説明

プライマー組成物

【課題】プラスチックおよび塗料、特に塗料に対するポリウレタン接着剤およびシーラントの接着を強く促進する新規プライマーを提供。
【解決手段】本発明は、イソシアネート基を含み、室温で固体であり少なくとも1つのOH基を含む非晶質ポリエステル樹脂Aと、式(I)の少なくとも1種のポリイソシアネートBとの混合物から調製される少なくとも1種の結合剤を含有するプライマー組成物に関する。固体ポリエステル樹脂AとポリイソシアネートBとの比率は、この場合、NCO基とOH基の化学量論比が50:1〜100:1の範囲にあり、かつ/またはポリエステル樹脂AとポリイソシアネートBとの重量比が1.6〜0.75の値を有するような比率で使用される。このプライマー組成物は、特に、プラスチックおよび塗料、特に自動車用塗料に対する有効な接着に関して注目に値する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライマー組成物の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
接着結合は、広く使用される接合技術である。相互に結合されることが考えられる基材は多数にわたるため、ある接着剤を用いて、いかなる接着も、あるいは十分な接着を作り出すことのできない基材が常に存在する。このような基材に対する接着剤およびシーラントの接着を促進するために、既に比較的長い間、特定のプライマーが使用されてきた。
【0003】
プラスチックおよび塗装された基材は、工業的製造のための極めて重要な基材である。塗料の種類は様々なので、特に、塗装された表面は、結合するのが困難であることが知られている類の基材である。一成分型ポリウレタン接着剤またはシーラントと組み合わせたより新世代の自動車用塗料は、特に不可欠である。
【0004】
したがって、塗料に対する接着を高めるための前処理法を開発することが試みられてきた。例えば、US4,857,366には、p-トルエンスルホン酸を含む塗料用アンダーコートが開示されており、WO-A-99/31191には、塗料接着性の向上をもたらすといわれる、ヒドロカルビル置換芳香族スルホン酸のアルキルアルコール溶液、または芳香族もしくはアルキル芳香族溶剤溶液が開示されている。
【0005】
他方、WO-A-2004/033519には、ポリウレタンプレポリマー、さらにビスマス化合物および芳香族窒素化合物から得られる触媒系を含み、塗料接着性の顕著な向上をもたらすプライマー組成物が開示されている。US-A-2003/0084995には、樹脂およびポリイソシアネート、触媒および溶剤を含むプライマー組成物が開示されている。樹脂およびポリイソシアネートとしては、考え得る一連の物質が言及されている。さらに、この種の組成物は、PVC、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリスチレンおよびEPDMなどのプラスチックのためのプライマーとして使用できることが開示されている。
【特許文献1】US4,857,366
【特許文献2】WO-A-99/31191
【特許文献3】WO-A-2004/033519
【特許文献4】US-A-2003/0084995
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、プラスチックおよび塗料、特に塗料に対するポリウレタン接着剤およびシーラントの接着を強く促進する新規プライマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、請求項1に記載の極めて特定のプライマー組成物は、塗料およびプラスチックに対するポリウレタン接着剤の接着に関して、顕著な向上をもたらすことが明らかになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、イソシアネート基を含む特定の結合剤を含有するプライマー組成物に関する。
【0009】
この特定結合剤は、室温で固体であり、少なくとも1つのOH基を含む非晶質ポリエステル樹脂Aと、式(I)の少なくとも1種のポリイソシアネートB
【0010】
【化1】

【0011】
との混合物から調製される。
【0012】
式(I)のポリイソシアネートBは、トリス(p-イソシアナトフェニル)チオホスフェートとも呼ばれる。これは、好ましくは、溶剤、特にエステル溶液として使用される。特に好ましい形態は、Bayer社からDesmodur(登録商標)RFEとして商業的に入手可能な形態である。Bayer社からの詳細によれば、Desmodur(登録商標)RFEは、27%濃度のトリス(p-イソシアナトフェニル)チオホスフェートのエチルアセテート溶液である。
【0013】
この場合、固体ポリエステル樹脂AとポリイソシアネートBとの比率は、NCO基とOH基との化学量論比が50:1〜100:1の範囲にあり、かつ/またはポリエステル樹脂AとポリイソシアネートBとの重量比が1.6〜0.75、特に1.2〜0.8の値であるような比率で使用される。特に、NCO基とOH基との化学量論比は50:1〜100:1の範囲にあり、ポリエステル樹脂AとポリイソシアネートBとの重量比は1.6〜0.75、特に1.2〜0.8の値である。
【0014】
特に、ポリエステル樹脂AとポリイソシアネートBとの重量比は約1:1である。
【0015】
ポリエステル樹脂Aは、少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つのOH基を有し、非晶質であり、室温で固体である。それは、環球法で測定した場合に、140℃を超える、特に150〜160℃の融点(メルトフロー)を有する。他方、ポリエステル樹脂Aは、25℃で、好ましくは70〜85、特に75〜85、より好ましくは77〜82のショアD硬度を有する。
【0016】
適合するポリエステル樹脂Aは、特に少なくとも1種のジカルボン酸と少なくとも1種のグリコールとから調製される。ポリエステル樹脂Aは、好ましくは、12,000g/モルを超える、特に15,000〜40,000g/モルの分子量を有する。さらに好ましくは、ポリエステル樹脂Aは、2〜9、特に3〜6mgKOH/gのOH価を有する。さらに好ましくは、ポリエステル樹脂は芳香族ポリエステル樹脂である。
【0017】
ポリエステル樹脂Aは、典型的には、次式(II)の構造を有する。
【0018】
【化2】

【0019】
ここで、基R1およびR2は、互いに独立に、二価の有機基を表し、nは、繰り返し単位の個数を示す。
【0020】
特に好ましいポリエステル樹脂Aは、Bostik社から製品シリーズVitel(登録商標)の2000番シリーズの範囲で販売されているものである。特に、Vitel(登録商標)2100、Vitel(登録商標)2180、Vitel(登録商標)2190、Vitel(登録商標)2000、Vitel(登録商標)2200、Vitel(登録商標)2300およびVitel(登録商標)2700である。Vitel(登録商標)2200およびVitel(登録商標)2200Bが特に好ましい。
【0021】
イソシアネート基を含む結合剤は、少なくとも、式(I)のポリイソシアネートBと、少なくとも1個のOH基を含むポリエステル樹脂Aとを混合することによって調製される。混合は、NCO基とOH基との化学量論比が50:1〜100:1の範囲にあるように、かつ/またはポリエステル樹脂AとポリイソシアネートBとの重量比が1.2〜0.8の値になるように行われる。
【0022】
したがって、調製されるものは、本質的に、2分子のポリイソシアネートBと1分子のポリエステル樹脂Aとの付加物、したがって、4個の遊離イソシアネート基を有する式(III)の付加物であると推定できる。
【0023】
【化3】

【0024】
調製は、好ましくは、初めに少なくとも1種のポリイソシアネートBを導入し、そこへ少なくとも1種のポリエステル樹脂を、好ましくは有機溶剤溶液の状態で、撹拌しながら、不活性ガス雰囲気下で添加することによって行われる。該当するなら、ポリエステル樹脂Aの溶解用に使用するのに適した有機溶剤としては、特にケトンまたはエステルが挙げられる。メチルエチルケトン(「MEK」)またはエチルアセテートが好ましい。
【0025】
一実施形態において、プライマー組成物は、少なくとも1種の有機溶剤を含む。好ましい溶剤は、ケトンまたはエステル、特にエステル、好ましくはエチルアセテートである。
【0026】
他の実施形態において、プライマー組成物は、少なくとも2種の有機溶剤を含む。一方の溶剤としてはエステルが、第2の溶剤としてはケトンが特に好ましい。溶剤は、一方の溶剤に関しては特にエチルアセテート、他方の溶剤に関してはケトン、好ましくはメチルエチルケトンである。
【0027】
ポリエステル樹脂Aと少なくとも1種のポリイソシアネートBとの混合物から調製される結合剤画分は、プライマー組成物の重量を基準にして、10重量%〜50重量%、特に、15重量%〜30重量%であるのが好ましい。
【0028】
好ましい1つの実施形態において、ポリイソシアネートBの画分は、少なくとも1種のポリイソシアネートB'で、かつ/または少なくとも1種のポリイソシアネートB''で、かつ/または少なくとも1種のポリイソシアネートB'''で化学量論的に置き換えられる。これに関して、ポリイソシアネートBの一部のみが置き換えられ、したがって、ポリイソシアネートBの完全な置き換えではないことが重要である。ポリイソシアネートB'は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)からなるイソシアヌレートであり、ポリイソシアネートB''は、トリレンジイソシアネート(TDI)に基づいた芳香族ポリイソシアネートであり、ポリイソシアネートB'''は、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)および/またはトリレンジイソシアネート(TDI)からなるオリゴマー性ポリイソシアネート、あるいはポリメチレンポリフェニルイソシアネート、特にクルードMDIと呼ばれるものである。ここで、問題のポリイソシアネートは、好ましくは、Bayer社がDesmodur(登録商標)L75およびDesmodur(登録商標)N3300の名称で市販している類のポリイソシアネートB'およびB''である。ポリイソシアネートB'''は、好ましくは、Degussa社がVestanat(登録商標)T1890の名称で、またはDow社がVorante(登録商標)M580の名称で市販している類のオリゴマー性ポリイソシアネートである。
【0029】
イソシアネート基を含む結合剤を調製するためのポリイソシアネートとして、Bに加え、B'および/またはB''および/またはB'''も使用する場合には、ポリイソシアネートBが、B、B'、B''およびB'''の重量和の50重量%を超えると有利である。
【0030】
イソシアネート基を含む結合剤を調製するためのポリイソシアネートとして、Bに加え、B'および/またはB''および/またはB'''も使用する場合には、ポリエステル樹脂Aと、B、B'、B''およびB'''の重量和との重量比が、1.6〜0.75、特に1.2〜0.8の値であると有利である。
【0031】
好ましい1つの実施形態において、プライマー組成物は、少なくとも、フィラーとしてのカーボンブラックを含む。カーボンブラックは、プライマー組成物中に、プライマー組成物の重量を基準にして、1重量%〜20重量%、特に、2重量%〜15重量%の量で存在するのが好ましい。
【0032】
プライマー組成物中に、例えば、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、2-メチルペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、2,2,4-および2,4,4-トリメチルヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(TMDI)、ドデカメチレン1,12-ジイソシアネート、シクロヘキサン1,3-および1,4-ジイソシアネートおよびこれら異性体の任意の所望する混合物、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(=イソホロンジイソシアネートまたはIPDI)、パーヒドロ-2,4'-および-4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(HMDI)、1,4-ジイソシアナト-2,2,6-トリメチルシクロヘキサン(TMCDI)、m-およびp-キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレン1,3-および1,4-ジイソシアネート(TMXDI)、1,3-および1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、トルエン2,4-および2,6-ジイソシアネート(TDI)、およびこれら異性体の任意の所望する混合物、ジフェニルメタン4,4'-、2,4'-および2,2'-ジイソシアネート(MDI)およびこれら異性体の任意の所望する混合物、フェニレン1,3-および1,4-ジイソシアネート、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-ジイソシアネートベンゼン、ナフタレン1,5-ジイソシアネート(NDI)、3,3'-ジメチル-4,4'-ジイソシアナトビフェニル(TODI)、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(=イソホロンジイソシアネートまたはIPDI)、パーヒドロ-2,4'-および-4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(HMDI)、1,4-ジイソシアナト-2,2,6-トリメチルシクロヘキサン(TMCDI)、テトラメチレン1,4-ジイソシアネート、2-メチルペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、2,2,4-および2,4,4-トリメチルヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(TMDI)、ドデカメチレン1,12-ジイソシアネート、リシンジイソシアネートおよびリシンエステルジイソシアネート、1,3-および1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(BIC)、m-およびp-キシリレンジイソシアネート(m-およびp-XDI)、1,3,5-トリス(イソシアナトメチル)ベンゼンまたはビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ナフタレンなどのさらなるポリイソシアネートが存在するのが極めて有利である場合がある。
【0033】
プライマー組成物は、触媒、チクソトロピー剤、分散剤、湿潤剤、腐食防止剤、接着促進剤特にアルコキシシランおよびチタネート、UV安定剤および熱安定剤、顔料、染料、ならびにUV指示薬などのさらなる成分を含むことができる。
【0034】
適切な触媒の例としては、錫触媒、ビスマス触媒およびアミン触媒が挙げられる。
【0035】
適切な錫触媒としては、特に、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセチルアセトネート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジカルボキシレート、モノ-またはジブチル錫チオエステル、およびジブチル錫ジクロリドなどの有機錫化合物が挙げられる。
【0036】
適切なビスマス触媒としては、特に、ビスマスカルボキシレート、特にビスマストリカルボキシレート、ならびにビスマス化合物および有機窒素化合物から得られ、WO-A-2004/033519に記載のビスマス触媒系が挙げられる。この目的に適した芳香族窒素化合物は、特に8-ヒドロキノリンである。
【0037】
プライマー組成物は、これがプラスチックおよび塗装された表面に対する接着剤またはシーラントの接着の向上をもたらし、その結果、プライマーとして使用され得るという事実において注目に値する。
【0038】
特に、プラスチック、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)およびポリカーボネートに関して、効果的な接着を観察することができた。
【0039】
塗装された表面には、特に、塗料で被覆された、ガラス、木材、金属、金属合金、プラスチックなどの基材、ならびにコンクリート、岩石またはレンガなどの鉱物基材が含まれる。
【0040】
特に重要な塗料としては、輸送手段の塗料、特に自動車用塗料が挙げられる。最も重要な塗料は、新世代の自動車用塗料、特に、接着剤とりわけ一成分湿気硬化型ポリウレタン接着剤またはシーラントが接着上の問題を引き起こす場合のあることが知られている、複合焼付塗料である。
【0041】
本発明は、さらに、接着結合の方法またはシーリングの方法を提供する。特に、この方法に属する3つの方式がある。
【0042】
第1の方式においては、
a)結合されるまたは密閉される第1基材S1に、プライマー組成物を塗布する工程、
b)基材S1上に配置されたフラッシュオフされたプライマー組成物に、接着剤またはシーラントを塗布する工程、
c)この接着剤またはシーラントを第2基材S2と接触させる工程
を含む。
【0043】
第2の方式においては、
a')結合されるまたは密閉される第1基材S1に、プライマー組成物を塗布する工程、
b')基材S1と同一または異なる材料からなる第2基材S2の表面に、接着剤またはシーラントを塗布する工程、
c')この接着剤またはシーラントを、基材S1上に配置されたフラッシュオフされたプライマー組成物と接触させる工程
を含む。
【0044】
第3の方式においては、
a'')結合されるまたは密閉される第1基材S1についてプライマー組成物を塗布する工程、
b'')このプライマー組成物をフラッシュオフする工程、
c'')基材S1およびS2の表面間に、接着剤またはシーラントを塗布する工程
を含む。
【0045】
本方法のこれら方式のすべてにおいて、第2基材S2は、第1基材S1と同一または異なる材料からなることができる。
【0046】
第1基材S1は、好ましくは、塗料、特に塗装された金属である。塗装された表面には、特に、塗料で被覆された、ガラス、木材、金属、金属合金、プラスチックなどの基材、ならびにコンクリート、岩石またはレンガなどの鉱物基材が含まれる。
【0047】
特に重要な塗料としては、輸送手段のための塗料、特に自動車用塗料、中でも自動車用トップコート材料およびカチオン電着塗装材が挙げられる。最も重要な塗料は、新世代の自動車用塗料、特に、接着剤とりわけ一成分湿気硬化型ポリウレタン接着剤またはシーラントが接着上の問題を引き起こす場合のあることが知られている、複合焼付塗料である。
【0048】
第2基材S2がS1と異なる材料に属する場合には、第2基材S2は、特にガラスまたはセラミックに属する。
【0049】
本方法のさらなる実施形態において、前述の3方法の場合、工程c)、c')、またはc'')の後に、接着剤またはシーラントを硬化させる工程d)が続く。
【0050】
使用する接着剤またはシーラントに応じて、この工程は、工程c)、c')、またはc'')の直後に、あるいは時間を隔てて行われる。
【0051】
各種の異なる接着剤またはシーラントを使用できる。結合されたまたは密閉された構造物の使用および活動場所に応じて、問題の接着剤またはシーラントは、エポキシ樹脂ベースの、イソシアネートベースの、(メタ)アクリレートを基にした、または末端がシランであるポリマー(「STP」)またはシリコーンを基にしたものであってよい。問題の接着剤またはシーラントは、例えば、室温硬化型接着剤またはシーラント、ホットメルト接着剤(「ホットメルト」として知られている)、分散液ベースの接着剤またはシーラント、あるいは感圧接着剤であってよい。
【0052】
接着剤またはシーラントは、一成分型または多成分型であってよい。好ましくは、接着剤またはシーラントは一成分型である。
【0053】
しかし、特に、問題の系は、一成分型ポリウレタン接着剤またはシーラントである。ここでおよび本発明の文書中で、ポリウレタン接着剤およびポリウレタンシーラントとは、遊離イソシアネートおよび/またはアルコキシシラン基を含むプレポリマーを含有し、ウレタン基および/またはウレア基を含む接着剤およびシーラントを意味する。したがって、用語「ポリウレタン」は、従来からのポリウレタンのみならず、当業者にとって「シラン末端ポリウレタン」(「SPUR」)の用語でも知られているシラン末端ポリウレタンをも包含する。
【0054】
ポリウレタンの他にも、接着剤またはシーラントには、当業者にとって「MSポリマー」の用語で知られている類のアルコキシシラン末端ポリマーを使用することもできる。
【0055】
接着剤またはシーラントは、好ましくは、湿気硬化一成分型ポリウレタン接着剤またはシーラントである。特に好ましいものとして、湿気硬化一成分型ポリウレタン接着剤またはポリウレタンシーラント、特に、例えば、Sika Schweiz AGからSikaflex(登録商標)として商業的に入手可能な類の湿気硬化一成分型ポリウレタン接着剤がある。
【0056】
本発明は、さらに、結合されたまたは密閉された物品を提供する。これらの結合されたまたは密閉された物品は、ここに記載した方法によって得られる。
【0057】
この方法で得られる結合されたまたは密閉された物品は、多様な種類におよぶ。特に、それらの物品は、工業的製造の分野から得られ、好ましくは、輸送手段、特に自動車である。それらは、表面取付け部品でもよい。この種の表面取付け部品は、特に、生産ラインでモジュールとして使用され、特に、接着結合によって取付けまたは設置される、事前に組み立てられたモジュール部品である。これらの事前に組み立てられた表面取付け部品は、好ましくは、輸送手段の建造で使用される。
【0058】
この種の表面取付け部品の例が、トラックまたは機関車の運転台、または自動車用サンルーフである。
【0059】
しかし、家具、洗濯機などの白物商品、外装材または昇降機などの建築部品の建造に応用できる可能性もある。
【0060】
(実施例)
プライマー組成物の調製
表1の量に従って、ポリイソシアネートを最初の仕込みとして溶剤またはその一部に導入し、次いで撹拌し、適切なら残りの溶媒に溶解したポリエステル樹脂溶液を、撹拌しながら窒素下で徐々に滴加し、30℃で1時間撹拌した。次いで、この溶液を40℃まで加熱し、NCO含有量が一定になるまで撹拌した。この目的のため、堅く密封可能な金属缶内に、存在するいずれかの溶媒、ドライヤー(p-トルエンスルホニルイソシアネート「TI」)、触媒(ジブチル錫ジラウレート「DBTL」)およびカーボンブラックを導入し、ガラスビーズを加え、金属缶を密封し、内容物を、Red Devil振とう装置を使用して1時間完全に混合した。
【0061】
混合操作の後、ガラスビーズを分離し、プライマー組成物を、堅く閉じたアルミニウムフラスコ内に導入した。例REF-7は、メチルエチルケトンだけである。
【0062】
【表1】


【0063】
試験方法
塗布および硬化
プライマー組成物を、それぞれ、様々な金属製自動車用塗料パネルに対する被覆として、ブラシを使用して塗布した。30分間のフラッシュオフ時間の後に、高弾性率ポリウレタン接着剤Sikaflex(登録商標)-250 DM-2、または低弾性率ポリウレタン接着剤SikaTack(登録商標)-Ultrafast(両方ともSika Schweiz AGから商業的に入手可能)を、下塗りした塗料面に、カートリッジプレスおよびノズルを使用して環状ビードとして塗布した。
【0064】
続いて、接着剤を、23℃および相対湿度50%(室温環境貯蔵「CS」)で7日間硬化させ、下記の接着試験によってビードの3分の1を試験した。続いて、サンプルを23℃でさらに7日間水中に置いた(水中貯蔵「WS」)。その後、ビードのさらなる3分の1に対するビード試験によって接着性を試験した。その後、試料を、塗料の場合は相対湿度100%および40℃の水凝縮環境(「WCS」)に、またはプラスチックの場合は相対湿度100%および70℃の熱湿環境(「HHS」)にさらに7日間曝し、その後、ビードの最後の3分の1の接着性を測定した。
【0065】
塗料
次のトップコート塗料、すなわち、
-PPG社からのHDCT4041(「HDCT4041」)
-DuPont社からのRK8046(「RK8046」)
-DuPont社からのRK4126(「RK4126」)を付着させた金属パネルを使用した。
これらの塗料は、プライマーで前処理しないと、一成分型ポリウレタン接着剤に対する接着特性が適切でない。
【0066】
接着試験(「ビード試験」)
接着剤の接着性は、「ビード試験」によって試験した。この試験では、接着面の直ぐ上の末端に切り込みを入れる。先端が丸いピンセットで切り込んだビードの末端を握り、基材から引っ張る。これは、ピンセットの先端にビードを注意深く巻き上げること、およびビードを引く方向に対して垂直に被覆のない基材に向かって切れ目を入れることによってなされる。ビードを取り去る速度は、切れ目を約3秒ごとに入れなければならないように選択される。試験の長さは、少なくとも8cmに達しなければならない。ビードが引き剥がされた(凝集破壊)後に基材上に残った接着剤について評価する。接着特性は、接着面の凝集破壊を評価することによって評価する。すなわち、
1=>95%凝集破壊
2=>75〜95%凝集破壊
3=>25〜75%凝集破壊
4=<25%凝集破壊
5=0%凝集破壊(純粋の接着破壊)
評価中の「P」は、基材からのプライマーの剥離を意味する。
【0067】
75%未満の凝集破壊値を有する試験結果は、不適切と考えられる。
【0068】
結果
接着結果を表2および3にまとめる。一方で、この表は、本発明のプライマー組成物に関して、不可欠な塗料に対する接着性の改善が顕著に向上することを示している。他方、例えば、B2-1、B2-2およびB2-3のB3-1、B3-2およびB3-3との比較から、接着性に対する、プライマー組成物における配合添加物としてのカーボンブラックの有利な効果も明らかである。
【0069】
比較例REF-1〜REF-6は、さらに、不可欠な塗料基材に対する接着を達成する上での、NCO基とOH基との化学量論比の、そしてまたポリエステル樹脂AとポリイソシアネートBとの重量比の重要性を立証している。
【0070】
【表2】


【0071】
【表3】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基を含み、かつ、室温で固体であり少なくとも1つのOH基を含む非晶質ポリエステル樹脂Aと、式(I)の少なくとも1種のポリイソシアネートB
【化1】

との混合物から調製される少なくとも1種の結合剤を含有するプライマー組成物であって、該固体ポリエステル樹脂AおよびポリイソシアネートBが、NCO基とOH基との化学量論比が50:1〜100:1の範囲にあり、かつ/またはポリエステル樹脂AとポリイソシアネートBとの重量比が1.6〜0.75、特に1.2〜0.8の値を有するような比率で使用される、プライマー組成物。
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂Aが、少なくとも1種のジカルボン酸と少なくとも1種のグリコールとから調製可能であることを特徴とする、請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂Aが、25℃で、70〜85、特に77〜82のショアD硬度を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のプライマー組成物。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂Aが、3〜6mg/KOHのOH価を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のプライマー組成物。
【請求項5】
少なくとも1種の有機溶剤、特にエステル、好ましくはエチルアセテートをさらに含有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のプライマー組成物。
【請求項6】
少なくとも2種の有機溶剤、特にエチルアセテートと、少なくとも1種のさらなる有機溶剤、特にケトン、好ましくはメチルエチルケトンとを含有することを特徴とする、請求項5に記載のプライマー組成物。
【請求項7】
少なくとも1種のカーボンブラックをさらに含有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のプライマー組成物。
【請求項8】
カーボンブラックの量が、プライマー組成物の重量を基準にして、1重量%〜20重量%、特に、2重量%〜15重量%であることを特徴とする、請求項7に記載のプライマー組成物。
【請求項9】
前記ポリイソシアネートBの画分が、少なくとも1種のポリイソシアネートB'で、かつ/または少なくとも1種のポリイソシアネートB''で、かつ/または少なくとも1種のポリイソシアネートB'''で化学量論的に置き換えられ、前記ポリイソシアネートB'が、ヘキサメチレンジイソシアネートからなるイソシアヌレートであり、前記ポリイソシアネートB''が、トリレンジイソシアネートを基にした芳香族ポリイソシアネートであり、前記ポリイソシアネートB'''が、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)および/またはトリレンジイソシアネート(TDI)からなるオリゴマー性ポリイソシアネート、あるいはポリメチレンポリフェニルイソシアネートであることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のプライマー組成物。
【請求項10】
前記ポリエステル樹脂Aと少なくとも1種のポリイソシアネートBとの混合物から調製された結合剤画分が、プライマー組成物の重量を基準にして、10重量%〜50重量%、特に、15重量%〜30重量%であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のプライマー組成物。
【請求項11】
塗装された表面に対する接着剤またはシーラントの接着を促進するためのプライマーとしての、請求項1から10のいずれか一項に記載のプライマー組成物の使用。
【請求項12】
プラスチック、特に、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)またはポリメチルメタクリレート(PMMA)に対する接着剤またはシーラントの接着を促進するためのプライマーとしての、請求項1から10のいずれか一項に記載のプライマー組成物の使用。
【請求項13】
a)結合されるまたは密閉される第1基材S1に、請求項1から10のいずれか一項に記載のプライマー組成物を塗布する工程、
b)前記基材S1上に配置されたフラッシュオフされたプライマー組成物に、接着剤またはシーラントを塗布する工程、
c)前記接着剤またはシーラントを第2基材S2と接触させる工程
を含み、あるいは、
a')結合されるまたは密閉される第1基材S1に、請求項1から10のいずれか一項に記載のプライマー組成物を塗布する工程、
b')前記基材S1と同一または異なる材料からなる第2基材S2の表面に、接着剤またはシーラントを塗布する工程、
c')前記接着剤またはシーラントを、前記基材S1上に配置されたフラッシュオフされたプライマー組成物と接触させる工程
を含み、あるいは、
a'')結合されるまたは密閉される第1基材S1に、請求項1から10のいずれか一項に記載のプライマー組成物を塗布する工程、
b'')前記プライマー組成物をフラッシュオフする工程、
c'')前記基材S1およびS2の表面間に、接着剤またはシーラントを塗布する工程
を含み、
前記第2基材S2が、前記第1基材S1と同一または異なる材料からなる、接着結合方法またはシーリング方法。
【請求項14】
工程c)、c')またはc'')の後に前記接着剤またはシーラントを硬化する工程d)が続くことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記接着剤またはシーラントが、湿気硬化一成分型ポリウレタン接着剤またはシーラントであることを特徴とする、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記基材S1が、塗料、特に塗装された金属であることを特徴とする、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項13から16のいずれか一項に記載の方法によって得られた結合されたまたは密閉された物品。
【請求項18】
輸送手段、特に自動車、または輸送手段、特に自動車の外装部品であることを特徴とする、請求項17に記載の結合されたまたは密閉された物品。

【公開番号】特開2007−51287(P2007−51287A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−220090(P2006−220090)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】