説明

プラグ及びコネクタ装置

【課題】プラグ側コンタクトの嵌合ガイドの長さが短くても、挿入力を軽減できるプラグ及びコネクタ装置を提供する。
【解決手段】本発明のプラグは、長手方向の軸線Bを有すると共に先端部分の外面に嵌合ガイド32を有するプラグ側コンタクト30を備えるプラグであって、嵌合ガイド32は、プラグ側コンタクト30の先端から軸線Bに沿って遠ざかるに従い、軸線Bに対する角度が連続的に減少する曲面を含む、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラグ、及びそのプラグを用いるコネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サーバやルータ等の電子回路に組み込まれるコネクタ装置は、多極化、小型化が進んでおり、コネクタ装置のプラグ及びソケットには多数の配線を接続するために、より多くのコンタクト(端子)が設けられるようになった。例えば、特許文献1には、多数のコンタクトを有するコネクタソケットモジュールが開示されている。
【0003】
また、ソケット側の二股ないしフォーク状のコンタクト(以下、ソケット側コンタクトと呼ぶ)にプラグ側のピン状のコンタクト(以下、プラグ側コンタクトと呼ぶ)を挿入する形式のコネクタ装置が知られている。このコネクタ装置は、コンタクトの数が増加するにつれて、プラグをソケットに挿入するために必要とされる挿入力が比例的に増加する。
【0004】
この種のコネクタ装置では、プラグ側コンタクトは一般に、いわゆる嵌合ガイドとして、プラグ側コンタクトの長手方向軸線に対して一様な角度で傾斜した外面を有するテーパ形状の先端部分を備えている。そして、プラグ側コンタクトの長さは、ソケット側コンタクトに適正に接触可能な部分の長さ(有効嵌合長)を確保した上で、嵌合ガイドの軸線に対する角度(以下、テーパ角度と記載する場合がある)を充分に小さくして挿入力を軽減できる程に長いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−273432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年においてはさらなるコネクタ装置の小型化が進み、プラグ側コンタクトの長さを短くすることが求められている。プラグ側コンタクトの長さが短い場合でも、ソケット側コンタクトとの接触の信頼性を確保するためには所定の有効嵌合長を設ける必要があり、そのため、従来のよう長い嵌合ガイドを設けてテーパ角度を充分に小さくすることが困難になる。
【0007】
そこで、プラグ側コンタクトの嵌合ガイドの長さが短くても、挿入力を軽減できるプラグ及びそのプラグを用いるコネクタ装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、長手方向の軸線を有すると共に先端部分の外面に嵌合ガイドを有するプラグ側コンタクトを備えるプラグであって、前記嵌合ガイドは、前記プラグ側コンタクトの先端から前記軸線に沿って遠ざかるに従い、前記軸線に対する角度が連続的に減少する曲面を含む、ことを特徴とするプラグを提供する。
【0009】
また、本発明の別の態様は、長手方向の軸線を有すると共に先端部分の外面に嵌合ガイドを有するプラグ側コンタクトを備えるプラグであって、前記嵌合ガイドは、前記プラグ側コンタクトの先端から前記軸線に沿って遠ざかるに従い、前記軸線に対する角度が段階的に減少する複数の斜面を含む、ことを特徴とするプラグを提供する。
【0010】
また、前記複数の斜面は、曲面により滑らかに接続している、プラグを提供する。
【0011】
また、本発明のさらに別の態様は、長手方向の軸線を有すると共に先端部分の外面に嵌合ガイドを有するプラグ側コンタクトを備えたプラグと、前記プラグ側コンタクトを受容する受容部を有するソケット側コンタクトを備えたソケットと、を備えるコネクタ装置であって、前記ソケット側コンタクトの前記受容部は、前記プラグ側コンタクトを挟持する弾性変位可能な第一接片と第二接片とを備えており、前記プラグ側コンタクトの前記嵌合ガイドは、前記ソケット側コンタクトの前記第一接片に接触する第一接触面と前記第二接片に接触する第二接触面とを有し、前記嵌合ガイドの前記第一接触面と前記第二接触面との少なくとも一方は、前記プラグ側コンタクトの先端から前記軸線に沿って遠ざかるに従い、前記軸線に対する角度が連続的に減少する曲面を含む、ことを特徴とするコネクタ装置を提供する。
【0012】
また、本発明のさらに別の態様は、長手方向の軸線を有すると共に先端部分の外面に嵌合ガイドを有するプラグ側コンタクトを備えたプラグと、前記プラグ側コンタクトを受容する受容部を有するソケット側コンタクトを備えたソケットと、を備えるコネクタ装置であって、前記ソケット側コンタクトの前記受容部は、前記プラグ側コンタクトを挟持する弾性変位可能な第一接片と第二接片とを備えており、前記プラグ側コンタクトの前記嵌合ガイドは、前記ソケット側コンタクトの前記第一接片に接触する第一接触面と前記第二接片に接触する第二接触面とを有し、前記嵌合ガイドの前記第一接触面と前記第二接触面との少なくとも一方は、前記プラグ側コンタクトの先端から前記軸線に沿って遠ざかるに従い、前記軸線に対する角度が段階的に減少する複数の斜面を含む、ことを特徴とするコネクタ装置を提供する。
【0013】
また、前記複数の斜面は、曲面により滑らかに接続している、コネクタ装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のプラグでは、そのプラグ側コンタクトが、その先端から軸線に沿って遠ざかるに従い、軸線に対する角度(テーパ角度)が連続的に減少する曲面を含む嵌合ガイドを有している。そのため、プラグ側コンタクトの先端付近では、比較的テーパ角度を大きくすることができるので、従来のように一様な角度によるテーパー角度で形成された嵌合ガイドと比べると嵌合ガイドの長さを短くすることができる。嵌合ガイドの長さを短くすることで、プラグ側コンタクトの有効嵌合長を確保しつつプラグ側コンタクトをより小型化することができる。
【0015】
また、本発明のプラグでは、そのプラグ側コンタクトが、その先端からその軸線に沿って遠ざかるに従い、軸線に対する角度(テーパ角度)が段階的に減少する複数の斜面を含む嵌合ガイドを有している。プラグ側コンタクトの先端付近を、比較的大きいテーパ角度の斜面で形成するので、従来のように一様な角度によるテーパ角度で形成された嵌合ガイドと比べると嵌合ガイドの長さを短くすることができる。
【0016】
また、本発明のコネクタ装置では、ソケットが弾性変形可能な第一及び第二接片によりプラグ側コンタクトを挟持する受容部を有するソケット側コンタクトを備えている。このようなソケット側コンタクトは、プラグ側コンタクトを挿入する初期段階においては、第一及び第二接片の変形量が小さいので、それぞれの接片がプラグ側コンタクトを押圧して挟持する力(接触力)も小さい。一方、プラグ側コンタクトの挿入が進むと、第一及び第二接片の変形量が大きくなり、それぞれの接片のプラグ側コンタクトに対する接触力も大きくなり、挿入に必要な挿入力も大きくなる。本発明のコネクタ装置では、プラグが軸線に対する角度(テーパ角度)が連続的に減少する曲面を含む嵌合ガイドを有するプラグ側コンタクトを備えている。そのため、挿入の初期段階では、比較的大きなテーパ角度でソケット側コンタクトの第一及び第二接片に接触するが、上述のように第一及び第二接片の接触力が弱いため、プラグ側コンタクトの挿入に大きな力を必要としない。そのため、先端付近では、テーパ角度を大きくして嵌合ガイドの長さを短くすることができる。一方、挿入が進み第一及び第二接片の接触力が大きくなる位置においては嵌合ガイドのテーパ角度が小さくなるので、挿入力を軽減することができる。従って、このようなプラグ側コンタクトが複数設けられたプラグを用いれば、コネクタ装置を小型化できると共に、プラグの挿入力を軽減されたコネクタ装置を実現できる。
【0017】
また、本発明のコネクタ装置では、プラグが、軸線に対する角度(テーパ角度)が段階的に減少する複数の斜面を含む嵌合ガイドを有するプラグ側コンタクトを備えてもよい。プラグ側コンタクトの先端付近ではテーパ角度の大きい斜面で形成することにより嵌合ガイドの長さを短くしつつ、第一及び第二接片の接触力が大きくなる位置ではデーパ角度の小さい斜面を形成することで挿入力を軽減することができる。従って、そのようなプラグ側コンタクトが複数設けられたプラグを用いれば、コネクタ装置を小型化できると共に、プラグの挿入力を軽減されたコネクタ装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第一実施形態のコネクタ装置を示す斜視図である。
【図2】図2(a)は第一実施形態のプラグのプラグ側コンタクトとソケットのソケット側コンタクトとを示す斜視図であり、図2(b)は、ソケット側コンタクトがプラグ側コンタクトを挟持した状態を示す側面図である。
【図3】第一実施形態のプラグのプラグ側コンタクトの上半分を示す側面図であり、
【図4】第二実施形態のプラグのプラグ側コンタクトの上半分を示す側面図である。
【図5】第一実施形態のプラグのプラグ側コンタクトと第二実施形態のプラグのプラグ側コンタクトとをソケット側コンタクトに挿入した場合の挿入力の変化を示すグラフである。
【図6】第三実施形態のプラグのプラグ側コンタクトの上半分を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。また、以下の実施形態において同一又は類似の構成要素には共通の参照符号を付して示している。
【0020】
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態のコネクタ装置1を示す斜視図である。本実施形態のコネクタ装置1はソケット2及びプラグ3とから構成されている。プラグ3にはプラグ側コンタクト30が複数個、並列して設けられており、ソケット2にはそれぞれのプラグ側コンタクト30を受容するソケット側コンタクト20が設けられている。
【0021】
図2(a)は、コネクタ装置1に設けられるソケット2のソケット側コンタクト20とプラグ3のプラグ側コンタクト30とを示す斜視図であり、プラグ側コンタクト30がソケット側コンタクト20に挿入される前の状態を示す図である。図2(b)は、プラグ側コンタクト30をソケット側コンタクト20に挿入した状態を示す側面図であり、ソケット側コンタクト20がプラグ側コンタクト30を挟持した状態を示している。
【0022】
プラグ側コンタクト30は、長手方向の中心軸線Bを有する細長の部材であり、一定の厚みDを有する本体部分31と先端部分の外面に形成される嵌合ガイド32とを有する。嵌合ガイド32はプラグ側コンタクト30をソケット側コンタクト20に挿入しやすいよう、中心軸線Bに対して傾斜して先細になっている。本実施形態は嵌合ガイド32の形状に特徴があり、その詳細については後述する。また、プラグ側コンタクト30は金属製の導体部材であり、ソケット側コンタクト20に挿入され嵌合することで通電可能になる。
【0023】
ソケット側コンタクト20は金属製の導体部材であり、プラグ側コンタクト30を受容する受容部21を備えている。そして、受容部21においてプラグ側コンタクト30を挟持するために、弾性変位可能な第一接片22a及び第二接片22bを備えている。図に示すように、第一接片22a及び第二接片22bは中心軸線Bを対称軸として上下対称に形成されている。第一接片22a及び第二接片22bは互いに間隔を開けて平行になるよう設けられて、その間にプラグ側コンタクト30が挿入される。また、第一接片22a及び第二接片22bはそれらの根元部分24において一体化されている。第一接片22a及び第二接片22bの先端部分には、プラグ側コンタクト30と直接的に接触する、互いに対向するよう突起した突起部23a、23bが形成されている。この二つの突起部23a、23bの間には隙間25が設けられており、隙間25を通してプラグ側コンタクト30がソケット側コンタクト20に挿入される。隙間25の大きさは、第一接片22a及び第二接片22bが撓んでいない初期状態では、プラグ側コンタクト30の本体部分31の厚みDより若干小さくなっている。図2(b)に示すようにプラグ側コンタクト30が隙間25に挿入されると、第一接片22a及び第二接片22bが弾性変形して、それぞれの接片の突起部23a、23bでプラグ側コンタクト30を押圧する。このようにして、ソケット側コンタクト20はプラグ側コンタクト30を挟持することができる。そして、ソケット側コンタクト20に挿入されるプラグ側コンタクト30の本体部分31(番号31aで示す部分)の長さLが大きいほど、有効嵌合長が大きくなり、ソケット側コンタクト20はプラグ側コンタクト30を安定して保持することができる。
【0024】
また、本実施形態の第一接片22a及び第二接片22bの突起部23a、23bはプラグ側コンタクト30を容易に挿入できるよう、ソケット側コンタクト20の側方(図2(a)のA方向)から見た形状が半円形になるよう形成されており、プラグ側コンタクト30の外面と接触する部分が曲面になっている。しかしながら、突起部23a、23bの形状は、半円形に限定されず、他の形状例えば半楕円形、四角形、又は中心軸線Bに対して傾斜した斜面を有する三角形であってもよい。
【0025】
プラグ3に設けられるプラグ側コンタクト30、特に先端部分の外面に設けられる嵌合ガイド32について詳細に説明する。上述したようにプラグ側コンタクト30は金属製の導体部材で、図に示すように細長形状であり、長軸方向に中心軸線Bを有し、その中心軸線Bを対称軸として上下対称に構成されている。そして、本体部分31は一定の厚みDを有しているが、先端部分の嵌合ガイド32はソケット側コンタクト20に挿入しやすいよう中心軸線Bに対して傾斜して先細りになっている。また、嵌合ガイド32は、ソケット側コンタクト20の第一接片22aに接触する第一接触面32aと、第二接片22bに接触する第二接触面32bとを有している。
【0026】
図3は、本実施形態のプラグ3が備えるプラグ側コンタクト30の嵌合ガイド32の形状を示す図であり、図2(a)に示すA方向から見た側面図である。そして、図2(a)に示すプラグ側コンタクト30の中心軸線Bよりも上側の形状、すなわちプラグ側コンタクト30の上半分の形状を示している。また、挿入時におけるソケット側コンタクト20の第一接片22aとプラグ側コンタクト30の第一接触面32aとの接触状況を示している。上述のようにプラグ側コンタクト30は中心軸線Bを対称軸として上下対称に構成されており、嵌合ガイド32の下側の形状やその効果については上側と同様であるので、その説明を省略することとする。
【0027】
嵌合ガイド32の一部である第一接触面32aは、図に示すように、嵌合ガイド32の先端32aaから本体部分31に接続する後端32abまで、プラグ側コンタクト30の中心軸線Bに沿って先端32aaから遠ざかるに従い、中心軸線Bに対する角度θ(以下テーパ角度θと記載する場合がある。またテーパ角度θの一例は図3においてθ1、θ2で示される角度であり、その大きさが異なる場合は番号を付して区別することとする)が連続的に減少するよう構成された曲面により形成されている。すなわち嵌合ガイド32における第一接触面32aは外側に膨らんだ曲面であり、その曲面は曲率半径がR1である曲面33と、それに連続する曲率半径がR2である曲面34とにより形成されている。
【0028】
このような嵌合ガイド32を用いることで、例えば、図3に示すように、挿入の初期段階で第一接片22aがC1(実線で示す位置)に位置するとき、第一接片22aの突起部23aは第一接触面32aのテーパ角度θ1の部位に接触するが、挿入が進み第一接片22aがC2(点線で示す位置)に位置するとき、その突起部23aは第一接触面32aのテーパ角度θ1より小さいテーパ角度θ2の部位に接触するようになる。ソケット側コンタクト20のように、弾性変形する第一接片22a及び第二接片22bによってプラグ側コンタクト30を押圧して挟持する場合、挿入が進むにつれて第一接片22a及び第二接片22bの撓みが大きくなってプラグ側コンタクト30を押圧する力(接触力)が大きくなる。そのため、従来は挿入力を軽減するために比較的小さいテーパ角度、例えば第一接片22aがC2に位置するときのテーパ角度θ2で嵌合ガイドの全体を形成していた。しかしながら、比較的小さいテーパ角度θ2で一様に、直線的に傾斜した面により嵌合ガイドを形成すると、嵌合ガイドの長さを長くする必要があり、プラグ側コンタクト30の小型化を阻害する要因になった。本実施形態の嵌合ガイド32のように、先端から遠ざかるに従いテーパ角度θが連続的に減少する、すなわち先端部分に向かってテーパ角度θが連続的に増加するよう形成すれば、嵌合ガイドの先端32aaの付近では比較的大きいテーパ角度θで形成されるようになるので、嵌合ガイド32の長さL2を短くすることができる。
【0029】
次に、ソケット側コンタクト20の第一接片22aがプラグ側コンタクト30を押圧する力(接触力Pk)と、プラグ側コンタクト30を挿入する挿入力Pとの関係について説明する。上述のように、本実施形態のプラグ側コンタクト30は、先端32aaから軸線Bに沿って遠ざかるに従いテーパ角度θが減少するよう形成された嵌合ガイド32を有しており、図に示すように、第一接片22aがC1の位置にある場合、嵌合ガイド32の第一接触面32aは、第一接片22aの突起部23aにテーパ角度θ1の部位で接触している。また、図示していないが、中心軸線Bより下側の嵌合ガイド32の第二接触面32bもソケット側コンタクト20の第二接片22bの突起部23aとテーパ角度θ1の部位で接触しており、プラグ側コンタクト30の先端は第一接片22aと第二接片22bとにより押圧されて挟持されている状態となっている。プラグ側コンタクト30及びソケット側コンタクト20は、中心軸線Bを対称軸として上下対称に形成されていることから、第一接片22aの接触力と第二接片22bの接触力とは同じ値Pkで示すことができる。また、第一接触面32aと第一接片22aの突起部23aとが接触する部分の摩擦係数と、第二接触面32bと第二接片22bの突起部23aとが接触する部分の摩擦係数とをμとする。この場合、挿入力Pと、第一接片22a及び第二接片22bがプラグ側コンタクト30を押圧して挟持する力(接触力Pk)との関係は以下の式で表すことができる。
P=Pk(tanθ+μ)×2
但し、P:挿入力、Pk:接触力、θ:テーパ角度、μ:摩擦係数である。
【0030】
本実施形態のソケット側コンタクト20は、第一接片22a及び第二接片22bを弾性変形させることにより、プラグ側コンタクト30を押圧して挟持している。そのため、第一接片22a及び第二接片22bの先端が、プラグ側コンタクト30の挿入により中心軸線Bから離れるほど、第一接片22a及び第二接片22bの撓みが大きくなり、プラグ側コンタクト30を押圧する力(接触力)が大きくなる。従来の嵌合ガイドのようにテーパ角度が一様である場合はtanθの値も一定であるので、挿入の初期段階では接触力に応じて必要な挿入力が小さいが、挿入が進むにつれて挿入力が大きくなる。一方、本実施形態のプラグ側コンタクト30のように、テーパ角度θが挿入が進むにつれて小さくなればtanθの値も小さくなるので、挿入力を軽減することができる。
【0031】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態について図を用いて説明する。第一実施形態のコネクタ装置との違いは、プラグが備えるプラグ側コンタクトの形状であり、以下ではその形状について説明する。図4は第二実施形態のプラグが備えるプラグ側コンタクト40の形状を示す側面図であり、図3のプラグ側コンタクト30と同様に、中心軸線Bよりも上側の形状を示している。なお、本実施形態のコネクタ装置のソケット及びそのソケットのソケット側コンタクトは、第一実施形態のコネクタ装置が備えるソケット2及びソケット側コンタクト20と同様であるのでその説明は省略する。また、プラグ側コンタクト40は中心軸線Bを対称軸として上下対称に構成されており、嵌合ガイド42の下側の形状やその効果については上側と同様であるので、その説明を省略することとする。
【0032】
本実施形態のプラグ側コンタクト40は、第一実施形態のプラグ側コンタクト30と同様に、一定の厚みDを有する本体部分41と先端部分の外面に形成される嵌合ガイド42とを有する。本実施形態の嵌合ガイド42は、ソケット側コンタクト20の第一接片22aと接触する第一接触面42aと、図示しないがソケット側コンタクト20の第二接片22bに接触する第二接触面とを有している。第二接触面は第一接触面42aと中心軸線Bを対称軸として上下対称であるのでその説明は省略する。第一接触面42aは、中心軸線Bに対してテーパ角度θ3で直線状に傾斜した第一傾斜面43と、曲率半径がR1の曲面45aと、曲率半径がR3の曲面45bとから形成されている。曲面45aは、先端42aaと第一傾斜面43の一方の端部43aとを接続しており、曲面45bは、嵌合ガイド42の後端42abと第一傾斜面43の他方の端部43bとを接続している。曲面45a、45bともに、先端42aaから遠ざかるに従い中心軸線Bに対する角度(テーパ角度θ)が連続的に減少するよう形成されている。
【0033】
図4の嵌合ガイド42は、嵌合ガイド42の第一接触面42aの一部にテーパ角度θが連続的に減少するよう形成された曲面45a、45bを含むことで、一様なテーパ角度θ3の傾斜面のみで形成された嵌合ガイドより長さが短くなっており、その長さL3は、図3に示す嵌合ガイド32の長さL2と同じ長さになっている。また、第一傾斜面43と本体部分41の外面41aとを曲面45bで接続することで段差が無くなるため、第一接片22aの突起部23aに引掛からず挿入が容易になる。なお、嵌合ガイド42は、第一傾斜面43を含むので、嵌合ガイド42の先端42aaの高さH2は図3に示す嵌合ガイド32の先端32aaの高さH1より大きくなっている。
【0034】
ここで、プラグ側コンタクトをソケット側コンタクトに挿入したときの、挿入力Pの変化について説明する。図5は、第一実施形態のプラグ側コンタクト30と第二実施形態のプラグ側コンタクト40とを、同じソケット側コンタクト20に挿入したときの、挿入量Sに対する挿入力Pの変化を計測したグラフである。横軸の挿入量Sはソケット側コンタクト20第一接片22aの先端22aaから、中心軸線Bに沿って各プラグ側コンタクト30、40の先端32aa、42aaまで計測した距離である(図3参照)。実線は第一実施形態のプラグ側コンタクト30の変化を示し、点線は第二実施形態のプラグ側コンタクト40の挿入力の変化を示している。
【0035】
第一実施形態のプラグ側コンタクト30の場合について説明する。挿入量Sが約0.7mmとなったときに、嵌合ガイド32がソケット側コンタクト20の第一及び第二接片22a、22bに接触し接触力Pkが発生し、テーパ角度θに応じた挿入力Pが発生している。挿入が進むにつれて、第一及び第二接片22a、22bがそれぞれ外側に広がるので、第一及び第二接片22a、23bが弾性力により押圧する接触力Pkは増加する。しかしながら、テーパ角度θが減少することにより挿入力Pの増加量が減少し、挿入量Sが約1.0mmとなったところで挿入力PのピークF1に達し、その後挿入力Pは減少に転じている。そして、挿入量Sが約1.35mmになったところで嵌合ガイド32の後端32abに達し、本体部分31に移ることでテーパ角度θが0度になり、挿入力Pは接触力Pkに摩擦係数μを乗じた一定の値になっている。
【0036】
第二実施形態のプラグ側コンタクト40の場合について説明する。挿入量Sが約0.5mmとなったときに、嵌合ガイド42がソケット側コンタクト20の第一及び第二接片22a、22bに接触し接触力Pkが発生し、テーパ角度θに応じた挿入力Pが発生している。グラフから分かるように第一実施形態のプラグ側コンタクト30と比べて、挿入量が小さい地点で挿入力Pが発生しているが、これは上述したように先端42aaの高さH2が、第一実施形態のプラグ側コンタクト30の先端32aaの高さH1より高いことに起因している。接触した後は、挿入が進むにつれて、第一及び第二接片22a、22bがそれぞれ外側に広がる(撓みが大きくなる)ので、第一及び第二接片22a、22bが弾性力により押圧する接触力Pkは増加する。特に第二実施形態のプラグ側コンタクト40は、一定のテーパ角度θ3で形成された第一傾斜面43を有していることから、第一傾斜面43と第一接片22aとが接触している範囲では直線的に挿入力Pが増加する。そして挿入量Sが約1.0mmとなったときに挿入力Pは最高値F2に達しその後は曲面45bに接触して、挿入力Pは減少に転じている。そして、挿入量Sが約1.25mmになったところで嵌合ガイド42の後端42abに達し、本体部分41に移ることでテーパ角度θが0度になり、挿入力Pは接触力Pkに摩擦係数μを乗じた一定の値になっている。
【0037】
第一実施形態のプラグ側コンタクト30と第二実施形態のプラグ側コンタクト40との挿入力Pの変化を比較する。挿入力Pの最高値Fを見ると、第一実施形態のプラグ側コンタクト30の最高値F1は、第二実施形態のプラグ側コンタクト40の最高値F2より低い。また、挿入力Pが発生してから挿入力Pが一定になるまでの距離Tを比較すると、第一実施形態のプラグ側コンタクト30の距離T1は約0.65mm、第二実施形態のプラグ側コンタクト40の距離T2は約0.75mmであり、第一実施形態のプラグ側コンタクト30の距離T1の方が若干短くなっている。従って、第一実施形態のプラグ側コンタクト30の嵌合ガイド32の形状がより挿入力Pを最高値Fを軽減しつつ、挿入力Pが一定になるまでの距離Tも短いことがわかる。
【0038】
プラグ3は複数のプラグ側コンタクト30を備えており、それぞれのプラグ側コンタクトを挿入するのに必要とされる挿入力Pが軽減されれば、プラグ側コンタクトの数に応じて全体的に必要とされる挿入力も小さくなり、プラグ3の挿入を容易にするという効果を奏する。また、プラグ側コンタクトの有効嵌合長の長さを維持しつつ、その嵌合ガイドの長さを短くすることで、プラグ側コンタクトをより小型化することができる。従って、このようなプラグ側コンタクトが複数設けられたプラグを用いれば、コネクタ装置を小型化できると共に、プラグの挿入力が軽減されるコネクタ装置を実現できる。
【0039】
(第三実施形態)
次に、本発明の第三実施形態について図を用いて説明する。第一実施形態のコネクタ装置との違いは、プラグが備えるプラグ側コンタクトの形状であり、以下ではその形状について説明する。図5は第三実施形態のプラグが備えるプラグ側コンタクト50の形状を示す側面図であり、図3のプラグ側コンタクト30と同様に中心軸線Bよりも上側の形状を示している。なお、本実施形態のコネクタ装置のソケット及びそのソケットのソケット側コンタクトは、第一実施形態のコネクタ装置が備えるソケット2及びソケット側コンタクト20と同様であるのでその説明は省略する。また、プラグ側コンタクト50は中心軸線Bを対称軸として上下対称に構成されており、嵌合ガイド52の下側の形状やその効果については上側と同様であるので、その説明を省略することとする。
【0040】
本実施形態のプラグ側コンタクト50は、第一実施形態のプラグ側コンタクト50と同様に、一定の厚みDを有する本体部分51と先端部分の外面に形成される嵌合ガイド52とを有する。本実施形態の嵌合ガイド52は、ソケット側コンタクト20の第一接片22aと接触する第一接触面52aと、図示しないがソケット側コンタクト20の第二接片22bに接触する第二接触面とを有している。第二接触面は第一接触面52aと中心軸線Bを対称軸として上下対称であるのでその説明は省略する。
【0041】
プラグ側コンタクト50の嵌合ガイド52は、嵌合ガイド52の先端52aaから後端52abまで、中心軸線Bに沿って先端52aaから遠ざかるに従い、中心軸線Bに対する角度(テーパ角度θ)が段階的に減少する二つの斜面、第一傾斜面53a及び第二傾斜面53bにより形成されている。具体的には、嵌合ガイド52の第一接触面52aは、中心軸線Bに対してテーパ角度θ4で直線状に傾斜した第一傾斜面53aと、テーパ角度θ5で直線状に傾斜した第二傾斜面53bと、曲率半径がR1の曲面55aと、曲率半径がR4の曲面55bとから形成されている。曲面55aは先端52aaと第一傾斜面53aの一方の端部56aとを接続しており、曲面55bは、第一傾斜面53aの他方の端部56bと第二傾斜面53bの一方の端部56cとを接続している。また、曲面55a、55bは先端42aaから遠ざかるに従い中心軸線Bに対する角度(テーパ角度θ)が連続的に減少するよう形成されている。
【0042】
本実施形態のプラグ側コンタクト50のように嵌合ガイド52を形成すれば、嵌合ガイド52の先端に近い部分が比較的角度の大きいテーパ角度θ4で傾斜するので、嵌合ガイド52の長さL4は、従来の一定のテーパ角度で形成した場合と比べて短くなっている。また、挿入が進みソケット側コンタクト20との接触力が大きくなる地点に、比較的角度の小さいテーパ角度θ5で傾斜する第二傾斜部53bを形成しているので、挿入力を軽減することができる。また、第一接触面52aが、第一傾斜面53aと第二傾斜面53bとを滑らかに接続する曲面55bを有することで、プラグ側コンタクト50が、ソケット側コンタクト20の第一接片22aに引掛かることなく滑らかに挿入することができる。
【0043】
以上、本実施形態について添付図を用いて説明した。本発明は、プラグ側コンタクトの挿入力を軽減する手段として、ソケット側コンタクトの第一接片及び第二接片の弾性変形が小さく接触力の小さい挿入の初期段階では、嵌合ガイドのテーパ角度を大きくし、第一接片及び第二接片の弾性変形が大きくなり接触力が大きくなる部分ではテーパ角度を小さくすることで挿入力を軽減している。第一実施形態では複数の曲率半径による曲面を用いて連続的に角度が減少する嵌合ガイドを有するプラグ側コンタクトを提案したが、嵌合ガイドは別の方法で表される曲面、例えばその縦断面が二次曲線により表される曲面を用いて連続的にテーパ角度が減少するよう形成してもよい。
【0044】
また、本実施形態では、中心軸線Bを対称軸として上下対称に形成されたプラグ側コンタクトについて説明したが、必ずしもプラグ側コンタクトは上下対称でなくてもよく、上側又は下側のどちらか一方において嵌合ガイドが、軸線に対する角度が連続的に減少する曲面、又は、軸線に対する角度が段階的に減少する複数の斜面を含んでいればよい。また、それらの組合せによって嵌合ガイドが形成されてもよい。
【0045】
上述した嵌合ガイドを有するプラグ側コンタクトを用いれば、プラグ側コンタクトをソケット側コンタクトに挿入する際の挿入力を抑制又は軽減することができる。そのため、複数のプラグ側コンタクトを有するプラグを、ソケットに挿入する際に必要な挿入力を抑制することができる。また、プラグ側コンタクトの嵌合ガイドを短くすることができるので、プラグ側コンタクトの有効嵌合長を確保しつつ、プラグ自体を小型化することができ、そのプラグを用いることでコネクタ装置を小型化することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 コネクタ装置
2 ソケット
3 プラグ
20 ソケット側コンタクト
21 受容部
22a 第一接片
22b 第二接片
30、40、50 プラグ側コンタクト
31、41、51 本体部分
32、42、52 嵌合ガイド
33、43、53 第一接触面
34 第二接触面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の軸線を有すると共に先端部分の外面に嵌合ガイドを有するプラグ側コンタクトを備えるプラグであって、
前記嵌合ガイドは、前記プラグ側コンタクトの先端から前記軸線に沿って遠ざかるに従い、前記軸線に対する角度が連続的に減少する曲面を含む、ことを特徴とするプラグ。
【請求項2】
長手方向の軸線を有すると共に先端部分の外面に嵌合ガイドを有するプラグ側コンタクトを備えるプラグであって、
前記嵌合ガイドは、前記プラグ側コンタクトの先端から前記軸線に沿って遠ざかるに従い、前記軸線に対する角度が段階的に減少する複数の斜面を含む、ことを特徴とするプラグ。
【請求項3】
前記複数の斜面は、曲面により滑らかに接続している、請求項2に記載のプラグ。
【請求項4】
長手方向の軸線を有すると共に先端部分の外面に嵌合ガイドを有するプラグ側コンタクトを備えたプラグと、前記プラグ側コンタクトを受容する受容部を有するソケット側コンタクトを備えたソケットと、を備えるコネクタ装置であって、
前記ソケット側コンタクトの前記受容部は、前記プラグ側コンタクトを挟持する弾性変位可能な第一接片と第二接片とを備えており、
前記プラグ側コンタクトの前記嵌合ガイドは、前記ソケット側コンタクトの前記第一接片に接触する第一接触面と前記第二接片に接触する第二接触面とを有し、
前記嵌合ガイドの前記第一接触面と前記第二接触面との少なくとも一方は、前記プラグ側コンタクトの先端から前記軸線に沿って遠ざかるに従い、前記軸線に対する角度が連続的に減少する曲面を含む、ことを特徴とするコネクタ装置。
【請求項5】
長手方向の軸線を有すると共に先端部分の外面に嵌合ガイドを有するプラグ側コンタクトを備えたプラグと、前記プラグ側コンタクトを受容する受容部を有するソケット側コンタクトを備えたソケットと、を備えるコネクタ装置であって、
前記ソケット側コンタクトの前記受容部は、前記プラグ側コンタクトを挟持する弾性変位可能な第一接片と第二接片とを備えており、
前記プラグ側コンタクトの前記嵌合ガイドは、前記ソケット側コンタクトの前記第一接片に接触する第一接触面と前記第二接片に接触する第二接触面とを有し、
前記嵌合ガイドの前記第一接触面と前記第二接触面との少なくとも一方は、前記プラグ側コンタクトの先端から前記軸線に沿って遠ざかるに従い、前記軸線に対する角度が段階的に減少する複数の斜面を含む、ことを特徴とするコネクタ装置。
【請求項6】
前記複数の斜面は、曲面により滑らかに接続している、請求項5に記載のコネクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−142184(P2012−142184A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293958(P2010−293958)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)
【Fターム(参考)】