説明

ブーム

【課題】外箱部材の応力を分散できるうえに加工の容易なブームを提供する。
【解決手段】柱状空間を有する外箱部材17と、この柱状空間に入れ子状に挿入される内箱部材18と、内箱部材18の後部に取付けられて外箱部材17の内面に摺接するスライド部材2と、を備えるブームである。そしてこのブームは、外箱部材17の断面の上板部171両端が折り曲げられて斜板部174が形成されるとともに、スライド部材2は少なくとも斜板部174の曲げ部近傍174a,174aに摺接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業車や移動式クレーンなどの作業車のブームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高所作業車や移動式クレーンなどの作業車のブームとして、様々な断面形状を有するものが知られており、さらに外箱部材と内箱部材の間にスライド部材が配置されたものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、外箱部材と内箱部材の間に設置するスライド部材として、上面スライダと側面スライダとを備えており、それらがブーム長手方向(軸方向)に離れて取り付けられた構成が開示されている。この構成によれば、外箱部材が自由に弾性変形するため内部応力を抑えることができる。
【0004】
また、特許文献2には、上部セクションと下部セクションとを溶接して中空のブームを形成し、上部セクションの垂直部に長手方向に沿って間隔をあけて矩形や小判型の補強凹部をプレス成形した構成が開示されている。この構成によれば、溶接量を減らしつつ座屈強度を高めて、ブーム断面の大型化とブームの軽量化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2801573号公報
【特許文献2】特開2000−16763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1の構成では、上板部のスライドプレート反力が大きくなり疲労強度が問題となるため、板厚を厚くしたり補強板を貼ったりする必要があった。
【0007】
また、前記特許文献2の構成では、強度は高くなるものの、上半部と下半部の二枚板構造となるため、加工に時間がかかるうえに費用も高くなるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、外箱部材の応力を分散できるうえに加工の容易なブームを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明のブームは、柱状空間を有する外箱部材と、前記柱状空間に入れ子状に挿入される内箱部材と、前記内箱部材の後端部に取付けられて前記外箱部材の内面に摺接するスライド部材と、を備えるブームであって、前記外箱部材の断面の上板部両端が下方へ折り曲げられて斜板部が形成されるとともに、前記スライド部材は少なくとも前記斜板部の上下両曲げ部近傍に摺接することを特徴とする。
【0010】
また、前記スライド部材は、前記外箱部材の断面の上板部に摺接する構成とすることができる。
【0011】
さらに、前記スライド部材は、前記外箱部材の断面の側板部に摺接する構成とすることができる。
【0012】
そして、前記スライド部材は、前記外箱部材の断面の前記斜板部の前記上下両曲げ部近傍のみに摺接する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明のブームは、外箱部材と内箱部材とスライド部材とを備えるブームであって、外箱部材の断面の上板部両端が下方へ折り曲げられて斜板部が形成されるとともに、スライド部材は少なくとも斜板部の上下両曲げ部近傍に摺接することで、外箱部材に生じる応力を分散できるうえに、外箱部材の外面に引張応力が生じるため亀裂が生じても目視によって確認しやすくなる。
【0014】
また、スライド部材は、外箱部材の断面の上板部に摺接する構成とすることで、上板部の移動や変形を抑制して、ブームの縦方向の曲げに対する強度を高めることができる。
【0015】
さらに、スライド部材は、外箱部材の断面の側板部に摺接する構成とすることで、側板部の移動や変形を抑制して、ブームの横方向の座屈に対する強度を高めることができる。
【0016】
そして、スライド部材は、外箱部材の断面の斜板部の上下両曲げ部近傍のみに摺接する構成とすることで、斜板部の中央部を押圧しなくなるため、外箱部材の内面に引張応力が生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1のブームの構成を説明する断面図である。(a)は断面図であり、(b)は(a)のA部を拡大して説明する拡大断面図である。
【図2】高所作業車の全体構成を説明する側面図である。
【図3】ブームの構成を説明する斜視図である。(a)は斜視図であり、(b)は力の作用図である。
【図4】外箱部材に発生する応力状態を説明する説明図である。
【図5】実施例2のブームの構成を説明する断面図である。(a)は断面図であり、(b)は(a)のA部を拡大して説明する拡大断面図である。
【図6】実施例3のブームの構成を説明する断面図である。(a)は断面図であり、(b)は(a)のA部を拡大して説明する拡大断面図である。
【図7】実施例4のブームの構成を説明する断面図である。(a)は断面図であり、(b)は(a)のA部を拡大して説明する拡大断面図である。
【図8】実施例5のブームの構成を説明する側面図である。(a)は断面図であり、(b)は(a)のA部を拡大して説明する拡大断面図である。
【図9】実施例5のブームの構成を分解して説明する分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0019】
まず、図2を用いて本発明のブーム14を備える高所作業車1の全体構成を説明する。なお、本実施例では、本発明のブーム14を備える作業車として高所作業車1について説明するが、これに限定されるものではなく、ラフテレーンクレーンなどの移動式クレーンにも本発明のブーム14を適用できる。
【0020】
本実施例の高所作業車1は、図2に示すように、走行機能を有する車両の本体部分である車体10と、車体10の前方に取付けられた走行用キャビン11と、車体10に旋回可能に取り付けられた旋回台12と、旋回台12に立設されたブラケット13と、ブラケット13に取り付けられたブーム14と、車体10の四隅に設けられた転倒防止用のアウトリガ9,・・・と、を備えている。
【0021】
また、ブーム14は、基端ブーム17と中間ブーム18と先端ブーム19によって3段の入れ子式に構成されており、内部の伸縮シリンダ(不図示)を伸縮することによって伸縮できるようになっている。
【0022】
この基端ブーム17及び中間ブーム18(先端ブーム19も同様)は、図1に示すように、一枚の高張力鋼板をプレス加工により八角形の筒状に折り曲げ、上板部171,181の中央近傍で接合部を溶接によって繋ぎ合わせて形成される。
【0023】
すなわち、基端ブーム17及び中間ブーム18(先端ブーム19も同様)は、上半部を4回折り曲げるとともに、下半部も4回折り曲げることによって、全体として八角形断面に形成されている。
【0024】
また、基端ブーム17の基端側は、ブラケット13に水平に設置された軸に搖動可能に取り付けられており、ブラケット13と基端ブーム17との間に架け渡された起伏シリンダ16を伸縮することでブーム14全体を起伏させることができる。
【0025】
さらに、先端ブーム19の先端側には、作業者が高所作業を行うために搭乗する作業台としてのバケット15が左右に搖動自在に取り付けられている。
【0026】
加えて、このブーム14は、外箱部材としての基端ブーム17と、この基端ブーム17に入れ子状に挿入される内箱部材としての中間ブーム18と、に加えて、中間ブーム18の後部に取付けられて外側の基端ブーム17の内面に摺接するスライド部材2,3,4と、を備えている。なお、外箱部材としての中間ブーム18と内箱部材としての先端ブーム19の間にも略同様のスライド部材が配置されるがここでは説明を省略する。
【0027】
そして、本発明のブーム14では、図1(a)に示すように、基端ブーム17の断面の上板部171の両端が下方に折り曲げられて一対の斜板部174,174が左右対称に形成されるとともに、スライド部材2はこの斜板部174の曲げ部近傍174a,174aに摺接している。
【0028】
この斜板部174は、図1(a)に示すように、上板部171の両端を中央近傍に対して所定の折曲角度である45°下側に折り曲げて形成される。なお、この折曲角度としては、30°〜60°であればある程度の応力分散効果を得ることができるが、略45°にすることが好ましい。
【0029】
また、断面の上部に配置されるスライド部材2は、図1(b)に示すように、ナイロン等の合成樹脂や金属によって所定の長さと厚みを有する板状に形成されるもので、ビス(不図示)などによって中間ブーム18の斜板部184に固定されている。
【0030】
すなわち、このスライド部材2は、中間ブーム18の基端ブーム17に対する摩擦を減少させてスムーズに摺動できるように、基端ブーム17と中間ブーム18の間に形成された空隙の幅に相当するだけの厚みを有して形成されている。
【0031】
そして、本実施例のスライド部材2は、図1(b)に示すように、斜板部174において、曲げ部近傍174a,174aと、中央近傍174bと、の両方に摺動可能に接触している。
【0032】
より詳細には、スライド部材2は、斜板部174の曲げ部176,177からやや内側の曲げ部近傍174a,174aには摺接しているものの、折り曲げ位置である曲げ部176,177自体には接触していない。
【0033】
さらに、スライド部材2は、ブーム軸方向については図3(a)に示すように、バケット15からのモーメント荷重を基端ブーム17に伝達できるように、中間ブーム18の後端部近傍に取り付けられている。
【0034】
したがって、ブーム14の自重に加えて、図3(b)に示すように、基端ブーム17の先端近傍の下部のスライド部材5を支点としてW×a=R2×bが成立するから、R2=a/b×Wの反力が基端ブーム17の上部に集中して作用する。
【0035】
なお、この斜板部174を上板部171の面方向に射影した曲げ幅Bと板厚tとの関係は、曲げ部加工性、摺接面圧、摺接作動性からB/t=5以上となるように構成することが好ましい。
【0036】
さらに、側部に配置されるスライド部材3及び下部に配置されるスライド部材4は、それぞれビス(不図示)などによって中間ブーム18の側板部183及び下部の斜板部185に取付けられている。
【0037】
次に、本実施例のブーム14の作用について説明する。
【0038】
このように、本発明のブーム14は、外箱部材としての基端ブーム17と内箱部材としての中間ブーム18とスライド部材2,3,4とを備えるブーム14である。
【0039】
このため、外箱部材としての基端ブーム17と内箱部材としての中間ブーム18との間の摩擦を減少させて、中間ブーム18をスムーズに移動させることができる。
【0040】
そして、基端ブーム17の断面の上板部171両端が下方へ折り曲げられて斜板部174が形成されるとともに、スライド部材2は少なくとも斜板部174の上下両側の曲げ部近傍174a,174aに摺接することで、基端ブーム17に生じる応力を分散できるうえに、基端ブーム17の外面に引張応力が生じるため亀裂が生じても目視によって確認しやすくなる。
【0041】
つまり、図3(b)に示すように、基端ブーム17にはスライド部材2を通じて中間ブーム18の基端部から上向き(内面から外面向き)の力が作用することになる。
【0042】
そうすると、この力に反力を及ぼすために基端ブーム17には、図4に示すような内部応力が発生する。なお、この図4の中で、斜板部174に描いた曲線は、引張応力度の等しい点を連ねた等引張応力度線であり、外面側から内面側に向かって引張応力度が徐々に減少していく様子を表している。
【0043】
この図4に示すように、本実施例の斜板部174とスライド部材2とを備える構成によれば、従来のような曲げ部176,177内面側の引張応力は抑制され、斜板部174の中央近傍174bの外面側と曲げ部近傍174a,174aの外面側に引張応力が生じることになる。また、生じる引張応力の絶対値も従来に比べて小さいものとなっている。
【0044】
これは、スライド部材2が斜板部174を斜めに押し上げることによって、上板部171と側板部173の両方を押し広げることになるため、どちらか一方を押す場合と比べて全体を均一に押すことになって内側が引張られないことによる。
【0045】
このような作用から、疲労強度確保のために従来行われていた全体の板厚を厚くしたり部分的に補強板を貼ったりする方法を採用しなくてもよく、ブーム14を構成する基端ブーム17や中間ブーム18を一枚板で製作することができる。
【0046】
また、本願発明では、一枚板で製作するためプレス加工費、ひずみ取り、繋ぎ合わせの溶接(一箇所)を減らすことができるうえ、板厚を厚くしたり補強板を貼ったりする必要がなくなるため、軽量化を図りつつ、二枚板で製作する場合と比べてプレス加工、ひずみ取り、溶接に要する費用を抑制することができる。
【実施例2】
【0047】
以下、図5を用いて、前記実施例とは別のスライド部材2Aを備えるブーム14について説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0048】
まず、構成について説明すると、本実施例のブーム14では、図5(a)に示すように、基端ブーム17の上板部171の両端が下方へ折り曲げられて斜板部174,174が形成されるとともに、スライド部材2Aは斜板部174の曲げ部近傍174a,174aに摺接している。
【0049】
そして、このスライド部材2Aは、図5(b)に示すように、合成樹脂又は金属によって折り曲げた板状に形成されるもので、斜板部174に摺接する斜板摺接部21と、斜板摺接部21に対して45°の角度をもって折り曲げられて上板部171に摺接する上板摺接部22と、を一体に備えて形成されている。
【0050】
したがって、スライド部材2Aの斜板摺接部21は、斜板部174において、曲げ部近傍174a,174aと、中央近傍174bと、の両方に摺動可能に接触している。
【0051】
さらに、スライド部材2Aの上板摺接部22は、外箱部材としての基端ブーム17の断面の上板部171に摺動可能に接触している。
【0052】
次に、作用について説明すると、本実施例のブーム14は、斜板部174が形成されるとともに、スライド部材2Aは斜板部174の曲げ部近傍174a,174aに摺接することで、基端ブーム17に生じる応力を分散できるうえに、基端ブーム17の外面に引張応力が生じるため亀裂が生じても目視によって確認しやすくなる。
【0053】
加えて、スライド部材2Aは、外箱部材としての基端ブーム17の断面の上板部171に摺接する上板摺接部22を有するため、上板部171の移動や変形を抑制して、ブーム14の縦方向の曲げに対する強度を高めることができる。
【0054】
なお、この他の構成および作用効果については、前記実施の形態と略同様であるため説明を省略する。
【実施例3】
【0055】
以下、図6を用いて、前記実施例とは別のスライド部材2Bを備えるブーム14について説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0056】
まず、構成について説明すると、本実施例のブーム14では、図6(a)に示すように、基端ブーム17の上板部171の両端が下方へ折り曲げられて斜板部174,174が形成されるとともに、スライド部材2Bは斜板部174の曲げ部近傍174a,174aに摺接している。
【0057】
そして、このスライド部材2Bは、図6(b)に示すように、合成樹脂又は金属によって折り曲げた板状に形成されるもので、斜板部174に摺接する斜板摺接部21と、斜板摺接部21に対して45°の角度をもって折り曲げられて側板部173に摺接する側板摺接部23、を一体に備えて構成されている。
【0058】
したがって、スライド部材2Bの斜板摺接部21は、斜板部174において、曲げ部近傍174a,174aと、中央近傍174bと、の両方に摺動可能に接触している。
【0059】
さらに、スライド部材2Bの側板摺接部23は、外箱部材としての基端ブーム17の断面の側板部173に摺動可能に接触している。
【0060】
次に、作用について説明すると、本実施例のブーム14は、斜板部174が形成されるとともに、スライド部材2Bは斜板部174の曲げ部近傍174a,174aに摺接することで、基端ブーム17に生じる応力を分散できるうえに、基端ブーム17の外面に引張応力が生じるため亀裂が生じても目視によって確認しやすくなる。
【0061】
加えて、スライド部材2Bは、外箱部材としての基端ブーム17の断面の側板部173に摺接する側板摺接部23を有するため、側板部173の移動や変形を抑制して、ブーム14の横方向の座屈に対する強度を高めることができる。
【0062】
なお、この他の構成および作用効果については、前記実施の形態と略同様であるため説明を省略する。
【実施例4】
【0063】
以下、図7を用いて、前記実施例とは別のスライド部材2Cを備えるブーム14について説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0064】
まず、構成について説明すると、本実施例のブーム14では、図7(a)に示すように、基端ブーム17の上板部171の両端が下方へ折り曲げられて斜板部174,174が形成されるとともに、スライド部材2Cは斜板部174の曲げ部近傍174a,174aのみに摺接している。
【0065】
そして、このスライド部材2Cは、図7(b)に示すように、合成樹脂又は金属によって板状に形成されるもので、斜板部174に摺接する斜板摺接部21と、この斜板摺接部21の幅方向の中央近傍に設けた凹部21aと、を一体に備えて形成されている。
【0066】
したがって、スライド部材2Cの斜板摺接部21は、斜板部174において、曲げ部近傍174a,174aのみに摺動可能に接触しており、斜板部174の中央近傍174bには接触していない。
【0067】
次に、作用について説明すると、本実施例のブーム14は、斜板部174が形成されるとともに、スライド部材2Cは斜板部174の曲げ部近傍174a,174aに摺接することで、基端ブーム17に生じる応力を曲げ部近傍174a,174aにのみ負荷できるうえに、基端ブーム17の外面に引張応力が生じるため亀裂が生じても目視によって確認しやすくなる。
【0068】
加えて、スライド部材2Cは、外箱部材としての基端ブーム17の断面の斜板部174の曲げ部近傍174a,174aのみに摺接するため、曲げ部近傍174a,174aに荷重を伝達して外側に押し広げつつ中央近傍174bは押し広げないことで、基端ブーム17の曲げ部176,177の内側に引張応力が生じにくくなる。
【0069】
なお、この他の構成および作用効果については、前記実施の形態と略同様であるため説明を省略する。
【0070】
また、この実施例4では、スライド部材2Cは単一の部材として形成される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、2枚に分割して形成されるものであってもよい。
【実施例5】
【0071】
以下、図8,9を用いて、前記実施例とは別のスライド部材2Dを備えるブーム14について説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0072】
まず、構成について説明すると、本実施例のブーム14では、図8(a)に示すように、基端ブーム17の上板部171の両端が下方へ折り曲げられて斜板部174,174が形成されるとともに、スライド部材2Dは斜板部174の曲げ部近傍174a,174aに摺接している。
【0073】
そして、このスライド部材2Dは、図8(b),図9に示すように、合成樹脂又は金属によって板状に形成されて斜板部174に摺接する斜板摺接部21と、中間ブーム18に溶接されて斜板摺接部21を支持する台座としてのリテーナ24と、斜板摺接部21と斜板部174との間隔を調整する薄い板状のシム25,26と、を備えている。
【0074】
このリテーナ24は、力を伝達する本体部の両側に直立部を有しており、この直立部にはボルト孔が設けられて、ボルト27は斜板摺接部21の端面に設けた長孔に係合するようになっている。
【0075】
また、一方のシム26には、板面の中央近傍に開口部26aが設けられており、反力を受けた斜板摺接部21の中央近傍が内側に変形できるようになっている。
【0076】
次に、作用について説明すると、本実施例のブーム14は、斜板部174が形成されるとともに、スライド部材2Dは斜板部174の曲げ部近傍174a,174aのみに摺接する。
【0077】
シム26には、中央近傍に開口部26aがあるため、スライド部材2Dは、反力を受けると中央近傍が窪むように変形して、外箱部材としての基端ブーム17の断面の斜板部174の曲げ部近傍174a,174aにのみ反力を受けることになる。
【0078】
そこで、基端ブーム17に生じる応力を曲げ部近傍174a,174aにのみ負荷できるうえに、基端ブーム17の外面に引張応力が生じるため亀裂が生じても目視によって確認しやすくなる。
【0079】
このため、曲げ部近傍174a,174aにのみ荷重を伝達して外側に押し広げつつ中央近傍174bは押し広げないことで、基端ブーム17の曲げ部176,177の内側に引張応力が生じにくくなる。
【0080】
なお、この他の構成および作用効果については、前記実施の形態と略同様であるため説明を省略する。
【0081】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0082】
例えば、前記実施例2,3では、斜板摺接部21と、上板摺接部22及び側板摺接部23は一体に形成される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、別部材として形成されてブーム14軸方向にずらして配置することもできる。
【0083】
また、前記実施例では、ブーム14が基端ブーム17、中間ブーム18及び先端ブーム19の3段で構成されている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、2段であっても4段以上であっても本発明を適用可能である。
【0084】
さらに、前記実施例では、ブーム14の下半部が4回曲げられて全体として八角形断面に形成される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、下半部の断面形状として3回曲げ、4回曲げ、5回曲げ以上の多点曲げであっても本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0085】
1 高所作業車
14 ブーム
17 基端ブーム(外箱部材)
171 上板部
174 斜板部
174a 曲げ部近傍
174b 中央近傍
18 中間ブーム(内箱部材)
181 上板部
184 斜板部
2,2A,2B,2C,2D スライド部材
21 斜板摺接部
21a 凹部
22 上板摺接部
23 側板摺接部
24 リテーナ
25 シム
26 シム
26a 開口部
3,4,5 スライド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状空間を有する外箱部材と、前記柱状空間に入れ子状に挿入される内箱部材と、前記内箱部材の後端部に取付けられて前記外箱部材の内面に摺接するスライド部材と、を備えるブームであって、
前記外箱部材の断面の上板部両端が下方へ折り曲げられて斜板部が形成されるとともに、前記スライド部材は少なくとも前記斜板部の上下両曲げ部近傍に摺接することを特徴とするブーム。
【請求項2】
前記スライド部材は、前記外箱部材の断面の上板部に摺接することを特徴とする請求項1に記載のブーム。
【請求項3】
前記スライド部材は、前記外箱部材の断面の側板部に摺接することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のブーム。
【請求項4】
前記スライド部材は、前記外箱部材の断面の前記斜板部の前記上下両曲げ部近傍のみに摺接することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のブーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−131956(P2011−131956A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290759(P2009−290759)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】