説明

ブレードラバーおよびその処理方法

【課題】加硫処理したブレードラバーのネック部を硬化させてブレード反転時に発生する音を低減する。
【解決手段】ワイパアームが往復揺動することで窓面を払拭するためのゴム製のブレードラバーであって、該ブレードラバーを、ワイパアーム側に取付けるための取付け部と、窓面の払拭をするリップ部と、取付け部とリップ部とを連結するためのネック部とを備えて構成するにあたり、前記ネック部を、加硫したものに電子線等の硬化促進線源を照射して硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の窓面を払拭するためのブレードラバーおよびその処理方法の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ワイパブレードに設けられるブレードラバーは、ワイパアーム側に取付けるための取付け部と、窓面の払拭をする断面逆三角形状のリップ部と、取付け部とリップ部とを連結するための肉薄のネック部とで構成され、窓面の払拭作動は、ネック部がワイパアームの揺動方向とは逆方向に折れ曲がった状態(傾倒した状態)で窓面に接触するリップ部が払拭作動をすることになり、そしてワイパアームが反転揺動する際に、ネック部の折れ曲がり方向が反転するようになっている。このようなブレードラバーにおいて、ネック部の強度が弱いと、前記反転時、リップ部の肩部が取付け部に当たって叩き音が発生するだけでなく、反転時にリップ部が座屈がすることでブレードラバーが大きく振動し、この振動が窓面に伝わって反転音が大きくなるという問題がある。これに対し、ネック部の強度を強くすると、円滑な反転機能が損なわれることになって払拭性能が低下し、ブレード機能を果たさなくなるという問題がある。
そこでネック部を、リップ部が取付け部に対して傾斜するほど曲げ抵抗が増大するよう傾斜抵抗部を形成することが提唱されている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】実開平1−176569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、前記傾斜抵抗部は、ネック部に肉厚部と肉薄部とを形成することで構成していたため、肉薄部での強度低下が発生することになって耐久性に劣るという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、ワイパアームが往復揺動することで窓面を払拭するためのブレードラバーであって、該ブレードラバーを、ワイパアーム側に取付けるための取付け部と、窓面の払拭をするリップ部と、取付け部とリップ部とを連結するためのネック部とを備えて構成するにあたり、前記ネック部は、加硫したものに硬化処理が施されたものであることを特徴とするブレードラバーである。
請求項2の発明は、硬化処理は、硬化促進線源の照射によるものであることを特徴とする請求項1記載のブレードラバーである。
請求項3の発明は、ワイパアームが往復揺動することで窓面を払拭するためのブレードラバーの処理方法であって、該ブレードラバーを、ワイパアーム側に取付けるための取付け部と、窓面の払拭をするリップ部と、取付け部とリップ部とを連結するためのネック部とを備えて構成するにあたり、前記ネック部は、加硫後に硬化処理が施されたものであることを特徴とするブレードラバーの処理方法である。
請求項4の発明は、硬化処理は、硬化促進線源の照射によるものであることを特徴とする請求項3記載のブレードラバーの処理方法である。
【発明の効果】
【0005】
請求項1または3の発明とすることにより、ネック部に肉薄部分を形成することなく硬化処理を施して反転音の低下を果たせながらブレードラバーの耐久性を維持できることになる。
請求項2または4の発明とすることにより、ネック部の硬化処理が硬化促進線源の照射によって簡単にできることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次ぎに、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図中、1は車両の窓面を払拭するためのワイパブレードであって、該ワイパブレード1は、先端縁部(下端縁部)が窓面Wに弾性的に当接する後述のブレードラバー2と、該ブレードラバー2の窓面当接側とは反対側部位を支持するチャンネル3と、該チャンネル3を支持するレバー体(本実施の形態のものはプライマリーとセカンダリーのレバー体が設けられているがこれに限定されないものであることは言うまでもない)4と、該レバー体4を支持する状態でワイパアーム5に連結される連結部6とを備えて構成されている。そしてワイパブレード1は、ワイパモータ7の駆動に伴うワイパアーム5のピボット軸8を軸芯とする往復揺動に伴い窓面Wの払拭をするようになっていること等は何れも従来通りである。
【0007】
前記ブレードラバー2は、通常知られた加硫ゴムが採用されるが、ゴム材としては特に限定されず、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、フッ素ゴム(FKM)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合ゴム(EPDM)、水素化ニトリルゴム(水素化NBR)、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO)、多硫化ゴム(T)、ウレタンゴム(U)の単独または複数混合したものを例示することができる。そしてこのゴム材に、加硫剤、加硫促進剤、軟化剤、老化防止剤、充填剤、シランカップリング剤、シリカ、カーボンブラック等の通常知られた添加剤を配合したものをプレス加硫等の従来公知の方法により加硫して製造したブレードラバー2を挙げることができる。
【0008】
上記ブレードラバー2は、ワイパアーム5側、つまりチャンネル3に取付けられる幅広の取付け部2aと、窓面Wを払拭する逆三角形状をしたリップ部2bと、両者を連結する肉薄の凹溝状になったネック部2cとを備えて構成されるが、このネック部2cについて、加硫後に硬化促進線源の照射による硬化処理が施されたものであって、硬化促進線源の照射処理としては、例えば、紫外線照射処理、プラズマ照射処理、電子線照射処理、放射線(α線、β線、γ線)照射処理、イオンビーム照射処理、コロナ放電照射処理等があり、このような硬化処理を施すことにより、加硫ゴムの加硫がより促進され、あるいは加硫ゴムの表面の硬化が促進して硬化が促進され、これによって反転音を低下させることができる。
【0009】
そして硬化促進線源を用いた硬化処理を行う場合、硬化処理の変化は、照射時間の長短調整、照射強度の強弱調整の何れか一方、あるいは両者を組み合わせることによって実施することができる。つまりこれら硬化処理の調整は、照射線源の吸収線量を変化させることで実行することができ、吸収線量が大きいほどブレードラバー2の硬化が促進して硬化し、ワイパブレードとして好ましい剛性のものを一律的に得ることができる。このような剛性としては、ワイパブレードが払拭時に受ける力を0.098N(ニュートン)としたときに、座屈荷重が10.0〜22.0mN(ミリニュートン)の範囲であり、反転時間が0.02〜0.034秒の範囲になることが好ましく、さらに前記座屈荷重、反転時間を確保するには、ネック部2cの寸法について、その肉厚をX、高さをYとした場合に、0.5≦X/Y≦0.7とすることが好ましい。
【0010】
そして例えば硬化処理が電子線照射である場合、ブレードラバー2のネック部2cについて吸収線量を10〜200kGy(キログレイ)に変化させることで硬度が2〜10度(JIS A硬度またはデュロメータ タイプAによる測定、以下同じ)ほど変化することが実験的に確認されており、従って吸収線量を、必要な硬度になるよう適宜設定することで、ネック部2cの硬度を調整できる。
ブレードラバー2の硬化処理部位は前述したようにネック部2cであるが、次に、硬化促進線源として電子線を照射して本発明を実施した場合について具体的に説明する。
【0011】
ブレードラバー2は、天然ゴムを用いた汎用のものを用い、該ブレードラバー2のネック部2cに対し、吸収線量として100kGy(キログレイ)の電子線を照射すると、図4に示す表図のように、ネック部2cの硬度アップが計られた。因みに、ネック部2cのみに硬化処理を施すには、電子線照射口や照射経路をネック部2cの寸法に合わせて絞ったり、取付け部2aとリップ部2bとを電子線が透過しない部材でマスキングしたりする等して実行することができる。そしてこのようにネック部2cの硬化処理が施されたものと、施されていないものについてそれぞれ車両に実装し、反転音を測定したところ、硬化処理を施したものは反転音が2〜6dB(デシベル)ほど低減していることが確認された。
【0012】
尚、本発明で採用できるブレードラバーとしては、前記実施の形態で示したレバー体4で支持するものに限定されず、図5に示す第二の実施の形態のもののようにレバー体9aを一つのものとし、該レバー体9aの両端に設けられた支持部9bでチャンネル10を支持する構成のワイパブレード9についても実施することができる。つまりこのものは、チャンネル10が一点破線で示すように湾曲するものであって、ワイパブレード9は、窓面Wに当接しない自然状態では同じように湾曲している。そしてこのものを窓面Wに弾圧状に当接した場合、ブレードラバー11は、ワイパアームに連結される連結部12からレバー体9aの両端支持部9bの二箇所への押圧力を伝達し窓面Wに均一になるように分圧するものである。この場合、ブレードラバー両端部11aと中央部11bにはレバー体9a両端の支持部9bから離間するほど弾圧力が小さくなっている。そこで、ブレードラバー11の肉薄の凹溝状になったネック部11cに硬化処理を施すことで本発明を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】窓部の概略斜視図である。
【図2】ブレードラバーの正面図である。
【図3】ブレードラバーの断面図である。
【図4】硬化処理を施したブレードラバーの特性を示す表図である。
【図5】第二の実施の形態を示すブレードラバーの正面図である。
【符号の説明】
【0014】
1 ワイパブレード
2 ブレードラバー
2a 取付け部
2b リップ部
2c ネック部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイパアームが往復揺動することで窓面を払拭するためのブレードラバーであって、該ブレードラバーを、ワイパアーム側に取付けるための取付け部と、窓面の払拭をするリップ部と、取付け部とリップ部とを連結するためのネック部とを備えて構成するにあたり、前記ネック部は、加硫したものに硬化処理が施されたものであることを特徴とするブレードラバー。
【請求項2】
硬化処理は、硬化促進線源の照射によるものであることを特徴とする請求項1記載のブレードラバー。
【請求項3】
ワイパアームが往復揺動することで窓面を払拭するためのブレードラバーの処理方法であって、該ブレードラバーを、ワイパアーム側に取付けるための取付け部と、窓面の払拭をするリップ部と、取付け部とリップ部とを連結するためのネック部とを備えて構成するにあたり、前記ネック部は、加硫後に硬化処理が施されたものであることを特徴とするブレードラバーの処理方法。
【請求項4】
硬化処理は、硬化促進線源の照射によるものであることを特徴とする請求項3記載のブレードラバーの処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate