説明

プラズマディスプレイパネルおよびその製造方法

【課題】放電電圧が低下くしかも放電特性が均一な高品質で信頼性に優れたプラズマディスプレイパネルおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】金属酸化物を含む保護層26が形成された前面基板21と、隔壁34および蛍光体層35が形成された背面基板31とを、保護層26と隔壁34と蛍光体層35で囲まれる放電空間を介して互いに対向するように配置するとともに封着材を介して封着したプラズマディスプレイパネルであって、放電空間は、この放電空間に導入される還元ガスと金属酸化物との燃焼反応を促進させる触媒81を含む構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術はプラズマディスプレイパネルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的なプラズマディスプレイパネル(以下、パネルという)としては、交流面放電型パネルが一般によく知られている。交流面放電型パネルは、対向配置された前面基板と背面基板とから構成され、前面基板と背面基板との間に多数の放電セルが形成されている。
【0003】
前面基板上には、走査電極と維持電極とからなる1対の表示電極が互いに平行に複数対形成されている。そして、表示電極を覆うように誘電体層が形成され、誘電体層の上に保護層が形成されている。この保護層は、例えば、酸化マグネシウム(MgO)の薄膜で構成され、誘電体層をイオンスパッタから保護するとともに放電開始電圧などの放電特性を安定させる。
【0004】
背面基板上には、平行に設けた複数のデータ電極が形成されている。背面基板は、データ電極を覆うように形成された誘電体層と、誘電体層の上に形成された井桁状の隔壁と、誘電体層の表面および隔壁の側面に形成された赤(R)、緑(G)、青(B)の蛍光体層とで構成されている。
【0005】
前面基板と背面基板とは、表示電極とデータ電極とが立体的に交差するように対向配置されて密封されている。前面基板と背面基板との間には放電セルと呼ばれる放電空間が形成され、この放電セルにはキセノンガスなどの放電ガスが封入されている。この放電セルは、表示電極とデータ電極とが対向する部分に形成されている。
【0006】
このようなパネルでは、放電セル内に封入された放電ガスを放電させれば紫外線が発生する。この紫外線によってR・G・B3色の蛍光体層を選択的に励起発光させれば、パネルに画像が表示される。
【0007】
画像表示方法(パネル駆動方法)としてはサブフィールド法が一般によく知られている。サブフィールド法は、1フィールド画面(以下、1フィールドという)を複数のサブフィールドに分割し、発光させるサブフィールドを組み合わせて画像を表示する方法である。
【0008】
通常、サブフィールド法では、1フィールドを初期化期間と書込み期間と維持期間との3つのサブフィールドに分割している。初期化期間では、各放電セルに初期化放電を発生させ、書込み放電に必要な壁電荷を形成する。書込み期間では、発光させる放電セルに書込み放電を発生させ、維持放電に必要な壁電荷を形成する。そして維持期間では、走査電極および維持電極に交互に維持パルスを印加して、書込み放電を発生させた放電セルに維持放電を発生させ、発光させるべき放電セルの蛍光体層を発光させて画像を表示する。
【0009】
近年、消費電力の削減や輝度向上に対する市場の要望に応えるために、パネル構造やパネル材料などの改良が活発になされている。例えば、パネルに封入するキセノンガスの分圧を増加させてパネルの発光効率を向上させる試みがなされている。しかしながら、単にキセノンガスの分圧を増加させると放電電圧が上昇するという問題が生じる。
【0010】
そこで保護層として、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)などを主成分とする複合酸化膜を用いることにより、パネルの放電電圧を低下させる試みがなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
しかし、上述した複合酸化膜は、水蒸気、二酸化炭素ガスなどの不純物ガスとの反応性が高い。特に、水蒸気、二酸化炭素ガスと反応して保護層が劣化し、放電特性が変化しやすい。放電特性が変化すると、表示画像の輝度、色度などが不均一になり、画像表示品質を大きく低下させる要因になる。
【0012】
そこで、不純物ガスによる保護層の劣化を防止するために、従来からSrOとCaOとを主成分とする保護層を真空蒸着で作製する際に、真空処理槽内に酸素ガスを供給してその分圧が所定の範囲となるように制御するとともに、真空処理槽内の残留不純物ガスの分圧を所定値以下になるように制御する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0013】
しかし、上述した真空処理槽内の残留不純物ガスの分圧を制御する方法は、パネルの封着工程および排気工程を真空処理槽内で一貫して行う必要がある。したがって、大掛かりな真空処理設備が必要となり、またその設備のランニングコストが膨大となる。加えて、真空中ではガス分子の平均自由行程(mean free path)が大きく、不純ガスが高速で飛来するため、SrOおよびCaOと不純ガスとの反応性が高くなる。よって、不純ガスが真空処理槽内に微量に存在しても保護層と反応し、放電特性を劣化させるという問題があった。
【0014】
そこで、放電電圧を低下させて放電特性を安定化させるために、保護層として酸化マグネシウム(MgO)を用い、パネルの封着工程または排気工程において加熱した保護層に水素ガスを含む還元ガスの導入・排出を繰り返してMgOを還元処理する方法が提案されている。(例えば、特許文献3、4、5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平5−211031号公報
【特許文献2】特開2007−119833号公報
【特許文献3】特許第2984014号公報
【特許文献4】特開2003−086101号公報
【特許文献5】特開2005−158311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、従来のようにMgOを含む保護層を水素ガスで還元処理する方法は、水素ガスの分子量が小さいため排気工程においてパネル内の水素ガスを完全に除去することが困難である。したがって、水素ガスが残存しているパネルを駆動すると、放電によって水素ガスとMgOとが反応して保護層が劣化し、残像の発生や寿命が短くなるなどの不具合が生じる問題があった。
【0017】
ここに開示された技術は、保護層の劣化を防止すると共に放電電圧が低くしかも放電特性が均一な高品質で信頼性に優れたパネルおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するためにここに開示された技術は、金属酸化物を含む保護層が形成された前面基板と、隔壁および蛍光体層が形成された背面基板とを、前記保護層と前記隔壁と前記蛍光体層で囲まれる放電空間を介して互いに対向するように配置するとともに封着材を介して封着したプラズマディスプレイパネルであって、前記放電空間は、前記放電空間に導入される還元ガスと前記金属酸化物との燃焼反応を促進させる触媒を含む構成である。
【0019】
上記目的を達成するためにここに開示された技術は、金属酸化物を含む保護層が形成された前面基板と、隔壁および蛍光体層が形成された背面基板とを、前記保護層と前記隔壁と前記蛍光体層で囲まれる放電空間を介して互いに対向するように配置するとともに封着材を介して封着する封着工程を備えたプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
前記封着工程は、前記放電空間に前記還元ガスを導入し、その後、前記放電空間から前記還元ガスを含む気体を排出する工程を有し、前記放電空間は、前記放電空間に導入される還元ガスと前記金属酸化物との燃焼反応を促進させる触媒を含む構成である。
【発明の効果】
【0020】
ここに開示された技術によれば、放電電圧が低くしかも放電特性が均一な高品質で信頼性に優れたパネルおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】一実施の形態におけるパネルの要部を示す分解斜視図
【図2】一実施の形態におけるパネルの製造方法を示すフローチャート
【図3】封着・排気用加熱装置の構成例を模式的に示した模式図
【図4】封着・排気用加熱装置の温度プロファイルの一例を示す図
【図5】一実施の形態におけるパネルの製造方法を説明するための工程図
【図6】一実施の形態におけるパネルの断面図
【図7】他の実施の形態におけるパネルの断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、一実施の形態におけるパネルおよびその製造法について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1において、パネル10は、ガラス製の前面基板21と背面基板31とを貼り合わせたものから構成されている。
【0024】
前面基板21上には、走査電極22と維持電極23とからなる一対の表示電極24が互いに平行に複数対形成されている。そして、表示電極24を覆うように誘電体層25が形成され、誘電体層25の上に保護層26が形成されている。
【0025】
背面基板31上には、データ電極32が複数形成され、データ電極32を覆うように誘電体層33が形成されている。さらに、誘電体層33の上に井桁状の隔壁34が形成されている。そして、隔壁34の側面および誘電体層33の上には赤(R)、緑(G)および青(B)の各色に発光する蛍光体層35が設けられている。
【0026】
なお、背面基板31の画像表示領域外には、後述する排気および放電ガス供給のための貫通孔(図示せず)が設けられている。
【0027】
前面基板21と背面基板31とは、微小な放電空間を挟んで表示電極24とデータ電極32とが立体的に交差するように対向配置され、その外周部がフリットガラスなどの封着材によって封着されている。そして放電空間には、例えばキセノンガスなどの不活性ガスを含む放電ガスが封入されている。放電空間は、隔壁34によって複数の区画に仕切られ、表示電極24とデータ電極32とが交差する部分において、放電セル36として複数形成されている。そして、放電セル36内の放電ガスを放電させて紫外線を発生させ、この紫外線でRGB3色の蛍光体層35を選択的に励起発光させることにより画像が表示される。
【0028】
なお、パネル10の構造は上述したものに限らず、例えば誘電体層33を省略した構成でも、あるいは隔壁34の形状をストライプ状にした構成でもよい。
【0029】
つぎに、パネル10の構成材料について説明する。
【0030】
図1において、走査電極22は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)などの導電性金属酸化物からなる幅の広い透明電極22aの上に、導電性を高めるために設けた銀などの導電性金属を含む幅の狭いバス電極22bを積層したものから構成されている。同様に、維持電極23も幅の広い透明電極23aの上に幅の狭いバス電極23bを積層したものから構成されている。
【0031】
誘電体層25は、酸化ビスマス系低融点ガラスまたは酸化亜鉛系低融点ガラスで構成されている。
【0032】
保護層26は、CaO、SrO、BaOの群から選択される少なくとも1つの酸化物とMgOとからなる複合酸化物からなる薄膜層で構成されている。
【0033】
データ電極32は、銀などの導電性の高い材料で構成されている。誘電体層33は、前述した誘電体層25と同様の材料で構成してもよいが、可視光反射層としての機能を付与させるために酸化チタン(TiO2)粒子を酸化ビスマス系低融点ガラスまたは酸化亜鉛系低融点ガラスに混合した材料で構成してもよい。
【0034】
隔壁34は、例えば低融点ガラスで構成されている。
【0035】
蛍光体層35に用いる蛍光体は、一般によく知られている蛍光体であればいずれでも用い得る。例えば、B蛍光体としてはBaMgAl1017:Eu、G蛍光体としてはZn2SiO4:Mn、R蛍光体としては(Y、Gd)BO3:Euが用い得る。
【0036】
本実施形態では、誘電体層25の膜厚は40μm、保護層26の膜厚は0.8μmに設定した。また、隔壁34の高さは0.1〜0.15mm、蛍光体層35の膜厚は5〜50μmに設定した。また、放電ガスとしては、ネオンガス(Ne)とキセノンガス(Xe)との混合ガスを用い、放電ガスのガス圧を1×104〜9×104Paに設定した。ここで、Xeの含有量は5体積%以上に設定した。尚、ここに示した各数値は一例であって、パネル10の仕様・要求性能などによって最適値に設定されることは勿論である。
【0037】
つぎに、パネル10の製造方法について図面を参照しながら説明する。図2において、パネル10の製造方法は、前面基板作成工程(S1)、背面基板作成工程(S2)、封着フリット塗布工程(S3)、封着工程(S4)、排気工程(S5)、放電ガス供給工程(S6)を有する。
【0038】
(前面基板作成工程)
図1、図2において、前面基板作成工程(S1)は、前面基板21上に表示電極24を形成する工程と、表示電極24の上に誘電体層25を形成する工程と、誘電体層25の上に保護層26を形成する工程とを含む。
【0039】
まず、ITOの薄膜を真空蒸着法などにより前面基板21上に形成した後、エッチングして透明電極22a、23aを形成する。つぎに、銀粒子を含む導電性ペースト(以下、銀ペーストという)を用いてスクリーン印刷により、走査電極22および維持電極23のパターンを透明電極22a、23a上に印刷した後、焼成して走査電極22および維持電極23すなわち表示電極24を形成する。
【0040】
つぎに、Bi23(60重量%)、B23(15重量%)、SiO2(10重量%)、ZnO(15重量%)の組成比からなる酸化ビスマス系ガラスを含む誘電体ペーストを表示電極24の上にダイコート法により塗布した後、焼成して誘電体層25を形成する。
【0041】
つぎに、CaO、SrO、BaOの群から選択された少なくとも1つの酸化物とMgOとからなる複合酸化物のペレットを用い蒸着法あるいはスパッタリング法により、保護層26を誘電体層25の上に形成する。
【0042】
(背面基板作成工程)
背面基板作成工程(S2)は、データ電極32を背面基板31上に形成する工程と、背面基板31の上に誘電体層33を形成する工程と、誘電体層33の上に隔壁34を形成する工程と、誘電体層33および隔壁34の側面に蛍光体層35を形成する工程とを含む。
【0043】
まず、銀ペーストを用いてスクリーン印刷法によりデータ電極32のパターンを背面基板31上に印刷した後、焼成してデータ電極32を形成する。つぎに、TiO2粒子と誘電体ガラス粒子とを含む誘電体ペーストをデータ電極32の上にスクリーン印刷により塗布した後、焼成して誘電体層33を形成する。
【0044】
つぎに、酸化ビスマス系ガラス粒子とフィラーと感光性樹脂とを含む隔壁形成用ペーストを誘電体層33の上にスクリーン印刷法により塗布・乾燥した後、露光・現像・焼成して隔壁34を形成する。つぎにR・G・Bの蛍光体ペーストを隔壁34の間隙にラインジェット印刷法により印刷した後、焼成してR・G・Bの蛍光体層35を形成する。
【0045】
(封着フリット塗布工程)
図2、図3において、封着フリット塗布工程(S3)は、前面基板21および背面基板31の少なくとも一方の基板の画像表示領域外周部に封着フリット41を塗布する工程と、封着フリット41を仮焼成する工程とから成る。仮焼成工程は、封着フリット41に含まれている樹脂などの不要物を除去するために、封着フリット41を約350℃で加熱する工程である。
【0046】
尚、仮焼成工程において、前面基板21に設けた保護層26(酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウムなど)が劣化する恐れがある。これを防止するために、封着フリット41は背面基板31側に塗布することが好ましい。
【0047】
本実施形態に適用できる封着フリット41としては、酸化ビスマスあるいは酸化バナジウムを主成分とするフリット材料が挙げられる。酸化ビスマスを主成分とするフリット材料としては、例えばBi23−B23−RO―MO系(但し、RはBa、Sr、Ca、Mgのいずれかであり、MはCu、Sb、Feのいずれかである)のガラス材料と、Al23・SiO2・コージライトなどの酸化物からなるフィラーとを混合したものが用い得る。また、酸化バナジウムを主成分とするフリット材料としては、例えばV25−BaO−TeO−WO系のガラス材料と、Al23・SiO2・コージライトなどの酸化物からなるフィラーとを混合したものが用い得る。
【0048】
つぎに、封着工程(S4)で用いる封着・排気用加熱装置100について説明する。
【0049】
図3に示すように、封着・排気用加熱装置100は、内部にヒータ51を有する加熱炉52と、還元ガス供給装置71と、排気装置72と、放電ガス供給装置73と、加熱炉52に挿入された配管53と、バルブ61、63、64と、ガス逃がし弁62とを備えている。配管53は、バルブ61、63および64を介して、それぞれ還元ガス供給装置71、排気装置72および放電ガス供給装置73に接続されている。また、配管53にはガス逃がし弁62が設けられている。
【0050】
つぎに、加熱炉52の温度制御について説明する。
【0051】
封着工程(S4)、排気工程(S5)、放電ガス供給工程(S6)における温度プロファイルについては工程毎に詳しく説明するが、説明の便宜上、図4に示すように、温度プロファイルを温度の視点から以下の5つの期間に分けて説明する。
【0052】
図4において、期間1は、室温から軟化点温度以上、封着温度以下の温度まで上昇させる期間である。期間2は、軟化点温度以上、封着温度以下の温度で一定時間保持する期間である。期間3は、封着温度以上になるまで温度を上昇させ一定時間保持した後、軟化点以下になるまで温度を低下させる期間である。期間4は、軟化点温度付近またはそれよりやや低い温度で一定時間保持した後、室温まで温度を低下させる期間である。期間5は、室温状態を保持する期間である。尚、期間1〜3は封着工程における温度プロファイル、期間4は排気工程における温度プロファイル、期間5は放電ガス供給工程における温度プロファイルである。
【0053】
ここで、軟化点温度とは、図3に示す封着フリット41が軟化する温度である。また、封着温度とは、図3に示す封着フリット41が十分に溶融し前面基板21と背面基板31とが密封される状態になる温度である。本実施形態では、軟化点が約430℃、封着温度が490〜500℃の封着フリット41を用いた。
【0054】
つぎに、封着・排気用加熱装置100を用いて、前面基板21と背面基板31とを封着する方法について説明する。
【0055】
(封着工程)
封着工程(S4)は、前面基板作成工程で作製した前面基板21と、封着フリット塗布工程(S3)で作製した背面基板31とを、仮焼成された封着フリット41を介して封着する工程である。
【0056】
図3に示すように、表示電極24とデータ電極32とが直交して対向するように前面基板21と背面基板31とを重ねて加熱炉52の内部に配置する。つぎに、ガラス管43を背面基板31に設けられた貫通孔39にガラス管固着用フリット42を介して載置する。そして、ガラス管43を配管53に接続する。ここで、前面基板21と背面基板31、および背面基板31とガラス管43とは、それぞれ例えばクリップなどの固定手段(図示せず)によって固定する。
【0057】
つぎに、ヒータ51をオンにして加熱炉52を図4に示す期間1〜3の温度ファイルに基づいて加熱する。すると、仮焼成された封着フリット41は期間1において軟化し、期間3において溶融して前面基板21と背面基板31とが密着される。ここで、期間1における加熱炉52の温度は、軟化した封着フリット41がパネル10の内部に引き込まれない温度に設定する。尚、期間2〜3のときに還元ガスをパネル10の内部に導入する。還元ガスの導入方法および封着方法については後で詳しく説明する。
【0058】
(排気工程)
排気工程(S5)は、パネル10の内部の気体を排気してパネル10の内部を真空にする工程である。このとき、加熱炉52内の温度は、図4に示す期間4の温度プロファイルに設定されている。尚、排気方法については後で詳しく説明する。
【0059】
(放電ガス供給工程)
放電ガス供給工程(S6)は、排気工程(S5)で内部を真空にしたパネル10の内部にNeガスおよびXeガスを主成分とする放電ガスを供給する工程と、ガラス管43を加熱封止する工程とから成る。このとき、加熱炉52内の温度は、図4に示す期間5の温度プロファイルすなわち室温に設定されている。尚、放電ガス供給方法については後で詳しく説明する。
【0060】
本実施形態では、放電ガスとしてXeガス(20体積%)とNeガス(80体積%)との混合ガスを用い、6×104Paの気圧にして供給した。放電ガスの組成は、これに限定されるものではなく、例えばXeガスのみからなるガスであっても用い得る。
【0061】
以上に説明した工程を経てパネル10が完成する。
【0062】
以下に、封着方法、排気方法および放電ガス供給方法について、図5を用いて詳しく説明する。
【0063】
(封着方法)
封着工程(S4)では、前面基板21と背面基板31とを重ね合わせた後、図5(a)に示すように、バルブ61とバルブ63とバルブ64とを閉じた状態にし、図3、図4に示すように、ヒータ51をオンにして加熱炉52内部の温度を封着フリット41の軟化温度以上、封着温度以下に上昇させる(期間1)。
【0064】
つぎに、加熱炉52内部の温度を封着フリット41の軟化点温度以上、封着温度以下の温度に一定時間保持しながら、図5(b)に示すように、バルブ63を開いてパネル10内部の気体を排気した後、バルブ63を閉じる(期間2)。このとき、軟化した封着フリット41が排気によってパネル10の内部に引き込まれて、封着フリット41から気体がリークしない温度に一定時間保持する。
【0065】
つぎに、図5(c)に示すように、バルブ61を開いて所定圧力の還元ガスをパネル10の内部に導入した後、バルブ61を閉じる。このとき、加熱炉52の内部は期間2の温度に保持されている。還元ガスとしては、有機ガスと窒素ガスとの混合ガス、あるいは有機ガスと希ガスとの混合ガスのように有機ガスと不活性ガスとの混合ガスが用い得る。
【0066】
つぎに、加熱炉52の内部を封着温度以上の温度に上昇させ、その温度で30分以上保持した後、加熱炉52の内部の温度を軟化点以下に下げる。このとき、パネル10の内部には、図5(d) に示すように、還元ガスが封入されている(期間3)。
【0067】
(排気方法)
加熱炉52の内部の温度が封着フリット41の軟化温度以下であって所定の温度になった時点で、図5(e)に示すように、バルブ63を開いてパネル10の内部の還元ガスなどの気体を排気する。そして、加熱炉52の内部を所定の温度に保持した状態で、所定時間排気を継続する。その後、ヒータ51をオフにして加熱炉52の内部を室温に降下させる。この間も排気を継続する(期間4)。
【0068】
(放電ガス供給方法)
排気工程が終了した後、加熱炉52の内部を室温に保持した状態で、図5(f)に示すように、バルブ63を閉じバルブ64を開いて放電ガスをパネル10の内部に供給する(期間5)。
【0069】
ところで発明者らは、封着工程(期間2〜3)において、パネル10の内部に有機ガスなどの還元ガスを導入すると放電電圧が低下することを見出した。これは、還元ガスがパネル10の内部に残留した酸素分子と反応して燃焼し燃焼によって残留酸素分子が無くなると、続いて還元ガスが保護層26に含まれているMgOから酸素を奪って燃焼するために、MgOに酸素欠陥が形成されるからであると考えられる。
【0070】
本実施形態に適用できる還元ガスとしては、封着フリット41の封着温度で酸素と反応する有機ガスが望ましい。本実施形態では、封着温度が490〜500℃の封着フリット41を用いた。このような封着温度に適した還元ガスとしては、例えばプロパン(発火点467℃)、エチレン(発火点450℃)、ブタン(発火点430℃)など発火点が500℃以下の有機ガスが挙げられる。また、発火点に関わらず封着温度で酸素と反応する有機ガスを発生する有機物質であればいずれでも用い得る。例えば、分子量が80以上の有機物質の中には、封着温度で熱分解して酸素と反応する有機ガスを発生するものがあることはよく知られている。尚、有機ガスの濃度および導入させる有機ガスの圧力は、パネル10の内部の酸素分子を全て消費し、MgOに十分な量の酸素欠陥を形成する数値に設定する。
【0071】
封着工程(S4)における還元ガスと酸素分子との反応速度は封着時の温度に大きく依存するため、加熱炉52の温度を高く設定することが望ましい。しかし、実際には封着フリット41の封着温度によって加熱炉52の設定温度が決定されるため、封着フリット41の封着温度で還元ガスと酸素分子とを速やかに反応させる必要がある。
【0072】
そこで、本実施形態では、封着フリット41の封着温度で還元ガスと酸素分子との反応速度を速くするために、パラジウム(Pd)などの触媒81を、図6に示すように蛍光体層35の表面に設けた。なお、触媒81は、図7に示すように保護層26の表面に設けたり、図6に示すような蛍光体層35の表面と図7に示すような保護層26の表面の両方の表面に設けたりしてもよい。また、触媒81は、保護層26や蛍光体層35の表面に限らない。触媒として機能するように、放電空間である放電セル36内に含ませておけばよく、保護層26や蛍光体層35に含ませてもよい。
【0073】
このような構成にすれば、封着フリット41の封着温度でも還元ガスと酸素との反応が促進され、MgOの酸素欠陥濃度を増加させることが可能となる。
【0074】
保護層26に含まれているMgOの酸素欠陥濃度を増加させたパネル10は、MgOの酸素欠陥準位に起因して電子放出能力が向上し、放電電圧が大幅に低下すると共に放電電圧が均一になる作用効果を奏する。また、燃焼した有機ガスは水と二酸化炭素に分解されて排気工程(S4)で排出されるため、完成したパネル10の内部には有機ガス、水蒸気、二酸化炭素ガスなどの不要なガスが残留しない。したがって、パネル10の信頼性が向上する。
【0075】
尚、本実施形態では期間2で還元ガスの導入、期間3で還元ガス処理、期間4で還元ガスを排出したが、還元ガスの排出を期間4の途中から開始してもよい。また、期間4の排気工程(S4)中に還元ガスを導入し、一定時間保持した後に還元ガスを排気してもよい。このような場合は、期間4の温度で酸素と反応する還元ガスを用いる。
【0076】
また、本実施形態では保護層26としてMgOを用いたが、MgO、CaO、SrO、BaOの群から選択される少なくとも1つの金属酸化物を含む保護層26でも用い得る。
【0077】
また、本実施形態で開示した数値は、単に一例を挙げたに過ぎず、パネル10の仕様や構成材料の仕様等に合わせて、適宜最適な値に設定することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
ここに開示された技術によれば、放電電圧が低下くしかも放電特性の均一なプラズマディスプレイパネルの実現が可能になるため、高画質・高信頼性が要求されるテレビ装置、モニター装置などの表示デバイスに有用である。
【符号の説明】
【0079】
10 パネル
21 前面基板
22 走査電極
22a、23a 透明電極
22b、23b バス電極
23 維持電極
24 表示電極
25 誘電体層
26 保護層
31 背面基板
32 データ電極
33 誘電体層
34 隔壁
35 蛍光体層
39 貫通孔
41 封着フリット
42 ガラス管固着用フリット
43 ガラス管
51 ヒータ
52 加熱炉
53 配管
61、63、64 バルブ
62 ガス逃がし弁
71 還元ガス供給装置
72 排気装置
73 放電ガス供給装置
81 触媒
100 封着・排気用加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物を含む保護層が形成された前面基板と、隔壁および蛍光体層が形成された背面基板とを、前記保護層と前記隔壁と前記蛍光体層で囲まれる放電空間を介して互いに対向するように配置するとともに封着材を介して封着したプラズマディスプレイパネルであって、
前記放電空間は、前記放電空間に導入される還元ガスと前記金属酸化物との燃焼反応を促進させる触媒を含む
プラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記保護層または前記蛍光体層の少なくともいずれか一方は、前記触媒を含む
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
前記保護層は、酸化マグネシウムまたは酸化カルシウムまたは酸化ストロンチウムまたは酸化バリウムから選択される少なくとも1つの金属酸化物を含む
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
前記還元ガスは有機ガスとした
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
金属酸化物を含む保護層が形成された前面基板と、隔壁および蛍光体層が形成された背面基板とを、前記保護層と前記隔壁と前記蛍光体層で囲まれる放電空間を介して互いに対向するように配置するとともに封着材を介して封着する封着工程を備えたプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
前記封着工程は、前記放電空間に前記還元ガスを導入し、その後、前記放電空間から前記還元ガスを含む気体を排出する工程を有し、
前記放電空間は、前記放電空間に導入される還元ガスと前記金属酸化物との燃焼反応を促進させる触媒を含む
プラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項6】
前記保護層または前記蛍光体層の少なくともいずれか一方は、前記触媒を含む
請求項5に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項7】
前記保護層は、酸化マグネシウムまたは酸化カルシウムまたは酸化ストロンチウムまたは酸化バリウムから選択される少なくとも1つの金属酸化物を含む
請求項5に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項8】
前記還元ガスは有機ガスとした
請求項5に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−84461(P2012−84461A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231253(P2010−231253)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】