説明

ブローチ加工要素を備える三次元物体の生成的な製造方法及び対応データセットの生成方法

【課題】三次元物体内における残留粉末の除去を簡易化する三次元物体の生成的な製造方法を提供する。
【解決手段】a)製造装置の支持体5又は先に塗工された層に粉末材料11を層状に塗工し、b)層における三次元物体3の断面に対応する位置に、エネルギー放射8’を用いて前記粉末材料11を選択的に固化し、c)前記三次元物体3が完成するまで前記塗工と前記固化を繰り返す。前記三次元物体3は、その表面における開口部14に開けた少なくとも一つの空洞13を有し、前記粉末材料11は、前記空洞13内に延長し、前記開口部14を介して前記空洞から取り出し可能なブローチ加工部材12が形成されるように固化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元物体の生成的な製造方法及び対応データセットの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(DE 199 37 260 B4)は、三次元物体を生成的に製造する既知の方法と装置を開示する。この方法及び装置は、a)装置の支持体又は先に塗工された層に粉末材料を層状に塗工する工程と、b)層における上記三次元物体の断面に対応する位置にエネルギー放射により粉末材料を選択的に固化する工程と、c)上記三次元物体が完成するまで上記a)の塗工工程とb)の固化工程を繰り返す工程を含む。
【0003】
特許文献2(DE 295 06 716 U1)は、三次元物体を生成的に製造する既知の後処理方法を開示する。この方法では、残留粉末を除去するために、エアガンを用いて三次元物体を空気で吹き払う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許発明第19937260号明細書
【特許文献2】独国実用新案第29506716号明細書
【発明の概要】
【0005】
本発明は、三次元物体内における残留粉末の除去を簡易化する三次元物体の生成的な製造方法を提供することを目的とする。この三次元物体は、請求項1の特徴を含む方法と請求項10の特徴を有するデータセットの生成方法により達成される。また、従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。
【0006】
本発明による三次元物体は、大きな負担なしに内部の残留粉末を放出できるという利点を有する。例えば細長い形状のブローチ加工部材は、少なくとも案内路を生成するために、三次元物体の通路又はある程度角度の付いた空洞における残留粉末の放出を可能にする。経路と空洞の全断面のそれぞれが徐々に露呈されるように粗粒の有無にかかわらず気流が加えられる場合には、この案内路は最小流量の流れを許可する。
【0007】
ブローチ加工部材は、三次元物体の製造時に用いるデータの要素である。ブローチ加工部材は、空洞の内壁に接触しないように配置される。均一に延在する内壁の経路の形状である空洞において、ブローチ加工部材は経路の中立軸と等しく又は少なくとも略沿って延長する。三次元物体の各空洞に対して、分離したブローチ加工部材を設けてもよい。同様に、一つの空洞において二つの部材を配置してもよい。すなわち、ブローチ加工部材がブローチ加工に適した角度の地点を示す分岐点で分かれる場合があり、空洞における開口部の両方のどちらからでも取り出しできる。
【0008】
ブローチ部材は細長い形状を有し得るが、この形状に限られない。三次元物体用のデータセットの要素である各種類の幾何学的形状を用いることが可能であり、案内路を露呈できる。ブローチ加工部材は平坦な通路断面用の帯板形状、波形形状、又はらせん形状、又はこれらを組み合わせた形状を有し得る。従って、大きな角度が付いた空洞、通路、又は湾曲した通路のそれぞれから残留粉末を放出可能である。
【0009】
本発明の更なる特徴及び目的は、以下の添付図面に基づく実施形態の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】三次元物体を製造する装置の概略図を示す。
【図2】図1の装置により製造される三次元物体の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、レーザ焼結装置として例示的に具体化された三次元物体3の製造装置の概略図を示す。
【0012】
上記レーザ焼結装置は、上部に開口を有し、その内に支持体5を備えるフレーム1と、製造される三次元物体3を支持し、垂直移動可能な支持体5を備える。フレーム1は、上部2において造形領域6を囲む。好ましくは、フレーム1と支持体5は、レーザ焼結装置から取り外し可能且つ交換可能な代替フレームを形成する。支持体5は、固化される各層の上側が造形領域6の面に沿うように、少なくとも造形領域6の面の下方において支持体5を垂直移動するリフト機構4と連結する。
【0013】
さらに、粉末材料11の層を塗工する塗工装置10が設けられる。粉末材料11として、全てのレーザ焼結可能な粉末が使用され得る。例えば、合成粉末、金属粉末、セラミック粉末、鋳物砂、及び複合材料粉末などが挙げられる。金属含有粉末状材料、任意の金属や合金を含む粉末材料、及び金属含有要素や非金属含有要素との混合物も考慮され得る。
【0014】
塗工装置10は、粉末材料11の層がそれぞれ支持体5の上方及び最後に固化された層の上方に沿うように、造形領域6の上方における所定の高さに移動される。さらに上記装置は、偏向手段9により造形領域6における任意の位置に集中されるレーザビーム8、8’を発生するレーザ7形状の放射装置を備える。従って、レーザビーム8、8’は、製造される三次元物体3の断面に対応する位置に粉末材料11を選択的に固化できる。
【0015】
レーザ焼結装置は、新たに塗工された粉末層を固化に必要な粉末材料11の加工温度近くに予熱するために、造形領域6の上方に加熱装置(不図示)を備える場合がある。
【0016】
参照符号100は、フレーム1、支持体5、及び塗工装置10が配置される筐体を示している。好ましくは、筐体100はレーザビーム8、8’導入用の入射口を上部領域に有する。また、好ましくは、筐体100は気密に形成され、その内部に不活性ガスを導入できる。さらに、本製造装置において制御装置40が提供される。この制御装置40によって、造形処理を行うため及びレーザ7によるエネルギーの影響を制御するために本製造装置が協調的に制御される。上記制御装置40は、三次元物体3を製造するために、三次元物体3の形状をCADデータなどで定義したデータセットを用いる。
【0017】
本製造装置の操作では、最初に、第1粉末層の所望の厚さ単位で、支持体5の上側が造形領域6の面の下方に沿うまで、リフト機構4により支持体5が降下される。次に、塗工装置10によって第1の粉末材料11の層が支持体5上に塗工され、平坦化される。加熱装置が設けられる場合には、加熱装置を用いて最上部の粉末層11の全体的な温度を固化に必要な加工温度より数℃低い温度に予熱できる。その後、制御装置40は、固化される粉末材料11の層の位置に対して偏向レーザビーム8、8’が選択的に作用するように偏向手段9を制御する。従って、粉末材料11はそれらの位置で固化及び/又は焼結され、これにより三次元物体3が生成される。
【0018】
次に、支持体5は、次層の所望の厚さ単位でリフト機構4により下降される。第2の粉末材料層は塗工装置10により塗工且つ平坦化され、さらにレーザビーム8、8’により選択的に固化される。これらの工程は所望の物体3が製造されるまで繰り返される。
【0019】
図2は、図1の装置により製造される三次元物体3の断面図を示す。
【0020】
三次元物体3は、自身の下面において開口部14に開けた空洞13を有する。三次元物体3の製造中、空洞13内に延長し、開口部14を介して空洞13から取り出し可能なブローチ加工部材12が追加的に形成されるように、粉末材料11が固化される。図2に示す実施形態では、空洞13は、三次元物体3の上面において第2の開口部14’にも開けている。ブローチ加工部材12は第2の開口部14’を介して空洞13からも取り出し可能である。
【0021】
このように、ブローチ加工部材12は、最終的な三次元物体3における固有の構成要素ではない。レーザ焼結処理により三次元物体3を完成させた後、ブローチ加工部材12が空洞13の開口部14から取り出され、案内路(pilot channel)が生成される。案内路は、レーザ焼結処理後に空洞13から取り除くべき残留粉末材料11の除去を簡略化する。ブローチ加工要素12が取り出された後、流体が開口部14、そして生成された案内路に加えられる。その結果、空洞13内の粉末材料11は除去され、空洞13の全断面が徐々に露呈される。例えば、流体は粗粒の有無に関わらず加圧空気であってもよく、三次元物体3の表面に沿って吹き付けられる。それにより粉末材料11は、ベンチュリノズル(Venturi-nozzle)と同様の動圧より、例えば開口部14から吸い込まれる。従って、上記加圧空気は他の開口部14’を介して空洞13内へ吸い込まれる。あるいは、加圧空気を開口部14内に直接吹き付けてもよい。その結果、残留粉末材料11が他の開口部14’から排出される。
【0022】
上述の流体は、加圧空気に限定されるものではなく、不活性ガスなどの他の気体、又は水や油などの液体であってもよい。
【0023】
図示の実施形態において、ブローチ加工部材12は細長い形状である。しかし、本発明はこの形状に限られず、ブローチ加工要素は帯板形状、波形形状、らせん形状、又は他の適当な形状を有し得る。例えば、波形形状においては、正弦波、矩形波、又は鋸歯状波の波形に振動する。
【0024】
ブローチ加工部材12の断面が、使用される粉末材料を考慮して適切に寸法決めされている場合、ブローチ加工部材12は折り曲げ可能であることが好ましい。これは、角度の付いた空洞からブローチ加工部材12を取り出す際に有利となる。例えば、取り出す際にブローチ加工部材12は伸縮され得る。
【0025】
同様に、ブローチ加工部材12を接合部と共に、又は複数のチェーンリンク(chain links)から成るチェーンとして形成することが考えられる。
【0026】
ブローチ加工部材12は、ブローチ加工部材12を取り出す際に大量の粉末材料11を取り込むかかり(barbs)又は押付部材(共に不図示)を備える場合がある。
【0027】
図示の実施形態において、ブローチ加工部材12は、ブローチ加工部材12の把持を容易にする把持部材15を有する。しかしながら、把持部材15を設けなくてもよい。
【0028】
図2から分かるように、ブローチ加工部材12は空洞13の内壁に接触しない。図示の実施形態において、空洞13は均一に延在する内壁を有し、通路13の形状となる。好ましくは、ブローチ加工部材12は実質的に通路13の中立軸に沿って延長する。従って、案内路の理想的な経路が確保される。しかしながら、ブローチ加工部材12の経路は、必ずしも通路13の中立軸に沿って延長する必要はない。
【0029】
図2では、第2のブローチ加工部材12’が追加的に図示されている。第2のブローチ加工部材12’は、第1のブローチ加工部材12とは分離して形成され、第3の開口部14’’から取り出し可能である。
【0030】
上記実施形態には図示されていないが、ブローチ加工部材12は、ブローチ加工部材12が三次元物体3の空洞の異なる枝に進む分岐点を有する場合がある。好ましくは、ブローチ加工部材12は、三次元物体におけるブローチ加工部材の非分岐部分に結合する開口部から取り出される。
【0031】
また、三次元物体3の一つの空洞13において、いくつかの分離したブローチ加工部材12を形成することが考えられる。同様に、分離したブローチ加工部材12は空洞13の異なる枝に部分的に延長することが考えられる。
【0032】
また、本発明は、三次元物体3のデータセットを生成する方法に関する。上記三次元物体3は、三次元物体3の生成的な製造方法を用いて製造される。例えば、上記データセットは三次元物体3のCADデータを含み、それによりレーザ焼結装置は三次元物体3を製造する。また、レーザ焼結装置は製造方法を実行する。レーザ焼結装置によって、粉末材料11は装置の支持体5又は先に塗工された層に繰り返し且つ層状に塗工される。粉末材料11はエネルギー放射8’により三次元物体3に対応する位置に固化される。三次元物体3は、自身の表面における開口部に開けた少なくとも一つの空洞13を有する。
【0033】
本発明による三次元物体3のデータセットを生成する方法は、以下のステップを含む。
【0034】
初めに、完成した三次元物体の寸法及び形状を定義するデータセットが一般的な方法で生成される。例えば、これらは三次元物体3の通常のCADデータである。
【0035】
次に、ブローチ加工部材12の寸法と形状を定義するデータを用いてデータセットが完成する。ブローチ加工部材12は、空洞13内に延長し、開口部14を介して空洞13から取り出し可能である。それにより、ブローチ加工部材12はレーザ焼結装置により固有の三次元物体3とともに製造される。
【0036】
本発明の技術的範囲は図示の実施形態に限定されず、提供される更なる変形や改良は請求項に規定する本発明の技術的範囲に属する。
【0037】
例えば、本発明の製造装置はレーザ焼結に適用できるだけでなく、原料と粉末材料の各々が塗工される各層に用いられる粉体に基づいた生成方法の全てに適用可能である。そこでは、エネルギー放射などにより粉末が固化される。エネルギー放射は必ずしもレーザビーム8’である必要はなく、例えば電子ビームや粒子ビームであってもよい。さらに、例えばマスクなど、全表面に対する放射が可能である。エネルギー放射に換えて、粉末材料を選択的に接着する接着剤や結合剤を各々所望の位置に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)製造装置の支持体(5)又は先に塗工された層に粉末材料(11)を層状に塗工し、
b)層における三次元物体(3)の断面に対応する位置に前記粉末材料(11)を選択的に固化し、
c)前記三次元物体(3)が完成するまで前記塗工と前記固化を繰り返すことを含む、三次元物体(3)の生成的な製造方法であって、
前記三次元物体(3)は、前記三次元物体(3)の表面における開口部(14)に開けた少なくとも一つの空洞(13)を有し、
前記粉末材料(11)は、前記空洞(13)内に延長し、前記開口部(14)を介して前記空洞から取り出し可能なブローチ加工部材(12)が形成されるように固化されることを特徴とする製造装置を用いた三次元物体(3)の生成的な製造方法。
【請求項2】
前記三次元物体(3)が完成した後、案内路を形成するために、前記空洞(13)の前記開口部(14)から前記ブローチ加工部材(12)を取り出し、
前記空洞(13)内の前記粉末材料(11)が除去されるように前記開口部(14)と前記案内路に流体を適用することをさらに含む請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ブローチ加工部材(12)は、帯板形状、波形形状、らせん形状、又はそれらを組み合わせた形状を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ブローチ加工部材(12)は、押付部材又はかかりを有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ブローチ加工部材(12)は、把持部材(15)を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ブローチ加工部材(12)は、前記空洞(13)の内壁に接触せず、且つ、均一に延在する内壁を有し通路の形状となる空洞(13)において、好ましくは前記経路の中立軸に実質的に沿って延長することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記空洞(13)は、前記三次元物体(3)の表面において少なくとも2つの開口部(14、14’)に開け、両方の開口部(14、14’)における前記空洞(13)から前記ブローチ加工部材(12)を取り出し可能なことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ブローチ加工部材(12)は、前記ブローチ加工部材(12)が前記三次元物体(3)の前記空洞(13)の異なる枝に進む分岐点を有することを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
複数のブローチ加工部材(12、12’)が、前記三次元物体(3)における一つ又は複数の空洞(13)に形成されることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
製造装置の支持体(5)又は先に塗工された層に粉末材料(11)を層状に繰り返し塗工し、三次元物体(3)に対応する位置に前記粉末材料(11)が固化される、生成的な製造方法により製造される三次元物体(3)のデータセットの生成方法であって、
前記三次元物体(3)の表面における開口部(14)に開けた少なくとも一の空洞(13)を備える完成した三次元物体(3)の形状を定義するデータセットを生成し、
前記空洞(13)内に延長し、前記開口部(14)を介して前記空洞(13)から取り出し可能なブローチ加工部材(12)の形状を定義するデータにより前記データセットを補足することを特徴とするデータセットの生成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−6379(P2012−6379A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−102781(P2011−102781)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(503267906)イーオーエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング イレクトロ オプティカル システムズ (50)
【Fターム(参考)】