説明

プラスチック中空成形体の壁に形成した透孔の封止構造

【課題】 プラスチック中空成形体にセンサー等の部品を装着する場合に該中空成形体に形成した透孔を封止する改良した技術を提供する。
【解決手段】 プラスチック中空成形体1の周壁1mから外部へ延在する突起状の円筒部1dを形成して透孔8を画定しており、該透孔8を挿通してセンサー4が設けられており、該センサー4と円筒部1dの内周面との間にOリング7が介在されている。円筒部1dはプラスチック中空成形体1にインサート成形により一体化されている部品取り付け部材2の本体部1dによりその外周部が裏打ちされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック中空成形体の壁に形成した透孔の封止構造に関するものであって、更に詳細には、自動車用エンジンなどの吸気系ダクトの内部環境を検知するために該ダクトに透孔を設け、その透孔内にセンサを位置させた場合の封止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック中空成形体の壁に透孔を設け、該透孔を介して中空成形体の内部空間と連通した分岐管を設ける場合に、分岐管と中空成形体との間の気密性を確保する技術は公知である。例えば、本願出願人に譲渡されている特開昭64−56532号公報は、熱融着により分岐管とプラスチック中空成形体との間のシール性を改善した封止技術を開示している。一方、これも本願出願人に譲渡されている特開平7−124999号公報は、インサート成形により分岐管をプラスチック中空成形体に一体成形することにより分岐管と中空成形体との間の気密性を改善した封止技術を開示している。上記特許文献1及び2に開示されている封止技術は、プラスチック中空成形体とそれに付加された分岐管との間の封止を改善する技術であるが、それは、分岐管とブラスチック中空成形体との間の気密性を改善するためのものであり、プラスチック中空成形体の壁に形成された透孔又は分岐管の中空空間を封止する技術に関するものではない。
【0003】
一方、自動車などのエンジン用の吸気系に使用されるエアーインテークダクトや、ターボインテークダクトなどの吸気ダクトにおいては、吸気ダクト内を流動する流体の状態を検知することが要求される。例えば、エンジンの燃料消費効率向上や排気ガスの清浄化などのためにエンジンの稼動状態を制御するために、吸気系ダクト内部を流動する流体の状態を検知するために各種のセンサーが使用される。これらのセンサーは、吸気系ダクトの所望の位置に取り付けて吸気系ダクト内の環境を検知し、その検知した情報を使用してエンジンの稼動状態が制御される。
【0004】
この様に、各種のセンサー等の部品を吸気系ダクトの所望の位置に取り付けることが要求されるが、その場合に、吸気系ダクトがプラスチック中空成形体から構成されている場合には、金属などと比較してその剛性が低いために、センサーと吸気系ダクトとの間の気密性を確保することが問題となる。即ち、センサー等の部品の場合には、吸気系ダクトの壁に透孔を穿設し、その透孔内に該部品を挿入して吸気系ダクト内部の状態を検知し、その検知した情報を制御器へ供給することが必要である。その場合に、吸気系ダクトはエンジン稼動中には常時振動が付与されるので、該部品を確実に吸気系ダクトに保持させるためには、該部品を吸気系ダクトに固着させることが必要であり、更には、該部品の交換の必要性などから、典型的には、ナットとボルトとにより該部品を吸気系ダクトに固着させる。その場合に、ナット又はボルトの一方を吸気系ダクトに固定させることとなるが、吸気系ダクトがプラスチック中空成形体から構成されている場合には、ボルト又はナットをプラスチック中空成形体に確実に固定させる上で困難性がある。
【0005】
更に、センサーなどの部品を吸気系ダクトに形成した透孔に挿入して所定位置に装着させる場合に、該部品と透孔との間の間隙を封止する上での困難性がある。即ち、吸気系ダクトをプラスチック中空成形体から構成する場合に、上述した如く、ナット又はボルトの一方を確実に保持するためには、比較的剛性の高いものとすることが必要となるが、剛性が高い中空成形体とした場合には、吸気系ダクトはエンジン稼動中は常時振動が付与されるものであるから、該部品と剛性の高い中空成形体との間の間隙は常時微小振動に露呈されることとなる。この様な状態にも拘らずに、該間隙を確実に封止することが必要である。
【0006】
【特許文献1】特開昭64−56532号公報
【特許文献2】特開平7−124999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、プラスチック中空成形体の壁に形成した透孔を確実に封止することが可能な封止技術が必要とされている。例えば、該透孔を挿通してセンサー等の部品を装着する場合に、該部品を所定の位置に確実に装着することが可能であると共に、該透孔と該部品との間の間隙を確実に封止することが可能な封止技術が必要とされている。特に、プラスチック中空成形体が自動車用エンジンなどの吸気系ダクトに適用される場合には、該中空成形体は、少なくともエンジン稼動中には常時振動が付与されるものであるから、その様な振動が付与される場合であっても、封止状態が劣化することが無い封止技術を提供することが要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以上の点に鑑みなされたものであって、上述した如き従来技術の欠点を解消し、改良した封止技術を提供することを目的とする。
【0009】
即ち、本発明によれば、プラスチック中空成形体の壁に形成した透孔の封止構造において、
外側に延在して内部と外部とを連通する透孔を画定している第1壁部分を有しており且つ第1係止手段を具備している中空成形体、
前記第1壁部分の外周面に当接する当接部分を有しており、前記第1係止手段と係止して前記中空成形体と機械的に係止された状態とさせる第2係止手段を具備している部品取り付け部材、
前記透孔を貫通して位置される部品を前記部品取り付け部材へ固着させる固着手段、
前記第1壁部分の内周面と前記部品との間に介装される封止手段、
を有していることを特徴とする封止構造が提供される。
【0010】
好適には、該中空成形体は第1樹脂からブロー成形されたものである。更に、好適には、該中空成形体が自動車用エンジンの吸気ダクトの少なくも一部を構成するものである。更に好適には、該中空体は中空空間を画定する周壁を有しており、該第1壁部分は該周壁から外側へ突起状に延在して該内周面と該外周面とを画定しており、該内周面により該透孔を画定している。更に好適には、該第1係止手段が該周壁内に形成されている楔状のアンダーカット構造であり、且つ該第2係止手段が該楔状のアンダーカット構造内に納まる該部品取り付け部材の逆楔状の周辺端部である。更に好適には、該部品取り付け部材は、該中空成形体をブロー成形により成形する場合にインサートとして該中空成形体にインサート成形されたものであり、インサート成形時に該第1係止手段と第2係止手段とが係止状態に形成されたものである。更に好適には、該部品取り付け部材は第2樹脂から射出成形により形成されており、該第2樹脂は該第1樹脂よりも高い剛性を有している。更に好適には、該第2樹脂はガラス繊維等の剛性を増加させる物質を包含している。更に好適には、該固着手段が、該部品取り付け部材内に埋設されている少なくとも1個のボルトと、該部品に形成されているボルト挿通孔を介して挿通され該ボルトに締着可能なナットとを有している。更に好適には、該封止手段が弾性部材から構成されている。更に好適には、該弾性部材がOリングである。更に好適には、該部品が該中空成形体の内部空間内の環境を検知するセンサを包含している。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プラスチック中空成形体の壁に形成した透孔内にセンサー等の部品を確実に取り付けることが可能である。更に、該透孔と該部品と間の間隙を確実に封止することが可能であり、たとえ、該中空成形体に振動が付与される場合であっても、封止状態が劣化されることは無いか又は最小に抑えることが可能である。更に、本発明によれば、ブロー成形に基づくインサート成形により封止構造を構成することが可能であるから、その製造は極めて容易化されており且つ製造歩留りも向上されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の幾つかの具体的実施の形態について添付の図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の1実施例に基づいて構成された封止構造を図示している。即ち、ブロー成形により第1樹脂から成形されたプラスチック中空成形体1は、例えば、ダクト、パイプ、チューブなどの所望の形状の中空空間を画定する周壁1mを有している。プラスチック中空成形体1には、部品取り付け部材2が装着されており、この部品取り付け部材2は第2樹脂から構成されており、且つプラスチック中空成形体1がブロー成形される場合にプラスチック中空成形体1にインサート成形されたものである。インサート成形により、プラスチック中空成形体1と部品取り付け部材2との間の界面は熱溶着されて一体化される。更に、本実施例においては、図1に図示した如く、プラスチック中空成形体1の周壁1mには楔状のアンダーカット部1aが形成されており、一方、部品取り付け部材2には逆楔状の周辺端部2aが形成されている。従って、これらの楔状のアンダーカット部1aと逆楔状の周辺端部2aとが係止された状態となっているので、部品取り付け部材2はプラスチック中空成形体1に対して機械的に保持される構成となっている。即ち、部品取り付け部材2は、界面における熱溶着及び楔係止による機械的結合を介して、強固にプラスチック中空成形体1に一体化されている。
【0014】
部品取り付け部材2には、一対のナット3が埋設されている。部品取り付け部材2は、好適には、射出成形により形成されるが、その場合に、ナット3をインサート部品として使用してインサート成形する。部品取り付け部材2には、ナット3が埋設されるので、部品取り付け部材3は、好適には、ガラス繊維などの補強物質を包含するか又は剛性の高い物質からなる第2樹脂から射出成形により形成する。図1は断面図であるが、部品取り付け部材2は、大略、リング状の形状をしている。
【0015】
プラスチック中空成形体1の周壁1mから外部へ延在して突起状の円筒部1dが形成されている。該円筒部1dの底部には開口1cが形成されている底壁1eが設けられている。円筒部1dの外周面は円錐面を形成しており、これは部品取り付け部材2の円錐状の内周面2bに当接し且つ符合している。部品取り付け部材2は、大略リング状の本体部2dを有しており、ナット3は、ほぼ、この本体部2d内に埋設されており、且つこの本体部2dはその円錐状の内周面2dを介してプラスチック中空成形体1の円筒部1dの外周面と当接している。円筒部1dの内周面1bは、部品受納空間(透孔)8を画定しているが、円筒部1dの外周面は部品取り付け部材2の本体部1dの内周面2dにより当接されている。従って、プラスチック中空成形体1を構成する第1樹脂は、ブロー成形に適した樹脂材料とし比較的柔軟性に富む樹脂材料とし、且つ部品取り付け部材3を構成する第2樹脂は比較的剛性が高い樹脂材料及び/又はガラス繊維などの補強物質を包含する樹脂とした場合に、部品受納空間8を画定する円筒部1dは振動の吸収などに適した比較的柔軟性に富む性質を有し、一方円筒部1dの外周周りに位置する本体部2dは比較的剛性の高い性質を有するものとなり、円筒部1dが異常に変形することを防止することが可能である。
【0016】
図1に図示されるように、センサー4とほぼ円筒状のセンサー保持部5とからなる部品が設けられており、センサー保持部5はセンサー4を保持すると共に、一対の孔が形成されており、これらの夫々の孔を介してボルト6が対応するナット3に締着されている。これにより、センサー4は、円筒部1dの内周面1bで画定される透孔8を介して挿通して所定位置に位置決めされ、その先端部は中空成形体1の内部空間内の所定の位置に位置決めされている。本実施例においては、センサー保持部5と円筒部1dの内周面1bとの間のギャップ内に封止手段7が配設されており、該ギャップを封止しており、それにより気密状態を確立している。この封止手段7としては、好適には、弾性部材から構成するものであり、更に好適には、Oリングから構成する。この構成によれば、封止手段7は比較的柔軟性のある第1樹脂からなる円筒部1dと接触しているので、振動が付与される場合であっても、確実に封止状態を保持することが可能であり、更に、円筒部1dは比較的剛性の高い第2樹脂からなる本体部2dにより裏打ちされているので、円筒部1dが異常に変形することが阻止されて封止状態の劣化を防止している。
【実施例2】
【0017】
次に、図2乃至5を参照して、図1に示した封止構造の本発明の1実施例に基づく製造方法について説明する。
【0018】
図2は、本発明の1実施例に基づく部品取り付け部材2を示した概略断面図である。部品取り付け部材2は、大略、リング形状を有しており、本体部2dと本体部2dの底部か半径方向外側に延在する鍔部の外周に楔状に形成された傾斜端部2aとを有している。この部品取り付け部材2は、予め、射出成形により第2樹脂から構成されている。好適には、第2樹脂は、ガラス繊維又はその他の補強用フィラーを含有する樹脂か又は比較的高い剛性を有する樹脂である。部品取り付け部材2の本体部2d内には、図示例においては一対のナット3が埋設されている。これらのナット3は、部品取り付け部材2を射出成形する場合にインサート要素として金型内に設置させることにより、部品取り付け部材2を射出成形する場合に部品取り付け部材2内に埋設状態とされる。
【0019】
図3は、図2に示した部品取り付け部材2をインサート成形用のインサート要素としてブロー成形用の金型9内に設置した状態を示している。図示例においては、金型9は第1入れ駒9aと第2入れ駒9bとを包含している。第1入れ駒9aは一対の突起9a’を有しており、これらの突起9a’をナット3内に夫々挿入させて部品取り付け部材2を金型9内に設置する。一方、第2入れ駒9bの先端部分9b’は、大略、円柱形状をしており、第1入れ駒9aにより支持されている部品取り付け部材2の内周面2bで画定される空間内に延在しており、ブロー成形された場合に部品受納空間8を形成する。尚、これらの第1及び第2入れ駒9a、9bはスライド機構により所定位置に設定可能な構造とさせるか、又は着脱自在な構造とすることが可能である。
【0020】
尚、部品取り付け部材2の内周面2bと、第2入れ駒9bの先端部分9b’とによって形成されるギャップ10は、ブロー成形用のパリソンがブローされて膨らまされた場合にそのパリソンが進入するのに十分な大きさを有することが必要である。そして、ブロー成形後に金型9を開いた場合に、第2入れ駒9bの先端部分9b’がブロー成形されたプラスチック中空成形体から抜き出して部品受納空間8を形成するために最小の抜きテーパ、即ち、大略、先細り形状とすることが望ましい。一方、ブロー成形用のパリソンがブローアップされてギャップ10内に十分に進入するためには、ギャップ10の入口部10aは広いほうが良い。従って、部品取り付け部材2の内周面2bは適度の裾広がりの円錐形状を有することが望ましい。しかしながら、この内周面2bの傾斜角度があまりに大き過ぎると、ブロー成形により形成される円筒部1dの厚さ変化が大きくなり問題を発生する場合がある。これらの条件に鑑み、内周面2dの傾斜角度は、一般的には、15〜75度の範囲に設定することが好適であり、更に好適には、30〜60度の範囲に設定する。
【0021】
図4は、図3の状態で、部品取り付け部材2をインサート成形用のインサート要素としてブロー成形を行った後に、ブロー成形した製品を金型9から取り出した状態を示している。即ち、金型9内に第1樹脂からなるパリソンを設置し且つ該パリソン内に高圧ガスを導入させることにより該パリソンを膨張させる。パリソンは、基本的に、金型9の表面に押し付けられて所定厚さの周壁1mを形成するが、その場合に、パリソンの一部は部品取り付け部材2の傾斜端部2aを回りこんで楔状のアンダーカット部1aを形成する。従って、ブロー成形により、プラスチック中空成形体1と部品取り付け部材2との間の界面に沿って熱融着により両者が一体化されるのみならず、中空成形体1の楔状アンダーカット部1aと部品取り付け部材2の傾斜端部2aとの間の係合により両者は機械的にも強力に一体化されることとなる。更に、このブロー成形時に、パリソンの一部は図3に示したギャップ10内に進入してプラスチック中空成形体1の円筒部1d及びその底壁1eを形成する。この円筒部1dの内周面1bは部品受納空間8を画定している。
【0022】
図5は、図4に示した底壁1eに開口1cを形成した状態を示している。この場合に、開口1は、ドリル加工やNC加工などの適宜の切削加工技術を適用することが可能である。開口1cを形成することにより、部品受納空間8は所謂透孔として機能し、プラスチック中空成形体1の周壁1mにより画定される内部空間をその外部空間と連通状態とさせる。
【0023】
次いで、この部品受納空間(透孔)8を挿通してセンサー等の部品4を位置させ、センサー保持部5を介してセンサー4をボルト6により締着させることによりセンサー4を所定位置に固定させる。この場合に、部品受納空間(透孔)8内においてOリング7を配設し、センサー保持部5と円筒部1dの内周面1bとの間の間隙をOリング7により封止状態とさせる。この様にして図1に示した封止構造が完成される。
【0024】
この様にして構成された封止構造においては、プラスチック中空成形体1と部品取り付け部材2との間の界面における熱溶着状態は封止機能に何らの影響を与えるものではない。従って、プラスチック中空成形体1を形成する第1樹脂と部品取り付け部材2を形成する第2樹脂とはそれらの間の熱溶着性に制限されること無しに選択することが可能である。例えば、第1樹脂は、ブロー成形の特性に適した比較的柔軟性に富んだ樹脂を選択し、一方、第2樹脂は、ガラス繊維等の補強物質を含有する比較的剛性の高い樹脂を選択することが可能である。一般に、ブロー成形時に分岐パイプや部品取り付け部材などの射出成形部品をインサート成形する場合に、PP(ポリプロピレン)などのオレフィン系樹脂に関しては比較的溶融密着性が良いのでインサート成形により部品間の気密性を維持することが可能であるが、ガラス繊維等フィラーが含有されているとそのフィラーの影響により溶融密着性が低下するなどの問題が発生することがある。また、PA(ポリアミド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)などのエンジニアリングプラスチックでは、ブロー成形時にインサート成形した場合に溶融密着性が低下し、封止機能を維持することができない。更に、それらの樹脂にガラス繊維等の補強用フィラーを含有させた樹脂の場合には、溶融密着性は更に低下し、ブロー成形によるインサート成形で封止性能を発揮させることは困難であり、熱板溶着や振動溶着などの特別の溶着技術を採用することが必要である。
【0025】
一方、本発明によれば、第1樹脂と第2樹脂との間の溶着密着性に制限されること無しに夫々の特性に応じて樹脂を選択することが可能であり、例えば、PP、PP−GFなどのオレフィン系樹脂及びそのガラス繊維強化樹脂、PA、PA−GF、PBT、PBT−GF、PPS、PPS−GFなどのエンジニアリングプラスチック及びそのガラス繊維強化樹脂、更には、その他のフィラー(例えば、タルク、ミネラル等)を含有させた強化樹脂を使用することが可能である。そして、これらを第1樹脂及び第2樹脂のいずれに使用することも可能である。
【0026】
尚、上述した実施例においては、部品受納空間(透孔)8は、第2入れ駒9bを使用して形成しているが、第2入れ駒9bを使用する代わりに、又はそれに加えて、NC加工やその他の切削加工により内周面1bを加工処理することにより部品受納空間(透孔)8を形成することも可能である。
【実施例3】
【0027】
図6は、本発明の別の実施例に基づく封止構造を示している。この場合には、前述した第1樹脂からブロー成形により成形されたプラスチック中空成形体11は、ほぼ、円筒形状をしており、プラスチック中空成形体11の側面の一部にはブロー成形時にインサート成形された部品取り付け部材12が一体化されている。この部品取り付け部材12の本体部12dの一部には1個のナット13が埋設されている。部品取り付け部材12には部品受納空間(透孔)15が形成されており、この部品受納空間8内にセンサー等の部品14の一部が収納され、部品14はボルト16によりナット13に対して締着される。従って、センサー等の部品14の一部は部品収納空間(透孔)8を介して、プラスチック中空成形体11の内部空間内に位置させることが可能であり、それにより該中空成形体11内の環境を検知することが可能である。
【0028】
次に、図7乃至9を参照して、図6に示した封止構造の製造プロセスについて説明する。
【0029】
図7は、ナット13をインサート要素として前述した第2樹脂から予め射出成形により形成した部品取り付け部材12をブロー成形用の金型内にインサート要素として設置させてプラスチック中空成形体11をブロー成形により形成し、その成形品を金型から取り出した状態を示している。部品取り付け部材12の本体部12dには切頭円錐状の内周面12bが形成されており、それにより大略リング形状に形成されている。更に、部品取り付け部材12の周辺端部には楔状の傾斜面12aが形成されている。第1樹脂からなるパリソンをブローアップさせることにより、パリソンは、基本的には、金型の表面により画定される形状にならった周壁11mを形成するが、その一部は部品取り付け部材12の傾斜周辺端部12aを回りこんで対応する楔状のアンダーカット部11aを形成し、これらの傾斜周辺端部12aとアンダーカット部11aとの係合により強固な機械的結合を与えている。更に、パリソンの別の一部は、部品取り付け部材12の円錐状の内周面12bにならう円錐状の壁部分を形成しており、更に、図3の場合と同様に、金型(不図示)に設けた入れ駒(不図示)により底壁11e及び凹所15’が形成されている。
【0030】
次に、図8に示されるように、図7に示した凹所15’に対して切削加工を行い、内周面15bによって画定される部品収納空間(透孔)15を形成し、その上部部分を面取り加工して面取り部15aを形成し、部品収納空間(透孔)15を上方に向かって除々に拡大する形状とさせている。尚、内周面15bは、ドリル加工などにより所定の内径を有する透孔15を形成し、それと共に円錐状の壁部分の上端部において円筒部11dを形成する。従って、円筒部11dの内周面15bが部品収納空間(透孔)15を画定しており、その円筒部11dの外周面は部品取り付け部材12の円錐状の内周面12dと当接している。従って、部品収納空間(透孔)15を画定している円筒部11dは部品取り付け部材12の本体部12dにより裏打ちされた構成となっている。
【0031】
図9は、図8に示した状態にセンサー等の部品14を取り付けた状態を示している。即ち、部品14は部品保持部14aを有しており、部品保持部14aに形成されている孔を介してボルト16を挿通してナット13に締め付けることにより部品14は所定位置に固定される。この場合に、部品14の一部、例えば検知部14cが部品収納空間(透孔)15を貫通して中空成形体11の内部空間内に位置される。図示例においては、部品14の検知部14cは大略円筒形状をしておりその外周に沿って円周状の溝14bが刻設されており、その円周溝14b内にOリング17が部分的に収容されている。従って、Oリング17は、部品14の検知部14cと円筒部11dの内周面15bとの間に介在されており、従って透孔15を封止状態としている。従って、この場合にも、中空成形体11と部品取り付け部材12との間の界面における熱溶着状態は透孔15における気密状態には関係しない構成となっており、中空成形体11と部品取り付け部材12とを夫々形成する第1及び第2樹脂の選択は透孔15における封止状態とは無関係である。更に、透孔8における封止状態は、封止手段としてのOリング17が第1樹脂からなる円筒部11dと接触することにより確立されるのであり、第1樹脂としてはブロー成形に適した樹脂が選択される場合には、比較的柔軟性のある樹脂であるので、透孔15の封止状態は極めて確実に維持することが可能である。特に、中空成形体11が自動車用エンジンの吸気系などに使用される場合には、それは常時振動に露呈されるものであるが、そのような場合においても、透孔15の封止状態が劣化されることを抑制することが可能である。
【実施例4】
【0032】
図10乃至12は本発明の更に別の実施例に基づく封止構造を製造するプロセスを示しており、それは、特に、図7に示した実施例を更に改良した場合である。尚、図10乃至12に図示した実施例において、図7乃至9に示した実施例と同一の要素には同一の参照番号を付してあるので、その詳細な説明の繰り返しは省略する。
【0033】
この場合には、図10に示した如く、部品取り付け部材12をインサートとして金型(不図示)内に設置してブロー成形する場合に、金型(不図示)に設けた所定の形状寸法を有する入れ駒(不図示)によって所定の内周面15bを面取り部15aとを有する部品受納空間(透孔)15’を形成している。従って、部品受納空間(透孔)15’に対してはその内周面15bを画定するための切削加工は必要ではなく、更に面取り部15aを加工処理することも必要ではない。
【0034】
次いで、図11に示した如く、部品収納空間15’を画定している底壁11eにドリル加工により開口15dを形成する。次いで、図12に示した如く、センサー等の部品14をその部品保持部14aに形成されている孔を挿通してボルト16をナット13に締め付けて部品14を固定させる。この場合に、部品14の検知部14cを透孔15内に挿入させて、検知部14cと円筒部12dとの間にOリング17を配設させて透孔15を封止状態とさせる。
【0035】
以上、本発明の具体的実施の態様について詳細に説明したが、本発明はこれらの具体例にのみ制限されるべきものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱すること無しに種々の変形が可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、ブロー成形によるプラスチック中空成形体にセンサー等の部品を取り付ける場合に中空成形体に形成した透孔を封止する場合に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の1実施例に基づいて構成された封止構造を示した概略断面図。
【図2】図1に示した封止構造を製造する場合に使用可能な部品取り付け部材2を示した概略断面図。
【図3】図1に示した封止構造を製造する1過程を示した概略断面図。
【図4】図1に示した封止構造を製造する次の1過程を示した概略断面図。
【図5】図1に示した封止構造を製造する更に次の1過程を示した概略断面図。
【図6】本発明の別の実施例に基づいて構成された封止構造を示した概略断面図。
【図7】図6に示した封止構造を製造する1過程を示した概略断面図。
【図8】図6に示した封止構造を製造する次の1過程を示した概略断面図。
【図9】図6に示した封止構造を製造する更に次の1過程を示した概略断面図。
【図10】本発明の更に別の実施例に基づいて封止構造を製造する1過程を示した概略断面図。
【図11】本発明の更に別の実施例に基づいて封止構造を製造する次の1過程を示した概略断面図。
【図12】本発明の更に別の実施例に基づいて封止構造を製造する更に1過程を示した概略断面図。
【符号の説明】
【0038】
1:プラスチック中空成形体
2:部品取り付け部材
3:ナット
4:センサー(部品)
6:ボルト
7:Oリング
8:部品収納空間(透孔)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック中空成形体の壁に形成した透孔の封止構造において、
外側に延在して内部と外部とを連通する透孔を画定している第1壁部分を有しており且つ第1係止手段を具備している中空成形体、
前記第1壁部分の外周面に当接する当接部分を有しており、前記第1係止手段と係止して前記中空成形体と機械的に係止された状態とさせる第2係止手段を具備している部品取り付け部材、
前記透孔を貫通して位置される部品を前記部品取り付け部材へ固着させる固着手段、
前記第1壁部分の内周面と前記部品との間に介装される封止手段、
を有していることを特徴とする封止構造。
【請求項2】
請求項1において、前記中空成形体が第1樹脂からブロー成形されたものであることを特徴とする封止構造。
【請求項3】
請求項2において、前記中空成形体が自動車用エンジンの吸気ダクトの少なくも一部を構成することが可能であることを特徴とする封止構造。
【請求項4】
請求項2又は3において、前記中空体は中空空間を画定する周壁を有しており、前記第1壁部分は前記周壁から外側へ突起状に延在して前記内周面と前記外周面とを画定しており、前記内周面により前記透孔を画定していることを特徴とする封止構造。
【請求項5】
請求項4において、前記第1係止手段が前記周壁内に形成されている楔状のアンダーカット構造であり、且つ前記第2係止手段が前記楔状のアンダーカット構造内に納まる前記部品取り付け部材の逆楔状の周辺端部であることを特徴とする封止構造。
【請求項6】
請求項5において、前記部品取り付け部材は、前記中空成形体をブロー成形により成形する場合にインサートとして前記中空成形体にインサート成形されたものであり、インサート成形時に前記第1係止手段と第2係止手段とが係止状態に形成されたものであることを特徴とする封止構造。
【請求項7】
請求項1乃至6の内のいずれか1項において、前記部品取り付け部材は第2樹脂から射出成形により形成されており、前記第2樹脂は前記第1樹脂よりも高い剛性を有していることを特徴とする封止構造。
【請求項8】
請求項7において、前記第2樹脂はガラス繊維等の剛性を増加させる物質を包含していることを特徴とする封止構造。
【請求項9】
請求項1乃至8の内のいずれか1項において、前記固着手段が、前記部品取り付け部材内に埋設されている少なくとも1個のボルトと、前記部品に形成されているボルト挿通孔を介して挿通され前記ボルトに締着可能なナットとを有していることを特徴とする封止構造。
【請求項10】
請求項1乃至9の内のいずれか1項において、前記封止手段が弾性部材から構成されていることを特徴とする封止構造。
【請求項11】
請求項10において、前記弾性部材がOリングであることを特徴とする封止構造。
【請求項12】
請求項1乃至10の内のいずれか1項において、前記部品が前記中空成形体の内部空間内の環境を検知するセンサを包含していることを特徴とする封止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−173943(P2008−173943A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11961(P2007−11961)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000102393)エクセル株式会社 (3)
【Fターム(参考)】