップ率が増加すると、摩擦力は低下し、最終的には車輪ロック状態に陥る。しかし、どの程度のスリップ率で、車輪がロックするかは、車両に装着されているタイヤ、および濡れている路面または雪の路面などの路面状況によって変化する。このため、ABSにおいては、車輪がロックしてしまわないように、予め余裕を持って決定された所定の閾値に達したとき、ブレーキ圧の制御(減圧、保持、増圧等)を繰り返すように、ABSの制御プログラムに設定されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のABSにおいては、車輪がロックしないように、閾値がある程度の余裕を持って制御プログラムに設定され、制御している。このため、余裕の分だけ、ABSを使用しない場合に比して、制動距離が長くなってしまうことがある。
【0004】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解決することにあり、車両の制動性能を向上させ、制動距離を短くすることができるブレーキ制御方法およびブレーキ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、タイヤが装着された車輪に制動力を付加して制動させるとともに、前記制動力を調整する機能を有するブレーキのブレーキ制御方法であって、前記タイヤにかかる前記タイヤの半径方向の加速度信号を時系列的に取得する工程と、前記加速度信号から前記タイヤの接地長を逐次算出する工程と、各時刻で得られたタイヤの接地長を比較して得られた比較情報に基づいて、前記制動力を制御する工程とを有することを特徴とするブレーキ制御方法を提供するものである。
【0006】
本発明において、前記接地長は、例えば、前記加速度信号に積分処理を用いて算出されるものである。
【0007】
また、本発明においては、前記制動力を制御する工程は、前記制動力が付加されたとき、前記制動力が付加されていない状態における接地長または前記制動力が付加された直後の接地長を基準接地長とし、前記制動力が付加された後の接地長が前記基準接地長に対して所定の量以上長くなった場合に実行されることが好ましい。
【0008】
さらに、本発明においては、前記制動力を制御する工程は、前記制動力が付加された以降、先の時刻の接地長をLi−1とし、前記先の時刻の次時刻である次の時刻の接地長をLとするとき、前記次の時刻の接地長Lが、1.02×Li−1>L>0.97×Li−1を満たす場合に実行されることが好ましい。
【0009】
さらにまた、本発明においては、前記制動力を制御する工程は、前記制動力が付加された以降、接地長をLとし、タイヤのスリップ率が最大となるまでの間における接地長の最大値を最大接地長Lmaxとしたとき、前記接地長Lが、1.1×Lmax>L>0.9×Lmaxを満たさない場合に実行されることが好ましい。
【0010】
また、本発明において、前記加速度信号を取得する加速度センサが、前記タイヤの幅方向または周方向に複数設けられていることが好ましい。
【0011】
また、本発明の第2の態様は、タイヤが装着されている車輪に設けられ、前記車輪に制動力を付加して制動させるとともに、前記制動力を調整する機能を有するブレーキと、前記タイヤにかかる前記タイヤの半径方向の加速度信号を時系列的に検出する加速度センサと、前記加速度信号が入力され、前記加速度信号から前記タイヤの接地長を逐次算出する接地長算出部と、前記ブレーキによる制動力が付加されたことを検知し、検知信号を出力するブレーキセンサと、前記ブレーキセンサに接続され、前記ブレーキセンサから前記検知信号が入力された場合、各時刻で得られたタイヤの接地長を比較して得られた比較情報に基づいて、前記ブレーキに前記制動力の調整の要不用を示す情報を含む制動情報信号を出力する判定部と、前記判定部に接続され、前記判定部からの前記制動情報信号に基づいて前記ブレーキに前記制動力を調整させる制御信号を出力するブレーキコントロールユニットとを有することを特徴とするブレーキ制御装置を提供するものである。
【0012】
本発明において、前記判定部は、前記ブレーキセンサから前記検知信号が入力された場合、前記制動力が付加されていない状態における接地長または前記制動力が付加された直後の接地長を基準接地長とし、前記制動力が付加された後の接地長が前記基準接地長に対して所定の量以上長くなったときに、前記ブレーキコントロールユニットに前記制動情報信号を出力することが好ましい。
【0013】
また、本発明において、前記判定部は、前記ブレーキセンサから前記検知信号が入力された場合、先の時刻の接地長をLi−1とし、前記先の時刻の次時刻である次の時刻の接地長をLとするとき、前記次の時刻の接地長Lが、1.02×Li−1>L>0.97×Li−1を満たすときに、前記ブレーキコントロールユニットに前記制動情報信号を出力することが好ましい。
【0014】
さらに、本発明において、前記判定部は、前記ブレーキセンサから前記検知信号が入力された場合、接地長をLとし、タイヤのスリップ率が最大となるまでの間における接地長の最大値を最大接地長Lmaxとしたとき、前記接地長Lが、1.1×Lmax>L>0.9×Lmaxを満たさないときに、前記ブレーキコントロールユニットに前記制動情報信号を出力することが好ましい。
【0015】
さらにまた、本発明において、さらに、前記車輪に設けられ、車輪の速度を測定する車輪速度センサと、前記車輪速度センサに接続され、前記車輪の速度の情報からスリップ率を算出するスリップ率演算部と、前記スリップ率演算部および前記ブレーキセンサに接続され、前記ブレーキセンサから前記検知信号が入力された場合、前記スリップ率演算部で得られたスリップ率に基づいて、前記ブレーキに前記制動力の調整の要不用を示す情報を含む制動情報信号を出力するブレーキ判定部とを有し、前記ブレーキ判定部は、前記ブレーキコントロールユニットに接続されており、前記ブレーキコントロールユニットに前記制動情報信号を出力し、前記ブレーキコントロールユニットは、前記制動情報信号に基づいて前記ブレーキに前記制動力を調整させる制御信号を出力することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の態様のブレーキ制御方法によれば、タイヤにかかるタイヤの半径方向の加速度信号を時系列的に取得する工程と、加速度信号からタイヤの接地長を逐次算出する工程と、各時刻で得られたタイヤの接地長を比較して得られた比較情報に基づいて、制動力を制御する工程とを有することにより、例えば、従来のスリップ率を算出して判定するものよりも、タイヤの接地長の変化が先に現れるため、従来よりも早期にブレーキをかけることができる。このため、車両の制動をより制御でき、横滑り等を防ぐことができるとともに、制動距離を短くすることができる。
【0017】
本発明の第2の態様のブレーキ制御装置によれば、タイヤが装着されている車輪に設けられ、車輪に制動力を付加して制動させるとともに、制動力を調整する機能を有するブレーキと、タイヤにかかるタイヤの半径方向の加速度信号を時系列的に検出する加速度センサと、加速度信号が入力され、加速度信号からタイヤの接地長を逐次算出する接地長算出部と、ブレーキによる制動力が付加されたことを検知し、検知信号を出力するブレーキセンサと、ブレーキセンサに接続され、ブレーキセンサから検知信号が入力された場合、各時刻で得られたタイヤの接地長を比較して得られた比較情報に基づいて、ブレーキに制動力の調整の要不用を示す制動情報信号を出力する判定部と、判定部に接続され、この制御情報信号に基づいてブレーキに制動力を調整させる制御信号を出力するブレーキコントロールユニットとを有することにより、例えば、従来のスリップ率を算出して判定するものよりも、タイヤの接地長の変化が先に現れるため、従来よりも早期にブレーキをかけることができる。このため、車両の制動をより制御でき、横滑り等を防ぐことができるとともに、制動距離を短くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明のブレーキ制御方法およびブレーキ制御装置を詳細に説明する。
図1は、縦軸に接地長、スリップ率をとり、横軸に時間をとって、ABSによる制動中の接地長変化を示すグラフである。また、図2は、縦軸に接地長、スリップ率をとり、横軸に時間をとって、ABSによる制動中の接地長変化を示すグラフであり、図1の要部拡大図である。なお、図1および図2に示す「◇」は、タイヤのセンタ(図4参照、参照符号24)に取り付けられた加速度センサによる接地長を示し、図1に示す「□」は、タイヤのセカンド(図4参照、参照符号24a)に取り付けられた加速度センサによる接地長を示し、図1に示す「○」は、タイヤのショルダ(図4参照、参照符号24b)に取り付けられた加速度センサによる接地長を示す。また、図1および図2に示す曲線αは、スリップ率を示す。
【0019】
図1に示すように、ブレーキを時刻tでかけたとき、その後、スリップ率によるABS動作の判定がなされる。このとき、ブレーキをかけた後(時刻t後)、スリップ率が上昇し、スリップ率のピークPでブレーキ圧を強める制御がされる(時刻t)。この後、領域Pのように、スリップ率が低下する。このとき、タイヤの接地長も、加速度センサの位置によらず変化している。
【0020】
また、図2に拡大して示すように、ブレーキをかけた後(時刻t後)、接地長はスリップ率がピークになる前に極大値(時刻t)をとる。その後、接地長は短くなる。更には、スリップ率が小さくなった後、接地長が長くなったり、短くなったり、不規則な変動が生じる(領域β)。スリップ率によるABSの判定以前に、接地長の変化が現れている。このため、接地長が所定の長さとなるように、制動力を調整することにより、タイヤの制動を抑制することができ、安定した車両の制動制御ができ、さらには、制動距離を短くすることができることを見出した。
このように、接地長の情報を用いることにより、ABS動作の判定が早期に可能であり、かつ安定した車両の制動制御ができ、さらには、制動距離を短くすることができる。本発明は、以上のような知見に基づいてなされたものである。
【0021】
ここで、図3は、本発明の実施形態に係るブレーキ制御装置を示すブロック図である。
図3に示すブレーキ制御装置10は、一般的に自動車などの車両に設けられるものであり、加速度センサ24によるタイヤ20の半径方向の加速度信号、および車輪12の車輪速センサ26からの回転検出信号を用いて、タイヤ20が滑らない状態にブレーキ14の制動力を調整する装置である。
このブレーキ制御装置10は、基本的に、複数の車輪12と、各車輪12に制動力を付与するとともに、制動力を調整する機能を有するブレーキ14と、運転者がブレーキをかけたことを検出するブレーキセンサ16と、ブレーキ14の制動力を制御する制御部18とを有する。
【0022】
複数の各車輪12は、空気入りタイヤ20と、このタイヤ20が装着されるホイール22とを有するものであり、車輪12には、これ以外にも一般的な自動車の車輪と同様の構成を有するものである。この車輪12は、一般的な自動車であれば、4個設けられている。
【0023】
本実施形態においては、図4に示すように、例えば、タイヤ20の空洞領域におけるインナーライナー部20a表面、かつタイヤ20の幅方向の中心(センタ)に加速度センサ24が取り付けられている。
加速度センサ24により、タイヤ20のトレッド部20bの半径方向(ラジアル方向)Rにおける加速度が時系列的に検出される。また、この加速度センサ24は、送信機(図示せず)を備え、この送信機を介して制御部18に接続されている。
【0024】
本実施形態において、加速度センサ24は、半径方向Rにおける加速度を検出するものであり、例えば、半導体加速度センサが用いられる。
半導体加速度センサは、具体的には、Siウエハ外周枠部内にダイアフラムが形成されたSiウエハと、このウエハ外周枠部を固定する台座とを有し、ダイアフラムの一方の面の中央部に重錘が設けられ、ダイアフラムには複数のピエゾ抵抗体が形成されている。この半導体加速度センサに加速度が作用した場合、ダイアフラムは変形し、この変形によりピエゾ抵抗体の抵抗値は変化する。この変化を加速度の情報として検出できるようにブリッジ回路が形成されている。
加速度センサ24は、半導体加速度センサに限定されるものではなく、タイヤ20の半径方向Rの加速度が検出可能な加速度センサであればよい。
【0025】
また、車軸(図示せず)、ハブ(図示せず)などの車体側または車輪12付近に、車輪速度を検出する車輪速センサ26が設けられている。
この車輪速センサ26は、図5(a)に示すように、ホイールに取り付けられたギアパルサー30と、このギアパルサー30に対向して設けられたセンサ部32と、このセンサ部32の回転検出信号を送信する送信機34とを有する。
【0026】
ギアパルサー30は、円板部材の外縁の全周にわたり、所定数の歯30aが所定のピッチで隙間30bをあけて形成されたものである。このギアパルサー30は、車輪と共に回転するものであり、例えば、車輪がr方向に回転すると、ギアパルサー30もr方向に回転する。
【0027】
センサ部32は、高透磁率の磁心、この磁心に直列的に配置された永久磁石、および磁心の周囲に設けられたコイルを有するものである。この磁心がギアパルサー30に向けてセンサ部32が配置されている。
車輪が回転すると、歯30aと、隙間30bとが交互にセンサ部32に対向することになり、センサ部32における磁界が変化する。この磁界の変化により、コイルに電圧が発生する。この場合、車輪速センサ26(センサ部32)においては、例えば、図5(b)に示すように、車輪の回転に応じて正弦波交流状の回転検出信号36が出力される。ギアパルサー30の歯30aの数は変わるものではない。このため、車輪速センサ26(センサ部32)においては、車輪速度によらず、車輪1回転あたりの回転検出信号36における波数は同じである。すなわち、車輪速センサ26(センサ部32)から出力される出力信号の数は、車輪速度によらず同じである。このため、回転検出信号36の波数の間隔により、車輪速度が算出することができる。
【0028】
図3に示すブレーキ14は、各車輪12に制動力を付加して制動させるとともに、制動力を調整する機能を有するものであり、各車輪12に制動力を付与して車両を制動する際、車体速度(車輪速度)を調整するものである。このブレーキ14の構成としては、一般的な自動車に用いられるブレーキおよびブレーキの制動力を調整する機能を有するものと同様の構成である。
【0029】
ブレーキセンサ16は、運転者がブレーキペダルを踏み、ブレーキをかけたことを検知するものである。このブレーキセンサ16は、制御部18(コントローラ38(図6参照))に接続されており、ブレーキをかけたことを示す信号(以下、ブレーキ信号という)が制御部18(コントローラ38(図6参照))に出力される。
【0030】
制御部18は、ブレーキセンサ16からブレーキ信号が入力されない場合、車輪12に設けられた加速度センサ24によるタイヤ20の半径方向の加速度信号、および車輪速センサ26からの回転検出信号に基づいて、制動力を調整する制御信号を出力するための閾値などの条件を設定するものである。
また、制御部18は、ブレーキセンサ16からブレーキ信号が入力された場合、車輪12に設けられた加速度センサ24および車輪速センサ26からの回転検出信号に基づいて、制動力を調整する制御信号をブレーキ14に出力するものである。
【0031】
ここで、図6は、本発明の実施形態に係るブレーキ制御装置の制御部を示すブロック図である。
図6に示すように、制御部18は、コントローラ38、受信機40、アンプ42、車輪速度算出部44、スリップ率演算部46、ブレーキ判定部48、第1のメモリ50、ブレーキコントロールユニット52および接地判定ユニット54を有するものである。
【0032】
コントローラ38は、ブレーキセンサ16に接続されており、このブレーキセンサ16からブレーキ信号が入力された場合、スリップ率演算部46、ブレーキコントロールユニット52および接地判定ユニット54(データ取得部60、判定部68)に、ブレーキ信号が入力されたことを示す信号(以下、ブレーキ入力信号という)を出力するものである。また、コントローラ38は、ブレーキセンサ16からブレーキ信号が入力されない場合、接地判定ユニット54(データ取得部60)に、ブレーキ信号が入力されていないことを示す信号(以下、ブレーキ非入力信号という)を出力するものである。
なお、コントローラ38は、処理部18の各構成部を制御するものでもある。
【0033】
受信機40は、各車輪12の加速度センサ24による各タイヤ20の半径方向の加速度信号、および各車輪12の車輪速センサ26からの各回転検出信号を受信するものである。
アンプ42は、各車輪12の加速度センサ24による各タイヤ20の半径方向の加速度信号、および各車輪12の車輪速センサ26からの各回転検出信号を増幅するものである。
【0034】
車輪速度算出部44は、各車輪速センサ26からの各回転検出信号に基づいて、各車輪毎に、車輪速度を算出するものである。本実施形態においては、車輪1回転当りの波数(出力信号)が分かっているため、1回転に相当する波数(出力信号)をカウントし、このカウントに要する時間により、車輪速度を求めることができる。
また、車輪速度算出部44は、各車輪12のうち、最も速いものを車輪速度とし、この車輪速度の情報をスリップ率演算部46に出力するものである。
さらに、車輪速度算出部44は、各車輪12のうち、最も速い車輪速度を用いて、擬似車両速度を算出し、この擬似車両速度をスリップ率演算部46に出力するものである。
【0035】
スリップ率演算部46は、コントローラ38からブレーキ入力信号が入力された場合、車輪速度演算部44により算出された車輪速度および擬似車両速度を用いて、下記数式により、スリップ率を算出し、このスリップ率をブレーキ判定部48に出力するものである。
スリップ率(%)={(擬似車両速度−車輪速度)/擬似車両速度}×100
【0036】
ブレーキ判定部48は、算出されたスリップ率と、第1のメモリ50に記憶されたスリップ率の閾値とを比較し、ブレーキの制動力の制御の用不要および制動力の増加、保持、軽減などの制御形態を示す制動情報を含む制動情報信号をブレーキコントロールユニット52に出力するものである。
第1のメモリ50は、スリップ率の閾値を記憶するものである。
ブレーキコントロールユニット52は、ブレーキ判定部48からの制動情報信号に基づいて、ブレーキ14に制動力を調整する制御信号を出力するものである。
以上、制御部18において接地判定ユニット54を除いた構成が、スリップ率により、車両の制動を制御する通常のABSを構成するものである。本発明は、通常のABSに、接地長によるABSの判定ユニット(接地長ユニット54)が設けられたものである。
【0037】
接地判定ユニット54は、通常のABSと平行して、ブレーキの制動の制御のための判定条件を設定するとともに、判定結果の情報をブレーキコントロールユニット52に出力するものである。この接地判定ユニット54は、データ取得部60と、データ処理部62と、接地長算出部64と、第2のメモリ66と、判定部68とを有する。
接地判定ユニット54は、データ取得部60にコントローラ38からブレーキ非入力信号が入力されると、接地長を算出し、第2のメモリ66に、この接地長を逐次記憶させるものである。
【0038】
このように、ブレーキがかけられていない状態の接地長は、荷重変動を受けていない定常状態の接地長であり、基準接地長となるものである。なお、荷重変動を受けていない定常状態の接地長であっても、走行路面の状態、タイヤの磨耗などにより、変化するものである。このため、荷重変動を受けていない定常状態であっても接地長を逐次算出し、第2のメモリ66に接地長を逐次記憶させる。
【0039】
次に、接地判定ユニット54について詳細に説明する。
接地判定ユニット54において、データ取得部60は、例えば、図6(a)に示すように、アンプ42で増幅された加速度センサ24による半径方向Rの加速度の時系列データ70(以下、単に加速度データという)を取得するものである。なお、データ取得部60においては、車輪速度算出部44から車輪速度の情報が入力され、この車輪速度の情報に基づいて、最も速度が速い車輪の加速度データを取得する。データ取得部60においても、スリップ率による判定に用いられる車輪と同じ車輪の加速度データが用いられる。
【0040】
さらに、データ取得部60においては、アンプ42から供給される加速度データは、アナログデータであり、この加速度データを所定のサンプリング周波数でサンプリングしてデジタルデータに変換するものである。このデジタルデータに変換された加速度データは、データ処理部62に供給される。また、データ取得部60は、加速度データを判定部50にも出力する。
また、データ取得部60は、ブレーキ非入力信号またはブレーキ入力信号が入力されるものである。データ取得部60においては、ブレーキ入力信号が入力された場合、加速度データの取得間隔、またはサンプリング周波数を変えるようにしてもよい。
図6(a)に示すように、加速度データ70は、ノイズ成分が多い。なお、図6(a)は、3回転(回転角度1080°)分の加速度データ70を示している。
【0041】
データ処理部62は、データ取得部60から供給された加速度データから、タイヤの変形に基づく加速度データを抽出する部位である。データ処理部62では、図6(b)に示すようにノイズ成分を取り除き、加速度データに対して平滑化処理を行い、この平滑化された信号に対して近似曲線を算出して背景成分1を求め、この背景成分1を平滑化処理された加速度データから除去することにより、タイヤの変形に基づく加速度の時系列データを抽出する。
【0042】
また、データ処理部62において、フィルタとしては、例えば、所定の周波数をカットオフ周波数とするデジタルフィルタが用いられる。カットオフ周波数は、転動速度またはノイズ成分によって変化するが、例えば、車輪速度が60(km/時)の場合、カットオフ周波数は、0.5〜2(kHz)とされる。この他に、デジタルフィルタの替わりに、移動平均処理またはトレンドモデル等を用いて平滑化処理を行ってもよい。
【0043】
接地長算出部64は、接地長を算出するものである。この接地長算出部64は、抽出されたタイヤの変形に基づく加速度データに対して時間に関する2階積分を行い、変位データを求める。この後、2階積分して得られた変位データに対して近似曲線を算出して背景成分2を求める。この背景成分2を、変位データから除去することにより、タイヤの変形量を算出し、最終的に接地長を算出する。
なお、接地長算出部64による接地長の測定方法については、後に詳細に説明する。
【0044】
第2のメモリ66は、接地長算出部64により得られた接地長を記憶するものである。また、第2のメモリ66は、後述する第1の判定基準〜第3の判定基準を記憶するものでもある。
【0045】
判定部68は、コントローラ38、接地長算出部64および第2のメモリ66に接続されている。この判定部68は、コントローラ38からブレーキ入力信号が入力された場合、例えば、1回転毎に求められた接地長を比較し、比較した比較情報に基づいて、ブレーキの制動力の制御の用不要および制動力の増加、保持、軽減などの制御形態を示す制動情報を含む制動情報信号をブレーキコントロールユニット52に出力するものである。
例えば、判定部68においては、コントローラ38からブレーキ入力信号が入力された場合、第2のメモリから読み出した後述する第1の判定基準〜第3の判定基準のいずれかの基準に基づいて、動作判定値を算出し、この動作判定値が、第2のメモリから読み出し所定の判定基準に適合するか否かによって、制動情報信号をブレーキコントロールユニット52に出力するものである。
判定部68において、第1の判定基準〜第3の判定基準のいずれかを基準とし、動作判定値を算出するかについての設定は、コントローラ38によりなされる。
なお、判定部68における第1の判定基準〜第3の判定基準、および判定方法については後で詳細に説明する。
接地判定ユニット54においては、接地長算出部64で逐次算出された接地長が、第2のメモリ66に出力されるとともに、判定部68にも出力される。
【0046】
ここで、図7は、本発明のブレーキ制御装置によるブレーキ制御方法による接地長の算出方法を示すフローチャートである。図8(a)〜(d)および図9(a)〜(c)は、接地長の算出方法の各処理において、得られる処理結果の一例を示すものである。
これらの結果は、いずれも加速度センサ24のうち、タイヤのラジアル方向の加速度の計測データから、タイヤのトレッド部のラジアル方向の変形量を算出する場合の結果である。本実施形態においては、タイヤのラジアル方向の加速度データを用いてタイヤのトレッド部のラジアル方向の変形量のみを算出して接地領域を特定するが、本発明では、タイヤの周方向の加速度データから評価した周方向の変位を加味して接地領域を特定してもよい。
【0047】
まず、アンプ42で増幅された各車輪の加速度信号のうち、車輪速度が最も速い車輪の加速度信号がデータ取得部60に供給され、所定のサンプリング周波数にてサンプリングされて、加速度データが取得される(ステップS100)。
次に、加速度データのうち、加速度データが、データ処理部60に供給され、フィルタによる平滑化処理が行われる(ステップS102)。図8(a)に示すように、データ処理部62に供給された加速度データはノイズ成分が多く含まれるため、フィルタを用いた平滑化処理により、図8(b)に示すように滑らかなデータとされる。
【0048】
図8(b)に示す時系列のグラフでは横軸を時間軸にするとともに、同時にタイヤの周上位置θ(°)を表している。タイヤの周上位置θ(°)は、タイヤの接地面の中心位置(θ=180°)に対して対向する点を基準とする角度である。このような周上位置θ(°)は、タイヤに記されたマークをマーク検知装置(図示せず)で検知することにより、マークの周上の位置と加速度センサ24の周上位置との相対位置関係から、転動中のタイヤの周上位置θ(°)を定めることができる。
図8(b)において、接地面の中心位置はθ=180°、540°および900°であり、タイヤの略3周分の加速度データが示されている。
【0049】
次に、平滑処理された加速度データから背景成分1が算出される(ステップS104)。
ラジアル方向の加速度の背景成分1は、タイヤの転動中の遠心力(向心力)の加速度成分および重力加速度成分を含み(なお、周方向の加速度の背景成分においても、これらの成分を含み)、図8(c)に示す例では点線で示される。この背景成分1は、接地面の中心位置θ=180°、540°および900°のそれぞれを中心として、絶対値で0以上90°未満の角度の範囲を除いた周上の領域で加速度データに近似するように求められる。
【0050】
背景成分1を具体的に説明すると、タイヤの周上の領域を、路面接地領域を含む第1の領域とこれ以外の第2の領域とに分け、第1の領域として、θ=90°より大きく270°未満、450°より大きく720°未満、810°より大きく980°未満の領域を定め、第2の領域として、θ=0以上90°以下および270°以上360°以下、360°以上450°以下および630°以上720°以下、720°以上810°以下および990°以上1080°以下の領域を定める。背景成分1は、上記第2の領域中の複数の周上位置(θまたはθに対応する時間)を節点として用いて、予め定められた関数群、例えば3次のスプライン関数を用いて、第1の領域および第2の領域のデータに対して最小二乗法により第1の近似曲線を算出することによって求める。節点は、スプライン関数の局所的な曲率(屈曲性)を規定する横軸上の拘束条件を意味する。図8(b)の例では、図8(b)中の「△」で示される位置、すなわちθ=10°,30°,50°,70°,90°,270°,290°,310°,330°,350°,370°,390°,410°,430°,450°,630°,650°,670°,690°,710°,730°,750°,770°,790°,810°,990°,1010°,1030°,1050°,1070°における時間を節点としている。
【0051】
図8(b)に示すデータに対して、上記節点を有する3次のスプライン関数で関数近似を行うことにより、図8(c)において点線で示される近似曲線が算出される。関数近似する際、第1の領域には節点はなく、第2の領域の複数の節点のみを用いて関数近似を行い、かつ関数近似に際して行う最小ニ乗法では重み係数を用いる。この重み係数は、第2の領域の重み係数を1とすると第1の領域の重み係数は0.01に設定されて、処理が行われる。このように背景成分1を算出する際、第1の領域の重み係数を第2の領域の重み係数に対して小さくし、かつ第1の領域に節点を定めないのは、第1の近似曲線を、主に第2の領域における加速度データから算出するためである。第2の領域では、トレッド部の接地による変形が小さくかつその変形は周上で滑らかに変化するため、タイヤの転動中の加速度は遠心力(向心力)の加速度成分および重力加速度成分が支配的である。これに対し、第1の領域では、タイヤのトレッド部は接地変形に基づいて大きくかつ急激に変化する。このため接地変形に基づく加速度成分が、タイヤの回転に基づく遠心力(向心力)の加速度成分および重力加速度成分に比べて大きくなり、その変化も急激となる。すなわち、第2の領域の加速度データは、概略、タイヤの転動中の遠心力(向心力)の加速度成分および重力加速度成分であり、第2の領域の加速度データを主に用いて第1の近似曲線を算出することで、第2の領域のみならず、第1の領域におけるタイヤの転動中の遠心力(向心力)の加速度成分および重力加速度成分を精度よく推定することができる。
なお、図8(c)では、接地中心位置(θ=180°,540°,900°)を中心として絶対値で0°以上90°未満の角度の範囲を第1の領域としたが、本発明における第1の領域は、接地中心位置から少なくとも絶対値で0°以上60°未満の角度の範囲を含むものであればよい。
【0052】
次に、算出された背景成分1を表す第1の近似曲線を、ステップS102で処理された加速度データから差し引くことで、加速度データからタイヤの回転に基づく加速度成分および重力加速度成分が除去される(ステップS106)。図8(d)には、除去後の加速度の時系列データが示されている。これにより、タイヤのトレッド部の接地変形に基づく加速度の成分を抽出することができる。
【0053】
次に、接地変形に基づく加速度の時系列データは、接地長算出部64において時間の2階積分が施され、変位データが生成される(ステップS108)。
なお、積分の対象となる加速度データには通常ノイズ成分を含むので、2階積分を行うとノイズ成分も同時に積分され、精度の高い変位データを求めることはできない。図9(a)は、図8(c)の加速度の時系列データを時間に関して2階積分した結果である。図9(a)に示されるように、時間と共に変位が急激に増大していることが見られる。これは、積分の対象となる加速度の時系列データにノイズ成分を含み、2階積分により積算されていくからである。一般に、定常状態で転動するタイヤのトレッド部の注目する一点の変位を観察した場合、タイヤの回転周期を単位として周期的な変形を繰り返す。したがって、図9(a)に示すように時間と共に変形が増大することは通常ありえない。
そこで、時間の2階積分が施されて得られた変位データに対して、タイヤの回転周期を単位として周期的な変形を繰り返すように、以下の処理が行われる。
【0054】
すなわち、ステップS104において背景成分1を算出した場合と同様に、変位データに含まれるノイズ成分を背景成分2として算出する(ステップS110)。
具体的に説明すると、タイヤの周上の領域を、路面との接地領域を含む第3の領域とこれ以外の第4の領域とに分け、第3の領域として、θ=90°より大きく270°未満、450°より大きく720°未満、810°より大きく980°未満の領域を定め、第4の領域として、θ=0°以上90°以下および270°以上360°以下、360°以上450°以下および630°以上720°以下、720°以上810°以下および990°以上1080°以下の領域を定める。背景成分2は、上記第4の領域中の複数の周上位置(θまたはθに対応する時間)を節点とし予め定められた関数群を用いて、第3の領域および第4の領域のデータに対して最小ニ乗法により第2の近似曲線を算出することによって求める。なお、第3の領域は、上述した第1の領域と一致する領域であってもよいし、異なる領域であってもよい。また、第4の領域は、上述した第2の領域と一致する領域であってもよいし、異なる領域であってもよい。節点は、上述したように、スプライン関数の局所的な曲率(屈曲性)を規定する横軸上の拘束条件を意味する。図9(b)には、背景成分2を表す第2の近似曲線が点線で示されている。図9(b)の例では、図9(b)中の「△」で示される位置、すなわちθ=10°,30°,50°,70°,90°,270°,290°,310°,330°,350°,370°,390°,410°,430°,450°,630°,650°,670°,690°,710°,730°,750°,770°,790°,810°,990°,1010°,1030°,1050°,1070°における時間を節点としている。
【0055】
図9(a)に示す変位データに対して、上記節点を有する3次のスプライン関数で関数近似を行うことにより、図9(b)において点線で示される第2の近似曲線が算出される。関数近似する際、第3の領域には節点はなく、第4の領域の複数の節点のみを用いて関数近似を行う。関数近似に際して行う最小ニ乗法では、第4の領域の重み係数を1とし、第3の領域の重み係数を0.01として処理が行われる。このように背景成分2を算出する際、第3の領域の重み係数を小さくし、かつ第3の領域に節点を定めないのは、第4の領域における変位データを主に用いて背景成分2を算出するためである。第4の領域では、トレッド部の接地による変形は小さくかつその変形は周上で滑らかに変化するため、タイヤの変形量は周上で小さく、その変化も極めて小さい。これに対して、第3の領域では、タイヤのトレッド部は接地変形に基づいて大きく変位しかつ急激に変化する。このため、第3の領域では接地変形に基づく変形量は周上で大きくかつ急激に変化する。すなわち、第4の領域におけるトレッド部の変形量は第3の変形量と対比して概略一定を示す。これより、第4の領域の2階積分により得られた変位データを主に用いて第2の近似曲線を算出することで、第4の領域のみならず、接地領域を含む第3の領域におけるタイヤの転動中の変形量を精度よく求めることができる。
図9(b)には、第4の領域の変位データを主に用いて算出された第2の近似曲線が点線で示されている。第4の領域では、第2の近似曲線は変位データ(実線)と略一致している。
【0056】
次に、背景成分2として算出された近似曲線を、ステップS110で算出された変位データから差し引き、トレッド部の接地変形に基づく変形量の周上の分布が算出される(ステップS112)。
図9(c)は、図9(b)に示す変位信号(実線)から第2の近似曲算線(点線)を差し引くことにより算出される、トレッド部の接地変形に基づく変形量の分布を示している。図9(c)は、トレッド部上の所定の測定位置が周上を回転して変位するときの3回転分の変形量の分布(3回の接地)を示している。接地のたびに変形量が変化していることが見られる。
最後に、図9(c)に示すトレッド部における変形量の時系列データについて時間に関して2階微分を行うことにより、図9(d)に示す加速度からノイズ成分が除去された、トレッド部の変形量に対応した加速度の時系列データ、すなわち、トレッド部の接地変形に基づく、ノイズ成分を含まない加速度の時系列データ(後述する図10参照)が算出される(ステップS114)。
このようにして算出される変形量のデータおよびステップS114で求められたタイヤの変形に基づく加速度の時系列データは、接地領域の特定に用いられる。
【0057】
次に、ステップS112で求められたタイヤの変形量のデータおよびステップS114で求められたタイヤの変形に基づく加速度の時系列データから、接地領域が特定される(ステップS116)。
【0058】
ここで、図10は、接地領域の特定方法を示している。
まず、ステップS114によって抽出されたタイヤのトレッド部の接地変形に基づく、ノイズ成分を含まない加速度の時系列データにおいて、加速度が急激に変化して0を横切る点が2つ求められる。次に、求められた2つの点に対応する変位データ中の位置が求められ、この位置を図10に示すように接地前端および接地後端の位置とする。このように加速度の時系列データが急激に大きく変化する部分を、接地前端および接地後端と定めることができるのは、トレッド部が回転して接地領域に進入するとき、または接地領域から出るとき、タイヤの回転による遠心力加速度成分が急激に変化するからである。また、加速度の時系列データが0を横切る位置を明確に定めることができる。
【0059】
なお、図10中の下のグラフは、タイヤのラジアル方向および周方向で表される極座標系から、タイヤの上下方向、前後方向で表される直交座標系に変えて書き表したグラフであり、接地により変形したタイヤの変形形状を示すグラフでもある。
上記例は、タイヤのラジアル方向の加速度を用いて得られるラジアル方向の変形量に基づいて接地領域を特定するものであるが、タイヤの周方向の加速度を用いて得られるタイヤの周方向の変形量に基づいて接地領域を特定することができる。接地領域において、周方向では、接地前端および接地後端で互いに異なる方向に大きく変形することが知られており、この変形を利用して接地前端および接地後端を定めることができる。
このような方法により特定される接地領域の接地長は、タイヤの有限要素モデルを用いてシミュレーションを行ったときの接地長と精度良く一致することが確認されており、したがって、特定される接地領域は精度良く特定されるといえる。
以上のようにして、本実施形態においては、接地領域の接地長を求めることができる。なお、接地長の算出方法は、本実施形態に限定されるものではない。
【0060】
次に、本実施形態において、判定部68において、ブレーキの制動力の制御の用不要および制動力の増加、保持、軽減などの制御形態を示す制動情報を含む制動情報信号をブレーキコントロールユニット52に出力するための接地長の判定基準(第1の判定基準〜第3の判定基準)および判定方法について詳細に説明する。
【0061】
先ず、第1の判定基準について説明する。本実施形態においては、ブレーキをかける前、荷重変動がない状態における接地長を基準接地長Lとする。なお、基準接地長Lは、荷重変動がない状態の接地長であればよく、例えば、ブレーキをかけた直後における接地長であってもよい。また、算出されたブレーキをかけた後(時刻t)の任意の時間における接地長をLとする。
このとき、基準長Lが、基準接地長Lの値よりも所定の大きさ以上であるとき、すなわち、L>ε・L(ε:任意の定数)を、第1の判定基準とする。εは、例えば、140%(=1.4)である。この第1の判定基準は、第2のメモリ66に記憶されている。
【0062】
本実施形態において、第1の判定基準を用いる場合、判定部68においては、第2のメモリ66から第1の判定基準を読み出し、この第1の判定基準に基づいて、算出された接地長Lと基準接地長Lとの比率を、動作判定値として算出する。
次に、第1の判定基準と、算出された比率(動作判定値)とを比較する。
例えば、図2に示すように、算出された接地長Lが、基準接地長Lの140%を超え、第1の判定基準を満たさないとき(時刻t)、判定部68は、ブレーキコントロールユニット52に、ブレーキの制動力を調整させるための制動情報信号を出力する。
この場合、図2に示すように、スリップ率による判定よりも、接地長の増加が早くに現れるため、スリップ率だけを判定に用いたものよりも早期にブレーキの制動力を調整することができ、車両の制動をより制御できるとともに、制動距離を短くすることができる。
【0063】
また、本実施形態においては、判定部68は、第1の判定基準以外にも、接地長の時系列変化率(傾き変化)を利用した第2の判定基準を用いて、判定部68からブレーキコントロールユニット52に、ブレーキの制動力を調整させるための制動情報信号を出力してもよい。
この第2の判定基準としては、ブレーキがかけられた後、先の時刻の次時刻である次の時刻の接地長の変化率が小さくなったとき、例えば、先の時刻ti−1の接地長をLi−1とし、先の時刻ti−1の次時刻である次の時刻tの接地長をLとするとき、次の時刻tの接地長Lが、1.02×Li−1>L>0.97×Li−1を満たすことを第2の判定基準とする。この第2の判定基準は、第2のメモリ66に記憶されている。
【0064】
本実施形態において、第2の判定基準を用いる場合、判定部68においては、第2のメモリ66から第2の判定基準を読み出し、この第2の判定基準に基づいて、先の時刻ti−1の接地長Li−1と次の時刻tの接地長Lとの比率を、動作判定値として算出する。
次に、第2の判定基準と、算出された比率(動作判定値)とを比較する。
例えば、図2に示すように、次の時刻tの接地長Lが、1.02×Li−1>L>0.97×Li−1を満たすとき(時刻t)、判定部68からブレーキコントロールユニット52に、ブレーキの制動力を調整させるための制動情報信号を出力する。
【0065】
また、第2の判定基準を用いた場合、接地長がピーク(最大接地長Lmax)に達したところで飽和したところを検知することができる。この場合においても、図2に示すように、スリップ率による判定よりも、接地長の増加が早くに現れるため、スリップ率だけを判定に用いたものよりも早期にブレーキの制動力を調整することができ、車両の制動をより制御できるとともに、制動距離を短くすることができる。
なお、第1の判定基準により、制動力の調整をした後、第2の判定基準(接地長の時系列変化率(傾き変化))により、制動力の調整をすることもできる。
【0066】
さらに、本実施形態においては、判定部68は、第1の判定基準以外にも、スリップ率が最大となるまでの間における接地長の最大値である最大接地長Lmaxを利用した第3の判定基準を用いて、判定部68からブレーキコントロールユニット52に、ブレーキの制動力を調整させるための制動情報信号を出力してもよい。
この第3の判定基準としては、ブレーキがかけられた後における最大接地長Lmaxに対する接地長の変化が±10%の範囲δ(図2参照)を超えたこととする。すなわち、本実施形態において、ブレーキがかけられた後における任意の時刻tにおける接地長をLとし、タイヤのスリップ率が最大となるまでの間における接地長の最大値を最大接地長Lmaxとしたとき、接地長Lが、1.1×Lmax>L>0.9×Lmaxを満たさないことを第3の判定基準とする。この第3の判定基準は、第2のメモリ66に記憶されている。
【0067】
本実施形態において、第3の判定基準を用いる場合、判定部68においては、第2のメモリ66から第3の判定基準を読み出し、この第3の判定基準に基づいて、時刻tにおける接地長をLと、最大接地長Lmaxとの比率を、動作判定値として算出する。
次に、第3の判定基準と、算出された比率(動作判定値)とを比較する。
例えば、図2に示すように、接地長Lが、1.1×Lmax>L>0.9×Lmaxを満たさないとき(時刻t)、判定部68からブレーキコントロールユニット52に、ブレーキの制動力を調整させるための制動情報信号を出力する。
【0068】
この第3の判定基準においては、図2に示すように、ブレーキをかけた後、スリップ率による判定により、再度ブレーキがかけられた後(時刻t)に、最大接地長Lmaxに対して±10%の範囲δを超えるような状態(時刻t)となる。このため、第3の判定基準を用いることにより、再度ブレーキがかけられた後における接地長の揺らぎを抑制することができる。これにより、制動距離を短くすることができる。
なお、第3の判定基準においては、スリップ率が最大となるまでの間における接地長の最大値である最大接地長Lmaxを利用するものであるため、スリップ率による判定がなされる前に、第1の判定基準および第2の判定基準の少なくともいずれか一方に基づいて、ブレーキの制動力を調整された場合には、第3の判定基準を適用することができない。
【0069】
本実施形態において、判定部68では、第1の判定基準〜第3の判定基準のいずれを用いてもよい。また、本実施形態においては、判定部68は、第1の判定基準、第2の判定基準および第3の判定基準を適宜切り換えるものでもよい。この場合、予め、実験などを行い、第1の判定基準、第2の判定基準および第3の判定基準の切換タイミングを決定しておき、判定部68に切換タイミングを設定する。なお、判定部68における切換の設定および切換タイミングの設定も、コントローラ38によりなされる。
また、第1の判定基準〜第3の判定基準は、例えば、第2のメモリ66に記憶されている。
本実施形態においては、通常のABSによるブレーキの制動力の調整、および接地長によるABSの判定ユニット(接地長ユニット54)によるブレーキの制動力の調整が並列して行われており、いずれか早期に判定されたものによりブレーキの制動力の調整がなされる。
【0070】
さらに、本実施形態においては、アンプ42で増幅されたタイヤの加速度データが供給されるブレーキ制御装置10においては、各構成部が、コンピュータ上で機能するサブルーチンまたはサブプログラムが実行することで機能するように構成されている。すなわち、CPUおよびメモリを有するコンピュータ上でソフトウェアを実行し、上記各構成部が機能することによってブレーキ制御装置10が構成される。また、ブレーキ制御装置10は、コンピュータの替わりに各構成部の機能を専用回路によって構成した専用装置であってもよい。
【0071】
次に、本実施形態のブレーキ制御装置10によるブレーキ制御方法について説明する。
図11は、本実施形態のブレーキ制御装置によるブレーキ制御方法を示すフローチャートである。
【0072】
本実施形態のブレーキ制御装置10によるブレーキ制御方法においては、先ず、各車輪12に設けられた車輪速センサ26で得られ、アンプ42で増幅された各車輪の回転検出信号が車輪速度検出部44に供給される。この車輪速度検出部44により、車輪速度が算出され、判定部50に出力される。判定部50において、車輪の回転の有無を検出する(ステップS10)。
ステップS10において、車輪が回転していないと判定された場合、再度車輪の回転を検出する。
【0073】
一方、ステップS10において、車輪が回転していると判定された場合、各車輪12のうち、最も速いものを車輪速度とし、この車輪速度の情報をスリップ率演算部46に出力する。
また、ステップS10において、車輪が回転していると判定された場合、ブレーキセンサ16からのブレーキ信号の出力の有無により、コントローラ38において、ブレーキがかけられたか否かが判定される(ステップS12)。
【0074】
ステップS12において、ブレーキがかけられていない場合、再度ブレーキがかけられたか否かを検出する。
一方、ステップS12において、ブレーキがかけられた場合、車輪速度検出部44から車輪速度の情報を取得し、さらには、車輪速度検出部44において車輪速度の情報により得られた擬似車両速度を取得し、スリップ率演算部46において、スリップ率を算出する(ステップS14)。
【0075】
次に、ブレーキ判定部48において、算出されたスリップ率と、閾値とを比較し、算出されたスリップ率が閾値を超えているか否かが判定される(ステップS16)。
ステップS16において、算出されたスリップ率が閾値を超えている場合、ブレーキ判定部48から、ブレーキコントロールユニット52に、制動情報信号を出力する。そして、ブレーキの制動力を調整する(ステップS18)。その後、再度ステップS14に戻り、スリップ率を算出し、ステップS16において、閾値を比較する。
【0076】
一方、ステップS16において、算出されたスリップ率が閾値を超えていない場合、車輪速度検出部44により検出された車輪速度に基づいて、車輪速度判定部44において車輪が停止しているか否かが判定される(ステップS20)。
ステップS20において、車輪が停止している場合、ブレーキ制御動作を停止する。
一方、ステップS20において、車輪が停止していない場合、再度ブレーキがかけられているか否かが判定される(ステップS12)。そして、再度上記工程(ステップS18〜ステップS32)が繰り返し行なわれる。
以上の工程(ステップS10〜ステップS20)が、通常のABSにおけるブレーキ制御方法に相当するものである。
【0077】
また、本実施形態においては、ステップS12〜S20の処理(通常のABSによるブレーキの制動力の調整)に平行して、以下の処理がなされて、ブレーキの制動力の調整がされる。
ステップS10において、車輪が回転していると判定された場合、各車輪のうち、最も車輪速度が速い車輪について、加速度データを接地判定ユニット54(データ取得部60)に取得させる(ステップS30)。
次に、接地長算出部64により、上述のように接地長が算出される(ステップS32)。この接地長は、最も車輪速度が速い車輪について、逐次算出され、第2のメモリ66に逐次記憶される。また、基準接地長Lなども第2のメモリ66に設定される。
【0078】
次に、ブレーキがかけられたか否かが判定される(ステップS34)。
このステップS34において、ブレーキがかけられていない場合、再度ステップS30に戻り、加速度データを取得し、接地長を算出する(ステップS32)。この接地長の算出(ステップS32)は、ステップS34によるブレーキがかけられたことが判定されるまで、繰返し行われる。
【0079】
一方、ステップS34において、ブレーキがかけられた場合、動作判定値の算出をする(ステップS36)。
本実施形態において、第1の判定基準〜第3の判定基準のいずれかを用いることが判定部68に設定されており、ステップS36においては、上述の第1の判定基準〜第3の判定基準のいずれかの判定基準に基づいて、判定部68において動作判定値が算出される。
【0080】
例えば、第1の判定基準が設定されている場合、判定部68が第2のメモリ66から第1の判定基準を読み出し、図12(a)に示すように、ステップS36においては、算出された接地長Lと基準接地長Lとの比率を、動作判定値として算出する(ステップS36a)。
次に、この比率(動作判定値)が、第1の判定基準(動作適合条件)に適合するか否かを判定する(ステップS38)。
この場合、比率が、例えば、L>140(%)・Lを満たす場合には、第1の判定基準(動作適合条件)に適合する。すなわち、接地長Lが基準接地長Lの140%を超える場合には、第1の判定基準(動作適合条件)に適合する。
【0081】
ステップS38において、第1の判定基準(動作適合条件)に適合する場合、判定部68から、ブレーキコントロールユニット52に制動情報信号を出力する。そして、ブレーキの制動力を調整する(ステップS18)。その後、再度ステップS32に戻り、接地長を算出し、ステップS34〜ステップS36を経て、ステップS38において、第1の判定基準(動作適合条件)に適合するか否かを判定する。
【0082】
一方、ステップS38において、第1の判定基準(動作適合条件)に適合しない場合、再度ステップS30に戻り、上記工程(ステップS30〜ステップS38)を繰返し行う。
【0083】
また、第2の判定基準が設定されている場合、判定部68が第2のメモリ66から第2の判定基準を読み出し、ステップS36においては、図12(b)に示すように、接地長の時系列変化率(先の時刻ti−1の接地長Li−1と次の時刻tの接地長Lとの比率)を、動作判定値として算出する(ステップS36b)。
次に、この接地長の時系列変化率(動作判定値)が、第2の判定基準(動作適合条件)に適合するか否かを判定する(ステップS38)。
この場合、上述の如く、接地長Lが、1.02×Li−1>L>0.97×Li−1を満たす場合には、第2の判定基準(動作適合条件)に適合する。
【0084】
この場合においても、ステップS38において、第2の判定基準(動作適合条件)に適合する場合、判定部68から、ブレーキコントロールユニット52に制動情報信号を出力する。そして、ブレーキの制動力を調整する(ステップS18)。その後、再度ステップS32に戻り、接地長を算出し、ステップS34〜ステップS36を経て、ステップS38において、第2の判定基準(動作適合条件)に適合するか否かを判定する。
なお、ステップS38において、第2の判定基準(動作適合条件)に適合しない場合、再度ステップS30に戻り、上記工程(ステップS30〜ステップS38)を繰返し行う。
【0085】
さらに、第3の判定基準が設定されている場合、判定部68が第2のメモリ66から第3の判定基準を読み出し、ステップS36においては、図12(c)に示すように、算出された接地長Lとブレーキがかけられた後における最大接地長Lmaxとの比率を、動作判定値として算出する(ステップS36c)。
次に、この比率(動作判定値)が、第3の判定基準(動作適合条件)に適合するか否かを判定する(ステップS38)。
この場合、比率が、1.1×Lmax>L>0.9×Lmaxを満たさない場合には、第3の判定基準(動作適合条件)に適合する。すなわち、接地長Lが最大接地長Lmaxの10%の範囲以上変化した場合に、第3の判定基準(動作適合条件)に適合する。
【0086】
この場合においても、ステップS38において、第3の判定基準(動作適合条件)に適合する場合、判定部68から、ブレーキコントロールユニット52に制動情報信号を出力する。そして、ブレーキの制動力を調整する(ステップS18)。その後、再度ステップS32に戻り、接地長を算出し、ステップS34〜ステップS36を経て、ステップS38において、第3の判定基準(動作適合条件)に適合するか否かを判定する。
なお、ステップS38において、第3の判定基準(動作適合条件)に適合しない場合、再度ステップS30に戻り、上記工程(ステップS30〜ステップS38)を繰返し行う。
【0087】
このように、本実施形態のブレーキ制御方法においては、通常のABSの判定に加え、並列して接地長に基づく判定もしており、いずれか早期に判定されたものによりブレーキの制動力の調整がなされる。
また、本実施形態においては、ステップS36では、第1の判定基準、第2の判定基準および第3の判定基準のうち、1つを用いればよい。しかしながら、第1の判定基準、第2の判定基準および第3の判定基準を適宜切り換えてもよい。この場合、予め、実験などを行い、第1の判定基準、第2の判定基準および第3の判定基準の切換タイミングを決定しておく。
【0088】
以上のようにして、本実施形態のブレーキ制御装置10によるブレーキ制御方法がなされる。本実施形態においては、スリップ率を算出し、このスリップ率を用いて、車両の制動を制御することができる。さらには、スリップ率以外にも接地長を用いて、タイヤの状態を判定し、ブレーキを動作させることにより、車両の制動を制御することができる。この場合、接地長の変化がスリップ率の変化よりも先に現れるため、スリップ率の変化だけを用いる従来のものよりも、ブレーキ14の制動力の制御時期を早期にでき、車両の制動を更に一層制御することができるとともに、制動距離を短くすることができる。
【0089】
また、本実施形態においては、加速度センサ24をタイヤトレッド部の内周面(インナーライナー部の表面)に設けたが、加速度センサ24はトレッド部の中に埋め込んでもよい。また、加速度センサ24のタイヤ幅方向位置は、タイヤトレッド部のセンタ領域のほか、ショルダ領域であってもよく、特に配置位置は制限されない。
さらに、加速度センサ24を1つのタイヤに1つ用いる場合のほか、1つのタイヤに複数個の加速度センサ24を設けてもよい。加速度センサ24が、タイヤ20の幅方向に沿って複数設けられることが好ましい。さらに、加速度センサ24が、タイヤ20の周方向に複数設けられていることが好ましい。この場合、タイヤの内周上に2個以上等間隔で取り付けることが好ましい。さらには、加速度センサを、4個等間隔で取り付けることが好ましい。このように、複数個の加速度センサを設けることにより、タイヤが1回転する間に、接地長を複数回算出することができるため、ブレーキ制御の制御機会が増え、より高い精度で、ブレーキの制動力を調整することができる。これにより、車両の制動を更に一層抑制することができるとともに、制動距離を更に一層短くすることができる。
【0090】
また、本発明においては、接地長の算出方法は、特に限定されるものではない。
例えば、以下に詳細に説明する方法により、接地長を算出してもよい。
ここで、図13は、本発明のブレーキ制御装置によるブレーキ制御方法におけるタイヤの接地長の他の算出方法を示すフローチャートである。
車輪回転開始後、アンプ42で増幅された加速度データはデータ取得部60に供給され、所定のサンプリング周波数にてサンプリングされて、デジタル化した計測データが取得される(ステップS200)。
【0091】
次に、取得された加速度データ(時系列データ)は、データ処理部62に供給され、まず、ローパスフィルタによる平滑化処理が行われる(ステップS202)。
さらに、平滑化処理の施された加速度データから、接地近傍のラジアル方向の加速度データが抽出される(ステップS204)。
データ処理部62に供給された加速度データはノイズ成分が多く含まれるため、平滑化処理によりノイズ成分の除去が行われ、滑らかな加速度データが得られる。フィルタのカットオフ周波数は、上述の本発明の実施形態と同様である。
【0092】
次に、抽出された接地近傍の加速度データの時系列波形形状から第1の接地長候補が求められる(ステップS108)。具体的には、ラジアル方向の加速度データの時系列波形が加速度0を横切るときの2点を、タイヤの踏み込み端(前端)および蹴りだし端(後端)の対応点とし、この2点間の時間差を、車両に設けられた速度計等によって得られる走行速度と乗算して2点間の距離を算出し、この算出値を第1の接地長候補とする。
加速度0のラインは、ラジアル方向の加速度データの時系列波形から遠心力成分を抽出することによって求められる。例えば、接地近傍のラジアル方向の加速度データの時系列波形が図13に示すような波形の場合、時系列波形が加速度0を横切るときの点X,Yをそれぞれタイヤの踏み込み端および蹴りだし端の対応点とする。このときの2点間の時間差Δtにタイヤの走行速度を乗算することにより、第1の接地長候補を算出する。
【0093】
さらに、抽出されたラジアル方向の加速度データから、接地近傍におけるタイヤのたわみ形状を、たわみ関数を用いて算出することによって第2の接地長候補が求められる(ステップS208)。
以下、第2の接地長候補についてより具体的に説明する。
図15(a)は、ラジアル方向の加速度の計測時系列データの一例のグラフを示す。図15(a)は、縦軸にラジアル方向加速度Azの値、横軸に時間軸t(秒)をとり、約1秒間にスリップ角0°の状態からスリップ角20°の状態まで変化する計測時系列データを示している。
【0094】
上記ラジアル方向の加速度の計測時系列データAz(t)において、ラジアル方向の加速度が極小となる時間tを接地中心を通過する時間として仮設定する。時間t=tのときのタイヤ回転位相角(図示せず)をQcとすると、例えば、Qc±57.5°(±57.5°はオペレータにより設定可能)に相当する範囲の加速度データを、接地近傍の加速度データ、さらには後述のたわみ関数への回帰のための被回帰データとして抽出する。
【0095】
上記被回帰データは、下記式(1−1)、(1−2)を用いて最小二乗回帰処理が施される。式(1−2)中の、dT(s)/dsは、後述の式(2−1)で表わされるピーク形状のたわみ関数T(t)の二階微分関数に相当するものである。なお、式(1−2)中のB(s)(5次の多項式で表した関数)は、タイヤのたわみ変形の加速度以外の背景成分加速度を表している。なお、背景成分B(s)は、被回帰データの領域で緩やかに変化するように、背景成分B(s)の関数として5次の多項式を用いるが、他の関数を用いてもよい。このときの最小二乗回帰処理によって定められるパラメータは、tおよびT(s)(T(t))、B(s)を定めるパラメータで、具体的には、式(2−1)に示されている、a,c,dおよび式(1−3)の係数e〜eである。なお、最小二乗回帰の方法は、本発明では特に限定されないが、例えば、Newton−Raphson法を用いて好適に行うことができる。なお、計測時系列データAz(t)は、タイヤの転動中の遠心力(向心力)の加速度成分および重力加速度成分を要因とする低周波背景成分を含むので、多項式B(s)を用いて低周波背景成分を回帰させる。これにより、たわみ関数を用いたたわみ形状の算出において計測時系列データAz(t)に含まれる低周波背景成分を除去することができる。
【0096】
【数1】

【0097】
一般に、路面上を転動中のタイヤのトレッド部のたわみ量は、たわみ量が略0の状態から接地近傍のタイヤ踏む込み前端でたわみ量が増大し、荷重直下位置(接地中心位置)付近で最大となり、蹴りだし端からたわみ量が0に漸近するピーク形状を示す。また、このピーク形状は、コーナリング時、制駆動時に非対称形を示す。一方、下記式(2−1)のたわみ関数T(t)により表わされるピーク形状は、縦軸にT(t)の値、横軸にtをとると、略中央付近(t=0)にピーク値を有し、両端が0に向かって漸近するような曲線を有するピーク形状となっている。式(2−1)は非対称ガウシアン関数の一例である。ここに、非対称ガウシアン関数とは、対称ガウシアン関数G(x)=e・exp(−At)(Aはパラメータ)に対して、tが正、負の領域でその曲線形状が異なるが、t=−∞、t=+∞において、0への収束性が同じ性質を有する関数と定める。したがって、下記式(2−1)のT(t)をたわみ関数として用いることにより、実際のタイヤのたわみ形状を好適に再現することができる。
【0098】
【数2】

【0099】
ここで、たわみ関数T(t)は、パラメータcに依存して、図16(a)、さらに二階微分関数を示す図15(b)に示すように、対称性が崩れる、いわゆる非対称ガウシアン関数であり、この非対称性を利用してタイヤのコーナリング中または制駆動中のたわみ量の分布を求めることができる。
なお、図16(a)、(b)および式(2−1)に示すたわみ関数T(t)のピーク形状は、ピーク値(極値)が正、すなわち極大値を示す例であるが、ピーク値が負、すなわち極小値を示す関数を使用した場合でもたわみ関数T(t)の値の正負を規定するパラメータの正負の値を逆にすれば、同様に用いることができる。
【0100】
上述のように、上記最小二乗回帰にて値が求められる各パラメータのうち、係数e〜eを除いた、t,T(t)の各パラメータの値(a,c,d)を用いて規定されるたわみ関数から、たわみ形状(たわみ量の分布)を算出する。上記のような最小二乗回帰の処理は接地長算出部64により行われる。さらに、各パラメータの値とたわみ量分布におけるピーク値(最も大きく変位した値)はデータとして第2のメモリ66に蓄積される。
【0101】
このような処理では、タイヤの1回転毎にたわみ関数のパラメータ値を算出することができるので、パラメータである接地中心を加速度センサ24が通過する時間tを設定する場合、過去の接地中心を加速度センサ24が通過する時間tを利用して次のタイヤ1回転中の処理に用いる時間tを予測し、仮設定することができる。すなわち、過去のタイヤ回転におけるパラメータの値として求められた時間tの値(tc1,c2・・・・tci)を基に、tc(i+1)=tci+(tci−tc(i−1))(iは自然数)のように、次の回転の接地中心時間tの仮の値を設定することができる。これに基づいて時間tのときのタイヤ回転位相角Qに対して±57.5°に相当する範囲の加速度データを被回帰データ領域として抽出する動作を繰り返し行い、加速度の計測期間中タイヤのたわみ量分布を1回転ごとに連続的に求めることができる。
【0102】
最小二乗回帰によって算出されたパラメータの値に基づいて、以下のように、タイヤの回転軌道およびタイヤの第2の接地長候補が求められる。まず、タイヤのたわみ関数T(t)のパラメータの値(a,c,d)が既知となっているので、計測対象のタイヤのタイヤ半径rとともに用いて、たわみ関数T(t)で表わされる曲線を、半径rの円弧上に変位として展開し、加算することにより、回転軌道を算出する。この後、転動時のタイヤの第2の接地長候補が接地長算出部64において求められる。
【0103】
図17は、タイヤのたわみ形状(たわみ量分布)から第2の接地長候補を求める方法を示す図である。
図17において、タイヤの回転軌道(図17中の実線)の最下点に接する水平線(図17中の一点鎖線)と、たわみ量が0の円弧状の回転軌道(図17中の点線)との交点をA,Bとし、タイヤ回転中心をOとする。このとき、交点A,Bが成す角∠AOBの50〜95%、より好ましくは60〜75%の角度を、水平線上に設けた点C、Dと回転中心Oとの成す角∠CODが有するように点C、Dを定める(上記50〜95%、より好ましくは60〜75%の比率を、調整比率という)。この点C、D間の長さをタイヤ回転時の第2の接地長候補とする。図17中、太い実線で記された点C,D間の直線部分が接地部分となる。これにより、タイヤの回転軌道から転動中の第2の接地長候補が求められる。上記調整比率はタイヤサイズ、タイヤ構造等によって変わるが、極低速の走行速度、例えば走行速度10km/時における転動中のタイヤの接地長が、静止したタイヤの接地長の実測と対応するように、あるいは転動中のタイヤの接地長を、有限要素法によって計算した転動中のタイヤの接地長と対応するように、上記調整比率の値が予め設定される。なお、本発明では、後述するように、第1の接地長候補と第2の接地長候補が連続的に接続されるように調整比率を修正することが好ましい。
【0104】
本実施形態では、ピーク形状のたわみ関数として、上記式(2−1)に示すT(t)を用いたが、これは例示であって、本発明ではこれに限定されない。例えば、以下の式(3−1)、(3−2)、(3−3)、(3−4)に示す関数をたわみ関数T(t)として用いることができる。
【0105】
【数3】

【0106】
以上が、ステップS208の説明である。
図13に戻って、さらに、ステップS206、ステップS208と並行して、ステップS204にて抽出された接地近傍の加速度データの周波数分析を行い、500〜1500Hzの周波数帯域の最大ピーク値を検出する(ステップS210)。
具体的には、接地近傍の加速度データをFFT(Fast Fourier Transformation)処理して、500〜1500Hzの周波数帯域の最大ピーク値を検出する。500〜1500Hzの周波数帯域における最大ピーク値を検出するのは、転動中のタイヤが大きなスリップ角に起因してスキール音を発するとき、ステップS206にて算出された第1の接地長候補を接地長として選択することが適切か否かを判定するためである。
【0107】
図15(a)に示される加速度の計測時系列データは、1秒間にスリップ角度を0°から20°に変化させたときのラジアル方向の加速度データである。図15(a)では、スリップ角が徐々に付いて、加速度センサ24が11回接地部分を通過したとき、スリップ角は20°の大スリップ角の状態となりスキール音を発生し、加速度が大きく変動している。スリップ角が大きくなってスキール音が発するとき、タイヤと路面との間は、500〜1500Hzの周波数帯域で大きく振動する。この振動は、タイヤの接地の踏み込み端および蹴り出し端の位置も変動させる。特に、振動は蹴り出し端を大きく変動させるため、接地の踏み込み端および蹴り出し端を特定することにより接地長を求めるステップS206の算出では接地長を求めることが困難となる。万一、接地長を求めることができても、正確な接地長は得られない。例えば、図15(a)中の約0.9秒における接地近傍の加速度データにおいて、加速度0を横切る適切な点を求めることはできず、蹴り出し端を特定することはできない。
【0108】
そこで、ステップS206による第1の接地長候補が算出可能であり、かつ選出結果が適切であるか否かを判定するために、スキール音の大小のレベルを表す500〜1500Hzの周波数帯域の最高ピーク値の大小が判定される(ステップS212)。すなわち、500Hz〜1500Hzの周波数帯域における最大ピーク値が予め定められた閾値以下の場合、ステップS206にて算出された第1の接地長候補が接地長として選択され(ステップS214)、最大ピーク値が前記閾値より大きい場合、ステップS208にて求められた第2の接地長候補が接地長として選択される(ステップS216)。すなわち、第1の接地長候補が適切かつ正確な接地長でない場合、第2の接地長候補を接地長とする。第2の接地長候補は、接地近傍の加速度データを式(1−2)を用いて最小二乗回帰させるので、第1の接地長候補が適切かつ正確な接地長でない場合でも、加速度データを用いて比較的適切な接地長候補を算出することができる。
以上のような接地長の他の算出方法を用いても接地長を算出することができる。
【0109】
以上、本発明のブレーキ制御方法およびブレーキ制御装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良および変更をしてもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】縦軸に接地長、スリップ率をとり、横軸に時間をとって、ABSによる制動中の接地長変化を示すグラフである。
【図2】縦軸に接地長、スリップ率をとり、横軸に時間をとって、ABSによる制動中の接地長変化を示すグラフであり、図1の要部拡大図である。
【図3】本発明の実施形態に係るブレーキ制御装置を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態におけるタイヤセンサの取り付け位置を示す模式的断面図である。
【図5】(a)は、本発明の実施形態における車輪速センサの構成を示す模式図であり、(b)は、縦軸に出力電圧をとり、横軸に時間をとって、車輪速センサによる車輪の回転によって得られた回転検出信号を示すグラフである。
【図6】本発明の実施形態に係るブレーキ制御装置の制御部を示すブロック図である。
【図7】本発明のブレーキ制御装置によるブレーキ制御方法による接地長の算出方法を示すフローチャートである。
【図8】(a)〜(d)は、本発明のブレーキ制御装置によるブレーキ制御方法において得られる信号波形を示すグラフである。
【図9】(a)〜(c)は、本発明のブレーキ制御装置によるブレーキ制御方法において得られる信号波形を示すグラフである。
【図10】本発明のブレーキ制御装置によるブレーキ制御方法による接地長の算出方法を説明するための模式図である。
【図11】本実施形態のブレーキ制御装置によるブレーキ制御方法を示すフローチャートである。
【図12】(a)は、図11に示すフローチャートのステップS36において第1の判定基準を用いたものを示すフローチャートであり、(b)は、図11に示すフローチャートのステップS36において第2の判定基準を用いたものを示すフローチャートであり、(c)は、図11に示すフローチャートのステップS36において第3の判定基準を用いたものを示すフローチャートである。
【図13】本発明のブレーキ制御装置によるブレーキ制御方法におけるタイヤの接地長の他の算出方法を示すフローチャートである。
【図14】本発明のブレーキ制御装置によるブレーキ制御方法におけるタイヤの接地長の他の算出方法における第1の接地長候補の算出を説明するための模式図である。
【図15】(a)〜(c)は、本発明のブレーキ制御装置によるブレーキ制御方法におけるタイヤの接地長の他の算出方法におけるタイヤのたわみ形状の算出方法を説明するための模式図である。
【図16】(a)および(b)は、第2の接地長候補の算出の際に用いるたわみ関数を説明するための模式図である。
【図17】本発明のブレーキ制御装置によるブレーキ制御方法におけるタイヤの接地長の他の算出方法における第2の接地長候補の算出方法を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0111】
10 ブレーキ制御装置
12 車輪
14 ブレーキ
16 ブレーキセンサ
18 制御部
20 タイヤ
22 車輪
24 加速度センサ
26 車輪速センサ
38 コントローラ
40 受信機
42 アンプ
44 車輪速度算出部
46 スリップ率演算部
48 ブレーキ判定部
50 第1のメモリ
52 ブレーキコントロールユニット
54 接地判定ユニット
60 データ取得部
62 データ処理部
64 接地長算出部
66 第2のメモリ
68 判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤが装着された車輪に制動力を付加して制動させるとともに、前記制動力を調整する機能を有するブレーキのブレーキ制御方法であって、
前記タイヤにかかる前記タイヤの半径方向の加速度信号を時系列的に取得する工程と、
前記加速度信号から前記タイヤの接地長を逐次算出する工程と、
各時刻で得られたタイヤの接地長を比較して得られた比較情報に基づいて、前記制動力を制御する工程とを有することを特徴とするブレーキ制御方法。
【請求項2】
前記接地長は、前記加速度信号に積分処理を用いて算出される請求項1に記載のブレーキ制御方法。
【請求項3】
前記制動力を制御する工程は、前記制動力が付加されたとき、前記制動力が付加されていない状態における接地長または前記制動力が付加された直後の接地長を基準接地長とし、前記制動力が付加された後の接地長が前記基準接地長に対して所定の量以上長くなった場合に実行される請求項1または2に記載のブレーキ制御方法。
【請求項4】
前記制動力を制御する工程は、前記制動力が付加された以降、先の時刻の接地長をLi−1とし、前記先の時刻の次時刻である次の時刻の接地長をLとするとき、前記次の時刻の接地長Lが、1.02×Li−1>L>0.97×Li−1を満たす場合に実行される請求項1〜3のいずれか1項に記載のブレーキ制御方法。
【請求項5】
前記制動力を制御する工程は、前記制動力が付加された以降、接地長をLとし、タイヤのスリップ率が最大となるまでの間における接地長の最大値を最大接地長Lmaxとしたとき、前記接地長Lが、1.1×Lmax>L>0.9×Lmaxを満たさない場合に実行される請求項1または2に記載のブレーキ制御方法。
【請求項6】
前記加速度信号を取得する加速度センサが、前記タイヤの幅方向または周方向に複数設けられている請求項1〜5のいずれか1項に記載のブレーキ制御方法。
【請求項7】
タイヤが装着されている車輪に設けられ、前記車輪に制動力を付加して制動させるとともに、前記制動力を調整する機能を有するブレーキと、
前記タイヤにかかる前記タイヤの半径方向の加速度信号を時系列的に検出する加速度センサと、
前記加速度信号が入力され、前記加速度信号から前記タイヤの接地長を逐次算出する接地長算出部と、
前記ブレーキによる制動力が付加されたことを検知し、検知信号を出力するブレーキセンサと、
前記ブレーキセンサに接続され、前記ブレーキセンサから前記検知信号が入力された場合、各時刻で得られたタイヤの接地長を比較して得られた比較情報に基づいて、前記ブレーキに前記制動力の調整の要不用を示す情報を含む制動情報信号を出力する判定部と、
前記判定部に接続され、前記判定部からの前記制動情報信号に基づいて前記ブレーキに前記制動力を調整させる制御信号を出力するブレーキコントロールユニットとを有することを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記ブレーキセンサから前記検知信号が入力された場合、前記制動力が付加されていない状態における接地長または前記制動力が付加された直後の接地長を基準接地長とし、前記制動力が付加された後の接地長が前記基準接地長に対して所定の量以上長くなったときに、前記ブレーキコントロールユニットに前記制動情報信号を出力する請求項7に記載のブレーキ制御装置。
【請求項9】
前記判定部は、前記ブレーキセンサから前記検知信号が入力された場合、先の時刻の接地長をLi−1とし、前記先の時刻の次時刻である次の時刻の接地長をLとするとき、前記次の時刻の接地長Lが、1.02×Li−1>L>0.97×Li−1を満たすときに、前記ブレーキコントロールユニットに前記制動情報信号を出力する請求項7または8に記載のブレーキ制御装置。
【請求項10】
前記判定部は、前記ブレーキセンサから前記検知信号が入力された場合、接地長をLとし、タイヤのスリップ率が最大となるまでの間における接地長の最大値を最大接地長Lmaxとしたとき、前記接地長Lが、1.1×Lmax>L>0.9×Lmaxを満たさないときに、前記ブレーキコントロールユニットに前記制動情報信号を出力する請求項7に記載のブレーキ制御装置。
【請求項11】
さらに、前記車輪に設けられ、車輪の速度を測定する車輪速度センサと、
前記車輪速度センサに接続され、前記車輪の速度の情報からスリップ率を算出するスリップ率演算部と、
前記スリップ率演算部および前記ブレーキセンサに接続され、前記ブレーキセンサから前記検知信号が入力された場合、前記スリップ率演算部で得られたスリップ率に基づいて、前記ブレーキに前記制動力の調整の要不用を示す情報を含む制動情報信号を出力するブレーキ判定部とを有し、
前記ブレーキ判定部は、前記ブレーキコントロールユニットに接続されており、前記ブレーキコントロールユニットに前記制動情報信号を出力し、前記ブレーキコントロールユニットは、前記制動情報信号に基づいて前記ブレーキに前記制動力を調整させる制御信号を出力する請求項7〜10のいずれか1項に記載のブレーキ制御装置。
【請求項12】
前記加速度センサは、前記タイヤの幅方向または周方向に複数設けられている請求項7〜11のいずれか1項に記載のブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−126942(P2008−126942A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−317174(P2006−317174)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】