説明

プラズマキーホール溶接装置およびプラズマキーホール溶接方法

【課題】 作業効率を向上可能なプラズマキーホール溶接装置およびプラズマキーホール溶接方法を提供すること。
【解決手段】 プラズマアークPAを発生させ、キーホールを形成および貫通させることにより溶接を開始するプラズマキーホール溶接装置A1であって、定常溶接状態において定常電流値でアーク電流Iwを流す出力制御回路21と、上記定常溶接状態において、プラズマ電極112を、被溶接物Wの面内方向に沿って定常速度Vpで被溶接物Wに対して相対移動させる動作制御回路31と、溶接を開始する際にキーホールを貫通させるのに要したキーホール形成時間を計測する時間計測回路23と、上記キーホール形成時間に基づいて、定常速度Vpおよび上記定常電流値の少なくともいずれかを算出する演算回路OCと、を備える。このような構成により、最適な定常速度Vpもしくは上記定常電流値を算出でき、溶接の作業効率を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマキーホール溶接装置およびプラズマキーホール溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマキーホール溶接は、被溶接物がI形開先の突き合わせ継手を溶接するときに、プラズマ電極を一般的に陰極として放電したときのプラズマアークを、水冷されたプラズマノズルとプラズマガスのガス流とによって拘束する。そして、集中性の良い高温プラズマ流を発生させ、この高温のプラズマ流が溶接線上に、溶接池の先端で被溶接物を貫通する円孔を形成しながら移動していく溶接である。この溶接はアーク熱が裏面に至るまで直接に与えられ、裏面の溶接も適切に行うことができる。
【0003】
図10は、従来のプラズマキーホール溶接装置の構成の一例を示す図である(例えば、特許文献1参照。)。同図に示されたプラズマキーホール溶接装置9Aにおいては、プラズマ電極91と同心円上にプラズマアークPAを拘束するノズル92が設けられている。プラズマ電極91と被溶接物Wとの間に溶接電源93から電力が供給されて、ノズル92内にプラズマガス供給源94からプラズマガスPGが供給されて、プラズマアークPAが発生する。高温のプラズマ流が溶接線上に溶融池の先端で被溶接物Wを貫通してキーホールKHを形成しながら移動し、裏面の溶融も行う。
【0004】
電圧変動検出回路95は、キーホールKHが貫通したときのプラズマアーク電圧の変動(例えば、1〜2V)を検出して、波形成型器96によって溶接制御シーケンサ97に適した信号に成形する。溶接制御シーケンサ97は、この成形された信号を入力して、トーチ走行装置98へ溶接トーチ99の走行を開始する信号を入力して、トーチ走行装置98は溶接トーチ99の走行を開始する。
【0005】
プラズマキーホール溶接装置9Aを用いたプラズマキーホール溶接は、適当な溶接条件のもと行われる必要がある。溶接条件が適当でない場合、たとえば溶接トーチ99の走行する速度である溶接速度が速すぎる場合には、図11に示すように、溶込不良が発生し、完全溶け込み溶接が出来なくなる。一方、たとえば当該溶接速度が遅すぎる場合には、図12に示すように、溶け落ちが発生してしまう。図13に示すような良好なビード外観を得ることのできる最適な溶接を行うには、適当な溶接条件を設定する必要がある。だが、適当な溶接条件は、プラズマキーホール溶接を行う場合ごとに多少異なる。そのため従来は、適当な溶接条件を設定するための多数の予備実験を、プラズマキーホール溶接を行う度に実施する必要があった。このような予備実験の実施は、プラズマキーホール溶接の作業効率の向上の妨げとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平02−18953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、作業効率を向上可能なプラズマキーホール溶接装置およびプラズマキーホール溶接方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によって提供されるプラズマキーホール溶接装置は、プラズマ電極と被溶接物との間にプラズマアークを発生させ、キーホールを形成および貫通させることにより溶接を開始するプラズマキーホール溶接装置であって、定常溶接状態において定常電流値で上記プラズマ電極と上記被溶接物との間にアーク電流を流す電流制御手段と、上記定常溶接状態において、上記プラズマ電極を、上記被溶接物の面内方向に沿って定常速度で上記被溶接物に対して相対移動させる動作制御手段と、溶接を開始する際に上記キーホールを貫通させるのに要したキーホール形成時間を計測する時間計測手段と、上記キーホール形成時間に基づいて、上記定常速度および上記定常電流値の少なくともいずれかを算出する演算手段と、を備えることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、上記時間計測手段により計測される上記キーホール形成時間は、たとえば上記プラズマキーホール溶接装置の周囲の温度、および上記被溶接物の温度、等のプラズマキーホール溶接を行う場合ごとに異なる個別条件を、反映したものである。そのため、上記演算手段により算出される上記定常速度もしくは上記定常電流値は、当該個別条件を反映した上記キーホール形成時間に基づく。すなわち、上記定常速度もしくは上記定常電流値は、当該プラズマキーホール溶接を行う際に適した値であるといえる。その結果、プラズマキーホール溶接を行う前に、そのプラズマキーホール溶接に最適な溶接条件を決定するため多くの予備実験を行う必要がなくなる。これにより、プラズマキーホール溶接の作業効率が向上する。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記演算手段は、上記定常速度および上記定常電流値のうち上記定常速度のみを算出する。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記プラズマ電極を保持する溶接トーチと、上記溶接トーチを上記被溶接物に対して相対移動させるマニピュレータと、上記マニピュレータを制御し、且つ、上記動作制御手段と上記演算手段とを含むロボット制御装置と、を更に備える。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記電流制御手段と上記演算手段とを含む溶接電源を更に備える。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記プラズマ電極と上記被溶接物との間のアーク電圧を検出するアーク電圧検出手段を更に備え、上記時間計測手段は、検出された上記アーク電圧の変動を検出する電圧変動検出手段を含む。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記電圧変動検出手段は、上記アーク電圧の時間微分値を計算する微分回路と、上記時間微分値と第1の基準値とを比較し、キーホール形成開始信号を出力する比較回路と、上記キーホール形成開始信号が入力され、且つ、上記キーホール形成開始信号が入力された時の上記アーク電圧をキーホール形成開始基準電圧と設定するキーホール形成開始基準電圧設定回路と、上記アーク電圧と上記キーホール形成開始基準電圧との差が第2の基準値を超えた場合に上記キーホールが貫通したと判断するキーホール貫通判断手段と、を含む。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記時間計測手段は、上記アーク電圧の絶対値を演算し、演算結果を上記電圧変動検出手段に出力する絶対値演算回路を更に含む。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記時間計測手段は、上記アーク電圧の高周波成分を除去し、演算結果を上記電圧変動検出手段に出力するローパスフィルタを更に含む。
【0017】
本発明によって提供されるプラズマキーホール溶接方法は、プラズマ電極と被溶接物との間にプラズマアークを発生させ、キーホールを形成および貫通させるキーホール開始工程と、上記プラズマ電極と上記被溶接物との間に定常電流値のアーク電流を流し、且つ、上記プラズマ電極を、上記被溶接物の面内方向に沿って定常速度で上記被溶接物に対して相対移動させる定常溶接工程と、を備えるプラズマキーホール溶接方法であって、溶接を開始する際に上記キーホールを貫通させるのに要したキーホール形成時間を計測する工程と、上記キーホール形成時間に基づいて、上記定常速度および上記定常電流値の少なくともいずれかを算出する演算工程と、を更に備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記演算工程においては、上記定常速度および上記定常電流値のうち上記定常速度のみを算出する。
【0019】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記プラズマ電極と上記被溶接物との間のアーク電圧を検出するアーク電圧検出工程を更に備え、上記キーホール形成時間を計測する工程は、検出された上記アーク電圧の変動を検出する電圧変動検出工程を含む。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記電圧変動検出工程は、上記アーク電圧の時間微分値を計算する微分工程と、上記時間微分値と第1の基準値とを比較し、キーホール形成開始信号を出力する比較工程と、上記キーホール形成開始信号を入力し、且つ、上記キーホール形成開始信号を入力した時の上記アーク電圧をキーホール形成開始基準電圧と設定するキーホール形成開始基準電圧設定工程と、上記アーク電圧と上記キーホール形成開始基準電圧との差が第2の基準値を超えた場合に上記キーホールが貫通したと判断するキーホール貫通判断工程と、を含む。
【0021】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記キーホール形成時間を計測する工程は、上記アーク電圧の絶対値を演算し、演算結果を出力する工程を更に含み、上記電圧変動検出工程は、上記演算結果に基づき実行する。
【0022】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記キーホール形成時間を計測する工程は、上記アーク電圧の高周波成分を除去する工程を更に含み、上記電圧変動検出工程は、高周波成分が除去された上記アーク電圧に基づき実行する。
【0023】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるプラズマキーホール溶接装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示した溶接トーチの要部拡大図である。
【図3】演算回路におけるプロセスについて説明する図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる各信号等の時間変化を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態にかかるプラズマキーホール溶接装置の構成を示す図である。
【図6】本発明の第3実施形態にかかるプラズマキーホール溶接装置の構成を示す図である。
【図7】演算回路におけるプロセスについて説明する図である。
【図8】本発明の第3実施形態にかかる各信号等の時間変化を示す図である。
【図9】本発明の第4実施形態にかかるプラズマキーホール溶接装置の構成を示す図である。
【図10】従来のプラズマキーホール溶接装置の構成の一例を示す図である。
【図11】プラズマキーホール溶接において生じうる不具合例を示す図である。
【図12】プラズマキーホール溶接において生じうる不具合例を示す図である。
【図13】プラズマキーホール溶接を行う際に望まれる溶接状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0026】
図1は、本発明の第1実施形態にかかるプラズマキーホール溶接装置の構成を示す図である。同図に示されたプラズマキーホール溶接装置A1は、溶接トーチ11、マニピュレータ12、溶接電源2、およびロボット制御装置3を備える。図2は、図1に示した溶接トーチ11の要部拡大図である。プラズマキーホール溶接装置A1は、たとえばアルミニウム板が突き合わされた被溶接物Wに対して、プラズマキーホール溶接を行うのに用いられる。なお本明細書においては、特に断りのない限り、電流値とは電流の絶対値の時間平均値を意味する。
【0027】
溶接トーチ11は、ノズル111とプラズマ電極112とを備える。ノズル111は、たとえば銅などの金属からなる筒状部材であり、適宜水冷構造を有する。プラズマ電極112は、非消耗電極とされており、たとえばタングステンからなる金属棒である。プラズマ電極112は、被溶接物Wとの間にアーク電圧Vwを印加するための電極である。ノズル111からは、プラズマガスPGがプラズマ電極112を囲むように噴出される。プラズマガスPGは、たとえばArとされる。プラズマ電極112と被溶接物Wとの間にアーク電圧Vwが印加されることにより、プラズマガスPGを媒体としてプラズマアークPAが発生する。プラズマアークPAが発生している際には、プラズマ電極112と被溶接物Wとの間には交流のアーク電流Iwが流れている。マニピュレータ12は、溶接トーチ11を保持している。マニピュレータ12は、たとえば多関節ロボットとされる。
【0028】
溶接電源2は、プラズマ電極112と被溶接物Wとの間に、アーク電圧Vwを印加し、アーク電流Iwを流すための装置である。溶接電源2は、出力制御回路21、アーク電圧検出回路22、および時間計測回路23を備える。
【0029】
出力制御回路21は、複数のトランジスタ素子からなるインバータ制御回路を有する。出力制御回路21は、外部から入力される商用電源(たとえば3相200V)をインバータ制御回路によって変換し、プラズマキーホール溶接に適するアーク電流Iwおよびアーク電圧Vwを出力する。出力制御回路21の出力は、一端が溶接トーチ11に接続され、他端が被溶接物Wに接続されている。このようにして出力制御回路21は、プラズマ電極112と被溶接物Wとの間にアーク電圧Vwを印加し、アーク電流Iwを流す。
【0030】
出力制御回路21には、後述の動作制御回路31から、電流設定信号Isと出力開始信号Onとが入力される。
【0031】
アーク電圧検出回路22は、プラズマ電極112と被溶接物Wとの間のアーク電圧Vwを検出する。アーク電圧検出回路22は、アーク電圧Vwに対応する電圧検出信号Vdを出力する。
【0032】
時間計測回路23は、溶接を開始する際にキーホールKHを貫通させるのに要したキーホール形成時間ΔTを計測するためのものである。時間計測回路23は、絶対値演算回路231、ローパスフィルタ232、電圧変動検出回路233、およびキーホール形成時間算出回路234を備える。
【0033】
絶対値演算回路231には、電圧検出信号Vdが入力される。絶対値演算回路231は、入力された電圧検出信号Vdの絶対値を演算する。そして絶対値演算回路231は、当該演算の結果を電圧絶対値信号Vaとして出力する。ローパスフィルタ232には、電圧絶対値信号Vaが入力される。ローパスフィルタ232は、入力された電圧絶対値信号Vaの高周波成分を除去する演算を行う。そしてローパスフィルタ232は、当該演算の結果を成形電圧信号Vfとして出力する。
【0034】
電圧変動検出回路233は、成形電圧信号Vfの変動を検出するための回路である。電圧変動検出回路233は、成形電圧信号Vfの変動を検出し、キーホールKHが貫通した時刻を検出するために設けられている。電圧変動検出回路233は、微分回路BV、比較回路CM1、キーホール形成開始基準電圧設定回路VS、および比較回路CM2を備える。
【0035】
微分回路BVには、成形電圧信号Vfが入力される。微分回路BVは、入力された成形電圧信号Vfの時間微分値を計算し、電圧微分信号Bvを出力する。比較回路CM1には、電圧微分信号Bvが入力される。比較回路CM1は、この電圧微分信号Bvが予め定められた基準値Bth1以下となった場合に、キーホールKHの形成が開始されたと判断する。この時、比較回路CM1は、短時間だけHighレベルになるキーホール形成開始信号Cm1を出力する。
【0036】
キーホール形成開始基準電圧設定回路VSには、キーホール形成開始信号Cm1と、成形電圧信号Vfとが入力される。キーホール形成開始基準電圧設定回路VSは、キーホール形成開始信号Cm1が入力された時の成形電圧信号Vfをキーホール形成開始基準電圧信号Vsと設定する。そして、キーホール形成開始基準電圧設定回路VSは、キーホール形成開始基準電圧信号Vsを出力する。
【0037】
比較回路CM2には、キーホール形成開始基準電圧信号Vsと、成形電圧信号Vfとが入力される。比較回路CM2は、キーホール形成開始基準電圧信号Vsと、成形電圧信号Vfとの差が、プラズマガスの種類等によって予め定められた基準値Bth2以上になった場合、キーホールKHが貫通したと判断する。この時、比較回路CM2は、短時間だけHighレベルになるキーホール貫通信号Cm2を出力する。なお、比較回路CM2は、本発明のキーホール貫通判断手段の一例に相当する。
【0038】
キーホール形成時間算出回路234には、キーホール貫通信号Cm2と、出力開始信号Onとが入力される。キーホール形成時間算出回路234は、出力開始信号Onが入力された時刻と、キーホール貫通信号Cm2が入力された時刻とにより、キーホール形成時間ΔTを計算する。キーホール形成時間算出回路234は、キーホール形成時間ΔTに対応するキーホール形成時間信号KTを出力する。
【0039】
ロボット制御装置3は、マニピュレータ12の動作を制御するためのものである。ロボット制御装置3は、動作制御回路31と演算回路OCとを備える。
【0040】
動作制御回路31は、図示しないマイクロコンピュータおよびメモリを有している。このメモリには、マニピュレータ12の動作が設定された作業プログラムが記憶されている。動作制御回路31には、キーホール貫通信号Cm2と、後述の速度信号vpとが入力される。
【0041】
動作制御回路31は、キーホール貫通信号Cm2や速度信号vp等に応じて、マニピュレータ12に対して動作制御信号Mcを出力する。この動作制御信号Mcにより、マニピュレータ12を作動させ、溶接トーチ11を被溶接物Wの所定の溶接開始位置に移動させたり、被溶接物Wの面内方向に沿って移動させたりする。定常溶接時においては、溶接トーチ11は、被溶接物Wの面内方向に沿って溶接速度Vpで移動する。動作制御回路31は、たとえばハードディスクなどの情報格納装置(図示略)を備える。この情報格納装置には、実行しようとしているプラズマキーホール溶接における諸情報、すなわち、アーク電流Iwの電流値、プラズマガスPGの種類および流量、被溶接物Wの種類および厚さ、等の情報が記憶される。動作制御回路31は、キーホール貫通信号Cm2を受けると、トーチ移動開始信号Stをマニピュレータ12に出力する。また、動作制御回路31は、電流設定信号Isと出力開始信号Onとを出力する。
【0042】
演算回路OCは、キーホール形成時間ΔTに基づいて、実行しようとしているプラズマキーホール溶接に最適な溶接条件を算出するための回路である。図3は、演算回路OCにおけるプロセスについて説明する図である。本実施形態においては、演算回路OCは、キーホール形成時間ΔTに基づいて溶接速度Vpを算出する。演算回路OCは、最適な溶接条件を算出するために、図3に示す溶接条件データベースDB1を用いる。溶接条件データベースDB1は、上述の情報格納装置に記憶され、事前の実験等により予め作成されたものである。
【0043】
溶接条件データベースDB1には、キーホール形成時間ΔT、アーク電流Iwの電流値、プラズマガスPGの種類および流量、被溶接物Wの種類および厚さ、に応じた最適な溶接速度Vpが、リスト化されている。
【0044】
ロボット制御装置3には、ティーチペンダントTPが接続されている。ティーチペンダントTPは、ユーザからの各種動作の設定が入力され、当該各種動作の設定をロボット制御装置3に伝達する。
【0045】
次に、図4をさらに用いて本実施形態における動作の一例について説明する。
【0046】
同図(a)は電圧検出信号Vdの時間変化を示し、(b)は電圧絶対値信号Vaの時間変化を示し、(c)は成形電圧信号Vfの時間変化を示し、(d)キーホール形成開始信号Cm1の時間変化を示し、(e)はキーホール貫通信号Cm2の時間変化を示し、(f)は溶接トーチ11の被溶接物Wの面内方向に沿う移動速度Vpの時間変化を示す。
【0047】
同図(a)に示す電圧検出信号Vdは、ピーク値とベース値とを有する交流パルス波形電圧信号を示す。
【0048】
<時刻t1〜t2>
時刻t1において、外部からの溶接開始信号(図示略)が動作制御回路31に入力されると、動作制御回路31は、出力開始信号Onを、出力制御回路21とキーホール形成時間算出回路234とに出力する。すると、出力制御回路21はプラズマ電極112と被溶接物Wとの間にアーク電圧Vwを印加し、プラズマアークPAが点孤される。そしてアーク電流Iwの通電が開始される。絶対値演算回路231は、アーク電圧Vwに対応する電圧検出信号Vdの絶対値を演算し、同図(b)に示す電圧絶対値信号Vaを出力する。ローパスフィルタ232は、電圧絶対値信号Vaの高周波成分を除去し、同図(c)に示す成形電圧信号Vfを出力する。時刻t1以降、プラズマアークPAは、被溶接物Wの表面に溶融池を形成する。溶融池が形成され始めた時はプラズマアークPAは不安定である。そのためアーク電圧Vwは変動しやすい。
【0049】
<時刻t2〜t3>
同図(c)に示すように、成形電圧信号Vfが上昇して時刻t2になると、プラズマアークPAは安定する。そのため時刻t2以降、成形電圧信号Vfの上昇率が小さくなる。比較回路CM1は、成形電圧信号Vfを時間微分した電圧微分信号Bvが、予め定めた基準値Bth1以下となった場合、プラズマアークPAが被溶接物WにキーホールKHを掘り始め、キーホールKHの形成が開始されたと判断する。この時、比較回路CM1は、同図(d)に示すように、短時間だけHighレベルになるキーホール形成開始信号Cm1を出力する。キーホール形成開始基準電圧設定回路VSは、キーホール形成開始信号Cm1を受けると、このキーホール形成開始信号Cm1を入力した時の成形電圧信号Vfをキーホール形成開始基準電圧信号Vs(同図(c)参照)として設定する。時刻t2以降、キーホールKHの形成が継続される。
【0050】
<時刻t3〜t4>
時刻t3において、同図(c)に示すように、成形電圧信号Vfとキーホール形成開始基準電圧信号Vsとの差が予め定めた基準値Bth2より大きくなる。この時、比較回路CM2は、キーホールKHが貫通したと判断する。すると同図(e)に示すように、比較回路CM2は、キーホール貫通信号Cm2を、キーホール形成時間算出回路234と動作制御回路31とに出力する。
【0051】
キーホール形成時間算出回路234は、キーホール貫通信号Cm2を受けると、キーホール貫通信号Cm2が入力された時刻t3と、出力開始信号Onが入力された時刻t1との時間差を計算する。当該時間差は、キーホール形成時間ΔTである。そしてキーホール形成時間算出回路234は、キーホール形成時間ΔTに対応するキーホール形成時間信号KTを演算回路OCに出力する。
【0052】
演算回路OCは、キーホール形成時間信号KTを受けると、以下の処理を行い、実行しようとしているプラズマキーホール溶接に最適な溶接速度Vpを算出する。
【0053】
上述のように、演算回路OCは、図3に示す溶接条件データベースDB1を用いて、キーホール形成時間ΔTと、実行しようとしているプラズマキーホール溶接における諸情報(アーク電流Iwの電流値、プラズマガスPGの種類および流量、被溶接物Wの種類および厚さ)とに基づき、最適な溶接速度Vpを算出する。
【0054】
具体例として同図に示す、アーク電流Iwの電流値が200A、プラズマガスPGがAr、プラズマガスPGの流量が2.0L/min、被溶接物Wがアルミニウム、被溶接物Wの厚さが6mmである場合について述べる。この場合にキーホール形成時間ΔTがたとえば13secであれば、演算回路OCは、溶接条件デーベースDB1により、最適な溶接速度Vpは、25cm/minであると算出する。同様に、キーホール形成時間ΔTがたとえば20secであれば、演算回路OCは、最適な溶接速度Vpは、20cm/minであると算出する。
【0055】
このように演算回路OCは、キーホール形成時間ΔTに基づき、最適な溶接速度Vpを算出できる。そして演算回路OCは、算出された溶接速度Vpに対応する速度信号vpを、動作制御回路31に出力する。
【0056】
<時刻t4以降>
動作制御回路31は、比較回路CM2からのキーホール貫通信号Cm2を受けると、マニピュレータ12にトーチ移動開始信号Stを出力する。これにより、時刻t4において、溶接トーチ11の被溶接物Wの面内方向に沿う移動が開始される。すなわち、本発明でいう定常溶接状態が開始される。図4(f)に示すように、溶接トーチ11は、演算回路OCが算出した溶接速度Vpで被溶接物Wに対して移動する。
【0057】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0058】
本実施形態によれば、時間計測回路23により計測されるキーホール形成時間ΔTは、たとえばプラズマキーホール溶接装置A1の周囲の温度、および被溶接物Wの温度、等のプラズマキーホール溶接を行う場合ごとに異なる個別条件を、反映したものである。そのため、演算回路OCにより算出される溶接速度Vpは、当該個別条件を反映したキーホール形成時間ΔTに基づく。すなわち、溶接速度Vpは、当該プラズマキーホール溶接を行う際に適した値であるといえる。その結果、プラズマキーホール溶接を行う前に、そのプラズマキーホール溶接に最適な溶接条件を決定するため多くの予備実験を行う必要がなくなる。これにより、プラズマキーホール溶接の作業効率が向上する。
【0059】
時間計測回路23は、絶対値演算回路231とローパスフィルタ232とを備える。そのため本実施形態によれば、アーク電圧Vwが、交流電圧、交流パルス電圧、直流電圧、直流パルス電圧のいずれの場合であっても、適切にキーホールKHが貫通した時刻t3を計測できる。そのため、アーク電圧Vwが、交流電圧、交流パルス電圧、直流電圧、直流パルス電圧のいずれの場合であっても、適切にキーホール形成時間ΔTを計測することができ、上述のように、プラズマキーホール溶接を行う作業効率が向上する。
【0060】
電圧変動検出回路233は、微分回路BVを備える。そのため本実施形態によれば、キーホール形成開始基準電圧信号Vsを一定値に定める必要がなく、個々の溶接状態に適したキーホール形成開始基準電圧信号Vsを設定できる。これにより、より適切にキーホール形成時間ΔTを計測することができる。
【0061】
図5を用いて、本発明の第2実施形態について説明する。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。図5は、第2実施形態にかかるプラズマキーホール溶接装置の構成を示す図である。同図に示されたプラズマキーホール溶接装置A2は、演算回路OCがロボット制御装置3の構成ではなく、溶接電源2の構成である点において、第1実施形態にかかるプラズマキーホール溶接装置A1と相違する。
【0062】
本実施形態においても、第1実施形態と同様の利点を有する。また本実施形態によれば、同一の溶接電源2を、様々な種類のロボット制御装置3に用いることができるといったメリットもある。
【0063】
図6〜図8を用いて、本発明の第3実施形態について説明する。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。図6は、第3実施形態にかかるプラズマキーホール溶接装置の構成を示す図である。同図に示されたプラズマキーホール溶接装置A3は、演算回路OCが最適な溶接速度Vpを算出するのではなく、定常溶接状態におけるアーク電流Iwの電流値(定常電流値iw2)を算出する点において、第1実施形態にかかるプラズマキーホール溶接装置A1と相違する。
【0064】
図7は、演算回路OCにおけるプロセスについて説明する図である。
【0065】
本実施形態では、演算回路OCは、定常電流値iw2を算出するために、図7に示す溶接条件データベースDB2を用いる。溶接条件データベースDB2も、図3に示した溶接条件データベースDB1と同様、事前の実験等により予め作成されたものである。
【0066】
溶接条件データベースDB2には、キーホール形成時間ΔT、キーホールKHを貫通するまでに流すアーク電流Iwの電流値(初期電流値iw1)、プラズマガスPGの種類および流量、被溶接物Wの種類および厚さ、溶接速度Vp、に応じた最適な定常電流値iw2が、リスト化されている。
【0067】
次に、図8をさらに用いて本実施形態における動作の一例について説明する。図8(a)〜(f)は、図4(a)〜(f)と同様である。図8(g)はアーク電流Iwの電流値の時間変化について示す。図8に示す時刻t1〜t3の間の動作は、図4に示す時刻t1〜t3の間の動作と同様であるから説明を省略し、時刻t3以降について説明する。なお、図8(g)に示すように、時刻t1〜t3までは、アーク電流Iwが初期電流値iw1流れている。
【0068】
<時刻t3〜t4>
時刻t3において、同図(c)に示すように、成形電圧信号Vfとキーホール形成開始基準電圧信号Vsとの差が予め定めた基準値Bth2以上となる。この時、比較回路CM2は、キーホールKHが貫通したと判断する。すると同図(f)に示すように、比較回路CM2は、キーホール貫通信号Cm2を、キーホール形成時間算出回路234と動作制御回路31とに出力する。
【0069】
キーホール形成時間算出回路234は、キーホール貫通信号Cm2を受けると、キーホール貫通信号Cm2が入力された時刻t3と、出力開始信号Onが入力された時刻t1との時間差を計算する。当該時間差は、キーホール形成時間ΔTである。そしてキーホール形成時間算出回路234は、キーホール形成時間ΔTに対応するキーホール形成時間信号KTを演算回路OCに出力する。
【0070】
キーホール形成時間信号KTが演算回路OCに出力される当該工程までも、上述の実施形態と同様である。
【0071】
演算回路OCは、キーホール形成時間信号KTを受けると、以下の処理を行い、実行しようとしているプラズマキーホール溶接に最適な定常電流値iw2を算出する。
【0072】
図7に示すように、演算回路OCは、溶接条件データベースDB2を用いて、キーホール形成時間ΔTと、実行しようとしているプラズマキーホール溶接における諸情報(初期電流値iw1、プラズマガスPGの種類および流量、被溶接物Wの種類および厚さ、溶接速度Vp)とに基づき、最適な定常電流値iw2を算出する。
【0073】
具体例として図7に示す、初期電流値iw1の値が200A、プラズマガスPGがAr、プラズマガスPGの流量が2.0L/min、被溶接物Wがアルミニウム、被溶接物Wの厚さが6mm、溶接速度Vpが25cm/minである場合について述べる。この場合にキーホール形成時間ΔTがたとえば13secであれば、演算回路OCは、溶接条件デーベースDB2により、最適な定常電流値iw2は、200Aであると算出する。同様に、キーホール形成時間ΔTがたとえば17secであれば、演算回路OCは、最適な定常電流値iw2は、220Aであると算出する。
【0074】
このように演算回路OCは、キーホール形成時間ΔTに基づき、最適な定常電流値iw2を算出できる。そして演算回路OCは、算出された定常電流値iw2に対応する電流信号isを、動作制御回路31に出力する。
【0075】
<時刻t4以降>
動作制御回路31は、比較回路CM2からのキーホール貫通信号Cm2を受けると、マニピュレータ12にトーチ移動開始信号Stを出力する。これにより、時刻t4において、溶接トーチ11の被溶接物Wの面内方向に沿う移動が開始される。すなわち、本発明でいう定常溶接状態が開始される。また、動作制御回路31は、出力制御回路21に、演算回路OCにより算出された定常電流値iw2でアーク電流Iwが流れるよう、電流設定信号Isを出力する。その後、図8(g)に示すように、アーク電流Iwは、定常電流値iw2で流れることとなる。
【0076】
本実施形態によれば、上述の実施形態と同様に、時間計測回路23により計測されるキーホール形成時間ΔTは、たとえばプラズマキーホール溶接装置A3の周囲の温度、および被溶接物Wの温度、等のプラズマキーホール溶接を行う場合ごとに異なる個別条件を、反映したものである。そのため演算回路OCにより算出される定常電流値iw2は、当該個別条件を反映したキーホール形成時間ΔTに基づく。すなわち、定常電流値iw2は、当該プラズマキーホール溶接を行う際に適した値であるといえる。その結果、プラズマキーホール溶接を行う前に、そのプラズマキーホール溶接に最適な溶接条件を決定するため多くの予備実験を行う必要がなくなる。これにより、プラズマキーホール溶接を行う作業効率が向上する。
【0077】
時間計測回路23は、絶対値演算回路231とローパスフィルタ232とを備える。そのため本実施形態によれば、アーク電圧Vwが、交流電圧、交流パルス電圧、直流電圧、直流パルス電圧のいずれの場合であっても、適切にキーホールKHが貫通した時刻t3を計測できる。そのため、アーク電圧Vwが、交流電圧、交流パルス電圧、直流電圧、直流パルス電圧のいずれの場合であっても、適切にキーホール形成時間ΔTを計測することができ、上述のように、プラズマキーホール溶接を行う作業効率が向上する。
【0078】
電圧変動検出回路233は、微分回路BVを備える。そのため本実施形態によれば、キーホール形成開始基準電圧信号Vsを一定値に定める必要がなく、個々の溶接状態に適したキーホール形成開始基準電圧信号Vsを設定できる。これにより、より適切にキーホール形成時間ΔTを計測することができる。
【0079】
図9を用いて、本発明の第4実施形態について説明する。なお、同図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。図9は、第4実施形態にかかるプラズマキーホール溶接装置の構成を示す図である。同図に示されたプラズマキーホール溶接装置A4は、演算回路OCがロボット制御装置3の構成ではなく、溶接電源2の構成である点において、第3実施形態にかかるプラズマキーホール溶接装置A3と相違する。
【0080】
本実施形態においても、第3実施形態と同様の利点を有する。また本実施形態によれば、同一の溶接電源2を、様々な種類のロボット制御装置3に用いることができるといったメリットもある。
【0081】
本発明の範囲は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。たとえば上述の説明では、演算回路OCが溶接速度Vpおよび定常電流値iw2のいずれかを算出する例を示したが、演算回路OCが、溶接速度Vpおよび定常電流値iw2のいずれをも算出する構成を採用してもよい。アーク電圧Vwがたとえば直流電圧である場合には、時間計測回路23は、絶対値演算回路231およびローパスフィルタ232を備えている必要はない。
【0082】
また、キーホール形成時間算出回路234が溶接電源2の構成ではなく、ロボット制御装置3の構成であってもよい。
【0083】
また、演算回路OCにより算出された溶接速度Vpもしくは定常電流値iw2が、不適当な値であれば、ティーチペンダントTPにエラーメッセージを表示させる構成を採用してもよい。
【0084】
プラズマキーホール形成時間ΔTを時刻t1〜t3の期間とすることが、プラズマキーホール形成時間ΔTを正確に計測するのに適するが、仮にプラズマキーホール形成時間ΔTを時刻t2〜t3とした場合であっても、本発明の範囲には含まれる。
【符号の説明】
【0085】
A1,A2,A3,A4 プラズマキーホール溶接装置
11 溶接トーチ
111 ノズル
112 プラズマ電極
12 マニピュレータ
2 溶接電源
21 出力制御回路(電流制御手段)
22 アーク電圧検出回路(アーク電圧検出手段)
23 時間計測回路(時間計測手段)
231 絶対値演算回路
232 ローパスフィルタ
233 電圧変動検出回路(電圧変動検出手段)
234 キーホール形成時間算出回路
3 ロボット制御装置
31 動作制御回路(動作制御手段)
BV 微分回路
Bv 電圧微分信号
Bth1 (第1の)基準値
Bth2 (第2の)基準値
CM1 比較回路
Cm1 キーホール形成開始信号
CM2 比較回路(キーホール貫通判断手段)
Cm2 キーホール貫通信号
DB1,DB2 溶接条件データベース
Iw アーク電流
Is 電流設定信号
iw1 初期電流値
iw2 定常電流値
is 電流信号
KH キーホール
KT キーホール形成時間信号
Mc 動作制御信号
On 出力開始信号
OC 演算回路(演算手段)
PA プラズマアーク
PG プラズマガス
St 溶接開始信号
TP ティーチペンダント
Vp 溶接速度(定常速度)
VS キーホール形成開始基準電圧設定回路
Vs キーホール形成開始基準電圧信号
Vw アーク電圧
Va 電圧絶対値信号
Vd 電圧検出信号
Vf 成形電圧信号
vp 速度信号
W 被溶接物
ΔT キーホール形成時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ電極と被溶接物との間にプラズマアークを発生させ、キーホールを形成および貫通させることにより溶接を開始するプラズマキーホール溶接装置であって、
定常溶接状態において定常電流値で上記プラズマ電極と上記被溶接物との間にアーク電流を流す電流制御手段と、
上記定常溶接状態において、上記プラズマ電極を、上記被溶接物の面内方向に沿って定常速度で上記被溶接物に対して相対移動させる動作制御手段と、
溶接を開始する際に上記キーホールを貫通させるのに要したキーホール形成時間を計測する時間計測手段と、
上記キーホール形成時間に基づいて、上記定常速度および上記定常電流値の少なくともいずれかを算出する演算手段と、を備えることを特徴とする、プラズマキーホール溶接装置。
【請求項2】
上記演算手段は、上記定常速度および上記定常電流値のうち上記定常速度のみを算出する、請求項1に記載のプラズマキーホール溶接装置。
【請求項3】
上記プラズマ電極を保持する溶接トーチと、
上記トーチを上記被溶接物に対して相対移動させるマニピュレータと、
上記マニピュレータを制御し、且つ、上記動作制御手段と上記演算手段とを含むロボット制御装置と、を更に備える、請求項1または2に記載のプラズマキーホール溶接装置。
【請求項4】
上記電流制御手段と上記演算手段とを含む溶接電源を更に備える、請求項1または2に記載のプラズマキーホール溶接装置。
【請求項5】
上記プラズマ電極と上記被溶接物との間のアーク電圧を検出するアーク電圧検出手段を更に備え、
上記時間計測手段は、検出された上記アーク電圧の変動を検出する電圧変動検出手段を含む、請求項1ないし4のいずれかに記載のプラズマキーホール溶接装置。
【請求項6】
上記電圧変動検出手段は、
上記アーク電圧の時間微分値を計算する微分回路と、
上記時間微分値と第1の基準値とを比較し、キーホール形成開始信号を出力する比較回路と、
上記キーホール形成開始信号が入力され、且つ、上記キーホール形成開始信号が入力された時の上記アーク電圧をキーホール形成開始基準電圧と設定するキーホール形成開始基準電圧設定回路と、
上記アーク電圧と上記キーホール形成開始基準電圧との差が第2の基準値を超えた場合に上記キーホールが貫通したと判断するキーホール貫通判断手段と、を含む、請求項5に記載のプラズマキーホール溶接装置。
【請求項7】
上記時間計測手段は、上記アーク電圧の絶対値を演算し、演算結果を上記電圧変動検出手段に出力する絶対値演算回路を更に含む、請求項5または6のいずれかに記載のプラズマキーホール溶接装置。
【請求項8】
上記時間計測手段は、上記アーク電圧の高周波成分を除去し、演算結果を上記電圧変動検出手段に出力するローパスフィルタを更に含む、請求項5ないし7のいずれかに記載のプラズマキーホール溶接装置。
【請求項9】
プラズマ電極と被溶接物との間にプラズマアークを発生させ、キーホールを形成および貫通させるキーホール開始工程と、
上記プラズマ電極と上記被溶接物との間に定常電流値のアーク電流を流し、且つ、上記プラズマ電極を、上記被溶接物の面内方向に沿って定常速度で上記被溶接物に対して相対移動させる定常溶接工程と、を備えるプラズマキーホール溶接方法であって、
溶接を開始する際に上記キーホールを貫通させるのに要したキーホール形成時間を計測する工程と、
上記キーホール形成時間に基づいて、上記定常速度および上記定常電流値の少なくともいずれかを算出する演算工程と、を更に備えることを特徴とする、プラズマキーホール溶接方法。
【請求項10】
上記演算工程においては、上記定常速度および上記定常電流値のうち上記定常速度のみを算出する、請求項9に記載のプラズマキーホール溶接方法。
【請求項11】
上記プラズマ電極と上記被溶接物との間のアーク電圧を検出するアーク電圧検出工程を更に備え、
上記キーホール形成時間を計測する工程は、検出された上記アーク電圧の変動を検出する電圧変動検出工程を含む、請求項10に記載のプラズマキーホール溶接方法。
【請求項12】
上記電圧変動検出工程は、
上記アーク電圧の時間微分値を計算する微分工程と、
上記時間微分値と第1の基準値とを比較し、キーホール形成開始信号を出力する比較工程と、
上記キーホール形成開始信号を入力し、且つ、上記キーホール形成開始信号を入力した時の上記アーク電圧をキーホール形成開始基準電圧と設定するキーホール形成開始基準電圧設定工程と、
上記アーク電圧と上記キーホール形成開始基準電圧との差が第2の基準値を超えた場合に上記キーホールが貫通したと判断するキーホール貫通判断工程と、を含む、請求項11に記載のプラズマキーホール溶接方法。
【請求項13】
上記キーホール形成時間を計測する工程は、上記アーク電圧の絶対値を演算し、演算結果を出力する工程を更に含み、
上記電圧変動検出工程は、上記演算結果に基づき実行する、請求項11または12に記載のプラズマキーホール溶接方法。
【請求項14】
上記キーホール形成時間を計測する工程は、上記アーク電圧の高周波成分を除去する工程を更に含み、
上記電圧変動検出工程は、高周波成分が除去された上記アーク電圧に基づき実行する、請求項11ないし13のいずれかに記載のプラズマキーホール溶接方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−67845(P2011−67845A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221864(P2009−221864)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】