説明

プッシュタイプディスペンサー

【課題】シンプルな構造でありながら、十分に液だれを防止できるプッシュタイプディスペンサーを提供すること。
【解決手段】シリンダ2と、該シリンダ2内を摺動可能なピストン3と、該ピストン3を上昇移動させるステム4と、該ステム4と一体となるように取り付けられ、ピストン3を下降移動させるパイプシャフト5と、パイプシャフト5の上端に取り付けられたノズルヘッドと、を備え、シリンダ2内の液を、ピストン3で加圧し、パイプシャフト内空間を流通させてノズルヘッドのノズル口から液を吐出させるプッシュタイプディスペンサー100であって、ステム4にはピストン3を引き上げる前段階でシリンダ内空間12とパイプシャフト内空間との間を封止するための封止径大部23が設けられているプッシュタイプディスペンサー100である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プッシュタイプディスペンサーに関し、更に詳しくは、シンプルな構造でありながら、十分に液だれを防止できるプッシュタイプディスペンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
容器内の液を吐出する装置としてディスペンサーが知られている。その中でも、ノズルヘッドを昇降移動させることにより、容器内の液をシリンダ内に吸引し、ピストンで加圧してノズルヘッドのノズル口から液を吐出させるプッシュタイプディスペンサーが知られている。
【0003】
ところで、かかるプッシュタイプディスペンサーにおいては、液を吐出した後、ノズル口に液だれが生じる場合がある。この場合、ノズル口が液の乾燥固化により詰まってしまい吐出不良となる問題がある。
【0004】
これに対し、液だれを防止するために、いわゆるバックサクション機構を備えたプッシュタイプディスペンサーが開発されている。
例えば、吐出完了後のポンプ室の拡張開始段階で、ノズル内の残留液をポンプ室側に引き込むバックサクション手段を備えるポンプ付き容器(例えば、特許文献1参照)、ノズルヘッドの上昇時、ピストンの上昇より遅れて二次弁が閉じるとともに、二次弁の閉鎖前での一次弁の開放を妨げることによって、ノズル、ピストン内の残留液をシリンダにバックサクションさせるプッシュタイプディスペンサー(例えば、特許文献2参照)、ピストンロッドの貫通路に、液体の吸引時に該貫通路を閉塞し、加圧時に液体中で浮遊して貫通路を開放する弁体を設け、前記貫通路と弁体との相互間に、該貫通路を閉塞するまでの弁体の動作を遅延させて該弁体からノズルに至るまでに残存する液体を貫通路及び/又はシリンダ内に呼び込む極僅かな隙間を形成した液体排出用ポンプ(例えば、特許文献3参照)、押し下げられたノズルヘッドが元の位置へと戻るとき、ノズル部内に溜まった液体を吸引するバックサクション機構とを備える液体吐出装置(例えば、特許文献4参照)等が種々知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−71461号公報
【特許文献2】特開平9−290185号公報
【特許文献3】特開2003−137329号公報
【特許文献4】特開2007−50343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1〜4に記載のプッシュタイプディスペンサーにおいては、総じて構造が複雑となり、部品点数が増える欠点がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、シンプルな構造でありながら、十分に液だれを防止できるプッシュタイプディスペンサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、意外にも、ステムにシリンダ内空間とパイプシャフト内空間との間を封止する封止径大部を設けることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、(1)シリンダと、該シリンダ内を摺動可能なピストンと、該ピストンを上昇移動させるステムと、該ステムと一体となるように取り付けられ、ピストンを下降移動させるパイプシャフトと、パイプシャフトの上端に取り付けられたノズルヘッドと、を備え、シリンダ内の液を、ピストンで加圧し、パイプシャフト内空間を流通させてノズルヘッドのノズル口から液を吐出させるプッシュタイプディスペンサーであって、ステムにはピストンを引き上げる前段階でシリンダ内空間とパイプシャフト内空間との間を封止するための封止径大部が設けられているプッシュタイプディスペンサーに存する。
【0010】
本発明は、(2)ステムがピストンの押し上げ時にピストンに当接する下当接部を有し、パイプシャフトがピストンの押し下げ時にピストンに当接する上当接部を有し、下当接部がピストンに当接しているときは、上当接部がピストンから乖離し、上当接部がピストンに当接しているときは、下当接部がピストンから乖離しており、且つ封止径大部が下当接部より上方に形成されている上記(1)記載のプッシュタイプディスペンサーに存する。
【0011】
本発明は、(3)封止径大部には、ピストンの押し上げ時にシリンダ内空間とパイプシャフト内空間との間の封止を解除する縦スリット溝が形成されている上記(1)又は(2)に記載のプッシュタイプディスペンサーに存する。
【0012】
本発明は、(4)パイプシャフトがシリンダ上端に取り付けたチャップリットを介してシリンダ内に案内されたものである上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のプッシュタイプディスペンサーに存する。
【0013】
本発明は、(5)容器に取り付けられるキャップを更に備え、シリンダがキャップに取り付けられている上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載のプッシュタイプディスペンサーに存する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のプッシュタイプディスペンサーによれば、封止径大部を設けるだけで、液だれを十分に防止することができる。すなわち、ピストンを引き上げる前段階で、封止径大部がシリンダ内空間とパイプシャフト内空間との間を封止することにより、パイプシャフト内空間が負圧となり、ノズル口先端の液が吸引されることになる。
したがって、上記プッシュタイプディスペンサーによれば、シンプルな構造でありながら、液だれを十分に防止できる。
【0015】
本発明のプッシュタイプディスペンサーにおいては、下当接部がピストンに当接しているときは、上当接部がピストンから乖離しており、上当接部がピストンに当接しているときは、下当接部がピストンから乖離している場合、ピストンが動かない状態が生じるので、二次バルブを省略できるという利点がある。
【0016】
本発明のプッシュタイプディスペンサーにおいては、封止径大部に縦スリット溝が形成されている場合、液が封止径大部を流通可能となるので、シリンダ内で圧縮された液が急に飛び出ることはない。また、瞬間的にパイプシャフト内空間を負圧とし、その後、負圧を解除することで、液だれに相当する分量の液のみノズル口からパイプシャフト内空間に流入し、その後、負圧が解除されることで、通常のピストンの昇降移動を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本実施形態に係るプッシュタイプディスペンサーの一例を示す側面図である。
【図2】図2は、本実施形態に係るプッシュタイプディスペンサーのシリンダ部分の拡大図である。
【図3】図3の(a)は、本実施形態に係るプッシュタイプディスペンサーの封止径大部の縦スリット溝を説明するための斜視断面図であり、(b)は、本実施形態に係るプッシュタイプディスペンサーのステムを示す斜視図である。
【図4】図4の(a)〜(d)は、本実施形態に係るプッシュタイプディスペンサーにおいてノズルヘッドの位置が上死点から下死点に到達するまでを段階的に示す断面図である。
【図5】図5の(a)〜(d)は、本実施形態に係るプッシュタイプディスペンサーにおいて、図4の(a)のピストンの下突起円筒部と、ステムの下当接部とが嵌合された状態から、図4の(b)のパイプシャフトの上当接部の先端と、ピストンとが当接された状態になるまでの工程を段階的に示す拡大断面図である。
【図6】図6の(a)〜(d)は、本実施形態に係るプッシュタイプディスペンサーにおいてノズルヘッドの位置が下死点から上死点に到達するまでの工程を段階的に示す断面図である。
【図7】図7の(a)〜(d)は、本実施形態に係るプッシュタイプディスペンサーにおいて、図6の(a)のパイプシャフトの上当接部の先端と、ピストンとが当接された状態から、図6の(b)のピストンの下突起円筒部と、ステムの下当接部とが嵌合された状態になるまでの工程を段階的に示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0019】
図1は、本実施形態に係るプッシュタイプディスペンサーの一例を示す側面図である。
図1に示すように、プッシュタイプディスペンサー100は、キャップ1と、キャップに取り付けられているシリンダ2と、シリンダ2内を摺動可能なピストン3と、該ピストン3を上昇移動させるステム4と、該ステム4と一体となるように取り付けられピストン3を下降移動させるパイプシャフト5と、パイプシャフト5の上端に取り付けられたノズルヘッド6と、シリンダ内空間12に連通するようにバルブボール7を介して取り付けられたチューブ8と、を備える。
ここで、ステム4、パイプシャフト5及びノズルヘッド6は、一体となって昇降移動するようになっている。
また、パイプシャフト5は、シリンダ2上端に取り付けたチャップリット9を介してシリンダ内に摺動自在に案内されている。すなわち、ステム4は、パイプシャフト5によってシリンダ2内に摺動自在に案内されている。また、ノズルヘッド6の下端がチャップリット9に当接することにより、ステム4の下降が停止されるようになっている。
【0020】
プッシュタイプディスペンサー100は、容器50の口部51にキャップ1を螺着することにより、容器50に固定される。
そして、ノズルヘッド6を押圧することにより、シリンダ内空間12に貯留された液がピストン3で加圧され、パイプシャフト内空間15を流通してノズルヘッド6のノズル口16から液が吐出され、その状態からノズルヘッド6を開放するとバネSの付勢力により、ノズルヘッド6が上昇すると共に、容器50内の液がチューブ8に吸い上げられ、バルブボール7が開いて、シリンダ内空間12に補填される。
【0021】
図2は、本実施形態に係るプッシュタイプディスペンサーのシリンダ部分の拡大図である。
図2に示すように、プッシュタイプディスペンサー100において、ピストン3は、シリンダ4内を摺動可能となるように設けられており、内方にステム4に当接される下突起円筒部13と、パイプシャフト5に当接される上突起円筒部14とを備える。
【0022】
ステム4は、基軸部4aと、基軸部4aの先端に設けられた径大部4bとからなり、基軸部4aがピストン3に挿通されている。
基軸部4aにおいては、流通溝11がその周囲に等間隔で設けられており、シリンダ内空間12の液が該流通溝11を流通してノズルヘッドに到達するようになっている。なお、本発明において、流通溝11における空間もパイプシャフト内空間15に含まれるものとする。
【0023】
径大部4bにおいては、下方に向かってステム封止部21が形成されており、かかるステム封止部21がシリンダ2の底部32に当接されることにより、封止可能となっている。
また、径大部4bの肩部には、ピストン3の押し上げ時にピストン3の下突起円筒部13に当接する溝状の下当接部22が設けられている。ここで、ピストン3の下突起円筒部13とステム4の下当接部22とは、互いに嵌合可能となっている。
さらに、径大部4bには、封止径大部23がピストン3の内壁に面接触するように設けられている。このため、ピストン3を引き上げる前段階においては、シリンダ内空間12と、パイプシャフト内空間15との間が封止径大部23によって封止されることになる。なお、封止径大部23は、下当接部22より上方に形成されている。
【0024】
プッシュタイプディスペンサー100においては、ピストンを引き上げる前段階で、封止径大部23がシリンダ内空間12とパイプシャフト内空間15との間を封止することにより、その封止が維持された状態でノズルヘッド6を引き上げると、パイプシャフト内空間15が拡大するので負圧となる。これにより、ノズル口16先端の液が吸引されることになり、その結果、液だれを十分に防止することができる。
【0025】
ここで、封止径大部23には、ステム4の押し上げ時にシリンダ内空間12とパイプシャフト内空間15との間の封止を解除する縦スリット溝が形成されている。
図3の(a)は、本実施形態に係るプッシュタイプディスペンサーの封止径大部の縦スリット溝を説明するための斜視断面図であり、(b)は、本実施形態に係るプッシュタイプディスペンサーのステムを示す斜視図である。
図3の(a)及び(b)に示すように、封止径大部23は、上端部23aと、上端部23aの下側に縦スリット溝23bとを備える。
一方、封止径大部23が当接されるピストン3の内壁は、テーパー状となっており、テーパー面の上端には、突起状の内壁突起部10が設けられている。
これにより、ステム4の押し上げ時、封止径大部23は、上記テーパー面に押し上げられながら内壁突起部10に当接されることになる。
【0026】
ここで、封止径大部23の上端部23aがピストン3の内壁突起部10と接しているときは、シリンダ内空間12と、パイプシャフト内空間15との間が封止される。また、封止径大部23の縦スリット溝23bがピストン3の内壁突起部10と接しているときは、縦スリット溝23bを液が流通可能となっているので、シリンダ内空間12と、パイプシャフト内空間15との間の封止が解除されることになる。なお、縦スリット溝23bがピストン3の内壁突起部10と接しているとき、上端部23aは押し上げられており、内壁突起部10とは接していない。
【0027】
このため、プッシュタイプディスペンサー100においては、瞬間的にパイプシャフト内空間15を大きくして負圧とし、液だれに相当する分量の液のみノズル口16からパイプシャフト内空間15に流入し、その後、負圧が解除されることで、通常のピストンの昇降移動を行うことができる。
【0028】
図2に戻り、パイプシャフト5は、ピストン3の押し下げ時にピストン3に当接する突起状の上当接部31を有する。
ここで、パイプシャフト5の上当接部31の内壁と、ピストン3の上突起円筒部14の外壁とは常に面接触している。すなわち、パイプシャフト5の上当接部31の先端がピストン3に当接されているか否かに関わらずパイプシャフト5の上当接部31と、ピストン3の上突起円筒部14との間が封止されている。このため、ピストン3が動かない状態でパイプシャフト5を引き上げると、封止径大部23がシリンダ内空間12とパイプシャフト内空間15との間を封止しているので、パイプシャフト内空間15の距離Lが大きくなることにより、パイプシャフト内空間15が負圧となる。
【0029】
したがって、上記プッシュタイプディスペンサー100によれば、封止径大部23を設けるだけで、シンプルな構造でありながら、液だれを十分に防止できる。
【0030】
次に、プッシュタイプディスペンサー100の動きについて説明する。
図4の(a)〜(d)は、本実施形態に係るプッシュタイプディスペンサーにおいてノズルヘッドの位置が上死点から下死点に到達するまでの工程を段階的に示す断面図である。
まず、図4の(a)に示すように、ノズルヘッド6が上死点に位置する場合、ピストン3の下突起円筒部13と、ステム4の下当接部22とは、嵌合することにより封止されている。この状態から、ノズルヘッド6を押し下げると、一体となっているステム4及びパイプシャフト5が降下し、図4の(b)に示すように、パイプシャフト5の上当接部31の先端と、ピストン3とが当接される。なお、このとき、まだピストン3の位置は変動しない。また、バルブボール7は、閉じられている。
【0031】
図5の(a)〜(d)は、本実施形態に係るプッシュタイプディスペンサーにおいて、図4の(a)のピストンの下突起円筒部と、ステムの下当接部とが嵌合された状態から、図4の(b)のパイプシャフトの上当接部の先端と、ピストンとが当接された状態になるまでの工程を段階的に示す拡大断面図である。
【0032】
図5の(a)に示すピストン3の下突起円筒部13と、ステム4の下当接部22との間が封止された状態から、ステム4を押し下げることにより、図5の(b)に示すように、ピストン3の下突起円筒部13と、ステム4の下当接部22とによる封止が解除されると共に、シリンダ内空間12の液がピストン3の下突起円筒部13と、ステム4の下当接部22との間を通って、矢印Aに示すように、流通溝11におけるパイプシャフト内空間15に流入する。このとき、封止径大部23は、ピストン3の内壁に接しているが、上述したように、封止径大部23には縦スリット溝23bが設けられているので、液は、縦スリット溝23bを流通して流通溝11におけるパイプシャフト内空間15に到達する。
【0033】
更に、ステム4を押し下げると、図5の(c)に示すように、ピストン3の下突起円筒部13と、ステム4の下当接部22とによる封止は解除されているものの、封止径大部23の上端部23aがピストン3の内壁突起部10に接することになるので、封止径大部23と、ピストン3との間が封止される。これにより、液は、瞬間的に流通しなくなる。
【0034】
更に、ステム4を押し下げると、図5の(d)に示すように、封止径大部23と、ピストン3の内壁突起部10とによる封止も解除されることになるので、シリンダ内空間12の液がピストン3の下突起円筒部13と、ステム4の下当接部22との間、及び、封止径大部23と、ピストン3との間を通って、矢印Bに示すように、流通溝11におけるパイプシャフト内空間15に流入する。
その後、更にステム4を押し下げると、図4の(b)に示すように、パイプシャフト5の上当接部31の先端がピストン3に当接される。
【0035】
次に、図4の(b)に示す状態から、ノズルヘッド6を更に押し下げると、パイプシャフト5の上当接部31の先端とピストン3とが当接された状態が維持されるので、図4の(c)に示すように、ステム4及びパイプシャフト5と共にピストン3も降下することになる。これによりシリンダ内空間12の液が加圧され、該液は、パイプシャフト内空間15を流通し、矢印Cに示すように、ノズル口16から吐出される。
【0036】
そして、ノズルヘッド6を下死点にまで押し下げると、図4の(d)に示すように、ステム4の径大部4bに設けられたステム封止部21が、シリンダ2の底部32に当接され、ノズルヘッド6の下端がチャップリット9に当接される。このことにより、ステム4の下降が停止される。
また、このときシリンダ3も下死点に到達することになる。なお、液は、シリンダ3が下死点に到達するまで、矢印Dに示すように、ノズル口16から吐出される。
【0037】
図6の(a)〜(d)は、本実施形態に係るプッシュタイプディスペンサーにおいてノズルヘッドの位置が下死点から上死点に到達するまでの工程を段階的に示す断面図である。
まず、図6の(a)に示すように、ノズルヘッド6が下死点に位置する場合、パイプシャフト5の上当接部31の先端とピストン3とが当接されており、ステム4の径大部4bに設けられたステム封止部21が、シリンダ2の底部32に当接されている。なお、図6の(a)に示す状態は、図4の(d)に示す状態と同じである。
【0038】
この状態から、ノズルヘッド6を引き上げると(実際にはバネの復帰力により上昇する)、一体となっているステム4及びパイプシャフト5が上昇し、パイプシャフト5の上当接部31の先端と、ピストン3とが乖離され、更にノズルヘッド6を引き上げると、図6の(b)に示すように、ピストン3の下突起円筒部13と、ステム4の下当接部22との間が嵌合される。これにより、シリンダ内空間12と、パイプシャフト内空間15との間の封止が解除さ封止される。なお、このとき、ピストン3の位置は変動しない。
【0039】
図7の(a)〜(d)は、本実施形態に係るプッシュタイプディスペンサーにおいて、図6の(a)のパイプシャフトの上当接部の先端と、ピストンとが当接された状態から、図6の(b)のピストンの下突起円筒部と、ステムの下当接部とが嵌合された状態になるまでの工程を段階的に示す拡大断面図である。
【0040】
図7の(a)に示す状態から、ステム4を引き上げると、図7の(b)に示すように、封止径大部23の上端部23aがピストン3の内壁に当接する。そうすると、シリンダ内空間12と、パイプシャフト内空間15との間が封止される。
【0041】
そして、更にステム4を引き上げると、封止径大部23の上端部23aがピストン3の内壁を摺動することになる。すなわち、シリンダ内空間12と、パイプシャフト内空間15との間が封止された状態を維持したままステム4を引き上げることになるので、ピストン3の上突起円筒部14の肩部底面とパイプシャフト5の先端との間の距離Lが拡大し、パイプシャフト内空間15がその分大きくなるので、負圧となる。その結果、ノズル口16先端の液が逆流し、矢印E(図6参照)に示すように、吸引されることになる。これにより、液だれを十分に防止することができる。
【0042】
この状態から、更にステム4を引き上げると、図7の(c)に示すように、封止径大部23の縦スリット溝23bがピストン3の内壁に当接されるようになる。そうすると、縦スリット溝23bは、液が流通可能となっているので、シリンダ内空間12と、流通溝11との間の封止が解除される。すなわち、パイプシャフト内空間15とシリンダ内空間12との間が通じることになる。そうすると、パイプシャフト内空間15が負圧になっていたのが解除される。
【0043】
そして、更にステム4を引き上げると、図7の(d)に示すように、ピストン3の下突起円筒部13と、ステム4の下当接部22とが嵌合される。これにより、再びシリンダ内空間12と、パイプシャフト内空間15との間が封止される。また、封止径大部23においては、縦スリット溝23bがピストン3の内壁突起部10に当接された状態が維持される。なお。図7の(d)は、図6の(b)と同じである。
【0044】
次に、図6の(b)に示す状態から、ノズルヘッド6を引き上げると、ピストン3の下突起円筒部13と、ステム4の下当接部22とが嵌合された状態が維持されるので、図6の(c)に示すように、ステム4及びパイプシャフト5と共にピストン3も上昇することになる。これによりシリンダ内空間12が負圧になるので、バルブボール7が開放され、図示しない容器内の液が矢印Fに示すように、チューブ8を介してバルブボール7からシリンダ内空間12に流入される。
【0045】
そして、ノズルヘッド6を上死点にまで引き上げると、図6の(d)に示すように、シリンダ3も上死点に到達し、シリンダ内空間12には液が十分に貯留されることになる。
【0046】
本実施形態に係るプッシュタイプディスペンサー100においては、ステム4にシリンダ内空間12とパイプシャフト内空間15との間を封止する封止径大部23を設けるだけで、液だれを十分に防止できる。
また、上述したように、下当接部22がピストン3に当接しているときは、上当接部31がピストン3から乖離しており、上当接部31がピストン3に当接しているときは、下当接部22がピストン3から乖離しているので、ピストン3が動かない状態が生じる。このため、これにより、二次バルブを省略できるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のプッシュタイプディスペンサーは、ノズルヘッドを昇降移動させることにより、容器内の液を吐出する装置として好適に用いられる。本発明のプッシュタイプディスペンサーによれば、シンプルな構造でありながら、十分に液だれを防止できる。
【符号の説明】
【0048】
1・・・キャップ
2・・・シリンダ
3・・・ピストン
4・・・ステム
4a・・・基軸部
4b・・・径大部
5・・・パイプシャフト
6・・・ノズルヘッド
7・・・バルブボール
8・・・チューブ
9・・・チャップリット
10・・・内壁突起部
11・・・流通溝
12・・・シリンダ内空間
13・・・下突起円筒部
14・・・上突起円筒部
15・・・パイプシャフト内空間
16・・・ノズル口
21・・・ステム封止部
22・・・下当接部
23・・・封止径大部
23a・・・上端部
23b・・・縦スリット溝
31・・・上当接部
32・・・底部
50・・・容器
51・・・口部
100・・・プッシュタイプディスペンサー
S・・・バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
該シリンダ内を摺動可能なピストンと、
該ピストンを上昇移動させるステムと、
該ステムと一体となるように取り付けられ前記ピストンを下降移動させるパイプシャフトと、
該パイプシャフトの上端に取り付けられたノズルヘッドと、
を備え、
前記シリンダ内の液を、前記ピストンで加圧し、前記パイプシャフト内空間を流通させて前記ノズルヘッドのノズル口から前記液を吐出させるプッシュタイプディスペンサーであって、
前記ステムにはピストンを引き上げる前段階で前記シリンダ内空間と前記パイプシャフト内空間との間を封止するための封止径大部が設けられているプッシュタイプディスペンサー。
【請求項2】
前記ステムが、前記ピストンの押し上げ時に前記ピストンに当接する下当接部を有し、
前記パイプシャフトが、前記ピストンの押し下げ時に前記ピストンに当接する上当接部を有し、
前記下当接部が前記ピストンに当接しているときは、前記上当接部が前記ピストンから乖離し、前記上当接部が前記ピストンに当接しているときは、前記下当接部が前記ピストンから乖離しており、且つ
前記封止径大部が前記下当接部より上方に形成されている請求項1記載のプッシュタイプディスペンサー。
【請求項3】
前記封止径大部には、前記ピストンの押し上げ時に前記シリンダ内空間と前記パイプシャフト内空間との間の封止を解除する縦スリット溝が形成されている請求項1又は2に記載のプッシュタイプディスペンサー。
【請求項4】
前記パイプシャフトが前記シリンダ上端に取り付けたチャップリットを介してシリンダ内に案内されたものである請求項1〜3のいずれか一項に記載のプッシュタイプディスペンサー。
【請求項5】
容器に取り付けられるキャップを更に備え、
前記シリンダが前記キャップに取り付けられている請求項1〜4のいずれか一項に記載のプッシュタイプディスペンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−12047(P2012−12047A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148378(P2010−148378)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【特許番号】特許第4790077号(P4790077)
【特許公報発行日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(390028196)キャニヨン株式会社 (42)
【Fターム(参考)】