説明

ブロー成形容器

【課題】 筒状の胴部を有するブロー成形容器の、胴部と底部との境界部分である脚部における局部延伸変形程度を、抑えると共に均等化することにより、脚部における極端な肉薄化の発生を防止することを目的とする。
【解決手段】 底部4の底面6に残存形成される十文字状の食い切り線9を、底面6の対角線t上に位置させると共に、対角線tの一つをパーティングラインP上に位置させ、局部延伸成形される底部4の脚部7に対し、各食い切り線9の先端を近接させ、もって脚部7における延伸量を小さくして、極端な肉薄発生を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイレクトブロー成形方法により成形された合成樹脂製ブロー成形容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
筒状の胴部を有するブロー成形容器を、ダイレクトブロー成形する技術としては、例えば特開平07−016912号公報に開示されているように、押出し機から押出されてきたパリソンを、一対の割り金型で挟み込み、この挟み込んだパリソンを割り金型内で膨らませてブロー成形容器に成形するものとなっており、ブロー成形において、胴部と底部との境界部分である脚部は、その壁構造が鋭角的に屈曲したものとなるので、局部延伸成形され易い部分となっている。
【特許文献1】特開平07−016912号公報
【0003】
こ特許文献1の技術にあっては、一対の割り金型でパリソンをピンチオフするので、成形される容器の底部に形成されるピンチオフ部による食い切り跡である食い切り線はパーティングライン上に位置することになる。
【0004】
この場合、食い切り線9の長さはパリソンの外径の1.6倍となるので、図8に示すように、一般には、この食い切り線9の端部からパーティングラインP上の脚部7までの距離は短く、このため脚部7部分が局部延伸により成形される部分であっても、局部延伸成形による肉薄化程度は少ない(図7(a)参照)。
【0005】
これに対して、食い切り線9と交差する方向に位置する、例えば四角筒の場合、対角線t上に位置する脚部7は、食い切り線9からの距離が大きく、このため局部延伸変形が集中することになり、局部延伸成形による肉薄化程度がきわめて顕著となる(図7(b)参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、従来の筒状の胴部を有するブロー成形容器にあっては、底部のパーティングライン上に位置する角部が、肉薄となり、このため容器の底部としての機械的強度を維持することができない恐れがあり、この傾向は、図8に示すように、胴部が四角である場合には顕著となる、と云う問題があった。
【0007】
また、ガラス瓶に似た硬さを出す場合には、全体の肉厚を大きくすれば良いのであるが、この場合、上記した底部の脚部の肉厚も大きくする必要があるので、パリソン全体の肉厚が大きくなり、成形性が低下する恐れがある、と云う問題がある。
【0008】
さらに、ガラス瓶に似たクリスタル感を得るために、全体を透明にした場合、底部における上記した脚部の極端な肉厚変化が、外観として現出するので、この極端な肉厚変化が、違和感を生じる恐れがある、と云う問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、ブロー成形容器の底部の脚部における局部延伸変形程度を、抑えると共に均等化することを技術的課題とし、もって上記した脚部における肉薄化の発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による合成樹脂製ダイレクトブロー成形容器は、下端を底部で塞いだ筒状の胴部の上端に、肩部を介して円筒状の口部を起立連設して構成されている。
【0011】
底部の底面には、残存形成される食い切り跡である少なくとも4本の食い切り線を、放射状に配列し、この食い切り線の直線状に配列した一対を、パーティングライン上に位置させている。
【0012】
放射状に配列された各食い切り線の先端は、それぞれが脚部の間近に位置することになる。
【0013】
このため、各食い切り線の先端付近に位置したパリソン部分は、大きく延伸変位することなく脚部に局部延伸成形されることになり、この脚部部分における局部延伸変形による肉薄化を、十分に抑えることができる。
【0014】
また、このように脚部における局部延伸変形程度を抑えることができるので、延伸成形そのものを無理なく達成することができる。
【0015】
本発明の別の構成は、胴部を四角筒状とし、4本の食い切り線を十文字に配列し、この食い切り線の直線状に配列した一対のそれぞれを、二つの対角線上に位置させた、ものである。
【0016】
胴部を四角筒状とし、食い切り線の直線状に配列した一対のそれぞれを、二つの対角線上に位置させたものにあっては、各食い切り線の先端を対角線上の脚部部分に近接させて位置させることになる。
【0017】
また本発明の別の構成は、全体を、妄りに撓み変形しない硬さを発揮する肉厚とした、ものである。
【0018】
全体を、妄りに撓み変形しない硬さを発揮する肉厚としたものにあっては、脚部における局部延伸変形程度が十分に抑えられているので、例え肉厚が大きくなっても、脚部の成形性が低下する恐れがない。
【0019】
また、本発明の別の構成は、全体を透明もしくは半透明とした、ものである。
【0020】
全体を透明もしくは半透明としたものにあっては、容器全体にクリスタル感を現出させることができる状態で、脚部における肉薄化程度が抑制されたものとなっているので、外部から観察される脚部の肉薄化程度に違和感を生じることがない。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明にあっては、底部における脚部部分における局部延伸変形による肉薄化を、十分に抑えることができるので、ダイレクトブロー成形容器における、底部の脚部における極端な肉薄化による機械的強度の不足発生を確実に阻止することができ、十分な機械的強度を得ることができる。
【0022】
また、底部の脚部における局部延伸変形程度を抑えることができるので、延伸成形そのものを無理なく達成することができ、これにより安定して成形することができる。
【0023】
胴部を四角筒状とし、4本の食い切り線を十文字に配列し、この食い切り線の直線状に配列した一対のそれぞれを、二つの対角線上に位置させたものにあっては、各食い切り線の先端を対角線上の脚部部分に近接させて位置させることができるので、極端な局部延伸が発生し易い対角線上の脚部部分における局部延伸変形の発生を確実に抑制することができる。
【0024】
全体を、妄りに撓み変形しない硬さを発揮する肉厚としたものにあっては、例え肉厚が大きくなっても、底部の脚部の成形性が低下する恐れがないので、肉厚を大きくした硬い容器を、無理なく成形することができる。
【0025】
全体を透明もしくは半透明としたものにあっては、外部から観察される底部における脚部部分の肉薄化程度に、違和感を生じることがないので、クリスタル感を容器の装飾として有効に作用させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態例を、図1〜図6を参照しながら説明する。
【0027】
図1〜図3に示した第一の実施形態例は、下端を底部4で塞いだ正四角筒状の胴部3の上端に、肩部2を介して、外周面に螺条を刻設した円筒状の口部1を、起立連設して構成されている。
【0028】
底部4は、その主体部分である底壁5の下面である底面6を、なだらかに湾曲したわずかに陥没することにより、周囲に脚部7を形成する凹曲面としており、この底面6にはパリソンの食い切り跡である四本の食い切り線9が、残存した状態で形成されている。
【0029】
各食い切り線9(以下、図3参照)は、十文字状に配列されており、直線状に並べられた一対の食い切り線9のそれぞれは、正四角形状の底面6の、仮想される別々の対角線t上に位置しており、そして一つの対角線tは、パーティングラインP上に位置している。
【0030】
この第一の実施形態例におけるブロー成形容器は、ダイレクトブロー成形法によって得られたものであり、パリソン12を押出機よりダイスを介して押し出し、このパリソン12を2分割の割金型が型締めして挟み込み、この割金型のキャビティーの底辺に配設の刃部であるピンチオフ部でパリソン12の下部を切断すると共に熱溶着シールし、金型の上部ではパリソンカッターで筒状のパリソンの上部を切断することで、有底筒体のパリソン12を形成し、次いで割金型の頂部より挿入のエアーノズルによってブローエアーを、パリソン12に吹き込み、ブロー成形する。
【0031】
ここで、ブロー成形金型のうち、ブロー成形容器の底部4を成形する部分を4分割した、底割金型10(図4参照)を使用することにより、十文字状の喰い切り線9を形成することができる。ここでブロー成形容器の底部5以外の部分、すなわち胴部3、肩部2そして口部1に相当する部分を形成する本体割金型は、従来どおり2分割したものを使用する。
【0032】
図4は、それぞれが刃部であるピンチオフ部11を有した、4分割の底割金型10によるパリソン12のピンチオフ工程を底面図で示した説明図であり、まず4分割された底割金型10のそれぞれのコーナー部が、パリソン12に対向し(図4(a))、さらにパリソン12の中心軸方向に移動し(図4(b))、パリソン12が十文字状にピンチオフされ(図4(c))、結果としてパリソン12の底部4の底面6に十文字状の喰い切り線9が形成される。なお、図4に2点鎖線で示したのは、パーティングラインPである。
【0033】
このように、パリソン12を、四つのピンチオフ部11で十文字状に食い切り保持した状態でブロー成形すると、成形される脚部7の内、仮想される延伸中心軸からの距離が小さい四つの「辺」部分に対し、この「辺」部分に比べて延伸中心軸からの距離が大きい角部8であっても、その肉厚の差が小さく抑えられている(図3参照)。
【0034】
PET等の透明な合成樹脂を用いて肉厚容器に成形した図示実施形態例にあっては、螺条を刻設した口部1の外径が16mm、内径が10mmであり、胴部3の高さが650mm、各辺の壁の巾が27mm、各壁の中央部の厚さが2.5mm、各壁の稜線に近い部分の厚さが1.5mmであり、そして底部6の底壁5中央部の厚さが3mm、脚部7の辺部分中央部の厚さが4mm、角部8における厚さが2mmであった。
【0035】
なお、図2に示すように、十文字状となった食い切り線9の交差点の直上に位置する、底壁5の内面側中央部分は、その周りよりも凹んで成形されているが、これは底割金型10のピンチオフ部11で食い切られる、パリソン12の切除部分からの熱影響により、冷却速度の遅れが中央部分に集中し、これにより冷却の遅れによる後収縮が発生したと思われる。
【0036】
図5と図6は、本発明の第二の実施形態例を示すもので、円筒状の胴部3を有しており、この場合も、従来の食い切り線が1本である場合に比べて、食い切り線9の数が増えた分、胴部3と底部4との境界部分である脚部7における局部延伸変形の均等化が図られ、図6に示されるように、肉薄化を効果的に抑制することができる。
【0037】
なお、食い切り線9の数は4本に特定されることはなく、胴部3を構成する角筒の角数分だけ設けるのが最適である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第一の実施形態例を示す、全体外観斜視図である。
【図2】図1に示した実施形態例の、図3中、A−A線に沿って一部縦断した斜め側面図である。
【図3】図1に示した実施形態例の、底面図である。
【図4】パリソンの食い切り動作を説明する、動作説明図である。
【図5】本発明の第二の実施形態例を示す、全体外観斜視図である。
【図6】図5に示した実施形態例の、底面図である。
【図7】従来例の一部縦断した、斜め部分側面図で、(a)は図8中、B−B線に沿った破断図、(b)は図8中、C−C船に沿った破断図である。
【図8】図7に示した従来例の、底面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 ;口部
2 ;肩部
3 ;胴部
4 ;底部
5 ;底壁
6 ;底面
7 ;脚部
8 ;角部
9 ;食い切り線
10;底割金型
11;ピンチオフ部
12;パリソン
t ;対角線
P ;パーティングライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端を底部で塞いだ筒状の胴部の上端に、肩部を介して円筒状の口部を起立連設したボトル状の合成樹脂製ダイレクトブロー成形品であって、前記底部の底面に残存形成される食い切り跡である少なくとも4本の食い切り線を放射状に配列し、該食い切り線の直線状に配列した一対をパーティングライン上に位置させたブロー成形容器。
【請求項2】
胴部を四角筒状とし、4本の食い切り線を十文字に配列し、該食い切り線の直線状に配列した一対のそれぞれを、二つの対角線上に位置させた請求項1に記載のブロー成形容器。
【請求項3】
全体を、妄りに撓み変形しない硬さを発揮する肉厚とした、請求項1または2に記載のブロー成形容器。
【請求項4】
全体を透明もしくは半透明とした請求項1〜3のいずれか1項に記載のブロー成形容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−202925(P2009−202925A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−49273(P2008−49273)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】