プラスチックレンズ用成形型
【課題】縁摺加工の精度をより一層高くすることが可能なプラスチックレンズ用成形型を提供する。
【解決手段】眼鏡用プラスチックレンズのレンズ面を成形する型となる第1、第2のモールド部材3,4を備える。第1、第2のモールド部材3,4の相対的な移動を規制するガスケット2を備える。第1のモールド部材3と第2のモールド部材4とのうちいずれか一方のモールド部材におけるレンズ面の中心部分と対応する外面には、このモールド部材を縁摺加工装置に取付けるための連結部12が設けられている。
【解決手段】眼鏡用プラスチックレンズのレンズ面を成形する型となる第1、第2のモールド部材3,4を備える。第1、第2のモールド部材3,4の相対的な移動を規制するガスケット2を備える。第1のモールド部材3と第2のモールド部材4とのうちいずれか一方のモールド部材におけるレンズ面の中心部分と対応する外面には、このモールド部材を縁摺加工装置に取付けるための連結部12が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック製の眼鏡レンズを成形するために使用するプラスチックレンズ成形型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、眼鏡用プラスチックレンズは、注型重合法によって形成されることが多い。この注型重合法とは、成形型にプラスチックレンズ材料を注入し、熱あるいは紫外線等のエネルギーにより硬化させて成形物を得る方法である。注型重合法に用いる従来のプラスチックレンズ用成形型は、たとえば特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
特許文献1に開示されている成形型は、眼鏡レンズの2つのレンズ面を成形するための第1、第2のモールド部材と、これらのモールド部材どうしの相対的な移動を規制する支持部材とを備えている。前記第1、第2のモールド部材は、それぞれ円板状に形成されている。前記支持部材は、第1、第2のモールド部材が嵌合する円筒状に形成されている。
【0004】
前記第1のモールド部材と前記第2のモールド部材は、所定の間隔をおいて互いに対向する状態で前記支持部材の中に装着される。このように支持部材に両モールド部材を装着することによって、これらの部材の中にプラスチックレンズ成形用のキャビティが形成される。前記支持部材には、キャビティ内にレンズ材料を注入するために注入口が設けられている。
【0005】
このように構成されたプラスチックレンズ用成形型を用いて眼鏡レンズを製造するためには、先ず、前記キャビティ内にレンズ材料を注入し、レンズ材料が充填された成形型を加熱炉に入れてレンズ材料を重合させる。その後、前記成形型を分解して円板状のプラスチックレンズを取り出し、このプラスチックレンズの外周部を眼鏡フレームの形状と同一の形状に加工する。以下においては、この加工を単に縁摺加工という。
縁摺加工は、プラスチックレンズを縁摺加工装置に支持させた状態で行われる。縁摺加工装置にプラスチックレンズを支持させるにあたっては、プラスチックレンズに接着用シートを介してレンズホルダーを貼り付け、このレンズホルダーを縁摺加工装置に支持させる。
【0006】
接着用シートを介してプラスチックレンズにレンズホルダーを貼り付けるためには、先ず、プラスチックレンズの基準となる位置(例えば光学中心)を専用の装置を使用して特定する。一方、レンズホルダーには、予め接着用シートを貼り付けておく。次に、前記基準となる位置に基づいて目標貼り付け位置を決め、この目標貼り付け位置に接着用シートを重ね、この状態でレンズホルダーをプラスチックレンズに押し付ける。この押圧作業によってレンズホルダーがプラスチックレンズに接着用シートを介して貼り付けられる。
縁摺加工は、高い精度が要求される加工である。この理由は、縁摺加工の精度が低いと、眼鏡レンズを眼鏡フレームのリムに正しく取付けることが難しくなるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−30431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した縁摺加工の加工精度を高くするにあたっては限界があった。この主な理由は、下記のように二つある。第1の理由は、レンズホルダーを必ずしも正しい位置に貼り付けることができるとは限らないからである。すなわち、プラスチックレンズの基準となる位置を測定により求めるときの誤差や、レンズホルダーを目標貼り付け位置に貼り付けるにあたって位置決めするときの誤差や、貼り付け時の変位による誤差などがあるから、レンズホルダーが貼り付けられる位置の精度を高くすることはことは難しい。
【0009】
前記変位は、以下のように起こる。例えば、レンズホルダーをプラスチックレンズのフレーム中心に貼り付けるような場合は、レンズ面の相対的に大きく傾斜した部分に接着用シートが貼り付けられることになる。この場合、レンズホルダーがプラスチックレンズに強く押し付けられると、接着用シートが剪断方向に僅かに弾性変形する。このように接着用シートが弾性変形することが原因で前記変位が生じる。
【0010】
第2の理由は、加工中に接着用シートが弾性変形することがあるからである。このように接着用シートが弾性変形すると、プラスチックレンズの位置が変化してしまい、縁摺加工を正しい位置に施すことができなくなる。
【0011】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、縁摺加工の精度をより一層高くすることが可能なプラスチックレンズ用成形型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために、本発明に係るプラスチックレンズ用成形型は、眼鏡用プラスチックレンズの一方のレンズ面を成形する型となる第1のモールド部材と、眼鏡用プラスチックレンズの他方のレンズ面を成形する型となる第2のモールド部材と、前記第1のモールド部材と第2のモールド部材との相対的な移動を規制する支持部材とを備え、前記第1のモールド部材と第2のモールド部材とのうちいずれか一方のモールド部材における前記レンズ面の中心部分と対応する外面には、このモールド部材を縁摺加工装置に取付けるための連結部が設けられているものである。
【0013】
本発明は、前記発明において、前記連結部は、前記モールド部材とは別体に形成された連結部材が取付けられる取付座であり、前記連結部材は、前記縁摺加工装置が支持可能なものであることを特徴とするものである。
【0014】
本発明は、前記発明において、前記連結部は、前記縁摺加工装置に取付可能な形状に形成され、かつ前記モールド部材に一体に形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るプラスチックレンズ用成形型において、第1、第2のモールド部材の外面は、レンズ面を成形する内面とは異なり、凹部や凸部を形成するにあたって制約を受けることはない。このため、モールド部材に連結部を設けるためには、連結部をモールド部材に機械的に結合させたり、モールド部材に一体成形により一体に形成することによって容易に実現できる。また、連結部は、プラスチックレンズの基準となる位置と同じ位置か、前記基準となる位置に対して予め定めた距離だけ離れた位置に配置することができる。前記基準となる位置とは、プラスチックレンズの光学中心や幾何学的中心などである。
【0016】
この連結部を有するモールド部材を使用してプラスチックレンズを成形することにより、連結部はモールド部材を介してプラスチックレンズに強固に接着される。また、このプラスチックレンズの基準となる位置は、連結部の位置から特定できるようになる。
本発明に係るプラスチックレンズ用成形型においては、第1、第2のモールド部材のうち、連結部が設けられている一方のモールド部材は、プラスチックレンズに接着された成形時の状態で保持でき、他方のモールド部材と支持部材は、成形後にプラスチックレンズから外すことができるものである。
【0017】
このプラスチックレンズの縁摺加工は、前記一方のモールド部材の連結部を縁摺加工装置に取り付けて行うことができる。この加工時には、プラスチックレンズの他に前記一方のモールド部材にも同時に切削や研削などが施される。
前記連結部は、モールド部材およびプラスチックレンズと一体的に結合されているから、縁摺加工時にプラスチックレンズが位置ずれを起こすことはない。また、連結部の位置に基づいてプラスチックレンズの基準の位置を特定できるから、縁摺加工の加工位置を正確に決めることができる。
したがって、本発明によれば、縁摺加工の精度をより一層高くすることが可能なプラスチックレンズ用成形型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるプラスチックレンズ用成形型の断面図である。
【図2】第1の実施の形態による第1のモールド部材をプラスチックレンズの軸線方向から見た平面図である。
【図3】第1の実施の形態による第1のモールド部材の正面図である。同図は、連結部材を固定した状態で描いてある。
【図4】図2におけるIV−IV線断面図である。
【図5】連結部材の側面図である。
【図6】連結部材の平面図である。
【図7】連結部材の底面図である。
【図8】図6におけるVIII−VIII線断面図である。
【図9】第2の実施の形態による第1のモールド部材の平面図である。
【図10】第2の実施の形態による第1のモールド部材の側面図である。
【図11】図9におけるXI−XI線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係るプラスチックレンズ用成形型の一実施の形態を図1〜図8によって詳細に説明する。
図1に示すプラスチックレンズ用成形型1は、円筒状のガスケット2と、第1、第2のモールド部材3,4とを使用して構成されたものである。前記ガスケット2は、プラスチック材料によって形成されている。このガスケット2の内周部には、眼鏡用プラスチックレンズ(図示せず)の外周面(所謂コバ面)を成形する型となる周面2aと、後述するストッパー2bとが形成されている。
【0020】
ガスケット2の外周部には、ガスケット2内のキャビティ5にレンズ材料(図示せず)を注入するための注入補助部材6が取付けられている。前記キャビティ5は、ガスケット2と、後述する第1、第2のモールド部材3,4との間に形成されている。前記注入補助部材6の内部には、溶融状態のレンズ材料(図示せず)を流すための通路6aが形成されている。この通路6aの下流端は、ガスケット2の注入口7に接続されている。この注入口7は、ガスケット2を径方向に貫通するように形成されている。
この実施の形態においては、このガスケット2によって本発明でいう「支持部材」が構成されている。
【0021】
前記第1のモールド部材3と第2のモールド部材4は、ガスケット2の内部に固定されている。
第1のモールド部材3は、眼鏡用プラスチックレンズの一方のレンズ面(凸面)を成形する型となるものである。第2のモールド部材4は、眼鏡用プラスチックレンズの他方のレンズ面(凹面)を成形する型となるものである。
【0022】
前記第1、第2のモールド部材3,4は、それぞれプラスチック材料によって凹曲面3a,4aと凸曲面3b,4bとを有する円板状に形成されている。第1のモールド部材3の凹曲面3aは、プラスチックレンズのレンズ面(凸面)を成形するための型になる。第2のモールド部材4の凸曲面4bは、プラスチックレンズのレンズ面(凹面)を形成するための型になる。
【0023】
第1のモールド部材3は、前記凹曲面3aが成形型1の内側に位置するように前記ガスケット2の内周部に嵌合している。第2のモールド部材4は、前記凸曲面4bが前記第1のモールド部材3と対向するように前記ガスケット2の内周部に嵌合している。これらの第1、第2のモールド部材3,4の外周面は、周方向の全域にわたってガスケット2の内周面に密着している。
【0024】
第1のモールド部材3の位置、言い換えれば円筒状を呈するガスケット2の軸線方向の位置は、ガスケット2のストッパー2bによって決められている。ストッパー2bは、ガスケット2の内周部に径方向の内側に突出するように形成されている。また、このストッパー2bは、ガスケット2の周方向の全域に途切れることなく延びるように形成されている。第1のモールド部材3は、凹曲面3a側の端縁が前記ストッパー2bに当たることによって、ガスケット2の中に入る方向への移動が規制され、ストッパー2bによって位置決めされている。
【0025】
第2のモールド部材4の位置は、前記第1のモールド部材3との間隔が予め定めた間隔になるような位置に設定されている。第2のモールド部材4の前記軸線方向への移動は、ガスケット2との間に生じる摩擦によって規制されている。すなわち、ガスケット2は、第1のモールド部材3と第2のモールド部材4との相対的な移動を規制するものである。
【0026】
前記第1のモールド部材3の凸曲面3bからなる外面は、レンズ面を成形する内面(前記凹曲面3a)とは異なり、凹部や凸部を形成するにあたって制約を受けることはない。このため、この第1のモールド部材3における前記レンズ面の中心部分と対応する外面には、この第1のモールド部材3を縁摺加工装置11(図3参照)に取付けるための連結部12が設けられている。縁摺加工装置11は、従来からよく知られているもので、図3に示すように、前記連結部12に取付けられた後述する連結部材13を支持するレンズ支持部14と、図3中に符号Lで示すプラスチックレンズのコバ面を切削または研削によって所定の形状に形成する加工部15とを備えている。この実施の形態による加工部15は、プラスチックレンズLを第1のモールド部材3とともに削ることができるように形成されている。
【0027】
この実施の形態による前記連結部12は、図1および図2に示すように、第1のモールド部材3に一体に形成された取付座16によって構成されている。この取付座16は、連結部材13を取付けるためのものである。
前記取付座16は、図2に示すように、第1のモールド部材3の中心、すなわちプラスチックレンズの光学中心と対応する位置に形成されている。この取付座16は、平坦な取付面17と、この取付面17に開口する第1、第2の位置決め用凹部18,19とによって形成されている。
【0028】
前記取付面17は、プラスチックレンズの軸線と直交する平面に沿って形成されている。この実施の形態による取付面17は、プラスチックレンズの軸線方向から見て円形に形成されている。
前記第1の位置決め用凹部18は、前記軸線方向から見て円形に形成されている。また、この第1の位置決め用凹部18は、プラスチックレンズの光学中心と同一軸線上に位置するように位置付けられている。なお、第1の位置決め用凹部18は、前記光学中心や幾何学的中心などのようなプラスチックレンズの基準となる位置に対して予め定めた距離だけ離れた位置に配置することができる。
【0029】
前記第2の位置決め用凹部19は、円板状のプラスチックレンズの周方向の位置を特定するためのものである。この第2の位置決め用凹部19は、前記第1の位置決め用凹部18と隣接する位置に前記第1の位置決め用凹部18より穴径が小さくなるように形成されている。
【0030】
前記連結部材13は、図3、図5〜図8に示すように、一端部に円板21が形成されているとともに、他端部に嵌合軸部22が形成されている。円板21は、前記取付面17に重ねて接着されるものである。嵌合軸部22は、前記縁摺加工装置11のレンズ支持部14に取付けられるもので、円筒状に形成されている。また、前記円板21と嵌合軸部22との間には、フランジ23が設けられている。このフランジ23には、前記レンズ支持部14の位置決め用突起(図示せず)が嵌合する切り欠き24が形成されている。すなわち、この連結部材13は、円板21を有する一端部を除く他の部分が従来のレンズホルダーと同じ構造となるように形成されている。
【0031】
前記円板21の端面21aは、前記取付面17に全面にわたって接するように平坦に形成されている。前記嵌合軸部22は、この円板21の端面21aとは直交する方向を軸線方向として形成されている。
円板21には、前記第1の位置決め用凹部18に嵌合する第1のピン25と、前記第2の位置決め用凹部19に嵌合する第2のピン25とが突設されている。前記嵌合軸部22は、第1のピン25と同一軸線上に位置するように形成されている。このため、第1のピン25が第1の位置決め用凹部18に嵌合した状態においては、嵌合軸部22がプラスチックレンズと同一軸線上に位置することになる。
【0032】
前記第2のピン26は、円板21の周方向において前記切り欠き24と同一位置に形成されている。このため、第2のピン26が第2の位置決め用凹部19に嵌合している状態においては、切り欠き24によって第1のモールド部材3(プラスチックレンズ)を周方向に位置決めすることが可能になる。このため、例えば乱視軸の方向を正確に設定することが可能になる。
【0033】
この実施の形態による円板21は、第1、第2のピン25,26が第1、第2の位置決め用凹部18,19に嵌合する状態で前記取付座16に接着剤によって接着される。
このように円板21が取付座16に接着されることによって、連結部材13が第1のモールド部材3に固定される。なお、連結部材13を第1のモールド部材3に固定するにあたっては、この実施の形態で示したような接着剤を使用する固定方法に限定されることはない。例えば、第1、第2のピン25,26を第1、第2の位置決め用凹部18,19に圧入しても連結部材13を第1のモールド部材3に固定することができる。また、第1の位置決め用凹部18と第1のピン25との嵌合部分をねじ状に形成しても連結部材13を第1のモールド部材3に固定することができる。
この連結部材13は、第1のモールド部材3を前記ガスケット2に取付ける以前に第1のモールド部材3に固定される。
【0034】
この実施の形態によるプラスチックレンズ用成形型1は、前記ガスケット2に前記第1、第2のモールド部材3,4を組み付けるとともに、注入補助部材6を取付けることによって形成される。この成形型1を使用してプラスチックレンズを成形するためには、先ず、注入補助部材6が上に位置するように成形型1を立てて支持し、注入補助部材6にレンズ材料を注入する。キャビティ5内がレンズ材料で満たされた後、この成形型1を加熱炉(図示せず)に入れて成形型1内のレンズ材料を硬化させる。レンズ材料が硬化することによって、第1、第2のモールド部材3,4に強固に接着された状態でプラスチックレンズが成形される。このプラスチックレンズの光学中心(基準の位置)は、連結部12の位置から特定可能である。
【0035】
プラスチックレンズの成形が終了した後、第1、第2のモールド部材3,4のうち、連結部12が設けられている第1のモールド部材3は、プラスチックレンズに接着された成形時の状態で保持される。他方の第2のモールド部材4とガスケット2は、成形後にプラスチックレンズから外される。
このプラスチックレンズの縁摺加工は、前記第1のモールド部材3に接着されている連結部材13を縁摺加工装置11のレンズ支持部14に取り付けた状態で行う。この加工時には、プラスチックレンズの他に前記第1のモールド部材3にも同時に切削や研削などを施す。
【0036】
前記連結部12は、第1のモールド部材3およびプラスチックレンズと一体的に結合されているから、縁摺加工時に縁摺加工装置11の加工部15からプラスチックレンズに押圧力が加えられてもプラスチックレンズが位置ずれを起こすことはない。また、連結部12の位置に基づいてプラスチックレンズの光学中心(基準の位置)を特定できるから、縁摺加工の加工位置を正確に決めることができる。
【0037】
したがって、この実施の形態によれば、縁摺加工の精度をより一層高くすることが可能なプラスチックレンズ用成形型1を提供することができる。
【0038】
この実施の形態による前記連結部12は、前記第1のモールド部材3とは別体に形成された連結部材13が取付けられる取付座16によって構成されている。前記連結部材13は、前記縁摺加工装置11が支持可能なものである。
このため、第1のモールド部材3に連結部12を設けるにあたって、第1のモールド部材3には連結部材13用の取付座16を形成するだけでよい。
したがって、縁摺加工装置11が取付られる構成を採っているにもかかわらず、第1のモールド部材3を容易に製作することができる。
【0039】
(第2の実施の形態)
本発明に係る連結部は図9〜図11に示すように構成することができる。図9〜図11において、前記図1〜図8によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図9〜図11に示す第1のモールド部材3の連結部12は、詳細は後述するが、前記縁摺加工装置11のレンズ支持部14に取付可能な形状に形成されている。また、この連結部12は、第1のモールド部材3を成形する金型(図示せず)を使用して成形されており、第1のモールド部材3に一体成形により一体に形成されている。
【0040】
この第2の実施の形態による連結部12には、前記レンズ支持部14に取付けられる円筒状の嵌合軸部22が先端部に形成されている。また、嵌合軸部22の近傍には、フランジ23が設けられている。このフランジ23には、前記レンズ支持部14の位置決め用突起(図示せず)が嵌合する切り欠き24が形成されている。すなわち、この連結部12は、従来のレンズホルダーと同じ構造となるように形成されている。
前記嵌合軸部22は、プラスチックレンズと同一軸線上に位置するように形成されている。
【0041】
前記切り欠き24は、第1のモールド部材3(プラスチックレンズ)の周方向の位置を特定するために使用するものである。この切り欠き24を使用することにより、例えば乱視軸の方向を正確に設定することが可能になる。すなわち、この第2の実施の形態による連結部12は、従来のレンズホルダーを第1のモールド部材3に一体に形成した構成のものである。
【0042】
この第2の実施の形態によるプラスチックレンズ用成形型1の連結部12は、上述した第1の実施の形態を採る場合、すなわち第1のモールド部材3とは別体に形成された連結部材13を使用する場合と較べると、連結部材13を第1のモールド部材3に取付ける作業が不要になる。このため、この実施の形態によれば、第1のモールド部材3を簡単に縁摺加工装置11に取付けることができ、縁摺加工を行うにあたって作業工数が少なくなるから、縁摺加工を低いコストで行うことができる。
【0043】
上述した第1、第2の実施の形態においては、連結部12が第1のモールド部材3に設けられている。しかし、本発明は、このような限定にとらわれることはなく、連結部12を第2のモールド部材4に設けることができる。
また、上述した各実施の形態においては、第1のモールド部材3に接着されたプラスチックレンズに縁摺加工を施す場合の例について説明した。しかし、プラスチックレンズが接着された状態にある第1のモールド部材3の連結部12は、プラスチックレンズを搬送するための搬送機(図示せず)に取付け、プラスチックレンズを搬送するために使用することができる。さらに、この第1のモールド部材3は、縁摺加工を行う以前に何らかの加工や検査、測定などを行うときにプラスチックレンズを支持するためにも使用することができる。
【0044】
なお、上述した実施の形態においては、第1のモールド部材3と第2のモールド部材4との相対的な移動を規制する支持部材として円筒状のガスケット2を用いる例を示した。しかし、本発明は、このような限定にとらわれることはなく、ガスケット2の代わりにテープを使用することができる。このテープは、細い帯状に形成されて裏面に接着剤が塗布されている。このテープで第1のモールド部材3と第2のモールド部材4との相対的な移動を規制するためには、前記テープを、第1のモールド部材3の外周面と、第2のモールド部材4の外周面との両方に接着される状態でこれらの部材に巻き付けて行う。
【0045】
この構成を採る場合、第1のモールド部材3の外周面は、テープの接着面積を広くとることができるように、上述した実施の形態を採る場合に較べて軸線方向に幅広く形成することが望ましい。このように第1のモールド部材3の外周面を円筒面状に形成するためには、第1のモールド部材3の少なくとも外周部の厚みを厚く形成することによって実現することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…プラスチックレンズ用成形型、 2…ガスケット、3…第1のモールド部材、4…第2のモールド部材、5…キャビティ、12…連結部、13…連結部材、16…取付座、18…第1の位置決め用凹部、19…第2の位置決め用凹部、22…嵌合軸部、25…第1のピン、26…第2のピン。
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック製の眼鏡レンズを成形するために使用するプラスチックレンズ成形型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、眼鏡用プラスチックレンズは、注型重合法によって形成されることが多い。この注型重合法とは、成形型にプラスチックレンズ材料を注入し、熱あるいは紫外線等のエネルギーにより硬化させて成形物を得る方法である。注型重合法に用いる従来のプラスチックレンズ用成形型は、たとえば特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
特許文献1に開示されている成形型は、眼鏡レンズの2つのレンズ面を成形するための第1、第2のモールド部材と、これらのモールド部材どうしの相対的な移動を規制する支持部材とを備えている。前記第1、第2のモールド部材は、それぞれ円板状に形成されている。前記支持部材は、第1、第2のモールド部材が嵌合する円筒状に形成されている。
【0004】
前記第1のモールド部材と前記第2のモールド部材は、所定の間隔をおいて互いに対向する状態で前記支持部材の中に装着される。このように支持部材に両モールド部材を装着することによって、これらの部材の中にプラスチックレンズ成形用のキャビティが形成される。前記支持部材には、キャビティ内にレンズ材料を注入するために注入口が設けられている。
【0005】
このように構成されたプラスチックレンズ用成形型を用いて眼鏡レンズを製造するためには、先ず、前記キャビティ内にレンズ材料を注入し、レンズ材料が充填された成形型を加熱炉に入れてレンズ材料を重合させる。その後、前記成形型を分解して円板状のプラスチックレンズを取り出し、このプラスチックレンズの外周部を眼鏡フレームの形状と同一の形状に加工する。以下においては、この加工を単に縁摺加工という。
縁摺加工は、プラスチックレンズを縁摺加工装置に支持させた状態で行われる。縁摺加工装置にプラスチックレンズを支持させるにあたっては、プラスチックレンズに接着用シートを介してレンズホルダーを貼り付け、このレンズホルダーを縁摺加工装置に支持させる。
【0006】
接着用シートを介してプラスチックレンズにレンズホルダーを貼り付けるためには、先ず、プラスチックレンズの基準となる位置(例えば光学中心)を専用の装置を使用して特定する。一方、レンズホルダーには、予め接着用シートを貼り付けておく。次に、前記基準となる位置に基づいて目標貼り付け位置を決め、この目標貼り付け位置に接着用シートを重ね、この状態でレンズホルダーをプラスチックレンズに押し付ける。この押圧作業によってレンズホルダーがプラスチックレンズに接着用シートを介して貼り付けられる。
縁摺加工は、高い精度が要求される加工である。この理由は、縁摺加工の精度が低いと、眼鏡レンズを眼鏡フレームのリムに正しく取付けることが難しくなるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−30431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した縁摺加工の加工精度を高くするにあたっては限界があった。この主な理由は、下記のように二つある。第1の理由は、レンズホルダーを必ずしも正しい位置に貼り付けることができるとは限らないからである。すなわち、プラスチックレンズの基準となる位置を測定により求めるときの誤差や、レンズホルダーを目標貼り付け位置に貼り付けるにあたって位置決めするときの誤差や、貼り付け時の変位による誤差などがあるから、レンズホルダーが貼り付けられる位置の精度を高くすることはことは難しい。
【0009】
前記変位は、以下のように起こる。例えば、レンズホルダーをプラスチックレンズのフレーム中心に貼り付けるような場合は、レンズ面の相対的に大きく傾斜した部分に接着用シートが貼り付けられることになる。この場合、レンズホルダーがプラスチックレンズに強く押し付けられると、接着用シートが剪断方向に僅かに弾性変形する。このように接着用シートが弾性変形することが原因で前記変位が生じる。
【0010】
第2の理由は、加工中に接着用シートが弾性変形することがあるからである。このように接着用シートが弾性変形すると、プラスチックレンズの位置が変化してしまい、縁摺加工を正しい位置に施すことができなくなる。
【0011】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、縁摺加工の精度をより一層高くすることが可能なプラスチックレンズ用成形型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために、本発明に係るプラスチックレンズ用成形型は、眼鏡用プラスチックレンズの一方のレンズ面を成形する型となる第1のモールド部材と、眼鏡用プラスチックレンズの他方のレンズ面を成形する型となる第2のモールド部材と、前記第1のモールド部材と第2のモールド部材との相対的な移動を規制する支持部材とを備え、前記第1のモールド部材と第2のモールド部材とのうちいずれか一方のモールド部材における前記レンズ面の中心部分と対応する外面には、このモールド部材を縁摺加工装置に取付けるための連結部が設けられているものである。
【0013】
本発明は、前記発明において、前記連結部は、前記モールド部材とは別体に形成された連結部材が取付けられる取付座であり、前記連結部材は、前記縁摺加工装置が支持可能なものであることを特徴とするものである。
【0014】
本発明は、前記発明において、前記連結部は、前記縁摺加工装置に取付可能な形状に形成され、かつ前記モールド部材に一体に形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るプラスチックレンズ用成形型において、第1、第2のモールド部材の外面は、レンズ面を成形する内面とは異なり、凹部や凸部を形成するにあたって制約を受けることはない。このため、モールド部材に連結部を設けるためには、連結部をモールド部材に機械的に結合させたり、モールド部材に一体成形により一体に形成することによって容易に実現できる。また、連結部は、プラスチックレンズの基準となる位置と同じ位置か、前記基準となる位置に対して予め定めた距離だけ離れた位置に配置することができる。前記基準となる位置とは、プラスチックレンズの光学中心や幾何学的中心などである。
【0016】
この連結部を有するモールド部材を使用してプラスチックレンズを成形することにより、連結部はモールド部材を介してプラスチックレンズに強固に接着される。また、このプラスチックレンズの基準となる位置は、連結部の位置から特定できるようになる。
本発明に係るプラスチックレンズ用成形型においては、第1、第2のモールド部材のうち、連結部が設けられている一方のモールド部材は、プラスチックレンズに接着された成形時の状態で保持でき、他方のモールド部材と支持部材は、成形後にプラスチックレンズから外すことができるものである。
【0017】
このプラスチックレンズの縁摺加工は、前記一方のモールド部材の連結部を縁摺加工装置に取り付けて行うことができる。この加工時には、プラスチックレンズの他に前記一方のモールド部材にも同時に切削や研削などが施される。
前記連結部は、モールド部材およびプラスチックレンズと一体的に結合されているから、縁摺加工時にプラスチックレンズが位置ずれを起こすことはない。また、連結部の位置に基づいてプラスチックレンズの基準の位置を特定できるから、縁摺加工の加工位置を正確に決めることができる。
したがって、本発明によれば、縁摺加工の精度をより一層高くすることが可能なプラスチックレンズ用成形型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるプラスチックレンズ用成形型の断面図である。
【図2】第1の実施の形態による第1のモールド部材をプラスチックレンズの軸線方向から見た平面図である。
【図3】第1の実施の形態による第1のモールド部材の正面図である。同図は、連結部材を固定した状態で描いてある。
【図4】図2におけるIV−IV線断面図である。
【図5】連結部材の側面図である。
【図6】連結部材の平面図である。
【図7】連結部材の底面図である。
【図8】図6におけるVIII−VIII線断面図である。
【図9】第2の実施の形態による第1のモールド部材の平面図である。
【図10】第2の実施の形態による第1のモールド部材の側面図である。
【図11】図9におけるXI−XI線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係るプラスチックレンズ用成形型の一実施の形態を図1〜図8によって詳細に説明する。
図1に示すプラスチックレンズ用成形型1は、円筒状のガスケット2と、第1、第2のモールド部材3,4とを使用して構成されたものである。前記ガスケット2は、プラスチック材料によって形成されている。このガスケット2の内周部には、眼鏡用プラスチックレンズ(図示せず)の外周面(所謂コバ面)を成形する型となる周面2aと、後述するストッパー2bとが形成されている。
【0020】
ガスケット2の外周部には、ガスケット2内のキャビティ5にレンズ材料(図示せず)を注入するための注入補助部材6が取付けられている。前記キャビティ5は、ガスケット2と、後述する第1、第2のモールド部材3,4との間に形成されている。前記注入補助部材6の内部には、溶融状態のレンズ材料(図示せず)を流すための通路6aが形成されている。この通路6aの下流端は、ガスケット2の注入口7に接続されている。この注入口7は、ガスケット2を径方向に貫通するように形成されている。
この実施の形態においては、このガスケット2によって本発明でいう「支持部材」が構成されている。
【0021】
前記第1のモールド部材3と第2のモールド部材4は、ガスケット2の内部に固定されている。
第1のモールド部材3は、眼鏡用プラスチックレンズの一方のレンズ面(凸面)を成形する型となるものである。第2のモールド部材4は、眼鏡用プラスチックレンズの他方のレンズ面(凹面)を成形する型となるものである。
【0022】
前記第1、第2のモールド部材3,4は、それぞれプラスチック材料によって凹曲面3a,4aと凸曲面3b,4bとを有する円板状に形成されている。第1のモールド部材3の凹曲面3aは、プラスチックレンズのレンズ面(凸面)を成形するための型になる。第2のモールド部材4の凸曲面4bは、プラスチックレンズのレンズ面(凹面)を形成するための型になる。
【0023】
第1のモールド部材3は、前記凹曲面3aが成形型1の内側に位置するように前記ガスケット2の内周部に嵌合している。第2のモールド部材4は、前記凸曲面4bが前記第1のモールド部材3と対向するように前記ガスケット2の内周部に嵌合している。これらの第1、第2のモールド部材3,4の外周面は、周方向の全域にわたってガスケット2の内周面に密着している。
【0024】
第1のモールド部材3の位置、言い換えれば円筒状を呈するガスケット2の軸線方向の位置は、ガスケット2のストッパー2bによって決められている。ストッパー2bは、ガスケット2の内周部に径方向の内側に突出するように形成されている。また、このストッパー2bは、ガスケット2の周方向の全域に途切れることなく延びるように形成されている。第1のモールド部材3は、凹曲面3a側の端縁が前記ストッパー2bに当たることによって、ガスケット2の中に入る方向への移動が規制され、ストッパー2bによって位置決めされている。
【0025】
第2のモールド部材4の位置は、前記第1のモールド部材3との間隔が予め定めた間隔になるような位置に設定されている。第2のモールド部材4の前記軸線方向への移動は、ガスケット2との間に生じる摩擦によって規制されている。すなわち、ガスケット2は、第1のモールド部材3と第2のモールド部材4との相対的な移動を規制するものである。
【0026】
前記第1のモールド部材3の凸曲面3bからなる外面は、レンズ面を成形する内面(前記凹曲面3a)とは異なり、凹部や凸部を形成するにあたって制約を受けることはない。このため、この第1のモールド部材3における前記レンズ面の中心部分と対応する外面には、この第1のモールド部材3を縁摺加工装置11(図3参照)に取付けるための連結部12が設けられている。縁摺加工装置11は、従来からよく知られているもので、図3に示すように、前記連結部12に取付けられた後述する連結部材13を支持するレンズ支持部14と、図3中に符号Lで示すプラスチックレンズのコバ面を切削または研削によって所定の形状に形成する加工部15とを備えている。この実施の形態による加工部15は、プラスチックレンズLを第1のモールド部材3とともに削ることができるように形成されている。
【0027】
この実施の形態による前記連結部12は、図1および図2に示すように、第1のモールド部材3に一体に形成された取付座16によって構成されている。この取付座16は、連結部材13を取付けるためのものである。
前記取付座16は、図2に示すように、第1のモールド部材3の中心、すなわちプラスチックレンズの光学中心と対応する位置に形成されている。この取付座16は、平坦な取付面17と、この取付面17に開口する第1、第2の位置決め用凹部18,19とによって形成されている。
【0028】
前記取付面17は、プラスチックレンズの軸線と直交する平面に沿って形成されている。この実施の形態による取付面17は、プラスチックレンズの軸線方向から見て円形に形成されている。
前記第1の位置決め用凹部18は、前記軸線方向から見て円形に形成されている。また、この第1の位置決め用凹部18は、プラスチックレンズの光学中心と同一軸線上に位置するように位置付けられている。なお、第1の位置決め用凹部18は、前記光学中心や幾何学的中心などのようなプラスチックレンズの基準となる位置に対して予め定めた距離だけ離れた位置に配置することができる。
【0029】
前記第2の位置決め用凹部19は、円板状のプラスチックレンズの周方向の位置を特定するためのものである。この第2の位置決め用凹部19は、前記第1の位置決め用凹部18と隣接する位置に前記第1の位置決め用凹部18より穴径が小さくなるように形成されている。
【0030】
前記連結部材13は、図3、図5〜図8に示すように、一端部に円板21が形成されているとともに、他端部に嵌合軸部22が形成されている。円板21は、前記取付面17に重ねて接着されるものである。嵌合軸部22は、前記縁摺加工装置11のレンズ支持部14に取付けられるもので、円筒状に形成されている。また、前記円板21と嵌合軸部22との間には、フランジ23が設けられている。このフランジ23には、前記レンズ支持部14の位置決め用突起(図示せず)が嵌合する切り欠き24が形成されている。すなわち、この連結部材13は、円板21を有する一端部を除く他の部分が従来のレンズホルダーと同じ構造となるように形成されている。
【0031】
前記円板21の端面21aは、前記取付面17に全面にわたって接するように平坦に形成されている。前記嵌合軸部22は、この円板21の端面21aとは直交する方向を軸線方向として形成されている。
円板21には、前記第1の位置決め用凹部18に嵌合する第1のピン25と、前記第2の位置決め用凹部19に嵌合する第2のピン25とが突設されている。前記嵌合軸部22は、第1のピン25と同一軸線上に位置するように形成されている。このため、第1のピン25が第1の位置決め用凹部18に嵌合した状態においては、嵌合軸部22がプラスチックレンズと同一軸線上に位置することになる。
【0032】
前記第2のピン26は、円板21の周方向において前記切り欠き24と同一位置に形成されている。このため、第2のピン26が第2の位置決め用凹部19に嵌合している状態においては、切り欠き24によって第1のモールド部材3(プラスチックレンズ)を周方向に位置決めすることが可能になる。このため、例えば乱視軸の方向を正確に設定することが可能になる。
【0033】
この実施の形態による円板21は、第1、第2のピン25,26が第1、第2の位置決め用凹部18,19に嵌合する状態で前記取付座16に接着剤によって接着される。
このように円板21が取付座16に接着されることによって、連結部材13が第1のモールド部材3に固定される。なお、連結部材13を第1のモールド部材3に固定するにあたっては、この実施の形態で示したような接着剤を使用する固定方法に限定されることはない。例えば、第1、第2のピン25,26を第1、第2の位置決め用凹部18,19に圧入しても連結部材13を第1のモールド部材3に固定することができる。また、第1の位置決め用凹部18と第1のピン25との嵌合部分をねじ状に形成しても連結部材13を第1のモールド部材3に固定することができる。
この連結部材13は、第1のモールド部材3を前記ガスケット2に取付ける以前に第1のモールド部材3に固定される。
【0034】
この実施の形態によるプラスチックレンズ用成形型1は、前記ガスケット2に前記第1、第2のモールド部材3,4を組み付けるとともに、注入補助部材6を取付けることによって形成される。この成形型1を使用してプラスチックレンズを成形するためには、先ず、注入補助部材6が上に位置するように成形型1を立てて支持し、注入補助部材6にレンズ材料を注入する。キャビティ5内がレンズ材料で満たされた後、この成形型1を加熱炉(図示せず)に入れて成形型1内のレンズ材料を硬化させる。レンズ材料が硬化することによって、第1、第2のモールド部材3,4に強固に接着された状態でプラスチックレンズが成形される。このプラスチックレンズの光学中心(基準の位置)は、連結部12の位置から特定可能である。
【0035】
プラスチックレンズの成形が終了した後、第1、第2のモールド部材3,4のうち、連結部12が設けられている第1のモールド部材3は、プラスチックレンズに接着された成形時の状態で保持される。他方の第2のモールド部材4とガスケット2は、成形後にプラスチックレンズから外される。
このプラスチックレンズの縁摺加工は、前記第1のモールド部材3に接着されている連結部材13を縁摺加工装置11のレンズ支持部14に取り付けた状態で行う。この加工時には、プラスチックレンズの他に前記第1のモールド部材3にも同時に切削や研削などを施す。
【0036】
前記連結部12は、第1のモールド部材3およびプラスチックレンズと一体的に結合されているから、縁摺加工時に縁摺加工装置11の加工部15からプラスチックレンズに押圧力が加えられてもプラスチックレンズが位置ずれを起こすことはない。また、連結部12の位置に基づいてプラスチックレンズの光学中心(基準の位置)を特定できるから、縁摺加工の加工位置を正確に決めることができる。
【0037】
したがって、この実施の形態によれば、縁摺加工の精度をより一層高くすることが可能なプラスチックレンズ用成形型1を提供することができる。
【0038】
この実施の形態による前記連結部12は、前記第1のモールド部材3とは別体に形成された連結部材13が取付けられる取付座16によって構成されている。前記連結部材13は、前記縁摺加工装置11が支持可能なものである。
このため、第1のモールド部材3に連結部12を設けるにあたって、第1のモールド部材3には連結部材13用の取付座16を形成するだけでよい。
したがって、縁摺加工装置11が取付られる構成を採っているにもかかわらず、第1のモールド部材3を容易に製作することができる。
【0039】
(第2の実施の形態)
本発明に係る連結部は図9〜図11に示すように構成することができる。図9〜図11において、前記図1〜図8によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図9〜図11に示す第1のモールド部材3の連結部12は、詳細は後述するが、前記縁摺加工装置11のレンズ支持部14に取付可能な形状に形成されている。また、この連結部12は、第1のモールド部材3を成形する金型(図示せず)を使用して成形されており、第1のモールド部材3に一体成形により一体に形成されている。
【0040】
この第2の実施の形態による連結部12には、前記レンズ支持部14に取付けられる円筒状の嵌合軸部22が先端部に形成されている。また、嵌合軸部22の近傍には、フランジ23が設けられている。このフランジ23には、前記レンズ支持部14の位置決め用突起(図示せず)が嵌合する切り欠き24が形成されている。すなわち、この連結部12は、従来のレンズホルダーと同じ構造となるように形成されている。
前記嵌合軸部22は、プラスチックレンズと同一軸線上に位置するように形成されている。
【0041】
前記切り欠き24は、第1のモールド部材3(プラスチックレンズ)の周方向の位置を特定するために使用するものである。この切り欠き24を使用することにより、例えば乱視軸の方向を正確に設定することが可能になる。すなわち、この第2の実施の形態による連結部12は、従来のレンズホルダーを第1のモールド部材3に一体に形成した構成のものである。
【0042】
この第2の実施の形態によるプラスチックレンズ用成形型1の連結部12は、上述した第1の実施の形態を採る場合、すなわち第1のモールド部材3とは別体に形成された連結部材13を使用する場合と較べると、連結部材13を第1のモールド部材3に取付ける作業が不要になる。このため、この実施の形態によれば、第1のモールド部材3を簡単に縁摺加工装置11に取付けることができ、縁摺加工を行うにあたって作業工数が少なくなるから、縁摺加工を低いコストで行うことができる。
【0043】
上述した第1、第2の実施の形態においては、連結部12が第1のモールド部材3に設けられている。しかし、本発明は、このような限定にとらわれることはなく、連結部12を第2のモールド部材4に設けることができる。
また、上述した各実施の形態においては、第1のモールド部材3に接着されたプラスチックレンズに縁摺加工を施す場合の例について説明した。しかし、プラスチックレンズが接着された状態にある第1のモールド部材3の連結部12は、プラスチックレンズを搬送するための搬送機(図示せず)に取付け、プラスチックレンズを搬送するために使用することができる。さらに、この第1のモールド部材3は、縁摺加工を行う以前に何らかの加工や検査、測定などを行うときにプラスチックレンズを支持するためにも使用することができる。
【0044】
なお、上述した実施の形態においては、第1のモールド部材3と第2のモールド部材4との相対的な移動を規制する支持部材として円筒状のガスケット2を用いる例を示した。しかし、本発明は、このような限定にとらわれることはなく、ガスケット2の代わりにテープを使用することができる。このテープは、細い帯状に形成されて裏面に接着剤が塗布されている。このテープで第1のモールド部材3と第2のモールド部材4との相対的な移動を規制するためには、前記テープを、第1のモールド部材3の外周面と、第2のモールド部材4の外周面との両方に接着される状態でこれらの部材に巻き付けて行う。
【0045】
この構成を採る場合、第1のモールド部材3の外周面は、テープの接着面積を広くとることができるように、上述した実施の形態を採る場合に較べて軸線方向に幅広く形成することが望ましい。このように第1のモールド部材3の外周面を円筒面状に形成するためには、第1のモールド部材3の少なくとも外周部の厚みを厚く形成することによって実現することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…プラスチックレンズ用成形型、 2…ガスケット、3…第1のモールド部材、4…第2のモールド部材、5…キャビティ、12…連結部、13…連結部材、16…取付座、18…第1の位置決め用凹部、19…第2の位置決め用凹部、22…嵌合軸部、25…第1のピン、26…第2のピン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡用プラスチックレンズの一方のレンズ面を成形する型となる第1のモールド部材と、
眼鏡用プラスチックレンズの他方のレンズ面を成形する型となる第2のモールド部材と、
前記第1のモールド部材と第2のモールド部材との相対的な移動を規制する支持部材とを備え、
前記第1のモールド部材と第2のモールド部材とのうちいずれか一方のモールド部材における前記レンズ面の中心部分と対応する外面には、このモールド部材を縁摺加工装置に取付けるための連結部が設けられていることを特徴とするプラスチックレンズ用成形型。
【請求項2】
請求項1記載のプラスチックレンズ用成形型において、前記連結部は、前記モールド部材とは別体に形成された連結部材が取付けられる取付座であり、
前記連結部材は、前記縁摺加工装置が支持可能なものであることを特徴とするプラスチックレンズ用成形型。
【請求項3】
請求項1記載のプラスチックレンズ用成形型において、前記連結部は、前記縁摺加工装置に取付可能な形状に形成され、かつ前記モールド部材に一体に形成されていることを特徴とするプラスチックレンズ用成形型。
【請求項1】
眼鏡用プラスチックレンズの一方のレンズ面を成形する型となる第1のモールド部材と、
眼鏡用プラスチックレンズの他方のレンズ面を成形する型となる第2のモールド部材と、
前記第1のモールド部材と第2のモールド部材との相対的な移動を規制する支持部材とを備え、
前記第1のモールド部材と第2のモールド部材とのうちいずれか一方のモールド部材における前記レンズ面の中心部分と対応する外面には、このモールド部材を縁摺加工装置に取付けるための連結部が設けられていることを特徴とするプラスチックレンズ用成形型。
【請求項2】
請求項1記載のプラスチックレンズ用成形型において、前記連結部は、前記モールド部材とは別体に形成された連結部材が取付けられる取付座であり、
前記連結部材は、前記縁摺加工装置が支持可能なものであることを特徴とするプラスチックレンズ用成形型。
【請求項3】
請求項1記載のプラスチックレンズ用成形型において、前記連結部は、前記縁摺加工装置に取付可能な形状に形成され、かつ前記モールド部材に一体に形成されていることを特徴とするプラスチックレンズ用成形型。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−22740(P2013−22740A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156362(P2011−156362)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
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