プラズマを使用したコヒーレントなビームの高速位相スクランブル化
熱処理中に基板表面の処理領域に均一な放射束密度を発生するために非常に高い周波数でレーザービームが変調される。ビームの変調は、レーザービームをプラズマに通して、レーザービーム内に位相ランダム化を生じさせることによって達成される。この方法は、パルスレーザーアニーリング、アブレーション及びウェハステッパー照明のような、強力で均一な照明が望まれる用途に使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
[0001]本発明の実施形態は、一般に、レーザーのようなコヒーレントな光源に関する。より詳細には、本発明は、パルス化コヒーレント光源を使用して短い時間間隔中に強力で均一な照明を与える方法及び装置に向けられる。
【0002】
関連技術の説明
[0002]集積回路(IC)市場は、常に、より大きなメモリ容量、より速いスイッチング速度、及びより小さな特徴部サイズを要求している。これらの要求に対処するために業界が取る主なステップの1つは、大きな炉でのシリコンウェハのバッチ処理から、小さなチャンバ内での単一ウェハ処理へと切り換えることである。
【0003】
[0003]このような単一ウェハ処理中に、ウェハは、典型的に、高い温度に加熱され、ウェハ内に画成された複数のICデバイスにおいて種々の化学的及び物理的反応が生じるようにする。特に重要なこととして、ICデバイスの有利な電気的性能には、注入領域をアニールすることが要求される。アニールすると、以前にアモルファスとされたウェハの領域から、より結晶性の構造が再生成され、それらの原子を基板又はウェハの結晶格子へ合体することで、ドーパントが活性化される。アニールのような熱プロセスでは、比較的大量の熱エネルギーを短い時間内にウェハに与え、その後、ウェハを急速に冷却して、熱プロセスを終了させることが要求される。現在使用されている熱プロセスは、例えば、急速熱処理(RTP)及びインパルス(スパイク)アニーリングを含む。
【0004】
[0004]RTPプロセスの欠点は、ICデバイスを通した全ウェハの均一加熱が、通常、シリコンウェハの頂部から数ミクロンしか得られないことである。これにより、ウェハをいかに速く加熱し冷却できるかが制限される。更に、全ウェハが高い温度になると、熱を放出できるのが、周囲の空間又は構造体だけである。その結果、今日最先端のRTPシステムは、400℃/秒の上昇率及び150℃/秒の下降率を得るのに苦心している。RTP及びスパイクアニーリングプロセスは、広く使用されているが、現在の技術は、理想的なものではなく、熱処理中のウェハ温度をあまりにゆっくり上昇させ、従って、ウェハを高い温度にあまりに長時間露出させる傾向がある。これらの熱履歴型の問題は、ウェハサイズの増加、スイッチング速度の上昇、及び/又は特徴部サイズの減少と共に、益々厳しいものとなる。
【0005】
[0005]在来のRTP型のプロセスで生じた問題の幾つかを解決するために、種々のスキャニングレーザーアニール技術を使用して、基板の表面(1つ又は複数)がアニールされている。一般的に、これらの技術は、基板が小さな領域に配送されるエネルギーに対して並進移動又はスキャニングされる間に、基板の表面上の小さな領域に一定のエネルギー束を配送するものである。厳密な均一性の要求と、基板表面にわたるスキャン領域の重畳を最小にする複雑性のために、これら形式のプロセスは、基板の表面上に形成される接触レベルデバイスを熱処理するのに有効ではない。
【0006】
[0006]また、パルスレーザーアニール技術を使用して、基板の表面上の限定領域をアニールし、基板の表面上に良好に画成されたアニール及び/又は再溶融領域が形成されている。一般的に、パルスレーザーアニールプロセス中に、基板の表面上の種々の領域が、レーザーから配送される望ましい量のエネルギーに露出され、基板の望ましい領域の優先的加熱を生じさせる。パルスレーザーアニール技術は、基板の表面にわたってレーザーエネルギーをスイープする在来のプロセスに勝る効果を有する。というのは、基板の望ましい領域にわたって均一なアニールを保証するために隣接スキャン領域間の重畳を厳密に制御する必要性が問題にならないからである。それは、基板の露出領域の重畳が、典型的に、ダイ間の未使用スペース又は「切り口」線に制限されるためである。
【0007】
[0007]収縮する半導体デバイスサイズ及び厳格なデバイス処理特性のために、基板表面上に形成される異なるデバイスへの各パルス中に配送されるエネルギーの量の変化の公差は非常に低い。これらのデバイス要件は、基板の露出表面にわたる配送エネルギーの変化に対する公差をかなり低いものにする(即ち、<5%変化)。しかしながら、レーザーのようなコヒーレントな光源を使用すると、斑点や回折縁のようなコヒーレンス効果を導入することになり、基板表面の小さな領域に入射する放射エネルギーに非均一性を生じさせる。
【0008】
[0008]特定のレーザーアニール用途に対してビームを変形するために、レーザー光源と基板との間に種々の光学的装置が介在されることがある。このような装置は、光学的操向システム、パルスストレッチャー、ビームスプレッダー、ビームホモジェナイザー、及び他の装置を含んでもよい。コヒーレントなレーザー光がこのような装置を通過するときに、粗い表面又は非均質な媒体から光が散乱して、多数のコヒーレントな波頭(wavefronts)を形成し、これらは、散乱場所から放射され、位相差及び/又は強度変動を受ける。コヒーレントな波頭は、多数の小さな明及び暗の点又はスポットで特徴付けられるランダム強度パターンを生じるように干渉することがあり、ここで、明スポットは、構造的に干渉した散乱波に対応し、暗スポットは、破壊的に干渉した波に対応するものである。このような強度パターンは、斑点としても知られており、コヒーレントな光が粗い表面又は非均質な媒体から散乱されるときの普通の現象である。斑点に加えて、レーザー光が、例えば、不透明な物体の近くを通過するか、又はアパーチャー及びレンズを通過したときには、回折縁が形成されることもある。
【0009】
[0009]レーザーアニーリング中に基板の表面により均一な照明又は放射束密度を生じさせるためには、斑点や回折縁のようなコヒーレンス効果を排除又は最小にすることが望まれる。1つのそのような方法は、複数の斑点パターンを積分して、より均一な放射束をターゲットエリアの表面に発生するという作用を有する回転ディフューサーを使用することである。しかしながら、この解決策は、回転速度が当該プロセス積分時間より著しく速い場合にしか有効でない。例えば、プロセス時間がパルスレーザーに対して50ナノ秒(ns)のパルス幅(パルス期間とも称される)で表されると共に、回転ディフューサーがkHz時間スケールの回転周波数を有する場合には、回転ディフューサーがレーザーにより「ストローブ」され(strobed)、基板が斑点パターンを「見ることになる」。パルスレーザーを使用すると、レーザーのパルス幅内でコヒーレンス効果を除去することが要求される。一般的に、レンズ及び/又はディフューサーの機械的運動を使用して、ナノ秒の時間スケールにわたりコヒーレンス効果を排除することは、不可能である。
【0010】
[0010]それ故、短い時間スケールにわたり斑点や回折縁のようなコヒーレンス効果を減少し且つレーザーアニーリング中に基板表面により均一な照明を与える方法及び装置が要望される。
【発明の概要】
【0011】
[0011]本発明の実施形態は、レーザーアニーリング中にレーザービームのコヒーレンス効果を減少して基板に強力で均一な照明を与える。レーザービームをプラズマに通すことにより非常に高い周波数においてレーザービームが空間的に変調される。
【0012】
[0012]本発明の一実施形態は、コヒーレントな光ビームのコヒーレンス効果を減少するための装置を提供する。この装置は、コヒーレントな光ビームを収束するための第1のレンズと、光ビームをコリメートするための第2のレンズとを有するエンクロージャーを備え、このエンクロージャーは、プラズマ形成用のガスを収容するように適応される。コヒーレントな光ビームは、ガスをイオン化して、光ビームを変調するプラズマを発生する。
【0013】
[0013]本発明の別の実施形態は、コヒーレントな光ビームのコヒーレンス効果を減少するための装置を提供する。この装置は、エンクロージャーを通して光ビームを透過するための第1の光学素子及び第2の光学素子を有するエンクロージャーと、エンクロージャーの内側にプラズマを与えるためのプラズマ源とを備えている。エンクロージャーは、プラズマ形成用のガスを収容するように適応される。コヒーレントな光ビームは、このビームを変調するプラズマに通される。
【0014】
[0014]本発明の別の実施形態は、コヒーレントな光ビームのコヒーレンス効果を減少するための方法を提供する。この方法は、一般的に、第1の光学素子及び第2の光学素子を有し且つガスを収容するエンクロージャーを準備し、第1の光学素子でコヒーレントな光ビームを受け取り、ガスからプラズマを形成し、コヒーレントな光ビームをプラズマに通し、コヒーレントな光ビームを変調し、その変調された光ビームを第2の光学素子で受け取ることを含む。
【0015】
[0015]本発明の別の実施形態において、コヒーレントな光ビームのコヒーレンス効果を減少するための熱処理システムが提供される。このシステムは、コヒーレントな光を与えるレーザー源と、コヒーレントな光が通されるプラズマ発生モジュールと、このプラズマ発生モジュールを通過するコヒーレントな光を使用して処置される基板を収容するための熱処置チャンバとを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
[0016]本発明の前述した特徴を詳細に理解できるように、簡単に概要を上述した本発明を、幾つかが添付図面に例示された実施形態に関して、以下に詳細に説明する。しかしながら、添付図面は、本発明の典型的な実施形態のみを例示したもので、従って、本発明の範囲は、それに限定されるものではなく、本発明は、他の等しく有効な実施形態も包含できることに注意されたい。
【図1】本発明の一実施形態によるレーザーアニールシステムの概略図である。
【図2A】本発明の一実施形態によるビーム変調器の概略図である。
【図2B】ここに述べるビーム変調プラズマ内のプラズマ領域の概略図である。
【図3A】ここに述べる付加的な磁界実施形態のための概略図である。
【図3B】ここに述べる付加的な磁界実施形態のための概略図である。
【図3C】ここに述べる付加的な磁界実施形態のための概略図である。
【図3D】ここに述べる付加的な磁界実施形態のための概略図である。
【図3E】ここに述べる付加的な磁界実施形態のための概略図である。
【図3F】ここに述べる付加的な磁界実施形態のための概略図である。
【図4A】ここに述べるビーム変調器のための付加的な実施形態の概略図である。
【図4B】ここに述べるビーム変調器のための付加的な実施形態の概略図である。
【図4C】ここに述べるビーム変調器のための付加的な実施形態の概略図である。
【0017】
[0022]理解を容易にするため、各図面に共通の同じ要素を示すのにできるだけ同じ参照番号を使用する。一実施形態の特徴は、更に詳述しなくても、他の実施形態にも組み込めることが意図される。
【詳細な説明】
【0018】
[0023]本発明の実施形態は、非常に高い周波数においてレーザービームを空間的に変調又は「ディザリング」することにより、基板に対するレーザービームのコヒーレンス効果を減少する。この点に関して、ディザリングという語は、小さなスケールにおいて光ビームの経路をランダム化することを指す。レーザービームの非常に高い周波数のディザリングは、レーザービームをプラズマに通すことにより達成される。
【0019】
[0024]図1は、レーザーアニールシステム100を概略的に示す。レーザーアニールシステム100は、レーザーアニール処理チャンバ121と、システムコントローラ130と、変調された光ビーム21を発生する光学システム120とを備えている。レーザーアニール処理チャンバ121は、1つ以上のチャンバ壁126及び光学的に透明な窓128を有する包囲された処理領域127を収容することができる。また、レーザーアニール処理チャンバ121は、基板10を支持するための基板支持体114及び基板支持面116も収容することができる。
【0020】
[0025]変調された光ビーム21は、基板10の表面より断面積が実質的に小さいので、基板支持体114は、変調された光ビーム21に対して基板10を並進移動し、基板10の全表面を変調された光ビーム21で処理できるように適応される。また、ビームが、基板支持体114に対して移動されてもよいし、又は変調された光ビーム21及び基板支持体114の両方が移動して、変調されたビーム21が基板10の表面における所定のアニール領域を横切ってスキャンされてもよいことが意図される。
【0021】
[0026]処理中に、処理領域127は、真空ポンプ124の使用によって排気され及び/又は不活性ガス源125を使用してパージされ、酸素のような望ましくないガスの分圧を減少することができる。更に、基板10の表面を基板支持体114の基板支持面116及び熱交換装置115と熱接触状態にすることで、熱処理中に基板の温度を制御することが望まれてもよい。熱交換装置115は、一般的に、アニーリングプロセスの前、その間、又はその後に、基板支持体114及び基板10を加熱及び/又は冷却するように適応される。
【0022】
[0027]システムコントローラ130は、一般的に、ここで説明する光学システム120及びレーザーアニール処理チャンバ121内に収容された種々のコンポーネントを制御するように適応される。システムコントローラ130は、一般的に、ここに述べる熱処理技術の制御及び自動化を容易にするように設計され、典型的に、中央処理ユニット(CPU)(図示せず)、メモリ(図示せず)、及び支援回路(又はI/O)(図示せず)を含むことができる。ソフトウェアインストラクション及びデータは、CPUに命令するためにコード化してメモリに記憶することができる。コントローラにより読み取り可能なプログラム(又はコンピュータインストラクション)は、基板に対してどのタスクを遂行できるか決定できる。プログラムは、コントローラによって読み取り可能なソフトウェアであり、レーザーの出力に対する基板支持体の位置、各レーザーパルス中に配送されるエネルギーの量、1つ以上のレーザーパルスのタイミング、各パルスに対する時間の関数としての強度、基板の温度、各レーザー源から基板へ配送される各パルスの波長、及びその組合せを監視及び制御するためのコードを含むのが好ましい。
【0023】
[0028]また、図1は、光学システム120も概略的に示しており、これは、光源102(例えば、パルスレーザー)、ビーム変調器103、ドーズ制御システム104、パルスストレッチャーアセンブリ106、ビームホモジェナイザーアセンブリ108、及び中継光学アセンブリ110を備えている。光学システム120は、基板10の表面上のアニール領域にわたる希望の二次元形状を有する均一量のエネルギー又は「映像」を配送又は投影し、これら領域内の希望のエリアを優先的にアニール及び/又は溶融するように適応されてもよい。
【0024】
[0029]ここに述べる半導体基板に対してレーザーアニールプロセスを遂行するのに要求されるエネルギーの量は、かなり多い。例えば、光源102から配送されるエネルギーのドーズは、8から10ナノ秒(ns)のパルス幅にわたって約1から約10ジュールでよく、これは、各パルスにおいて約100MWから約1250MWの平均合計電力をアニール領域へ配送することに等しい。アニール領域が約4mm2から約1000mm2の面積を有する場合には、平均エネルギー密度が約0.1MW/mm2から約313MW/mm2となる。各パルス中の任意の時間に配送される瞬時電力は、エネルギーパルスのプロフィールの変動のために、平均より相当高いこともあるし低いこともある点に注意されたい。
【0025】
[0030]光源102は、一般的に、パルスレーザーアニールプロセスを遂行するのに使用される電磁エネルギーを配送するように適応される。レーザーアニールプロセスの有効性は、アニールされるべき材料による光源102から配送されるエネルギーの透過、吸収及び反射に依存するので、配送されるエネルギーの1つ又は複数の波長(λ)を、望ましい量のエネルギーを基板内の望ましい深さへ配送するように同調させることができる。光の各光子により配送されるエネルギーの量も、波長の関数として変化し(E=hc/λ)、従って、波長が短いほど、光の各光子によって配送されるエネルギーが大きくなる。しかしながら、あるケースでは、シリコンのような基板材料が、厚み及び波長と共に変化する吸収エッジを有し、基板材料により吸収される波長を制限する。それ故、基板が作られる材料の厚み及び形式に基づいて、放出される放射の波長(1つ又は複数)を変化させて、基板への望ましいエネルギー伝達を達成し、基板の露出領域へのダメージを最小にすると共にその均一な加熱を促進することができる。
【0026】
[0031]光源102は、例えば、約1064nm未満の波長のエネルギーを、主としてシリコンを含有する基板へ配送するように適応されてもよい。別の実施例において、レーザーアニーリングプロセスは、約800ナノメートル(nm)未満の波長で配送される放射を使用して、シリコン含有基板において行うことができる。或いは又、光源102から主としてシリコンを含有する基板へ配送される光学エネルギーの波長は、約532nmでもよい。別の実施例において、エネルギー源から主としてシリコンを含有する基板へ配送される光学エネルギーの波長は、約216nm又は約193nmである。更に別の実施例において、光源102は、約266nmから約1064nmの波長のエネルギーを配送するように適応されるNd:YAG(ネオダインドープのイットリウムアルミニウムガーネット)を含むものを使用できる。
【0027】
[0032]一般的に、現在市販されているレーザーは、望ましいパルスレーザーアニールエネルギーレベル(例えば、>2ジュール)の上位端付近のエネルギーを配送することができないので、一実施形態において、光源102は、望ましい量のエネルギーを基板の表面へ配送するように出力が合成される複数のレーザーで構成される。しかしながら、アニールプロセスに使用されるエネルギーパルスの特性が最適化又は制御されない場合には、基板へのダメージが生じることになる。通常、エネルギーパルス特性は、これに限定されないが、合計エネルギー量、エネルギー束、エネルギー密度、及び/又はパルス幅を含むことができる。エネルギーパルス特性が最適化されない場合は、基板の表面上の溶融領域の急速な加熱のために誘起されるストレスによって基板へのダメージが一般的に生じる。急速な加熱は、基板に音響衝撃波を発生して、クラックを生じさせ、ストレスを誘起し、さもなければ、基板の種々の領域にダメージを及ぼすことになる。
【0028】
[0033]一実施例において、光源102は、532nmのような望ましい波長において約6nsから約80nsのパルス幅で約1から10ジュールのエネルギーを配送するように適応される。別の実施例において、光源102は、532nmのような望ましい波長において約20nsから約30nsのパルス幅で約1から10ジュールのエネルギーを配送するように適応されてもよい。或いは又、光源102は、748nm及び/又は1064nmのような波長において約8nsから約80nsのパルス幅で約1から10ジュールのエネルギーを配送するように適応されてもよい。
【0029】
[0034]光学システム120の光源102に加えて、レーザーアニーリングプロセス中に基板10の表面に配送されるエネルギーのタイミング及び量を制御するために光源102とレーザーアニール処理チャンバ121との間にドーズ制御システム104を置くことができる。一般的に、パルスレーザー形式の光源102から配送されるエネルギーの信頼性及び反復性を改善するために、パルスレーザー光源の出力が、望ましい周波数で連続的にパルス化され、配送されるパルスの一部分だけがドーズ制御システム104を通過して基板10の表面へ進むことが許容される。従って、ドーズ制御システム104は、望ましい時間に光学システム120の他のコンポーネントへのエネルギーのパルスの配送を制御することができる。
【0030】
[0035]ほとんどの在来のレーザーは、望ましいプロフィールを有するパルスを配送することができないので、光学システム120から基板へ配送されるパルスの各々は、基板へのダメージを防止し及び/又はパルスレーザーアニールプロセスの結果を最適化するように調整する必要がある。また、光学システム120は、パルスレーザーアニーリングプロセス中に基板の表面へ配送される配送光エネルギーのプロフィール又は形状を時間の関数として最適化するのに使用されるパルスストレッチャー106を備えることもできる。
【0031】
[0036]また、光学システム120は、基板の表面上のアニール領域内に投影されるべき正方形、長方形又は他の形状の「映像」にわたるエネルギーの拡散の均一性を改善するのに使用されるビームホモジェナイザーアセンブリ108を備えることもできる。一般的に、ビームホモジェナイザーアセンブリ108は、「映像」の非均一エレメントを修正するので、基板の表面上のアニール領域により均一なエネルギー分布を与えるのに使用されるレンズ、アパーチャー又は他の光学的コンポーネントのような種々の光学的コンポーネントを含む。一実施形態において、ビームホモジェナイザーアセンブリ108は、パルスストレッチャーアセンブリ106から配送される複合エネルギーパルスを均質化するように光学システム120に位置される。
【0032】
[0037]また、光学システム120は、光学システム120の上流コンポーネントから送られた映像を、レーザーアニール処理チャンバ121内に位置された基板支持面116(図1)上に位置された基板10の表面へ向けるのに使用される光学コンポーネントのグループを含む中継光学アセンブリ110を備えることもできる。一般的に、中継光学アセンブリ110は、基板10の表面上のアニール領域を埋めるように映像の位置、向き、及びサイズをセットできるようにする多数のミラー、レンズ、及び他の普通の光学コンポーネントを含む。
【0033】
[0038]上述したビームホモジェナイザーアセンブリ108は、均質なビームプロフィール、即ちフラットトップのビームプロフィールを、ガウスビームプロフィールのような、レーザーによって発生された非フラットなビームプロフィールから発生するように適応される。非コヒーレントな光源の場合に、ビームホモジェナイザーアセンブリ108は、通常、高電力光源からターゲットエリアの均一照明を保証するように適応される。しかしながら、ビームホモジェナイザーは、コヒーレントな光ビームのターゲットエリアにおける斑点や回折縁のようなコヒーレンス効果を防止するものではない。
【0034】
[0039]ナノ秒の時間スケールでコヒーレントな光源のコヒーレンス効果を減少するために、光学システム120に高速ビーム変調器103を含ませることができる。本発明の一実施形態において、ビーム変調器103は、コヒーレントな光源102の後であってドーズ制御システム104の前に位置される。別の実施形態において、ビーム変調器103は、ドーズ制御システム104の後であってパルスストレッチャーアセンブリ106の前に位置される。更に別の実施形態において、ビーム変調器103は、パルスストレッチャーアセンブリ106の後であってビームホモジェナイザーアセンブリ108の前に位置される。しかしながら、ビーム変調器103は、光源102と中継光学アセンブリ110との間の場所に位置されてもよい。
【0035】
[0040]図2Aは、ナノ秒の時間スケールでコヒーレントな光パルスを空間的に変調することのできるビーム変調装置103の一実施形態を示す。このビーム変調器103は、エンクロージャー203と、ガス供給減212と、真空システム213と、磁界を発生するためのソレノイド208と、このソレノイド208へ電流を与えるための電源220とを備えている。別の実施形態において、ソレノイド208を、1つ以上のリング磁石に置き換えることができる。更に別の実施形態において、ビーム変調器103がソレノイドをもたなくてもよい。
【0036】
[0041]エンクロージャー203は、エンクロージャー203に結合された2つのレンズ201を備えている。これらレンズ201は、エンクロージャー203を通過する光ビームを収束及び再コリメートするためにエンクロージャー203の両端に配設される。各レンズ201は、光ビームの収束及び再コリメーションを許す収斂及び発散レンズのような1つ以上のレンズの組合せで構成されてもよい。一実施形態において、各レンズ201は、光ビームの収束及び再コリメーションを許容するように適当に選択された収斂レンズ(例えば、平凸、二重凸)である。レンズ201は、エンクロージャー203に結合されて、真空シールを形成する。エンクロージャー203は、管の形状を有するが、他の形状が使用されてもよく、また、エンクロージャー203は、ガラス、石英、金属又は他の材料で作られてもよい。一実施形態において、エンクロージャー203は、真空チャンバとして機能するように適応され、レンズ201は、エンクロージャー203に結合されて、真空シールを形成する。
【0037】
[0042]ガス供給源212は、エンクロージャー203に結合されて、それと流体連通する。ガス供給源212は、エンクロージャー203内にプラズマを形成できるようにするために、窒素(N2)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、又は他のガス、及びその組合せのような不活性ガス又は希ガスを与えることができる。不活性ガス又は希ガスは、プラズマ形成のための他のガスを使用して生成されてビーム変調器103の光学及び/又はプラズマ特性に悪影響を及ぼし得る化学的コンパウンドの合成を防止するために使用できる。また、ガス供給源212は、ガス流量を制御するための質量流量コントローラ又は他の適当な手段を含むこともできる。
【0038】
[0043]エンクロージャー203内のガス圧力は、エンクロージャー203に結合されてそれと流体連通する真空システム213に含まれたバルブ(図示せず)により調整することができる。また、ガス圧力は、プラズマ密度と、プラズマを通過する光ビームの変調とを制御する上で助けとなるように調整することができる。一実施形態において、ガス圧力は、約50ミリトールから約760トールまでの範囲でよい。
【0039】
[0044]また、ビーム変調器103は、エンクロージャー203の外部に配設されたソレノイド208を備えることもできる。図2Aは、エンクロージャー203を取り巻くソレノイド巻線209の断面を示す。電源220は、巻線209に電流を与え、ソレノイド208内及びエンクロージャー203内に磁界を生成する。電流方向210(“x”で示す)は、紙面に向かって進む方向であり、一方、電流方向211(点で示す)は、紙面から出て来る方向であり、図示された方向に磁界線206を発生する。別の実施形態において、電流方向を逆にして、磁界線206の方向を逆転してもよい。一実施形態において、電源220は、異なる電流値、ひいては、異なる磁界強度を与えるように調整できるDC電源である。別の実施形態において、電源220は、パルス状のDC電流を与えてもよい。更に別の実施形態において、電源220は、AC電源でもよい。
【0040】
[0045]システムコントローラ130は、ビーム変調器103と通信し、その中のコンポーネントの制御を容易にするように適応できる。例えば、システムコントローラ130は、ガス供給源212、真空システム213、及び電源220と通信し、ビーム変調器103のパラメータ、例えば、ビーム変調器103に対するガス流量、ガス圧力、ソレノイド電流及び磁界強度を制御することができる。また、システムコントローラ130は、ビーム変調器103及び/又は光学システム120にも含まれる種々のトランスジューサ、センサ、及び光学モニタと通信して、ビーム変調器103のパラメータ及び/又は変調されたビーム204を監視し、ビーム変調器103の性能を最適化するように設計された所定のソフトウェアインストラクションに基づいてビーム変調器103の自動制御を行うこともできる。
【0041】
[0046]図2Aに示されたビーム変調器103は、変調されるべきレーザービームにより「自己発生」されるレーザー発生プラズマ(LPP)を使用する。エンクロージャー203は、真空システム213により所定の圧力へ排気され、ガス供給源212から不活性ガス又は希ガスがエンクロージャー203へ導入される。次いで、プラズマ点火の前にエンクロージャー203内に適当なガス圧力を与えるように、不活性ガスの流量及び真空ポンピング率が調整される。パルスレーザーにより発生されるような、コリメートされたコヒーレントな光ビーム200は、第1レンズ201を通してエンクロージャー203へ向けられ、レンズ201の焦点225付近の小さな領域内に強力な光フィールドを発生するように収束される。光フィールドの強度が充分高いときには、ガスがイオン化され、雪崩プロセスを経てビーム変調プラズマ207が発生され、これにより、自由電子が入射光フィールドにより加速されて、ガス原子(又は分子)の衝撃イオン化及び電子密度のカスケード成長を生じさせる。電子密度の成長は、式(1)で近似することができる。
【0042】
dN/dt=viN (1)
[0047]Nは、電子密度であり、viは、レーザー強度に比例するイオン化率である。一実施形態において、焦点225付近のコヒーレントな光ビーム200の放射束密度は、約107W/cm2から約3.1x1010W/cm2の範囲である。コヒーレントな光ビーム200がビーム変調プラズマ207を通過してそれと相互作用するときに、コヒーレントな光ビーム200は、空間的に変調又はディザリングされて、変調されたビーム204を発生することができ、これは、次いで、第2のレンズ201を通過して、再コリメートされ、光学システム120の他のコンポーネントへ向けられる。
【0043】
[0048]ビーム変調プラズマ207によるコヒーレントな光ビーム200の空間的変調は、式(2)により近似できるプラズマの屈折率によって説明することができる。
【0044】
n2=1−ωp2/ω2 (2)
[0049]ここで、nは、プラズマの屈折率であり、ωは、プラズマを通過する光の周波数であり、ωpは、式(3)で示す電子プラズマ周波数である。
【0045】
ωp=(Ne2/ε0me)0.5 (3)
[0050]Nは、プラズマの電子密度(以下、プラズマ密度と称する)であり、eは、電子の電荷であり、meは、電子の質量であり、ε0は、自由空間の誘電率である。式(2)は、プラズマの屈折率が、プラズマを通過する光の周波数ωに依存することを示している。式(3)を式(2)と結合して、式(4)を得ることができる。
【0046】
n2=1−Ne2/(ε0meω2) (4)
[0051]式(4)は、プラズマ密度が変化するときに、プラズマの屈折率が変化することを示している。臨界プラズマ密度Ncは、式(4)の右辺の第2項を1にセットすることにより定義することができ、これは、式(5)を生じる。
【0047】
Ne=(ω2meε0)/e2 (5)
[0052]例えば、コヒーレントな光ビーム200が532nmの波長を有する場合に、臨界密度が約3.95x1021cm−3となる。式(4)は、N>Ncのときには、プラズマの屈折率が虚数であり、プラズマは、プラズマに入射する光に対してほぼ全反射になることを示している。N<Ncの場合は、屈折率は実数であるが、1未満であり(磁界の不存在中で)、入射光は、プラズマを透過することができる。
【0048】
[0053]プラズマ密度は、プラズマ全体にわたり、ある位置から別の位置まで時間と共に変化し、例えば、プラズマと相互作用する電界及び磁界の局所的変動によりプラズマ密度に局所的な変動が生じることがある。図2Bは、ある時点におけるビーム変調プラズマ207の小さなプラズマ領域237を概略的に示している。ビーム変調プラズマ207は、多数のプラズマ領域237を含む。周波数ωの光線230は、プラズマ領域237に入射するコリメートされたコヒーレントな光ビーム200の隣接部分を表す。光線230は、プラズマ領域237を通過し、ビーム変調プラズマ207から出て来て、変調されたビーム204の隣接部分を形成する。
【0049】
[0054]プラズマ領域237は、境界221をもつセル236へと分割され、各セル236は、そのプラズマ密度及びそれに対応する屈折率が、各隣接セル236のプラズマ密度及び屈折率と異なってもよい。プラズマ密度及び屈折率は、境界221を横切ってビーム変調プラズマ207全体を通じて徐々に変化し得るが、説明を簡略化するために、本質的な結果を保持しながら、境界221が異なる屈折率間の界面として処理されることを理解されたい。
【0050】
[0055]光線230がプラズマ領域237に入るときに、各光線230は、複数のセル236を通過し、各境界221において反射及び屈折されることがある。屈折された光線230だけが示されている。というのは、それらは、プラズマを透過して、変調されたビーム204を形成するからである。各光線230の複数の屈折は、各光線230の方向及び光学経路長さをランダム化するという効果を有する。このランダム化プロセスは、各光線230がビーム変調プラズマ207の多数のプラズマ領域237を通過するときに繰り返される。光学経路長さのランダム化は、隣接光線230と、得られる変調されたビーム204の隣接部分との間の位相関係を「スクランブル化」する。
【0051】
[0056]図2Bに示すプラズマ領域237は、ビーム変調プラズマ207の時間的な「スナップショット」を表す。ビーム変調プラズマ207は、時間的に進化するので、光線230の相対的位相関係及び方向も、時間的に進化して、光線230の進行中位相「スクランブル化」及び方向ランダム化を行わせ、「ディザリング」又は空間的変調されたビーム204を生じさせる。更に、コヒーレントな光ビーム200により発生される「自己発生」プラズマは、ビーム変調プラズマ207が、時間スケール上、コヒーレントな光ビーム200のパルス幅内で進化することを意味する。例えば、一実施形態において、コヒーレントな光ビーム200のパルス幅は、約8nsなので、ビーム変調プラズマ207、ひいては、変調されたビーム204も、8nsの時間スケール内で進化し得る。光線230は、コヒーレントな光ビーム200のパルス幅内で方向及び位相関係を何回も変化することがある。光線230の非常に迅速な位相「スクランブル化」及び方向ランダム化は、基板10のエリアに投影される斑点又は縁パターンの位置(ディザリング)を迅速に且つランダムにシフトさせるという効果を有するので、パルス幅のような適当な時間間隔にわたって平均化したときに、基板エリアの照明を均一なものにすることができる。
【0052】
[0057]式(4)は、プラズマの屈折率がプラズマ密度に依存することを示し、従って、プラズマの屈折率が虚数でプラズマがほぼ全反射となるケースを回避するようにプラズマ密度を制御することが望まれる。更に、プラズマの屈折率が実数であるケースでは、散乱によるビームエネルギーの過剰なロスを回避しながらコヒーレントな光ビーム200の空間的変調を最適化するようにプラズマ密度を制御することが望まれる。
【0053】
[0058]プラズマ密度は、例えば、プラズマ形成に使用されるガスの圧力及び温度と、プラズマと相互作用し得る電磁界とに依存することがある。エンクロージャー203内のガス圧力は、ガス供給源212からのガスの流量及び真空システム213内のバルブを調整することにより制御することができる。一般的に、プラズマ密度は、ガス圧力と共に増加する傾向がある。プラズマ密度の付加的な調整は、磁界線に沿って電子を集中する上で助けとなる外部磁界により行うことができる。また、外部磁界の印加は、プラズマ内の不安定さも促進し、これは、短い時間スケールでプラズマ密度の変化を増強し、ビームの変調を容易にすることができる。ここで、「外部磁界」という語は、コヒーレントな光ビーム200又はビーム変調プラズマ207により発生されるのではなく、ソレノイドのような別の発生源により発生されてエンクロージャー203内に磁界を生成することのできる磁界を指示するのに使用される。
【0054】
[0059]図3A−図3Fは、ここに述べる実施形態のための磁界を示す概略図である。図3Aは、永久磁石(例えば、棒磁石)を使用して、ビーム変調プラズマ207と相互作用する外部磁界を与える一実施形態を示す。第1の磁石301及び第2の磁石302がエンクロージャー203の周りに配設されて、図示されたように磁界線206を発生する。
【0055】
[0060]図3Bは、エンクロージャー203の周りに配置された電磁石303及び304により発生される磁界についての別の実施形態を示す。電磁石303、304の巻線209は、図示された磁界線206を発生する電流方向210、211を有する。電磁石は、磁化可能な材料、例えば、鉄又は他の強磁性材料で作られたコアを含むことができる。別の実施形態において、電磁石303及び304は、オープンリング又はトロイダル形状のコアを使用して図示された磁界線206を発生する単一の電磁石に置き換えることができる。
【0056】
[0061]図3C及び図3Dは、1つ以上のソレノイド208を使用する磁界についての付加的な実施形態を示す。図3Cは、ボトル形状の磁界線206を形成するように巻線209のスペーシングにギャップ305を有する1つ以上のソレノイド208を示す。別の実施形態において、2つ以上のギャップ305を複数のソレノイド208と共に使用して、異なる形状の磁界を発生することができる。ボトム形状は、図3Dに示すように、巻線209をエンクロージャー203の周りに球状配列で置くことで、より目立ったものとすることができる。また、巻線209は、他の非直線的配列で置いて、磁界形状を変更することもできる。
【0057】
[0062]プラズマの閉じ込め及び密度は、四極磁界配列を使用することにより増強することができる。図3Eは、エンクロージャー203と、四極磁界の磁界線206を発生するためにエンクロージャー203の周りに配設された4つの永久磁石307、308との断面図である。一実施形態において、4つの永久磁石307、308が、エンクロージャー203の長さに沿って延びる。別の実施形態において、4つの永久磁石307、308の各々を、電磁石に置き換えてもよい。更に別の実施形態において、4つの永久磁石307、308の各々を、エンクロージャー203の長さに沿って配設される4つの電流搬送ワイヤ又はロッドに置き換え、四極磁界を発生するための方向に電流を流してもよい。
【0058】
[0063]図3Fは、2つのソレノイド208を使用し、電流を互いに逆方向に流す四極磁界配列の別の実施形態を示す。各ソレノイド208に対して単一巻線209しか示されていないが、各ソレノイド208に対して複数の巻線209が使用されてもよい。ソレノイド208の電流は、磁界強度を調整するように調整できる。この実施形態の別の態様では、ソレノイド208は、エンクロージャー203を包囲せず、図3Eに示すものと断面が同様の磁界を発生するようにエンクロージャー203の外側に向けられる。図3A−図3Fに示してここに説明した実施形態は、ビーム変調器103についてここに述べた他の実施形態と結合されそれと一緒に使用されてもよい。
【0059】
[0064]ガス圧力及び磁界を調整することによりプラズマ密度をある程度調整できるのに加えて、ビーム変調プラズマ207を発生するための外部プラズマ源を使用することが望ましい。図4A−4Cは、「自己発生」プラズマに代わって、外部プラズマ源を使用するプラズマ変調器103の異なる実施形態を示す概略図である。
【0060】
[0065]図4Aは、容量性結合のプラズマ源を使用するビーム変調器103を示す。一実施形態において、エンクロージャー203の外側に接地電極214及び電源電極215が配設され、電源電極215は、DC又はRF電源でよい電源217に結合される。当業者に明らかなように、接地電極214及び電源電極215は、容量性結合のプラズマを発生するために多数の異なる構成をもつことができる。RF電源は、約1MHzから約40MHzの周波数レンジで動作できるが、他の周波数が使用されてもよい。別の実施形態において、13.56MHzの周波数が使用される。電源217は、ビーム変調プラズマ207への電力伝達を最適化するためにマッチング回路(図示せず)を備えてもよい。エンクロージャー203の両端に配設されるのは、光ビームがエンクロージャー203を透過できるようにする2つの透過性光学素子202である。一実施形態において、光学素子202は、適当な光学的に透明な材料、例えば、ガラスや透明な石英で作られたプレートである。別の実施形態において、光学的素子202は、レーザービームを収束し再コリメートするレンズ201である。光学素子202は、エンクロージャー203に結合されて真空シールを形成する。エンクロージャー203は、ガラス又は石英のような絶縁材料で作られ、外部接地電極214及び電源電極215をビーム変調プラズマ207に効果的に結合できるようにしている。
【0061】
[0066]エンクロージャー203は、真空システム213により所定の圧力へ排気され、次いで、ガス供給源212からエンクロージャー203へ不活性ガスを導入することができる。次いで、エンクロージャー203内に適当なガス圧力を与えるように不活性ガスの流量及び真空ポンピング率を調整することができる。次いで、電源電極215へ電力が供給されて、ビーム変調プラズマ207を点火する。例えば、パルスレーザーにより発生できるコリメートされたコヒーレントな光ビーム200が第1の光学素子202を通してエンクロージャー203へ向けられ、次いで、ビーム変調プラズマ207を通過して、変調されたビーム204を発生し、これは、第2の光学素子202を通過する。図4A−4Cに示す実施形態において、光学素子202は、レーザービームに対して窓として機能する透明なプレートである。
【0062】
[0067]図4Aに示す実施形態の別の態様では、接地電極214及び電源電極215が、エンクロージャー203内に配設されてもよい。例えば、エンクロージャー203が金属のような伝導性材料で作られて適当な接地点へ結合され、エンクロージャー203の内壁が接地電極214として機能するようにすると共に、電源電極215は、エンクロージャー203内に配設されるが、エンクロージャー203から電気的に絶縁されるようにしてもよい。
【0063】
[0068]図4Bは、誘導性結合のプラズマ源を使用し、容量性結合のプラズマ源に比して高い電子密度を与えることのできるビーム変調器103の別の実施形態である。誘導性コイル216がエンクロージャー203を包囲し、RF電源218に電気的に結合される。RF電源218は、約1MHzから約100MHzの周波数レンジ内で動作できるが、他の周波数が使用されてもよい。RF電源218は、ビーム変調プラズマ207へより効率的に電力を伝達するためにマッチング回路(図示せず)を備えてもよい。
【0064】
[0069]別の外部プラズマ源の実施形態が図4Cに示されている。マイクロ波電源219が導波管240によりエンクロージャー203に結合される。マイクロ波電源219は、約1GHzから約18GHzの周波数レンジ内で動作できるが、他の周波数が使用されてもよい。また、マイクロ波電源219は、ビーム変調プラズマ207へより効率的に電力を伝達するためにマッチング回路(図示せず)を備えてもよい。また、例えば、電子サイクロトロン共振発生プラズマ又はヘリコン波プラズマ源のような他の形式の外部プラズマ源を使用してもよい。図4A−4Cに示してここに説明した実施形態は、ビーム変調器103についてここに述べた他の実施形態と結合されそれと一緒に使用されてもよい。
【0065】
[0070]以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の基本的な範囲から逸脱せずに、他の実施形態及び更に別の実施形態を案出することができ、従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって決定される。
【符号の説明】
【0066】
10…基板、21…変調された光ビーム、100…レーザーアニールシステム、102…光源、103…ビーム変調器、104…ドーズ制御システム、106…パルスストレッチャーアセンブリ、108…ビームホモジェナイザーアセンブリ、110…中継光学アセンブリ、114…基板支持体、115…熱交換装置、116…基板支持面、120…光学システム、121…レーザーアニール処理チャンバ、124…真空ポンプ、125…不活性ガス源、126…チャンバ壁、127…処理領域、128…光学的に透明な窓、130…システムコントローラ、200…コヒーレントな光ビーム、201…レンズ、203…エンクロージャー、204…変調されたビーム、206…磁界線、207…ビーム変調プラズマ、208…ソレノイド、209…巻線、212…ガス供給源、213…真空システム、220…電源、230…光線、236…セル、237…プラズマ領域、303、304…電磁石
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
[0001]本発明の実施形態は、一般に、レーザーのようなコヒーレントな光源に関する。より詳細には、本発明は、パルス化コヒーレント光源を使用して短い時間間隔中に強力で均一な照明を与える方法及び装置に向けられる。
【0002】
関連技術の説明
[0002]集積回路(IC)市場は、常に、より大きなメモリ容量、より速いスイッチング速度、及びより小さな特徴部サイズを要求している。これらの要求に対処するために業界が取る主なステップの1つは、大きな炉でのシリコンウェハのバッチ処理から、小さなチャンバ内での単一ウェハ処理へと切り換えることである。
【0003】
[0003]このような単一ウェハ処理中に、ウェハは、典型的に、高い温度に加熱され、ウェハ内に画成された複数のICデバイスにおいて種々の化学的及び物理的反応が生じるようにする。特に重要なこととして、ICデバイスの有利な電気的性能には、注入領域をアニールすることが要求される。アニールすると、以前にアモルファスとされたウェハの領域から、より結晶性の構造が再生成され、それらの原子を基板又はウェハの結晶格子へ合体することで、ドーパントが活性化される。アニールのような熱プロセスでは、比較的大量の熱エネルギーを短い時間内にウェハに与え、その後、ウェハを急速に冷却して、熱プロセスを終了させることが要求される。現在使用されている熱プロセスは、例えば、急速熱処理(RTP)及びインパルス(スパイク)アニーリングを含む。
【0004】
[0004]RTPプロセスの欠点は、ICデバイスを通した全ウェハの均一加熱が、通常、シリコンウェハの頂部から数ミクロンしか得られないことである。これにより、ウェハをいかに速く加熱し冷却できるかが制限される。更に、全ウェハが高い温度になると、熱を放出できるのが、周囲の空間又は構造体だけである。その結果、今日最先端のRTPシステムは、400℃/秒の上昇率及び150℃/秒の下降率を得るのに苦心している。RTP及びスパイクアニーリングプロセスは、広く使用されているが、現在の技術は、理想的なものではなく、熱処理中のウェハ温度をあまりにゆっくり上昇させ、従って、ウェハを高い温度にあまりに長時間露出させる傾向がある。これらの熱履歴型の問題は、ウェハサイズの増加、スイッチング速度の上昇、及び/又は特徴部サイズの減少と共に、益々厳しいものとなる。
【0005】
[0005]在来のRTP型のプロセスで生じた問題の幾つかを解決するために、種々のスキャニングレーザーアニール技術を使用して、基板の表面(1つ又は複数)がアニールされている。一般的に、これらの技術は、基板が小さな領域に配送されるエネルギーに対して並進移動又はスキャニングされる間に、基板の表面上の小さな領域に一定のエネルギー束を配送するものである。厳密な均一性の要求と、基板表面にわたるスキャン領域の重畳を最小にする複雑性のために、これら形式のプロセスは、基板の表面上に形成される接触レベルデバイスを熱処理するのに有効ではない。
【0006】
[0006]また、パルスレーザーアニール技術を使用して、基板の表面上の限定領域をアニールし、基板の表面上に良好に画成されたアニール及び/又は再溶融領域が形成されている。一般的に、パルスレーザーアニールプロセス中に、基板の表面上の種々の領域が、レーザーから配送される望ましい量のエネルギーに露出され、基板の望ましい領域の優先的加熱を生じさせる。パルスレーザーアニール技術は、基板の表面にわたってレーザーエネルギーをスイープする在来のプロセスに勝る効果を有する。というのは、基板の望ましい領域にわたって均一なアニールを保証するために隣接スキャン領域間の重畳を厳密に制御する必要性が問題にならないからである。それは、基板の露出領域の重畳が、典型的に、ダイ間の未使用スペース又は「切り口」線に制限されるためである。
【0007】
[0007]収縮する半導体デバイスサイズ及び厳格なデバイス処理特性のために、基板表面上に形成される異なるデバイスへの各パルス中に配送されるエネルギーの量の変化の公差は非常に低い。これらのデバイス要件は、基板の露出表面にわたる配送エネルギーの変化に対する公差をかなり低いものにする(即ち、<5%変化)。しかしながら、レーザーのようなコヒーレントな光源を使用すると、斑点や回折縁のようなコヒーレンス効果を導入することになり、基板表面の小さな領域に入射する放射エネルギーに非均一性を生じさせる。
【0008】
[0008]特定のレーザーアニール用途に対してビームを変形するために、レーザー光源と基板との間に種々の光学的装置が介在されることがある。このような装置は、光学的操向システム、パルスストレッチャー、ビームスプレッダー、ビームホモジェナイザー、及び他の装置を含んでもよい。コヒーレントなレーザー光がこのような装置を通過するときに、粗い表面又は非均質な媒体から光が散乱して、多数のコヒーレントな波頭(wavefronts)を形成し、これらは、散乱場所から放射され、位相差及び/又は強度変動を受ける。コヒーレントな波頭は、多数の小さな明及び暗の点又はスポットで特徴付けられるランダム強度パターンを生じるように干渉することがあり、ここで、明スポットは、構造的に干渉した散乱波に対応し、暗スポットは、破壊的に干渉した波に対応するものである。このような強度パターンは、斑点としても知られており、コヒーレントな光が粗い表面又は非均質な媒体から散乱されるときの普通の現象である。斑点に加えて、レーザー光が、例えば、不透明な物体の近くを通過するか、又はアパーチャー及びレンズを通過したときには、回折縁が形成されることもある。
【0009】
[0009]レーザーアニーリング中に基板の表面により均一な照明又は放射束密度を生じさせるためには、斑点や回折縁のようなコヒーレンス効果を排除又は最小にすることが望まれる。1つのそのような方法は、複数の斑点パターンを積分して、より均一な放射束をターゲットエリアの表面に発生するという作用を有する回転ディフューサーを使用することである。しかしながら、この解決策は、回転速度が当該プロセス積分時間より著しく速い場合にしか有効でない。例えば、プロセス時間がパルスレーザーに対して50ナノ秒(ns)のパルス幅(パルス期間とも称される)で表されると共に、回転ディフューサーがkHz時間スケールの回転周波数を有する場合には、回転ディフューサーがレーザーにより「ストローブ」され(strobed)、基板が斑点パターンを「見ることになる」。パルスレーザーを使用すると、レーザーのパルス幅内でコヒーレンス効果を除去することが要求される。一般的に、レンズ及び/又はディフューサーの機械的運動を使用して、ナノ秒の時間スケールにわたりコヒーレンス効果を排除することは、不可能である。
【0010】
[0010]それ故、短い時間スケールにわたり斑点や回折縁のようなコヒーレンス効果を減少し且つレーザーアニーリング中に基板表面により均一な照明を与える方法及び装置が要望される。
【発明の概要】
【0011】
[0011]本発明の実施形態は、レーザーアニーリング中にレーザービームのコヒーレンス効果を減少して基板に強力で均一な照明を与える。レーザービームをプラズマに通すことにより非常に高い周波数においてレーザービームが空間的に変調される。
【0012】
[0012]本発明の一実施形態は、コヒーレントな光ビームのコヒーレンス効果を減少するための装置を提供する。この装置は、コヒーレントな光ビームを収束するための第1のレンズと、光ビームをコリメートするための第2のレンズとを有するエンクロージャーを備え、このエンクロージャーは、プラズマ形成用のガスを収容するように適応される。コヒーレントな光ビームは、ガスをイオン化して、光ビームを変調するプラズマを発生する。
【0013】
[0013]本発明の別の実施形態は、コヒーレントな光ビームのコヒーレンス効果を減少するための装置を提供する。この装置は、エンクロージャーを通して光ビームを透過するための第1の光学素子及び第2の光学素子を有するエンクロージャーと、エンクロージャーの内側にプラズマを与えるためのプラズマ源とを備えている。エンクロージャーは、プラズマ形成用のガスを収容するように適応される。コヒーレントな光ビームは、このビームを変調するプラズマに通される。
【0014】
[0014]本発明の別の実施形態は、コヒーレントな光ビームのコヒーレンス効果を減少するための方法を提供する。この方法は、一般的に、第1の光学素子及び第2の光学素子を有し且つガスを収容するエンクロージャーを準備し、第1の光学素子でコヒーレントな光ビームを受け取り、ガスからプラズマを形成し、コヒーレントな光ビームをプラズマに通し、コヒーレントな光ビームを変調し、その変調された光ビームを第2の光学素子で受け取ることを含む。
【0015】
[0015]本発明の別の実施形態において、コヒーレントな光ビームのコヒーレンス効果を減少するための熱処理システムが提供される。このシステムは、コヒーレントな光を与えるレーザー源と、コヒーレントな光が通されるプラズマ発生モジュールと、このプラズマ発生モジュールを通過するコヒーレントな光を使用して処置される基板を収容するための熱処置チャンバとを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
[0016]本発明の前述した特徴を詳細に理解できるように、簡単に概要を上述した本発明を、幾つかが添付図面に例示された実施形態に関して、以下に詳細に説明する。しかしながら、添付図面は、本発明の典型的な実施形態のみを例示したもので、従って、本発明の範囲は、それに限定されるものではなく、本発明は、他の等しく有効な実施形態も包含できることに注意されたい。
【図1】本発明の一実施形態によるレーザーアニールシステムの概略図である。
【図2A】本発明の一実施形態によるビーム変調器の概略図である。
【図2B】ここに述べるビーム変調プラズマ内のプラズマ領域の概略図である。
【図3A】ここに述べる付加的な磁界実施形態のための概略図である。
【図3B】ここに述べる付加的な磁界実施形態のための概略図である。
【図3C】ここに述べる付加的な磁界実施形態のための概略図である。
【図3D】ここに述べる付加的な磁界実施形態のための概略図である。
【図3E】ここに述べる付加的な磁界実施形態のための概略図である。
【図3F】ここに述べる付加的な磁界実施形態のための概略図である。
【図4A】ここに述べるビーム変調器のための付加的な実施形態の概略図である。
【図4B】ここに述べるビーム変調器のための付加的な実施形態の概略図である。
【図4C】ここに述べるビーム変調器のための付加的な実施形態の概略図である。
【0017】
[0022]理解を容易にするため、各図面に共通の同じ要素を示すのにできるだけ同じ参照番号を使用する。一実施形態の特徴は、更に詳述しなくても、他の実施形態にも組み込めることが意図される。
【詳細な説明】
【0018】
[0023]本発明の実施形態は、非常に高い周波数においてレーザービームを空間的に変調又は「ディザリング」することにより、基板に対するレーザービームのコヒーレンス効果を減少する。この点に関して、ディザリングという語は、小さなスケールにおいて光ビームの経路をランダム化することを指す。レーザービームの非常に高い周波数のディザリングは、レーザービームをプラズマに通すことにより達成される。
【0019】
[0024]図1は、レーザーアニールシステム100を概略的に示す。レーザーアニールシステム100は、レーザーアニール処理チャンバ121と、システムコントローラ130と、変調された光ビーム21を発生する光学システム120とを備えている。レーザーアニール処理チャンバ121は、1つ以上のチャンバ壁126及び光学的に透明な窓128を有する包囲された処理領域127を収容することができる。また、レーザーアニール処理チャンバ121は、基板10を支持するための基板支持体114及び基板支持面116も収容することができる。
【0020】
[0025]変調された光ビーム21は、基板10の表面より断面積が実質的に小さいので、基板支持体114は、変調された光ビーム21に対して基板10を並進移動し、基板10の全表面を変調された光ビーム21で処理できるように適応される。また、ビームが、基板支持体114に対して移動されてもよいし、又は変調された光ビーム21及び基板支持体114の両方が移動して、変調されたビーム21が基板10の表面における所定のアニール領域を横切ってスキャンされてもよいことが意図される。
【0021】
[0026]処理中に、処理領域127は、真空ポンプ124の使用によって排気され及び/又は不活性ガス源125を使用してパージされ、酸素のような望ましくないガスの分圧を減少することができる。更に、基板10の表面を基板支持体114の基板支持面116及び熱交換装置115と熱接触状態にすることで、熱処理中に基板の温度を制御することが望まれてもよい。熱交換装置115は、一般的に、アニーリングプロセスの前、その間、又はその後に、基板支持体114及び基板10を加熱及び/又は冷却するように適応される。
【0022】
[0027]システムコントローラ130は、一般的に、ここで説明する光学システム120及びレーザーアニール処理チャンバ121内に収容された種々のコンポーネントを制御するように適応される。システムコントローラ130は、一般的に、ここに述べる熱処理技術の制御及び自動化を容易にするように設計され、典型的に、中央処理ユニット(CPU)(図示せず)、メモリ(図示せず)、及び支援回路(又はI/O)(図示せず)を含むことができる。ソフトウェアインストラクション及びデータは、CPUに命令するためにコード化してメモリに記憶することができる。コントローラにより読み取り可能なプログラム(又はコンピュータインストラクション)は、基板に対してどのタスクを遂行できるか決定できる。プログラムは、コントローラによって読み取り可能なソフトウェアであり、レーザーの出力に対する基板支持体の位置、各レーザーパルス中に配送されるエネルギーの量、1つ以上のレーザーパルスのタイミング、各パルスに対する時間の関数としての強度、基板の温度、各レーザー源から基板へ配送される各パルスの波長、及びその組合せを監視及び制御するためのコードを含むのが好ましい。
【0023】
[0028]また、図1は、光学システム120も概略的に示しており、これは、光源102(例えば、パルスレーザー)、ビーム変調器103、ドーズ制御システム104、パルスストレッチャーアセンブリ106、ビームホモジェナイザーアセンブリ108、及び中継光学アセンブリ110を備えている。光学システム120は、基板10の表面上のアニール領域にわたる希望の二次元形状を有する均一量のエネルギー又は「映像」を配送又は投影し、これら領域内の希望のエリアを優先的にアニール及び/又は溶融するように適応されてもよい。
【0024】
[0029]ここに述べる半導体基板に対してレーザーアニールプロセスを遂行するのに要求されるエネルギーの量は、かなり多い。例えば、光源102から配送されるエネルギーのドーズは、8から10ナノ秒(ns)のパルス幅にわたって約1から約10ジュールでよく、これは、各パルスにおいて約100MWから約1250MWの平均合計電力をアニール領域へ配送することに等しい。アニール領域が約4mm2から約1000mm2の面積を有する場合には、平均エネルギー密度が約0.1MW/mm2から約313MW/mm2となる。各パルス中の任意の時間に配送される瞬時電力は、エネルギーパルスのプロフィールの変動のために、平均より相当高いこともあるし低いこともある点に注意されたい。
【0025】
[0030]光源102は、一般的に、パルスレーザーアニールプロセスを遂行するのに使用される電磁エネルギーを配送するように適応される。レーザーアニールプロセスの有効性は、アニールされるべき材料による光源102から配送されるエネルギーの透過、吸収及び反射に依存するので、配送されるエネルギーの1つ又は複数の波長(λ)を、望ましい量のエネルギーを基板内の望ましい深さへ配送するように同調させることができる。光の各光子により配送されるエネルギーの量も、波長の関数として変化し(E=hc/λ)、従って、波長が短いほど、光の各光子によって配送されるエネルギーが大きくなる。しかしながら、あるケースでは、シリコンのような基板材料が、厚み及び波長と共に変化する吸収エッジを有し、基板材料により吸収される波長を制限する。それ故、基板が作られる材料の厚み及び形式に基づいて、放出される放射の波長(1つ又は複数)を変化させて、基板への望ましいエネルギー伝達を達成し、基板の露出領域へのダメージを最小にすると共にその均一な加熱を促進することができる。
【0026】
[0031]光源102は、例えば、約1064nm未満の波長のエネルギーを、主としてシリコンを含有する基板へ配送するように適応されてもよい。別の実施例において、レーザーアニーリングプロセスは、約800ナノメートル(nm)未満の波長で配送される放射を使用して、シリコン含有基板において行うことができる。或いは又、光源102から主としてシリコンを含有する基板へ配送される光学エネルギーの波長は、約532nmでもよい。別の実施例において、エネルギー源から主としてシリコンを含有する基板へ配送される光学エネルギーの波長は、約216nm又は約193nmである。更に別の実施例において、光源102は、約266nmから約1064nmの波長のエネルギーを配送するように適応されるNd:YAG(ネオダインドープのイットリウムアルミニウムガーネット)を含むものを使用できる。
【0027】
[0032]一般的に、現在市販されているレーザーは、望ましいパルスレーザーアニールエネルギーレベル(例えば、>2ジュール)の上位端付近のエネルギーを配送することができないので、一実施形態において、光源102は、望ましい量のエネルギーを基板の表面へ配送するように出力が合成される複数のレーザーで構成される。しかしながら、アニールプロセスに使用されるエネルギーパルスの特性が最適化又は制御されない場合には、基板へのダメージが生じることになる。通常、エネルギーパルス特性は、これに限定されないが、合計エネルギー量、エネルギー束、エネルギー密度、及び/又はパルス幅を含むことができる。エネルギーパルス特性が最適化されない場合は、基板の表面上の溶融領域の急速な加熱のために誘起されるストレスによって基板へのダメージが一般的に生じる。急速な加熱は、基板に音響衝撃波を発生して、クラックを生じさせ、ストレスを誘起し、さもなければ、基板の種々の領域にダメージを及ぼすことになる。
【0028】
[0033]一実施例において、光源102は、532nmのような望ましい波長において約6nsから約80nsのパルス幅で約1から10ジュールのエネルギーを配送するように適応される。別の実施例において、光源102は、532nmのような望ましい波長において約20nsから約30nsのパルス幅で約1から10ジュールのエネルギーを配送するように適応されてもよい。或いは又、光源102は、748nm及び/又は1064nmのような波長において約8nsから約80nsのパルス幅で約1から10ジュールのエネルギーを配送するように適応されてもよい。
【0029】
[0034]光学システム120の光源102に加えて、レーザーアニーリングプロセス中に基板10の表面に配送されるエネルギーのタイミング及び量を制御するために光源102とレーザーアニール処理チャンバ121との間にドーズ制御システム104を置くことができる。一般的に、パルスレーザー形式の光源102から配送されるエネルギーの信頼性及び反復性を改善するために、パルスレーザー光源の出力が、望ましい周波数で連続的にパルス化され、配送されるパルスの一部分だけがドーズ制御システム104を通過して基板10の表面へ進むことが許容される。従って、ドーズ制御システム104は、望ましい時間に光学システム120の他のコンポーネントへのエネルギーのパルスの配送を制御することができる。
【0030】
[0035]ほとんどの在来のレーザーは、望ましいプロフィールを有するパルスを配送することができないので、光学システム120から基板へ配送されるパルスの各々は、基板へのダメージを防止し及び/又はパルスレーザーアニールプロセスの結果を最適化するように調整する必要がある。また、光学システム120は、パルスレーザーアニーリングプロセス中に基板の表面へ配送される配送光エネルギーのプロフィール又は形状を時間の関数として最適化するのに使用されるパルスストレッチャー106を備えることもできる。
【0031】
[0036]また、光学システム120は、基板の表面上のアニール領域内に投影されるべき正方形、長方形又は他の形状の「映像」にわたるエネルギーの拡散の均一性を改善するのに使用されるビームホモジェナイザーアセンブリ108を備えることもできる。一般的に、ビームホモジェナイザーアセンブリ108は、「映像」の非均一エレメントを修正するので、基板の表面上のアニール領域により均一なエネルギー分布を与えるのに使用されるレンズ、アパーチャー又は他の光学的コンポーネントのような種々の光学的コンポーネントを含む。一実施形態において、ビームホモジェナイザーアセンブリ108は、パルスストレッチャーアセンブリ106から配送される複合エネルギーパルスを均質化するように光学システム120に位置される。
【0032】
[0037]また、光学システム120は、光学システム120の上流コンポーネントから送られた映像を、レーザーアニール処理チャンバ121内に位置された基板支持面116(図1)上に位置された基板10の表面へ向けるのに使用される光学コンポーネントのグループを含む中継光学アセンブリ110を備えることもできる。一般的に、中継光学アセンブリ110は、基板10の表面上のアニール領域を埋めるように映像の位置、向き、及びサイズをセットできるようにする多数のミラー、レンズ、及び他の普通の光学コンポーネントを含む。
【0033】
[0038]上述したビームホモジェナイザーアセンブリ108は、均質なビームプロフィール、即ちフラットトップのビームプロフィールを、ガウスビームプロフィールのような、レーザーによって発生された非フラットなビームプロフィールから発生するように適応される。非コヒーレントな光源の場合に、ビームホモジェナイザーアセンブリ108は、通常、高電力光源からターゲットエリアの均一照明を保証するように適応される。しかしながら、ビームホモジェナイザーは、コヒーレントな光ビームのターゲットエリアにおける斑点や回折縁のようなコヒーレンス効果を防止するものではない。
【0034】
[0039]ナノ秒の時間スケールでコヒーレントな光源のコヒーレンス効果を減少するために、光学システム120に高速ビーム変調器103を含ませることができる。本発明の一実施形態において、ビーム変調器103は、コヒーレントな光源102の後であってドーズ制御システム104の前に位置される。別の実施形態において、ビーム変調器103は、ドーズ制御システム104の後であってパルスストレッチャーアセンブリ106の前に位置される。更に別の実施形態において、ビーム変調器103は、パルスストレッチャーアセンブリ106の後であってビームホモジェナイザーアセンブリ108の前に位置される。しかしながら、ビーム変調器103は、光源102と中継光学アセンブリ110との間の場所に位置されてもよい。
【0035】
[0040]図2Aは、ナノ秒の時間スケールでコヒーレントな光パルスを空間的に変調することのできるビーム変調装置103の一実施形態を示す。このビーム変調器103は、エンクロージャー203と、ガス供給減212と、真空システム213と、磁界を発生するためのソレノイド208と、このソレノイド208へ電流を与えるための電源220とを備えている。別の実施形態において、ソレノイド208を、1つ以上のリング磁石に置き換えることができる。更に別の実施形態において、ビーム変調器103がソレノイドをもたなくてもよい。
【0036】
[0041]エンクロージャー203は、エンクロージャー203に結合された2つのレンズ201を備えている。これらレンズ201は、エンクロージャー203を通過する光ビームを収束及び再コリメートするためにエンクロージャー203の両端に配設される。各レンズ201は、光ビームの収束及び再コリメーションを許す収斂及び発散レンズのような1つ以上のレンズの組合せで構成されてもよい。一実施形態において、各レンズ201は、光ビームの収束及び再コリメーションを許容するように適当に選択された収斂レンズ(例えば、平凸、二重凸)である。レンズ201は、エンクロージャー203に結合されて、真空シールを形成する。エンクロージャー203は、管の形状を有するが、他の形状が使用されてもよく、また、エンクロージャー203は、ガラス、石英、金属又は他の材料で作られてもよい。一実施形態において、エンクロージャー203は、真空チャンバとして機能するように適応され、レンズ201は、エンクロージャー203に結合されて、真空シールを形成する。
【0037】
[0042]ガス供給源212は、エンクロージャー203に結合されて、それと流体連通する。ガス供給源212は、エンクロージャー203内にプラズマを形成できるようにするために、窒素(N2)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、又は他のガス、及びその組合せのような不活性ガス又は希ガスを与えることができる。不活性ガス又は希ガスは、プラズマ形成のための他のガスを使用して生成されてビーム変調器103の光学及び/又はプラズマ特性に悪影響を及ぼし得る化学的コンパウンドの合成を防止するために使用できる。また、ガス供給源212は、ガス流量を制御するための質量流量コントローラ又は他の適当な手段を含むこともできる。
【0038】
[0043]エンクロージャー203内のガス圧力は、エンクロージャー203に結合されてそれと流体連通する真空システム213に含まれたバルブ(図示せず)により調整することができる。また、ガス圧力は、プラズマ密度と、プラズマを通過する光ビームの変調とを制御する上で助けとなるように調整することができる。一実施形態において、ガス圧力は、約50ミリトールから約760トールまでの範囲でよい。
【0039】
[0044]また、ビーム変調器103は、エンクロージャー203の外部に配設されたソレノイド208を備えることもできる。図2Aは、エンクロージャー203を取り巻くソレノイド巻線209の断面を示す。電源220は、巻線209に電流を与え、ソレノイド208内及びエンクロージャー203内に磁界を生成する。電流方向210(“x”で示す)は、紙面に向かって進む方向であり、一方、電流方向211(点で示す)は、紙面から出て来る方向であり、図示された方向に磁界線206を発生する。別の実施形態において、電流方向を逆にして、磁界線206の方向を逆転してもよい。一実施形態において、電源220は、異なる電流値、ひいては、異なる磁界強度を与えるように調整できるDC電源である。別の実施形態において、電源220は、パルス状のDC電流を与えてもよい。更に別の実施形態において、電源220は、AC電源でもよい。
【0040】
[0045]システムコントローラ130は、ビーム変調器103と通信し、その中のコンポーネントの制御を容易にするように適応できる。例えば、システムコントローラ130は、ガス供給源212、真空システム213、及び電源220と通信し、ビーム変調器103のパラメータ、例えば、ビーム変調器103に対するガス流量、ガス圧力、ソレノイド電流及び磁界強度を制御することができる。また、システムコントローラ130は、ビーム変調器103及び/又は光学システム120にも含まれる種々のトランスジューサ、センサ、及び光学モニタと通信して、ビーム変調器103のパラメータ及び/又は変調されたビーム204を監視し、ビーム変調器103の性能を最適化するように設計された所定のソフトウェアインストラクションに基づいてビーム変調器103の自動制御を行うこともできる。
【0041】
[0046]図2Aに示されたビーム変調器103は、変調されるべきレーザービームにより「自己発生」されるレーザー発生プラズマ(LPP)を使用する。エンクロージャー203は、真空システム213により所定の圧力へ排気され、ガス供給源212から不活性ガス又は希ガスがエンクロージャー203へ導入される。次いで、プラズマ点火の前にエンクロージャー203内に適当なガス圧力を与えるように、不活性ガスの流量及び真空ポンピング率が調整される。パルスレーザーにより発生されるような、コリメートされたコヒーレントな光ビーム200は、第1レンズ201を通してエンクロージャー203へ向けられ、レンズ201の焦点225付近の小さな領域内に強力な光フィールドを発生するように収束される。光フィールドの強度が充分高いときには、ガスがイオン化され、雪崩プロセスを経てビーム変調プラズマ207が発生され、これにより、自由電子が入射光フィールドにより加速されて、ガス原子(又は分子)の衝撃イオン化及び電子密度のカスケード成長を生じさせる。電子密度の成長は、式(1)で近似することができる。
【0042】
dN/dt=viN (1)
[0047]Nは、電子密度であり、viは、レーザー強度に比例するイオン化率である。一実施形態において、焦点225付近のコヒーレントな光ビーム200の放射束密度は、約107W/cm2から約3.1x1010W/cm2の範囲である。コヒーレントな光ビーム200がビーム変調プラズマ207を通過してそれと相互作用するときに、コヒーレントな光ビーム200は、空間的に変調又はディザリングされて、変調されたビーム204を発生することができ、これは、次いで、第2のレンズ201を通過して、再コリメートされ、光学システム120の他のコンポーネントへ向けられる。
【0043】
[0048]ビーム変調プラズマ207によるコヒーレントな光ビーム200の空間的変調は、式(2)により近似できるプラズマの屈折率によって説明することができる。
【0044】
n2=1−ωp2/ω2 (2)
[0049]ここで、nは、プラズマの屈折率であり、ωは、プラズマを通過する光の周波数であり、ωpは、式(3)で示す電子プラズマ周波数である。
【0045】
ωp=(Ne2/ε0me)0.5 (3)
[0050]Nは、プラズマの電子密度(以下、プラズマ密度と称する)であり、eは、電子の電荷であり、meは、電子の質量であり、ε0は、自由空間の誘電率である。式(2)は、プラズマの屈折率が、プラズマを通過する光の周波数ωに依存することを示している。式(3)を式(2)と結合して、式(4)を得ることができる。
【0046】
n2=1−Ne2/(ε0meω2) (4)
[0051]式(4)は、プラズマ密度が変化するときに、プラズマの屈折率が変化することを示している。臨界プラズマ密度Ncは、式(4)の右辺の第2項を1にセットすることにより定義することができ、これは、式(5)を生じる。
【0047】
Ne=(ω2meε0)/e2 (5)
[0052]例えば、コヒーレントな光ビーム200が532nmの波長を有する場合に、臨界密度が約3.95x1021cm−3となる。式(4)は、N>Ncのときには、プラズマの屈折率が虚数であり、プラズマは、プラズマに入射する光に対してほぼ全反射になることを示している。N<Ncの場合は、屈折率は実数であるが、1未満であり(磁界の不存在中で)、入射光は、プラズマを透過することができる。
【0048】
[0053]プラズマ密度は、プラズマ全体にわたり、ある位置から別の位置まで時間と共に変化し、例えば、プラズマと相互作用する電界及び磁界の局所的変動によりプラズマ密度に局所的な変動が生じることがある。図2Bは、ある時点におけるビーム変調プラズマ207の小さなプラズマ領域237を概略的に示している。ビーム変調プラズマ207は、多数のプラズマ領域237を含む。周波数ωの光線230は、プラズマ領域237に入射するコリメートされたコヒーレントな光ビーム200の隣接部分を表す。光線230は、プラズマ領域237を通過し、ビーム変調プラズマ207から出て来て、変調されたビーム204の隣接部分を形成する。
【0049】
[0054]プラズマ領域237は、境界221をもつセル236へと分割され、各セル236は、そのプラズマ密度及びそれに対応する屈折率が、各隣接セル236のプラズマ密度及び屈折率と異なってもよい。プラズマ密度及び屈折率は、境界221を横切ってビーム変調プラズマ207全体を通じて徐々に変化し得るが、説明を簡略化するために、本質的な結果を保持しながら、境界221が異なる屈折率間の界面として処理されることを理解されたい。
【0050】
[0055]光線230がプラズマ領域237に入るときに、各光線230は、複数のセル236を通過し、各境界221において反射及び屈折されることがある。屈折された光線230だけが示されている。というのは、それらは、プラズマを透過して、変調されたビーム204を形成するからである。各光線230の複数の屈折は、各光線230の方向及び光学経路長さをランダム化するという効果を有する。このランダム化プロセスは、各光線230がビーム変調プラズマ207の多数のプラズマ領域237を通過するときに繰り返される。光学経路長さのランダム化は、隣接光線230と、得られる変調されたビーム204の隣接部分との間の位相関係を「スクランブル化」する。
【0051】
[0056]図2Bに示すプラズマ領域237は、ビーム変調プラズマ207の時間的な「スナップショット」を表す。ビーム変調プラズマ207は、時間的に進化するので、光線230の相対的位相関係及び方向も、時間的に進化して、光線230の進行中位相「スクランブル化」及び方向ランダム化を行わせ、「ディザリング」又は空間的変調されたビーム204を生じさせる。更に、コヒーレントな光ビーム200により発生される「自己発生」プラズマは、ビーム変調プラズマ207が、時間スケール上、コヒーレントな光ビーム200のパルス幅内で進化することを意味する。例えば、一実施形態において、コヒーレントな光ビーム200のパルス幅は、約8nsなので、ビーム変調プラズマ207、ひいては、変調されたビーム204も、8nsの時間スケール内で進化し得る。光線230は、コヒーレントな光ビーム200のパルス幅内で方向及び位相関係を何回も変化することがある。光線230の非常に迅速な位相「スクランブル化」及び方向ランダム化は、基板10のエリアに投影される斑点又は縁パターンの位置(ディザリング)を迅速に且つランダムにシフトさせるという効果を有するので、パルス幅のような適当な時間間隔にわたって平均化したときに、基板エリアの照明を均一なものにすることができる。
【0052】
[0057]式(4)は、プラズマの屈折率がプラズマ密度に依存することを示し、従って、プラズマの屈折率が虚数でプラズマがほぼ全反射となるケースを回避するようにプラズマ密度を制御することが望まれる。更に、プラズマの屈折率が実数であるケースでは、散乱によるビームエネルギーの過剰なロスを回避しながらコヒーレントな光ビーム200の空間的変調を最適化するようにプラズマ密度を制御することが望まれる。
【0053】
[0058]プラズマ密度は、例えば、プラズマ形成に使用されるガスの圧力及び温度と、プラズマと相互作用し得る電磁界とに依存することがある。エンクロージャー203内のガス圧力は、ガス供給源212からのガスの流量及び真空システム213内のバルブを調整することにより制御することができる。一般的に、プラズマ密度は、ガス圧力と共に増加する傾向がある。プラズマ密度の付加的な調整は、磁界線に沿って電子を集中する上で助けとなる外部磁界により行うことができる。また、外部磁界の印加は、プラズマ内の不安定さも促進し、これは、短い時間スケールでプラズマ密度の変化を増強し、ビームの変調を容易にすることができる。ここで、「外部磁界」という語は、コヒーレントな光ビーム200又はビーム変調プラズマ207により発生されるのではなく、ソレノイドのような別の発生源により発生されてエンクロージャー203内に磁界を生成することのできる磁界を指示するのに使用される。
【0054】
[0059]図3A−図3Fは、ここに述べる実施形態のための磁界を示す概略図である。図3Aは、永久磁石(例えば、棒磁石)を使用して、ビーム変調プラズマ207と相互作用する外部磁界を与える一実施形態を示す。第1の磁石301及び第2の磁石302がエンクロージャー203の周りに配設されて、図示されたように磁界線206を発生する。
【0055】
[0060]図3Bは、エンクロージャー203の周りに配置された電磁石303及び304により発生される磁界についての別の実施形態を示す。電磁石303、304の巻線209は、図示された磁界線206を発生する電流方向210、211を有する。電磁石は、磁化可能な材料、例えば、鉄又は他の強磁性材料で作られたコアを含むことができる。別の実施形態において、電磁石303及び304は、オープンリング又はトロイダル形状のコアを使用して図示された磁界線206を発生する単一の電磁石に置き換えることができる。
【0056】
[0061]図3C及び図3Dは、1つ以上のソレノイド208を使用する磁界についての付加的な実施形態を示す。図3Cは、ボトル形状の磁界線206を形成するように巻線209のスペーシングにギャップ305を有する1つ以上のソレノイド208を示す。別の実施形態において、2つ以上のギャップ305を複数のソレノイド208と共に使用して、異なる形状の磁界を発生することができる。ボトム形状は、図3Dに示すように、巻線209をエンクロージャー203の周りに球状配列で置くことで、より目立ったものとすることができる。また、巻線209は、他の非直線的配列で置いて、磁界形状を変更することもできる。
【0057】
[0062]プラズマの閉じ込め及び密度は、四極磁界配列を使用することにより増強することができる。図3Eは、エンクロージャー203と、四極磁界の磁界線206を発生するためにエンクロージャー203の周りに配設された4つの永久磁石307、308との断面図である。一実施形態において、4つの永久磁石307、308が、エンクロージャー203の長さに沿って延びる。別の実施形態において、4つの永久磁石307、308の各々を、電磁石に置き換えてもよい。更に別の実施形態において、4つの永久磁石307、308の各々を、エンクロージャー203の長さに沿って配設される4つの電流搬送ワイヤ又はロッドに置き換え、四極磁界を発生するための方向に電流を流してもよい。
【0058】
[0063]図3Fは、2つのソレノイド208を使用し、電流を互いに逆方向に流す四極磁界配列の別の実施形態を示す。各ソレノイド208に対して単一巻線209しか示されていないが、各ソレノイド208に対して複数の巻線209が使用されてもよい。ソレノイド208の電流は、磁界強度を調整するように調整できる。この実施形態の別の態様では、ソレノイド208は、エンクロージャー203を包囲せず、図3Eに示すものと断面が同様の磁界を発生するようにエンクロージャー203の外側に向けられる。図3A−図3Fに示してここに説明した実施形態は、ビーム変調器103についてここに述べた他の実施形態と結合されそれと一緒に使用されてもよい。
【0059】
[0064]ガス圧力及び磁界を調整することによりプラズマ密度をある程度調整できるのに加えて、ビーム変調プラズマ207を発生するための外部プラズマ源を使用することが望ましい。図4A−4Cは、「自己発生」プラズマに代わって、外部プラズマ源を使用するプラズマ変調器103の異なる実施形態を示す概略図である。
【0060】
[0065]図4Aは、容量性結合のプラズマ源を使用するビーム変調器103を示す。一実施形態において、エンクロージャー203の外側に接地電極214及び電源電極215が配設され、電源電極215は、DC又はRF電源でよい電源217に結合される。当業者に明らかなように、接地電極214及び電源電極215は、容量性結合のプラズマを発生するために多数の異なる構成をもつことができる。RF電源は、約1MHzから約40MHzの周波数レンジで動作できるが、他の周波数が使用されてもよい。別の実施形態において、13.56MHzの周波数が使用される。電源217は、ビーム変調プラズマ207への電力伝達を最適化するためにマッチング回路(図示せず)を備えてもよい。エンクロージャー203の両端に配設されるのは、光ビームがエンクロージャー203を透過できるようにする2つの透過性光学素子202である。一実施形態において、光学素子202は、適当な光学的に透明な材料、例えば、ガラスや透明な石英で作られたプレートである。別の実施形態において、光学的素子202は、レーザービームを収束し再コリメートするレンズ201である。光学素子202は、エンクロージャー203に結合されて真空シールを形成する。エンクロージャー203は、ガラス又は石英のような絶縁材料で作られ、外部接地電極214及び電源電極215をビーム変調プラズマ207に効果的に結合できるようにしている。
【0061】
[0066]エンクロージャー203は、真空システム213により所定の圧力へ排気され、次いで、ガス供給源212からエンクロージャー203へ不活性ガスを導入することができる。次いで、エンクロージャー203内に適当なガス圧力を与えるように不活性ガスの流量及び真空ポンピング率を調整することができる。次いで、電源電極215へ電力が供給されて、ビーム変調プラズマ207を点火する。例えば、パルスレーザーにより発生できるコリメートされたコヒーレントな光ビーム200が第1の光学素子202を通してエンクロージャー203へ向けられ、次いで、ビーム変調プラズマ207を通過して、変調されたビーム204を発生し、これは、第2の光学素子202を通過する。図4A−4Cに示す実施形態において、光学素子202は、レーザービームに対して窓として機能する透明なプレートである。
【0062】
[0067]図4Aに示す実施形態の別の態様では、接地電極214及び電源電極215が、エンクロージャー203内に配設されてもよい。例えば、エンクロージャー203が金属のような伝導性材料で作られて適当な接地点へ結合され、エンクロージャー203の内壁が接地電極214として機能するようにすると共に、電源電極215は、エンクロージャー203内に配設されるが、エンクロージャー203から電気的に絶縁されるようにしてもよい。
【0063】
[0068]図4Bは、誘導性結合のプラズマ源を使用し、容量性結合のプラズマ源に比して高い電子密度を与えることのできるビーム変調器103の別の実施形態である。誘導性コイル216がエンクロージャー203を包囲し、RF電源218に電気的に結合される。RF電源218は、約1MHzから約100MHzの周波数レンジ内で動作できるが、他の周波数が使用されてもよい。RF電源218は、ビーム変調プラズマ207へより効率的に電力を伝達するためにマッチング回路(図示せず)を備えてもよい。
【0064】
[0069]別の外部プラズマ源の実施形態が図4Cに示されている。マイクロ波電源219が導波管240によりエンクロージャー203に結合される。マイクロ波電源219は、約1GHzから約18GHzの周波数レンジ内で動作できるが、他の周波数が使用されてもよい。また、マイクロ波電源219は、ビーム変調プラズマ207へより効率的に電力を伝達するためにマッチング回路(図示せず)を備えてもよい。また、例えば、電子サイクロトロン共振発生プラズマ又はヘリコン波プラズマ源のような他の形式の外部プラズマ源を使用してもよい。図4A−4Cに示してここに説明した実施形態は、ビーム変調器103についてここに述べた他の実施形態と結合されそれと一緒に使用されてもよい。
【0065】
[0070]以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の基本的な範囲から逸脱せずに、他の実施形態及び更に別の実施形態を案出することができ、従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって決定される。
【符号の説明】
【0066】
10…基板、21…変調された光ビーム、100…レーザーアニールシステム、102…光源、103…ビーム変調器、104…ドーズ制御システム、106…パルスストレッチャーアセンブリ、108…ビームホモジェナイザーアセンブリ、110…中継光学アセンブリ、114…基板支持体、115…熱交換装置、116…基板支持面、120…光学システム、121…レーザーアニール処理チャンバ、124…真空ポンプ、125…不活性ガス源、126…チャンバ壁、127…処理領域、128…光学的に透明な窓、130…システムコントローラ、200…コヒーレントな光ビーム、201…レンズ、203…エンクロージャー、204…変調されたビーム、206…磁界線、207…ビーム変調プラズマ、208…ソレノイド、209…巻線、212…ガス供給源、213…真空システム、220…電源、230…光線、236…セル、237…プラズマ領域、303、304…電磁石
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コヒーレントな光ビームを処理するためのビーム変調器において、
光ビームを収束するための第1のレンズ、及び光ビームをコリメートするための第2のレンズを有するエンクロージャーを備え、該エンクロージャーは、プラズマ形成用のガスを収容するように適応される、ビーム変調器。
【請求項2】
上記エンクロージャー内に磁界を発生するための磁界装置を更に備えた、請求項1に記載のビーム変調器。
【請求項3】
上記磁界装置は、ソレノイドを備え、該ソレノイドは、これに電流を与える電源に結合され、該電源は、磁界の強度を調整するように調整可能である、請求項2に記載のビーム変調器。
【請求項4】
上記コヒーレントな光ビームは、コヒーレントな光パルスである、請求項1に記載のビーム変調器。
【請求項5】
コヒーレントな光ビームを処理するためのビーム変調器において、
エンクロージャーであって、該エンクロージャーを通して光ビームを透過させるための第1の光学素子及び第2の光学素子を有し、プラズマ形成用のガスを収容するように適応されるエンクロージャーと、
上記エンクロージャー内にプラズマを与えるためのプラズマ源と、
を備えたビーム変調器。
【請求項6】
上記エンクロージャー内に磁界を発生するための磁界装置を更に備えた、請求項5に記載のビーム変調器。
【請求項7】
上記コヒーレントな光ビームは、コヒーレントな光パルスである、請求項5に記載のビーム変調器。
【請求項8】
コヒーレントな光ビームを処理するための方法において、
第1の光学素子及び第2の光学素子を有し且つガスを収容するエンクロージャーを準備するステップと、
上記第1の光学素子でコヒーレントな光ビームを受け取るステップと、
ガスからプラズマを形成するステップと、
コヒーレントな光ビームをプラズマに通すステップと、
コヒーレントな光ビームを変調するステップと、
上記変調された光ビームを第2の光学素子で受け取るステップと、
を備えた方法。
【請求項9】
コヒーレントな光ビームを受け取る上記ステップは、更に、コヒーレントな光ビームを収束する段階を含み、変調された光ビームを受け取る上記ステップは、更に、変調された光ビームをコリメートする段階を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
上記プラズマは、コヒーレントな光ビームにより形成される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
上記プラズマに外部磁界を印加するステップを更に備えた、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
コヒーレントな光を与えるレーザー源と、
コヒーレントな光が通されるプラズマ発生モジュールと、
上記プラズマ発生モジュールを通過するコヒーレントな光を使用して処置されるべき基板を収容するための熱処置チャンバと、
を備えた熱処理システム。
【請求項13】
上記プラズマ発生モジュール内に磁界を発生するための磁界装置を更に備えた、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
上記熱処理システムは、パルスレーザーアニールシステムである、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
上記コヒーレントな光は、上記プラズマ発生モジュールを通過するときにプラズマを発生する、請求項12に記載のシステム。
【請求項1】
コヒーレントな光ビームを処理するためのビーム変調器において、
光ビームを収束するための第1のレンズ、及び光ビームをコリメートするための第2のレンズを有するエンクロージャーを備え、該エンクロージャーは、プラズマ形成用のガスを収容するように適応される、ビーム変調器。
【請求項2】
上記エンクロージャー内に磁界を発生するための磁界装置を更に備えた、請求項1に記載のビーム変調器。
【請求項3】
上記磁界装置は、ソレノイドを備え、該ソレノイドは、これに電流を与える電源に結合され、該電源は、磁界の強度を調整するように調整可能である、請求項2に記載のビーム変調器。
【請求項4】
上記コヒーレントな光ビームは、コヒーレントな光パルスである、請求項1に記載のビーム変調器。
【請求項5】
コヒーレントな光ビームを処理するためのビーム変調器において、
エンクロージャーであって、該エンクロージャーを通して光ビームを透過させるための第1の光学素子及び第2の光学素子を有し、プラズマ形成用のガスを収容するように適応されるエンクロージャーと、
上記エンクロージャー内にプラズマを与えるためのプラズマ源と、
を備えたビーム変調器。
【請求項6】
上記エンクロージャー内に磁界を発生するための磁界装置を更に備えた、請求項5に記載のビーム変調器。
【請求項7】
上記コヒーレントな光ビームは、コヒーレントな光パルスである、請求項5に記載のビーム変調器。
【請求項8】
コヒーレントな光ビームを処理するための方法において、
第1の光学素子及び第2の光学素子を有し且つガスを収容するエンクロージャーを準備するステップと、
上記第1の光学素子でコヒーレントな光ビームを受け取るステップと、
ガスからプラズマを形成するステップと、
コヒーレントな光ビームをプラズマに通すステップと、
コヒーレントな光ビームを変調するステップと、
上記変調された光ビームを第2の光学素子で受け取るステップと、
を備えた方法。
【請求項9】
コヒーレントな光ビームを受け取る上記ステップは、更に、コヒーレントな光ビームを収束する段階を含み、変調された光ビームを受け取る上記ステップは、更に、変調された光ビームをコリメートする段階を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
上記プラズマは、コヒーレントな光ビームにより形成される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
上記プラズマに外部磁界を印加するステップを更に備えた、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
コヒーレントな光を与えるレーザー源と、
コヒーレントな光が通されるプラズマ発生モジュールと、
上記プラズマ発生モジュールを通過するコヒーレントな光を使用して処置されるべき基板を収容するための熱処置チャンバと、
を備えた熱処理システム。
【請求項13】
上記プラズマ発生モジュール内に磁界を発生するための磁界装置を更に備えた、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
上記熱処理システムは、パルスレーザーアニールシステムである、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
上記コヒーレントな光は、上記プラズマ発生モジュールを通過するときにプラズマを発生する、請求項12に記載のシステム。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【公表番号】特表2010−541022(P2010−541022A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528154(P2010−528154)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【国際出願番号】PCT/US2008/078704
【国際公開番号】WO2009/048804
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(390040660)アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド (1,346)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【国際出願番号】PCT/US2008/078704
【国際公開番号】WO2009/048804
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(390040660)アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド (1,346)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】
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