説明

ブーム構造

【課題】比較的簡単な構造で強度低下を防止してブーム下面へのライン状部材の配設作業を容易に行うことができるようにしたブーム構造を提供する。
【解決手段】走行体10と、この走行体10に少なくとも起伏動自在に設けられ長手方向に延びる内部空間を有した中空長尺形状のブーム30と、ブーム30の下面に設けられたシリンダブラケット70と、ブーム30を起伏動させるため一端部がシリンダブラケット70に枢結され他端部が走行体10に枢結された起伏シリンダ24とを有してなるブーム構造であって、ブーム30は、ブーム30の下面に形成され内部空間に連通する引出孔34と、内部空間内を延びて引出孔34から引き回されるライン状部材40とを有し、引出孔34が、シリンダブラケット70の取り付け位置の近傍であってブーム長手方向におけるシリンダブラケット70の先端部材72と立板部材73との間に位置するように設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業用車両の車体等に取り付けられるブームのブーム構造に関し、さらに詳細には、車体等からブームの先端に送油や送電などを行うライン状部材を配設するブームのブーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなブーム構造は、作業装置を搭載した作業用車両に設けられているのが一般的である。作業装置には、車体に旋回動自在に設けられた旋回台と、旋回台に起伏動自在に枢結されたブームと、ブームの先端部に設けられた作業台とを有して構成されているものがある。この作業装置のブームは、複数のブーム部材が入れ子式に構成され伸縮シリンダによりブーム全体が伸縮動可能であるとともに、起伏シリンダ(油圧シリンダ)により起伏動可能であり、この起伏シリンダのロッド側端部はブームの下面に設けられたシリンダブラケットに枢結され、起伏シリンダのボトム側端部は旋回台に枢結されている。そしてブームには、ブームの先端側に配されたアクチュエータに圧油を供給する送油ホースや、ブームの基端側と先端側との間を繋ぐ信号伝送線等からなるライン状部材が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−108997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、ブームに配設される送油ホースや信号伝送線等のライン状部材は、複数のブーム部材の内部を通って、この複数のブーム部材のうち最も基端側のブーム部材(以下、基端ブーム部材と称する)の下面に形成されたライン状部材の引出孔から外部に引き出され、ブーム延伸方向に沿って基端ブーム部材の下面において基端部まで延設されている。このとき、シリンダブラケットは、複数のブーム部材のうち最も基端側の基端ブーム部材の下面に設けられるのが主であり、上述のように基端ブーム部材の下面側にライン状部材を引き回す場合に、シリンダブラケットがこの引き回し作業の邪魔になって作業性を低下させるおそれがある。一方、シリンダブラケットにおいて、このシリンダブラケットと基端ブーム部材の下面との取付部にライン状部材を挿通可能な開口部を設けるなどしてライン状部材の引き回しの作業性を向上させる策も種々講じられてはいるが、この場合には、シリンダブラケットの基端ブーム部材への取付強度が低下するおそれがあるため、シリンダブラケットに補強部材を設けるなどして強度低下を防止する必要があり、製造コストアップやシリンダブラケットの重量が増大するという問題が生じる。
【0004】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、比較的簡単な構造で強度低下を防止してブーム下面へのライン状部材の配設作業を容易に行うことができるようにしたブーム構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明に係るブーム構造は、基台(例えば、実施形態における走行体10)と、基台に少なくとも起伏動自在に設けられ長手方向に延びる内部空間を有した中空長尺形状のブーム(例えば、実施形態における伸縮ブーム30)と、ブームの下面に設けられたシリンダブラケットと、ブームを起伏動させるため一端部がシリンダブラケットに枢結され他端部が基台に枢結された起伏シリンダとを有してなるブーム構造であって、ブームは、ブームの下面に形成され内部空間に連通する引出孔と、内部空間内を延びて引出孔から引き回されるライン状部材とを有し、引出孔が、シリンダブラケットの取り付け位置の近傍であってブーム長手方向におけるシリンダブラケットの一端部と他端部との間に位置するように設けられる。
【0006】
このように構成されたブーム構造において、シリンダブラケットは、ブームの下面にブーム幅方向に所定の間隔を有して対向配置されて上端部がブームの下面に固着され下方へ延びた一対の側板部及びこの一対の側板部の下端部間を繋ぐ下板部を有して有底容器状をなすボックス部材と、ボックス部材のブーム基端側の側面に固着されブーム幅方向に延びた平板状の立板部材と、立板部材のブーム基端側の側面およびブームの下面に固着されて上下に延び、起伏シリンダの一端部を枢結する平板状のボス部材(例えば、実施形態におけるボス板74)とを有し、立板部材には、ライン状部材をブーム長手方向に挿通可能な挿通孔(例えば、実施形態における切欠部73c)が、ブーム幅方向の配設位置を引出孔に対応位置させて形成されることが好ましい。
【0007】
また、シリンダブラケットが、ボックス部材のブーム先端側に固着されブーム幅方向に延びた平板状の先端部材を備え、引出孔を、先端部材と立板部材との間であって側板部のブーム幅方向の外側に位置させて構成されることが好ましい。
【0008】
さらに、引出孔が一対の側板部の前記上端部間に形成され、ボックス部材が引出孔を下方から覆うようにブームの下面に設けられて構成されることが好ましい。
【0009】
また、ブームの下面が、ブーム幅方向の両端部から内側に傾斜して下方へ延びる一対の傾斜面部と、一対の傾斜面部の下端部間を繋ぐ底面部とを有し、引出孔が、一対の傾斜面部のうち少なくとも一方に形成され、ライン状部材が、引出孔から傾斜面部に沿って配設されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るブーム構造によれば、ライン状部材をブーム下面において引出孔から外部に引き出してブームの基端部まで引き回すライン状部材の配設作業を容易に行うことができる。特に、比較的簡単な構造によりブーム下面への取付強度を低下させることなく上記ライン状部材の配設作業を容易にすることができるため、補強部材を追加することによる製造コストアップやシリンダブラケットの重量が増大することを防止することができる。
【0011】
さらに、ブーム下面にブーム幅方向の両端部から内側に傾斜して下方へ延びる傾斜面部を形成することにより、ライン状部材をこの傾斜面部に沿って配設させることにより、ライン状部材の外方への突出を抑えることができるため作業中に障害物に引っ掛かるなど作業の安全性が低下するのを防止することができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。まず、図2を用いて、本発明に係るブーム構造が適用される高所作業車の構成について説明する。高所作業車1は、タイヤ車輪11,11,…を備えて運転キャブ12から走行運転が可能なトラック式の走行体10と、この走行体10上に設けられた旋回台20と、この旋回台20から上方に延びて設けられた支柱21の上部にフートピン22により上下揺動自在に取り付けられた伸縮ブーム30と、この伸縮ブーム30の先端部に取り付けられた作業者搭乗用の作業台60とを有して構成される。
【0013】
旋回台20は、走行体10の上部に垂直軸まわり360度回動自在に取り付けられている。走行体10の内部には旋回モータ(油圧モータ)23が設けられており、この旋回モータ23を回転作動させることにより、図示しないギヤを介して旋回台20を水平旋回動させることができる。
【0014】
伸縮ブーム30は、旋回台20に起伏自在に枢支された基端ブーム部材31と、この基端ブーム部材31内に長手方向に伸縮移動自在に挿入された中間ブーム部材32と、この中間ブーム部材32内に長手方向に伸縮移動自在に挿入された先端ブーム部材33とからテレスコピック(入れ子式)に組み合わされ、内蔵された伸縮シリンダ(油圧シリンダ)37を伸縮作動させて伸縮ブーム30全体を長手方向に伸縮動させることができる。また、伸縮ブーム30は、最も基端側に位置する基端ブーム部材31の下面に固着されたシリンダブラケット70にロッド側端部が枢結され且つボトム側端部が旋回台20に枢結された起伏シリンダ(油圧シリンダ)24を伸縮作動させることにより伸縮ブーム30全体を上下面内で起伏動させることが可能である。
【0015】
基端ブーム部材31は、縦断面視において矩形状であり、図3に示すように、その下面のブーム幅方向(左右方向)の両端部には内側に傾斜して下方へ延びる一対の傾斜面部31aが形成され、この一対の傾斜面部31aの下端部間には底面部31bが繋がっている。傾斜面部31aおよび底面部31bを繋ぐ稜部には、これら傾斜面部31aおよび底面部31bに略上下方向に貫通する矩形状の引出孔34が形成されている。また、底面部31bには、後述する第2カバー部材76(図4参照)をネジ止めするためのボルト79と螺合可能なネジ孔31dを有するボス部が複数個突設されている。
【0016】
先端ブーム部材33の先端部にはブームヘッド38が取り付けられており、このブームヘッド38には揺動ピン51を介して垂直ポスト52の下端部が取り付けられている。この垂直ポスト52は伸縮ブーム30内に設けられた図示しないレベリング装置により、伸縮ブーム30の起伏角度によらず常時垂直姿勢が保持される構成となっている。
【0017】
作業台60は箱形状を有しており、外部に突出して設けられた作業台保持ブラケット61を介して垂直ポスト52の上端部に回動自在に取り付けられている。作業台保持ブラケット61の内部には首振りモータ(油圧モータ)62が設けられており、この首振りモータ62を回転作動させることにより、作業台60全体を垂直ポスト52まわりに首振り動(水平旋回動)させることができる。ここで、垂直ポスト52は上述のように常時垂直姿勢が保たれるため、結果として作業台60の床面は伸縮ブーム30の起伏角度によらず常時水平に保持される。
【0018】
走行体10の前後左右各箇所には作業中の走行体10を安定状態に支持するためのアウトリガジャッキ13,13,…が設けられている。各アウトリガジャッキ13は、上下方向に延びたアウタージャッキ(シリンダチューブ)13aと、このアウタージャッキ13a内に設けられて上下方向に伸縮自在なインナージャッキ(ピストンロッド)13bと、インナージャッキ13bの下端部に揺動自在に取り付けられたジャッキパッド13cとを有して構成されており、各アウトリガジャッキ13においてインナージャッキ13bを移動(伸長)させ、ジャッキパッド13cを地面に接地させて突っ張らせることにより走行体10を持ち上げ状態に支持させることができる。また、各アウトリガジャッキ13は走行体10の側方に張り出させることも可能であり、より高い走行体10の安定が得られるようになっている。
【0019】
作業台60上には作業台60の移動操作、すなわち旋回台20の旋回操作、伸縮ブーム30の起伏、伸縮操作および作業台60の首振り操作を行うための操作装置63が備えられている。作業台60に搭乗した作業者は、この操作装置63を操作することにより、旋回モータ23の回転作動、起伏シリンダ24の伸縮作動、伸縮シリンダ37の伸縮作動および首振りモータ62の回転作動の各操作を行って作業台60を所望位置に移動させることができる。
【0020】
このように構成された高所作業車1においては、図3に示すように、走行体10に内蔵された油圧ポンプ(図示しない)からの作動油を首振りモータ62等に供給する送油ホースや、作業台60上に設けられた操作装置63と走行体10上に設けられたコントローラ(図示しない)との間を繋ぐ信号伝送線等からなるライン状部材40が伸縮ブーム30に配設されている。このライン状部材40は、伸縮ブーム30の内部においてベルト状の保護案内部材(図示しない)により伸縮ブーム30の伸縮動に従って滑らかに案内されるように支持されるとともに、基端ブーム部材31の底面部31bに形成された引出孔34を通って伸縮ブーム30の外部に引き出され、シリンダブラケット70を介して傾斜面部31aの長手方向に沿って延びるように支持される。それでは、本発明に係るブーム構造の構成について2つの実施例を説明する。
【実施例1】
【0021】
まず、図1および図3〜4を用いて本発明に係るブーム構造の第1実施例について説明する。第1実施例に係るブーム構造は、図4に示すように、伸縮ブーム30、ライン状部材40、起伏シリンダ24、シリンダブラケット70、第1カバー部材75および第2カバー部材76を有して構成される。なお、伸縮ブーム30、ライン状部材40および起伏シリンダ24の構成については、すでに上述のように詳細説明をしているので重複説明はせず、シリンダブラケット70およびカバー部材75,76の構成を中心に説明する。
【0022】
シリンダブラケット70は、基端ブーム部材31の底面部31bに固着されてブーム延伸方向に延びる略箱形状のボックス部材71と、ボックス部材71のブーム延伸方向に開口する開口部を覆うようにしてボックス部材71のブーム延伸方向のそれぞれの端部に固着された先端部材72および立板部材73と、立板部材73に固着された一対のボス板74とを有して構成される。
【0023】
ボックス部材71は、基端ブーム部材31の下面に形成された一対の引出孔34(図1では左側の引出孔34のみが図示される)を左右の側方にそれぞれ位置させて基端ブーム部材31の底面部31bに固着されている。このボックス部材71は、ブーム幅方向に所定間隔を有して対向配置された一対の側板部71aと、この一対の側板部71aの下端間を繋ぐ下板部71bとを有して形成される。下板部71bには、ボルト79(図4参照)により第1カバー部材75を取り付けるためのネジ孔71cが形成されている。なお、このボックス部材71は、本実施例では一対の側板部71aと下板部71bとを溶接して成形されているが、板金を折り曲げ加工して一体に成形してもよいものである。
【0024】
ボックス部材71におけるブーム延伸方向(前後方向)の両端部には、このボックス部材71を前後から挟み込んでブーム延伸方向の開口を覆うようにして溶接により固着された先端部材72および立板部材73が設けられている。
【0025】
先端部材72は、上下方向に延びる板状に形成され、上述のようにボックス部材71の前端部に固着されるとともに、上端が基端ブーム部材31の下面および左右側面に跨って固着されている。
【0026】
立板部材73は、ボックス部材71の後端部に固着されるとともに上端が基端ブーム部材31の下面および左右側面に跨って固着され上下方向に延びる板状に形成された本体部73aと、基端ブーム部材31の底面部31bに固着され本体部73aの中央上部から折り曲げられてブーム基端側へ延びる接合部73bとを有して形成される。本体部73aには、ブーム延伸方向にライン状部材40を挿通可能な切欠部73cが形成されている。
【0027】
ボス板74は、側面視において矩形状に形成され、ブーム幅方向に所定間隔を有して一対に対向配置される。この左右一対のボス板74は、前端部が立板部材73の本体部73aに固着され、上端部が接合部73bに固着されている。また、ボス板74の中央部にはブーム幅方向に貫通する貫通孔74aが形成される。そして、この一対のボス板74間に起伏シリンダ24のロッド側端部が挿入され、このロッド側端部に形成された図示しない孔部をこのピン孔74aに連通させた状態でピン29を挿通して、ロッド側端部が上下に揺動自在に取り付けられている。
【0028】
第1カバー部材75は、図4に示すように、略箱形状に形成されており、先端部材72および立板部材73間に嵌め込まれ引出孔34を下方から覆った状態で、ボルト78によりボックス部材71に着脱可能に取り付けられる。
【0029】
第2カバー部材76は、基端ブーム部材31の下面(傾斜面部31a)において立板部材73から基端ブーム部材31の基端部までの間を覆うようにしてボルト79により着脱可能に取り付けられる。これにより、ライン状部材40のうち、基端ブーム部材31の下面側に露出される部分の全てを第1および第2カバー部材75,76で覆うことができ、且つ、ライン状部材40の外方への大きな突出を防止することができる。
【0030】
次に、このように構成されたブーム構造において、ライン状部材40を基端ブーム部材31の下面に引き回す場合の手順を説明する。まず、図1に示すように、伸縮ブーム30の内部に配設されたライン状部材40の先端部40a(図3参照)を引出孔34から伸縮ブーム30の外部に引き出す。このとき、引出孔34はカバー部材72などにより何ら覆われていない露出された状態であるため、作業者は引出孔34に手を入れてライン状部材40を容易に外部へ引き出すことができる。
【0031】
そして、この引き出されたライン状部材40をブーム延伸方向に沿って基端ブーム部材31の基端側に引っ張って、シリンダブラケット70の切欠部73に挿通させた後、基端ブーム部材31の傾斜面部31aに沿って基端ブーム部材31の基端部まで引き延ばすように移動させる。そして、図3に示すように、ライン状部材40の先端部40aを基端ブーム部材31の基端部に開口形成された下面開口部31cに通して内部に入り込ませ、基端ブーム部材31の上面部に開口形成された上面開口部(図示しない)から外部に引き出した後、基端ブーム部材31および支柱21の側部からそれぞれ側方に突出させて取り付けられた複数のライン保持部材80によって保持させる。このようなライン状部材40の引き回し作業は作業者によってなされるが、このブームの構造によれば引き回し作業が阻害されることがなく、ライン状部材40を基端ブーム部材31の引出孔34から外部に引き出して基端ブーム部材31の下面部に容易に引き回すことができる。なお、このライン状部材40の先端部には、例えば、油圧ポンプからの圧油を供給する送油ホースなどが継手やニップル等(図示しない)を介して接続される。
【0032】
そして、基端ブーム部材31の下面に第1カバー部材75をボルト78により取り付け、さらに、第2カバー部材76をボルト79により取り付けることにより、図4に示すように、引出孔34から外部に引き出され基端ブーム部材31の下面に沿って引き回されたライン状部材40を全て覆うことができる。また、ライン状部材40は、基端ブーム部材31下面の傾斜面部31aに沿って支持されるため、図5に示すように、ライン状部材40の外方への突出を低減させることができる。特に、ライン状部材40が基端ブーム部材31の側方へ突出するのが抑えられることにより、作業中に障害物に引っ掛かるなど作業の安全性が低下するのを防止することができる。
【0033】
以上、第1実施例に係るブーム構造によれば、比較的簡単な構造によりライン状部材40を基端ブーム部材31の下面に沿って容易に引き回すことができるとともに、ライン状部材40の外方への突出を防止することができる。
【実施例2】
【0034】
次に、本発明に係るブーム構造の第2実施例について、図6を用いて説明する。なお、第1実施例と同一の部材は同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。この第2実施例に係るブーム構造は、伸縮ブーム30、ライン状部材40、起伏シリンダ24、シリンダブラケット70′を有して構成される。以下、この第2実施例についても、第1実施例の説明の場合と同様にシリンダブラケット70の構成を中心に説明する。
【0035】
シリンダブラケット70′は、図6(A)に示すように、基端ブーム部材31の下面に固着されてブーム延伸方向に延びるボックス部材71′と、ボックス部材71′のブーム基端側に開口する開口部を覆うようにして固着された立板部材73′と、立板部材73′のブーム基端側側面に固着されて上下に延び、ブーム幅方向に所定間隔を有して対向配置された一対のボス板74′と、基端ブーム部材31の傾斜面部31aに固着されて立板部材73′の左右両端部を基端ブーム部材31の傾斜面部31aに固定する取付板77とを有して構成される。
【0036】
ボックス部材71′は、ブーム幅方向に所定間隔を有して対向配置されて側面視において三角形状の一対の側板部71a′と、この一対の側板部71a′の下面間を繋ぐ平面視において略台形状の下板部71b′とを有して形成されている。一対の側板部71b′には、略ブーム幅方向に貫通した矩形状の作業用孔71dがそれぞれ形成されている。
【0037】
立板部材73′は、ボックス部材71′の開口部を覆う平面視において略台形状(ボックス部材71′の開口部と相似形の略台形状)の本体部73a′と、この本体部73a′の上部から折り曲げられてブーム基端側へ延びる接合部73b′とを有している。本体部73a′には、図6(B)に示すように、ブーム延伸方向に貫通した貫通孔73dが左右に一対形成されており、この貫通孔73dはライン状部材40をブーム延伸方向に挿通可能である。
【0038】
このように構成された第2実施例のブーム構造において、ライン状部材40を基端ブーム部材31の下面に引き回す場合には、まず、伸縮ブーム30の内部に配設されたライン状部材40の先端部40a(図6ではライン状部材40は不図示)を引出孔34から伸縮ブーム30の外部に引き出した後、ブーム延伸方向に沿って基端ブーム部材31の基端側に引っ張って、立板部材73′の挿通孔73dに挿通させる。このとき、ボックス部材71′には作業用孔71dが形成されているため、作業者はこの作業用孔71dからボックス部材71′内部に手を入れてライン状部材40を容易に立板部材73′の貫通孔73dに通すことができる。そして、ライン状部材40の先端部を基端ブーム部材31の傾斜面部31aに沿って基端ブーム部材31の基端部まで引き延ばすように移動させることによりライン状部材40を基端ブーム部材31の下面に引き回すことができる。また、ボックス部材71′は引出孔34を覆うように設けられるため、第1実施例のブーム構造のように第1カバー部材75を設けなくても、シリンダブラケット70′がライン状部材40のうち当該部分(第1カバー部材75により覆われる部分)を覆って露出を防止することができる。
【0039】
以上、第2実施例に係るブーム構造によっても、比較的簡単な構造によりライン状部材40を基端ブーム部材31の下面に沿って容易に引き回すことができる。なお、第2実施例のブーム構造においても、第1実施例のブーム構造と同様に第2カバー部材76を設けて、基端ブーム31の下面においてライン状部材40を覆うことにより、ライン状部材40の露出をより防止することが好ましい。
【0040】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、本発明の範囲は上述の実施形態に示されたものに限定されない。例えば、上述の実施形態においては、伸縮ブーム30に配設されるライン状部材40が送油ホースおよび信号伝送線からなる場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ライン状部材としては光ファイバーケーブル等、他の構成のライン状部材にも勿論用いることができる。
【0041】
また、上記実施形態においては、ブームは長手方向に伸縮する直伸式の伸縮ブーム30であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、先端屈伸型の伸縮ブームや屈伸式ブーム等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施例に係るブーム構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るブーム構造を備えた高所作業車の側面図である。
【図3】第1実施例に係るブーム構造を示す斜視図であって、第1および第2カバー部材が取り付けられる前の状態を示す。
【図4】第1実施例に係るブーム構造を示す斜視図であって、第1および第2カバー部材が取り付けられた状態を示す。
【図5】基端ブーム部材に第2カバー部材が取り付けられた状態を示す要部断面図である。
【図6】本発明の第2実施例に係るブーム構造の一部を構成するシリンダブラケットを示し、(A)は、シリンダブラケットの斜視図であり、(B)は、シリンダブラケットの底面部である。
【符号の説明】
【0043】
1 高所作業車
10 走行体(基台)
24 起伏シリンダ
30 伸縮ブーム(ブーム)
31 基端ブーム部材
31a 傾斜面部
31b 底面部
40 ライン状部材
70,70′ シリンダブラケット
71,71′ ボックス部材
72 先端部材
73,73′ 立板部材
73c 切欠部(挿通孔)
73d 貫通孔(挿通孔)
74,74′ ボス板(ボス部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、前記基台に少なくとも起伏動自在に設けられ長手方向に延びる内部空間を有した中空長尺形状のブームと、前記ブームの下面に設けられたシリンダブラケットと、前記ブームを起伏動させるため一端部が前記シリンダブラケットに枢結され他端部が前記基台に枢結された起伏シリンダとを有してなるブーム構造であって、
前記ブームは、前記ブームの下面に形成され前記内部空間に連通する引出孔と、前記内部空間内を延びて前記引出孔から引き回されるライン状部材とを有し、
前記引出孔が、前記シリンダブラケットの取り付け位置の近傍であってブーム長手方向における前記シリンダブラケットの一端部と他端部との間に位置するように設けられたことを特徴とするブーム構造。
【請求項2】
前記シリンダブラケットは、前記ブームの下面にブーム幅方向に所定の間隔を有して対向配置されて上端部が前記ブームの下面に固着され下方へ延びた一対の側板部及び前記一対の側板部の下端部間を繋ぐ下板部を有して有底容器状をなすボックス部材と、前記ボックス部材のブーム基端側の側面に固着されブーム幅方向に延びた平板状の立板部材と、前記立板部材のブーム基端側の側面および前記ブームの下面に固着されて上下に延び、前記起伏シリンダの前記一端部を枢結する平板状のボス部材とを有し、
前記立板部材には、前記ライン状部材をブーム長手方向に挿通可能な挿通孔が、ブーム幅方向の配設位置を前記引出孔に対応位置させて形成されていることを特徴とする請求項1に記載のブーム構造。
【請求項3】
前記シリンダブラケットが、前記ボックス部材のブーム先端側に固着されブーム幅方向に延びた平板状の先端部材を備え、
前記引出孔を、前記先端部材と前記立板部材との間であって前記側板部の前記ブーム幅方向の外側に位置させて構成されたことを特徴とする請求項2に記載のブーム構造。
【請求項4】
前記引出孔が、前記一対の側板部の前記上端部間に形成され、
前記ボックス部材が、前記引出孔を下方から覆うように前記ブームの下面に設けられたことを特徴とする請求項2に記載のブーム構造。
【請求項5】
前記ブームの下面が、ブーム幅方向の両端部から内側に傾斜して下方へ延びる一対の傾斜面部と、前記一対の傾斜面部の下端部間を繋ぐ底面部とを有し、
前記引出孔が、前記一対の傾斜面部のうち少なくとも一方に形成され、
前記ライン状部材が、前記引出孔から前記傾斜面部に沿って配設されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のブーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−184818(P2009−184818A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29725(P2008−29725)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000116644)株式会社アイチコーポレーション (168)
【Fターム(参考)】