説明

プラスチック容器入り凍結物およびその製造方法。

【課題】プラスチック容器に充填・密封された液体を一度に全て瞬時に凍結させることにより、部分的に異常に膨出するのを防いだプラスチック容器入り凍結物の提供。
【解決手段】プラスチック容器内に充填・密封された液体を、密封したプラスチック容器ごと、冷却し凍結させることなく過冷却させた後、前記過冷却された液体に、電磁場,超音波,振動,衝撃の何れかまたは複数の組み合わせによるエネルギーを与えることにより、前記液体全体を瞬時に凍結させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック容器入り凍結物に関し、特に液体を充填したプラスチック容器を異常変形させることなく凍結させた凍結物、飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、容器に内容物を充填・密封した状態で凍結させたとき、容器形状ができるだけ全体的に同じように変形するよう、あるいは異常変形を防ぐ手法が容器の側から提案されている。(特許文献1,2)
【特許文献1】特開2007−320612号公報
【特許文献2】特願2006−181592
【特許文献3】特開平4−365468号公報
【特許文献4】特開2000−325062号公報
【特許文献5】特開平10−9739号公報
【特許文献6】特開平11−304315号公報
【特許文献7】特開2001−86967号公報
【特許文献8】WO01/24647国際公報
【特許文献9】特開2004−81134号公報
【特許文献10】特開2005−318869号公報
【特許文献11】特開2001−46029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の提案を用いても、内容物が一部から凍結が始まり徐々に全体が凍結するように不均一に凍結するので、最終的に凍結した箇所の容器壁が異常に膨出するのを防ぐのは困難であった。
【0004】
本発明は従来の問題を解決するためになされたもので、プラスチック容器に充填・密封された液体を特許文献3〜9などを参酌して液体の過冷却状態をつくり、特許文献10,11などを参酌して液体を凍結させるが、徐々にではなく、液体を一度に全て瞬時に凍結させ、あるいは、一旦、液体と固体がほぼ均一に混在したシャーベット状物にした後、シャーベット状物全体を凍結させることにより、容器の異常変形を防止するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のプラスチック容器入り凍結物は、プラスチック容器内に充填・密封された液体を、密封したプラスチック容器ごと、冷却し過冷却させた後、前記過冷却された液体に、電磁場,超音波,振動,衝撃の何れかまたは複数の組み合わせによるエネルギーを与えることにより、前記液体全体を瞬時に凍結させたことを特徴とする。また、本発明のプラスチック容器入り凍結物は、プラスチック容器内に充填・密封された液体を、密封したプラスチック容器ごと、冷却し過冷却させた後、前記過冷却された液体に、電磁場,超音波,振動,衝撃の何れかまたは複数の組み合わせによるエネルギーを与えることにより、一旦、前記液体全体を液体と固体がほぼ均一に混在したシャーベット状物にさせた後、さらに冷却させて前記シャーベット状物全体を凍結させたことを特徴とする。 また、本発明のプラスチック容器入り凍結物の製造方法は、プラスチック容器内に液体を充填・密封する工程と、前記液体を、密封したプラスチック容器ごと冷却し過冷却させる工程と、過冷却されたプラスチック容器入り液体に、電磁場,超音波,振動,衝撃の何れかまたは複数の組み合わせによるエネルギーを与えて前記液体全体を瞬時に凍結させる工程を含む製造方法である。 また、本発明のプラスチック容器入り凍結物の製造方法は、プラスチック容器内に液体を充填・密封する工程と、前記液体を、密封したプラスチック容器ごと冷却し過冷却させる工程と、過冷却されたプラスチック容器入り液体に、電磁場,超音波,振動,衝撃の何れかまたは複数の組み合わせによるエネルギーを与えて前記液体全体を液体と固体がほぼ均一に混在したシャーベット状物にさせる工程と、前記シャーベット状物を冷却して全体を凍結させる工程を含む製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
プラスチック容器内に充填・密封された液体を凍結させずに過冷却状態にしておき、そこへエネルギーを与えて液体を一度に全て瞬時に凍結・膨張、あるいは、一旦液体全体を液体と固体がほぼ均一に混在したシャーベット状物にしてからのさらなる冷却によりシャーベット状物全体を凍結・膨張させるので、プラスチック容器内で液体は部分的に膨張することなく全体的に膨れるので、部分的に異常な膨張変形を起こしていないプラスチック容器入り凍結物となり、また、その製造が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態のプラスチック容器入り凍結物およびその製造方法について、図面を用いて説明する。
【0008】
図1は、本発明に用いるプラスチック容器の1例であるプラスチック製の角型容器1である。胴部水平断面が略正方形の角型容器を示しているが、これに限らず、公知の丸型,多角形型,扁平型を用いてもよい。プラスチックとしては、公知のポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂が好適で、より好ましくは、PET樹脂が挙げられる。
【0009】
液体は凍結可能であれば特に問わないが、例えば、水、アルコール、ジュース、炭酸飲料、酒類、ニアウォーター、機能性飲料、スープなどの液状食品が挙げられる。
【0010】
次に図2に示すように、液体充填・密封工程にて、このプラスチック容器に液体を充填後、例えば、図示しない公知のネジ式キャップで密封する。キャップはポリエチレン樹脂製が好ましいが、その他の樹脂でもよいし、アルミ製でもよい。また、キャップの代わりに公知の打栓蓋、マキシキャップを使い、それらを取り付けるための形状をしたプラスチック容器に密封してもよい。
【0011】
液体の充填方法は特に問わないが、液体が飲料である場合は、公知のホットパック(85℃以上に加温された飲料を充填し密封する。本発明では、その後の冷水による常温までの冷却有無は問わない。)、アセプティック充填(常温無菌充填)、カーボネーターを使用した充填(飲料に炭酸ガスを封入)、窒素過溶解充填(飲料に窒素ガスを封入)、ヘッドスペースの窒素置換充填、またはこれらの組合せを用いるとよい。
【0012】
次に液体を充填・密封されたプラスチック容器を、過冷却工程にて、その液体の凍結温度以下に凍結させずに過冷却する。過冷却の方法としては、特許文献3〜5,9に記載されたように、なるべく振動を与えずに液温を凍結温度以下に凍結させずに低下させる。その際、ゆっくり温度を低下させるのが好ましい。また、他にも、特許文献6〜8に記載の静磁場または変動磁場または交番電界の環境下で凍結させると凍結温度よりもかなり低い温度まで冷却できるので好ましいし、特許文献3〜5,9の凍結方法を併用してもよい。
【0013】
次に、瞬間凍結工程にて、プラスチック容器に充填・密封され、過冷却された液体にエネルギーを与え、一度に全て瞬時に凍結させるか、あるいは、一旦、液体と固体がほぼ均一に混在したシャーベット状物にする。液体を瞬時に全て凍結させるか、シャーベット状物にするかは、液体の冷却温度、エネルギーの与え方により変化する。液体を瞬時に全て凍結させるには、凍結温度よりずっと低い温度(例えば水の場合、−15℃以下であって、静磁場または変動磁場または交番電界の環境の中で冷却して得るのが好ましい。)まで過冷却後、大きなエネルギーで衝撃を瞬時に与える(例えば打撃を容器1の底部へ瞬時に与える)と好ましい。また、一旦、シャーベット状物にするには凍結温度以下でそれに近い温度(例えば水の場合、0〜−15℃で、より好ましくは−5℃であって振動を与えない静置状態、または、静磁場または変動磁場または交番電界の環境の中で冷却して得るのが好ましい。)まで冷却し、電磁場(特許文献10),超音波(特許文献10),振動(特許文献11)によりエネルギーを加えるのが好ましく、小さいエネルギーを加えると一気に凍結しないのでより好ましい。なお、シャーベット状物にした場合は、さらに冷却することによりシャーベット状物を凍結させる。このようにすることで、液体は瞬時に全体的に凍結・膨張、あるいは、一旦、全体にほぼ均一に混在したシャーベット状物になってから凍結するので、プラスチック容器内で液体は部分的に凍結・膨張することなく全体的に凍結して膨れるので、容器が部分的に異常な膨張変形を起こさない。
【0014】
以上の方法により製造されたプラスチック容器入り凍結物をそのまま使用・販売してもよいし、この凍結物をそのまま冷凍搬送して販売店に冷凍陳列させてもよい。部分的に異常な膨張変形を起こしていないプラスチック容器入り凍結物は、胴部の一方向の異常膨れによる偏心や、接地部の異常変形による接地不良などにより傾くことなく、正立性に優れるため陳列性に優れたものになる。また、局部的な凍結膨張が起こらないため、局部的にプラスチック容器が膨張して破損するおそれもない。
【産業上の利用可能性】
【0015】
以上のように、本発明に係るプラスチック容器入り凍結物およびその製造方法は、凍結後の容器を異常変形させることがないため、積載,搬送,陳列性の優れたものになり、特に飲食品を凍結させて積載,搬送,店頭陳列,使用する際に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に用いられるプラスチック容器を示す図である。
【図2】本発明のプラスチック容器入り凍結物の製造工程を示す図である。
【符号の説明】
【0017】
1 プラスチック製の角型容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック容器内に充填・密封された液体を、密封したプラスチック容器ごと、冷却し過冷却させた後、前記過冷却された液体に、電磁場,超音波,振動,衝撃の何れかまたは複数の組み合わせによるエネルギーを与えることにより、前記液体全体を瞬時に凍結させたことを特徴とする、プラスチック容器入り凍結物。
【請求項2】
プラスチック容器内に充填・密封された液体を、密封したプラスチック容器ごと、冷却し過冷却させた後、前記過冷却された液体に、電磁場,超音波,振動,衝撃の何れかまたは複数の組み合わせによるエネルギーを与えることにより、一旦、前記液体全体を液体と固体がほぼ均一に混在したシャーベット状物にさせた後、さらに冷却させて前記シャーベット状物全体を凍結させたことを特徴とする、プラスチック容器入り凍結物。
【請求項3】
前記冷却が、静磁場または変動磁場または交番電界の環境の中における冷却であることを特徴とする、請求項1または2に記載のプラスチック容器入り凍結物。
【請求項4】
前記液体が飲料であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のプラスチック容器入り凍結物。
【請求項5】
プラスチック容器内に液体を充填・密封する工程と、前記液体を、密封したプラスチック容器ごと冷却し過冷却させる工程と、過冷却されたプラスチック容器入り液体に、電磁場,超音波,振動,衝撃の何れかまたは複数の組み合わせによるエネルギーを与えて前記液体全体を瞬時に凍結させる工程を含む、プラスチック容器入り凍結物の製造方法。
【請求項6】
プラスチック容器内に液体を充填・密封する工程と、前記液体を、密封したプラスチック容器ごと冷却し過冷却させる工程と、過冷却されたプラスチック容器入り液体に、電磁場,超音波,振動,衝撃の何れかまたは複数の組み合わせによるエネルギーを与えて前記液体全体を液体と固体がほぼ均一に混在したシャーベット状物にさせる工程と、前記シャーベット状物を冷却して全体を凍結させる工程を含む、プラスチック容器入り凍結物の製造方法。
【請求項7】
前記冷却が、静磁場または変動磁場または交番電界の環境の中における冷却であることを特徴とする、請求項5または6に記載のプラスチック容器入り凍結物の製造方法。
【請求項8】
前記液体が飲料であることを特徴とする、請求項5〜7のいずれかに記載のプラスチック容器入り凍結物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−165392(P2009−165392A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6048(P2008−6048)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】