説明

プラスチゾル用の接着促進剤

本発明は、接着促進剤がポリアミノアミドだけでなく、接着促進剤の全量を基準として少なくとも10重量%、最高60重量%のエチルジグリコール(エチルカルビトール)をも含むことを特徴とする、ポリアミノアミドをベースとするプラスチゾル用接着促進剤、ならびに材料に被膜および接着結合を生成する方法、ならびにこれらの接着促進剤を共に使用したプラスチゾルに関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】
【0002】
本発明は、ポリアミノアミドをベースとし、エチルジグリコールを含む接着促進剤、およびPVCプラスチゾルの接着性を改善するためのこれらの接着促進剤の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
プラスチゾルは、金属表面を腐食から保護するために広く用いられている。特に自動車部門で、プラスチゾルはシームや継目の耐水処理、接着およびシーリングのために、またアンダーボディーおよび下枠(sill)の保護のために用いられる。
【0004】
これらの用途には、多くの場合PVCポリマーまたはPVCコポリマーをベースとするプラスチゾルを使用する。これらのプラスチゾルは、不揮発性可塑剤中に分散した微細なポリマー粒子からなる。室温でこれらのポリマー粒子は液相に不溶である。より高い温度(ゲル化温度)では、これらのポリマー粒子は可塑剤に溶解する。冷却すると、この均質な溶液が硬化して軟質または硬質の被膜を生成する。保護すべき材料にこれらの被膜を付与するために用いられる主な方法は、はけ塗、ロール塗または吹付である。
【0005】
可塑化した被覆用ポリ塩化ビニル組成物(プラスチゾル)の配合、ならびにそれらの調製および使用は、Krekeler / Wick, Kunststoff-Handbuch[プラスチックハンドブック] (1963),Volume II, Part 1, pp.396以下に広く記載されている。
【0006】
この方法で付与するプラスチゾルの品質に関する重要な基準は、被覆される材料へのそれらの接着性である。保護層の接着性が低いほど、攻撃的な液体の透過リスクが高まる。たとえば水が被膜の下へ移行して金属を腐食させる可能性がある。金属への保護膜の接着性が低下するのに伴って、この可能性は高まる。したがって、これらの被膜の接着性を高めるために、工業的には可塑化したポリ塩化ビニルに接着改善用の添加剤を添加する。この接着促進剤の機能は、一般に遭遇する材料、たとえば脱脂されていない未処理鋼、亜鉛めっきした金属板またはスズ被覆した金属板、電気被覆した金属板などの表面に持続的な接着をもたらすことである。
【0007】
PVCプラスチゾル用の接着促進剤はこれまでに開発されている。これらの接着促進剤の例は、ポリアミン、エポキシ樹脂、キャップ付きイソシアネート、有機官能性シラン、およびアクリル酸またはメタクリル酸のエステルである。
【0008】
大部分の場合、用いられる接着促進剤はイミダゾリン基含有ポリアミノアミドを含む。これらは、プラスチゾル中の濃度が比較的低くても支持体への良好な接着を生じる。これらのポリアミノアミドは、重合脂肪酸として知られるものおよび過剰のポリエチレンポリアミドから、重縮合により製造される。重合脂肪酸という表現には、12〜22個の炭素原子、好ましくは18個の炭素原子をもつ不飽和の天然または合成一塩基性脂肪族酸から製造した重合脂肪酸が含まれる。脂肪酸は、周知の方法、たとえばDE 25 06 211 A1に記載されている方法により重合させることができる。これらの接着促進剤は、たとえばDE 26 54 871 A1およびDE 32 01 265 A1に記載されている。DE 44 00 509 A1には、ポリアミノアミドをベースとする一般的な接着促進剤のほかに、三価以上の官能性をもつ脂肪族アルコールおよび/またはアルカノールアミンの形の二次接着促進剤をPVCプラスチゾルに添加することにより、特に電気泳動法により被覆したシート上でのそれらの接着性を改善したプラスチゾル組成物が記載されている。その明細書の実験のセクションでは、グリセロールを二次接着促進剤として用いている。しかし、一次ポリアミノアミド接着促進剤のほかにこれらの二次接着促進剤を添加しなければならない。プラスチゾルに含有させるそれらの量は通常は約1重量%(プラスチゾルの量を基準として)である。さらに、使用されるポリアミノアミドの粘度は一般にきわめて高いので、プラスチゾルに取り込ませるのが困難である。
【0009】
粘度を低下させることによって良好な加工適性(たとえば接着促進剤をプラスチゾル中へ混合するための)を得るために、かつこれらの接着促進剤の価格を下げるために、一般にきわめて高粘度である接着促進剤にしばしば可塑剤を配合する。しかし可塑剤は、大部分の場合、支持体へのPVCの接着に有害な影響をもつ。しばしば用いられる可塑剤は、フタル酸エステル、たとえばフタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチルまたはフタル酸ジノニルである。観察された有害な影響のひとつは、それらの接着促進剤希釈効力が低いことである。十分な加工適性を付与するには、比較的多量のこれらのフタル酸エステルを使用しなければならない。
【0010】
しかし、多量のこれらの可塑剤は支持体への接着に有害な影響を及ぼす。さらに、接着促進剤中に可塑剤として用いられるフタル酸ジアルキルは、接着促進剤の粘度を経時的に増大させる。これはエステルの開裂およびポリアミノアミド/イミダゾリン中の遊離アミン基との反応により説明できる。したがって、ある程度時間が経つと不相溶性が生じ、最終的にはゲル化が起きるので、これらの接着促進剤の有用性は時間的制限を受ける。さらに、フタル酸ジアルキルクラスの製品による毒性リスクのため、それらの使用は最近批判されている。DE 694 02 959 T2は、特定のポリアミド樹脂の製造方法を特許請求している。そのクレーム9によれば、それはフタル酸ジオクチル、ベンジルアルコール、およびジイソプロピルナフタレンを可塑剤として含む。EP 0 658 574 A1には、a)モノ不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物のコポリマーおよびb)ポリアミンをベースとする、アミドアミン、イミドアミンおよびエステルアミンを、接着促進剤として使用することが記載され、同様に前記化合物を可塑剤として用いている。しかしこの場合も、これらの可塑剤の使用により、接着促進剤中における割合が増大するのに伴って支持体へのプラスチゾルの接着が損なわれる。
【0011】
さらにEP 0 263 053 A2には、非イオン性二次可塑剤を溶剤の形で接着促進剤および一次可塑剤に添加し、接着促進剤および可塑剤からなるこの組成物をPVCポリマーおよび添加剤に添加する前に別個に混合することを特徴とする、ポリアミノアミド接着促進剤および一次可塑剤を含むプラスチゾル組成物が記載されている。使用される溶剤[特にジエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルジグリコール)が挙げられている]は、PVCポリマー100重量部当たり10〜70重量部で添加される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、PVCプラスチゾル中のポリアミノアミドをベースとする接着促進剤の添加剤であって、ポリアミノアミドと相溶性であり、良好な接着促進剤希釈効力をもち、粘度に関して安定であり、さらに支持体へのPVCプラスチゾルの接着に及ぼす影響が少ない添加剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、この目的は、ポリアミノアミドだけでなくエチルジグリコール(エチルカルビトール)をも含む、ポリアミノアミドをベースとする接着促進剤の使用により達成される。ポリアミノアミドをベースとする接着促進剤中のエチルジグリコールの割合は、少なくとも10重量%、最高60重量%、好ましくは25〜55重量%、特に好ましくは40〜50重量%である。
【0014】
本発明に従って共に使用されるポリアミノアミドは、重合脂肪酸、適切な場合にはモノ−および/またはジカルボン酸、およびアミン化合物、特にポリアルキレンポリアミンから、後記のように重縮合により得られるものである。
【0015】
重合脂肪酸という用語には、12〜22個の炭素原子、好ましくは18個の炭素原子をもつ不飽和の天然または合成一塩基性脂肪酸から製造した重合脂肪族酸が含まれる。脂肪酸は周知の方法により重合させることができる(たとえばDE 25 06 211 A1中の方法を参照)。
【0016】
使用するのが好ましい重合脂肪酸は市販製品であり、それらの組成はほぼ下記のとおりである:単量体酸:0.1〜10%、二量体酸:50〜98%、三量体以上の酸:1〜70%。
【0017】
使用できるジカルボン酸は下記のものである:20個を超えない炭素原子をもつ脂肪族および/または脂環式、直鎖または分枝鎖の酸、たとえばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、トリメチルアジピン酸、マレイン酸およびフマル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸;あるいは芳香族ジカルボン酸、たとえばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸。
【0018】
脂肪族および/または芳香族ジカルボン酸を使用するのが好ましい。
【0019】
ジカルボン酸を個別に、または混合物として使用できる。
【0020】
これらのジカルボン酸は、好ましくは前記の重合脂肪族との混合物として使用される。少量のトリカルボン酸、たとえばトリメシン酸を添加してもよい。
【0021】
縮合法には、0.5〜1.0当量の重合脂肪族、0.0〜0.5当量のジカルボン酸、および0.2〜1モルのポリアルキレンポリアミンを使用するのがが好ましい;重合脂肪族とジカルボン酸の当量の合計は1当量である。
【0022】
ポリアミノアミドを製造するのに好ましいポリアルキレンポリアミンは、ポリエチレンポリアミンである。その際、分子中に4個以上の窒素原子をもつポリエチレンポリアミンが特に好ましい。
【0023】
ポリアミノアミドは、前記のアミン化合物と酸化合物を最高280℃の温度で縮合させることにより製造できる。その際、イミダゾリン基も形成される。イミダゾリン基は、約160〜280℃の比較的高い温度で、アミド基からの水の離脱を伴う分子内環化により形成される。このタイプの接着促進剤は、HuntsmanからEuretekの商標で市販されている。
【0024】
意外にもエチルジグリコールは、接着促進剤中40〜50重量%というきわめて多量であっても、支持体へのPVCプラスチゾルの接着に有害な影響をもたない。接着促進剤中の添加剤の量が増加すると接着促進剤自体の割合が減少するので、それに伴って支持体へのPVCプラスチゾルの接着は低下すると予想されたであろう。しかし、接着促進剤中のエチルジグリコールの割合が50%であっても、支持体へのPVCプラスチゾルの接着には全く、または少なくともほとんど影響がない。この接着促進剤の粘度は低く、接着促進剤は粘度に関して安定である。
【0025】
したがって本発明は、ポリアミノアミドだけでなくエチルジグリコールをも含むことを特徴とする、ポリアミノアミドをベースとするPVCプラスチゾル用接着促進剤を提供する。接着促進剤中に存在するエチルジグリコールの量は、接着促進剤の全量を基準として少なくとも10重量%、最高60重量%、好ましくは25〜55重量%、特に好ましくは40〜50重量%である。
【0026】
本発明は、ポリアミノアミドだけでなく、接着促進剤の全量を基準として少なくとも10重量%、最高60重量%、好ましくは25〜55重量%、特に好ましくは40〜50重量%のエチルジグリコールをも含む接着促進剤を使用することを特徴とする、微粒子状のポリ塩化ビニルまたは塩化ビニルコポリマーをベースとし、一般的な充填剤、添加剤、可塑剤および接着促進剤を含むプラスチゾルを付与することにより、材料に被膜および接着結合を生成する方法をも提供する。
【0027】
本発明による接着促進剤は、プラスチゾルの重量を基準として0.3〜5重量%、好ましくは0.5〜2重量%、特に好ましくは1重量%の割合で添加される。したがって全プラスチゾル中のエチルジグリコールの割合は、約0.03〜3%、好ましくは約0.5%である。本発明の接着促進剤を添加した後、プラスチゾル組成物を均質化し、こうして調製したプラスチゾルを90℃以上、好ましくは120〜160℃の温度で材料に焼き付ける。
【0028】
本発明は、本発明の接着促進剤が存在することを特徴とする、微粒子状のポリ塩化ビニルまたは塩化ビニルコポリマー、一般的な可塑剤、充填剤、添加剤および接着促進剤を含む、被膜を材料上に生成するためのプラスチゾルをも提供する。
【実施例】
【0029】
以下の例2〜4においては、例1のポリアミノアミド接着促進剤Euretek 563を約100℃に加熱撹拌し、適切な添加剤を添加し、次いでこの混合物を均質にする。
【0030】
例1(比較例)
Euretek(登録商標)563(Vantico AG社から市販されているポリアミノアミドベースの接着促進剤)。
【0031】
例2(比較例):60%のEuretek 563;40%のフタル酸ジオクチル。
【0032】
例3:60%のEuretek 563;40%のエチルジグリコール。
【0033】
例4(比較例):80%のEuretek 563;20%のグリセロール。
【0034】
プラスチゾルの調製
全組成物を基準として1%の前記例1〜4のポリアミノアミドを接着促進剤として下記のものからなるプラスチゾルに添加する:35%のフタル酸ジイソノニル;25%のペースト状PVC(たとえばSolvic(登録商標)347 MB);16.0%の被覆白亜(Socal(登録商標)312);16.5%の天然白亜(Juraperle);2.0%のCaO;0.2%のZnOおよび4.3%のExxsol(登録商標)80。
【0035】
もちろん、本発明の自己接着性プラスチゾルを得るために、上記以外の一般的なプラスチゾル配合物に前記の接着促進剤を添加することもできる。
【0036】
本発明のプラスチゾルを用いて得られる接着性を手動で測定することができる。たとえば、BASF社のCathoguard 400 CECシートを使用できる。被着物の寸法25×100mm。
【0037】
方法
スパチュラを用いて、幅約1.5cm、長さ約5cmのPVCプラスチゾルストリップをCECストリップに付与し、ドクターを用いてプラスチゾルを展延して、幅約1.5cm、厚さ1.5mmの試験片を得る。この試験片を温度調節した乾燥キャビネットに入れ、140℃で30分間、焼き付ける。焼き付けた後、試験片を乾燥キャビネットから取り出す。冷却(少なくとも2時間)した後、接着試験を行うことができる。このために、ナイフを用いて試験片の両側に幅約0.5cmの切込みを形成する。次いでこの試験片を剥離性について手動で試験する。
【0038】
評価のために下記の分類システムを採用する。
【0039】
【表1】

【0040】
測定結果を下記の表1に挙げる。
【0041】
【表2】

【0042】
*) 25℃で測定できない(粘度が高すぎる);**) VT 550 Haake回転粘度計を製造業者の指示に従って用いて粘度を測定した。
【0043】
結果の解釈
この表から分かるように、本発明の接着促進剤(例3)はきわめて低い粘度をもつので加工しやすい。比較例2と対比して、本発明の接着促進剤は比較的高い温度で貯蔵した後も貯蔵安定性であり、したがって長期間の貯蔵後でも利用者が使用できる。意外にも、全量を基準としたエチルジグリコール含量40%の本発明の接着促進剤を使用すると、支持体へのプラスチゾルの卓越した接着が得られる(例3)。比較例2、特に4の接着促進剤を使用すると、場合によっては顕著に低下した接着が得られる。エチルジグリコールを接着促進剤中に使用した場合も、エチルジグリコールの割合が増大するのに伴って支持体へのプラスチゾルの接着は低下すると予想されたであろう。意外にも、支持体への接着は低下せず、良好なままである。この結果は予測できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着促進剤が、ポリアミノアミドだけでなく、接着促進剤の全量を基準として少なくとも10重量%、最高60重量%のエチルジグリコール(エチルカルビトール)をも含むことを特徴とする、プラスチゾル用の接着促進剤。
【請求項2】
エチルジグリコールの割合が25〜55重量%、好ましくは40〜50重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の接着促進剤。
【請求項3】
請求項1および2に記載の接着促進剤を含むことを特徴とする、微粒子状のポリ塩化ビニルまたは塩化ビニルコポリマー、ならびに一般的な可塑剤、充填剤、添加剤および接着促進剤を含むプラスチゾル組成物。
【請求項4】
接着促進剤がプラスチゾルの重量を基準として0.3〜5重量%の割合で添加されていることを特徴とする、請求項3に記載のプラスチゾル組成物。
【請求項5】
接着促進剤がプラスチゾルの重量を基準として0.5〜2重量%、好ましくは1重量%の割合で添加されていることを特徴とする、請求項4に記載のプラスチゾル組成物。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1項に記載のプラスチゾル組成物を使用することを特徴とする、材料に被膜および接着結合を生成する方法。
【請求項7】
接着促進剤をプラスチゾル組成物に添加し、この混合物を均質化し、こうして調製したプラスチゾルを90℃以上、好ましくは120〜160℃の温度で材料に焼き付けることを特徴とする、請求項6に記載の方法。

【公表番号】特表2007−527933(P2007−527933A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519922(P2006−519922)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051421
【国際公開番号】WO2005/005537
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(504177804)ハンツマン・アドヴァンスト・マテリアルズ・(スイッツランド)・ゲーエムベーハー (43)
【Fターム(参考)】