説明

ブロムフェナク含有組成物

【課題】製剤的に非常に安定な、ブロムフェナク及び/又はその塩を含有する組成物を提供することである。
【解決手段】A)ブロムフェナク及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種と、(B)非イオン性界面活性剤と共に、(C)クロルフェニラミン、ピリドキシン、アスパラギン酸及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を組み合わせて組成物を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製剤的な安定性に優れた、ブロムフェナク及び/又はその塩を含有する組成物に関する。より詳細には、本発明は、ブロムフェナク及び/又はその塩と共に非イオン性界面活性剤を含みながら、安定性が著しく改善された組成物に関する。更に本発明は、非イオン性界面活性剤との併用により悪化するブロムフェナクの安定性を改善する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロムフェナク及び/又はその塩は、外眼部及び前眼部の炎症性疾患(例えば、眼瞼炎、結膜炎、強膜炎(上強膜炎を含む)、術後炎症等)に対して、優れた抗炎症作用を発揮し得る薬物として、これまでにも点眼剤において使用されている。
【0003】
また、非イオン性界面活性剤は、難溶性薬物の溶解を補助する目的で、点眼剤や内服剤等の医薬品や化粧品、食品などにおいて汎用されている。また、非イオン性界面活性剤は、他に配合する成分を安定にするための安定化剤として用いられることも多い。
【0004】
更に、クロルフェニラミン、ピリドキシン、アスパラギン酸、及び/又はそれらの塩は、抗ヒスタミン作用の発揮や、新陳代謝の促進、栄養強化などを目的として、種々の医薬品や化粧品、食品において汎用されている。
【0005】
そしてこれまでに、ブロムフェナクナトリウム[別名:2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸ナトリウム]と、特定の非イオン性界面活性剤とを組み合わせて60℃における安定性を評価したことが知られている(特許文献1)。具体的には特許文献1では、特定の非イオン性界面活性剤としてポリソルベート80を用いた場合には、60℃で4週間保存後のブロムフェナクナトリウムの残存率が51.3%であったことが記載されている。また、特許文献1には、クロルフェニラミン、ピリドキシン、アスパラギン酸、及び/又はそれらの塩を配合することについては一切記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2004/064828号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の従来技術に鑑み、ブロムフェナク及び/又はその塩と共に非イオン性界面活性剤を含有しながら、製剤的な安定性が改善された組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、(A)ブロムフェナク及び/又はその塩と、(B)非イオン性界面活性剤と共に、(C)クロルフェニラミン、ピリドキシン、アスパラギン酸、及び/又はそれらの塩を更に組み合わせて用いることにより、上記(A)成分と上記(B)成分とを共存させていながら、非常に安定な組成物とすることができることを見出した。更に、本発明者らは検討を進め、このように(A)〜(C)の三成分を含有する組成物は、熱に対してのみならず、光に対しても非常に安定であることをも見出した。従って、本発明により、製剤的に非常に優れたブロムフェナク及び/又はその塩を含有する組成物を提供することが可能となる。
【0009】
従って、本発明は以下を提供する。
項1. (A)ブロムフェナク及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種と、(B)非イオン性界面活性剤と、(C)クロルフェニラミン、ピリドキシン、アスパラギン酸及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種とを含有する、組成物。
項2. (B)成分として、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類、ポリオキシエチレンヒマシ油類、及びポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類からなる群より選択される少なくとも1種を含む、項1に記載の組成物。
項3. 水性液状組成物である、項1又は2に記載の組成物。
項4. pHが6.0〜9.0である、項1〜3のいずれかに記載の組成物。
項5. 更に、ホウ酸又はその塩を含有する、項1〜4のいずれかに記載の組成物。
項6. 眼科用組成物である、項1〜5のいずれかに記載の組成物。
項7. 点眼剤である、項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【0010】
更に、本発明は以下も包含する。
(1)(A)ブロムフェナク及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種と、(B)非イオン性界面活性剤と、(C)クロルフェニラミン、ピリドキシン、アスパラギン酸及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種とを混合することを含む、前記(B)成分と共存している前記(A)成分の安定化方法。
(2)(A)ブロムフェナク及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種と、(B)非イオン性界面活性剤とを含有する組成物における前記(A)成分を安定化するための安定化剤であって、(C)クロルフェニラミン、ピリドキシン、アスパラギン酸及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む前記安定化剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ブロムフェナク及び/又はその塩と共に、非イオン性界面活性剤を含みながら、製剤的に安定な組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】試験例1において、各試験液(比較例1−4及び実施例1−9)の熱安定性を評価した結果を示す図である。
【図2】試験例2において、各試験液(比較例5、6及び実施例10、11)の熱安定性を評価した結果を示す図である。
【図3】試験例3において、各試験液(比較例7、8及び実施例12、13)の熱安定性を評価した結果を示す図である。
【図4】試験例4において、各試験液(比較例9、10及び実施例14)の光安定性を評価した結果を示す図である。
【図5】試験例5において、各試験液(比較例5、6及び実施例10、11、15)の光安定性を評価した結果を示す図である。
【図6】試験例5において、各試験液(比較例7、8及び実施例12、13、16)の光安定性を評価した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、(A)ブロムフェナク及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種と、(B)非イオン性界面活性剤と、(C)クロルフェニラミン、ピリドキシン、アスパラギン酸及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種とを含有する組成物に関する。
本発明の組成物は、ブロムフェナク及び/又はその塩(以下、単に(A)成分ともいう)を含有する。
【0014】
ブロムフェナクは、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸とも称される公知の化合物であり、公知の方法により合成してもよく市販品として入手することもできる。
【0015】
本発明で使用される(A)成分の内、ブロムフェナクの塩としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されないが、具体的には、有機酸塩[例えば、モノカルボン酸塩(酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酪酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩等)、多価カルボン酸塩(フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩等)、オキシカルボン酸塩(乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等)、有機スルホン酸塩(メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、トシル酸塩等)等]、無機酸塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等)、有機塩基との塩(例えば、メチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン、トリピリジン、ピコリン等の有機アミンとの塩等)、無機塩基との塩[例えば、アンモニウム塩;アルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)、アルミニウム等の金属との塩等]等の各種の塩が挙げられる。これらの塩の中でも、好ましくは有機塩基との塩及び/又は無機塩基との塩、より好ましくは無機塩基との塩、更に好ましくはアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩、更により好ましくはアルカリ金属塩、特に好ましくはナトリウム塩が挙げられる。これらのブロムフェナクの塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0016】
また、本発明のブロムフェナク及びその塩には、それらの溶媒和物(例えば、水和物)の形態も包含される。溶媒和物の形態としては、例えば、1/2水和物、1水和物、3/2水和物等が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、3/2水和物である。
【0017】
本発明の組成物には、(A)成分として、ブロムフェナク及びその塩の中から、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。より高い製剤安定化効果が得られるという観点から、好ましくは、ブロムフェナク、その無機塩基との塩、及び/又はそれらの溶媒和物、より好ましくはブロムフェナク、そのアルカリ金属塩、そのアルカリ土類金属塩、及び/又はそれらの溶媒和物、更に好ましくはブロムフェナク、そのアルカリ金属塩、及び/又はそれらの溶媒和物、更により好ましくはブロムフェナク、そのナトリウム塩、及び/又はそれらの水和物、特に好ましくはブロムフェナクナトリウム・3/2水和物が挙げられる。
【0018】
本発明の組成物において、上記(A)成分の配合割合は、該(A)成分の種類、他の配合成分の種類等に応じて適宜設定されるが、例えば、該組成物の総量に対して、該(A)成分が総量で0.001〜1.0w/v%、好ましくは0.005〜0.5w/v%、更に好ましくは0.01〜0.2w/v%が例示される。
【0019】
更に、本発明の組成物は、非イオン性界面活性剤(以下、単に(B)成分ともいう)を含有する。
【0020】
本発明の組成物に配合可能な非イオン性界面活性剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されないが、具体的には、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類;ポロクサマー407、ポロクサマー235、ポロクサマー188、ポロクサマー403、ポロクサマー237、ポロクサマー124等のPOE・POPブロックコポリマー類; POE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)等のPOE硬化ヒマシ油類;POEヒマシ油類;POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル類;POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE-POPアルキルエーテル類;POE(10)ノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル類等が挙げられる。なお、上記で例示する化合物において、POEはポリオキシエチレン、POPはポリオキシプロピレン、及び括弧内の数字は付加モル数を示す。本発明の組成物において、これらの非イオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
本発明の組成物には、(B)成分として、好ましくは、POEソルビタン脂肪酸エステル類、POE硬化ヒマシ油類、POEヒマシ油類及び/又はPOE・POPブロックコポリマー類、より好ましくは、POEソルビタン脂肪酸エステル類、POE硬化ヒマシ油類、及び/又はPOE・POPブロックコポリマー類、更に好ましくは、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、及び/又はポロクサマー407が用いられる。なかでも、ポリソルベート80は、他の非イオン性界面活性剤と比較してブロムフェナク及び/又はその塩の不安定化を引き起こし易い傾向がある。然るに、本発明によれば、このように不安定化を引き起こし易いポリソルベート80を用いた場合でも安定性を著しく改善することができる。かかる観点に鑑みると、本発明では、(B)成分としてポリソルベート80が好適に用いられ得る。
【0022】
本発明の組成物において、上記(B)成分の配合割合は、該(B)成分の種類、他の配合成分の種類等に応じて適宜設定されるが、例えば、該組成物の総量に対して、該(B)成分が総量で0.001〜3.0w/v%、好ましくは0.005〜2.5w/v%、より好ましくは0.02〜2.0w/v%、更に好ましくは0.05〜2.0w/v%が例示される。
【0023】
また、本発明の組成物において、上記(A)成分に対する上記(B)成分の比率としては、特に制限されるものではないが、一例として、上記(A)成分の総量100重量部当たり、上記(B)成分の総量が2〜6000重量部、好ましくは10〜5000重量部、更に好ましくは40〜4000重量部となる範囲が例示される。
【0024】
更に、本発明の組成物は、クロルフェニラミン、ピリドキシン、アスパラギン酸及び/又はそれらの塩(以下、単に(C)成分ともいう)を含有する。このように(A)〜(B)成分と共に(C)成分を用いることによって、(B)成分の共存によって不安定化し易い(A)成分の熱安定性を効果的に改善することができ、更には(A)成分の光安定性をも高度に改善することができる。
【0025】
(C)成分の内、クロルフェニラミンは、3-(4-クロロフェニル)-N,N-ジメチル-3-ピリジン-2-イル-プロピルアミンとも称される公知の化合物である。
【0026】
クロルフェニラミンの塩としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されないが、具体的には、上記(A)成分がとり得る塩と同形態のものが例示される。これらの塩の中でも、好ましくは有機酸塩及び/又は無機酸塩、より好ましくは有機酸塩、更に好ましくは多価カルボン酸塩、更により好ましくはマレイン酸塩及び/又はフマル酸塩、特に好ましくはマレイン酸塩が挙げられる。これらのクロルフェニラミンの塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0027】
また、クロルフェニラミン及びその塩は、溶媒和物(例えば、水和物)の形態であってもよく、更にd体、l体、dl体のいずれであってもよい。
【0028】
クロルフェニラミン及びその塩の中でも、より高い製剤安定化効果が得られるという観点から、好ましくは、クロルフェニラミン及び/又はその有機酸塩、より好ましくはクロルフェニラミン及び/又はその多価カルボン酸塩、更に好ましくはクロルフェニラミン、そのマレイン酸塩及び/又はそのフマル酸塩、特に好ましくはクロルフェニラミンのマレイン酸塩(マレイン酸クロルフェニラミン)が挙げられる。
【0029】
(C)成分の内、ピリドキシンは、5-ヒドロキシ-6-メチルピリジン-3,4-ジメタノールとも称される公知の化合物である。ピリドキシン及びその塩は、水溶性ビタミンであるビタミンB6として公知の化合物であり、公知の方法により合成してもよく市販品として入手することもできる。
【0030】
ピリドキシンの塩としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されないが、具体的には、上記(A)成分がとり得る塩と同形態のものが例示される。これらの塩の中でも、好ましくは無機酸塩及び/又は有機酸塩、より好ましくは無機酸塩、更に好ましくは塩酸塩及び/又はリン酸塩、特に好ましくは塩酸塩が挙げられる。これらのピリドキシンの塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0031】
これらのピリドキシン及びその塩の中でも、より高い製剤安定化効果が得られるという観点から、好ましくは、ピリドキシン及びその無機酸塩、より好ましくはピリドキシン、ピリドキシン塩酸塩、及びピリドキシンリン酸塩、更に好ましくはピリドキシン塩酸塩、及びピリドキシンリン酸塩、特に好ましくはピリドキシン塩酸塩(塩酸ピリドキシン)が挙げられる。
【0032】
(C)成分の内、アスパラギン酸は、2-アミノブタン二酸とも称される酸性アミノ酸として公知の化合物である。
【0033】
アスパラギン酸の塩としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されないが、具体的には、上記(A)成分がとり得る塩と同形態のものが例示される。これらの塩の中でも、好ましくは、無機塩基との塩及び/又は有機塩基との塩、より好ましくは無機塩基との塩、更に好ましくはアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、更により好ましくはアスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、及びアスパラギン酸マグネシウム・カリウム、特に好ましくはアスパラギン酸カリウムである。これらのアスパラギン酸の塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0034】
また、アスパラギン酸及びその塩は、l体、d体、dl体のいずれであってもよいが、好ましくはl体である。
【0035】
アスパラギン酸及びその塩の中でも、より高い製剤安定化効果が得られるという観点から、好ましくは、アスパラギン酸及び/又はその無機塩基との塩、より好ましくは、アスパラギン酸、そのアルカリ金属塩、及び/又はそのアルカリ土類金属塩、更に好ましくは、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、及びアスパラギン酸マグネシウム・カリウム、特に好ましくはアスパラギン酸カリウムである。
【0036】
本発明の組成物において、(C)成分は、クロルフェニラミン、ピリドキシン、アスパラギン酸、及び/又はそれらの塩の中から1種のものを単独で使用してもよく、また2種以上のものを任意に組み合わせて使用してもよい。本発明で使用される(C)成分の好適な一例としては、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ピリドキシン、及び/又はアスパラギン酸カリウムを挙げることができる。特に好ましくは、マレイン酸クロルフェニラミンである。
【0037】
本発明の組成物に(C)成分を配合する場合、該(C)成分の配合割合については、(C)成分の種類、併用する(A)成分や(B)成分の種類等に応じて適宜設定されるが、一例として、該組成物の総量に対して、(C)成分が総量で0.01〜4.5w/v%、好ましくは0.03〜2.3w/v%が例示される。より具体的には、本発明の組成物の総量に対する各(C)成分の配合割合として、以下の範囲が例示される。
(C)成分がクロルフェニラミン及び/又はその塩の場合:これらが総量で、通常0.0005〜0.5w/v%、好ましくは0.001〜0.1w/v%、更に好ましくは0.005〜0.06w/v%;
(C)成分がピリドキシン及び/又はその塩の場合:これらが総量で、通常0.0005〜0.6w/v%、好ましくは0.001〜0.4w/v%、更に好ましくは0.005〜0.2w/v%;
(C)成分がアスパラギン酸及び/又はその塩の場合:これらが総量で、通常0.01〜3.0w/v%、好ましくは0.1〜2.5w/v%、更に好ましくは0.5〜2w/v%。
【0038】
また、本発明の組成物における上記(A)成分に対する上記(C)成分の比率については、特に制限されるものではないが、(B)成分の共存により不安定化される(A)成分の熱安定性をより一層効果的に改善するという観点及び/又は(A)成分の光安定性をより一層高度に改善するという観点から、 (A)成分の総量100重量部当たり、上記(C)成分の総量が1〜8200重量部、好ましくは10〜4550重量部となる範囲が例示される。より具体的には、(A)成分の総量100重量部当たりの各(C)成分の比率として、以下の範囲が例示される:
(C)成分がクロルフェニラミン及び/又はその塩の場合:これらが総量で、通常1〜1000重量部、好ましくは2〜200重量部、更に好ましくは5〜150重量部、特に好ましくは10〜120重量部;
(C)成分がピリドキシン及び/又はその塩の場合:これらが総量で、通常1〜1200重量部、好ましくは2〜800重量部、更に好ましくは5〜500重量部、特に好ましくは10〜400重量部;
(C)成分がアスパラギン酸及び/又はその塩の場合:これらが総量で、通常20〜6000重量部、好ましくは200〜5000重量部、更に好ましくは500〜4500重量部、特に好ましくは1000〜4000重量部。
【0039】
本発明の組成物は、更に緩衝剤を含有してもよい。本発明の組成物に配合できる緩衝剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。かかる緩衝剤の一例として、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、トリス緩衝剤、イプシロン−アミノカプロン酸等が挙げられる。これらの緩衝剤は組み合わせて使用してもよい。好ましい緩衝剤は、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、及びクエン酸緩衝剤であり、より好ましい緩衝剤はホウ酸緩衝剤及びリン酸緩衝剤であり、特に好ましい緩衝剤はホウ酸緩衝剤である。ホウ酸緩衝剤としては、ホウ酸、又はホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカリ土類金属塩等のホウ酸塩が挙げられる。リン酸緩衝剤としては、リン酸、又はリン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ土類金属塩等のリン酸塩が挙げられる。炭酸緩衝剤としては、炭酸、又は炭酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ土類金属塩等の炭酸塩が挙げられる。クエン酸緩衝剤としては、クエン酸、又はクエン酸アルカリ金属塩、クエン酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。また、ホウ酸緩衝剤又はリン酸緩衝剤として、ホウ酸塩又はリン酸塩の水和物を用いてもよい。より具体的な例として、ホウ酸緩衝剤として、ホウ酸又はその塩(ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等);リン酸緩衝剤として、リン酸又はその塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等);炭酸緩衝剤として、炭酸又はその塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム等);クエン酸緩衝剤として、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等);酢酸緩衝剤として、酢酸又はその塩(酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウム等);トリス緩衝剤として、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン又はその塩(塩酸塩、酢酸塩、スルホン酸塩等)等が例示できる。これらの緩衝剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0040】
上記緩衝剤の中でも、とりわけホウ酸緩衝剤は好適である。ホウ酸緩衝剤の好適な具体例として、ホウ酸とその塩の組み合わせ;好ましくはホウ酸と、ホウ酸のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩の組み合わせ;更に好ましくはホウ酸と、ホウ酸のアルカリ金属塩の組み合わせ;特に好ましくはホウ酸とホウ砂の組み合わせが例示される。
【0041】
本発明の組成物に緩衝剤を配合する場合、該緩衝剤の配合割合については、使用する緩衝剤の種類、他の配合成分の種類や量、該組成物の用途等に応じて異なり、一律に規定することはできないが、例えば、該組成物の総量に対して、該緩衝剤が総量で0.01〜10w/v%、好ましくは0.05〜5w/v%、更に好ましくは0.1〜2w/v%となる割合が例示される。
【0042】
本発明の組成物のpHについては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されるものではないが、pHが高いほどより高い製剤安定性(とりわけ光に対する高い安定性)が獲得できる傾向がある。かかる観点に鑑みれば、本発明の組成物のpHの好適な一例として、pHが6.0以上、好ましくは6.0〜9.0、更に好ましくは6.5〜9.0、より好ましくは7.0〜9.0、特に好ましくは7.5〜9.0となる範囲が挙げられる。
【0043】
また、本発明の組成物の浸透圧については、生体に許容される範囲内であれば、特に制限されない。本発明の組成物の浸透圧比の一例として、好ましくは0.7〜5.0、更に好ましくは0.9〜3.0、特に好ましくは1.0〜2.0となる範囲が挙げられる。浸透圧の調整は無機塩、多価アルコール、糖アルコール、糖類等を用いて、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。浸透圧比は、第十五改正日本薬局方に基づき286mOsm(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)の浸透圧に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)を参考にして測定する。なお、浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)は、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500〜650℃で40〜50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いる。
【0044】
本発明の組成物は、本発明の効果を妨げない限り、上記成分の他に、種々の薬理活性成分や生理活性成分を組み合わせて適当量含有してもよい。このような薬理活性成分や生理活性成分としては、例えば、抗ヒスタミン剤、充血除去剤、殺菌剤、ビタミン類、アミノ酸類、消炎剤、収斂剤、等が挙げられるがこれらに限定されない。具体的には、眼科用薬において用いられる成分としては、次のような成分が挙げられる。
【0045】
抗ヒスタミン剤:例えば、イプロヘプチン、塩酸ジフェンヒドラミン、フマル酸ケトチフェン、ペミロラストカリウム等。
充血除去剤:例えば、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、硫酸ナファゾリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸メチルエフェドリン等。
殺菌剤:例えば、セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸ポリヘキサメチレンビグアニド等。
ビタミン類:例えば、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、パンテノール、パントテン酸カルシウム、酢酸トコフェロール等。
アミノ酸類:例えば、アミノエチルスルホン酸等。
消炎剤:例えば、グリチルリチン酸二カリウム、アラントイン、アズレン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グアイアズレン、ε−アミノカプロン酸、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、塩化リゾチーム、甘草等。
収斂剤:例えば、亜鉛華、乳酸亜鉛、硫酸亜鉛等。
その他:例えば、クロモグリク酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム等。
【0046】
また本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途や形態に応じて、常法に従い、薬学的に許容される担体や添加物を含有させてもよい。このような担体や添加物としては、例えば、等張化剤、増粘剤、糖類、糖アルコール類、防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤、pH調節剤、安定化剤、香料又は清涼化剤等が挙げられるが、これらに限定されない。代表的な成分として例えば次の添加物が挙げられる。
【0047】
担体:例えば、水、含水エタノール等の水性担体。
等張化剤:例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等。
増粘剤:例えば、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸、ポリビニルアルコール(完全、又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン、マクロゴール等。
糖類:例えば、シクロデキストリン等。
糖アルコール類:例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、ポリヘキサメチレンビグアニド等)、グローキル(ローディア社製商品名)等。
pH調節剤:例えば、塩酸、ホウ酸、アミノエチルスルホン酸、イプシロン−アミノカプロン酸、クエン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ砂、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、硫酸、リン酸、ポリリン酸、プロピオン酸、シュウ酸、グルコン酸、フマル酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、グルコノラクトン、酢酸アンモニウム等。
安定化剤:例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等。
キレート剤:例えば、エチレンジアミン二酢酸(EDDA)、エチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン四酢酸(エデト酸、EDTA)、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)等。
香料又は清涼化剤:例えば、メントール、アネトール、オイゲノール、カンフル、ゲラニオール、シネオール、ボルネオール、リモネン、リュウノウ等。これらは、d体、l体又はdl体のいずれでもよく、また精油(ハッカ油、クールミント油、スペアミント油、ペパーミント油、ウイキョウ油、ケイヒ油、ベルガモット油、ユーカリ油、ローズ油等)として配合してもよい。
【0048】
本発明の組成物は、所望量の上記(A)〜(C)成分、必要に応じて他の配合成分を所望の濃度となるように添加することにより調製される。
【0049】
本発明の組成物は、目的に応じて種々の製剤形態をとることができる。例えば、本発明の組成物の形態として、液状、半固形状(軟膏等)、固形状等を挙げることができる。好ましくは液状であり、より好ましくは水性液状組成物である。ここで水性液状組成物とは、水を含有する液状の組成物を意味し、通常は、組成物中に水を1重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは20重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、特に好ましくは90重量%以上含有するものを意味する。水性液状組成物に含有される水は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであればよい。例えば、蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水、注射用蒸留水等を使用できる。これらの定義は第一五改正日本薬局方に基づく。
【0050】
また、本発明の組成物は、医薬品や医薬部外品等の製剤として使用でき、例えば、眼科用組成物、鼻腔用組成物、経口用組成物、点耳用組成物、皮下投与用組成物、皮膚外用組成物等の様々な用途で使用することができる。ここで、眼科用組成物には、点眼剤、人工涙液、洗眼剤、眼軟膏、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用剤(コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ用保存剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄保存剤等が含まれる)等が含まれる。また、鼻腔用組成物には、点鼻剤、鼻洗浄液等が含まれる。経口用組成物には、内服薬(例えば、液剤、シロップ剤、エキス剤等)、口腔咽頭薬、含嗽薬等が含まれる。点耳用組成物には、点耳薬が含まれる。皮下投与用組成物としては、注射剤等が含まれる。
【0051】
上記用途の中でも、眼科用組成物は、経口用組成物等の他の用途の組成物に比べて、配合成分の濃度が非常に低いことが多く、僅かの含有量低下であっても大きな問題となりかねない。とりわけ眼科用組成物の中でも点眼剤は、1回の使用量が極微量であるため含有量低下の影響は大きい。また、洗眼剤やコンタクトレンズケア用剤等は洗面台などの室温下や暗所下で保管されることが多いのに対し、点眼剤は、持ち歩かれることが多いことから、日中に車のダッシュボードの上に置かれたり、鞄に収納されて屋外で持ち歩かれたりするなどして高温下におかれる場合もあるため、非常に寒暖の差の影響を受け易く、また光にも曝され易い。更に、点眼剤は、一般に少量で個別包装されているという点からも、外部からの温度変化の影響や光による影響を受け易い製剤形態であるといえる。本発明の組成物によれば、このように温度変化の影響や光による影響を受け易い眼科用組成物(特に、点眼剤)についても、熱安定性改善効果を有効に奏することができ、更に光安定性改善効果をも奏することができる。かかる本発明の効果に鑑みれば、本発明の組成物の好適な一例として、眼科用組成物が挙げられ、特に好適な例として点眼剤が挙げられる。
【0052】
本発明の組成物は、任意の容器に収容して提供される。本発明の組成物を収容する容器については特に制限されず、例えば、ガラス製であってもよく、またプラスチック(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミドの何れか1種、これらの共重合体、又はこれらの2種以上の混合体)製であってもよい。また、本発明の組成物を収容する容器は、容器内部を視認できる透明容器であってもよく、容器内部の視認が困難な不透明容器であってもよい。ここで、「透明容器」とは、無色透明容器及び有色透明容器の双方が含まれる。本発明では、高い光安定性も獲得されるため、透明容器に収容されることも可能となる。
【0053】
本発明の組成物は、上記(A)成分に基づいて抗炎症作用等を発揮できるので、炎症性疾患の治療乃至予防に有効であり、炎症性疾患の改善剤としても有用である。ここで、対象となる炎症性疾患の一例として、炎症性眼疾患(例えば、眼瞼炎、結膜炎、角膜炎、強膜炎、上強膜炎、前眼部ブドウ膜炎、術後炎症、涙腺炎、涙嚢炎、涙小管炎等)が挙げられる。従って、本発明の組成物は、これらの炎症性疾患に起因する種々の症状(例えば、目の異物感、なみだ目、充血、目のかゆみ、目のかすみ等)を緩和するために用いられ得る。また、本発明の組成物は、上記(C)成分に基づいて抗ヒスタミン作用や新陳代謝促進作用、栄養強化作用等も発揮することができる。
【実施例】
【0054】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0055】
試験例1:熱安定性評価1
下記表1、2の処方に従って試験液を調製し、ブロムフェナクナトリウムの安定性について評価を行った。具体的な実験手法及び結果を以下に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
まず、表1、2に示す各試験液(比較例1−4及び実施例1−9)を調製した。次いで、各試験液を容量10mlのガラス製のヘッドスペースバイアルに1mlずつ充填して密封し、70℃の恒温機内で遮光下において保存した。保存開始から7日後及び14日後に、各試験液を取り出し、常法に従ってHPLC法によりブロムフェナクナトリウムの含有量を測定し、その残存率を下式に従って算出した。なお、70℃14日間は、室温における約3年間に相当する。
【0059】
[数1]
残存率(%)=(70℃保存後の各試験液におけるブロムフェナクナトリウムの含有量/保存前の各試験液におけるブロムフェナクナトリウムの含有量)×100
【0060】
この結果を、図1に示す。図1より明らかなように、ブロムフェナクナトリウム自体は非常に安定な成分であることが分かる(比較例1)。しかし、ブロムフェナクナトリウムに対し、非イオン性界面活性剤であるポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、又はポロクサマー407を組み合わせた場合には、全く予想外のことに安定性が極めて低下してしまうことが認められた(比較例2−4)。一方、このような非イオン性界面活性剤との共存により生じるブロムフェナクナトリウムの著しい安定性低下に対し、更にマレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ピリドキシン、又はアスパラギン酸カリウムを組み合わせて配合することにより、安定性を大きく改善できることが明らかとなった。なかでも、マレイン酸クロルフェニラミンを配合した場合に、著しい改善が認められた。
【0061】
試験例2:熱安定性評価2
下記表3の処方に従って試験液を調製し、ブロムフェナクナトリウムの熱安定性について評価を行った。具体的な実験手法及び結果を以下に示す。
【0062】
【表3】

【0063】
まず、表3に示す各試験液(比較例5、6及び実施例10、11)を調製した。次いで、各試験液を容量10mlのガラス製のヘッドスペースバイアルに5mlずつ充填して密封し、70℃の恒温機内で遮光下において保存した。保存開始から14日後に、各試験液を取り出し、常法に従ってHPLC法によりブロムフェナクナトリウムの定量(含有量の測定)を行い、その残存率を上記[数1]に従って算出した。
【0064】
この結果を、図2に示す。図2より明らかなように、表3に記載の試験液においても、試験例1と同様の効果が得られた。すなわち、非イオン性界面活性剤との共存により生じるブロムフェナクナトリウムの著しい熱安定性低下に対し、更にマレイン酸クロルフェニラミン又は塩酸ピリドキシンを組み合わせて配合することにより、ブロムフェナクナトリウムの熱安定性を大きく改善できることが明らかとなった。
【0065】
試験例3:熱安定性評価3
下記表4の処方に従って試験液を調製し、ブロムフェナクナトリウムの安定性について評価を行った。具体的な実験手法及び結果を以下に示す。
【0066】
【表4】

【0067】
まず、表4に示す各試験液(比較例7、8及び実施例12、13)を調製した。次いで、各試験液を容量10mlのガラス製のヘッドスペースバイアルに5mlずつ充填して密封し、70℃の恒温機内で遮光下において保存した。保存開始から7日後に、各試験液を取り出し、常法に従ってHPLC法によりブロムフェナクナトリウムの定量を行い、その残存率を上記[数1]に従って算出した。
【0068】
この結果を、図3に示す。図3より明らかなように、表4に記載の試験液においても、試験例1と同様の効果が得られた。すなわち、非イオン性界面活性剤共存下のブロムフェナクナトリウムの安定性と比較し、更に塩酸ピリドキシン又はアスパラギン酸カリウムを組み合わせて配合することにより、ブロムフェナクナトリウムの安定性を大きく改善できることが明らかとなった。
【0069】
試験例4:光安定性評価1
下記表5の処方に従って試験液を調製し、ブロムフェナクナトリウムの安定性について評価を行った。具体的な実験手法及び結果を以下に示す。
【0070】
【表5】

【0071】
まず、表5に示す各試験液(比較例9、10及び実施例14)を調製した。次いで、各試験液を容量10mlのガラス製の透明なスクリューバイアルに1mlずつ充填して密封し、この試験液に対して、光安定性試験装置(「Light-Tron LT-120 D3CJ型」、ナガノ科学株式会社製)を用いて、D65ランプを光源として、25℃の下、0.5万lx/hの光を240時間連続照射し、各試験液を積算照射量120万lxの光に曝光した。光照射後の各試験液において、常法に従ってHPLC法によりブロムフェナクナトリウムの含有量を測定し、その残存率を下式に従って算出した。
【0072】
[数2]
残存率(%)=(光照射後の各試験液におけるブロムフェナクナトリウムの含有量/光照射前の各試験液におけるブロムフェナクナトリウムの含有量)×100
【0073】
この結果を図4に示す。図4に示されるように、ブロムフェナクナトリウム及び非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80)を含有する比較例10の試験液と比較し、これに更にアスパラギン酸カリウムを併用することによって、ブロムフェナクナトリウムの安定性を著しく改善できることが認められた(実施例14)。
【0074】
試験例5:光安定性評価2
上記表3、4及び下記表6の処方に従って試験液を調製し、ブロムフェナクナトリウムの光安定性について評価を行った。具体的な実験手法及び結果を以下に示す。
【0075】
【表6】

【0076】
まず、表3、4及び表6に示す各試験液(比較例5〜8及び実施例10−13、15、16)を調製した。次いで、各試験液を容量10mlのガラス製の透明なスクリューバイアルに5mlずつ充填して密封し、この試験液に対して、光安定性試験装置(「Light-Tron LT-120 D3CJ型」、ナガノ科学株式会社製)を用いて、D65ランプを光源として、25℃の下、0.5万lx/hの光を240時間連続照射し、各試験液を積算照射量120万lxの光に曝光した。光照射後の各試験液において、常法に従ってHPLC法によりブロムフェナクナトリウムの定量を行い、その残存率を上記[数2]に従って算出した。
【0077】
この結果を図5、6に示す。図5、6に示されるように、ブロムフェナクナトリウム及び非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80)を含有する比較例6及び8の試験液と比較し、これに更にマレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ピリドキシン又はアスパラギン酸カリウムとを併用することによって、ブロムフェナクナトリウムの安定性を著しく改善できることが認められた(実施例10−13、15、16)。
【0078】
〔処方例〕下記表7に記載の処方を調製し、ポリエチレンテレフタレート製容器に充填して点眼剤(処方例1〜7)及び洗眼剤(処方例8)とした。
【0079】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ブロムフェナク及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種と、
(B)非イオン性界面活性剤と、
(C)クロルフェニラミン、ピリドキシン、アスパラギン酸及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種と
を含有する、組成物。
【請求項2】
(B)成分として、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類、ポリオキシエチレンヒマシ油類、及びポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
水性液状組成物である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
pHが6.0〜9.0である、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
更に、ホウ酸又はその塩を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
眼科用組成物である、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
点眼剤である、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−224628(P2012−224628A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−88630(P2012−88630)
【出願日】平成24年4月9日(2012.4.9)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】