プラスチドにおけるTGF−ベータの発現
植物においてTGF−βを発現させる方法を提供する。(1)植物細胞における転写を調節することができる第一の核酸配列、(2)TGF−βをコードし、かつ該植物細胞における発現に適合した第二の核酸配列、および(3)該植物細胞において機能する、終止領域をコードする第三の核酸配列を含むキメラ核酸配列を植物細胞に導入し、該植物細胞を成長させて、TGF−βを生成する。該核酸配列は、好ましくは、植物葉緑体における発現に適合することができる。全長または活性断片の形態であるかを問わず、TGF−βがTGF−β3であるのが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスフォーミング成長因子−ベータ(TGF−β)の発現に関する。本発明は、植物におけるTGF−βの発現に関する。特に、本発明は、植物葉緑体におけるTGF−βの発現に関する。TGF−β3は、本発明による発現の好ましいTGF−βである。本発明は、植物におけるTGF−βの発現に用いるのに適したキメラ核酸配列、ならびにそのような方法によって産生されるTGF−β、およびそのようなTGF−βの使用も提供する。
【背景技術】
【0002】
TGF−βは多様な生物学的活性を有するサイトカインのファミリーである。TGF−βファミリーの5つのメンバーが今日までに同定されている。すなわち、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、およびTGF−β5のイソ型である。これらのTGF−βは、共通のシステインノットモチーフ、および共通のシグナル変換経路のような構造的類似性を共有する。
【0003】
TGF−βは、多くの異なる治療的状況で有用性がある生物学的活性を有する。その結果、TGF−βファミリーメンバーの医薬適用において多大な関心が寄せられている。
【0004】
今日まで、最大の医薬的関心がTGF−β1、TGF−β2、およびTGF−β3に示されてきた。全てヒトで見いだされているこれらのイソ型は、創傷治癒応答の調節において非常に重要な役割を担っていることが知られている。
【0005】
TGF−β1は、強皮症、脈管形成障害、腎臓疾患、骨粗鬆症、骨疾患、糸球体腎炎および腎臓疾患の予防および/または治療において使用される。
【0006】
TGF−β2は、神経膠種、非小細胞肺癌、膵臓腫瘍、固体腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、加齢性黄斑変性症、目の負傷、骨粗鬆症、網膜障害、潰瘍、癌腫、口炎症および強皮症の治療で用いることができる。
【0007】
TGF−β3は、線維性障害、強皮症、脈管形成障害、再狭窄、癒着、子宮内膜症、虚血性疾患、骨および軟骨誘導、体外受精、口内粘膜炎、腎臓疾患の治療、瘢痕化の予防、低下または抑制、末梢および中枢神経系におけるニューロン再結合の増強、(LASIKまたはPRK外科的処置のような)目の外科的処置の合併症の予防、低下または抑制に用いることができる。
【0008】
TGF−βの産生、特に治療的使用のための現在の方法は、培養された動物細胞、または適切にトランスフェクトされた細菌の(それらの活性またはプロタンパク質形態のいずれかでの)培養による、これらのタンパク質の発現に依拠する。そのような方法はTGF−βの産生で効果的であるが、それらは比較的低い収率である傾向があり、そのようなタンパク質の調製に関するコストは高い。
【0009】
上記を考慮して、これらの不利の影響を受けないTGF−β産生のための新しい方法を開発するかなりはっきりとした要望が存在することが認識されよう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明のある実施形態の目的は、先行技術の不利の少なくともいくつかを克服し、または除去することにある。本発明のある実施形態の目的は、先行技術の方法よりも低いコストにてTGF−βの製造で用いることができる方法および/または手段を提供することにある。本発明のある実施形態の目的は、先行技術の方法を用いて製造し得るよりも大量のTGF−βの製造に用いることができる方法および/または手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第一の態様によると、植物においてTGF−βを発現させる方法が提供され、該方法は、
(a)植物細胞に、
(1)植物細胞における転写および/または翻訳を調節することができる第一の核酸配列、
(2)TGF−βをコードし、かつ該植物細胞における発現に適合した、第二の核酸配列、ならびに
(3)該植物細胞において機能する、終止領域をコードする第三の核酸配列、
を含むキメラ核酸配列を導入し、次いで、
(b)該植物細胞を成長させて、該TGF−βを産生する、
ことを含む。
【0012】
本発明の第二の態様において、
(1)植物細胞における転写および/または翻訳を調節することができる第一の核酸配列、
(2)TGF−βをコードし、かつ植物細胞における発現に適合した、第二の核酸配列、ならびに
(3)植物細胞において機能する、終止領域をコードする核酸配列、
を含むキメラ核酸配列が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法および核酸は、植物細胞の葉緑体におけるTGF−βの発現での使用に特に適している。特に、キメラ核酸は、葉緑体ゲノムの形質転換に用いられるのに適したものであり得る。適切なキメラ核酸は植物葉緑体において発現させるのに適切で有り得、好ましくは、この様式において発現させるのに適合させることができる。核酸(キメラ核酸全体、または該キメラ核酸をなす第一、第二、第三の核酸のいずれか)を植物細胞の葉緑体における発現に適合させることができる好ましい手段は、本明細書全体にわたって記載される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明は、ここで、以下の実験結果および付随する図1〜12を参照してさらに説明される。
【図1】本発明に従う方法を実施するためにタバコ葉緑体形質転換に含まれる工程を概略的に示す。1において、標的TGF−β遺伝子のcDNAが単離されかつ大腸菌特異的ベクターにクローニングされ、2において、標的cDNAは発現カセットにクローニングされ、3において、完全な発現カセットが葉緑体標的化プラスミドに移入され、4において、プラスミドストックは精製され、かつ葉組織の粒子ボンバードメントのために使用され、5において、植物は、抗生物質選択条件下で葉組織から再生され、そして6において、葉組織からの3サイクルの再生が同種形成植物を生じる。
【図2】本発明に従う使用のために適切であるTGF−β3発現構築物を概略的に図示する。
【図3】本発明における使用のために核酸を産生するための合成遺伝子構築を図示する。この図の左側において、核酸断片は、段階的な様式で合わされて合成TGF−β3遺伝子を産生する。図の右側は、左側のパネルに示した工程によって生じた異なる生成物のサイズを可視化するDNAゲル電気泳動を示す。
【図4】合成(上の配列)および野生型(下の配列)TGF−β3活性領域からのDNAのコード配列を比較する。
【図5】図4に示した合成DNA配列および野生型DNA配列のアラインメントを示す。
【図6】図4および5に示した合成DNA配列および野生型DNA配列によってコードされるTGF−β3のアミノ酸配列のアラインメントを示す。
【図7】本発明における使用のために適切である葉緑体標的化プラスミドを概略的に図示する。「LTR」は左側標的化領域を示し、「RTR」は右側標的化領域を示す。「aadA」は使用され得る抗生物質耐性マーカーであるアミノグリコシドアデニルトランスフェラーゼを示す。
【図8】タバコ葉調製物中で産生されたTGF−βの検出を図示する。この図は、タンパク質がクマシーブルーを使用して染色されたSDS−PAGEゲルを示す。収率は、野生型タバコ植物(ゲルのレーン1)、16Srrn−T7−TGF−β3活性領域−psbCタバコ植物(すなわち、TGF−βをコードする核酸の配列が植物細胞における発現のために適合されていない植物であり、ゲルのレーン2に結果が示される)、および16Srrn−T7−TGF−β3合成活性領域−psbCタバコ植物(TGF−βをコードする核酸の配列が植物細胞における発現のために適合されており、レーン3に結果が示される)に由来する全タンパク質調製物の間で比較される。結果の分析は、この例において、TGF−β3が、野生型の適合されていない配列を含む植物中の全タンパク質の約1%を占め、および合成の適合した配列を含む植物中の全タンパク質の約10%を占めることを示す。
【図9】本図もまた、タバコ葉調製物中で産生されたTGF−βの検出を図示するが、この場合においては、図は、TGF−β3が抗TGF−β3抗体を使用して標識されているウエスタンブロット(イムノブロット)を示す。レーン1および2は、16Srrn−T7−TGF−β3活性領域−psbCタバコ植物(レーン1に示す)および16Srrn−T7−TGF−β3合成活性領域−psbCタバコ植物(レーン2に示す)に由来する全タンパク質調製物の収率を比較する。これらは、レーン3、4、および5(それぞれ、1.0μg、0.05μg、および0.25μg)における、TGF−β3「標準」と比較される。結果の分析は、この例において、合成適合した配列を含む植物からの20μgタンパク質サンプルが約2μg(すなわち、全タンパク質含量の約10%)のTGF−β3を含んでいたことを示す。
【図10】実験結果において記載される方法によって発現されたTGF−β3が不溶性タンパク質の型を有することを図示する。図の左側は、タンパク質がクマシーブルーを使用して染色されたSDS−PAGEゲルを示し、それに対して、右側は、TGF−β3が抗TGF−β3抗体を使用して標識されているウエスタンブロットを示す。両方の場合において、レーン1および2はTGF−β3「標準」であり(それぞれ、1.0mgおよび0.1mg)、それに対して、レーン3は植物16Srrn−T7−TGF−β3合成活性領域−psbCタバコ植物から収集した可溶性タンパク質、レーン4は16Srrn−T7−TGF−β3合成活性領域−psbCタバコ植物から収集した不溶性タンパク質を示す。
【図11】植物細胞における発現のために適合した核酸を含む植物によって発現された物質の回収を研究するために、Biorad RC/DCアッセイを使用して得られた結果を示す。
【図12】ブチル−セファロース捕捉後の溶出工程からのTGF−β3の収率を図示するブチルセファロースクロマトグラムを示す。
【0015】
本開示において利用される特定のアミノ酸配列および核酸配列は、実験結果の後に続く配列情報の節においてもまた示される。上述の通り、関連配列は図面の間にもまた示される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
葉緑体におけるタンパク質の発現および、特に、葉緑体形質転換は、植物細胞の他の箇所における発現に勝る多くの利点を提供する。葉緑体において発現された外因性タンパク質の区画化は、それらが発現される細胞に対するその潜在的毒性を低下させる。葉緑体ゲノムは高いコピー数で存在し、従って、高い発現レベルを達成するのに用いることができる。相同組換えは目的の核酸の正確な挿入、およびそれらの産物の継続した安定な発現を可能とする。そのような発現は、広い範囲の植物で観察することができる。最後に、多くの作物における母性遺伝は、花粉における導入遺伝子の望ましくない伝達の危険性がかなり低下することを意味する。
【0017】
本発明の第一および第二の態様において言及するタイプの「第一の核酸配列」は、(他の箇所で定義されるような)第二の核酸配列の植物細胞における転写および/または翻訳を調節することができるものである。第二の核酸配列の翻訳を調節することができる本発明による第一の核酸配列は、好ましくは、プロモーター部位を含む。本発明に従って第一の核酸配列に組み込むことができる適当なプロモーター部位の詳細は、本明細書の他の箇所で考慮される。第二の核酸配列の転写を調節することができる本発明による第一の核酸配列は、好ましくは、リボソーム結合部位(RBS)を含む。本発明に従って第一の核酸配列に組み込むことができる適当なRBSの詳細は、本明細書中の他の箇所において考慮される。一般に、本発明による第一の核酸配列は、第二の核酸配列の転写および翻訳双方を調節することができるものである。従って、好ましい第一の核酸配列は、適当なプロモーターおよび適当なRBSの双方を含み得る。そのような組み合わされた第一の核酸配列で用いることができる好ましいプロモーターおよびRBSは、明細書中の他の箇所で記載される。好ましい第一の核酸配列は、植物細胞の葉緑体における転写および/または翻訳の調節に適合させることができる。
【0018】
本発明による「第二の核酸配列」は、発現させるべきTGF−βをコードし、植物細胞における発現に適合した配列である。第二の核酸配列の翻訳および/または転写は、前記したように、適当な第一の核酸配列によって調節することができる。適当な第二の核酸配列は、植物細胞において発現させるのが望まれる任意のTGF−βをコードすることができることが認識されるであろう。好ましい第二の核酸は、例えば、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3をコードすることができ、そのうち、TGF−β3はより好ましくあり得る。本発明の第二の核酸配列は、種々の適合戦略の1以上を用いて植物細胞での発現のために適合させることができる。適当な適合戦略の例は、本明細書中の他の箇所に記載される。好ましい第二の核酸配列は、植物細胞の葉緑体におけるそれらの発現のために適合させることができる。
【0019】
本発明による「第三の核酸配列」は、第二の核酸配列の転写を終了させるのに用いることができる終止領域をコードする配列である。終止領域は、植物細胞において機能的であるものである。好ましくは、適当な終止領域は、植物細胞の葉緑体において機能的なものである。(植物細胞および葉緑体に用いるのに適した配列を含む)本発明に従って用いることができる適当な第三の核酸配列の例は、本明細書中の他の箇所で考慮される。
【0020】
第一および/または第二および/または第三の核酸配列は、好ましくは、相互に遺伝子的に融合させることができ、それにより、種々の核酸配列を含む単一のキメラ核酸分子を産生することができる。
【0021】
本発明のキメラ核酸配列は、DNA配列であるのが好ましい。従って、好ましい第一および/または第二のおよび/または第三の核酸配列はDNA配列であると認識されるであろう。
【0022】
その最も広い解釈において、用語「植物細胞における発現に適合した」は、必要な活性または発現を達成するために植物細胞において発現させることができる任意の核酸も含むように用いることができる。種々の戦略を使用して、葉緑体におけるキメラ核酸の発現を促進することができる。いくつかのそのような適当な戦略は、本明細書の他の箇所においてさらに詳細に述べられ、これらの特定の戦略は、核酸が植物細胞における発現のために適合させるべき好ましい手段を表わすことができる。
【0023】
本発明の核酸は、葉緑体標的化プラスミドのような適当なプラスミドに組み込むことができる。一般に、葉緑体において発現させるべき核酸は、葉緑体ゲノムへのキメラ核酸分子の挿入を可能とするプラスチド標的化DNAの領域によって近接されるのが好ましい。適当なプラスミドは、本発明の方法に用いるための好ましい薬剤を表す。
【0024】
発現させるべきTGF−βは、任意の動物、ヒトまたは非ヒトに由来する任意のTGF−βであってもよいが、好ましくは、TGF−βはヒトTGF−βである。
【0025】
本発明の方法または核酸を用いて、任意のTGF−β(例えば、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4またはTGF−β5のいずれか)を発現させることができる。TGF−βは、TGF−β1、TGF−β2、およびTGF−β3よりなる群から選択されるのが好ましい。TGF−βは、TGF−β3であるのがなおより好ましい。TGF−βはヒトTGF−βであるのが特に好ましい。
【0026】
本発明による核酸配列によってコードされるTGF−βが、好ましくは、TGF−βの活性断片を含むことを認識されるであろう。コードされるTGF−βは、活性断片のみを適切に(すなわち、潜伏関連ペプチドの会合なし)を含むことができる。適当な核酸は、選択されたTGF−βの活性断片の全てまたは部分をコードすることができる。参考までに、TGF−β1、TGF−β2、およびTGF−β3の活性断片のアミノ酸配列は、各々、図11における配列番号1ないし3として記載される。
【0027】
本発明による核酸配列によってコードされるか、または本発明による方法で発現させるTGF−βは、TGF−βプロタンパク質を含み得る。そのようなプロタンパク質は、それらを、商業的使用に先立って長期貯蔵または処理に適したものとする安定性を呈することができる。本発明者らは、プロタンパク質ホモ二量体(75kDa)の精製は、タンパク質の安定性のため、活性な領域ホモ二量体(24kDa)よりも容易であろうと考える。活性なタンパク質のカプセル化は、タンパク質半減期を40倍増加させることができ、作製された切断部位はその治療的作用部位においてタンパク質を放出した。プロタンパク質は精製後にインビトロにて切断されて、例えば、治療剤として用いるための活性な領域を提供することができる。
【0028】
本発明による核酸配列によってコードされるか、または本発明による方法で発現されたTGF−βは、全長TGF−β、好ましくは、配列番号6、7または8のいずれか1つによってコードされるアミノ酸配列を有する全長TGF−βを含み得る。
【0029】
本発明の核酸配列によってコードされたTGF−βは、TGF−βの変種形態を含むことができる。
【0030】
本発明による方法および核酸は、植物の葉緑体において発現された遺伝子に由来するプロモーターを使用することができる。適当なプロモーターは光合成遺伝子に由来するのが好ましいであろう。
【0031】
本発明の方法または核酸に用いられる適当なプロモーターは、光合成関連遺伝子、遺伝子系遺伝子、およびプラスチドコードプラスチド(PEP)RNAポリメラーゼまたは核コードプラスチド(NEP)RNAポリメラーゼによって認識される任意のその他を発現するプロモーターよりなるプラスチドプロモーター、藻プロモーター、細菌プロモーター、またはファージプロモーター、例えばプラスチドpsbAプロモーター、プラスチド16S rrnプロモーター、クラミドモナス(Chlamydomonas)pbsAプロモーター、細菌trcプロモーターおよびバクテリオファージT7プロモーターよりなる群から選択することができる。これらの群のうち、16srrnプロモーターは、好ましいプロモーターを表す。適当なプロモーターは、Nicotiana tabacum、好ましくはBrassica napusに由来することができる。事実、Brassica napus 16srrnプロモーターは、本発明の方法または核酸に用いられる特に好ましいプロモーターを表す。
【0032】
本発明の方法または核酸に用いられる適当なリボソーム結合部位(RBS)は、rbcL RBSまたはpsbA RBSのような任意のプラスチドRBS、あるいはT7g10 RBSのような細菌またはバクテリオファージRBSよりなる群から選択することができる。この群のうち、T7g10 RBSは、好ましいRBSであり得る。本発明の方法に用いられる他の適当なRBSは、Nicotiana tabacum psbA RBSのようなNicotiana tabacumに由来するものを含む。
【0033】
本発明の方法または核酸に用いることができる適切なターミネーターは、psbAターミネーター、rbcLターミネーター、(リボソームタンパク質S18からの)rps18ターミネーターおよびpsbCターミネーターを含むプラスチドターミネーター、または細菌ターミネーターまたはバクテリオファージターミネーターよりなる群から選択することができる。psbCターミネーターは、この群からの好ましいターミネーターを表す。適当なターミネーターは、Hordeum vulgare、好ましくはBrassica napusに由来することができる。Brassica napus psbCターミネーターは、本発明に従って用いられる特に好ましいターミネーターである。
【0034】
前述したように、葉緑体発現を用いて、広く種々の植物において本発明によるTGF−βの発現を達成することができる。本発明者らは、本発明の方法および核酸(特に、葉緑体発現に用いられるもの)は、単子葉植物または双子葉植物いずれでも用いることができると考える。本発明の方法および核酸に従って利用することができる双子葉植物の好ましい例はタバコである。一般に、本発明者らは、本発明の方法および核酸が、陸上植物および藻を含めた広い範囲の植物に関連して用いることができると考える。適切な植物は、限定されるものではないが、キャベツ、カリフラワー、クロレラ、クラミドモナス、大麦、ニンジン、レタス、コケ、トウモロコシ、菜種、コショウ、ジャガイモ、米、大豆、ヒマワリ、トマト、小麦を含む。本発明による方法または核酸は、それらが発現されるべき選択された植物を参照して選択された適当な標的化配列およびプロモーターを利用することができる。例えば、本発明による適切な核酸または方法は、藻またはコケで用いるのに適した標的化配列およびプロモーターを利用することができる。
【0035】
前述したように、本発明者らは、葉緑体におけるTGF−βの発現、特に、葉緑体ゲノムの形質転換の結果として起こるそのような発現は、本発明の文脈において多くの利点を提供すると考える。本発明者らは、TGF−βをコードする核酸を産生するのに用いることができ、かつ葉緑体における発現に適合した多数の戦略を見いだした。
【0036】
本発明によるTGF−βの発現は、葉緑体発現に適し、好ましくは、葉緑体発現で優先されるか、または特異的でさえある第一の核酸配列を利用することができる(プロモーターおよびリボソーム結合部位を含むことができる、本明細書中の他の箇所で言及される「第一の核酸配列」における)調節核酸配列の使用によって達成することができる。
【0037】
同様にして、本発明の方法および核酸は、葉緑体における発現に適した(明細書中の他の箇所で言及される「第三の核酸配列」における)終止領域を利用することができる。そのような第三の核酸配列は、なおより好ましくは、葉緑体における発現で優先されるか、またはそれに特異的であり得る。
【0038】
特に、植物細胞における発現のための核酸の適合は、発現させるべきTGF−βをコードする配列(本明細書中において考えられるような「第二の核酸配列」)を参照して実行することができる。本発明者らは、植物細胞における発現、より特別には葉緑体における発現のためのそのような第二の核酸配列を適合させるのに用いることができる多数の手段を見いだした。適当な第二の核酸配列の産生におけるこれらの手段の1つ以上の使用は、本発明において記載された任意の方法または核酸配列の好ましい実施形態であり得る。
【0039】
そのような第二の核酸配列を植物細胞、より詳細には葉緑体における発現に適合させることができる1つの好ましい方法は、発現させるべきTGF−βをコードする野生型DNAに見いだされるコドンの1つ以上の置換である。
【0040】
特に好ましい実施形態において、野生型DNAで生じるアミノ酸システインをコードするコドンの1つ以上を置換するのが好ましいであろう。TGF−βは多数のシステイン残基を含み、これらの残基はTGF−βタンパク質の特徴である。しかしながら、システインは、葉緑体遺伝子産物において他のアミノ酸よりも少量で、かつ光合成葉緑体遺伝子産物においてかなり低い量で見いだされるアミノ酸である。
【0041】
本発明者らは、TGF−βをコードする野生型DNA(例えば、TGF−β3の活性断片の場合には、配列番号4のDNA)に存在する1つ(またはそれを超える)のUGCコドンが置換されれば、TGF−βをコードするDNAが、植物細胞の葉緑体における発現に適合させることができるのを見いだした。UGCコドンはアミノ酸システインをコードし、そのような場合における好ましい置換は、一般には、代替システインコードコドンUGCに関連するであろう。好ましくは、野生型DNA配列に存在するUGCコドンの少なくとも2つを置換することができ、より好ましくは、UGCコドンの少なくとも3つを置換することができ、最も好ましくは、UGCコドンの4つを置換することができる。本発明者らは、野生型DNAに存在するUGCコドンの5つ、または6つさえを置換することができ、依然として、所望のTGDF−βの産生を可能とすることができるが、少なくとも1つ、より好ましくは2つのUGCコドンが適切な核酸に保持されるのが好ましいと考える。
【0042】
本発明者らは、代替、またはさらなる置換の対象となり得る多数の他のコドンを同定した。
【0043】
例えば、ロイシンをコードするコドンCUGは、有益には、植物細胞における(特に、植物細胞の葉緑体における)発現に適合した核酸の産生における置換に供することができる。少なくとも1つのCUGコドンを置換して、本発明の方法または核酸配列に用いるのに適した第二の核酸配列を生じさせるのが好ましいであろう。例えば、発現させるべきTGF−βをコードする野生型DNAに存在する全てのCUGコドンが置換されているのが好ましいであろう。例えば、ヒトTGF−β3をコードする野生型DNAの場合において、全ての7つの存在するCUGコドンを置換するのが好ましいであろう。用いるべき好ましい代替コドンは、ロイシンをコードする別のコドンUUAであり得る。
【0044】
加えて、あるいは別法として、バリンをコードするコドンGUGは、有益に、植物細胞における(特に、植物細胞の葉緑体における)発現に適合した核酸を産生する場合、置換に供することができる。少なくとも1つのGUGコドンを置換して、本発明の方法または核酸配列で用いるのに適した第二の核酸配列を生じさせるのが好ましいであろう。例えば、発現させるべきTGF−βをコードする野生型DNAに存在する全てのGUGコドンが置換されているのが好ましいであろう。例えば、ヒトTGF−β3をコードする野生型DNAの場合、そうでなければ存在するであろう全ての6つのGUGコドンを置換するのが好ましいであろう。用いるべき好ましい代替コドンは、別のバリンをコードするコドンGUUまたはGUAであり得る。
【0045】
別法として、あるいは加えて、プロリンをコードするコドンCCCは、有益に、植物細胞における(特に、植物細胞の葉緑体における)発現に適合した核酸の産生において置換することができる。少なくとも1つのCCCコドンを置換して、本発明の方法または核酸配列に用いるのに適した第二の核酸配列を生じさせるのが好ましいであろう。例えば、そうでなければ、発現されるべきTGF−βをコードする野生型DNAに存在する全てのCCCコドンが置換されているのが好ましいであろう。例えば、ヒトTGF−β3をコードする野生型DNAの場合には、そうでなければ存在するであろうCCCコドンの全ての4つを置換するのが好ましいであろう。用いるべき好ましい代替コドンは、別のプロリンをコードするコドンCCUであり得る。
【0046】
さらに代替的に、または加えて、チロシンをコードするコドンであるUACは有利に置換され、植物細胞中での(および特に植物細胞の葉緑体中での)発現のために適合した核酸を生じ得る。少なくとも1個のUACコドンが置換され、本発明の方法または核酸配列における使用のために適切な第2の核酸配列を生じることが好ましくあり得る。例えば、発現されるTGF−βをコードする野生型DNA中に存在する少なくとも1個、2個、3個、または4個のUACコドンが置換されることが好ましくあり得る。例えば、ヒトTGF−β3をコードする野生型DNAの場合においては、そうでなければ存在する6個のUACコドンのうちの5個が置換されることが特に好ましくあり得る。使用される好ましい置換コドンは、チロシンをコードする代替のコドンであるUAUであり得る。
【0047】
上記の適合に対してなおさらに代替的にまたは加えて、植物細胞中での(および特に植物細胞の葉緑体中での)発現のために適合した核酸の産生の際に、アスパラギンをコードするコドンであるAACが置換されることが好ましくあり得る。少なくとも1つのAACコドンが置換され、本発明の方法または核酸配列における使用のために適切な第2の核酸配列を生じることが好ましくあり得る。例えば、発現されるTGF−βをコードする野生型DNA中に存在する少なくとも1個、2個、3個、または4個のAACコドンが置換されることが好ましくあり得る。例えば、ヒトTGF−β3をコードする野生型DNAの場合においては、そうでなければ存在する6個のAACコドンのうちの5個が置換されることが特に好ましくあり得る。使用される好ましい置換コドンは、アスパラギンをコードする代替のコドンであるAAUであり得る。
【0048】
植物細胞中での(および特に植物細胞の葉緑体中での)発現のために適合される核酸の産生の際に、上記の適合に対してさらに代替的にまたは加えて使用され得る別の適合は、アスパラギン酸をコードするコドンであるGACの置換である。少なくとも1個のGACコドンが置換され、本発明の方法または核酸配列における使用のために適切な第2の核酸配列を生じることが好ましくあり得る。例えば、発現されるTGF−βをコードする野生型DNA中に存在するすべてのGACコドンが置換されることが好ましくあり得る。例えば、ヒトTGF−β3をコードする野生型DNAの場合においては、そうでなければ存在する4個すべてのGACコドンが置換されることが特に好ましくあり得る。使用される好ましい置換コドンは、アスパラギン酸をコードする代替のコドンであるGAUであり得る。
【0049】
本開示の目的のために、野生型DNAは、本発明に従って発現またはコードされる、TGF−βをコードする天然に存在するDNAであると見なされるべきである。例えば、ヒトTGF−β1(その活性断片のアミノ酸配列が配列番号1に示される)の場合においては、野生型DNAは、このタンパク質をコードする天然に存在するヒトゲノムDNAである(その全長DNA配列は配列番号6に示される)。ヒトTGF−β2(その活性断片のアミノ酸配列が配列番号2に示される)の場合においては、野生型DNAは、このタンパク質をコードする天然に存在するヒトゲノムDNAである(その全長DNA配列は配列番号7に示される)。ヒトTGF−β3(その活性断片のアミノ酸配列が配列番号3に示される)の好ましい場合においては、野生型DNAは、このタンパク質をコードする天然に存在するヒトゲノムDNAである(例えば、配列番号4に示されるような活性断片をコードするDNA、または配列番号8に示される全長DNA配列)。
【0050】
TGF−β(この場合においては、TGF−β3の活性断片)をコードし、かつ植物細胞における、およびより特定的には葉緑体における発現のために適合される特に好ましい核酸配列の例は、配列番号5に示される。確かに、この核酸配列は非常に好ましいので、本発明のさらなる局面において、配列番号5に示される核酸配列を含む核酸配列が提供される。配列番号5に示される核酸配列は、本発明の方法における使用のために好ましい第2の核酸配列と、本発明の核酸における使用のためにもまた好ましい第2の核酸配列の両方を表す。
【0051】
本発明者らは、配列番号5に示される配列と少なくとも1.75%のコドン同一性を共有する核酸配列が、このような核酸配列がなお、発現されるTGF−βをコードしていることを条件として、本発明の方法および核酸において利用され得ると考える。より好ましくは、適切な核酸は、配列番号5と少なくとも22%のコドン同一性、さらにより好ましくは、少なくとも50%のコドン同一性、なおより好ましくは、少なくとも75%のコドン同一性、および最も好ましくは、少なくとも99.1%のコドン同一性を共有し得る。
【0052】
先の段落に記載した核酸配列、例えば、配列番号5の核酸配列(または特定の同一性の程度、例えば、少なくとも22%のコドン同一性を配列番号5と共有する配列)は、本発明の方法または核酸のいずれかまたはすべてに従う使用のための適切な「第2の核酸配列」を含み得ることが理解されよう。
【0053】
本発明者らは、上記の型の修飾が、植物細胞中で発現できるTGF−β(葉緑体中での発現を含む)の総量を増加させる上で非常に有効であることを見いだした。例えば、以下の実験結果の節においてさらに説明されるように、TGF−β3をコードする野生型DNAを含む核酸で形質転換された植物は、全タンパク質の約1%のTGF−β3という収率を生じ得る。対照的に、植物細胞中での発現のために適合した核酸配列、例えば、配列番号5の核酸配列の使用は、野生型配列を使用して生じるものよりも、10倍高いTGF−β3の収率を生じることが可能である(全タンパク質の約10%という、TGF−β3の収率を生じる)本発明者らは、この種の選択された第2の核酸配列、例えば、配列番号5の使用することにより、同じ第1および第3のアミノ酸配列が共通して使用される場合においてさえ、野生型配列と比較して、TGF−β収率を顕著に増加させることが可能であることを見いだした。
【0054】
TGF−β収率のこれらの増加は、本発明の方法および核酸を利用することなく他の方法で達成され得る場合に対して、顕著でありかつ驚くべき改善を表すことが認められる。本発明の方法および核酸を利用して産生されるTGF−βの量は、以前には不可能であった様式で、植物中におけるTGF−β(例えば、TGF−β3)の経済的に有利な産生を可能にする。
【0055】
本発明者らは、本発明の方法において選択的に有利に使用され得る多数の新規な技術および条件をさらに見いだした。これらは、本発明に従って発現されるTGF−βの回収、および/または活性なTGF−βを産生するためのこのようなTGF−βのフォールディングもしくは再フォールティングに関して顕著な利益を提供する。開発された新規な方法には、本発明に従う方法において発現される再フォールティングされたTGF−βの捕捉における使用のために適切な手順もまた含まれる。
【0056】
植物中で発現される組換えタンパク質は、典型的には、可溶性タンパク質として発現される。これは、一般的には、先行技術において記載された方法を使用して達成され得る比較的低いレベルのタンパク質発現に起因すると見なされている。産生した可溶性タンパク質は、生物学的に活性な型および生物学的に不活性な型の混合物を含む傾向があり、不活性型は全体の中でより大きな割合を占める。
【0057】
本発明の方法および核酸を使用して達成される高レベルの発現は、高収率の組換えTGF−βタンパク質を産生することが見いだされたが、これらのタンパク質の不溶性凝集物を生じることが見いだされ、生物学的活性を産生するように正確にフォールディングされた型では検出可能なタンパク質は発現されなかった。いかなる仮説によっても束縛されることは望まないが、本発明者らは、これらの凝集物が、植物細胞(および特に葉緑体)内部で確立された高濃度の組換えタンパク質に起因して生じ、TGF−βタンパク質の疎水性の結果として発現されると考えている。この様式でのTGF−βの不溶性凝集物の産生は、(そうでなければ夾雑物を構成し得る可溶性植物細胞成分から不溶性組換えタンパク質を分離することが容易であるという点で)有利であり、そしてこの不溶性型のTGF−βは、それ自体、有用な生成物を表す(これは、次には、先行技術の技法を使用して、その活性型に可溶化およびフォールティングされ得るからである)。しかし、改善された純度および収率で正確にフォールディングされたTGF−βの生物学的活性型を生じるために、本発明者らは、本発明の方法および核酸を使用して発現されるTGF−βの可溶化およびフォールディング/再フォールティングに特に適合した新規な技術を開発した。
【0058】
本発明者らは、本発明の方法または核酸を使用して発現されるTGF−βの精製における有利な工程には、(その中では、TGF−βが葉緑体中で発現している)葉緑体抽出物の溶解、ならびに得られた混液のTGF−βの溶解を補助するための均質化および超音波処理が含まれることを見いだした。溶解は、pH 8.0において、10mM HEPES、5mM EDTA、2重量/重量% Triton X−100、0.1M DTTを含む緩衝液を使用して達成され得る。
【0059】
本発明の方法または核酸を使用して発現されるTGF−βは、夾雑物、例えば、葉緑体または他の植物タンパク質を除去するために有利に「洗浄」され得る。適切な洗浄緩衝液は、pH 8.0における0.05M Trisベースおよび0.01M EDTAを含み得る。洗浄は、一連の遠心分離工程および再懸濁工程(好ましくは、洗浄緩衝液中での2回以上の遠心分離および再懸濁のサイクル)によって容易に実行され得る。遠心分離は、8000×g、30分間で実行され得る。
【0060】
次いで、このような洗浄後に得られるTGF−β産物は、好ましくは、組換えTGF−βを溶解するが、植物タンパク質または炭水化物(例えば、デンプンなど)を溶解しない溶媒を使用して可溶化され得る。本発明者らは、この機能を有する適切な緩衝液は、尿素を含み得、このような緩衝液の好ましい例は、pH 8.0における、0.05M Trisベース、0.1M DTT、6M 尿素を含むことを見いだした。このような可溶化は(好ましくは、溶解性を補助するために攪拌しながら)室温で達成することができ、可溶化溶液のpHを9.5周辺まで調整することによって補助され得る。組換えTGF−βを優先的に溶解可能であるが、植物細胞成分(例えば、植物タンパク質または炭水化物)を溶解しない溶媒のこの使用は、先行技術において示唆されておらず、そしてそれが付与する顕著な利点に起因して、本発明の方法において利用され得る好ましい工程を表す。
【0061】
本発明の方法または核酸を使用して発現されたTGF−βが(例えば、上記に概略される様式で)可溶化される際、次いでこれは、膜分離精製技術を使用して濃縮され得る。適切な技術は、5kDa TFF(接線流濾過)膜、およびpH 9.5において、0.05M Trisベース、0.01M DTT、3M 尿素を含む膜分離精製緩衝液を利用し得る。このような膜分離精製は、溶液を約15倍に濃縮するために使用され得る。
【0062】
本発明の方法の任意の実施形態に従って産生されるTGF−βは、活性なTGF−βが産生されるように、CHES(2−(シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸)またはその機能上の類似物の存在下でフォールティングが起こる技術を使用して、フォールティングまたは再フォールティングすることができる。この様式でのTGF−βのフォールティングまたは再フォールティングは特に有利であり、このさらなる工程を組み入れた方法は、本発明の好ましい実施形態を表す。好ましくは、CHESは、約100mMから1.0Mの濃度で、より好ましくは約0.7Mの濃度で使用され得る。本発明の方法または核酸を使用して発現されるTGF−βのフォールティングにおけるCHESの使用を含む任意の工程は、低分子量スルフヒドリル/ジスルフィド酸化還元系と組み合わせたCHES(またはその機能的アナログ)を利用し得る。本発明の方法において有利に使用され得るCHESを利用するフォールティングまたは再フォールティングの方法のさらなる詳細は、国際特許出願PCT/GB2007/000814に含まれており、この文書の内容は、特に、生物学的に活性な分子を産生するためにTGF−βをフォールティングするための方法に関連する限りにおいて、参照により本明細書に援用される。
【0063】
本発明の方法に従って発現されるTGF−βは、疎水性相互作用クロマトグラフィーによって捕捉され得る。例として、ブチル−セファロース4ファストフロー(Butyl−Sepharose 4 Fast Flow)分離媒体を、このような捕捉を実施するために使用することができる。TGF−β(好ましくは、上記の様式で活性型に再フォールディングされたもの)を含む溶液は、洗浄緩衝液および平衡化緩衝液で平衡化したブチル−セファロース4ファストフローカラムに加えられ得る。適切な平衡化緩衝液は、pH 3.3において、0.02M 酢酸ナトリウム、1M 硫酸アンモニウム、10%v/v酢酸を含み得る。カラムは、結合したTGF−βの溶出の前に、必要に応じて洗浄され得る。溶出は、適切な洗浄緩衝液、例えば、pH 3.3において、0.02M 酢酸ナトリウム、10%v/v酢酸、30%v/vエタノールを含むものを利用してもよい。
【0064】
TGF−βは、カチオン交換クロマトグラフィーによってさらに精製することができる。例として、SP−セファロース媒体が、TGF−β単量体および植物関連の不純物からTGF−β二量体をさらに精製するために使用され得る。カチオン交換クロマトグラフィー媒体へのTGF−β二量体の結合を確実にするために、捕捉精製工程からの溶離液(好ましくは、上記のブチル−セファロースの溶離液)の伝導度は低くされる必要があり得、そしてこれは、適切な緩衝液(例えば、pH 3.9〜4.1において、2.72g/L 酢酸ナトリウム三水和物、100mM/L 氷酢酸、300mL/Lエチルアルコールを含む緩衝液)中で溶離液を希釈することによって最も良好に達成される。次いで、調整済みの負荷物をSP−セファロースカラムに加え、適切な緩衝液で平衡化する。この緩衝液は、pH 3.9〜4.1において、2.72g/L 酢酸ナトリウム三水和物、100mM/L 氷酢酸、300mL/Lエチルアルコール、2.92g/L 塩化ナトリウムを含み得る。カラムは、結合したTGF−βの溶出の前に、必要に応じて洗浄することができる。カラムからのTGF−βの溶出は、移動相のpHを変化させること、または伝導度を上昇させることによって達成することができる。一例として、適切な溶出緩衝液は、pH 3.9〜4.1において、2.72g/L 酢酸ナトリウム三水和物、100mM/L 氷酢酸、300mL/Lエチルアルコール、29.22g/L 塩化ナトリウムからなる。TGF−β二量体を含むSPセファロース溶離物の画分は、純度に従ってプールされるべきである。残渣の塩はTGF−βタンパク質の凝集を引き起こし得るので、SP−セファロースの溶離物は、適切な最終製剤に緩衝液交換されるべきであり、緩衝液の1つの例は、pH 4.0±0.1おける、1.2mM/L 酢酸、200mL/L エチルアルコールを使用する(compromise)。
【0065】
上記に示した選択的工程は、個別にまたは本発明の方法において組み合わせて利用する際、植物からの組換えヒトタンパク質の精製のため、または一般的なTGF−βの精製のために示唆されてきた先行技術の技法を超えた顕著な利点を付与する。従って、当業者には、これらの任意工程の1つ以上(好ましくはすべて)が本発明の方法に有利に組み入れられ得ることが認識されよう。特に、組換えタンパク質の精製のためのこれらの新規な方法の使用は、塩の沈殿およびクロマトグラフィーの必要性を伴うことなく、高度に精製されたTGF−β、例えば、TGF−β3を産生することを可能にする(塩の沈殿およびクロマトグラフィーは、先行技術によって示唆されている技術であるが、残渣の塩の存在に起因して、この様式で精製されたタンパク質の望ましくない凝集をもたらす可能性がある)。
【0066】
当業者には、本発明の核酸が、任意の適切な経路を通して、(本発明の方法によって必要とされる)植物細胞に導入され得ることが容易に認識されよう。この様式での核酸の導入のために適切な広範な技術が当業者に公知であり、これには、弾道トランスフェクションが含まれるがこれに限定されない。適切な実験プロトコールは、実験結果の節にさらに記載されている
【0067】
本発明に従う核酸は、適切な発現カセットまたはベクターにさらに組込まれ得る。このような発現カセットまたはベクターの例は、タンパク質の植物発現の当業者に周知である。本発明に従うキメラ核酸を組込む発現カセットの適切な例は、実験結果の節に示される。
【0068】
本発明の(および本発明の方法における使用のために適切である)キメラ核酸は、キメラ核酸配列が首尾よく組込まれた植物細胞の同定において補助し得る生成物の発現のための核酸配列をさらに含むことが好ましくあり得る。この様式で使用され得る適切なさらなる核酸配列の例は当業者に明らかであり、選択のために使用され得る物質(例えば、抗生物質)に対する抵抗性を付与する生成物を生じる核酸、または選択のための基礎として使用され得る検出可能な生成物(例えば、色素生成酵素生成物)を生じるマーカーが含まれる。
【0069】
さらなる局面において、本発明は、本発明の第2の局面(および本明細書に記載されるその任意の実施形態)に従って、核酸で形質転換された植物を提供する。
【0070】
さらなる局面において、本発明は、本発明の第2の局面(および本明細書に記載されるその任意の実施形態)に従って、核酸を含む植物種子を提供する。
【0071】
本明細書の他の箇所に記載される方法および核酸に加えて、本発明はまた、本発明に従う方法によって発現されるTGF−βを提供する。当業者は、このようなTGF−βの植物起源を認識し得る多数の独特な特徴が存在することを認識している。例えば、TGF−βプロタンパク質の場合においては、動物細胞によって発現されるTGF−β、または植物細胞の核形質転換の結果として発現されるTGF−βにおいて見いだされるグリコシル化は、葉緑体中で発現されるプロタンパク質からは欠失される。これを、本発明に従って産生されるタンパク質またはプロタンパク質の同定において使用し得る。
【0072】
当業者は、本明細書中に開示された方法および核酸が、TGF−βアイソフォームそれら自体以外のTGF−βスーパーファミリーメンバーの発現における使用のために、特に、第2の核酸配列の適合によって、適合され得ることを認めるであろう。従って、本発明のさらなる局面は、第2の核酸配列が一つのTGF−β以外のTGF−βスーパーファミリーメンバーをコードする、方法および核酸を提供する。
【実施例】
【0073】
実験結果
1.導入
以下、植物の葉緑素ゲノムの遺伝子修飾を通した、タバコ(ニコチアナ・タバクム(Nicotiana tabacum)植物からの形質転換増殖因子ベータ3(TGF−β3)タンパク質の発現を可能にする実験プロトコールを示す。
形質転換(プラスチド修飾ゲノム)植物を生産するために必要とされる段階の概略が図1に示される。
【0074】
2.結果
2.1 発現カセット構築物の設計
多数の発現カセットが、プラスチド特異的高発現調節領域の制御下でDNA翻訳領域を含むように設計された(図2を参照)。
【0075】
様々な種から得られる調節領域が、しばしば遺伝子発現のために使用される。これらの要素は、非野生の種で正常な機能を可能にするのに十分に類似するが、しかしプラストームの非標的部分への相同な組換えを避けるのに十分なだけ塩基配列において異なる。
【0076】
図2で示される発現カセットは、Brassica napus 16SrrnプロモーターおよびB.napus psbC3’終結領域を含んだ。これらは両方とも、プラスチドに対して特異性を有する。T7バクテリオファージ遺伝子10から得られるRBSも、この発現カセットに組み込まれた。TGF−β3活性領域翻訳領域が、このカセットに組み込まれた。N.tabacum葉緑体における最適な発現のために設計された合成TGF−β3活性領域遺伝子(すなわち、本発明による第2の核酸配列)も、この発現カセットで合成され、組み込まれた。
【0077】
16Srrnプロモーターは、それが強力な遺伝子発現を生じることができるので選択された。バクテリオファージT7遺伝子10リーダー配列は、高度の翻訳のために細菌中で集約的に使用され、プラスチド発現で首尾よく使用されてもきたリボソーム結合部位である。
【0078】
全ての構築物は、プラスチドの対して特異的な調節領域の制御下でマーカー遺伝子アミノグリコシドアデニルトランスフェラーゼ(aadA)も含んだ。aadA遺伝子は、抗生物質スペクチノマイシンおよびストレプトマイシンに対する耐性を付与する。
【0079】
2.2 合成TGF−β3活性領域遺伝子の構築
N.tabacum葉緑体遺伝子発現のために最適化された合成TGF−β3活性領域遺伝子が設計された。段階的方法で一緒に連結した一本鎖オリゴヌクレオチドからその遺伝子を合成した(図3)。
【0080】
第1のプライマー対は、内部のヘヤピン形成またはプライマー完全性のいずれかによりプライマー二量体を形成できず、それで、より大型のプライマーの対が、構築が迅速に継続できるために高コストで必要とされた。段階4で可視化された2つの185bpプライマー「オクトマー」の連結時点でで、最終の350bp産物は、達成できなかった。これが、総DNA鎖長に比較して非常に短い3’一本鎖重複の結果であると思われた。すでに段階2で作成された別のプライマー「二量体」を、180bp構築物に連結して、大きな重複を伴う225bpDNA構築物を作成した。この方法は、その問題を首尾よく克服し、最終の350bpの合成TGF−β3遺伝子がPCRによって増幅された。
【0081】
合成配列は、野生型のDNA配列と70%の塩基同一性を示し、そしてGC含有量が、最適化配列で56%から33%までに減少された。合成TGF−β3活性領域および野生のTGF−β3活性領域のDNA翻訳配列は、図4に示される。合成および野生型の配列のDNA配置は、図5で示される。合成および野生型の配列についての翻訳アミノ酸配列は同一であり、図6に示される。
【0082】
2.3 プラスチド標的ベクターの構築
上に明記された4つの発現カセットを全て、照射のために作成された葉緑素標的プラスミドにクローン化した(図7Aを参照)。葉緑素標的ベクターは、標的構築物がプラスチドでの相同な複製によって組み込まれることを可能にするタバコプラスチドゲノム(52377−59319、59320−63864)と相同なDNAの領域を含有する。図7Bの矢印は、タバコプラスチドゲノム(プラストーム)でのDNA組込の位置を際立たせる。
【0083】
標的遺伝子構築物は、導入遺伝子構築物の安定性を促進する選択因子発現カセットと共に、ベクター中に存在する。aadA(アミノグリコシドアデニントランスフェラーゼ)は、スペクチノマイシンおよびストレプトマイシン抗体を解毒し、それは、本発明による使用のための好ましい選択因子である。
【0084】
プラスチドゲノムに相同なDNAの2つの領域は、2つの発現カセットに隣接する。これらの領域は、相同な組換えをプラスチドゲノムの特定領域に向けさせる。隣接領域は、「左標的領域」および「右標的領域」(LTRおよびRTR)として知られる。
【0085】
使用される隣接領域は、極度に活性なrbcL遺伝子の下流にトランスジェニック構築物を挿入し、それは、光合成に必須であるルビスコ(rubsico)の大型サブユニットを生成する。
【0086】
2.4 大腸菌での導入遺伝子カセットの発現
植物のプラスチド原核生物起源により、葉緑体発現カセットは、Escherichia coliのような細菌でしばしば機能する。TGF−β3タンパク質発現は、大腸菌で各導入遺伝子構築物について同定された(データは示されず)。SDS−PAGEにより大腸菌から得られる総タンパク質サンプルを分離し、そしてTGF−β3タンパク質に特異的な抗体を使用して、ウエスタンブロット分析を行った。
【0087】
発現要素は細菌とプラスチドとの両方で作用するので、これらの研究は、発現カセットが機能することを調べる上で非常に有用である。
【0088】
ウエスタンブロットを行い、そしてTGF−β3活性領域抗体を、発現レベルを調べるために使用した。
【0089】
2.5 N.tabacum植物の形質転換
粒子照射、続いて正の抗体選択でクローンを単離することによって、ウィスコンシン38(w38)タバコ葉を形質転換させた。抗生物質を含むMS培地上で苗条を育成し、その中で根付かせ、その後、植物を最終的に土壌に移した。
【0090】
2.6 植物のDNA特徴付け
推定形質転換体である植物は、特異的TGF−β3遺伝子と(抗生物質選択のための)aadAマーカー遺伝子の組込を確認するために、PCRおよびサザンブロット分析によってそれらのDNAを特徴付けられた。サザンブロット分析は、導入遺伝子カセットの正しい組込を確認し、植物におけるホモプラスミーも確認した。それは、安定な形質転換を表す。
【0091】
2.7 タンパク質特徴付け
同質細胞質の植物から得られる葉組織を収穫し、SDS−PAGEおよびウエスタンブロット分析により分析した。TGF−β3活性領域タンパク質の発現は、「16Srrn−T7−TGF−β3活性領域−psbC」および「16Srrn−T7−TGF−β3合成的活性領域−psbC」構築物からSDS−PAGEにより同定した。そして、タンパク質発現は、それぞれ総植物タンパク質の約1%および約10%として定量された(図8を参照)。スキャンしたゲル上で、バイオラッドQuantity Oneソフトウエア分析により、デジタルで定量を行った。この結果は、TGF−βをコードする核酸配列は植物による発現に適合する本発明の方法および核酸を用いて達成されうる大幅な収量の増加を示す。
TGF−β3抗体のウエスタンブロット分析は、目的のタンパク質バンドがTGF−β3活性領域タンパク質であると確認し(図9を参照)、TGF−β3の基準の定量は、上に示されたタンパク質発現レベルが正しいことを確認した。
【0092】
「16Srrn−T7−TGF−β3合成的活性領域−psbC」植物の葉から得られるタンパク質は、溶解性タンパク質調製物か、または不溶性タンパク質調製物のいずれかとして作成され、そしてSDS−PAGEおよびウエスタンブロットにより分析された(図10を参照)。結果は、合成TGF−β3活性領域が不溶性タンパク質産物として発現されることを示した。
【0093】
3.方法
3.1 合成的TGF−β3活性領域遺伝子の構築
Shimadaら(1991年)によって、光合成タンパク質をコードすることが知られている29個の葉緑体遺伝子全てから得られる翻訳領域が分析され、そしてコドン使用表として作表された。コドン使用表は、Vector NTI部位ソフトウエア(Informax社)に取り入れられ、野生型のTGF−β3活性領域アミノ酸配列が、DNA翻訳領域配列に戻り翻訳された。多数の単一コドン型が存在する場合、第2および第3の最も頻繁に使用されるコドンが、tRNA代謝負荷を減じ、および/または反復配列を減じるために含められた。結果物のDNA配列は、N.tabacum葉緑体での発現のために最適な合成TGF−β3活性領域を表した。
【0094】
350bpの合成TGF−β3活性領域DNA翻訳領域を、段階的構築方法を使用して、一本鎖オリゴヌクレオチドから組み立てた(図3Aを参照)。オリゴヌクレオチド重複、クレノー酵素指向性DNA塩基充填、ベント−ポリメラーゼ指向性一本鎖(ss)DNA産生、および二本鎖(ds)DNA PCR増幅技術が、合成構築物の組立を促進するために使用された。図3Bは、合成遺伝子の構築進行を表すアガロースゲルを示す。約35、60、100、180、225および350bpのdsDNA分子が、ゲル上で見られ、それは、遺伝子断片が段階的に組み立てられることを表す。最終の350bp構築物は、A’尾部であり、pGEM−Tベクター(インビトロゲン)にクローン化され、そして配列完全性を確認するために配列決定された。
【0095】
3.2 タバコのプラスチド形質転換
3.2.1 葉の調製
ウィスコンシン38(W38)タバコを、ショ糖を有するMS培地上の種から約5週間育成した。この段階で、およそ4〜6の中程度の寸法の葉を有する植物が育成容器に存在した。これらの葉を葉組織の基で切断し、そしてRMOPプレートの中心に背軸側を上にして乗せた。プレートを覆い、密封し、DNA照射のために必要とされるまで育成キャビネットに入れた。
【0096】
3.2.2 DNA被覆マイクロキャリアーの調製
金粒子(直径1.0μm、バイオラッド)を、ボルテックスによってエタノールで洗浄した。これらのマイクロキャリアーを遠心分離し、そして上清を除去した後、s.d.H2Oを添加し、そして短時間再度ボルテックスで撹拌した。この金溶液のアリコート量を、1.5ml遠心分離管に移した。標的プラスミドDNAをマイクロキャリアー懸濁アリコートに添加し、短時間ボルテックスで撹拌した。2.5M CaCl2を、混合しながら金調製物に即時に添加し、次いで直ぐに、0.1Mスペルミジンを添加した。マイクロキャリアー調製物をボルテックスで撹拌し、遠心分離した。上清を除去し、マイクロキャリアーを、ボルテックス撹拌によりEtOHで洗浄した。マイクロキャリアーを、再度遠心分離し、上清を除去した。マイクロキャリアーを、短時間ボルテックス撹拌によりEtOHで再懸濁した。無菌マイクロキャリアーディスクを、金属保持プレートに乗せ、そしてアリコート量のマイクロキャリアー調製物を、各マイクロキャリアーの中心にピペットで入れた。マイクロキャリアー溶液を蒸散させて、マイクロキャリアー表面上の小型の円形沈殿物を残した。この時点で、マイクロキャリアーは、照射実験の準備ができた。
【0097】
3.2.3 粒子照射
層流フード中のバイオラッド遺伝子銃装置を使用して、タバコ葉の粒子照射を行った。装置の準備、真空の作成および気体放出段階は、製造業者の使用説明に従って行われた。葉組織を、その区画の下方区分に入れ、そしてプレートの蓋を取り除いた。DNAベクターを含むマイクロキャリアーは、植物組織中に加速される。1100psi破断ディスクを使用し、10cmの、停止スクリーンと植物組織との間の噴出距離を使用した。各粒子照射の後、タバコ葉を有するプレートを再度覆い、密封し、そして12時間の明/暗サイクルで約48時間、23℃で育成キャビネト中でインキュベートした。光強度は、約150μEiであった。
【0098】
3.2.4 照射後の葉選択
照射の48時間後、葉組織を、約2mm2片に切断し、選択培地に入れた。この選択培地は、500μg/mlスペクチノマイシンを有するRMOPか、または500μg/mlスペクチノマイシンおよび250μg/mlストレプトマイシンを有するRMOPのいずれかであった。組織プレートを、12時間の明/暗サイクルで、約150μEiの光強度を用いて、23℃でインキュベートした。形質転換した細胞は、4〜8週の間に植物苗条として再生し、そして250μg/mlストレプトマイシンを加えたMS培地を有する育成容器に移して、育成および根付かせた。推定形質転換体を、PCRを使用して導入遺伝子についてスクリーニングし、その後、サザンブロット分析によって特徴付けた。
【0099】
3.3 DNA特徴付け
最初に植物葉を収穫し、そして液体窒素中で破砕することによって、DNA分析を行った。エッペンドルフ「植物DNA prep」キットを使用して、DNAを作成した。制限酵素消化によってDNAサンプルを切断し、そしてゲル電気泳動によりサイズ分取した。DNAをナイロン膜に移し、その後32P−dCTPで標識されたDNAプローブでハイブリッド形成して、TGF−β3遺伝子、マーカー遺伝子および野生型葉緑体遺伝子を同定した。プローブ・ハイブリダイゼーションは、統合された遺伝子を同定し、そして制限消化パターンが、確認されるべきDNA組込地図を可能にした。
【0100】
3.4 タンパク質特徴付け
3.4.1 SDS−PAGE分析
総細胞タンパク質調製物のために、葉組織を液体窒素中で粉末に破砕し、1:5比(w/v)で1×サンプル緩衝液に添加した。サンプルを、5分間沸騰水浴中に入れ、その後遠心分離した。その後、上清を収集し、SDS−PAGE分析のために使用した。可溶性細胞タンパク質調製のために、破砕した凍結葉組織をボルテックスで撹拌し、抽出緩衝液中でインキュベートし、その後遠心分離して固形分を除去した。上清を単離し、そのタンパク質含有量を定量した。可溶性タンパク質サンプルを、2×サンプル緩衝液に添加し、5分間、沸騰水浴中に入れた。サンプルを遠心分離し、そして上清を、SDS−PAGE分析のために収集した。不溶性タンパク質調製のために、可溶性タンパク質抽出物から残ったペレットを再懸濁し、抽出緩衝液で3回洗浄し、各洗浄後遠心分離した。その後、残りのペレットを、1×サンプル緩衝液で再懸濁し、5分間沸騰水浴に入れ、その後遠心分離し、上清を、SDS−PAGE分析のために収集した。10〜20%トリス−HClアクリルアミドゲル電気泳動を使用して、タンパク質をサイズによって分取し、タンパク質バンドは、クマシーブルー染色によって可視化させた。
【0101】
3.4.2 ウエスタンブロット分析
タンパク質サンプルを、SDS−PAGEゲル上でサイズにより分取し、その後、ナイロン膜に移した。膜を封鎖し、TGF−β3抗体でプローブ探査し、その後洗浄した。TGF−β3タンパク質を、アルカリ性ホスファターゼ結合抗体のBCIP染色により可視化した。
【0102】
実験結果II
4 発現TGF−β3の回収
上記の技術を用いて植物クロロプラストに発現させたTGF−β3を、以下で初めて述べる技術を用いて回収した。本技術によって、先行技術にて記述された回収または精製技術より収率の高いTGF−β、およびより純度の高いTGF−βが産生される。
【0103】
クロロプラスト抽出液を、(pH 8.0において、10mM HEPES、5mM EDTA、2%重量/重量 Triton X−100、0.1M DTTからなる)溶解緩衝液中で1:1希釈した。この混合液を均質化し、超音波処理して溶解を補助した。ついで得られた溶液を、8000xgにて30分間遠心分離した。
【0104】
上記遠心分離によって産生されたペレットを、(pH 8.0において、0.05M トリス塩基、0.01M EDTAからなる)洗浄緩衝液を用いて、元の容量まで再懸濁し、8000xgにて30分間、さらに1回遠心分離した。
【0105】
この回の遠心によって産生されたペレットを洗浄し、ついで(pH 8.0において、0.05M トリス塩基、0.1M DTT、6M尿素からなる)可溶化緩衝液中で10倍希釈まで再懸濁させた(すなわち、9容量の可溶化緩衝液に、1容量のペレット物質を加えた)。得られた溶液を60分間、室温にて攪拌して、再懸濁した溶液を可溶化した。攪拌60分後、可溶化溶液のpHを9.5に調節し、攪拌を室温にてさらに60分間続けた。
【0106】
ついでpHが調節された溶液を、8000xgにて30分間遠心分離し、その間5kDa TFF(接線流ろ過)膜を用いたろ過の工程を用いて、希釈液をろ過緩衝液(pH9.5における、0.05M トリス塩基、0.01M DTT、3M尿素)に交換し、そのようにして産生された溶液を15倍まで濃縮した。次にこの濃縮した溶液(濃縮水)を下記の条件を用いて、再折りたたみにかけた。
【0107】
5 回収TGF−β3の解析
再折りたたみされるTGF−β3の溶液中での存在を、Biorad RC/DCアッセイを用いて確認した。この結果を図11に示す。図11は、タンパク質をクマシーブルーにて標識化した、12% Bis−Tris還元ゲルを用いて得られた結果を示す。レーン(左から右へ1〜10)に以下のように試料を添加した。
レーン1=マーク12標準
レーン2=TGF−β標準
レーン3=溶解物質
レーン4=溶解物質上清
レーン5=洗浄上清
レーン6=可溶化上清
レーン7=可溶化上清
レーン8=可溶化上清
レーン9=ブランク
レーン10=可溶化上清
【0108】
これらの結果によって、本発明の方法を用いて発現させたTGF−β3が、溶解クロロプラスト材料から得られうること、および上記で概説した回収レジームを用いて、本材料を、再折りたたみの前に可溶性上清中に濃縮しうることが確認される。
【0109】
6 発現TGF−β3の再折りたたみ
上記物質を、(すべてpH 9.5において、0.7M CHES、1M NaCl、0.002M還元グルタチオン、0.0004M酸化グルタチオン、0.25mg/mLの本発明にて発現したTGF−β3モノマーからなる)再折りたたみ緩衝液中に希釈した。次にこの再折りたたみ混合液を10℃にて3日間、攪拌しながら維持し、再折りたたみを発生させた。2−(シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸(CHES)の存在下で実施した、この再折りたたみ手順が、特に高収率の正しく折りたたまれたTGF−β3を産生することを本発明者らは発見した。したがって、CHESの存在下で、本発明にしたがって発現させたTGF−βの折りたたみ(または再折りたたみ)が、本発明のとりわけ有用で、有利な実施形態を表している。
【0110】
7 本発明にしたがって発現させた再折りたたみTGF−β3の捕獲
上記のように産生した再折りたたみTGF−β3を、5kDaのMWCOを含む膜で適合した調整済みUF系にて5倍濃縮した。再折りたたみ濃縮液のpHを、氷酢酸を用いて、pH 2.5から2.8まで、段階的に調節した。酸性化した濃縮液をついで、希釈緩衝液(0.02M酢酸ナトリウム、2M硫酸アンモニウム、1M水酸化アルギニン、8.33%(w/w)酢酸)を用いて、1:1の比で希釈し、0.22μmフィルターを介してろ過した。この「調整添加」を、疎水性相互作用クロマトグラフィーによって、再折りたたみTFG−β3を捕獲するために、ブチル−セファロース4・ファースト・フロー分離培地に加えた。ブチル−セファロース4・ファースト・フローカラムを、(pH 3.3において、0.02M 酢酸ナトリウム、1M硫酸アンモニウム、容量酢酸に対して10%容量からなる)洗浄緩衝液/平衡化緩衝液で平衡化した。カラムを、結合したTGF−β3の段階溶出の前に、4カラム容量(CV)の本緩衝化緩衝液で洗浄した。段階溶出を、(pH 3.3における、0.02M酢酸ナトリウム、容量酢酸に対して10%容量、容量エタノールに対して30%容量からなる)溶出緩衝液を用いて実施し、本様式で産生されたTGF−β3溶出液をプールした。
【0111】
プールした溶出液中に産生された精製TGF−β3の分析を、図12に示しており、本発明の方法を用いて植物内に発現したTGF−β3を、本明細書で記述された方法を用いて、再折りたたみTGF−β3を産生するために精製しうることを表している。当然のことながら、これらの方法は、TGF−β3だけではなく、生物学的に活性なTGF−βの回収、再折りたたみおよび捕獲においても利用され得る。上記方法を用いて産生された生物学的に活性なTGF−β3の精製を、以下の手順を用いて代替で、または追加的に実施することができる。
【0112】
8 本発明にしたがって発現したTGF−β3の精製
代替的精製手順において、ブチル−セファロース捕獲精製段階からの溶出液を、4.0(±0.1)にpH調節し、pH 3.9〜4.1において、2.72g/L酢酸ナトリウム三水和物、100mL/L氷酢酸および300mL/L エチルアルコール、を含む緩衝液で、伝導率が7.0mS/cm未満という所望の規格を満たすまで希釈した。次に、調整されたブチル溶出液を、0.22μmフィルターを通してろ過し、次いで、pH 3.9〜4.1おいて、2.72g/L酢酸ナトリウム三水和物、100mL/L氷酢酸、300mL/Lエチルアルコールおよび2.92g/L塩化ナトリウムからなる、洗浄緩衝液および平衡化緩衝液で平衡化したSP−セファロースカラム上に添加した。次いでカラムを、3カラム容量の洗浄緩衝液と平衡化緩衝液で洗浄した。直線勾配0%〜50%の溶出緩衝液(pH 3.9〜4.1において、2.72g/L酢酸ナトリウム三水和物、100mL/L氷酢酸、300mL/Lエチルアルコールおよび29.92g/L塩化ナトリウムからなる)を、15カラム容量にわたってカラムに適用した。ついでカラムを、50%〜100%溶出緩衝液の段階勾配で、続いて2〜3カラム容量の1M塩化ナトリウムで洗浄した。TGF−β3ダイマーを含む、SPセファロース溶出液の画分を、RP−HPLCによって、純度に従ってプールした。プールしたSP−セファロース溶出液を、前処理済みUF/DFシステム(5kDaのNWCO)を用いて、(A278nmによって)12mg/mLのTGF−β3濃度まで濃縮した。ついで、濃縮TFG−β3溶液を、6容量にわたって、構築緩衝液(pH4.0±0.1において、1.2mL/L酢酸、200mL/Lエチルアルコール)へ緩衝液交換した。ろ過TGF−β3溶液をついで、構築緩衝液にて、10±2mg/mL(A278nmによって)のTGF−β3濃度に希釈した。
【0113】
配列情報
TGF−β1の活性断片のアミノ酸配列(配列番号1)
TGF−β2の活性断片のアミノ酸配列(配列番号2)
TGF−β3の活性断片のアミノ酸配列(配列番号3)
TGF−β3の活性断片をコードする野生型DNA配列(配列番号4)
TGF−β3の活性断片をコードする本発明の第二核酸配列(配列番号5)
【0114】
全長TGF−ベータ1をコードするDNA(配列番号6)、シグナルペプチド(イタリック体で示す)、プロペプチド(太字で示す)、ならびに活性断片(通常の文字で示す)を示している。
【0115】
全長TGF−ベータ2をコードするDNA(配列番号7)、シグナルペプチド(イタリック体で示す)、プロペプチド(太字で示す)、ならびに活性断片(通常の文字で示す)を示している。
【0116】
全長TGF−ベータ3をコードするDNA(配列番号8)、シグナルペプチド(イタリック体で示す)、プロペプチド(太字で示す)、ならびに活性断片(通常の文字で示す)を示している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスフォーミング成長因子−ベータ(TGF−β)の発現に関する。本発明は、植物におけるTGF−βの発現に関する。特に、本発明は、植物葉緑体におけるTGF−βの発現に関する。TGF−β3は、本発明による発現の好ましいTGF−βである。本発明は、植物におけるTGF−βの発現に用いるのに適したキメラ核酸配列、ならびにそのような方法によって産生されるTGF−β、およびそのようなTGF−βの使用も提供する。
【背景技術】
【0002】
TGF−βは多様な生物学的活性を有するサイトカインのファミリーである。TGF−βファミリーの5つのメンバーが今日までに同定されている。すなわち、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、およびTGF−β5のイソ型である。これらのTGF−βは、共通のシステインノットモチーフ、および共通のシグナル変換経路のような構造的類似性を共有する。
【0003】
TGF−βは、多くの異なる治療的状況で有用性がある生物学的活性を有する。その結果、TGF−βファミリーメンバーの医薬適用において多大な関心が寄せられている。
【0004】
今日まで、最大の医薬的関心がTGF−β1、TGF−β2、およびTGF−β3に示されてきた。全てヒトで見いだされているこれらのイソ型は、創傷治癒応答の調節において非常に重要な役割を担っていることが知られている。
【0005】
TGF−β1は、強皮症、脈管形成障害、腎臓疾患、骨粗鬆症、骨疾患、糸球体腎炎および腎臓疾患の予防および/または治療において使用される。
【0006】
TGF−β2は、神経膠種、非小細胞肺癌、膵臓腫瘍、固体腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、加齢性黄斑変性症、目の負傷、骨粗鬆症、網膜障害、潰瘍、癌腫、口炎症および強皮症の治療で用いることができる。
【0007】
TGF−β3は、線維性障害、強皮症、脈管形成障害、再狭窄、癒着、子宮内膜症、虚血性疾患、骨および軟骨誘導、体外受精、口内粘膜炎、腎臓疾患の治療、瘢痕化の予防、低下または抑制、末梢および中枢神経系におけるニューロン再結合の増強、(LASIKまたはPRK外科的処置のような)目の外科的処置の合併症の予防、低下または抑制に用いることができる。
【0008】
TGF−βの産生、特に治療的使用のための現在の方法は、培養された動物細胞、または適切にトランスフェクトされた細菌の(それらの活性またはプロタンパク質形態のいずれかでの)培養による、これらのタンパク質の発現に依拠する。そのような方法はTGF−βの産生で効果的であるが、それらは比較的低い収率である傾向があり、そのようなタンパク質の調製に関するコストは高い。
【0009】
上記を考慮して、これらの不利の影響を受けないTGF−β産生のための新しい方法を開発するかなりはっきりとした要望が存在することが認識されよう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明のある実施形態の目的は、先行技術の不利の少なくともいくつかを克服し、または除去することにある。本発明のある実施形態の目的は、先行技術の方法よりも低いコストにてTGF−βの製造で用いることができる方法および/または手段を提供することにある。本発明のある実施形態の目的は、先行技術の方法を用いて製造し得るよりも大量のTGF−βの製造に用いることができる方法および/または手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第一の態様によると、植物においてTGF−βを発現させる方法が提供され、該方法は、
(a)植物細胞に、
(1)植物細胞における転写および/または翻訳を調節することができる第一の核酸配列、
(2)TGF−βをコードし、かつ該植物細胞における発現に適合した、第二の核酸配列、ならびに
(3)該植物細胞において機能する、終止領域をコードする第三の核酸配列、
を含むキメラ核酸配列を導入し、次いで、
(b)該植物細胞を成長させて、該TGF−βを産生する、
ことを含む。
【0012】
本発明の第二の態様において、
(1)植物細胞における転写および/または翻訳を調節することができる第一の核酸配列、
(2)TGF−βをコードし、かつ植物細胞における発現に適合した、第二の核酸配列、ならびに
(3)植物細胞において機能する、終止領域をコードする核酸配列、
を含むキメラ核酸配列が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法および核酸は、植物細胞の葉緑体におけるTGF−βの発現での使用に特に適している。特に、キメラ核酸は、葉緑体ゲノムの形質転換に用いられるのに適したものであり得る。適切なキメラ核酸は植物葉緑体において発現させるのに適切で有り得、好ましくは、この様式において発現させるのに適合させることができる。核酸(キメラ核酸全体、または該キメラ核酸をなす第一、第二、第三の核酸のいずれか)を植物細胞の葉緑体における発現に適合させることができる好ましい手段は、本明細書全体にわたって記載される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明は、ここで、以下の実験結果および付随する図1〜12を参照してさらに説明される。
【図1】本発明に従う方法を実施するためにタバコ葉緑体形質転換に含まれる工程を概略的に示す。1において、標的TGF−β遺伝子のcDNAが単離されかつ大腸菌特異的ベクターにクローニングされ、2において、標的cDNAは発現カセットにクローニングされ、3において、完全な発現カセットが葉緑体標的化プラスミドに移入され、4において、プラスミドストックは精製され、かつ葉組織の粒子ボンバードメントのために使用され、5において、植物は、抗生物質選択条件下で葉組織から再生され、そして6において、葉組織からの3サイクルの再生が同種形成植物を生じる。
【図2】本発明に従う使用のために適切であるTGF−β3発現構築物を概略的に図示する。
【図3】本発明における使用のために核酸を産生するための合成遺伝子構築を図示する。この図の左側において、核酸断片は、段階的な様式で合わされて合成TGF−β3遺伝子を産生する。図の右側は、左側のパネルに示した工程によって生じた異なる生成物のサイズを可視化するDNAゲル電気泳動を示す。
【図4】合成(上の配列)および野生型(下の配列)TGF−β3活性領域からのDNAのコード配列を比較する。
【図5】図4に示した合成DNA配列および野生型DNA配列のアラインメントを示す。
【図6】図4および5に示した合成DNA配列および野生型DNA配列によってコードされるTGF−β3のアミノ酸配列のアラインメントを示す。
【図7】本発明における使用のために適切である葉緑体標的化プラスミドを概略的に図示する。「LTR」は左側標的化領域を示し、「RTR」は右側標的化領域を示す。「aadA」は使用され得る抗生物質耐性マーカーであるアミノグリコシドアデニルトランスフェラーゼを示す。
【図8】タバコ葉調製物中で産生されたTGF−βの検出を図示する。この図は、タンパク質がクマシーブルーを使用して染色されたSDS−PAGEゲルを示す。収率は、野生型タバコ植物(ゲルのレーン1)、16Srrn−T7−TGF−β3活性領域−psbCタバコ植物(すなわち、TGF−βをコードする核酸の配列が植物細胞における発現のために適合されていない植物であり、ゲルのレーン2に結果が示される)、および16Srrn−T7−TGF−β3合成活性領域−psbCタバコ植物(TGF−βをコードする核酸の配列が植物細胞における発現のために適合されており、レーン3に結果が示される)に由来する全タンパク質調製物の間で比較される。結果の分析は、この例において、TGF−β3が、野生型の適合されていない配列を含む植物中の全タンパク質の約1%を占め、および合成の適合した配列を含む植物中の全タンパク質の約10%を占めることを示す。
【図9】本図もまた、タバコ葉調製物中で産生されたTGF−βの検出を図示するが、この場合においては、図は、TGF−β3が抗TGF−β3抗体を使用して標識されているウエスタンブロット(イムノブロット)を示す。レーン1および2は、16Srrn−T7−TGF−β3活性領域−psbCタバコ植物(レーン1に示す)および16Srrn−T7−TGF−β3合成活性領域−psbCタバコ植物(レーン2に示す)に由来する全タンパク質調製物の収率を比較する。これらは、レーン3、4、および5(それぞれ、1.0μg、0.05μg、および0.25μg)における、TGF−β3「標準」と比較される。結果の分析は、この例において、合成適合した配列を含む植物からの20μgタンパク質サンプルが約2μg(すなわち、全タンパク質含量の約10%)のTGF−β3を含んでいたことを示す。
【図10】実験結果において記載される方法によって発現されたTGF−β3が不溶性タンパク質の型を有することを図示する。図の左側は、タンパク質がクマシーブルーを使用して染色されたSDS−PAGEゲルを示し、それに対して、右側は、TGF−β3が抗TGF−β3抗体を使用して標識されているウエスタンブロットを示す。両方の場合において、レーン1および2はTGF−β3「標準」であり(それぞれ、1.0mgおよび0.1mg)、それに対して、レーン3は植物16Srrn−T7−TGF−β3合成活性領域−psbCタバコ植物から収集した可溶性タンパク質、レーン4は16Srrn−T7−TGF−β3合成活性領域−psbCタバコ植物から収集した不溶性タンパク質を示す。
【図11】植物細胞における発現のために適合した核酸を含む植物によって発現された物質の回収を研究するために、Biorad RC/DCアッセイを使用して得られた結果を示す。
【図12】ブチル−セファロース捕捉後の溶出工程からのTGF−β3の収率を図示するブチルセファロースクロマトグラムを示す。
【0015】
本開示において利用される特定のアミノ酸配列および核酸配列は、実験結果の後に続く配列情報の節においてもまた示される。上述の通り、関連配列は図面の間にもまた示される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
葉緑体におけるタンパク質の発現および、特に、葉緑体形質転換は、植物細胞の他の箇所における発現に勝る多くの利点を提供する。葉緑体において発現された外因性タンパク質の区画化は、それらが発現される細胞に対するその潜在的毒性を低下させる。葉緑体ゲノムは高いコピー数で存在し、従って、高い発現レベルを達成するのに用いることができる。相同組換えは目的の核酸の正確な挿入、およびそれらの産物の継続した安定な発現を可能とする。そのような発現は、広い範囲の植物で観察することができる。最後に、多くの作物における母性遺伝は、花粉における導入遺伝子の望ましくない伝達の危険性がかなり低下することを意味する。
【0017】
本発明の第一および第二の態様において言及するタイプの「第一の核酸配列」は、(他の箇所で定義されるような)第二の核酸配列の植物細胞における転写および/または翻訳を調節することができるものである。第二の核酸配列の翻訳を調節することができる本発明による第一の核酸配列は、好ましくは、プロモーター部位を含む。本発明に従って第一の核酸配列に組み込むことができる適当なプロモーター部位の詳細は、本明細書の他の箇所で考慮される。第二の核酸配列の転写を調節することができる本発明による第一の核酸配列は、好ましくは、リボソーム結合部位(RBS)を含む。本発明に従って第一の核酸配列に組み込むことができる適当なRBSの詳細は、本明細書中の他の箇所において考慮される。一般に、本発明による第一の核酸配列は、第二の核酸配列の転写および翻訳双方を調節することができるものである。従って、好ましい第一の核酸配列は、適当なプロモーターおよび適当なRBSの双方を含み得る。そのような組み合わされた第一の核酸配列で用いることができる好ましいプロモーターおよびRBSは、明細書中の他の箇所で記載される。好ましい第一の核酸配列は、植物細胞の葉緑体における転写および/または翻訳の調節に適合させることができる。
【0018】
本発明による「第二の核酸配列」は、発現させるべきTGF−βをコードし、植物細胞における発現に適合した配列である。第二の核酸配列の翻訳および/または転写は、前記したように、適当な第一の核酸配列によって調節することができる。適当な第二の核酸配列は、植物細胞において発現させるのが望まれる任意のTGF−βをコードすることができることが認識されるであろう。好ましい第二の核酸は、例えば、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3をコードすることができ、そのうち、TGF−β3はより好ましくあり得る。本発明の第二の核酸配列は、種々の適合戦略の1以上を用いて植物細胞での発現のために適合させることができる。適当な適合戦略の例は、本明細書中の他の箇所に記載される。好ましい第二の核酸配列は、植物細胞の葉緑体におけるそれらの発現のために適合させることができる。
【0019】
本発明による「第三の核酸配列」は、第二の核酸配列の転写を終了させるのに用いることができる終止領域をコードする配列である。終止領域は、植物細胞において機能的であるものである。好ましくは、適当な終止領域は、植物細胞の葉緑体において機能的なものである。(植物細胞および葉緑体に用いるのに適した配列を含む)本発明に従って用いることができる適当な第三の核酸配列の例は、本明細書中の他の箇所で考慮される。
【0020】
第一および/または第二および/または第三の核酸配列は、好ましくは、相互に遺伝子的に融合させることができ、それにより、種々の核酸配列を含む単一のキメラ核酸分子を産生することができる。
【0021】
本発明のキメラ核酸配列は、DNA配列であるのが好ましい。従って、好ましい第一および/または第二のおよび/または第三の核酸配列はDNA配列であると認識されるであろう。
【0022】
その最も広い解釈において、用語「植物細胞における発現に適合した」は、必要な活性または発現を達成するために植物細胞において発現させることができる任意の核酸も含むように用いることができる。種々の戦略を使用して、葉緑体におけるキメラ核酸の発現を促進することができる。いくつかのそのような適当な戦略は、本明細書の他の箇所においてさらに詳細に述べられ、これらの特定の戦略は、核酸が植物細胞における発現のために適合させるべき好ましい手段を表わすことができる。
【0023】
本発明の核酸は、葉緑体標的化プラスミドのような適当なプラスミドに組み込むことができる。一般に、葉緑体において発現させるべき核酸は、葉緑体ゲノムへのキメラ核酸分子の挿入を可能とするプラスチド標的化DNAの領域によって近接されるのが好ましい。適当なプラスミドは、本発明の方法に用いるための好ましい薬剤を表す。
【0024】
発現させるべきTGF−βは、任意の動物、ヒトまたは非ヒトに由来する任意のTGF−βであってもよいが、好ましくは、TGF−βはヒトTGF−βである。
【0025】
本発明の方法または核酸を用いて、任意のTGF−β(例えば、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4またはTGF−β5のいずれか)を発現させることができる。TGF−βは、TGF−β1、TGF−β2、およびTGF−β3よりなる群から選択されるのが好ましい。TGF−βは、TGF−β3であるのがなおより好ましい。TGF−βはヒトTGF−βであるのが特に好ましい。
【0026】
本発明による核酸配列によってコードされるTGF−βが、好ましくは、TGF−βの活性断片を含むことを認識されるであろう。コードされるTGF−βは、活性断片のみを適切に(すなわち、潜伏関連ペプチドの会合なし)を含むことができる。適当な核酸は、選択されたTGF−βの活性断片の全てまたは部分をコードすることができる。参考までに、TGF−β1、TGF−β2、およびTGF−β3の活性断片のアミノ酸配列は、各々、図11における配列番号1ないし3として記載される。
【0027】
本発明による核酸配列によってコードされるか、または本発明による方法で発現させるTGF−βは、TGF−βプロタンパク質を含み得る。そのようなプロタンパク質は、それらを、商業的使用に先立って長期貯蔵または処理に適したものとする安定性を呈することができる。本発明者らは、プロタンパク質ホモ二量体(75kDa)の精製は、タンパク質の安定性のため、活性な領域ホモ二量体(24kDa)よりも容易であろうと考える。活性なタンパク質のカプセル化は、タンパク質半減期を40倍増加させることができ、作製された切断部位はその治療的作用部位においてタンパク質を放出した。プロタンパク質は精製後にインビトロにて切断されて、例えば、治療剤として用いるための活性な領域を提供することができる。
【0028】
本発明による核酸配列によってコードされるか、または本発明による方法で発現されたTGF−βは、全長TGF−β、好ましくは、配列番号6、7または8のいずれか1つによってコードされるアミノ酸配列を有する全長TGF−βを含み得る。
【0029】
本発明の核酸配列によってコードされたTGF−βは、TGF−βの変種形態を含むことができる。
【0030】
本発明による方法および核酸は、植物の葉緑体において発現された遺伝子に由来するプロモーターを使用することができる。適当なプロモーターは光合成遺伝子に由来するのが好ましいであろう。
【0031】
本発明の方法または核酸に用いられる適当なプロモーターは、光合成関連遺伝子、遺伝子系遺伝子、およびプラスチドコードプラスチド(PEP)RNAポリメラーゼまたは核コードプラスチド(NEP)RNAポリメラーゼによって認識される任意のその他を発現するプロモーターよりなるプラスチドプロモーター、藻プロモーター、細菌プロモーター、またはファージプロモーター、例えばプラスチドpsbAプロモーター、プラスチド16S rrnプロモーター、クラミドモナス(Chlamydomonas)pbsAプロモーター、細菌trcプロモーターおよびバクテリオファージT7プロモーターよりなる群から選択することができる。これらの群のうち、16srrnプロモーターは、好ましいプロモーターを表す。適当なプロモーターは、Nicotiana tabacum、好ましくはBrassica napusに由来することができる。事実、Brassica napus 16srrnプロモーターは、本発明の方法または核酸に用いられる特に好ましいプロモーターを表す。
【0032】
本発明の方法または核酸に用いられる適当なリボソーム結合部位(RBS)は、rbcL RBSまたはpsbA RBSのような任意のプラスチドRBS、あるいはT7g10 RBSのような細菌またはバクテリオファージRBSよりなる群から選択することができる。この群のうち、T7g10 RBSは、好ましいRBSであり得る。本発明の方法に用いられる他の適当なRBSは、Nicotiana tabacum psbA RBSのようなNicotiana tabacumに由来するものを含む。
【0033】
本発明の方法または核酸に用いることができる適切なターミネーターは、psbAターミネーター、rbcLターミネーター、(リボソームタンパク質S18からの)rps18ターミネーターおよびpsbCターミネーターを含むプラスチドターミネーター、または細菌ターミネーターまたはバクテリオファージターミネーターよりなる群から選択することができる。psbCターミネーターは、この群からの好ましいターミネーターを表す。適当なターミネーターは、Hordeum vulgare、好ましくはBrassica napusに由来することができる。Brassica napus psbCターミネーターは、本発明に従って用いられる特に好ましいターミネーターである。
【0034】
前述したように、葉緑体発現を用いて、広く種々の植物において本発明によるTGF−βの発現を達成することができる。本発明者らは、本発明の方法および核酸(特に、葉緑体発現に用いられるもの)は、単子葉植物または双子葉植物いずれでも用いることができると考える。本発明の方法および核酸に従って利用することができる双子葉植物の好ましい例はタバコである。一般に、本発明者らは、本発明の方法および核酸が、陸上植物および藻を含めた広い範囲の植物に関連して用いることができると考える。適切な植物は、限定されるものではないが、キャベツ、カリフラワー、クロレラ、クラミドモナス、大麦、ニンジン、レタス、コケ、トウモロコシ、菜種、コショウ、ジャガイモ、米、大豆、ヒマワリ、トマト、小麦を含む。本発明による方法または核酸は、それらが発現されるべき選択された植物を参照して選択された適当な標的化配列およびプロモーターを利用することができる。例えば、本発明による適切な核酸または方法は、藻またはコケで用いるのに適した標的化配列およびプロモーターを利用することができる。
【0035】
前述したように、本発明者らは、葉緑体におけるTGF−βの発現、特に、葉緑体ゲノムの形質転換の結果として起こるそのような発現は、本発明の文脈において多くの利点を提供すると考える。本発明者らは、TGF−βをコードする核酸を産生するのに用いることができ、かつ葉緑体における発現に適合した多数の戦略を見いだした。
【0036】
本発明によるTGF−βの発現は、葉緑体発現に適し、好ましくは、葉緑体発現で優先されるか、または特異的でさえある第一の核酸配列を利用することができる(プロモーターおよびリボソーム結合部位を含むことができる、本明細書中の他の箇所で言及される「第一の核酸配列」における)調節核酸配列の使用によって達成することができる。
【0037】
同様にして、本発明の方法および核酸は、葉緑体における発現に適した(明細書中の他の箇所で言及される「第三の核酸配列」における)終止領域を利用することができる。そのような第三の核酸配列は、なおより好ましくは、葉緑体における発現で優先されるか、またはそれに特異的であり得る。
【0038】
特に、植物細胞における発現のための核酸の適合は、発現させるべきTGF−βをコードする配列(本明細書中において考えられるような「第二の核酸配列」)を参照して実行することができる。本発明者らは、植物細胞における発現、より特別には葉緑体における発現のためのそのような第二の核酸配列を適合させるのに用いることができる多数の手段を見いだした。適当な第二の核酸配列の産生におけるこれらの手段の1つ以上の使用は、本発明において記載された任意の方法または核酸配列の好ましい実施形態であり得る。
【0039】
そのような第二の核酸配列を植物細胞、より詳細には葉緑体における発現に適合させることができる1つの好ましい方法は、発現させるべきTGF−βをコードする野生型DNAに見いだされるコドンの1つ以上の置換である。
【0040】
特に好ましい実施形態において、野生型DNAで生じるアミノ酸システインをコードするコドンの1つ以上を置換するのが好ましいであろう。TGF−βは多数のシステイン残基を含み、これらの残基はTGF−βタンパク質の特徴である。しかしながら、システインは、葉緑体遺伝子産物において他のアミノ酸よりも少量で、かつ光合成葉緑体遺伝子産物においてかなり低い量で見いだされるアミノ酸である。
【0041】
本発明者らは、TGF−βをコードする野生型DNA(例えば、TGF−β3の活性断片の場合には、配列番号4のDNA)に存在する1つ(またはそれを超える)のUGCコドンが置換されれば、TGF−βをコードするDNAが、植物細胞の葉緑体における発現に適合させることができるのを見いだした。UGCコドンはアミノ酸システインをコードし、そのような場合における好ましい置換は、一般には、代替システインコードコドンUGCに関連するであろう。好ましくは、野生型DNA配列に存在するUGCコドンの少なくとも2つを置換することができ、より好ましくは、UGCコドンの少なくとも3つを置換することができ、最も好ましくは、UGCコドンの4つを置換することができる。本発明者らは、野生型DNAに存在するUGCコドンの5つ、または6つさえを置換することができ、依然として、所望のTGDF−βの産生を可能とすることができるが、少なくとも1つ、より好ましくは2つのUGCコドンが適切な核酸に保持されるのが好ましいと考える。
【0042】
本発明者らは、代替、またはさらなる置換の対象となり得る多数の他のコドンを同定した。
【0043】
例えば、ロイシンをコードするコドンCUGは、有益には、植物細胞における(特に、植物細胞の葉緑体における)発現に適合した核酸の産生における置換に供することができる。少なくとも1つのCUGコドンを置換して、本発明の方法または核酸配列に用いるのに適した第二の核酸配列を生じさせるのが好ましいであろう。例えば、発現させるべきTGF−βをコードする野生型DNAに存在する全てのCUGコドンが置換されているのが好ましいであろう。例えば、ヒトTGF−β3をコードする野生型DNAの場合において、全ての7つの存在するCUGコドンを置換するのが好ましいであろう。用いるべき好ましい代替コドンは、ロイシンをコードする別のコドンUUAであり得る。
【0044】
加えて、あるいは別法として、バリンをコードするコドンGUGは、有益に、植物細胞における(特に、植物細胞の葉緑体における)発現に適合した核酸を産生する場合、置換に供することができる。少なくとも1つのGUGコドンを置換して、本発明の方法または核酸配列で用いるのに適した第二の核酸配列を生じさせるのが好ましいであろう。例えば、発現させるべきTGF−βをコードする野生型DNAに存在する全てのGUGコドンが置換されているのが好ましいであろう。例えば、ヒトTGF−β3をコードする野生型DNAの場合、そうでなければ存在するであろう全ての6つのGUGコドンを置換するのが好ましいであろう。用いるべき好ましい代替コドンは、別のバリンをコードするコドンGUUまたはGUAであり得る。
【0045】
別法として、あるいは加えて、プロリンをコードするコドンCCCは、有益に、植物細胞における(特に、植物細胞の葉緑体における)発現に適合した核酸の産生において置換することができる。少なくとも1つのCCCコドンを置換して、本発明の方法または核酸配列に用いるのに適した第二の核酸配列を生じさせるのが好ましいであろう。例えば、そうでなければ、発現されるべきTGF−βをコードする野生型DNAに存在する全てのCCCコドンが置換されているのが好ましいであろう。例えば、ヒトTGF−β3をコードする野生型DNAの場合には、そうでなければ存在するであろうCCCコドンの全ての4つを置換するのが好ましいであろう。用いるべき好ましい代替コドンは、別のプロリンをコードするコドンCCUであり得る。
【0046】
さらに代替的に、または加えて、チロシンをコードするコドンであるUACは有利に置換され、植物細胞中での(および特に植物細胞の葉緑体中での)発現のために適合した核酸を生じ得る。少なくとも1個のUACコドンが置換され、本発明の方法または核酸配列における使用のために適切な第2の核酸配列を生じることが好ましくあり得る。例えば、発現されるTGF−βをコードする野生型DNA中に存在する少なくとも1個、2個、3個、または4個のUACコドンが置換されることが好ましくあり得る。例えば、ヒトTGF−β3をコードする野生型DNAの場合においては、そうでなければ存在する6個のUACコドンのうちの5個が置換されることが特に好ましくあり得る。使用される好ましい置換コドンは、チロシンをコードする代替のコドンであるUAUであり得る。
【0047】
上記の適合に対してなおさらに代替的にまたは加えて、植物細胞中での(および特に植物細胞の葉緑体中での)発現のために適合した核酸の産生の際に、アスパラギンをコードするコドンであるAACが置換されることが好ましくあり得る。少なくとも1つのAACコドンが置換され、本発明の方法または核酸配列における使用のために適切な第2の核酸配列を生じることが好ましくあり得る。例えば、発現されるTGF−βをコードする野生型DNA中に存在する少なくとも1個、2個、3個、または4個のAACコドンが置換されることが好ましくあり得る。例えば、ヒトTGF−β3をコードする野生型DNAの場合においては、そうでなければ存在する6個のAACコドンのうちの5個が置換されることが特に好ましくあり得る。使用される好ましい置換コドンは、アスパラギンをコードする代替のコドンであるAAUであり得る。
【0048】
植物細胞中での(および特に植物細胞の葉緑体中での)発現のために適合される核酸の産生の際に、上記の適合に対してさらに代替的にまたは加えて使用され得る別の適合は、アスパラギン酸をコードするコドンであるGACの置換である。少なくとも1個のGACコドンが置換され、本発明の方法または核酸配列における使用のために適切な第2の核酸配列を生じることが好ましくあり得る。例えば、発現されるTGF−βをコードする野生型DNA中に存在するすべてのGACコドンが置換されることが好ましくあり得る。例えば、ヒトTGF−β3をコードする野生型DNAの場合においては、そうでなければ存在する4個すべてのGACコドンが置換されることが特に好ましくあり得る。使用される好ましい置換コドンは、アスパラギン酸をコードする代替のコドンであるGAUであり得る。
【0049】
本開示の目的のために、野生型DNAは、本発明に従って発現またはコードされる、TGF−βをコードする天然に存在するDNAであると見なされるべきである。例えば、ヒトTGF−β1(その活性断片のアミノ酸配列が配列番号1に示される)の場合においては、野生型DNAは、このタンパク質をコードする天然に存在するヒトゲノムDNAである(その全長DNA配列は配列番号6に示される)。ヒトTGF−β2(その活性断片のアミノ酸配列が配列番号2に示される)の場合においては、野生型DNAは、このタンパク質をコードする天然に存在するヒトゲノムDNAである(その全長DNA配列は配列番号7に示される)。ヒトTGF−β3(その活性断片のアミノ酸配列が配列番号3に示される)の好ましい場合においては、野生型DNAは、このタンパク質をコードする天然に存在するヒトゲノムDNAである(例えば、配列番号4に示されるような活性断片をコードするDNA、または配列番号8に示される全長DNA配列)。
【0050】
TGF−β(この場合においては、TGF−β3の活性断片)をコードし、かつ植物細胞における、およびより特定的には葉緑体における発現のために適合される特に好ましい核酸配列の例は、配列番号5に示される。確かに、この核酸配列は非常に好ましいので、本発明のさらなる局面において、配列番号5に示される核酸配列を含む核酸配列が提供される。配列番号5に示される核酸配列は、本発明の方法における使用のために好ましい第2の核酸配列と、本発明の核酸における使用のためにもまた好ましい第2の核酸配列の両方を表す。
【0051】
本発明者らは、配列番号5に示される配列と少なくとも1.75%のコドン同一性を共有する核酸配列が、このような核酸配列がなお、発現されるTGF−βをコードしていることを条件として、本発明の方法および核酸において利用され得ると考える。より好ましくは、適切な核酸は、配列番号5と少なくとも22%のコドン同一性、さらにより好ましくは、少なくとも50%のコドン同一性、なおより好ましくは、少なくとも75%のコドン同一性、および最も好ましくは、少なくとも99.1%のコドン同一性を共有し得る。
【0052】
先の段落に記載した核酸配列、例えば、配列番号5の核酸配列(または特定の同一性の程度、例えば、少なくとも22%のコドン同一性を配列番号5と共有する配列)は、本発明の方法または核酸のいずれかまたはすべてに従う使用のための適切な「第2の核酸配列」を含み得ることが理解されよう。
【0053】
本発明者らは、上記の型の修飾が、植物細胞中で発現できるTGF−β(葉緑体中での発現を含む)の総量を増加させる上で非常に有効であることを見いだした。例えば、以下の実験結果の節においてさらに説明されるように、TGF−β3をコードする野生型DNAを含む核酸で形質転換された植物は、全タンパク質の約1%のTGF−β3という収率を生じ得る。対照的に、植物細胞中での発現のために適合した核酸配列、例えば、配列番号5の核酸配列の使用は、野生型配列を使用して生じるものよりも、10倍高いTGF−β3の収率を生じることが可能である(全タンパク質の約10%という、TGF−β3の収率を生じる)本発明者らは、この種の選択された第2の核酸配列、例えば、配列番号5の使用することにより、同じ第1および第3のアミノ酸配列が共通して使用される場合においてさえ、野生型配列と比較して、TGF−β収率を顕著に増加させることが可能であることを見いだした。
【0054】
TGF−β収率のこれらの増加は、本発明の方法および核酸を利用することなく他の方法で達成され得る場合に対して、顕著でありかつ驚くべき改善を表すことが認められる。本発明の方法および核酸を利用して産生されるTGF−βの量は、以前には不可能であった様式で、植物中におけるTGF−β(例えば、TGF−β3)の経済的に有利な産生を可能にする。
【0055】
本発明者らは、本発明の方法において選択的に有利に使用され得る多数の新規な技術および条件をさらに見いだした。これらは、本発明に従って発現されるTGF−βの回収、および/または活性なTGF−βを産生するためのこのようなTGF−βのフォールディングもしくは再フォールティングに関して顕著な利益を提供する。開発された新規な方法には、本発明に従う方法において発現される再フォールティングされたTGF−βの捕捉における使用のために適切な手順もまた含まれる。
【0056】
植物中で発現される組換えタンパク質は、典型的には、可溶性タンパク質として発現される。これは、一般的には、先行技術において記載された方法を使用して達成され得る比較的低いレベルのタンパク質発現に起因すると見なされている。産生した可溶性タンパク質は、生物学的に活性な型および生物学的に不活性な型の混合物を含む傾向があり、不活性型は全体の中でより大きな割合を占める。
【0057】
本発明の方法および核酸を使用して達成される高レベルの発現は、高収率の組換えTGF−βタンパク質を産生することが見いだされたが、これらのタンパク質の不溶性凝集物を生じることが見いだされ、生物学的活性を産生するように正確にフォールディングされた型では検出可能なタンパク質は発現されなかった。いかなる仮説によっても束縛されることは望まないが、本発明者らは、これらの凝集物が、植物細胞(および特に葉緑体)内部で確立された高濃度の組換えタンパク質に起因して生じ、TGF−βタンパク質の疎水性の結果として発現されると考えている。この様式でのTGF−βの不溶性凝集物の産生は、(そうでなければ夾雑物を構成し得る可溶性植物細胞成分から不溶性組換えタンパク質を分離することが容易であるという点で)有利であり、そしてこの不溶性型のTGF−βは、それ自体、有用な生成物を表す(これは、次には、先行技術の技法を使用して、その活性型に可溶化およびフォールティングされ得るからである)。しかし、改善された純度および収率で正確にフォールディングされたTGF−βの生物学的活性型を生じるために、本発明者らは、本発明の方法および核酸を使用して発現されるTGF−βの可溶化およびフォールディング/再フォールティングに特に適合した新規な技術を開発した。
【0058】
本発明者らは、本発明の方法または核酸を使用して発現されるTGF−βの精製における有利な工程には、(その中では、TGF−βが葉緑体中で発現している)葉緑体抽出物の溶解、ならびに得られた混液のTGF−βの溶解を補助するための均質化および超音波処理が含まれることを見いだした。溶解は、pH 8.0において、10mM HEPES、5mM EDTA、2重量/重量% Triton X−100、0.1M DTTを含む緩衝液を使用して達成され得る。
【0059】
本発明の方法または核酸を使用して発現されるTGF−βは、夾雑物、例えば、葉緑体または他の植物タンパク質を除去するために有利に「洗浄」され得る。適切な洗浄緩衝液は、pH 8.0における0.05M Trisベースおよび0.01M EDTAを含み得る。洗浄は、一連の遠心分離工程および再懸濁工程(好ましくは、洗浄緩衝液中での2回以上の遠心分離および再懸濁のサイクル)によって容易に実行され得る。遠心分離は、8000×g、30分間で実行され得る。
【0060】
次いで、このような洗浄後に得られるTGF−β産物は、好ましくは、組換えTGF−βを溶解するが、植物タンパク質または炭水化物(例えば、デンプンなど)を溶解しない溶媒を使用して可溶化され得る。本発明者らは、この機能を有する適切な緩衝液は、尿素を含み得、このような緩衝液の好ましい例は、pH 8.0における、0.05M Trisベース、0.1M DTT、6M 尿素を含むことを見いだした。このような可溶化は(好ましくは、溶解性を補助するために攪拌しながら)室温で達成することができ、可溶化溶液のpHを9.5周辺まで調整することによって補助され得る。組換えTGF−βを優先的に溶解可能であるが、植物細胞成分(例えば、植物タンパク質または炭水化物)を溶解しない溶媒のこの使用は、先行技術において示唆されておらず、そしてそれが付与する顕著な利点に起因して、本発明の方法において利用され得る好ましい工程を表す。
【0061】
本発明の方法または核酸を使用して発現されたTGF−βが(例えば、上記に概略される様式で)可溶化される際、次いでこれは、膜分離精製技術を使用して濃縮され得る。適切な技術は、5kDa TFF(接線流濾過)膜、およびpH 9.5において、0.05M Trisベース、0.01M DTT、3M 尿素を含む膜分離精製緩衝液を利用し得る。このような膜分離精製は、溶液を約15倍に濃縮するために使用され得る。
【0062】
本発明の方法の任意の実施形態に従って産生されるTGF−βは、活性なTGF−βが産生されるように、CHES(2−(シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸)またはその機能上の類似物の存在下でフォールティングが起こる技術を使用して、フォールティングまたは再フォールティングすることができる。この様式でのTGF−βのフォールティングまたは再フォールティングは特に有利であり、このさらなる工程を組み入れた方法は、本発明の好ましい実施形態を表す。好ましくは、CHESは、約100mMから1.0Mの濃度で、より好ましくは約0.7Mの濃度で使用され得る。本発明の方法または核酸を使用して発現されるTGF−βのフォールティングにおけるCHESの使用を含む任意の工程は、低分子量スルフヒドリル/ジスルフィド酸化還元系と組み合わせたCHES(またはその機能的アナログ)を利用し得る。本発明の方法において有利に使用され得るCHESを利用するフォールティングまたは再フォールティングの方法のさらなる詳細は、国際特許出願PCT/GB2007/000814に含まれており、この文書の内容は、特に、生物学的に活性な分子を産生するためにTGF−βをフォールティングするための方法に関連する限りにおいて、参照により本明細書に援用される。
【0063】
本発明の方法に従って発現されるTGF−βは、疎水性相互作用クロマトグラフィーによって捕捉され得る。例として、ブチル−セファロース4ファストフロー(Butyl−Sepharose 4 Fast Flow)分離媒体を、このような捕捉を実施するために使用することができる。TGF−β(好ましくは、上記の様式で活性型に再フォールディングされたもの)を含む溶液は、洗浄緩衝液および平衡化緩衝液で平衡化したブチル−セファロース4ファストフローカラムに加えられ得る。適切な平衡化緩衝液は、pH 3.3において、0.02M 酢酸ナトリウム、1M 硫酸アンモニウム、10%v/v酢酸を含み得る。カラムは、結合したTGF−βの溶出の前に、必要に応じて洗浄され得る。溶出は、適切な洗浄緩衝液、例えば、pH 3.3において、0.02M 酢酸ナトリウム、10%v/v酢酸、30%v/vエタノールを含むものを利用してもよい。
【0064】
TGF−βは、カチオン交換クロマトグラフィーによってさらに精製することができる。例として、SP−セファロース媒体が、TGF−β単量体および植物関連の不純物からTGF−β二量体をさらに精製するために使用され得る。カチオン交換クロマトグラフィー媒体へのTGF−β二量体の結合を確実にするために、捕捉精製工程からの溶離液(好ましくは、上記のブチル−セファロースの溶離液)の伝導度は低くされる必要があり得、そしてこれは、適切な緩衝液(例えば、pH 3.9〜4.1において、2.72g/L 酢酸ナトリウム三水和物、100mM/L 氷酢酸、300mL/Lエチルアルコールを含む緩衝液)中で溶離液を希釈することによって最も良好に達成される。次いで、調整済みの負荷物をSP−セファロースカラムに加え、適切な緩衝液で平衡化する。この緩衝液は、pH 3.9〜4.1において、2.72g/L 酢酸ナトリウム三水和物、100mM/L 氷酢酸、300mL/Lエチルアルコール、2.92g/L 塩化ナトリウムを含み得る。カラムは、結合したTGF−βの溶出の前に、必要に応じて洗浄することができる。カラムからのTGF−βの溶出は、移動相のpHを変化させること、または伝導度を上昇させることによって達成することができる。一例として、適切な溶出緩衝液は、pH 3.9〜4.1において、2.72g/L 酢酸ナトリウム三水和物、100mM/L 氷酢酸、300mL/Lエチルアルコール、29.22g/L 塩化ナトリウムからなる。TGF−β二量体を含むSPセファロース溶離物の画分は、純度に従ってプールされるべきである。残渣の塩はTGF−βタンパク質の凝集を引き起こし得るので、SP−セファロースの溶離物は、適切な最終製剤に緩衝液交換されるべきであり、緩衝液の1つの例は、pH 4.0±0.1おける、1.2mM/L 酢酸、200mL/L エチルアルコールを使用する(compromise)。
【0065】
上記に示した選択的工程は、個別にまたは本発明の方法において組み合わせて利用する際、植物からの組換えヒトタンパク質の精製のため、または一般的なTGF−βの精製のために示唆されてきた先行技術の技法を超えた顕著な利点を付与する。従って、当業者には、これらの任意工程の1つ以上(好ましくはすべて)が本発明の方法に有利に組み入れられ得ることが認識されよう。特に、組換えタンパク質の精製のためのこれらの新規な方法の使用は、塩の沈殿およびクロマトグラフィーの必要性を伴うことなく、高度に精製されたTGF−β、例えば、TGF−β3を産生することを可能にする(塩の沈殿およびクロマトグラフィーは、先行技術によって示唆されている技術であるが、残渣の塩の存在に起因して、この様式で精製されたタンパク質の望ましくない凝集をもたらす可能性がある)。
【0066】
当業者には、本発明の核酸が、任意の適切な経路を通して、(本発明の方法によって必要とされる)植物細胞に導入され得ることが容易に認識されよう。この様式での核酸の導入のために適切な広範な技術が当業者に公知であり、これには、弾道トランスフェクションが含まれるがこれに限定されない。適切な実験プロトコールは、実験結果の節にさらに記載されている
【0067】
本発明に従う核酸は、適切な発現カセットまたはベクターにさらに組込まれ得る。このような発現カセットまたはベクターの例は、タンパク質の植物発現の当業者に周知である。本発明に従うキメラ核酸を組込む発現カセットの適切な例は、実験結果の節に示される。
【0068】
本発明の(および本発明の方法における使用のために適切である)キメラ核酸は、キメラ核酸配列が首尾よく組込まれた植物細胞の同定において補助し得る生成物の発現のための核酸配列をさらに含むことが好ましくあり得る。この様式で使用され得る適切なさらなる核酸配列の例は当業者に明らかであり、選択のために使用され得る物質(例えば、抗生物質)に対する抵抗性を付与する生成物を生じる核酸、または選択のための基礎として使用され得る検出可能な生成物(例えば、色素生成酵素生成物)を生じるマーカーが含まれる。
【0069】
さらなる局面において、本発明は、本発明の第2の局面(および本明細書に記載されるその任意の実施形態)に従って、核酸で形質転換された植物を提供する。
【0070】
さらなる局面において、本発明は、本発明の第2の局面(および本明細書に記載されるその任意の実施形態)に従って、核酸を含む植物種子を提供する。
【0071】
本明細書の他の箇所に記載される方法および核酸に加えて、本発明はまた、本発明に従う方法によって発現されるTGF−βを提供する。当業者は、このようなTGF−βの植物起源を認識し得る多数の独特な特徴が存在することを認識している。例えば、TGF−βプロタンパク質の場合においては、動物細胞によって発現されるTGF−β、または植物細胞の核形質転換の結果として発現されるTGF−βにおいて見いだされるグリコシル化は、葉緑体中で発現されるプロタンパク質からは欠失される。これを、本発明に従って産生されるタンパク質またはプロタンパク質の同定において使用し得る。
【0072】
当業者は、本明細書中に開示された方法および核酸が、TGF−βアイソフォームそれら自体以外のTGF−βスーパーファミリーメンバーの発現における使用のために、特に、第2の核酸配列の適合によって、適合され得ることを認めるであろう。従って、本発明のさらなる局面は、第2の核酸配列が一つのTGF−β以外のTGF−βスーパーファミリーメンバーをコードする、方法および核酸を提供する。
【実施例】
【0073】
実験結果
1.導入
以下、植物の葉緑素ゲノムの遺伝子修飾を通した、タバコ(ニコチアナ・タバクム(Nicotiana tabacum)植物からの形質転換増殖因子ベータ3(TGF−β3)タンパク質の発現を可能にする実験プロトコールを示す。
形質転換(プラスチド修飾ゲノム)植物を生産するために必要とされる段階の概略が図1に示される。
【0074】
2.結果
2.1 発現カセット構築物の設計
多数の発現カセットが、プラスチド特異的高発現調節領域の制御下でDNA翻訳領域を含むように設計された(図2を参照)。
【0075】
様々な種から得られる調節領域が、しばしば遺伝子発現のために使用される。これらの要素は、非野生の種で正常な機能を可能にするのに十分に類似するが、しかしプラストームの非標的部分への相同な組換えを避けるのに十分なだけ塩基配列において異なる。
【0076】
図2で示される発現カセットは、Brassica napus 16SrrnプロモーターおよびB.napus psbC3’終結領域を含んだ。これらは両方とも、プラスチドに対して特異性を有する。T7バクテリオファージ遺伝子10から得られるRBSも、この発現カセットに組み込まれた。TGF−β3活性領域翻訳領域が、このカセットに組み込まれた。N.tabacum葉緑体における最適な発現のために設計された合成TGF−β3活性領域遺伝子(すなわち、本発明による第2の核酸配列)も、この発現カセットで合成され、組み込まれた。
【0077】
16Srrnプロモーターは、それが強力な遺伝子発現を生じることができるので選択された。バクテリオファージT7遺伝子10リーダー配列は、高度の翻訳のために細菌中で集約的に使用され、プラスチド発現で首尾よく使用されてもきたリボソーム結合部位である。
【0078】
全ての構築物は、プラスチドの対して特異的な調節領域の制御下でマーカー遺伝子アミノグリコシドアデニルトランスフェラーゼ(aadA)も含んだ。aadA遺伝子は、抗生物質スペクチノマイシンおよびストレプトマイシンに対する耐性を付与する。
【0079】
2.2 合成TGF−β3活性領域遺伝子の構築
N.tabacum葉緑体遺伝子発現のために最適化された合成TGF−β3活性領域遺伝子が設計された。段階的方法で一緒に連結した一本鎖オリゴヌクレオチドからその遺伝子を合成した(図3)。
【0080】
第1のプライマー対は、内部のヘヤピン形成またはプライマー完全性のいずれかによりプライマー二量体を形成できず、それで、より大型のプライマーの対が、構築が迅速に継続できるために高コストで必要とされた。段階4で可視化された2つの185bpプライマー「オクトマー」の連結時点でで、最終の350bp産物は、達成できなかった。これが、総DNA鎖長に比較して非常に短い3’一本鎖重複の結果であると思われた。すでに段階2で作成された別のプライマー「二量体」を、180bp構築物に連結して、大きな重複を伴う225bpDNA構築物を作成した。この方法は、その問題を首尾よく克服し、最終の350bpの合成TGF−β3遺伝子がPCRによって増幅された。
【0081】
合成配列は、野生型のDNA配列と70%の塩基同一性を示し、そしてGC含有量が、最適化配列で56%から33%までに減少された。合成TGF−β3活性領域および野生のTGF−β3活性領域のDNA翻訳配列は、図4に示される。合成および野生型の配列のDNA配置は、図5で示される。合成および野生型の配列についての翻訳アミノ酸配列は同一であり、図6に示される。
【0082】
2.3 プラスチド標的ベクターの構築
上に明記された4つの発現カセットを全て、照射のために作成された葉緑素標的プラスミドにクローン化した(図7Aを参照)。葉緑素標的ベクターは、標的構築物がプラスチドでの相同な複製によって組み込まれることを可能にするタバコプラスチドゲノム(52377−59319、59320−63864)と相同なDNAの領域を含有する。図7Bの矢印は、タバコプラスチドゲノム(プラストーム)でのDNA組込の位置を際立たせる。
【0083】
標的遺伝子構築物は、導入遺伝子構築物の安定性を促進する選択因子発現カセットと共に、ベクター中に存在する。aadA(アミノグリコシドアデニントランスフェラーゼ)は、スペクチノマイシンおよびストレプトマイシン抗体を解毒し、それは、本発明による使用のための好ましい選択因子である。
【0084】
プラスチドゲノムに相同なDNAの2つの領域は、2つの発現カセットに隣接する。これらの領域は、相同な組換えをプラスチドゲノムの特定領域に向けさせる。隣接領域は、「左標的領域」および「右標的領域」(LTRおよびRTR)として知られる。
【0085】
使用される隣接領域は、極度に活性なrbcL遺伝子の下流にトランスジェニック構築物を挿入し、それは、光合成に必須であるルビスコ(rubsico)の大型サブユニットを生成する。
【0086】
2.4 大腸菌での導入遺伝子カセットの発現
植物のプラスチド原核生物起源により、葉緑体発現カセットは、Escherichia coliのような細菌でしばしば機能する。TGF−β3タンパク質発現は、大腸菌で各導入遺伝子構築物について同定された(データは示されず)。SDS−PAGEにより大腸菌から得られる総タンパク質サンプルを分離し、そしてTGF−β3タンパク質に特異的な抗体を使用して、ウエスタンブロット分析を行った。
【0087】
発現要素は細菌とプラスチドとの両方で作用するので、これらの研究は、発現カセットが機能することを調べる上で非常に有用である。
【0088】
ウエスタンブロットを行い、そしてTGF−β3活性領域抗体を、発現レベルを調べるために使用した。
【0089】
2.5 N.tabacum植物の形質転換
粒子照射、続いて正の抗体選択でクローンを単離することによって、ウィスコンシン38(w38)タバコ葉を形質転換させた。抗生物質を含むMS培地上で苗条を育成し、その中で根付かせ、その後、植物を最終的に土壌に移した。
【0090】
2.6 植物のDNA特徴付け
推定形質転換体である植物は、特異的TGF−β3遺伝子と(抗生物質選択のための)aadAマーカー遺伝子の組込を確認するために、PCRおよびサザンブロット分析によってそれらのDNAを特徴付けられた。サザンブロット分析は、導入遺伝子カセットの正しい組込を確認し、植物におけるホモプラスミーも確認した。それは、安定な形質転換を表す。
【0091】
2.7 タンパク質特徴付け
同質細胞質の植物から得られる葉組織を収穫し、SDS−PAGEおよびウエスタンブロット分析により分析した。TGF−β3活性領域タンパク質の発現は、「16Srrn−T7−TGF−β3活性領域−psbC」および「16Srrn−T7−TGF−β3合成的活性領域−psbC」構築物からSDS−PAGEにより同定した。そして、タンパク質発現は、それぞれ総植物タンパク質の約1%および約10%として定量された(図8を参照)。スキャンしたゲル上で、バイオラッドQuantity Oneソフトウエア分析により、デジタルで定量を行った。この結果は、TGF−βをコードする核酸配列は植物による発現に適合する本発明の方法および核酸を用いて達成されうる大幅な収量の増加を示す。
TGF−β3抗体のウエスタンブロット分析は、目的のタンパク質バンドがTGF−β3活性領域タンパク質であると確認し(図9を参照)、TGF−β3の基準の定量は、上に示されたタンパク質発現レベルが正しいことを確認した。
【0092】
「16Srrn−T7−TGF−β3合成的活性領域−psbC」植物の葉から得られるタンパク質は、溶解性タンパク質調製物か、または不溶性タンパク質調製物のいずれかとして作成され、そしてSDS−PAGEおよびウエスタンブロットにより分析された(図10を参照)。結果は、合成TGF−β3活性領域が不溶性タンパク質産物として発現されることを示した。
【0093】
3.方法
3.1 合成的TGF−β3活性領域遺伝子の構築
Shimadaら(1991年)によって、光合成タンパク質をコードすることが知られている29個の葉緑体遺伝子全てから得られる翻訳領域が分析され、そしてコドン使用表として作表された。コドン使用表は、Vector NTI部位ソフトウエア(Informax社)に取り入れられ、野生型のTGF−β3活性領域アミノ酸配列が、DNA翻訳領域配列に戻り翻訳された。多数の単一コドン型が存在する場合、第2および第3の最も頻繁に使用されるコドンが、tRNA代謝負荷を減じ、および/または反復配列を減じるために含められた。結果物のDNA配列は、N.tabacum葉緑体での発現のために最適な合成TGF−β3活性領域を表した。
【0094】
350bpの合成TGF−β3活性領域DNA翻訳領域を、段階的構築方法を使用して、一本鎖オリゴヌクレオチドから組み立てた(図3Aを参照)。オリゴヌクレオチド重複、クレノー酵素指向性DNA塩基充填、ベント−ポリメラーゼ指向性一本鎖(ss)DNA産生、および二本鎖(ds)DNA PCR増幅技術が、合成構築物の組立を促進するために使用された。図3Bは、合成遺伝子の構築進行を表すアガロースゲルを示す。約35、60、100、180、225および350bpのdsDNA分子が、ゲル上で見られ、それは、遺伝子断片が段階的に組み立てられることを表す。最終の350bp構築物は、A’尾部であり、pGEM−Tベクター(インビトロゲン)にクローン化され、そして配列完全性を確認するために配列決定された。
【0095】
3.2 タバコのプラスチド形質転換
3.2.1 葉の調製
ウィスコンシン38(W38)タバコを、ショ糖を有するMS培地上の種から約5週間育成した。この段階で、およそ4〜6の中程度の寸法の葉を有する植物が育成容器に存在した。これらの葉を葉組織の基で切断し、そしてRMOPプレートの中心に背軸側を上にして乗せた。プレートを覆い、密封し、DNA照射のために必要とされるまで育成キャビネットに入れた。
【0096】
3.2.2 DNA被覆マイクロキャリアーの調製
金粒子(直径1.0μm、バイオラッド)を、ボルテックスによってエタノールで洗浄した。これらのマイクロキャリアーを遠心分離し、そして上清を除去した後、s.d.H2Oを添加し、そして短時間再度ボルテックスで撹拌した。この金溶液のアリコート量を、1.5ml遠心分離管に移した。標的プラスミドDNAをマイクロキャリアー懸濁アリコートに添加し、短時間ボルテックスで撹拌した。2.5M CaCl2を、混合しながら金調製物に即時に添加し、次いで直ぐに、0.1Mスペルミジンを添加した。マイクロキャリアー調製物をボルテックスで撹拌し、遠心分離した。上清を除去し、マイクロキャリアーを、ボルテックス撹拌によりEtOHで洗浄した。マイクロキャリアーを、再度遠心分離し、上清を除去した。マイクロキャリアーを、短時間ボルテックス撹拌によりEtOHで再懸濁した。無菌マイクロキャリアーディスクを、金属保持プレートに乗せ、そしてアリコート量のマイクロキャリアー調製物を、各マイクロキャリアーの中心にピペットで入れた。マイクロキャリアー溶液を蒸散させて、マイクロキャリアー表面上の小型の円形沈殿物を残した。この時点で、マイクロキャリアーは、照射実験の準備ができた。
【0097】
3.2.3 粒子照射
層流フード中のバイオラッド遺伝子銃装置を使用して、タバコ葉の粒子照射を行った。装置の準備、真空の作成および気体放出段階は、製造業者の使用説明に従って行われた。葉組織を、その区画の下方区分に入れ、そしてプレートの蓋を取り除いた。DNAベクターを含むマイクロキャリアーは、植物組織中に加速される。1100psi破断ディスクを使用し、10cmの、停止スクリーンと植物組織との間の噴出距離を使用した。各粒子照射の後、タバコ葉を有するプレートを再度覆い、密封し、そして12時間の明/暗サイクルで約48時間、23℃で育成キャビネト中でインキュベートした。光強度は、約150μEiであった。
【0098】
3.2.4 照射後の葉選択
照射の48時間後、葉組織を、約2mm2片に切断し、選択培地に入れた。この選択培地は、500μg/mlスペクチノマイシンを有するRMOPか、または500μg/mlスペクチノマイシンおよび250μg/mlストレプトマイシンを有するRMOPのいずれかであった。組織プレートを、12時間の明/暗サイクルで、約150μEiの光強度を用いて、23℃でインキュベートした。形質転換した細胞は、4〜8週の間に植物苗条として再生し、そして250μg/mlストレプトマイシンを加えたMS培地を有する育成容器に移して、育成および根付かせた。推定形質転換体を、PCRを使用して導入遺伝子についてスクリーニングし、その後、サザンブロット分析によって特徴付けた。
【0099】
3.3 DNA特徴付け
最初に植物葉を収穫し、そして液体窒素中で破砕することによって、DNA分析を行った。エッペンドルフ「植物DNA prep」キットを使用して、DNAを作成した。制限酵素消化によってDNAサンプルを切断し、そしてゲル電気泳動によりサイズ分取した。DNAをナイロン膜に移し、その後32P−dCTPで標識されたDNAプローブでハイブリッド形成して、TGF−β3遺伝子、マーカー遺伝子および野生型葉緑体遺伝子を同定した。プローブ・ハイブリダイゼーションは、統合された遺伝子を同定し、そして制限消化パターンが、確認されるべきDNA組込地図を可能にした。
【0100】
3.4 タンパク質特徴付け
3.4.1 SDS−PAGE分析
総細胞タンパク質調製物のために、葉組織を液体窒素中で粉末に破砕し、1:5比(w/v)で1×サンプル緩衝液に添加した。サンプルを、5分間沸騰水浴中に入れ、その後遠心分離した。その後、上清を収集し、SDS−PAGE分析のために使用した。可溶性細胞タンパク質調製のために、破砕した凍結葉組織をボルテックスで撹拌し、抽出緩衝液中でインキュベートし、その後遠心分離して固形分を除去した。上清を単離し、そのタンパク質含有量を定量した。可溶性タンパク質サンプルを、2×サンプル緩衝液に添加し、5分間、沸騰水浴中に入れた。サンプルを遠心分離し、そして上清を、SDS−PAGE分析のために収集した。不溶性タンパク質調製のために、可溶性タンパク質抽出物から残ったペレットを再懸濁し、抽出緩衝液で3回洗浄し、各洗浄後遠心分離した。その後、残りのペレットを、1×サンプル緩衝液で再懸濁し、5分間沸騰水浴に入れ、その後遠心分離し、上清を、SDS−PAGE分析のために収集した。10〜20%トリス−HClアクリルアミドゲル電気泳動を使用して、タンパク質をサイズによって分取し、タンパク質バンドは、クマシーブルー染色によって可視化させた。
【0101】
3.4.2 ウエスタンブロット分析
タンパク質サンプルを、SDS−PAGEゲル上でサイズにより分取し、その後、ナイロン膜に移した。膜を封鎖し、TGF−β3抗体でプローブ探査し、その後洗浄した。TGF−β3タンパク質を、アルカリ性ホスファターゼ結合抗体のBCIP染色により可視化した。
【0102】
実験結果II
4 発現TGF−β3の回収
上記の技術を用いて植物クロロプラストに発現させたTGF−β3を、以下で初めて述べる技術を用いて回収した。本技術によって、先行技術にて記述された回収または精製技術より収率の高いTGF−β、およびより純度の高いTGF−βが産生される。
【0103】
クロロプラスト抽出液を、(pH 8.0において、10mM HEPES、5mM EDTA、2%重量/重量 Triton X−100、0.1M DTTからなる)溶解緩衝液中で1:1希釈した。この混合液を均質化し、超音波処理して溶解を補助した。ついで得られた溶液を、8000xgにて30分間遠心分離した。
【0104】
上記遠心分離によって産生されたペレットを、(pH 8.0において、0.05M トリス塩基、0.01M EDTAからなる)洗浄緩衝液を用いて、元の容量まで再懸濁し、8000xgにて30分間、さらに1回遠心分離した。
【0105】
この回の遠心によって産生されたペレットを洗浄し、ついで(pH 8.0において、0.05M トリス塩基、0.1M DTT、6M尿素からなる)可溶化緩衝液中で10倍希釈まで再懸濁させた(すなわち、9容量の可溶化緩衝液に、1容量のペレット物質を加えた)。得られた溶液を60分間、室温にて攪拌して、再懸濁した溶液を可溶化した。攪拌60分後、可溶化溶液のpHを9.5に調節し、攪拌を室温にてさらに60分間続けた。
【0106】
ついでpHが調節された溶液を、8000xgにて30分間遠心分離し、その間5kDa TFF(接線流ろ過)膜を用いたろ過の工程を用いて、希釈液をろ過緩衝液(pH9.5における、0.05M トリス塩基、0.01M DTT、3M尿素)に交換し、そのようにして産生された溶液を15倍まで濃縮した。次にこの濃縮した溶液(濃縮水)を下記の条件を用いて、再折りたたみにかけた。
【0107】
5 回収TGF−β3の解析
再折りたたみされるTGF−β3の溶液中での存在を、Biorad RC/DCアッセイを用いて確認した。この結果を図11に示す。図11は、タンパク質をクマシーブルーにて標識化した、12% Bis−Tris還元ゲルを用いて得られた結果を示す。レーン(左から右へ1〜10)に以下のように試料を添加した。
レーン1=マーク12標準
レーン2=TGF−β標準
レーン3=溶解物質
レーン4=溶解物質上清
レーン5=洗浄上清
レーン6=可溶化上清
レーン7=可溶化上清
レーン8=可溶化上清
レーン9=ブランク
レーン10=可溶化上清
【0108】
これらの結果によって、本発明の方法を用いて発現させたTGF−β3が、溶解クロロプラスト材料から得られうること、および上記で概説した回収レジームを用いて、本材料を、再折りたたみの前に可溶性上清中に濃縮しうることが確認される。
【0109】
6 発現TGF−β3の再折りたたみ
上記物質を、(すべてpH 9.5において、0.7M CHES、1M NaCl、0.002M還元グルタチオン、0.0004M酸化グルタチオン、0.25mg/mLの本発明にて発現したTGF−β3モノマーからなる)再折りたたみ緩衝液中に希釈した。次にこの再折りたたみ混合液を10℃にて3日間、攪拌しながら維持し、再折りたたみを発生させた。2−(シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸(CHES)の存在下で実施した、この再折りたたみ手順が、特に高収率の正しく折りたたまれたTGF−β3を産生することを本発明者らは発見した。したがって、CHESの存在下で、本発明にしたがって発現させたTGF−βの折りたたみ(または再折りたたみ)が、本発明のとりわけ有用で、有利な実施形態を表している。
【0110】
7 本発明にしたがって発現させた再折りたたみTGF−β3の捕獲
上記のように産生した再折りたたみTGF−β3を、5kDaのMWCOを含む膜で適合した調整済みUF系にて5倍濃縮した。再折りたたみ濃縮液のpHを、氷酢酸を用いて、pH 2.5から2.8まで、段階的に調節した。酸性化した濃縮液をついで、希釈緩衝液(0.02M酢酸ナトリウム、2M硫酸アンモニウム、1M水酸化アルギニン、8.33%(w/w)酢酸)を用いて、1:1の比で希釈し、0.22μmフィルターを介してろ過した。この「調整添加」を、疎水性相互作用クロマトグラフィーによって、再折りたたみTFG−β3を捕獲するために、ブチル−セファロース4・ファースト・フロー分離培地に加えた。ブチル−セファロース4・ファースト・フローカラムを、(pH 3.3において、0.02M 酢酸ナトリウム、1M硫酸アンモニウム、容量酢酸に対して10%容量からなる)洗浄緩衝液/平衡化緩衝液で平衡化した。カラムを、結合したTGF−β3の段階溶出の前に、4カラム容量(CV)の本緩衝化緩衝液で洗浄した。段階溶出を、(pH 3.3における、0.02M酢酸ナトリウム、容量酢酸に対して10%容量、容量エタノールに対して30%容量からなる)溶出緩衝液を用いて実施し、本様式で産生されたTGF−β3溶出液をプールした。
【0111】
プールした溶出液中に産生された精製TGF−β3の分析を、図12に示しており、本発明の方法を用いて植物内に発現したTGF−β3を、本明細書で記述された方法を用いて、再折りたたみTGF−β3を産生するために精製しうることを表している。当然のことながら、これらの方法は、TGF−β3だけではなく、生物学的に活性なTGF−βの回収、再折りたたみおよび捕獲においても利用され得る。上記方法を用いて産生された生物学的に活性なTGF−β3の精製を、以下の手順を用いて代替で、または追加的に実施することができる。
【0112】
8 本発明にしたがって発現したTGF−β3の精製
代替的精製手順において、ブチル−セファロース捕獲精製段階からの溶出液を、4.0(±0.1)にpH調節し、pH 3.9〜4.1において、2.72g/L酢酸ナトリウム三水和物、100mL/L氷酢酸および300mL/L エチルアルコール、を含む緩衝液で、伝導率が7.0mS/cm未満という所望の規格を満たすまで希釈した。次に、調整されたブチル溶出液を、0.22μmフィルターを通してろ過し、次いで、pH 3.9〜4.1おいて、2.72g/L酢酸ナトリウム三水和物、100mL/L氷酢酸、300mL/Lエチルアルコールおよび2.92g/L塩化ナトリウムからなる、洗浄緩衝液および平衡化緩衝液で平衡化したSP−セファロースカラム上に添加した。次いでカラムを、3カラム容量の洗浄緩衝液と平衡化緩衝液で洗浄した。直線勾配0%〜50%の溶出緩衝液(pH 3.9〜4.1において、2.72g/L酢酸ナトリウム三水和物、100mL/L氷酢酸、300mL/Lエチルアルコールおよび29.92g/L塩化ナトリウムからなる)を、15カラム容量にわたってカラムに適用した。ついでカラムを、50%〜100%溶出緩衝液の段階勾配で、続いて2〜3カラム容量の1M塩化ナトリウムで洗浄した。TGF−β3ダイマーを含む、SPセファロース溶出液の画分を、RP−HPLCによって、純度に従ってプールした。プールしたSP−セファロース溶出液を、前処理済みUF/DFシステム(5kDaのNWCO)を用いて、(A278nmによって)12mg/mLのTGF−β3濃度まで濃縮した。ついで、濃縮TFG−β3溶液を、6容量にわたって、構築緩衝液(pH4.0±0.1において、1.2mL/L酢酸、200mL/Lエチルアルコール)へ緩衝液交換した。ろ過TGF−β3溶液をついで、構築緩衝液にて、10±2mg/mL(A278nmによって)のTGF−β3濃度に希釈した。
【0113】
配列情報
TGF−β1の活性断片のアミノ酸配列(配列番号1)
TGF−β2の活性断片のアミノ酸配列(配列番号2)
TGF−β3の活性断片のアミノ酸配列(配列番号3)
TGF−β3の活性断片をコードする野生型DNA配列(配列番号4)
TGF−β3の活性断片をコードする本発明の第二核酸配列(配列番号5)
【0114】
全長TGF−ベータ1をコードするDNA(配列番号6)、シグナルペプチド(イタリック体で示す)、プロペプチド(太字で示す)、ならびに活性断片(通常の文字で示す)を示している。
【0115】
全長TGF−ベータ2をコードするDNA(配列番号7)、シグナルペプチド(イタリック体で示す)、プロペプチド(太字で示す)、ならびに活性断片(通常の文字で示す)を示している。
【0116】
全長TGF−ベータ3をコードするDNA(配列番号8)、シグナルペプチド(イタリック体で示す)、プロペプチド(太字で示す)、ならびに活性断片(通常の文字で示す)を示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物においてTGF−βを発現させる方法であって、前記方法は、
(a)植物細胞に、
(1)植物細胞における転写を調節することができる第一の核酸配列、
(2)TGF−βをコードし、かつ該植物細胞における発現に適合した、第二の核酸配列、ならびに
(3)前記植物細胞において機能する、終止領域をコードする第三の核酸配列、
を含むキメラ核酸配列を導入し、次いで、
(b)前記植物細胞を成長させて、該TGF−βを生成する、
ことを含む、方法。
【請求項2】
核酸配列が植物細胞の葉緑体において発現させるのに適している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
核酸配列が植物細胞の葉緑体において発現されるのに適合した、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
TGF−βがヒトTGF−βである、請求項1〜3いずれかに記載の方法。
【請求項5】
TGF−βがTGF−β3である、請求項1〜4いずれかに記載の方法。
【請求項6】
TGF−βが配列番号1、配列番号2、および配列番号3よりなる群から選択されるTGF−β活性断片を含む、請求項1〜5いずれかに記載の方法。
【請求項7】
TGF−βが全長TGF−βタンパク質を含む、請求項1〜5いずれかに記載の方法。
【請求項8】
TGF−βがTGF−βプロタンパク質を含む、請求項1〜5いずれかに記載の方法。
【請求項9】
第二の核酸が、TGF−βをコードする野生型DNAと比較して、UGCコドンの少なくとも1つの置換を含む、請求項1〜8いずれかに記載の方法。
【請求項10】
第二の核酸が、TGF−βをコードする野生型DNAと比較して、CUGコドンの少なくとも1つの置換を含む、請求項1〜9いずれかに記載の方法。
【請求項11】
第二の核酸が、TGF−βをコードする野生型DNAと比較して、UACコドンの少なくとも1つの置換を含む、請求項1〜10いずれかに記載の方法。
【請求項12】
第二の核酸が、TGF−βをコードする野生型DNAと比較して、GUGコドンの少なくとも1つの置換を含む、請求項1〜11いずれかに記載の方法。
【請求項13】
第二の核酸が、TGF−βをコードする野生型DNAと比較して、CCCコドンの少なくとも1つの置換を含む、請求項1〜12いずれかに記載の方法。
【請求項14】
第二の核酸が、TGF−βをコードする野生型DNAと比較して、AACコドンの少なくとも1つの置換を含む、請求項1〜13いずれかに記載の方法。
【請求項15】
第二の核酸が、TGF−βをコードする野生型DNAと比較して、GACコドンの少なくとも1つの置換を含む、請求項1〜14いずれかに記載の方法。
【請求項16】
第一の核酸配列が、光合成関連遺伝子を発現するプロモーター、遺伝子系遺伝子を発現するプロモーター、プラスチドによりコードされるプラスチド(PEP)RNAポリメラーゼ、または核によりコードされるプラスチド(NEP)RNAポリメラーゼによって認識される遺伝子を発現するプロモーター、プラスチドpsbAプロモーター、およびプラスチド16S rrnプロモーターよりなる群から選択されるプラスチドプロモーターを含む、請求項1〜15いずれかに記載の方法。
【請求項17】
第一の核酸配列が、クラミドモナスpsbAプロモーターのような藻プロモーターを含む、請求項1〜16いずれかに記載の方法。
【請求項18】
第一の核酸配列が細菌trcプロモーターのような細菌プロモーターを含む、請求項1〜17いずれかに記載の方法。
【請求項19】
第一の核酸配列がバクテリオファージT7プロモーターのようなファージプロモーターを含む、請求項1〜18いずれかに記載の方法。
【請求項20】
第一の核酸配列が16srrnプロモーターを含む、請求項1〜19いずれかに記載の方法。
【請求項21】
第一の核酸配列が、
(i)rbcL RBSまたはpsbA RBSのようなプラスチドRBS、
(ii)細菌RBS、および
(iii)T7g10 RBAのようなバクテリオファージRBS、
よりなる群から選択されるリボソーム結合部位(RBS)を含む、請求項1〜20いずれかに記載の方法。
【請求項22】
第一の核酸配列がT7g10リボソーム結合部位を含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
第三の核酸配列が、
i)psbAターミネーター、rbcLターミネーター、rps18ターミネーター、またはpsbCターミネーターのようなプラスチドターミネーター、
ii)細菌ターミネーター、および
iii)バクテリオファージターミネーター、
よりなる群から選択されるターミネーターを含む、請求項1〜22いずれかに記載の方法。
【請求項24】
第三の核酸配列がpsbCターミネーターを含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
キメラ核酸配列が、さらに、形質転換された細胞を選択するための手段を含む、請求項1〜24いずれかに記載の方法。
【請求項26】
第二の核酸配列が配列番号5、または配列番号5に対して少なくとも22%コドン同一性を有する配列を含む、請求項1〜25いずれかに記載の方法。
【請求項27】
第二の核酸配列が配列番号5を含む請求項26記載の方法。
【請求項28】
さらに、組換えTGF−βを優先的に可溶化することができるが、植物細胞成分を可溶化することはできない溶媒にTGF−βを溶解させることを含む、請求項1〜27いずれかに記載の方法。
【請求項29】
溶媒が尿素を含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
さらに、膜分離精製を行って、TGF−βの溶液を濃縮することを含む、請求項1〜29いずれかに記載の方法。
【請求項31】
さらに、活性なTGF−βが生成されるように、CHES(2−(シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸)、またはその機能上の類似物の存在下で、TGF−βを折畳むことを含む、請求項1〜30いずれかに記載の方法。
【請求項32】
CHESが約100mM〜1.0Mの濃度で用いられる、請求項31記載の方法。
【請求項33】
さらに、そのように発現されたTGF−βを医薬の製造において、用いることを含む、請求項1〜32いずれかに記載の方法。
【請求項34】
医薬が瘢痕化または線維症の予防用である、請求項33記載の方法。
【請求項35】
請求項1〜34いずれかに記載の方法によって生成されるTGF−β。
【請求項36】
TGF−βがTGF−β3である、請求項35記載のTGF−β。
【請求項37】
TGF−βが、配列番号1、配列番号2、および配列番号3よりなる群から選択されるTGF−β活性断片を含む、請求項35または請求項36記載のTGF−β。
【請求項38】
TGF−βがTGF−βプロタンパク質を含む、請求項35または請求項36記載のTGF−β。
【請求項39】
(1)植物細胞における転写を調節することができる第一の核酸配列、
(2)TGF−βをコードし、かつ植物細胞における発現に適合した、第二の核酸配列、および
(3)植物細胞において機能する、終止領域をコードする第三の核酸配列、
を含む、キメラ核酸配列。
【請求項40】
植物細胞の葉緑体において発現させるのに適した核酸配列を含む、請求項39記載の核酸。
【請求項41】
植物細胞の葉緑体において発現させるのに適合した核酸配列を含む、請求項40記載の核酸配列。
【請求項42】
請求項3〜請求項27いずれかに記載の核酸を含む、請求項39〜41いずれかに記載の核酸配列。
【請求項43】
請求項39〜請求項42いずれかに記載の核酸で形質転換された植物。
【請求項44】
請求項39〜請求項42いずれかに記載の核酸を含む植物種子。
【請求項45】
請求項1〜34いずれかに1項に従って生成されたTGF−ベータを含む医薬。
【請求項1】
植物においてTGF−βを発現させる方法であって、前記方法は、
(a)植物細胞に、
(1)植物細胞における転写を調節することができる第一の核酸配列、
(2)TGF−βをコードし、かつ該植物細胞における発現に適合した、第二の核酸配列、ならびに
(3)前記植物細胞において機能する、終止領域をコードする第三の核酸配列、
を含むキメラ核酸配列を導入し、次いで、
(b)前記植物細胞を成長させて、該TGF−βを生成する、
ことを含む、方法。
【請求項2】
核酸配列が植物細胞の葉緑体において発現させるのに適している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
核酸配列が植物細胞の葉緑体において発現されるのに適合した、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
TGF−βがヒトTGF−βである、請求項1〜3いずれかに記載の方法。
【請求項5】
TGF−βがTGF−β3である、請求項1〜4いずれかに記載の方法。
【請求項6】
TGF−βが配列番号1、配列番号2、および配列番号3よりなる群から選択されるTGF−β活性断片を含む、請求項1〜5いずれかに記載の方法。
【請求項7】
TGF−βが全長TGF−βタンパク質を含む、請求項1〜5いずれかに記載の方法。
【請求項8】
TGF−βがTGF−βプロタンパク質を含む、請求項1〜5いずれかに記載の方法。
【請求項9】
第二の核酸が、TGF−βをコードする野生型DNAと比較して、UGCコドンの少なくとも1つの置換を含む、請求項1〜8いずれかに記載の方法。
【請求項10】
第二の核酸が、TGF−βをコードする野生型DNAと比較して、CUGコドンの少なくとも1つの置換を含む、請求項1〜9いずれかに記載の方法。
【請求項11】
第二の核酸が、TGF−βをコードする野生型DNAと比較して、UACコドンの少なくとも1つの置換を含む、請求項1〜10いずれかに記載の方法。
【請求項12】
第二の核酸が、TGF−βをコードする野生型DNAと比較して、GUGコドンの少なくとも1つの置換を含む、請求項1〜11いずれかに記載の方法。
【請求項13】
第二の核酸が、TGF−βをコードする野生型DNAと比較して、CCCコドンの少なくとも1つの置換を含む、請求項1〜12いずれかに記載の方法。
【請求項14】
第二の核酸が、TGF−βをコードする野生型DNAと比較して、AACコドンの少なくとも1つの置換を含む、請求項1〜13いずれかに記載の方法。
【請求項15】
第二の核酸が、TGF−βをコードする野生型DNAと比較して、GACコドンの少なくとも1つの置換を含む、請求項1〜14いずれかに記載の方法。
【請求項16】
第一の核酸配列が、光合成関連遺伝子を発現するプロモーター、遺伝子系遺伝子を発現するプロモーター、プラスチドによりコードされるプラスチド(PEP)RNAポリメラーゼ、または核によりコードされるプラスチド(NEP)RNAポリメラーゼによって認識される遺伝子を発現するプロモーター、プラスチドpsbAプロモーター、およびプラスチド16S rrnプロモーターよりなる群から選択されるプラスチドプロモーターを含む、請求項1〜15いずれかに記載の方法。
【請求項17】
第一の核酸配列が、クラミドモナスpsbAプロモーターのような藻プロモーターを含む、請求項1〜16いずれかに記載の方法。
【請求項18】
第一の核酸配列が細菌trcプロモーターのような細菌プロモーターを含む、請求項1〜17いずれかに記載の方法。
【請求項19】
第一の核酸配列がバクテリオファージT7プロモーターのようなファージプロモーターを含む、請求項1〜18いずれかに記載の方法。
【請求項20】
第一の核酸配列が16srrnプロモーターを含む、請求項1〜19いずれかに記載の方法。
【請求項21】
第一の核酸配列が、
(i)rbcL RBSまたはpsbA RBSのようなプラスチドRBS、
(ii)細菌RBS、および
(iii)T7g10 RBAのようなバクテリオファージRBS、
よりなる群から選択されるリボソーム結合部位(RBS)を含む、請求項1〜20いずれかに記載の方法。
【請求項22】
第一の核酸配列がT7g10リボソーム結合部位を含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
第三の核酸配列が、
i)psbAターミネーター、rbcLターミネーター、rps18ターミネーター、またはpsbCターミネーターのようなプラスチドターミネーター、
ii)細菌ターミネーター、および
iii)バクテリオファージターミネーター、
よりなる群から選択されるターミネーターを含む、請求項1〜22いずれかに記載の方法。
【請求項24】
第三の核酸配列がpsbCターミネーターを含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
キメラ核酸配列が、さらに、形質転換された細胞を選択するための手段を含む、請求項1〜24いずれかに記載の方法。
【請求項26】
第二の核酸配列が配列番号5、または配列番号5に対して少なくとも22%コドン同一性を有する配列を含む、請求項1〜25いずれかに記載の方法。
【請求項27】
第二の核酸配列が配列番号5を含む請求項26記載の方法。
【請求項28】
さらに、組換えTGF−βを優先的に可溶化することができるが、植物細胞成分を可溶化することはできない溶媒にTGF−βを溶解させることを含む、請求項1〜27いずれかに記載の方法。
【請求項29】
溶媒が尿素を含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
さらに、膜分離精製を行って、TGF−βの溶液を濃縮することを含む、請求項1〜29いずれかに記載の方法。
【請求項31】
さらに、活性なTGF−βが生成されるように、CHES(2−(シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸)、またはその機能上の類似物の存在下で、TGF−βを折畳むことを含む、請求項1〜30いずれかに記載の方法。
【請求項32】
CHESが約100mM〜1.0Mの濃度で用いられる、請求項31記載の方法。
【請求項33】
さらに、そのように発現されたTGF−βを医薬の製造において、用いることを含む、請求項1〜32いずれかに記載の方法。
【請求項34】
医薬が瘢痕化または線維症の予防用である、請求項33記載の方法。
【請求項35】
請求項1〜34いずれかに記載の方法によって生成されるTGF−β。
【請求項36】
TGF−βがTGF−β3である、請求項35記載のTGF−β。
【請求項37】
TGF−βが、配列番号1、配列番号2、および配列番号3よりなる群から選択されるTGF−β活性断片を含む、請求項35または請求項36記載のTGF−β。
【請求項38】
TGF−βがTGF−βプロタンパク質を含む、請求項35または請求項36記載のTGF−β。
【請求項39】
(1)植物細胞における転写を調節することができる第一の核酸配列、
(2)TGF−βをコードし、かつ植物細胞における発現に適合した、第二の核酸配列、および
(3)植物細胞において機能する、終止領域をコードする第三の核酸配列、
を含む、キメラ核酸配列。
【請求項40】
植物細胞の葉緑体において発現させるのに適した核酸配列を含む、請求項39記載の核酸。
【請求項41】
植物細胞の葉緑体において発現させるのに適合した核酸配列を含む、請求項40記載の核酸配列。
【請求項42】
請求項3〜請求項27いずれかに記載の核酸を含む、請求項39〜41いずれかに記載の核酸配列。
【請求項43】
請求項39〜請求項42いずれかに記載の核酸で形質転換された植物。
【請求項44】
請求項39〜請求項42いずれかに記載の核酸を含む植物種子。
【請求項45】
請求項1〜34いずれかに1項に従って生成されたTGF−ベータを含む医薬。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2010−502237(P2010−502237A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527880(P2009−527880)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【国際出願番号】PCT/GB2007/003416
【国際公開番号】WO2008/032035
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(508275021)レノヴォ リミテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【国際出願番号】PCT/GB2007/003416
【国際公開番号】WO2008/032035
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(508275021)レノヴォ リミテッド (4)
【Fターム(参考)】
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