説明

プラグ

【課題】簡単な加工で、故障の原因となるショートを防止したプラグを提供する。
【解決手段】本発明のプラグは、中心軸Aの周囲に略均等に配置する4本の端子33と、4本の端子33の基端を支持するハウジング34と、4本の端子33の周囲を取り囲むようにハウジング34に固定される円筒状のカバー35と、を具備し、4本の端子33は、2本の電力端子33Aと、2本のアース端子33Bとを含み、4本の端子33のうち、少なくとも2本の電力端子33Aは、その先端部44に絶縁性の被覆層45を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に電力を供給するためのプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電動車椅子の充電用ケーブルに用いられるプラグとして、以下のようなものがある。このプラグは、棒状の中心導体と、中心導体を囲む円筒形の外側導体と、中心導体と外側導体との間に設けられた絶縁筒と、これらの基端を支持する絶縁性のハウジングと、を有している。中心導体は、先端部の近傍において直径の細くなった首部と、この首部に係合するとともに先端部を被う絶縁片と、を有している。また、絶縁筒は、外側導体の先端部を覆うように外側に向かって張り出している。
【0003】
このプラグは、中心導体の先端部と外側導体の先端部とがそれぞれ絶縁性の材料で被われている。このため、ユーザは、これらの先端部において感電することがないようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−373729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のプラグに対して抜き差しが繰り返し行われると、中心導体の先端を被う絶縁片が変形することが考えられる。このため、絶縁片が首部から外れてしまう恐れがあり、プラグの耐久性に難点がある問題がある。また、首部を形成する際に、中心導体に別途に加工する必要があるため、プラグの製造工程が煩雑になる問題がある。さらに、絶縁片を樹脂で成形すると、絶縁片を製造するために専用の成形型が必要となるだけでなく、部品点数が増加し、その結果製造コストが上昇してしまう問題がある。
【0005】
本発明の目的は、簡単な加工で、故障の原因となるショートを防止することができるプラグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明の一つの形態に係るプラグは、中心軸の周囲に略均等に配置する4本の端子と、前記4本の端子の基端を支持するハウジングと、前記4本の接続端子の周囲を取り囲むように前記ハウジングに固定される円筒状のカバーと、を具備し、前記4本の端子は、2本の電力端子と、2本のアース端子とを含み、前記4本の端子のうち、少なくとも前記2本の電力端子は、その先端部に絶縁性の被覆層を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡単な加工で、故障の原因となるショートを防止することが可能なプラグを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、図1から図3を参照して、プラグを適用した電子機器の実施形態について説明する。
図1に示すように、電子機器の一例であるデスクトップ型のコンピュータ11は、本体12と、ディスプレイ13と、キーボード14と、マウス15と、本体12に接続された第1の電源装置16と、ディスプレイ13に接続された第2の電源装置17と、本体12とディスプレイ13とを接続するためのケーブル18と、を備えている。
【0009】
第1の電源装置16は、第1のACアダプタ21と、第1のACアダプタ21と本体12とを接続する第1のコード22と、第1のACアダプタ21とコンセント23とを接続する第2のコード24と、を有している。第2の電源装置17は、第2のACアダプタ25と、第2のACアダプタ25とディスプレイ13とを接続する第3のコード26と、第2のACアダプタ25とコンセント23とを接続する第4のコード27と、を有している。第1のコード22は、本体12との接続部となる箇所に、プラグ31を有している。また、本体12は、その背面にプラグ31が差し込まれるコネクタ32を有している。
【0010】
図2に示すように、プラグ31は、4本の端子33と、4本の端子33の基端を支持するハウジング34と、4本の端子33の周囲を取り囲むようにハウジング34に固定される円筒状のカバー35と、カバー35に設けられた位置決めピン36と、を有している。4本の端子33は、プラグ31の中心軸Aの周囲に略均等に配置している。4本の端子33は、例えば、7mmから8mmの長さで、棒状に形成されている。4本の端子33は、本体12に電力を供給するための2本の電力端子33Aと、本体12をアースするための2本のアース端子33Bと、を含んでいる。
【0011】
本体12のコネクタ32は、4本の端子33が差し込まれる4個の差込穴41と、各差込穴41の内部に設けられた接続端子42と、位置決めピン36が差し込まれる溝部43と、を有している。4個の差込穴41は、電力端子33Aが差し込まれる2個の第1の差込穴41Aと、アース端子33Bが差し込まれる2個の第2の差込穴41Bを含んでいる。接続端子42は、上下に一対のスリットを有する円筒形状に形成されている。プラグ31の位置決めピン36をコネクタ32の溝部43に嵌めこむことによって、プラグ31は、コネクタ32に対して正しい角度で挿入される。また、プラグ31の端子33がコネクタ32の差込穴41に挿入されると、各端子33は、各差込穴41の接続端子42と電気的に接続される。
【0012】
図3に示すように、4本の端子33は、それぞれ4本の端子33は、それぞれ先端部44に絶縁性の被覆層45を有している。被覆層45は、端子33の全長に対して、例えば、1/3の長さで形成されている。なお、本実施形態では、端子33の先端部44から全長の1/3の長さで被覆層45を形成しているが、これに限定されるものではなく、端子33の全長に対して1/3以下の長さであればどのような長さでも良い。したがって、被覆層45は、例えば、端子33の全長の1/4の長さであっても良い。
【0013】
さらに、被覆層45は、端子33の全長の1/4から1/8程度の長さ、すなわち、1mmから2mmの長さで形成しても効果を発揮できる。しかしながら、端子33の全長に対して、これ以上被覆層45の長さを短くすると、十分な絶縁性を発揮することができなくなる。このため、被覆層45は、端子33の全長に対して、1/3以下で、1/8以上の長さで形成されることが好ましい。また、本実施形態では、被覆層45は、4本の端子33すべてに設けられているが、少なくとも、2本の電力端子33Aの先端部44に被覆層45を有していれば良い。
【0014】
各被覆層45は、端子33の先端部44に、絶縁性のあるフッ素樹脂、例えばテフロン(登録商標)をコーティングすることで、形成されている。フッ素樹脂は、他の樹脂に比して、すべり性、耐磨耗性、耐熱性等において優れている。これによって、プラグ31に対して繰り返し行われる抜き差しにも耐えることが可能な被覆層45を形成できる。
【0015】
続いて、本実施形態のプラグ31の製造方法について説明する。本実施形態のプラグ31は、端子33の先端部44とは反対側に位置する基端部に対して絶縁性の樹脂を成形し、ハウジング34を形成する。ハウジング34の成形後は、ハウジング34を介して4本の端子33を一括して支持することができる。この状態において、円筒状のカバー35をハウジング34に装着する前に、各端子33に対して被覆層45を形成する。
【0016】
被覆層45は、各端子33の先端部44にフッ素樹脂を塗装することで形成される。より具体的には、各端子33の先端部44にのみ被覆層45を形成するように、端子33の基端部に図示しないマスキング用のテープを予め巻きまわしておく。この状態で、各端子33に対して、フッ素樹脂を例えば粉体塗装により塗装を行って、被覆層45を成膜する。そして、マスキング用のテープを除去し、さらにハウジング34に円筒状のカバー35を取り付ける。以上の工程により、端子33の先端部44に被覆層45が形成されたプラグ31を製造することができる。
【0017】
以上が、プラグ31を適用した電子機器の実施形態である。本実施形態によれば、プラグ31の4本の端子33は、その先端部44に絶縁性の被覆層45を有する。このため、ユーザが第1の電源装置16をコンセント23に接続した状態で、プラグ31の端子33を他の導体、例えばネジの頭部などに接触させてしまった場合であっても、端子33と他の導体とが導通することを防止できる。これにより、端子33と導体との間で電流が流れることがなく、これに起因する第1の電源装置16の故障を防止することができる。
【0018】
また、ユーザが正しい方向に対して例えば90°回転した向きでプラグ31を本体12のコネクタ32に差し込もうとした際には、位置決めピン36と溝部43との作用により、プラグ31は、コネクタ32に対して深くささらないようになっている。しかし、この場合であっても、電力端子33Aの先端部44が、アース端子33B用の第2の差込穴41Bの接続端子42に触れることがある。このとき、従来型の被覆層のない端子を用いている場合には、プラグの端子と第2の差込穴の接続端子とが接触して、ショートを引き起こし、本体12に故障を生ずる恐れがある。本実施形態のプラグ31によれば、端子33の先端部44に被覆層45が設けられているため、プラグ31の端子33と第2の差込穴41Bの接続端子42とが誤った組み合わせで接触した場合であっても、これらの間でショートを生ずることを防止することができる。
【0019】
さらに、4本の端子33のうち、少なくとも2本の電力端子33Aの先端部44に絶縁性の被覆層45を形成すれば、上記第1の電源装置16の故障や本体12の故障を防止できる。このため、2本の電力端子33Aにのみ被覆層45を形成するようにすれば、製造工程の簡略化と被覆層を構成する材料の使用量節約とを図ることができる。
【0020】
被覆層45は、先端部44に絶縁性の樹脂を塗布して形成される。この構成によれば、成形品の絶縁片を作成する場合に比して、簡単且つ低コストに端子33の先端部44を絶縁体で被うことができる。また、従来のように端子33の先端部44に絶縁片を被せる場合には、絶縁片が変形して外れた後は、端子33は、絶縁性を一切発揮できなくなる。本実施形態のように塗装により被覆層45を形成すれば、抜き差しの繰り返しによる摩耗で被覆層45の一部分が剥がれることがあっても、被覆層45の他の部分が先端部44に残るようにすることができる。このため、従来型のプラグにおいて絶縁片が変形して外れてしまった場合のように、あるときに絶縁性がまったく発揮されなくなる事態を防止して、被覆層45の絶縁性を徐々にへたらせるようにすることができる。これにより、端子33の絶縁性に関して、結果的に耐久性を向上させることができる。
【0021】
被覆層45は、端子33の全長に対して、1/3以下で、1/8以上の長さで形成される。被覆層45の長さを大きくすれば、それだけ絶縁性が向上するが、プラグ31の端子33とコネクタ32の接続端子42との間の導電性も低下する。このため、この構成によれば、被覆層45の大きさが適正な範囲内になるため、プラグ31の端子33とコネクタ32の接続端子42との間の導電性が低下することを防止できる。また、被覆層45の形成に用いる材料も少量で済ませることができる。
【0022】
被覆層45は、フッ素樹脂により形成されている。この構成によれば、被覆層45にフッ素樹脂に特有のすべり性、耐磨耗性、耐熱性を持たせることができる。これにより、端子33の先端部44に絶縁片を取り付ける場合に比して、被覆層45の耐久性を向上することができる。
【0023】
本実施形態のプラグ31は、上記実施形態に示したデスクトップ型のコンピュータ用に限らず、例えば携帯情報端末のようなその他の電子機器に対しても実施可能である。また、プラグ31は、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できることは勿論である。例えば、本実施形態では、被覆層45をプラグ31の端子33に設けるようにしているが、本体12のコネクタ32の接続端子42の内周面で、外部に面している位置に、絶縁性の被覆層を設けるようにしても、同様の効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態に係る電子機器の一例であるデスクトップ型のコンピュータの斜視図。
【図2】図1に示すデスクトップ型のコンピュータのプラグとコネクタとを示す斜視図。
【図3】図2に示すプラグを拡大して示す斜視図。
【符号の説明】
【0025】
11…コンピュータ、31…プラグ、33…4本の端子、33A…電力端子、33B…アース端子、34…ハウジング、35…カバー、44…先端部、45…被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸の周囲に略均等に配置する4本の端子と、
前記4本の端子の基端を支持するハウジングと、
前記4本の端子の周囲を取り囲むように前記ハウジングに固定される円筒状のカバーと、
を具備し、
前記4本の端子は、2本の電力端子と、2本のアース端子とを含み、
前記4本の端子のうち、少なくとも前記2本の電力端子は、その先端部に絶縁性の被覆層を有することを特徴とするプラグ。
【請求項2】
前記被覆層は、前記先端部に絶縁性の樹脂を塗装して形成されることを特徴とする請求項1に記載のプラグ。
【請求項3】
前記被覆層は、前記端子の全長に対して、1/3以下で、1/8以上の長さで形成されることを特徴とする請求項2に記載のプラグ。
【請求項4】
前記被覆層は、フッ素樹脂により形成されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のプラグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−108675(P2008−108675A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292731(P2006−292731)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】