説明

プッシュスイッチ

【課題】作動ストロークを長めに設定してもハウジングの高さ寸法を抑制でき、かつ過大な操作荷重が加わっても導通の信頼性が損なわれないロック機構付きのプッシュスイッチを提供すること。
【解決手段】プッシュスイッチ1は、操作スライダ3と摺動子5付きアクチュエータ7および復帰ばね8をハウジング6で支持してなる本体部2と、本体部2に内蔵されたハートカム機構(係合ピン9とカム溝3a)と、操作スライダ3に冠着された操作ノブ4と、回路基板14に設けられて摺動子5が接離可能な固定接点10a等を備えており、操作スライダ3を上下動させるとアクチュエータ7が駆動されて横方向へスライド移動する。このハウジング6は回路基板14を保持する外殻ケース(上ケース11)にスナップ結合によって取り付けられており、ハウジング6と回路基板14との間には隙間Sが存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロック機構付きのプッシュスイッチに係り、特に、プッシュ操作方向と略直交する向きにアクチュエータをスライド移動させることによってオンオフの切換えが行われるプッシュスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
操作部をプッシュ操作してスイッチオンさせるとその状態にロックされ、この操作部を再度プッシュ操作するとロック解除されてスイッチオフ状態に復帰するというロック機構付きのプッシュスイッチは、作動ストロークが長めに設定されている場合、比較的大きな操作力でプッシュ操作されることが多い。また、ロック機構としては、ハート形のカム溝に沿って係合ピンを摺動させるハートカム機構などが採用されている。この種のプッシュスイッチでは、操作部に一体化された操作スライダがプッシュ操作方向に沿ってスライド移動できるようにハウジングに支持されているが、その作動ストロークを長めに設定しておくことにより、操作スライダのハウジングからの突出量がオン状態では小さくなり、オフ状態では大きくなる。しかも、プッシュ操作時における操作スライダの動作がオン操作時とオフ操作時で全く異なるため、視覚的にも操作感触によってもオン状態とオフ状態を明確に区別することができる。それゆえ、この種のプッシュスイッチは、例えば自動車のパワーウィンドウの開閉操作を一時的に行えなくするためのスイッチ装置などとして広く用いられている。
【0003】
また、ロック機構を備えたものではないが、プッシュ操作時に操作スライダがアクチュエータを横方向(プッシュ操作方向と略直交する方向)へスライド移動させることでオンオフの切換えが行えるようにしたプッシュスイッチとして、可動接点付きのアクチュエータ等を収納しているハウジングの内底部に固定接点を配設すると共に、操作スライダに設けられた斜め方向に延びるガイド面をアクチュエータの一部に摺動させるという構成のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる従来のプッシュスイッチにおいて、操作スライダは復帰ばねによって反プッシュ操作方向へ常時弾性付勢されており、その弾性力に抗して操作スライダをハウジング内へ所定ストローク押し込むと、プッシュ操作方向へ移動する操作スライダがアクチュエータを横方向へ駆動して可動接点が所定の固定接点に接触するため、この固定接点からハウジング外へ導出されている端子を経由してオン信号が取り出せるようになっている。それゆえ、この種のプッシュスイッチは、作動ストロークを長めに設定してもハウジングの高さ寸法を抑制することができる。なお、この種のプッシュスイッチは、ハウジングを回路基板上に搭載して端子群を対応するランドに半田付けした状態で使用され、プッシュスイッチの操作スライダは回路基板に対して直交する向きに配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭59−8267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、プッシュ操作時に操作スライダによって可動接点付きのアクチュエータが横方向へスライド移動するように構成されている従来のプッシュスイッチは、回路基板上に搭載されて端子群がランドに半田付けされているため、プッシュ操作時の操作荷重を回路基板がダイレクトに受けることになる。具体的には、回路基板のうち、プッシュスイッチのハウジングが搭載されている箇所や端子が半田付けされている箇所に、プッシュ操作時の操作荷重が加わることになる。そのため、プッシュスイッチの操作スライダが強い操作力で押し込まれた場合に、回路基板が撓んで半田接合部にクラックが生じる虞があった。
【0006】
特に、この種のプッシュスイッチにロック機構が付加されている場合には、通常のプッシュ操作時にも比較的大きな操作力が加えられる可能性があるため、操作荷重によって回路基板の半田接合部にクラックを生じる危険性が高まり、信頼性の低下を余儀なくされることになる。
【0007】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、作動ストロークを長めに設定してもハウジングの高さ寸法を抑制でき、かつ過大な操作荷重が加わっても導通の信頼性が損なわれないロック機構付きのプッシュスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明のプッシュスイッチは、一側部に斜め方向に延びる傾斜ガイド面を有して操作部に一体化された操作スライダと、この操作スライダをプッシュ操作方向に沿ってスライド移動可能に支持するハウジングと、前記傾斜ガイド面と摺動可能な被駆動部を有して前記ハウジング内に支持され、前記操作スライダに駆動されて前記プッシュ操作方向と略直交する向きにスライド移動可能なアクチュエータと、このアクチュエータに取着されて前記ハウジングの外方へ露出する導電性の摺動子と、前記ハウジング内に支持されて前記操作スライダを反プッシュ操作方向へ常時弾性付勢する復帰ばねと、前記操作スライダの他側部と前記ハウジングのいずれか一方に設けられたカム溝に他方に軸支された係合ピンを摺動可能に係合させてなるハートカム機構と、回路基板に設けられて前記摺動子が接離可能な固定接点とを備え、前記回路基板を保持する外殻ケースに前記ハウジングを固定することによって、このハウジングを前記回路基板から離隔させると共に、前記摺動子を前記回路基板に弾接させる構成にした。
【0009】
このように構成されたプッシュスイッチは、ハウジングが外殻ケースに取り付けてあって、該ハウジングと回路基板との間に隙間が存するため、操作スライダに加わる操作荷重はハウジングを介して外殻ケースに作用し、回路基板には操作荷重がほとんど作用しない。したがって、過大な操作荷重が加わっても、回路基板が撓んで半田接合部にクラックを生じる等の不具合が発生する虞はない。また、ハウジングと回路基板との間に隙間が存することから、この隙間に臨出する領域に配線パターンや電子部品等を配設することが可能になって回路基板の有効領域が増える。また、回路基板上における固定接点の形成位置を変更すれば、摺動子が接離するタイミングを変更できるため、プッシュスイッチの用途に応じたオンタイミングの調整が容易に行える。また、このプッシュスイッチは、プッシュ操作方向と略直交する向きにアクチュエータをスライド移動させることによってオンオフの切換えが行われるというものなので、操作スライダに対する作動ストロークを長めに設定してもハウジングの高さ寸法を抑制できる。また、このプッシュスイッチに備えられているハートカム機構は、操作スライダとハウジングの一方に設けられたカム溝に沿って他方に軸支された係合ピンを摺動させることができるため、構造が簡素でスペースファクタも良好なロック機構となっている。
【0010】
上記の構成において、ハウジングを外殻ケースにねじ止め等によって固定してもよいが、外殻ケース内に垂設された取付板に係止孔を設けると共に、ハウジングの外壁面に係合フックを突設しておき、この係合フックを係止孔にスナップ結合させることによってハウジングが取付板に固定されるようにしておけば、ハウジングを外殻ケース内の所定位置に容易に取り付けることができるため好ましい。
【0011】
また、上記の構成において、操作スライダの一側部に、斜め方向に延びる凹溝を挟んで対向する第1の傾斜ガイド面と第2の傾斜ガイド面を設け、この凹溝内に配置させたアクチュエータの被駆動部が、操作スライダのプッシュ操作方向への移動に伴って第1の傾斜ガイド面に駆動されて凹溝に沿って一方向へ移動し、かつ操作スライダの反プッシュ操作方向への移動に伴って第2の傾斜ガイド面に駆動されて凹溝に沿って逆方向へ移動するようにしておけば、互いに略直交する向きにスライド移動する操作スライダとアクチュエータを常に円滑に連動させることができると共に、かかる動力変換機構の構造を簡素化できてスペースファクタも良好になる。この場合において、操作スライダの互いに略平行な一方の側壁部に第1および第2の傾斜ガイド面を設け、他方の側壁部を前記係合ピンと対向させれば、ハウジング内で操作スライダの一側が臨出する空間にアクチュエータを組み込んで、該一側と略平行な他側が臨出する空間に係合ピンを組み込むことができるため、操作スライダに対してアクチュエータと係合ピンがバランスよく配設できてプッシュスイッチの動作が安定させやすくなり、ハウジングの形状もコンパクト化しやすくなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のプッシュスイッチによれば、ハウジングが外殻ケースに取り付けてあって、該ハウジングと回路基板との間に隙間が存するため、操作スライダに加わる操作荷重はハウジングを介して外殻ケースに作用し、回路基板には操作荷重がほとんど作用しない。それゆえ、過大な操作荷重が加わっても、回路基板が撓んで半田接合部にクラックを生じる等の不具合が発生する虞はなく、信頼性や耐久性の向上が期待できる。また、ハウジングと回路基板との間に隙間が存することから、この隙間に臨出する領域に配線パターンや電子部品等を配設することが可能になって回路基板の有効領域が増え、それゆえ回路基板の小型化が図りやすく回路設計の自由度も高めすい。また、回路基板上における固定接点の形成位置を変更すれば、摺動子が接離するタイミングを変更できるため、プッシュスイッチの用途に応じたオンタイミングの調整が容易に行えるという利点もある。また、プッシュ操作方向と略直交する向きにアクチュエータをスライド移動させることによってオンオフの切換えが行われるというプッシュスイッチなので、操作スライダに対する作動ストロークを長めに設定してもハウジングの高さ寸法を抑制できる。また、このプッシュスイッチに備えられているハートカム機構は、操作スライダとハウジングの一方に設けられたカム溝に沿って他方に軸支された係合ピンを摺動させることができるため、構造が簡素でスペースファクタも良好なロック機構となっている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態例に係るプッシュスイッチの分解斜視図である。
【図2】該プッシュスイッチを含むスイッチユニットの斜視図である。
【図3】該スイッチユニットの分解斜視図である。
【図4】該スイッチユニットの上面図である。
【図5】図4のA−A線に沿う縦断面図である。
【図6】図4のB−B線に沿う縦断面図である。
【図7】図3に示すプッシュスイッチの本体部の下面図である。
【図8】該プッシュスイッチに用いられた操作スライダのハート形カム溝側の側面図である。
【図9】該操作スライダのアクチュエータ駆動面側の側面図である。
【図10】該操作スライダのガイドレール側の側面図である。
【図11】該プッシュスイッチに用いられたアクチュエータの被駆動部側の側面図である。
【図12】該アクチュエータをそのスライド方向から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明の実施形態例について図1〜図12を参照しつつ説明する。図2〜図4に示すスイッチユニットは自動車のドアの内側に設置されるものであり、このスイッチユニットには本実施形態例に係るプッシュスイッチ1を含む複数個のスイッチ装置が集約されている。具体的には、パワーウィンドウを開閉させるためのプル操作とプッシュ操作が可能な4個のスイッチ装置21〜24と、ドアをロック状態とアンロック状態に切換える揺動操作が可能なシーソースイッチ25と、パワーウィンドウの開閉を不能にするためのプッシュ操作が可能なプッシュスイッチ1とが配設されている。このスイッチユニットの外殻ケースは、上ケース11と下ケース12およびコネクタケース13の三者を組み合わせて構成されており、これら3つのケース11〜13はスナップ結合等の固定手段を用いて一体化されている。また、外殻ケースの内部にはコネクタケース13上にねじ止め固定された回路基板14が組み込まれており、この回路基板14は接続端子15群(図3参照)を介して外部回路と電気的に接続されるようになっている。なお、プッシュスイッチ1以外のスイッチ装置21〜25については本発明と直接関係しないため、その構成や動作についての説明は省略する。
【0015】
図3に示すように、プッシュスイッチ1は、ユニット化されて一部品として取り扱うことのできる本体部2と、本体部2の操作スライダ3に冠着された操作部としての操作ノブ4と、回路基板14に設けられた固定接点10a,10bとによって主に構成されており、本体部2の摺動子5が固定接点10a,10bと摺動可能となっている。なお、詳しくは後述するが、この摺動子5は固定接点10aと接離可能であるが、摺動子5とコモン接点である固定接点10bとは常時接触している。図1に示すように、本体部2は、操作ノブ4が取り付けられる角筒状の操作スライダ3と、この操作スライダ3をプッシュ操作方向(下方)に沿ってスライド移動可能に支持する箱状のハウジング6と、ハウジング6内に支持されてプッシュ操作方向と略直交する横方向へスライド移動可能なアクチュエータ7と、このアクチュエータ7に取着されてハウジング6の下方へ突出する導電性の摺動子5と、ハウジング6内に支持されて操作スライダ3を反プッシュ操作方向(上方)へ常時弾性付勢する復帰ばね8と、一端部がハウジング6に軸支されて他端部が操作スライダ3と摺動可能に係合する係合ピン9とからなる。
【0016】
操作ノブ4には一対の照光部4a,4bが設けられている。一方の照光部4aはスイッチオン状態を明示するインジケータとして機能させるものであり、図6に示すように、この照光部4aは回路基板14上の光源(LED)16aから出射されて導光体17へ導かれた光で照光されるようになっている。他方の照光部4bは暗所において操作ノブ4の位置を明示するためのものであり、この照光部4bは回路基板14上の別の光源(LED)16bから出射されて操作スライダ3の中空部を貫通した光で照光されるようになっている。
【0017】
このプッシュスイッチ1の動作について簡単に説明すると、オフ状態のときにユーザが操作ノブ4を下方へプッシュ操作すると、操作スライダ3がプッシュ操作方向へスライド移動(下動)するのに伴い、アクチュエータ7が操作スライダ3に駆動されて回路基板14の上面に沿う一方向へスライド移動する。その結果、アクチュエータ7に取着された摺動子5が回路基板14上をスライド移動して固定接点10aから離れるため、オフからオンへの切換えが行われると共に、係合ピン9が後述するカム溝3aの谷部に入り込んで操作スライダ3の復帰動作を阻止するため、オン状態にロックされるようになっている。また、かかるオン状態のときにユーザが操作ノブ4をプッシュ操作すると、係合ピン9が前記カム溝3aの谷部から離脱してロック解除されるため、操作スライダ3が復帰ばね8の弾性復帰力によって反プッシュ操作方向へスライド移動(上動)し、それに伴いアクチュエータ7が操作スライダ3に駆動されて回路基板14の上面に沿う逆方向へスライド移動する。その結果、アクチュエータ7と一体的に摺動子5が回路基板14上をスライド移動して固定接点10aに接触するため、オフ状態に復帰するようになっている。
【0018】
プッシュスイッチ1の構成について詳しく説明すると、操作スライダ3の相対向する上部側壁には係合孔3bが設けられており、これら両係合孔3bに操作ノブ4の図示せぬ係止爪をスナップ結合させることによって、操作ノブ4が操作スライダ3に冠着されている。後述するように、プッシュスイッチ1の本体部2を上ケース11に取り付けると、操作スライダ3が上ケース11の開口部11a(図3参照)を貫通するため、この状態で操作ノブ4を操作スライダ3に冠着させることができる。
【0019】
操作スライダ3の下部はやや大径な角筒状に形成されており、この大径部分の4つの側壁部のうちの1つ(図8参照)に、ハート形のカム溝3aと一対の突出片3cとが設けられている。また、カム溝3aを有する側壁部と対向する別の側壁部(図9参照)には、斜め方向に延びる凹溝3dを挟んで第1の傾斜ガイド面3eと第2の傾斜ガイド面3fとが設けられている。ここで、第1の傾斜ガイド面3eは凹溝3dの上側の内側面に相当し、第2の傾斜ガイド面3fは凹溝3dの下側の内側面に相当する。また、残り2つの側壁部(図10参照)には、上下方向へ直線状に延びる一対のガイドレール3gがそれぞれ設けられている。また、ハウジング6内において、操作スライダ3の一対の突出片3c間の空間には係合ピン9が配置されている。図6に示すように、この係合ピン9の一端部はハウジング6に軸支されており、係合ピン9の他端部(係合端部)はカム溝3aと係合している。そして、操作スライダ3のスライド移動(上下動)に伴って係合ピン9の係合端部がカム溝3aに沿って摺動し、このカム溝3aの谷部P(図8参照)に係合ピン9の係合端部が入り込むと操作スライダ3の上動が阻止されるようになっている。つまり、操作スライダ3に設けられたカム溝3aとハウジング6に軸支された係合ピン9とによって、操作スライダ3をオン位置にロック/アンロックするハートカム機構が構成されている。
【0020】
復帰ばね8は圧縮コイルばねであり、図6に示すように、この復帰ばね8はハウジング6の内底部に立設されたばね受け部6aに支持されている。また、この復帰ばね8は操作スライダ3の前記大径部分の内部に配置されており、操作スライダ3は復帰ばね8の弾発力を受けて上向きに付勢されている。
【0021】
アクチュエータ7はハウジング6内の一側部に組み込まれており、図1と図12に示すように、このアクチュエータ7の上部には被駆動部7aが横向きに突設されている。この被駆動部7aは操作スライダ3の凹溝3d内に配置されて第1および第2の傾斜ガイド面3e,3fに対して摺動可能となっており、操作スライダ3が下動すると被駆動部7aは第1の傾斜ガイド面3eに押し下げられるため、該傾斜ガイド面3eを摺動しながら凹溝3dに沿って斜め下方へ移動する。これとは逆に、操作スライダ3が上動すると、被駆動部7aは第2の傾斜ガイド面3fに押し上げられるため、該傾斜ガイド面3fを摺動しながら凹溝3dに沿って斜め上方へ移動する。また、アクチュエータ7の底板部7bには可動接点である摺動子5が取着されている。この摺動子5は回路基板14に常時弾接しており、前述したように、摺動子5は固定接点10aと接離可能で固定接点10bと常時接触している。そして、本実施形態例では、摺動子5を介して固定接点10a,10bどうしが導通されている状態をスイッチオフ状態とし、摺動子5が固定接点10aから離れて両固定接点10a,10b間の導通が遮断されている状態をスイッチオン状態としている。ただし、プッシュスイッチ1の用途に応じて、摺動子5が固定接点10aに接触した状態をスイッチオン状態となしてもよい。
【0022】
図6に示すように、ハウジング6はアクチュエータ7や復帰ばね8や係合ピン9等を収納しており、ハウジング6の底部に設けられた切欠き部6b内に摺動子5が露出している。図7に示すように、ハウジング6の一外壁面には係合フック6cと位置決め突条6dが突設されており、この外壁面に対向する他外壁面にも係合フック6cと位置決め突条6dが突設されている。図5に示すように、上ケース11内に垂設された取付板11bには係止孔11cが設けられており、この上ケース11内にハウジング6を下方から挿入して各係合フック6cを対応する係止孔11cにスナップ結合することによって、ハウジング6が上ケース11に取り付けられている。その際、取付板11bに設けられた図示せぬ規制溝に位置決め突条6dを挿入することにより、上ケース11内の所定位置までハウジング6を円滑に挿入してスナップ結合させることができ、この位置決め突条6dによって上ケース11に対するハウジング6のガタも抑制される。そして、回路基板14が上ケース11等の外殻ケースに組み付けられると、図5に示すように、上ケース11内の所定位置に固定されているハウジング6は回路基板14の上方に位置し、これらハウジング6と回路基板14との間に摺動子5が突出する隙間S(図6参照)が存することになる。
【0023】
前述したように、このハウジング6は、操作スライダ3を上下方向にスライド移動可能に支持していると共に、アクチュエータ7を横方向へスライド移動可能に支持している。ハウジング6の相対向する内壁面にはそれぞれ規制突起6e(図1参照)が突設されており、これら規制突起6eが操作スライダ3の対応する一対のガイドレール3g間に挿入されているため、操作スライダ3が傾くことなく円滑に上下動できるようになっている。また、ハウジング6の底部には一対のレール状壁部6f(図6参照)が略平行に延設されており、これら両レール状壁部6fの間にアクチュエータ7の底板部7bが挿入されて摺動可能に抱持されているため、アクチュエータ7の底板部7bはレール状壁部6fに沿って円滑にスライド移動できるようになっている。
【0024】
次に、上記の如く構成されたプッシュスイッチ1の動作について詳しく説明する。図5と図6に示すように、プッシュスイッチ1がオフ状態のとき、操作スライダ3は上ケース11の開口部11aからの突出量を最大にして高さ位置が最も高くなっており、両固定接点10a,10bは摺動子5を介して導通されている。この状態でユーザが操作ノブ4を下方へプッシュ操作すると、操作スライダ3が下動するのに伴って第1の傾斜ガイド面3eがアクチュエータ7の被駆動部7aを押し下げるため、この被駆動部7aが凹溝3dに沿って斜め下方へ移動して、アクチュエータ7が摺動子5と共に回路基板14に沿う一方向(シーソースイッチ25から離れる向き)へスライド移動する。そして、回路基板14上をスライド移動する摺動子5が固定接点10aから離れると、両固定接点10a,10b間の導通が遮断されるため、プッシュスイッチ1はオン状態となる。また、かかる操作スライダ3の下動に伴い、係合ピン9の係合端部がハート形のカム溝3a内の底部から上方へ相対的に移動していき、ユーザが操作スライダ3を最下点まで押し込んでから操作力を除去すると、復帰ばね8の弾性復帰力で操作スライダ3が若干量だけ上動して、係合ピン9の係合端部がカム溝3aの谷部P(図8参照)に入り込む。これにより、係合ピン9が操作スライダ3のさらなる復帰動作を阻止し、この操作スライダ3が図5に示された操作スライダの位置よりも低い高さ位置にロックされた状態となるため、プッシュスイッチ1はオン状態に保持(ロック)される。
【0025】
また、オン状態でロックされている操作スライダ3をユーザがプッシュ操作して最下点まで押し込むと、係合ピン9の係合端部がカム溝3aの谷部Pから離脱してロック解除されるため、操作スライダ3は復帰ばね8の弾性復帰力によって図5と図6に示す元の高さ位置まで上動する。かかる操作スライダ3の上動に伴って第2の傾斜ガイド面3fがアクチュエータ7の被駆動部7aを押し上げるため、この被駆動部7aが凹溝3dに沿って斜め上方へ移動して、アクチュエータ7が摺動子5と共に回路基板14に沿う逆方向(シーソースイッチ25に近付く向き)へスライド移動する。そして、摺動子5が固定接点10a上までスライド移動すると、両固定接点10a,10b間の導通が回復するため、プッシュスイッチ1はオフ状態に復帰する。
【0026】
以上説明したように本実施形態例に係るプッシュスイッチ1は、そのハウジング6がスイッチユニットの外殻ケースである上ケース11に取り付けてあり、このハウジング6と回路基板14との間に隙間Sが存するため、操作スライダ3に加わる操作荷重はハウジング6を介して上ケース11等の頑丈な外殻ケースに作用することになり、回路基板14に操作荷重がほとんど作用しない取付構造となっている。それゆえ、操作スライダ3から過大な操作荷重が加わっても、回路基板14が撓んで半田接合部にクラックを生じる等の不具合が発生する虞はなく、信頼性や耐久性の向上が期待できる。また、ハウジング6と回路基板14との間に隙間Sが存することから、この隙間Sに臨出する領域に配線パターンや電子部品等を配設することが可能になって回路基板14の有効領域が増えている。それゆえ、回路基板14の小型化が図りやすく回路設計の自由度も高めやすい。さらに、このように構成されたプッシュスイッチ1の場合、回路基板14上における固定接点10aの形成位置を変更すれば、摺動子5が接離するタイミングを変更できるので、プッシュスイッチ1の用途に応じたオンタイミングの調整が容易に行えるという利点もある。
【0027】
なお、このプッシュスイッチ1は、プッシュ操作方向と略直交する向きにアクチュエータ7をスライド移動させることによってオンオフの切換えが行われるというものなので、操作スライダ3に対する作動ストロークを長めに設定してもハウジング6の高さ寸法が抑制できる。また、このプッシュスイッチ1に備えられているハートカム機構は、プッシュ操作に伴って操作スライダ3に設けられたカム溝3aに沿ってハウジング6に軸支された係合ピン9を摺動させることができるため、構造が簡素でスペースファクタも良好なロック機構となっている。
【0028】
また、本実施形態例に係るプッシュスイッチ1では、外殻ケースである上ケース11内に垂設された取付板11bの係止孔11cにハウジング6の係合フック6cをスナップ結合させることによって、ハウジング6が取付板11bに固定されるようにしてあるので、ハウジング6を外殻ケース内の所定位置に容易に取り付けることができる。しかも、本実施形態例においては、操作スライダ3とアクチュエータ7および復帰ばね8をハウジング6で支持してなるハートカム機構付きの本体部2がユニット化されており、この本体部2を外殻ケース内へ挿入しながらハウジング6を取付板11bにスナップ結合させることができるため、外殻ケース内へ組み付ける構造であってもプッシュスイッチ1の組立作業性が煩雑化することはない。あるいはまた、本体部2のハウジング6を外殻ケースの適宜箇所にねじ止め等によって固定することも可能である。
【0029】
また、本実施形態例に係るプッシュスイッチ1では、操作スライダ3の一側部に凹溝3dを挟んで対向する第1および第2の傾斜ガイド面3e,3fを設け、この凹溝3d内にアクチュエータ7の被駆動部7aを摺動可能に配置させている。こうすることにより、操作スライダ3が下動するときには、第1の傾斜ガイド面3eが被駆動部7aを押し下げながらアクチュエータ7を回路基板14に沿って一方向へ移動させ、かつ、操作スライダ3が上動するときには、第2の傾斜ガイド面3fが被駆動部7aを押し上げながらアクチュエータ7を回路基板14に沿って逆方向へ移動させることができる。そのため、互いに略直交する向きにスライド移動する操作スライダ3とアクチュエータ7を常に円滑に連動させることができると共に、かかる動力変換機構の構造が簡素でスペースファクタも良好になっている。
【0030】
しかも、本実施形態例においては、第1および第2の傾斜ガイド面3e,3fを設けた操作スライダ3の一側部と、ハートカム機構のカム溝3aを設けた操作スライダ3の他側部とが略平行な位置関係にあるため、ハウジング6内で操作スライダ3の一側部が臨出する空間にアクチュエータ7を組み込み、操作スライダ3の他側部が臨出する空間に係合ピン9を組み込むという構成になっている。それゆえ、操作スライダ3に対してアクチュエータ7と係合ピン9をバランスよく配設でき、プッシュスイッチ1の動作が安定させやすくなり、ハウジング6の形状もコンパクト化しやすくなっている。
【0031】
なお、上記の実施形態例では、カム溝3aを操作スライダ3に設けて係合ピン9をハウジング6が軸支するというハートカム機構を採用しているが、これとは逆に、カム溝をハウジングに設けて係合ピンを操作スライダが軸支するという構造のハートカム機構を採用してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 プッシュスイッチ
2 本体部
3 操作スライダ
3a カム溝(ハートカム機構)
3d 凹溝
3e 第1の傾斜ガイド面
3f 第2の傾斜ガイド面
3g ガイドレール
4 操作ノブ(操作部)
5 摺動子(可動接点)
6 ハウジング
6c 係合フック
6e 規制突起
6f レール状壁部
7 アクチュエータ
7a 被駆動部
8 復帰ばね
9 係合ピン(ハートカム機構)
10a 固定接点
11 上ケース(外殻ケース)
11b 取付板
11c 係止孔
14 回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側部に斜め方向に延びる傾斜ガイド面を有して操作部に一体化された操作スライダと、この操作スライダをプッシュ操作方向に沿ってスライド移動可能に支持するハウジングと、前記傾斜ガイド面と摺動可能な被駆動部を有して前記ハウジング内に支持され、前記操作スライダに駆動されて前記プッシュ操作方向と略直交する向きにスライド移動可能なアクチュエータと、このアクチュエータに取着されて前記ハウジングの外方へ露出する導電性の摺動子と、前記ハウジング内に支持されて前記操作スライダを反プッシュ操作方向へ常時弾性付勢する復帰ばねと、前記操作スライダの他側部と前記ハウジングのいずれか一方に設けられたカム溝に他方に軸支された係合ピンを摺動可能に係合させてなるハートカム機構と、回路基板に設けられて前記摺動子が接離可能な固定接点とを備え、
前記回路基板を保持する外殻ケースに前記ハウジングを固定することによって、このハウジングを前記回路基板から離隔させると共に、前記摺動子を前記回路基板に弾接させる構成にしたことを特徴とするプッシュスイッチ。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記外殻ケース内に垂設された取付板に係止孔を設けると共に、前記ハウジングの外壁面に係合フックを突設し、この係合フックを前記係止孔にスナップ結合させることによって前記ハウジングが前記取付板に固定されることを特徴とするプッシュスイッチ。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記操作スライダの一側部に、斜め方向に延びる凹溝を挟んで対向する第1の傾斜ガイド面と第2の傾斜ガイド面を設け、この凹溝内に配置させた前記被駆動部が、前記操作スライダのプッシュ操作方向への移動に伴って前記第1の傾斜ガイド面に駆動されて前記凹溝に沿って一方向へ移動し、かつ前記操作スライダの反プッシュ操作方向への移動に伴って前記第2の傾斜ガイド面に駆動されて前記凹溝に沿って逆方向へ移動するようにしたことを特徴とするプッシュスイッチ。
【請求項4】
請求項3の記載において、前記操作スライダの互いに略平行な一方の側壁部に前記第1および第2の傾斜ガイド面を設け、他方の側壁部を前記係合ピンと対向させたことを特徴とするプッシュスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−249043(P2011−249043A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118554(P2010−118554)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】