説明

プラスチック製光学素子及び光ピックアップ装置

【課題】 光安定性を向上させ、かつその特性を長時間に亘って維持することができる光学素子と、それを用いた良好なピックアップ特性を有する光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】 少なくとも特定式で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、特定式で表わされる鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体と、特定のヒンダードミン系化合物とを含む樹脂組成物を成型してなるプラスチック製光学素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック製光学素子及びこのプラスチック製光学素子を適用した光ピックアップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、MO、CD、DVDといった光情報記録媒体(以下、単に媒体ともいう)に対して、情報の読み取りや記録を行なうプレーヤー、レコーダー、ドライブといった記録機器には、光ピックアップ装置が備えられている。光ピックアップ装置は、光源から発した所定波長の光を媒体に照射し、反射した光を受光素子で受光する光学素子ユニットを備えており、光素子ユニットはこれらの光を媒体の反射層や受光素子で集光させるためのレンズ等の光学素子を有している。
【0003】
光ピックアップ装置の光学素子は、射出成形等の手段により安価に作製できる等の点で、プラスチックを材料として適用することが好ましい。光学素子の適用可能なプラスチックとしては、環状オレフィンとα−オレフィンの共重合体(例えば、特許文献1参照。)等が知られている。
【0004】
ところで、例えば、CD/DVDプレーヤーのような複数種の媒体に対して情報の読み書きが可能な情報機器の場合、光ピックアップ装置は、両者の媒体の形状や適用する光の波長の違いに対応した構成とする必要がある。この場合、光学素子ユニットはいずれの媒体に対しても共通することがコストやピックアップ特性の観点から好ましい。
【0005】
また、近年、CDやDVDよりも高い密度で情報を記録できる媒体として、CD(λ=780nm)やDVD(λ=635、650nm)で用いるよりも短い波長で情報の記録、再生を行なうBlu−ray Disk等の媒体やこれらの媒体で情報の読み書きを行なう情報機器の開発が新たに行なわれている。
【特許文献1】特開2002−105131号公報 (第4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、Blu−ray Disk等のいわゆる次世代DVDでは、情報の記録、再生には波長400nm付近の光を用いるため、特許文献1に記載のプラスチックを適用した光学素子を用いた場合では、光学素子がこのような短波長の光照射を受け、当該光学素子の白濁、屈折率の変動や光学面の変形などの光学特性の劣化が生じて、光学素子の交換が必要になる場合があった。
【0007】
そこで、本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、光安定性を向上させ、かつその特性を長時間に亘って維持することができる光学素子と、それを用いた良好なピックアップ特性を有する光ピックアップ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0009】
(1)少なくとも下記一般式(I)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、下記一般式(II)、下記一般式(III)及び下記一般式(IV)から選ばれる少なくとも1種の鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体と、下記一般式(V)で表されるヒンダードアミン系化合物とを含む樹脂組成物を成型してなることを特徴とするプラスチック製光学素子。
【0010】
【化1】

【0011】
〔一般式(I)中、Xは脂環式炭化水素基であり、一般式(I)〜一般式(IV)中、R1〜R13は、それぞれ独立に水素原子、鎖状炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、または極性基(ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、又はシリル基)で置換された鎖状炭化水素基である。n1〜n4はそれぞれ質量%を表す。〕
【0012】
【化2】

【0013】
〔式中、Aは下記一般式(VI)を表す。〕
【0014】
【化3】

【0015】
〔式中、R14は水素原子またはメチル基を表す。〕
(2)少なくとも炭素原子数2〜20のα−オレフィンと下記一般式(1)で表される脂環式炭化水素とを共重合して得られる脂環式炭化水素系重合体と、下記一般式(V)で表されるヒンダードアミン系化合物とを含む樹脂組成物を成型してなることを特徴とするプラスチック製光学素子。
【0016】
【化4】

【0017】
〔式中、nは0または1であり、mは0または1以上の整数であり、qは0または1であり、R1〜R18、Ra及びRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基であり、R15〜R18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、括弧内の単環または多環が二重結合を有していてもよく、またR15とR16と、またはR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。〕
【0018】
【化5】

【0019】
〔式中、Aは下記一般式(VI)を表す。〕
【0020】
【化6】

【0021】
〔式中、R14は水素原子またはメチル基を表す。〕
(3)前記樹脂組成物が、前記一般式(V)で表されるヒンダードアミン系化合物とは異なるヒンダードアミン系安定剤、フェノール系安定剤、リン系安定剤及びイオウ系安定剤から選ばれる少なくとも1種の安定剤を含有することを特徴とする前記(1)または(2)項に記載のプラスチック製光学素子。
【0022】
(4)前記樹脂組成物の温度260℃、荷重2.16kgの条件で測定されるメルトインデックス(MI)値が、20<MI(g/10分)<60の範囲にあり、かつ少なくとも1つの光学面に所定の微細構造が設けられていることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子。
【0023】
(5)集光機能を有する集光装置に用いられていることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子。
【0024】
(6)前記樹脂組成物を用いて成型された厚さ3mmの成型体は、波長400nmにおける光線透過率が85%以上であることを特徴とする前記(5)項に記載のプラスチック製光学素子。
【0025】
(7)光情報記録媒体に対し、情報の再生または記録を行う光ピックアップ装置であって、光を出射する光源と、該光源から出射された光の該光情報記録媒体への照射または該光情報記録媒体で反射される光の集光を行なう光学素子ユニットとを備え、該光学素子ユニットは、前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子を備えることを特徴とする光ピックアップ装置。
【0026】
(8)前記光源は、波長390nm以上、420nm以下の光を出射することを特徴とする前記(7)項に記載の光ピックアップ装置。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に係る発明によれば、本発明のプラスチック製光学素子(以下、単に光学素子ともいう)は、少なくとも前記一般式(I)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、前記一般式(II)、前記一般式(III)及び前記一般式(IV)から選ばれる少なくとも1種の鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体と、前記一般式(V)で表されるヒンダードアミン系化合物とを含む樹脂組成物を成型してなることを特徴とする。また、請求項2に係る発明によれば、本発明の光学素子は、少なくとも炭素原子数2〜20のα−オレフィンと前記一般式(1)で表される脂環式炭化水素とを共重合して得られる脂環式炭化水素系重合体と、前記一般式(V)で表されるヒンダードアミン系化合物とを含む樹脂組成物を成型してなることを特徴とする。ヒンダードアミン系安定剤は、耐光安定剤として一般に樹脂に添加されるものであるが、本発明における特定構造を有する脂環式炭化水素系樹脂に対し、前記一般式(V)で表される特定構造のヒンダードアミン系化合物を添加した樹脂組成物を用いて製造された光学素子は、光照射に対する安定化効果が極めて高く、例えば、400nm付近の短波長の光照射を長期間にわたり継続的に受けても、白濁や屈折率の変動が抑えられ、また、光学面の変形を抑制できることを見出した。すなわち、光学素子の光安定性を向上させることができ、当該特性を長時間に亘って維持することが可能な光学素子を製造することができることが判明した。
【0028】
請求項3に係る発明によれば、請求項1または2に記載の前記一般式(V)で表されるヒンダードアミン系化合物以外のヒンダードアミン系安定剤、フェノール系安定剤、リン系安定剤及びイオウ系安定剤から選ばれる安定剤を適宜選択して樹脂組成物に添加することにより、成形される光学素子の光学特性の変動を、より効果的に抑制することができる。
【0029】
請求項4に係る発明によれば、請求項1〜3に記載の発明と同様の効果が得られるのは無論のこと、特に、本発明に係る樹脂組成物の温度260℃、荷重2.16kgの条件で測定されるメルトインデックス(MI)値が、20<MI(g/10分)<60の範囲にあり、少なくとも1つの光学面に所定の微細構造が設けられている。すなわち、メルトインデックスが射出成形等の成形法に適した範囲にあることから、溶融した樹脂組成物が適度な流動性を有する結果、例えば、射出成形等により光学素子を成形する場合、溶融した樹脂組成物が微細構造に対応する部分の先端まで到達することができ、こうして成形された光学素子は、高い精度で形成された微細構造が具備されることとなる。更に、光学素子は、高い形状安定性を有していることから、微細構造に変形を生じるといったことを適正に抑制することができる。
【0030】
請求項5に係る発明によれば、請求項1〜4に記載の発明と同様の効果が得られるのは無論のこと、特に、集光機能を有する集光装置に光学素子を用いても、当該光学素子は高い形状安定性を有しているので、光学素子の光学特性を低下させるといったことがなくなる。すなわち、光学素子に対して集光により高いエネルギーが付与されても、本発明の光学素子の有する高い形状安定性によって、光学素子の変形を長時間に亘って抑制することが可能となり、光学素子の光学特性の低下を防止することができる。
【0031】
請求項6に係る発明によれば、この樹脂組成物を用いて成形された厚さ3mmの成形体は、高い形状安定性を有し、高エネルギーの波長400nm付近の光を透過させても、本発明に係る成形体に白濁、屈折率の変動や変形等が生じるのを抑えることができ、これにより、波長400nm付近における光線透過率は85%以上とすることができる。
【0032】
従って、例えばBlu−ray Discのような高い情報密度を有する光情報記録媒体に対する光学素子として好適に用いることができる。
【0033】
請求項7に係る発明によれば、請求項1〜6に記載の光学素子は、光照射に対する安定化効果が高く、例えば、400nm付近の短波長の光の照射を継続的に受けても、白濁や屈折率の変動が抑えられ、また、光学面の変形を抑制することができる。すなわち、光学素子の光安定性を向上させることができ、当該特性を長時間に亘って維持することができる。従って、例えば、Blu−ray Discのような高い情報密度を有する光情報記録媒体に対して、長期間に亘って良好なピックアップ特性で情報の読み書きを行うことができ、光ピックアップ装置として信頼性の高いものを得ることができる。
【0034】
請求項8に係る発明によれば、光源から出射される光の波長は390nm〜420nmである。すなわち、例えば、Blu−ray Discのような高い情報密度を有する光情報記録媒体に対応した390〜420nmという範囲の光を透過する場合でも、本発明の光学素子に適用される請求項1または2に記載の樹脂組成物は、白濁や屈折率の変動といった光学素子の劣化を防止することができる。これにより、光学素子の寿命を延ばして、光ピックアップ装置として信頼性の高いものを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0036】
本発明の光学素子に適用される樹脂組成物は、1)少なくとも一般式(I)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、一般式(II)、一般式(III)及び一般式(IV)から選ばれる少なくとも1種の鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体、あるいは2)少なくとも炭素原子数2〜20のα−オレフィンと一般式(1)で表される脂環式炭化水素とを共重合して得られる脂環式炭化水素系重合体と、3)一般式(V)で表されるヒンダードアミン系化合物とを含有しており、厚さ3mmの成形体で測定したASTM D1003準拠による400nmにおける光線透過率が85%以上の重合体であるとともに、温度260℃、荷重2.16kgにおけるASTM D1238準拠によるメルトインデックスが20〜60g/10minである。
【0037】
〔脂環式炭化水素系共重合体〕
本発明の光学素子に適用される脂環式炭化水素系共重合体として、下記一般式(I)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、下記一般式(II)、下記一般式(III)及び下記一般式(IV)から選ばれる少なくとも1種の鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満であることを特徴とする。
【0038】
【化7】

【0039】
一般式(I)〜一般式(IV)において、R1〜R13は、それぞれ独立に水素原子、鎖状炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基または極性基(ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、又はシリル基)で置換された鎖状炭化水素基を表す。具体的に、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子を挙げることができ、極性基で置換された鎖状炭化水素基としては、例えば、炭素原子1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6のハロゲン化アルキル基が挙げられる。鎖状炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6のアルキル基:炭素原子数2〜20、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜6のアルケニル基が挙げられる。
【0040】
上記一般式(I)において、Xは脂環式炭化水素基を表し、Xを構成する炭素原子数は、通常4〜20、好ましくは4〜10、より好ましくは5〜7である。脂環式構造を構成する炭素原子数をこの範囲にすることで複屈折を低減することができる。また、脂環式構造は単環構造に限らず、例えば、ノルボルナン環などの多環構造のものでも良い。
【0041】
脂環式炭化水素基は、炭素−炭素不飽和結合を有してもよいが、その含有量は、全炭素−炭素結合の10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下である。脂環式炭化水素基の炭素−炭素不飽和結合をこの範囲とすることで、透明性及び耐熱性を向上させることができる。また、脂環式炭化水素基を構成する炭素原子には、水素原子、炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、及び極性基(ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、又はシリル基)で置換された鎖状炭化水素基等が結合していてもよく、中でも水素原子又は炭素原子数1〜6の鎖状炭化水素基が、耐熱性、低吸水性の観点から好ましい。
【0042】
また、上記一般式(III)では、主鎖中に炭素−炭素不飽和結合を有しており、上記一般式(IV)では、主鎖中に炭素−炭素飽和結合を有しているが、透明性、耐熱性を強く要求される場合、不飽和結合の含有率は、主鎖を構成する全炭素−炭素間結合の、10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下である。
【0043】
本発明においては、脂環式炭化水素系共重合体中の一般式(I)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、一般式(II)、一般式(III)及び一般式(IV)から選ばれる少なくとも1種の鎖状構造の繰り返し単位(b)との合計含有量は、質量基準で、90%以上であることを特徴とするが、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上である。合計含有量を上記範囲とすることで、低複屈折性、耐熱性、低吸水性、機械強度が高度にバランスされる。
【0044】
請求項1に記載の脂環式炭化水素系共重合体を製造する製造方法としては、(1)芳香族ビニル系化合物と共重合可能なその他のモノマーとを共重合し、主鎖及び芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化する方法、(2)脂環式ビニル系化合物と共重合可能なその他のモノマーとを共重合し、必要に応じて水素化する方法等が挙げられる。
【0045】
水素化前の共重合体の分子量は、GPCにより測定されるポリスチレン(またはポリイソプレン)換算重量平均分子量(Mw)で、1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜300,000の範囲である。共重合体の重量平均分子量(Mw)が過度に小さいと、それから得られる脂環式炭化水素系共重合体の成形物の強度特性に劣り、逆に過度に大きいと水素化反応性に劣る。
【0046】
上記(1)の方法において使用する芳香族ビニル系化合物の具体例としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−プロピルスチレン、α−イソプロピルスチレン、α−t−ブチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノフルオロスチレン、4−フェニルスチレン等が挙げられ、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン等が好ましい。
【0047】
上記(2)の方法において使用する脂環式ビニル系化合物の具体例としては、例えば、シクロブチルエチレン、シクロペンチルエチレン、シクロヘキシルエチレン、シクロヘプチルエチレン、シクロオクチルエチレン、ノルボルニルエチレン、ジシクロヘキシルエチレン、α−メチルシクロヘキシルエチレン、α−t−ブチルシクロヘキシルエチレン、シクロペンテニルエチレン、シクロヘキセニルエチレン、シクロヘプテニルエチレン、シクロオクテニルエチレン、シクロデケニルエチレン、ノルボルネニルエチレン、α−メチルシクロヘキセニルエチレン、及びα−t−ブチルシクロヘキセニルエチレン等が挙げられ、これらの中でも、シクロヘキシルエチレン、α−メチルシクロヘキシルエチレンが好ましい。
【0048】
これらの芳香族ビニル系化合物及び脂環式ビニル系化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
共重合可能なその他のモノマーとしては、格別な限定はないが、鎖状ビニル化合物及び鎖状共役ジエン化合物等が用いられ、鎖状共役ジエンを用いた場合、製造過程における操作性に優れ、また得られる脂環式炭化水素系共重合体の強度特性に優れる。
【0050】
鎖状ビニル化合物の具体例としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等の鎖状オレフィンモノマー;1−シアノエチレン(アクリロニトリル)、1−シアノ−1−メチルエチレン(メタアクリロニトリル)、1−シアノ−1−クロロエチレン(α−クロロアクリロニトリル)等のニトリル系モノマー;1−(メトキシカルボニル)−1−メチルエチレン(メタアクリル酸メチルエステル)、1−(エトキシカルボニル)−1−メチルエチレン(メタアクリル酸エチルエステル)、1−(プロポキシカルボニル)−1−メチルエチレン(メタアクリル酸プロピルエステル)、1−(ブトキシカルボニル)−1−メチルエチレン(メタアクリル酸ブチルエステル)、1−メトキシカルボニルエチレン(アクリル酸メチルエステル)、1−エトキシカルボニルエチレン(アクリル酸エチルエステル)、1−プロポキシカルボニルエチレン(アクリル酸プロピルエステル)、1−ブトキシカルボニルエチレン(アクリル酸ブチルエステル)などの(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、1−カルボキシエチレン(アクリル酸)、1−カルボキシ−1−メチルエチレン(メタクリル酸)、無水マレイン酸などの不飽和脂肪酸系モノマー等が挙げられ、中でも、鎖状オレフィンモノマーが好ましく、エチレン、プロピレン、1−ブテンが最も好ましい。
【0051】
鎖状共役ジエンは、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、及び1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これら鎖状ビニル化合物及び鎖状共役ジエンの中でも鎖状共役ジエンが好ましく、ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。これらの鎖状ビニル化合物及び鎖状共役ジエンは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
これらの鎖状ビニル系化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
重合反応は、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等、特別な制約はないが、重合操作、後工程での水素化反応の容易さ、及び最終的に得られる炭化水素系共重合体の機械的強度を考えると、アニオン重合法が好ましい。
【0054】
ラジカル重合の場合は、開始剤の存在下、通常0℃〜200℃、好ましくは20℃〜150℃で、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の方法を用いることができるが、特に樹脂中への不純物等の混入等を防止する必要のある場合は、塊状重合、懸濁重合が望ましい。ラジカル開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、t−ブチル−パーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物、アゾイソブチロニトリル、4,4−アゾビス−4−シアノペンタン酸、アゾジベンゾイル等のアゾ化合物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムに代表される水溶性触媒やレドックス開始剤などが使用可能である。
【0055】
アニオン重合の場合には、開始剤の存在下、通常0℃〜200℃、好ましくは20℃〜100℃、特に好ましくは20℃〜80℃の温度範囲において、塊状重合、溶液重合、スラリー重合等の方法を用いることができるが、反応熱の除去を考慮すると、溶液重合が好ましい。この場合、重合体及びその水素化物を溶解できる不活性溶媒を用いる。溶液反応で用いる不活性溶媒は、例えば、n−ブタン、n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、iso−オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等が挙げられ、中でも脂肪族炭化水素類や脂環式炭化水素類を用いると、水素化反応にも不活性な溶媒としてそのまま使用することができる。これらの溶媒は、それぞれ単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用でき、通常、全使用モノマー100質量部に対して200〜10,000質量部となるような割合で用いられる。
【0056】
上記アニオン重合の開始剤としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウムなどのモノ有機リチウム、ジリチオメタン、1,4−ジオブタン、1,4−ジリチオー2−エチルシクロヘキサン等の多官能性有機リチウム化合物などが使用可能である。
【0057】
重合反応においては、また、重合促進剤や、ランダマイザー(ある1成分の連鎖が長くなるのを防止する機能を有する添加剤)などを使用できる。アニオン重合の場合には、例えば、ルイス塩基化合物をランダマイザーとして使用できる。ルイス塩基化合物の具体例としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルフェニルエーテル等のエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等の第3級アミン化合物;カリウム−t−アミルオキシド、カリウム−t−ブチルオキシド等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物が挙げられる。これらのルイス塩基化合物は、それぞれ単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0058】
上記のラジカル重合やアニオン重合により得られた重合体は、例えば、スチームストリッピング法、直接脱溶媒法、アルコール凝固法等の公知の方法で回収できる。また、重合時に、水素化反応で不活性な溶媒を用いた場合には、重合溶液から重合体を回収せず、そのまま水素添加工程に使用することができる。
【0059】
水素化前の共重合体の芳香環やシクロアルケン環などの不飽和環の炭素−炭素二重結合や主鎖の不飽和結合等の水素化反応を行う場合は、反応方法、反応形態に特別な制限はなく、公知の方法にしたがって行えばよいが、水素化率を高くでき、且つ水素化反応と同時に起こる重合体鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましく、例えば、有機溶媒中、ニッケル、コバルト、鉄、チタン、ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、及びレニウムから選ばれる少なくとも1つの金属を含む触媒を用いて行う方法が挙げられる。水素化触媒は、不均一触媒、均一触媒のいずれも使用可能である。
【0060】
不均一系触媒は、金属または金属化合物のままで、又は適当な担体に担持して用いることができる。担体としては、例えば、活性炭、シリカ、アルミナ、炭化カルシウム、チタニア、マグネシア、ジルコニア、ケイソウ土、炭化珪素等が挙げられ、触媒の担持量は、通常0.01〜80質量%、好ましくは0.05〜60質量%の範囲である。均一系触媒は、ニッケル、コバルト、チタンまたは鉄化合物と有機金属化合物(例えば、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物)とを組み合わせた触媒、またはロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウム等の有機金属錯体触媒を用いることができる。ニッケル、コバルト、チタンまたは鉄化合物としては、例えば、各種金属のアセチルアセトン塩、ナフテン塩、シクロペンタジエニル化合物、シクロペンタジエニルジクロロ化合物等が用いられる。有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド等のハロゲン化アルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等の水素化アルキルアルミニウム等が好適に用いられる。
【0061】
有機金属錯体触媒の例としては、上記各金属のγ−ジクロロ−π−ベンゼン錯体、ジクロロ−トリス(トリフェニルホスフィン)錯体、ヒドリド−クロロ−(トリフェニルホスフィン)錯体等の金属錯体が使用される。これらの水素化触媒は、それぞれ単独で、或いは2種類以上組み合わせて使用することができ、その使用量は、重合体に対して、質量基準で、通常、0.01〜100部、好ましくは0.05〜50部、より好ましくは0.1〜30部である。
【0062】
水素化反応は、通常10℃〜250℃であるが、水素化率を高くでき、かつ水素化反応と同時に起こる重合体鎖切断反応を小さくできるという理由から、好ましくは50〜200℃、より好ましくは80〜180℃である。また水素圧力は、通常0.1MPa〜30MPaであるが、上記理由に加え、操作性の観点から、好ましくは1MPa〜20MPa、より好ましくは2MPa〜10MPaである。
【0063】
このようにして得られた水素化物の水素化率は、1H−NMRによる測定において、主鎖の炭素−炭素不飽和結合、芳香環の炭素−炭素二重結合、不飽和環の炭素−炭素二重結合のいずれも、通常90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上である。水素化率が低いと、得られる共重合体の低複屈折性、熱安定性等が低下する。
【0064】
水素化反応終了後に水素化物を回収する方法は、特に限定されていないが、通常、濾過、遠心分離等の方法により水素化触媒残渣を除去した後、水素化物の溶液から溶媒を直接乾燥により除去する方法、水素化物の溶液を水素化物にとっての貧溶媒中に注ぎ、水素化物を凝固させる方法を用いることができる。
【0065】
また、本発明の光学素子においては、炭素原子数2〜20のα−オレフィンと下記一般式(1)で表される脂環式炭化水素とを共重合して得られる脂環式炭化水素系重合体を適用することを一つの特徴とする。
【0066】
共重合させる際に用いられるα−オレフィンは、直鎖状でも分岐状でもよく、例えば、エチレン、プロピレン、ブタ−1−エン、ペンタ−1−エン、ヘキサ−1−エン、オクタ−1−エン、デカ−1−エン、ドデカ−1−エン、テトラデカ−1−エン、ヘキサデカ−1−エン、オクタデカ−1−エン、エイコサ−1−エンなどの炭素原子数が2〜20の直鎖状α−オレフィン;3−メチルブタ−1−エン、3−メチルペンタ−1−エン、3−エチルペンタ−1−エン、4−メチルペンタ−1−エン、4−メチルヘキサ−1−エン、4,4−ジメチルヘキサ−1−エン、4,4−ジメチルペンタ−1−エン、4−エチルヘキサ−1−エン、3−エチルヘキサ−1−エンなどの炭素原子数が4〜20の分岐状α−オレフィンなどが挙げられる。これらのなかでは、炭素原子数が2〜4の直鎖状α−オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。このような直鎖状又は分岐状のα−オレフィンは、1種単独で又は2種以上組合わせて用いることができる。
【0067】
共重合に用いられる環状オレフィンとしては、下記一般式(1)で表される。
【0068】
【化8】

【0069】
上記一般式(1)において、nは0または1であり、mは0または1以上の整数であり、qは0または1である。なお、qが1の場合には、Ra及びRbは、それぞれ独立に、下記に示す原子または炭化水素基であり、qが0の場合には、Ra、Rbの結合はなくなり、両側の炭素原子が結合して5員環を形成する。
【0070】
1〜R18、Ra及びRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基である。ここでハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。また、炭化水素基としては、それぞれ独立に、通常、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基、芳香族炭化水素基が挙げられる。より具体的には、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基及びオクタデシル基が挙げられ、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が挙げられ、芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基が例示される。これらの炭化水素基は、その水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0071】
15〜R18は互いに結合して(互いに共同して)単環または多環を形成していてもよく、しかも、このようにして形成された単環または多環は二重結合を有していてもよい。
【0072】
上記一般式(1)で表される環状オレフィンのより具体的な例を以下に示す。一例として、
【0073】
【化9】

【0074】
で示されるビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(別名ノルボルネン。上記式中において、1〜7の数字は炭素の位置番号を示す。)及びこの化合物に炭化水素基が置換した誘導体が挙げられる。
【0075】
この置換炭化水素基として、5−メチル、5,6−ジメチル、1−メチル、5−エチル、5−n−ブチル、5−イソブチル、7−メチル、5−フェニル、5−メチル−5−フェニル、5−ベンジル、5−トリル、5−(エチルフェニル)、5−(イソプロピルフェニル)、5−(ビフェニル)、5−(β−ナフチル)、5−(α−ナフチル)、5−(アントラセニル)、5,6−ジフェニルを例示することができる。
【0076】
更に他の誘導体として、シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセンなどのビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン誘導体を例示することができる。
【0077】
この他、トリシクロ[4.3.0.125]デカ−3−エン、2−メチルトリシクロ[4.3.0.125]デカ−3−エン、5−メチルトリシクロ[4.3.0.125]デカ−3−エンなどのトリシクロ[4.3.0.125]デカ−3−エン誘導体、トリシクロ[4.4.0.125]ウンデカ−3−エン、10−メチルトリシクロ[4.4.0.125]ウンデカ−3−エンなどのトリシクロ[4.4.0.125]ウンデカ−3−エン誘導体、
【0078】
【化10】

【0079】
で示されるテトラシクロ[4.4.0.125.1710]ドデカ−3−エン(上記式中、1〜12の数字は炭素の位置番号を示す。)及びこれに炭化水素基が置換した誘導体が挙げられる。
【0080】
その置換基の炭化水素基としては、8−メチル、8−エチル、8−プロピル、8−ブチル、8−イソブチル、8−ヘキシル、8−シクロヘキシル、8−ステアリル、5,10−ジメチル、2,10−ジメチル、8,9−ジメチル、8−エチル−9−メチル、11,12−ジメチル、2,7,9−トリメチル、2,7−ジメチル−9−エチル、9−イソブチル−2,7−ジメチル、9,11,12−トリメチル、9−エチル−11,12−ジメチル、9−イソブチル−11,12−ジメチル、5,8,9,10−テトラメチル、8−エチリデン、8−エチリデン−9−メチル、8−エチリデン−9−エチル、8−エチリデン−9−イソプロピル、8−エチリデン−9−ブチル、8−n−プロピリデン、8−n−プロピリデン−9−メチル、8−n−プロピリデン−9−エチル、8−n−プロピリデン−9−イソプロピル、8−n−プロピリデン−9−ブチル、8−イソプロピリデン、8−イソプロピリデン−9−メチル、8−イソプロピリデン−9−エチル、8−イソプロピリデン−9−イソプロピル、8−イソプロピリデン−9−ブチル、8−クロロ、8−ブロモ、8−フルオロ、8,9−ジクロロ、8−フェニル、8−メチル−8−フェニル、8−ベンジル、8−トリル、8−(エチルフェニル)、8−(イソプロピルフェニル)、8,9−ジフェニル、8−(ビフェニル)、8−(β−ナフチル)、8−(α−ナフチル)、8−(アントラセニル)、5,6−ジフェニルを例示することができる。
【0081】
前記α−オレフィンと環状オレフィンの共重合反応は、炭化水素溶媒中で行い、この炭化水素溶媒に可溶性のバナジウム化合物および有機アルミニウム化合物から形成される触媒を用いる製造方法が好ましい。また、この共重合反応では固体状の周期律表4族のメタロセン系触媒を用いることもできる。ここで固体状の周期律表4族のメタロセン系触媒とは、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む遷移金属化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物と、必要により配合される有機アルミニウム化合物とからなる触媒である。ここで周期律表4族の遷移金属としては、ジルコニウム、チタン又はハフニウムが挙げられ、これらの遷移金属が少なくとも1個のシクロペンタジエニル骨格を含む配位子を有している触媒である。シクロペンタジエニル骨格を含む配位子の例としては、シクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フロオレニル基を挙げることができる。ここで、シクロペンタジエニル基にはアルキル基が置換していてもよい。これらの基は、アルキレン基などの他の基を介して結合していてもよい。また、シクロペンタジエニル骨格を含む配位子以外の配位子の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等があげられる。また、有機アルミニウムオキシ化合物および有機アルミニウム化合物は、通常ポリオレフィン類の製造に使用されるものを用いることができる。
【0082】
炭素原子数が2〜20のα−オレフィンと環状オレフィン共重合体は、α−オレフィンから誘導される構成単位を、通常は5〜95モル%、好ましくは20〜80モル%の量で、環状オレフィンから誘導される構成単位を、通常は5〜95モル%、好ましくは20〜80モル%の量で含有するものである。尚、α−オレフィンおよび環状オレフィンの組成比は、13C−NMRによって測定される。
【0083】
本発明に係る上記脂環式炭化水素系重合体は、DSCで測定(昇温速度10℃/min)したガラス転移温度(Tg)が、60〜230℃であることが好ましく、さらには、70〜210℃であることが好ましい。
【0084】
〔一般式(V)で表されるヒンダードアミン系化合物〕
本発明に係る樹脂組成物においては、上述の本発明に係る脂環式炭化水素系共重合体と共に、下記一般式(V)で表されるヒンダードアミン系化合物を用いることを特徴とする。
【0085】
【化11】

【0086】
上記一般式(V)において、Aは下記一般式(VI)を表す。
【0087】
【化12】

【0088】
上記一般式(VI)において、R14は水素原子またはメチル基を表す。
【0089】
一般式(V)で表される化合物としては、一般式(VI)において、R14が水素原子である2,2,6,6−テトラメチルピペリジル基を4個有するヒンダードアミン化合物であるテトラキス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジルオキシカルボニル)ブタン、あるいは、一般式(VI)において、R14がメチル基である1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル基を4個有するヒンダードアミン化合物であるテトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジルオキシカルボニル)ブタンが挙げられる。
【0090】
上記ヒンダードアミン化合物であるテトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジルオキシカルボニル)ブタンまたはテトラキス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジルオキシカルボニル)ブタンは、次のように合成される。
【0091】
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸アルキルと1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ヒドロキシピペリジンまたは2,2,6,6−ペンタメチル−4−ヒドロキシピペリジンをエステル交換触媒を用いてエステル交換反応する方法である。ここでアルキル基は炭素数1〜4であり、直鎖又は分岐状であり、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基である。
【0092】
この場合、主な副生物はトリス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)メチル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸エステル、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)ジメチル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸エステル、モノ(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)トリメチル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸エステルである。
【0093】
あるいは、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ヒドロキシピペリジン又は2,2,6,6−ペンタメチル−4−ヒドロキシピペリジンをエステル化触媒を用いてエステル化反応する方法である。
【0094】
この場合、主な副生物はトリス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸エステル、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸エステル、モノ(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸エステルである。
【0095】
本発明に係る一般式(V)で表されるヒンダードアミン系化合物を、トルエン溶液とした場合に425nmの光透過率が99%以上とする方法としては、上記のようにして得られたヒンダードアミン化合物を有機溶剤により晶析して得られる。晶析用有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤;ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族系溶媒;ジエチルエーテルなどのエーテル類などの溶媒単独または混合溶媒が挙げられる。
【0096】
〔その他の安定剤〕
本発明の樹脂組成物では、本発明に係る一般式(V)で表されるヒンダードアミン系化合物と共に、一般式(V)で表されるヒンダードアミン系化合物以外のヒンダードアミン系安定剤、フェノール系安定剤、リン系安定剤及びイオウ系安定剤から選ばれる1種以上の安定剤を併用することが好ましい。これら安定剤を適宜選択し、脂環式炭化水素系共重合体に添加することで、例えば、400nmといった短波長の光を継続的に照射した場合の白濁や、屈折率の変動等の光学特性変動をより高度に抑制することができる。
【0097】
好ましいフェノール系安定剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレートなどの特開昭63−179953号公報や特開平1−168643号公報に記載されるアクリレート系化合物;オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニルプロピオネート))メタン[すなわち、ペンタエリスリメチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート))]、トリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物;などが挙げられる。
【0098】
また、好ましいヒンダードアミン系安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)スクシネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1−アクロイル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)デカンジオエート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−1−[2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロピオンアミド等が挙げられる。
【0099】
また、好ましいリン系安定剤としては、一般の樹脂工業で通常使用される物であれば格別な限定はなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどのモノホスファイト系化合物;4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)などのジホスファイト系化合物などが挙げられる。これらの中でも、モノホスファイト系化合物が好ましく、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどが特に好ましい。
【0100】
また、好ましいイオウ系安定剤としては、例えば、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′−チオジプロピピオネート、ジステアリル3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ)−プロピオネート、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
【0101】
これらの各安定剤の配合量は、本発明の目的を損なわれない範囲で適宜選択されるが、脂環式炭化水素系共重合体100質量部に対して通常0.01〜2質量部、好ましくは0.01〜1質量部である。
【0102】
〔界面活性剤〕
界面活性剤は、同一分子中に親水基と疎水基とを有する化合物である。界面活性剤は樹脂表面への水分の付着や上記表面からの水分の蒸発の速度を調節することで、樹脂組成物の白濁を防止する。
【0103】
界面活性剤の親水基としては、具体的には、ヒドロキシ基、炭素数1以上のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、アミド基、アンモニウム塩、チオール、スルホン酸塩、リン酸塩、ポリアルキレングリコール基などが挙げらる。ここで、アミノ基は1級、2級、3級のいずれであってもよい。界面活性剤の疎水基としては、具体的に炭素数6以上のアルキル基、炭素数6以上のアルキル基を有するシリル基、炭素数6以上のフルオロアルキル基などが挙げられる。ここで、炭素数6以上のアルキル基は置換基として芳香環を有していてもよい。アルキル基としては、具体的にヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデセニル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ミリスチル、ステアリル、ラウリル、パルミチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。芳香環としてはフェニル基などが挙げられる。この界面活性剤は、上記のような親水基と疎水基とをそれぞれ同一分子中に少なくとも1個ずつ有していればよく、各基を2個以上有していてもよい。
【0104】
このような界面活性剤としては、より具体的には、例えば、ミリスチルジエタノールアミン、2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシドデシルアミン、2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシトリデシルアミン、2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシテトラデシルアミン、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ジ−2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシドデシルアミン、アルキル(炭素数8〜18)ベンジルジメチルアンモニウムクロライド、エチレンビスアルキル(炭素数8〜18)アミド、ステアリルジエタノールアミド、ラウリルジエタノールアミド、ミリスチルジエタノールアミド、パルミチルジエタノールアミド、などが挙げられる。これらのうちでも、ヒドロキシアルキル基を有するアミン化合物またはアミド化合物が好ましく用いられる。本発明では、これら化合物を2種以上組合わせて用いてもよい。
【0105】
界面活性剤は、脂環式炭化水素系重合体100質量部に対して0.01〜10質量部添加される。界面活性剤の添加量が0.01質量部を下回る場合、温度、湿度の変動に伴なう成形物の白濁を効果的に抑えることができない。一方、添加量が10質量部を超える場合、成形物の光透過率が低くなり、光ピックアップ装置への適用が困難となる。界面活性剤の添加量は脂環式炭化水素系重合体100質量部に対して0.05〜5質量部とすることが好ましく、0.3〜3質量部とすることが更に好ましい。
【0106】
〔可塑剤〕
可塑剤は、本発明に係る樹脂組成物のメルトインデックスを調節するため、必要に応じて添加される。
【0107】
可塑剤としては、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)、ジプロピレングリコールジベンゾエート、クエン酸トリ−n−ブチル、クエン酸トリ−n−ブチルアセチル、エポキシ化大豆油、2−エチルヘキシルエポキシ化トール油、塩素化パラフィン、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、リン酸−t−ブチルフェニル、リン酸トリ−2−エチルヘキシルジフェニル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジシクロヘキシル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、Santicizer 278、Paraplex G40、Drapex 334F、Plastolein 9720、Mesamoll、DNODP−610、HB−40等の公知のものが適用可能である。可塑剤の選定及び添加量の決定は、共重合体の透過性や環境変化に対する耐性を損なわないことを条件に適宜行なわれる。
【0108】
このような環状オレフィン系樹脂は、透明性、低複屈折性、耐熱性、耐熱老化性、耐薬品性、耐溶剤性、誘電特性、種々の機械的特性、精密成形性、防湿性(低吸水性)に優れている。特に、本発明に係る環状オレフィン系樹脂は、嵩高い環状オレフィンから導かれる構成単位と、同一分子中に親水基と疎水基とを有する界面活性剤とを特定割合で含有しており、高温や高湿度といった環境から常温常湿度へと環境変化した場合などにおいても優れた透明性を保持することができる。
【0109】
〔その他の樹脂成分〕
本発明の光学素子においては、本発明に係る脂環式炭化水素系共重合体に、さらに他の樹脂を配合した樹脂組成物を必要に応じて添加することもできる。
【0110】
他の樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲内で添加され、以下に、本発明に係る脂環式炭化水素系共重合体に添加し得る他の樹脂を例示する。
【0111】
(1)1個または2個の不飽和結合を有する炭化水素から誘導される重合体で、具体的には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルブタ−1−エン、ポリ4−メチルペンタ−1−エン、ポリブタ−1−エン及びポリスチレンなどのポリオレフィンが挙げられる。なおこれらのポリオレフィンは架橋構造を有していてもよい。
【0112】
(2)ハロゲン含有ビニル重合体で、具体的にはポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリクロロプレン、塩素化ゴムなどが挙げられる。
【0113】
(3)α,β−不飽和酸とその誘導体から誘導された重合体で、具体的にはポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、または前記の重合体を構成するモノマーとの共重合体、たとえばアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。
【0114】
(4)不飽和アルコール及びアミン、または不飽和アルコールのアシル誘導体またはアセタールから誘導される重合体で、具体的にはポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、ポリ安息香酸ビニル、ポリマレイン酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリアリルフタレート、ポリアリルメラミン、または前記重合体を構成するモノマーとの共重合体、たとえばエチレン・酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
【0115】
(5)エポキシドから誘導される重合体で、具体的にはポリエチレンオキシドまたはビスグリシジルエーテルから誘導された重合体などが挙げられる。
【0116】
(6)ポリアセタール類で、具体的にはポリオキシメチレン、ポリオキシエチレン、コモノマーとしてエチレンオキシドを含むようなポリオキシメチレンなどが挙げられる。
【0117】
(7)ポリフェニレンオキシド(8)ポリカーボネート(9)Sポリスルフォン(10)ポリウレタン及び尿素樹脂。
【0118】
(11)ジアミン及びジカルボン酸及び/またはアミノカルボン酸、または相応するラクタムから誘導されたポリアミド及びコポリアミドで、具体的にはナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などが挙げられる。
【0119】
(12)ジカルボン酸及びジアルコール及び/またはオキシカルボン酸、または相応するラクトンから誘導されたポリエステルで、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ1,4−ジメチロール・シクロヘキサンテレフタレートなどが挙げられる。
【0120】
(13)アルデヒドとフェノール、尿素またはメラミンから誘導された架橋構造を有した重合体で、具体的には、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、尿素・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。
【0121】
(14)アルキッド樹脂で、具体的にはグリセリン・フタル酸樹脂などが挙げられる。
【0122】
(15)飽和及び不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとのコポリエステルから誘導され、架橋剤としてビニル化合物を使用して得られる不飽和ポリエステル樹脂ならびにハロゲン含有改質樹脂。
【0123】
(16)天然重合体で、具体的にはセルロース、ゴム、蛋白質、あるいはそれらの誘導体、例えば、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテルなどが挙げられる。
【0124】
(17)軟質重合体、例えば、共重合体成分を含む軟質重合体、α−オレフィン系共重合体、α−オレフィン・ジエン系共重合体、芳香族ビニル系炭化水素・共役ジエン系軟質共重合体、イソブチレンまたはイソブチレン・共役ジエンからなる軟質重合体または共重合体等が挙げられる。
【0125】
本発明に係る脂環式炭化水素系共重合体と、他の樹脂成分や添加剤等との混合方法としては、それ自体公知の方法が適用できる。例えば、各成分を同時に混合する方法などである。
【0126】
〔メルトインデックス〕
上述の様にして調製された共重合体は、温度260℃、荷重2.16kgで測定したメルトインデックス(MI)が20〜60g/10minであることが好ましい。ここで、MIの測定方法は、ASTM D1238に準拠する。MIは、更に好ましくは40〜60g/10minである。
【0127】
ここで、上記MIは、例えば、モノマーの組成比の選定による結晶化度の制御、重合方法や重合条件の選定による分子量の制御や、可塑剤の添加といった公知の方法により、調節することができる。
【0128】
共重合体樹脂のMIが上述の範囲内にあることで、射出成形等の方法で光学素子を成形する際、溶融した共重合体樹脂は金型の後述する輪帯状レンズ面、回折輪帯、輪帯状凹部、輪帯状凸部に対応した部位の先端まで行き渡るので、高い精度で上記部位を形成することができる。よって、高い信頼性で媒体に光を照射したり媒体で反射した光を集光したりできる光学素子を作製することができる。
【0129】
〔光ピックアップ装置〕
次に、本発明のプラスチック製光学素子及び光ピックアップ装置について、図1及び図2を参照して説明する。
【0130】
本発明の光ピックアップ装置1は、波長650nmの光を適用する現行のDVD(以下、現行DVDと表記)、波長405nmの光を適用するいわゆる次世代のDVD(以下、次世代DVDと表記)の2種類の光情報記録媒体5について情報の再生、記録を行なう装置である。
【0131】
光ピックアップ装置1は、光源2から出射されるレーザ光(光)を、コリメータレンズ3、後述する微細構造を有する対物レンズ(プラスチック製光学素子)10といった単玉光学素子を通過させて、光軸4上で光情報記録媒体5の情報記録面6に集めて集光スポットを形成し、情報記録面6からの反射光を、偏向ビームスプリッタ7で取り込み、検出器8の受光面に再びビームスポットを形成するものである。
【0132】
光源2は、レーザーダイオードを有して構成されており、公知の切り換え方法により、650nm、405nmという2種類の波長の光を選択して出射できる構成となっている。コリメータレンズ3、対物レンズ(プラスチック製光学素子)10、偏向ビームスプリッタ7は、光学素子ユニットを構成する。
【0133】
本発明に係る対物レンズ10は、微細構造を有する光学素子であって、上述の環状オレフィン樹脂を射出成形で成形することにより作成される。対物レンズ10は図2に示すように、両面非球面の単玉光学素子であり、その一方(光源側)の光学面11上に、該光学面11を通過する所定の光に対して予め定められた光路差を付与する光路差付与構造20(微細構造)を有している。
【0134】
光路差付与構造20は、光学面11が光軸4を中心とした3つの輪帯状レンズ面(以下、内側から順に第1輪帯状レンズ面21、第2輪帯状レンズ面22、第3輪帯状レンズ面23と言う)により構成され、該3つの輪帯状レンズ面21〜23のうち隣り合う輪帯状レンズ面21〜23は異なる屈折力を有している。
【0135】
第1輪帯状レンズ面21と第3輪帯状レンズ面23とは、同一の光学面11上にあり、第2輪帯状レンズ面22は、光学面11から平行移動した面となっている。
【0136】
第1輪帯状レンズ面21は、波長650nm、405nm両方の光を通過させ、第2輪帯状レンズ面22は、現行DVDに対応した波長650nmの光を通過させ、第3輪帯状レンズ面23は、次世代DVDに対応した波長405nmの光を通過させる。そして、各輪帯状レンズ面21〜23を通過した光は、情報記録面6の同じ位置に集光されるようになっている。
【0137】
なお、図2では、第1輪帯状レンズ面21と第3輪帯状レンズ面23とは同一光学面11上に設けられているが、これら第1及び第3輪帯状レンズ面21、23とは同一光学面上に設けなくても良く、また、第2輪帯状レンズ面22は、光学面11から平行移動した面となっているが、特に平行移動した面でなくても良い。また、3つの輪帯状レンズ面21〜23は5つであっても良く、少なくとも3つ以上であれば良い。
【0138】
対物レンズ10は、上述の環状オレフィン樹脂を適用しているので、溶融して金型に射出して成形する際、金型の第1輪帯状レンズ面21、第2輪帯状レンズ面22、第3輪帯状レンズ面23の境界部分に対応する部分に確実に樹脂が行き渡っている。そのため、対物レンズ10は光路差付与構造20が高い精度で付与されている。
【0139】
こうして形成された光路差付与構造20の作用により、対物レンズ10は現行DVD、次世代DVDといった複数種の光情報記録媒体5に対して、光源2で出射した光の情報記録面6への集光と、情報記録面6で反射した光の検出器8へ向けての集光を高い信頼性で行なうことができる。また、対物レンズ10をなす環状オレフィン樹脂は85%以上という高い光透過率を有しているため、上記集光は高い効率で行なうことができる。よって、光源2の消費電力を小さくすることができるので、光ピックアップ装置1全体の消費電力を軽減できる。
【0140】
なお、本発明に係る対物レンズ10は、上記光路差付与構造20を有するものに限らず、例えば図3〜図7に示す光路差付与構造20a〜20dを有する対物レンズ10a〜10eとしても良い。
【0141】
図3における光路差付与構造20aは、光軸4を中心とした複数の回折輪帯21aからなり、複数の回折輪帯21aの断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯21aの光学面11aが不連続面となっている。また、複数の回折輪帯21aは、光軸4から離れるにしたがって厚みが増すように形成されている。図3に示す対物レンズ10aは、いわゆる回折レンズである。
【0142】
図4における光路差付与構造20bは、光軸4を中心とした位相差を生じる複数の輪帯状凹部21bを同心円状に有している。輪帯状凹部21bは、光学面11bのうちの光軸4を中心とした一方の面(図4における光軸4を中心に上下の光学面)に5つずつ形成されている。また、隣り合う輪帯状凹部21b同士は、連続して一体になっており、各輪帯状凹部21b全体としての断面が階段状となっている。また、各輪帯状凹部21bを形成する光学面22bは、光学面11bに対して平行移動した面となっている。図4に示す対物レンズ10bはいわゆる位相差レンズである。
【0143】
なお、図4では、隣り合う輪帯状凹部21bどうしが連続して一体になっていて、全体の断面が階段状のものであるとしたが、単に光学面11bに輪帯状凹部21bを個々に設けたものとしても良い(この場合、例えば図2に示した対物レンズ10と同様の構造となる)。また、図4では輪帯状凹部21bを同心円状に有しているとしたが、図5に示すように、図2の第3輪帯状レンズ面23上に輪帯状凸部23bを有した対物レンズ10cとしても良い(図5中、図2と同様の構成部分については同様の符号を付した)。
【0144】
図6における光路差付与構造20dは、光軸4を中心とした複数の回折輪帯21dからなり、複数の回折輪帯21dの断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯21dの光学面11dが不連続面である。そして、各回折輪帯21dの断面が光軸方向に沿った3段22dの階段状であり、各段22dの光学面12dが不連続面で、光軸4に対して直交する面となっている。
【0145】
なお、図6に示すレンズ10dは、例えば、図7に示すように図6と同様の光路差付与構造20dを有するホログラム光学素子(HOE)10eと対物レンズ10fとで別体の構成としても良い。この場合、ホログラム光学素子10eは、平板状の光学素子を使用して、該光学素子の対物レンズ10fの面に光路差付与構造20dを設ける。
【0146】
なお、本発明に係る光ピックアップ装置1は、例えばCD、現行DVD、次世代DVDの3種の光情報記録媒体5について情報の再生、記録を行なうこととしてもよい。光ピックアップ装置1で情報の再生、記録を行なう光情報記録媒体5の組み合わせは設計事項であり、適宜設定される。
【実施例】
【0147】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0148】
実施例1
《樹脂の製造》
(樹脂1の製造)
ステンレス製オートクレーブ内を充分に窒素置換した後、これに1000質量部の乾燥シクロヘキサンを入れ、内部をエチレンガスで置換した。次に、このオートクレーブに200質量部のテトラシクロ[4.4.0.125.1710]−3−ドデセンと、メチルアルミノキサン(MAO)をアルミニウム原子換算で0.073質量部、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを0.003質量部加えた。
【0149】
エチレンガスを50リットル/hrの流量で循環させながら、25℃、常圧にて10時間重合反応を行った後、少量のイソブチルアルコールを添加することにより重合を停止し、反応溶液をアセトン/メタノール混合溶媒に投入してポリマーを全量析出させた後、この共重合体を濾取し、80℃にて48時間減圧乾燥させて樹脂1を得た。
【0150】
(樹脂2の製造)
攪拌装置を備えたステンレス製反応器内を充分に乾燥、窒素置換した後、これに脱水シクロヘキサンを300質量部、スチレンを60質量部、ジブチルエーテルを0.38質量部仕込み、60℃で攪拌しながらn−ブチルリチウム溶液(15%含有ヘキサン溶液)の0.36質量部を添加して重合反応を開始した。1時間重合反応を行った後、反応溶液中に、スチレンの8質量部及びイソプレンの12質量部からなる混合モノマーを添加し、さらに1時間重合反応を行った後、反応溶液にイソプロピルアルコールを0.2質量部添加して反応を停止させた。
【0151】
次に、上記重合反応溶液の300質量部を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒として、シリカ−アルミナ担持型ニッケル触媒(日揮化学工業社製;E22U、ニッケル担持量60%)を10質量部添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換して、更に溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度を160℃に設定した後、圧力4.5MPaにて8時間水素化反応を行なった。
【0152】
反応終了後、反応溶液をろ過して水素化触媒を除去し、シクロヘキサンの800質量部を加えて希釈した後、該反応溶液を3500質量部のイソプロパノール中に注いで共重合体を析出させた。次に、この共重合体を濾取し、80℃にて48時間減圧乾燥させて樹脂2を得た。
【0153】
(樹脂3の製造)
窒素雰囲気下、脱水したトルエンの690質量部に、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンを300質量部、1−ヘキセンを1.1質量部、塩化タングステンの0.3質量%トルエン溶液を11質量部、テトラブチルスズの0.6質量部を加え、60℃、常圧にて1時間重合させた。
【0154】
次に、この重合反応溶液の240質量部に、アルミナ担持ニッケル触媒(触媒1質量部中に、ニッケルを0.70質量部、酸化ニッケルを0.2質量部含む、細孔容積0.8cm3/g、比表面積300cm2/cm)を6質量部とイソプロピルアルコールを5質量部加え、オートクレーブ中で230℃、4.4MPaで5時間反応させた。
【0155】
水素添加触媒を濾過して除去した水素添加反応溶液を、アセトンの250質量部とイソプロパノールの250質量部の混合溶液に、撹拌しながら注いで、樹脂を沈澱させ、濾別して回収した。さらにアセトン200質量部で洗浄した後、133Pa(1mmHg)以下に減圧した真空乾燥器中で、100℃で24時間乾燥させて樹脂3を得た。
【0156】
《成型体の作製》
〔成型体1の作製:本発明〕
上記製造した樹脂1の100質量部、テトラキス(1,2,2,6,6,−ペンタメチルピペリジルオキシカルボニル)ブタンの0.2質量部、2,2′−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイトの0.05質量部、界面活性剤としてペンタエリスリトールジステアレートの0.5質量部なる組成比で、二軸混練機(東芝機械社製、TEM−35B、スクリュー径37mm、L/D=32、スクリュー回転数150rpm、樹脂温度240℃、フィードレート10kg/時間)に添加、混練した後、ペレット化した。得られたペレットを、空気を流通させた熱風乾燥器を用いて70℃で2時間乾燥して水分を除去した後、射出成形機(ファナック社製AUTOSHOT MODEL 30A)により、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、一次射出圧力98.1MPa、二次射出圧力78.4MPaの条件で射出成形し、樹脂基体、Φ30mm、厚さ3mmの成形体1を得た。
【0157】
〔成型体2の作製:本発明〕
上記成型体1の作製において、樹脂1に代えて樹脂2を用いた以外は同様にして、成形体2を得た。
【0158】
〔成型体3の作製:本発明〕
上記成型体1の作製において、本発明に係る一般式(V)で表されるヒンダードアミン系化合物であるテトラキス(1,2,2,6,6,−ペンタメチルピペリジルオキシカルボニル)ブタンと共に、これとは異なる他のヒンダードアミン系化合物としてビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートの0.1質量部を併せて添加した以外は同様にして、成型体3を得た。
【0159】
〔成型体4の作製:本発明〕
上記成型体2の作製において、本発明に係る一般式(V)で表されるヒンダードアミン系化合物であるテトラキス(1,2,2,6,6,−ペンタメチルピペリジルオキシカルボニル)ブタンと共に、これとは異なる他のヒンダードアミン系化合物としてビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートの0.1質量部を併せて添加した以外は同様にして、成型体4を得た。
【0160】
〔成型体5の作製:比較例〕
上記成型体1の作製において、本発明に係る一般式(V)で表されるヒンダードアミン系化合物であるテトラキス(1,2,2,6,6,−ペンタメチルピペリジルオキシカルボニル)ブタンに代えて、これとは異なる他のヒンダードアミン系化合物としてビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートの0.3質量部を用いた以外は同様にして、成型体5を得た。
【0161】
〔成型体6の作製:比較例〕
上記成型体5の作製において、樹脂1に代えて樹脂2を用いた以外は同様にして、成形体6を得た。
【0162】
〔成型体7の作製:比較例〕
上記成型体1の作製において、樹脂1に代えて樹脂3を用いた以外は同様にして、成形体7を得た。
【0163】
〔成型体8の作製:比較例〕
上記成型体3の作製において、樹脂1に代えて樹脂3を用いた以外は同様にして、成形体8を得た。
【0164】
《成型体の評価》
〔メルトインデックス値の測定〕
各成型体について、温度260℃、荷重2.16kgにおけるメルトインデックス値をASTM D1238で規定された方法に従って測定した。
【0165】
〔成型体の着色性及び透明性の評価〕
上記各成型体について、波長400nmによる光線透過率の測定と、透過光を介しての色調を目視観察し、着色性及び透明性の評価を行った結果、各成型体とも着色がなく、光線透過率が90%以上で、高い透過率を示した。
【0166】
〔光耐久性の評価〕
80℃、55%RHの恒温恒湿槽内で、図1に記載の光ピックアップ装置を用い、各樹脂成型品上に光源2のレーザーダイオードから405nmの波長の光を直径1mmの円形スポット光として250時間に亘り連続照射を施した後、そのレーザー照射箇所を目視観察し、下記の基準に従って、白濁による透明性(着色度)及び形状安定性について評価した。
【0167】
(着色度の評価)
◎:連続照射後、レーザー照射箇所に白濁は全く認められない
○:連続照射後、レーザー照射箇所に極僅かな濁りが認められるが、実用上全く問題のない品質である
△:連続照射後、レーザー照射箇所に僅かな濁りが認められるが、実用上許容の範囲にある
×:連続照射後、レーザー照射箇所に白濁現象が認められ、実用上問題がある
(形状安定性の評価)
◎:連続照射後、レーザー照射箇所に変形は全く認められない
○:連続照射後、レーザー照射箇所に極僅かな変形が認められるが、実用上全く問題のない品質である
△:連続照射後、レーザー照射箇所に僅かな変形が認められるが、実用上許容の範囲にある
×:連続照射後、レーザー照射箇所に変形が認められ、実用上問題がある
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0168】
【表1】

【0169】
表1に記載の結果より明らかなように、本発明に係る樹脂組成物を用いて成型された成型体は、比較例に対し、短波長の光を長時間連続照射しても着色や白濁を生じず、更に、変形が生じず高い形状安定性を維持することができることを確認することができた。
【0170】
実施例2
《プラスチック製光学素子の作製》
実施例1に記載の成型体1〜8と同様の組成で、射出成形により図2〜図7に記載の構成からなるプラスチック製光学素子(対物レンズ)1〜8を作製した。
【0171】
《プラスチック製光学素子の評価》
上記作製した各プラスチック製光学素子を、図1に記載の構成からなる各光ピックアップ装置の光学素子として組み込んだ。次いで、各光ピックアップ装置を用いて、レーザーダイオードによる405nmの波長の光を用いて、DVDへの記録及び再生を行なった。
【0172】
上記評価を行った結果、本発明のプラスチック製光学素子1〜4を用いた光ピックアップ装置は、長時間連続照射しても、いずれも変形等が認められず良好なピックアップ特性を示した。一方、比較のプラスチック製光学素子5〜8は、その光学面がより微細(複雑)に形成されている構造を有するほど変形が生じ、ピックアップ特性の低下が認められた。
【0173】
実施例3
実施例1に記載の成型体3、4、5、6、8の作製において、一般式(V)で表されるヒンダードアミン系化合物以外のヒンダードアミン系化合物であるビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートに代えて、フェノール系安定剤として〔テトラキス(メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニルプロピオネート))メタン〕を、リン系安定剤としてトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトを、イオウ系安定剤としては、ジミリスチル3,3′−チオジプロピピオネートを用いた以外は同様にして、成型体を作製し、実施例1及び2に記載の方法と同様にして評価を行った結果、実施例1及び2と同様の結果を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1】本発明のプラスチック製光学素子を適用した光ピックアップ装置の一例を示す全体側面図である。
【図2】本発明の光学素子の一例である対物レンズ10の断側面図である。
【図3】本発明の光学素子の他の一例である対物レンズ10aの断側面図である。
【図4】本発明の光学素子の他の一例である対物レンズ10bの断側面図である。
【図5】本発明の光学素子の他の一例である対物レンズ10cの断側面図である。
【図6】本発明の光学素子の他の一例である対物レンズ10dの断側面図である。
【図7】本発明の光学素子の他の一例であるホログラム光学素子10e及び対物レンズ10fの断側面図である。
【符号の説明】
【0175】
1 光ピックアップ装置
2 光源
3 コリメータレンズ
4 光軸
5 光情報記録媒体
6 情報記録面
7 偏光ビームスプリッタ
8 検出器
10、10a、10b、10c、10d、10f 対物レンズ(プラスチック製光学素子、対物光学素子)
11、11a、11d、12d、22b 光学面
20、20a、20b、20c、20d 光路差付与構造
21 第1輪帯状レンズ面(輪帯状レンズ面)
21a、21d 回折輪帯
21b 輪帯状凹部
22 第2輪帯状レンズ面(輪帯状レンズ面)
23 第3輪帯状レンズ面(輪帯状レンズ面)
23b 輪帯状凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記一般式(I)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、下記一般式(II)、下記一般式(III)及び下記一般式(IV)から選ばれる少なくとも1種の鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、該繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体と、下記一般式(V)で表されるヒンダードアミン系化合物とを含む樹脂組成物を成型してなることを特徴とするプラスチック製光学素子。
【化1】

〔一般式(I)中、Xは脂環式炭化水素基であり、一般式(I)〜一般式(IV)中、R1〜R13は、それぞれ独立に水素原子、鎖状炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、または極性基(ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、又はシリル基)で置換された鎖状炭化水素基である。n1〜n4はそれぞれ質量%を表す。〕
【化2】

〔式中、Aは下記一般式(VI)を表す。〕
【化3】

〔式中、R14は水素原子またはメチル基を表す。〕
【請求項2】
少なくとも炭素原子数2〜20のα−オレフィンと下記一般式(1)で表される脂環式炭化水素とを共重合して得られる脂環式炭化水素系重合体と、下記一般式(V)で表されるヒンダードアミン系化合物とを含む樹脂組成物を成型してなることを特徴とするプラスチック製光学素子。
【化4】

〔式中、nは0または1であり、mは0または1以上の整数であり、qは0または1であり、R1〜R18、Ra及びRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基であり、R15〜R18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、括弧内の単環または多環が二重結合を有していてもよく、またR15とR16と、またはR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。〕
【化5】

〔式中、Aは下記一般式(VI)を表す。〕
【化6】

〔式中、R14は水素原子またはメチル基を表す。〕
【請求項3】
前記樹脂組成物が、前記一般式(V)で表されるヒンダードアミン系化合物とは異なるヒンダードアミン系安定剤、フェノール系安定剤、リン系安定剤及びイオウ系安定剤から選ばれる少なくとも1種の安定剤を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のプラスチック製光学素子。
【請求項4】
前記樹脂組成物の温度260℃、荷重2.16kgの条件で測定されるメルトインデックス(MI)値が、20<MI(g/10分)<60の範囲にあり、かつ少なくとも1つの光学面に所定の微細構造が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子。
【請求項5】
集光機能を有する集光装置に用いられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子。
【請求項6】
前記樹脂組成物を用いて成型された厚さ3mmの成型体は、波長400nmにおける光線透過率が85%以上であることを特徴とする請求項5に記載のプラスチック製光学素子。
【請求項7】
光情報記録媒体に対し、情報の再生または記録を行う光ピックアップ装置であって、
光を出射する光源と、該光源から出射された光の該光情報記録媒体への照射または該光情報記録媒体で反射される光の集光を行なう光学素子ユニットとを備え、
該光学素子ユニットは、請求項1〜6のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子を備えることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項8】
前記光源は、波長390nm以上、420nm以下の光を出射することを特徴とする請求項7に記載の光ピックアップ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−65131(P2007−65131A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249040(P2005−249040)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】