説明

プラズマディスプレイ背面板およびその製造方法

【課題】ディスペンサー法による蛍光体層形成法においても、塗布端部付近での塗布ヌケ、隔壁へのペースト乗り上げ、混色等を抑制できるプラズマディスプレイ背面板を提供すること。
【解決手段】基板上に赤色、緑色及び青色の蛍光体が形成された領域を仕切るストライプ状の主隔壁と、該主隔壁と垂直な方向に形成されたストライプ状の補助額壁とを有するプラズマディスプレイ背面板において、主隔壁の長手方向端部に位置する画像非表示領域部に含まれる前記補助隔壁の頂部幅は、いずれも基板中心部に位置する補助隔壁の頂部幅より細いことを特徴とするプラズマディスプレイ背面板とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量薄型の大型画面用カラー画像表示装置として用いられるプラズマディスプレイ用の背面板、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型・大型テレビに使用できるディスプレイとして、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと略す)が注目されている。PDPは、一般に前面板と背面板とからなるものである。まず、その一般的な構成例について説明する。表示面となる前面板側のガラス基板には、対をなす複数のサステイン電極が形成されている。さらにサステイン電極を被覆してガラスを主成分とする誘電体層が形成され、誘電体層を被覆してMgO層が形成されている。
【0003】
一方、背面板側のガラス基板には、通常、複数のアドレス電極が前記サステイン電極と垂直な方向にストライプ状に形成され、アドレス電極を被覆してガラスを主成分とする誘電体層が形成されている。さらに、誘電体層上に放電セルを仕切るための隔壁が形成され、隔壁と誘電体層で形成された放電空間内に蛍光体層が形成されている。フルカラー表示が可能なPDPにおいては、蛍光体層は、RGBの各色に発光するよう構成される。上記構成の前面板と背面板が、前面板側のガラス基板のサステイン電極と背面板側のアドレス電極が互いに直交するように封着され、それらの基板の間隙内にヘリウム、ネオン、キセノンなどから構成される希ガスが封入されPDPが形成される。スキャン電極とアドレス電極の交点を中心として画素セルが形成されるので、PDPは複数の画素セルを有し、画像の表示が可能になる。
【0004】
近年、PDPの高性能化のために、従来のストライプ状の隔壁形状以外に、格子状、ハニカム状などの三叉部または交差部を有する隔壁形状が提案されている。
【0005】
このように隔壁構造が複雑化した理由の一つに、ストライプ状の隔壁構造の場合、画素間の放電の干渉が生じやすいことがあげられる。特に高精細化した場合には放電の干渉が顕著となり、前面板の放電ギャップを狭くする必要があるが、その場合には、画素の放電空間が狭くなるために、輝度が大幅に低下するという問題が生じる。この問題を解消するために、ストライプ状の主隔壁と、それと交差して主隔壁の長手方向に隣接する画素を仕切る補助隔壁を設けることにより格子状の隔壁構造とする方法が提案されている。
【0006】
前記隔壁パターンが形成された基板には、通常スクリーン印刷法、感光性ペースト法(フォトリソグラフィ)、ディスペンサー法等により蛍光体層が形成され、高精細化、歩留まり、塗布均一性などの理由からディスペンサー法が近年注目されている。
【0007】
ディスペンサー法による蛍光体層の形成は、所望の蛍光体ペーストを充填した微細孔を有するノズルに、所定の圧力をかけながら基板とノズルを前記主隔壁と平行な方向に相対移動させ、所定の速度で前記主隔壁と補助隔壁により構成されたセル内に塗布していく。しかし、前記補助隔壁を設ける構造の場合、吐出したペーストが補助隔壁を如何に安定に乗り越えていくかが課題であり、塗布品位、歩留まりに関わる重要なポイントとなる。特に、塗布端部での所定圧力に達するまでの塗り出し時には、圧力立ち上がりのバラツキ、オーバーシュート、圧力カーブのハンチング(揺らぎ)現象等によって吐出ペーストの挙動安定性に欠けるため、塗布抜け、隔壁頂部へのペースト乗り上げ、隣セルへの混色等を起こしやすいという問題がしばしば発生する。また、塗り終わり時に関しても、吐出圧の減圧バラツキや、吐出が弱まった場合の吐出ペースト挙動の不安定さに起因して、塗布品位が損なわれ易いという課題を有していた。
【0008】
前記課題を解決すべく特許文献1には、画像非表示領域部に限って補助隔壁の高さについて工夫がなされているが、概して塗布に安定性を欠く領域というのは画像表示領域部を含むものであり、安定塗布を達成すべき対象領域に欠落がある。また、該公報の技術では、画像表示領域部において主隔壁と補助隔壁の高さに差をつけた場合、最端部ではさらにその高さの差を広げることを意味するが、同一基板面内に主隔壁と補助隔壁を二種以上の段差で形成するというのは煩雑かつ困難である。
【0009】
特許文献2には、塗布開始部の安定性向上を目的として塗布開始点に特別な補助隔壁を付与する形態が記載されているが、該公報では飽くまでペーストの吐出直後の着地性向上について謳われているのみであり、その後の所定圧力に達するまでに塗布される領域での、ペーストが補助隔壁を乗り越えていく際の安定性とは無関係である。
【0010】
特許文献3では、背面板全体の補助隔壁頂部幅を30μm以下に限定することで、主隔壁へのペースト付着等の品位劣化を防ぐ記載がある。確かに、吐出ペーストが補助隔壁を乗り上げる瞬間は、補助隔壁頂部でのペーストの一時的な滞留や、補助隔壁に衝突することによる吐出ペーストの振れなどにより、本来基板に着地すべきペーストが吐出孔の近傍に付着し、その後のペースト吐出安定性を乱すことになるため、補助隔壁を乗り超える時間、距離を短くすることは塗布安定性の観点から有利である。該公報でも、その効果に着眼したものと思われるが、一般的に隔壁幅が細ると焼成後の剥がれ、断線、形状変化が生じ易くなる。また、塗布圧力や速度が所定条件に達した安定領域となれば、補助隔壁の幅は必要以上に細くする必要は無く、前述のとおり、安定条件に達した際に問題なく塗布可能であった補助隔壁の幅が塗布端部において同幅であると安定性を欠くことが問題であり、そこが本発明の重要なポイントとなる。
【特許文献1】特開2006−261106号公報
【特許文献2】特開2005−25951号公報
【特許文献3】特開2005−25950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は上記課題を解決すべく、品位が損なわれやすい塗布開始及び終端部の補助隔壁の形状を調整することにより、ディスペンサー法による蛍光体層形成法においても、塗布端部付近での塗布ヌケ、隔壁へのペースト乗り上げ、混色等を抑制できるプラズマディスプレイ背面板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明は、基板上に赤色、緑色及び青色の蛍光体が形成された領域を仕切るストライプ状の主隔壁と、該主隔壁と垂直な方向に形成されたストライプ状の補助隔壁とを有するプラズマディスプレイ背面板において、主隔壁の長手方向端部に位置する画像非表示領域部に含まれる前記補助隔壁の頂部幅は、いずれも基板中心部に位置する補助隔壁の頂部幅より細いことを特徴とするプラズマディスプレイ背面板である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ディスペンサー法により蛍光体ペーストを塗布する際、塗布端部付近での塗布ヌケ、隔壁へのペースト乗り上げ、混色等を抑制できるプラズマディスプレイ背面板および表示品位の高いプラズマディスプレイを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明について、望ましい実施の形態と共に詳細に説明する。
【0015】
本発明のプラズマディスプレイ背面板に用いるガラス基板としては、ソーダガラスの他にPDP用の耐熱ガラスである旭硝子社製の“PD200”や日本電気硝子社製の“PP8”等を用いることができる。
【0016】
本発明のプラズマディスプレイ背面板において、ガラス基板上に銀やアルミニウム、クロム、ニッケルなどの金属によりストライプ状のアドレス電極が好ましく形成される。アドレス電極を形成する方法としては、これらの金属の粉末と有機バインダーを主成分とする金属ペーストをスクリーン印刷でパターン印刷する方法や、有機バインダーとして感光性有機成分を用いた感光性金属ペーストを塗布し、フォトマスクを用いてパターン露光し、不要な部分を現像工程で溶解除去し、さらに、400〜600℃にて焼成することで金属パターンを形成する感光性ペースト法を用いることができる。また、ガラス基板上にクロムやアルミニウム等の金属をスパッタリングした後に、レジストを塗布し、レジストをパターン露光・現像した後にエッチングにより、不要な部分の金属を取り除くエッチング法を用いることもできる。電極の厚みは1〜10μmが好ましく、2〜5μmがより好ましい。電極が薄すぎる場合は抵抗値が大きくなり正確な駆動ができなくなる傾向にあり、厚すぎる場合は材料を多く要しコスト的に不利となる傾向にある。アドレス電極の幅は20〜200μmが好ましく、より好ましくは30〜100μmである。アドレス電極が細すぎる場合は抵抗値が高くなり正確な駆動が困難となる傾向にあり、太すぎる場合は隣の電極との間の距離が小さくなるため、ショート欠陥を生じやすい傾向にある。また、アドレス電極は表示セル(画素の各RGBを形成する領域)に応じたピッチで形成される。通常のPDPでは100〜500μm、高精細PDPにおいては100〜250μmのピッチで形成することが好ましい。
【0017】
また本発明のプラズマディスプレイ背面板において、前記アドレス電極を形成した基板上にガラス粉末と有機バインダーを主成分として混練してなるガラスペーストを塗布した後に、400〜600℃で焼成することにより誘電体層が好ましく形成される。誘電体層に用いるガラスペーストには、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化亜鉛、酸化リンの少なくとも1種類以上を含有し、これらを合計で10〜80質量%含有するガラス粉末を用いると良い。10質量%以上とすることで、600℃以下での焼成が容易になり、80質量%以下とすることで、結晶化を防ぎ透過率の低下を防止する。
【0018】
ガラス粉末以外に600℃以下に融点や軟化温度を有さないフィラー成分を添加することにより、誘電体層の反射率が高く、輝度の高いPDPを得ることができる。フィラーとしては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムが好ましく、粒子径0.05〜3μmの酸化チタンを用いることが特に好ましい。フィラーの含有量はガラス粉末:フィラーの重量比で、10:1〜1:1が添加の十分な効果を得る上で好ましい。
【0019】
また、導電性微粒子を含有することにより駆動時の信頼性の高いPDPを作製することができる。導電性微粒子は、ニッケル、クロムなどの金属粉末が好ましく、粒子径は1〜10μmが好ましい。1μm以上とすることで十分な効果を発揮でき、10μm以下とすることで誘電体上の凹凸を抑え隔壁形成を容易なものとすることができる。これらの導電性微粒子が誘電体層に含まれる含有量としては、0.1〜10質量%が好ましい。0.1質量%以上とすることで添加の効果を得ることができ、10質量%以下とすることで、隣り合うアドレス電極間でのショートを防ぐことができる。誘電体層の厚みは3〜30μmとすることが好ましく、より好ましくは3〜15μmである。誘電体層が薄すぎる場合はピンホールが発生する傾向にあり、厚すぎる場合は放電電圧が高くなり消費電力が大きくなる傾向にある。
【0020】
本発明のプラズマディスプレイ背面板において、前記アドレス電極、誘電体層などが形成された基板上に、放電セルを仕切るためのストライプ状の主隔壁が前記アドレス電極に平行に形成され、さらに主隔壁に直交する方向に補助隔壁が形成される。
【0021】
図1に主隔壁1及び補助隔壁2を含む本発明のプラズマディスプレイ背面板の構成例を示す。
【0022】
隔壁の構造において、最も単純なのはアドレス電極と平行に形成されるストライプ状隔壁のみの構造であり、製造工程も簡便である。しかしながら、ストライプ状隔壁の場合、隔壁の長手方向に隣接した画素間の放電の干渉が生じやすい。特に高精細化した場合には放電の干渉が顕著となり、前面板の放電ギャップを狭くする必要があるが、その場合には輝度が大幅に低下するという問題が生じる。この問題を解消するために、本発明ではアドレス電極と平行に形成されるストライプ状の主隔壁と、主隔壁の長手方向に隣接する画素を仕切る補助隔壁が互いに直交するように形成される。
【0023】
主隔壁及び補助隔壁の高さは、80〜200μmが適している。80μm以上とすることで蛍光体とスキャン電極が近づきすぎるのを防ぎ、放電による蛍光体の劣化を抑制することができる。また、200μm以下とすることで、スキャン電極での放電と蛍光体の距離を近づけ、十分な輝度を得ることができる。
【0024】
本発明では、後述する蛍光体層の形成においてダイレクト塗布が好ましく用いられることから、その塗布性を考慮すると主隔壁に対して補助隔壁の高さが3〜60μm低い様な段違い形状で構成されることが好ましく、前述した補助隔壁の役割を考慮すると、3〜20μm低い程度であることがより好ましい。
【0025】
図1において主隔壁1及び補助隔壁2の画像表示領域部Xにおける画素数および画素ピッチは、PDPとしての表示画素数及び画面サイズにより適宜調整される。例えば表示画素レベルがXGA、画面サイズが42インチの場合、画素数は長辺の方向(RGB3セルで1画素)に1024画素、短辺の方向に768画素、画素ピッチは長辺の方向が0.8〜1.1mm、短辺の方向が0.6〜0.8mmで調整される。尚、それぞれの画素レベルでの表示画素数は、VGAが長辺の方向に640画素、短辺の方向に480画素、SVGAが長辺の方向に800画素、短辺の方向に600画素、SXGAが長辺の方向に1280画素、短辺の方向に1024画素、それ以上のHDTVタイプについては長辺の方向に1600〜2048画素、短辺の方向に1200〜1536画素等が知られており、画素ピッチがそれぞれの画面サイズに合わせて適宜調整される。
【0026】
本発明のプラズマディスプレイ背面板において、図1のように前記画像表示領域部Xの上下に位置する画像非表示領域部Yが設けられ、本発明において画像非表示領域部Yに含まれる補助隔壁の本数は1〜5本であることが好ましい。ここで画像表示領域部Xの上下とは、主隔壁(およびアドレス電極)の長手方向を縦方向としたときに、その画像表示領域部Xの上側および下側の部分をいう。
【0027】
本発明において主隔壁および補助隔壁は、無機微粒子と有機バインダーからなるガラスペーストを隔壁の形状にパターン形成した後に、400〜800℃で焼成する方法が好ましく適用される。
【0028】
無機微粒子としては、ガラス、セラミック(アルミナ、コーディライトなど)などを用いることができる。特に、ケイ素酸化物、ホウ素酸化物、または、アルミニウム酸化物を必須成分とするガラスやセラミックスが好ましい。
【0029】
無機微粒子の粒子径は、作製しようとするパターンの形状を考慮して選ばれるが、体積平均粒子径(D50)が、1〜10μmであることが好ましく、より好ましくは、1〜5μmである。D50を10μm以下とすることで、パターン形成時に表面凸凹が生じるのを防ぐことができる。また、1μm以上とすることでペーストの粘度調整を容易に行うことができる。
【0030】
有機バインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、メタクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、α−メチルスチレン重合体、ブチルメタクリレート樹脂、エチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース化合物を用いることができる。さらに、可塑剤、増粘剤、有機溶媒、酸化防止剤、分散剤、有機あるいは無機の沈殿防止剤やレベリング剤などの添加剤を加えることも行われる。
【0031】
さらに、その溶液の粘度を調整したい場合、有機溶媒を加えてもよい。このとき使用される有機溶媒としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、γ−ブチルラクトン、ブロモベンゼン、クロロベンゼン、ジブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモ安息香酸、クロロ安息香酸などやこれらのうちの1種以上を含有する有機溶媒混合物が用いられる。
【0032】
また、主隔壁及び補助隔壁のパターン形成法として、本発明で好ましく適用される感光性ペースト法を適用する場合には、ガラスペーストに感光性モノマー、感光性オリゴマー、感光性ポリマーのうちの少なくとも1種類から選ばれた感光性成分を含有し、更に、必要に応じて、光重合開始剤、光吸収剤、増感剤、増感助剤、重合禁止剤を添加すると良い。
【0033】
感光性モノマーとしては、炭素−炭素不飽和結合を含有する化合物、具体例として、単官能および多官能性の(メタ)アクリレート類、ビニル系化合物類、アリル系化合物類などを用いることができる。これらは1種または2種以上使用することができる。
【0034】
また、この感光性ガラスペーストには、有機バインダーとして感光性ポリマーおよび/または感光性オリゴマーを用いることが好ましい。前記感光性ポリマーまたは感光性オリゴマーは、炭素−炭素2重結合を有する化合物から選ばれた成分の重合または共重合により得られる。さらに、ポリマーやオリゴマーに不飽和カルボン酸などの不飽和酸を共重合することによって、感光後のアルカリ水溶液での現像性を向上することができる。不飽和カルボン酸の具体的な例として、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、または、これらの酸無水物などが挙げられる。こうして得られた側鎖にカルボキシル基などの酸性基を有するポリマーもしくはオリゴマーの酸価(AV)は、50〜180の範囲が好ましく、70〜140の範囲がより好ましい。以上に示したポリマーもしくはオリゴマーに対して、光反応性基を側鎖または分子末端に付加させることによって、感光性をもつ感光性ポリマーや感光性オリゴマーとして用いることができる。好ましい光反応性基は、エチレン性不飽和基を有するものである。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。
【0035】
光重合開始剤の具体的な例として、ベンゾフェノン、O−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,3−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−2−フェニルアセトフェノンなどが挙げられる。これらを1種または2種以上使用することができる。光重合開始剤は、感光性成分に対し、好ましくは0.05〜10質量%の範囲で添加され、より好ましくは、0.1〜5質量%の範囲で添加される。重合開始剤の量が少な過ぎると、光感度が低下する傾向にあり、光重合開始剤の量が多すぎると、露光部の残存率が小さくなりすぎる傾向にある。
【0036】
光吸収剤としては、有機系染料からなるものが好ましく用いられる、具体的には、アゾ系染料、アミノケトン系染料、キサンテン系染料、キノリン系染料、アントラキノン系染料、ベンゾフェノン系染料、ジフェニルシアノアクリレート系染料、トリアジン系染料、p−アミノ安息香酸系染料などが使用できる。有機系染料は、焼成後の絶縁膜中に残存しないので、光吸収剤による絶縁膜特性の低下を少なくできるので好ましい。これらの中でも、アゾ系およびベンゾフェノン系染料が好ましい。有機染料の添加量は、0.05〜5質量%が好ましく、より好ましくは、0.05〜1質量%である。添加量が少なすぎると、光吸収剤の添加効果が減少する傾向にあり、多すぎると、焼成後の絶縁膜特性が低下する傾向にある。
【0037】
増感剤は、感度を向上させるために添加される。増感剤の具体例としては、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,3−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)シクロヘキサノンなどが挙げられる。これらを1種または2種以上使用することができる。増感剤を感光性ペーストに添加する場合、その添加量は、感光性成分に対して通常0.05〜10質量%、より好ましくは0.1〜10質量%である。増感剤の量が少な過ぎると光感度を向上させる効果が発揮されない傾向にあり、増感剤の量が多すぎると、露光部の残存率が小さくなる傾向にある。
【0038】
本発明において主隔壁及び補助隔壁のパターンを形成する方法としては、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、感光性ペースト法、フォト埋め込み法、型転写法などが適用されるが、面内でのパターン高さ調整、面内均一性、高精細化が可能などの点から感光性ペースト法が好ましく適用される。
【0039】
次に感光性ペースト法を用いた主隔壁及び補助隔壁の形成手順の一例を以下に示す。
【0040】
ガラス基板に、感光性ペーストを塗布する。塗布方法としては、スクリーン印刷法、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、ブレードコーターなど一般的な方法を用いることができる。塗布厚みは、塗布回数、スクリーンのメッシュ、ペーストの粘度等を選ぶことによって調整できる。また、ポリエステルフィルムなどのフィルム上に感光性ペーストを塗布した感光性シートを作成して、ラミネーターなどの装置を用いて基板上に感光性ペーストを転写する方法を用いても良い。
【0041】
感光性ペーストを塗布した後、露光装置を用いて露光を行う。露光は、通常のフォトリソグラフィで行われるように、フォトマスクを用いてマスク露光する方法が一般的である。
【0042】
用いるマスクは、感光性有機成分の種類によって、ネガ型もしくはポジ型のどちらかを選定する。また、フォトマスクを用いずに、レーザ光などで直接描画する方法を用いても良い。露光に使用される活性光線は、例えば、可視光線、近紫外線、紫外線、電子線、X線、レーザ光などが挙げられる。これらの中で紫外線が最も好ましく、その光源として、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ、殺菌灯などが使用できる。これらのなかでも超高圧水銀灯が好適である。露光条件は、塗布厚みによって異なるが、1〜100mW/cmの出力の超高圧水銀灯を用いて0.1〜10分間露光を行う。
【0043】
本発明において、主隔壁及び補助隔壁について段違い形状を成す場合、前記塗布、露光を各々2回する方法が好ましく適用される。具体的には、まず補助隔壁高さを形成するために必要な厚みで感光性ペーストを塗布(下層)し、補助隔壁パターンが配置されたフォトマスクを介して一度露光する。本発明においては、画像非表示領域部に含まれる補助隔壁の頂部幅を基板中心部に位置する補助隔壁の頂部幅より細くする為に、その際のフォトマスクパターンが重要となる。例えば感光性ペーストがネガ型の場合、補助隔壁の頂部幅はマスクパターンの開口幅に依存する為、基板中心部の開口幅よりも画像非表示領域部Yを形成する領域の開口幅は細いパターンが用いられる。次いでその上に、前記下層塗布分と合わせて主隔壁の高さを形成するために必要な厚みで感光性ペーストを塗布(上層)し主隔壁パターンが配置されたフォトマスクを介して露光する。ここで用いる感光性ペーストの組成(ガラス成分、色味、感度等)は下層、上層同組成のものであっても、別組成のものであってもよい。
【0044】
前記露光後、露光部分と非露光部分の現像液に対する溶解度差を利用して、現像を行うが、その際、浸漬法やスプレー法、ブラシ法等が用いられる。
【0045】
現像液は、感光性ペースト中の溶解させたい有機成分が溶解可能である溶液を用いる。感光性ペースト中にカルボキシル基などの酸性基をもつ化合物が存在する場合は、アルカリ水溶液で現像できる。アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液などが使用できるが、有機アルカリ水溶液を用いた方が焼成時にアルカリ成分を除去しやすいので好ましい。有機アルカリとしては、一般的なアミン化合物を用いることができる。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが挙げられる。アルカリ水溶液の濃度は、通常、0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%である。アルカリ濃度が低過ぎると可溶部が除去され難くなる傾向にあり、アルカリ濃度が高すぎると、パターン部を剥離させ、また、非可溶部を腐食する傾向にある。また、現像温度は、20〜50℃で行うことが工程管理上好ましい。
【0046】
次に、焼成炉にて焼成を行う。焼成雰囲気や温度はペーストや基板の種類によって異なるが、空気中、窒素、水素などの雰囲気中で焼成する。焼成炉としては、バッチ式の焼成炉やローラーハース式の連続型焼成炉を用いることができる。焼成温度は、400〜800℃で行う。基板がガラスである場合は、450〜620℃の温度で10〜60分間保持して焼成を行う。焼成は、先の電極、および誘電体形成について、それぞれ焼成を行うと記載したが、各電極ペースト、誘電体ペーストを変更することにより、電極/誘電体、誘電体/隔壁、電極/誘電体/隔壁を一括して焼成することも可能である。この場合にも本発明の効果は損なわれることはない。
【0047】
本発明では前記主隔壁及び補助隔壁を形成した後に、RGBの各色に発光する蛍光体層が形成される。蛍光体粉末、有機バインダーおよび有機溶媒を主成分とする蛍光体ペーストを所定の隔壁間に塗布、乾燥、焼成することにより、蛍光体層を形成することができる。
【0048】
蛍光体粉末としては、赤色は、Y:Eu、YVO:Eu、(Y、Gd)BO:Eu、YS:Eu、γ−Zn(PO:Mn、(ZnCd)S:AgInなど、緑色は、ZnGeO:Mn、BaAl1219:Mn、ZnSiO、LaPO:Tb、ZnS:Cu、Al、ZnS:Au、Cu、Al、(ZnCd)S:Cu、Al、ZnSiO:Mn、As、YA112:Ce、CeMgAl1119:Tb、GdS:Tb、YA112:Tb、ZnO:Znなど、また、青色は、Sr(POCl:Eu、BaMgAl1423:Eu、BaMgAl1627:Eu、BaMgAl1424:Eu、ZnS:Ag、YSiO:Ceなどがある。有機バインダーの例としては、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、高分子量ポリエーテル、ポリアクリルアミド及び種々のアクリルポリマーが挙げられる。また、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシセルロースなどのセルロース化合物は、焼成後のバインダー残りが少ない蛍光体層を形成できるため、好ましく用いることができる。有機溶媒としては、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、テルピネオール、ベンジルアルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、γ−ブチルラクトン、ブロモ安息香酸などやこれらのうちの1種以上を含有する有機溶媒混合物が用いられる。有機溶媒は、用いる有機バインダーに対して良溶媒であることが好ましい。
【0049】
隔壁間に蛍光体ペーストを充填する手法としては、スクリーン印刷版を用いてパターン印刷するスクリーン印刷法、吐出ノズルの先端から蛍光体ペーストをパターン吐出するディスペンサー法、また、感光性を有する有機成分を有機バインダーとする感光性蛍光体ペーストを用いる感光性ペースト法等を採用することができるが本発明においては厚み均一性、生産性を考慮しディスペンサー法が好ましく採用される。
【0050】
ディスペンサー法は一般的に、細孔を有したノズル内に所望の蛍光体ペーストを充填し、所定の吐出圧力、速度で塗布する方法である。しかし、塗布方向に対して直交するように補助隔壁が配置される場合は、吐出したペーストが補助隔壁を如何に安定に乗り越えていくかが重要となる。特に問題となるのは、塗布開始直後(所定の吐出圧力に達し、安定するまで)、もしくは塗布終了直前(所定の吐出圧力から減圧し大気開放に至るまで)時であり、圧力カーブのバラツキなど挙動安定性を失いやすい。この塗布開始直後、終了直前での補助隔壁を乗り越える安定性を向上させることが本発明のねらいであり、塗布条件が安定する基板中央部よりも補助隔壁幅を細く形成し、補助隔壁を乗り越える時間、距離を短くすることで吐出ペーストの流れの安定性を増すことが出来る。その様子を模式図として図2に示す。
【0051】
図2では、補助隔壁頂部を吐出ペーストが乗り越える際に頂部上でペーストが滞留する様子(図2(a))と(その滞留時にノズル下面付着等の塗布挙動乱れが生じ易い)、頂部幅が細めに形成された場合、吐出ペーストがスムーズに隔壁下部へ流れ、安定性を損なうこと無く隔壁間に充填されていく様子(図2(b))を示している。
【0052】
また前記効能の為に細めに形成される補助隔壁の頂部幅は、塗布圧力の立ち上がりに伴い徐々に太くなっていっても安定に塗布できるようになる為、主隔壁の長手方向最端部側に位置する1本目の補助隔壁頂部幅が最も細く、基板中央部に向かって段階的に太くなるように構成されることが好ましい。その頂部幅は、細くしすぎるとパターン形成不良が生じやすくなる為、基板中央部に位置する補助隔壁頂部幅未満かつ1/5以上の太さが好ましく適用される。
【0053】
また前記効能の為に補助隔壁の頂部幅が細めに形成される領域は、画像非表示領域部に限らずパネル点灯品位に支障をきたすことの無い補助隔壁の頂部幅であれば、画像表示領域部にまで差し掛かっても何ら問題は無い。
【0054】
また図3に示すように、基板縦方向の最上下端の補助隔壁より外側に形成された主隔壁の長さLを、5〜15mm、さらに好ましくは8〜12mmとすることで、安定したディスペンサー法による塗布を行うことができる。すなわち、前記最上下端の補助隔壁より外側に形成された主隔壁部分においてペーストの吐出を開始し、該主隔壁長さLを塗布の助走エリアとして使用することで、ノズルからのペースト吐出挙動を安定させることができる。
【0055】
本発明においては、前述したように画像非表示領域部Yに含まれる補助隔壁の本数は1〜5本であることが好ましい。画像表示領域最上下端部での点灯品位を均一とする為に該補助隔壁は1本以上必要であることが好ましく、逆に5本を越えると、前記助走エリアの長さが短くなったり、助走エリア確保のために基板サイズを大きくしなければならないという問題が生じるため好ましくない。
【0056】
いずれにせよ、ディスペンサー法による圧力応答は吐出開始端から10〜20mm程度基板中央部に入り込んだ地点で設定圧力に達するように構成されることが一般的であり、補助隔壁の頂部幅が細めに形成される領域は助走エリアLを含め15mm以下とすることが好ましい。
【0057】
本発明において各色の蛍光体層の厚みは、8〜40μmであることが好ましい。8μm以上とすることで十分な輝度を得ることができる。また、厚みを40μm以下とすることで放電空間を確保し、蛍光体を有効に発光できる。この場合の蛍光体層の厚みは、隣り合う隔壁の中間点での形成厚み、つまり、放電空間(セル内)の底部に形成された蛍光体層の厚みを指す。
【0058】
蛍光体層(乾燥膜)を形成した基板を必要に応じて、400〜550℃で焼成することにより、本発明のプラズマディスプレイ背面板を作製することができる。
【0059】
上記のプラズマディスプレイ背面板を、前面板と封着後、前背面の基板間隔に形成された空間に、ヘリウム、ネオン、キセノンなどから構成される放電ガスを封入後、駆動回路を装着してPDPを作製できる。前面板は、基板上に所定のパターンで透明電極、バス電極、誘電体、保護膜(MgO)を形成した基板であり、背面基板上に形成されたRGB各色蛍光体層に一致する部分にカラーフィルター層を形成しても良い。また、コントラストを向上するために、ブラックストライプを形成しても良い。
【実施例】
【0060】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0061】
(プラズマディスプレイ背面板の作製)
(実施例1)
ガラス基板として、厚み2.8mmの42インチサイズのPD−200(旭硝子(株)製)を使用した。この基板上に、感光性銀ペーストを塗布、乾燥、露光、現像、焼成工程を経て、線幅50μm、厚み3μm、ピッチ300μmのアドレス電極を形成した。次に、酸化ビスマス78質量%、酸化珪素14質量%、酸化アルミニウム3質量%、酸化亜鉛3質量%、酸化ホウ素2質量%を含有する低融点ガラスの粉末を60重量部、平均粒子径0.3μmの酸化チタン粉末を10重量部、エチルセルロース15重量部、テルピネオール15重量部を混練して得られた誘電体ペーストを塗布した後、580℃で焼成して、厚み10μmの誘電体層を形成した。
【0062】
誘電体層上に、1層目(下層)の隔壁用感光性ペーストを塗布した。感光性ペーストは、ガラス粉末と感光性成分を含む有機成分を70:30の重量比率で混合した後、ローラミルで混練して作成した。ガラス粉末は酸化リチウム10質量%、酸化珪素25質量%、酸化硼素30質量%、酸化亜鉛15質量%、酸化アルミニウム5質量%、酸化カルシウム15質量%から成る平均粒子径2μmのものを、有機成分はカルボキシル基を含有するアクリルポリマー30重量部、トリメチロールプロパントリアクリレート30重量部、光重合開始剤“イルガキュア369”(チバガイギー社製)10重量部、γ―ブチルラクトン30重量部からなるものを用いた。このペーストをダイコーターを用いて乾燥後厚み150μmになるよう塗布した。乾燥はクリーンオーブンにて100℃、40分間行った。
【0063】
次いで、補助隔壁用フォトマスクを介して前記塗布膜を500mJ/cm、ギャップ150μmでピッチ0.68mm×777本の補助隔壁パターンが得られる様、露光した。(画像表示領域部768セル分+両端の画像非表示領域部3セル分ずつが形成される。)なおこの時、最端部側に位置する1本目〜4本目は開口幅25μm、5本目から中央部にかけて開口幅73μmであるようなマスクを用いて、本発明における補助隔壁の太さの制御を行った。
【0064】
次いで、上記補助隔壁分露光済みの基板上に乾燥後厚みが30μmになるように前記隔壁用感光性ペーストを2層目(上層)としてダイコーターにより塗布した後、クリーンオーブンにて100℃、40分の乾燥を行い塗布膜を形成した。前記塗布膜において各色ピッチ0.3mm、各色1024セルが形成される様なストライプパターンを有した主隔壁用フォトマスクを介して、前記塗布膜を400mJ/cm、ギャップ150μmで露光した。
【0065】
上記のようにして形成した露光済み基板を0.4質量%のエタノールアミン水溶液で現像し、隔壁パターンを形成した。パターン形成終了後の基板に対し570℃で15分間焼成を行うことにより、表1に示すような隔壁構造を得た。ここで、w(n=1〜10)は最端部からn本目の補助隔壁頂部幅を示し、wは基板中心部の補助隔壁頂部幅を示している。
【0066】
は、塗布が開始される基板下側のみ記載しているが、塗布終端部となる基板上側についても、ほぼ同様の補助隔壁頂部幅が得られた。また、高さについては基板中央部における値であり、各記載数値は各々測定箇所における5点平均値であり、超深度形状測定機(キーエンス社製 VK-8500)を用いて測定した。また、補助隔壁より外側に形成された主隔壁の長さLの距離は8.0mmであった。参考図を図4に示す。
【0067】
次に蛍光体層を形成した。蛍光体ペーストの材料としては、赤(R)粉末に(Y,Gd,Eu)BOを、緑(G)粉末に(Zn,Mn)SiOを、青(B)粉末に(Ba,Eu)MgAl1017を用い、有機バインダーとしてエチルセルロースを、有機溶媒としてテルピネオールとエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートの30/70の混合溶液を用いた。エチルセルロース10重量%、各色いずれかの蛍光体粉末を50重量%、および有機溶媒を40重量%で混合し、更にセラミックス製の三本ローラーで混練し、各色の蛍光体ペーストを得た。
【0068】
直径100μm、0.9mmピッチで1024個の孔が設置されたノズルを用意し、前記のとおり調整した赤(R)蛍光体ペーストを前記ノズル内に充填し、一定の圧力をかけ孔からペーストを吐出しながら、速度60mm/sでノズルを主隔壁と平行に移動させ、R溝へのRペースト塗布(充填率≒100%)を行った。その後、クリーンオーブンにより130℃、20分乾燥させ、R溝の隔壁側面及び誘電体上に厚さ20μmのR蛍光体乾燥膜を形成した。
【0069】
さらに緑(G)、青(B)蛍光体を同一手法により塗布、乾燥し、各色乾燥膜を形成した基板を焼成炉にて500℃、10分間の焼成を行い、RGB3色の蛍光体層が形成されたプラズマディスプレイ背面板を得た。
【0070】
次いで画像検査装置(Vテクノロジー社製 ネプチューン9000)を用いて、得られたプラズマディスプレイ用背面板の画像表示領域部の蛍光体外観検査を実施し、蛍光体ペーストの主隔壁頂部乗り上げ(以下、頂部乗り、と記載)や塗布ペーストが正常にセル内に充填されていない状態(以下、塗布抜け、と記載)についてカウントした。結果を表1に示す。
【0071】
(実施例2)
補助隔壁を形成するためのフォトマスクにつき、最端部側に位置する1本目〜7本目までは開口幅25μm、8本目から中央部にかけて開口幅73μmであるようなマスクを用いた以外は実施例1と同様にして、プラズマディスプレイ背面板を得た。得られた補助隔壁の頂部幅と、蛍光体外観検査における頂部乗り及び塗布抜けについて、結果を表1に示す。
【0072】
(実施例3)
補助隔壁を形成するためのフォトマスクにつき、最端部側に位置する1本目の開口幅は25μmとし、10本目の開口部73μmまで段階的に開口幅を広げていったもので、10本目から中央部にかけては開口部73μmであるようなマスクを用いた以外は実施例1と同様にして、プラズマディスプレイ背面板を得た。得られた補助隔壁の頂部幅と、蛍光体外観検査における頂部乗り及び塗布抜けについて、結果を表1に示す。
【0073】
(実施例4)
1層目(下層)の隔壁用感光性ペーストの乾燥後厚みが180μm、2層目(上層)の隔壁用感光性ペーストの乾燥後厚みをスクリーン印刷により10μm、とした以外は、実施例3と同様にして、プラズマディスプレイ背面板を得た。得られた補助隔壁の頂部幅と、蛍光体外観検査における頂部乗り及び塗布抜けについて、結果を表1に示す。
【0074】
(比較例1)
補助隔壁を形成するためのフォトマスクにつき、マスクの開口幅が全て73μmであるものを用いた以外は、実施例1と同様にして、プラズマディスプレイ背面板を得た。得られた補助隔壁の頂部幅と、蛍光体外観検査における頂部乗り及び塗布抜けについて、結果を表1に示す。
【0075】
(比較例2)
1層目(下層)の隔壁用観光性ペーストの乾燥後厚みが180μm、2層目(上層)の隔壁用感光性ペーストの乾燥後厚みをスクリーン印刷により10μm、とした以外は、比較例1と同様にして、プラズマディスプレイ背面板を得た。得られた補助隔壁の頂部幅と、蛍光体外観検査における頂部乗り及び塗布抜けについて、結果を表1に示す。
【0076】
実施例1〜4については、頂部乗り及び塗布抜けが無く、品位良好なプラズマディスプレイ背面板が得られたのに対し、比較例1〜2では、特に表示域の上下端に頂部乗りや塗布抜けが顕著に発生するものであった。
【0077】
【表1】

【0078】
(プラズマディスプレイの作成)
次に、前面板を以下の工程によって作製した。まず、背面板と同じガラス基板上に、ITOをスパッタ法で形成後、レジスト塗布し、露光・現像処理、エッチング処理によって厚み0.1μm、線幅100μmの透明電極を形成した。また、黒色銀粉末からなる感光性銀ペーストを用いたフォトリソグラフィー法により、焼成後厚み5μmのバス電極を形成した。電極はピッチ680μm、線幅100μmのものを作製した。
【0079】
次に、酸化鉛を75質量%含有する低融点ガラスの粉末を重量70%、エチルセルロース20質量%、テルピネオール10質量%を混練して得られたガラスペーストをスクリーン印刷により、表示部分のバス電極が覆われるように50μmの厚みで塗布した後に、570℃15分間の焼成を行って前面誘電体を形成した。
【0080】
誘電体を形成した基板上に電子ビーム蒸着により保護膜として、厚み0.5μmの酸化マグネシウム層を形成して前面板を作製した。
【0081】
得られた前面板を、前記の実施例および比較例で得られたプラズマディスプレイ背面板と貼り合わせ封着した後、放電用ガスを封入し、駆動回路を接合してプラズマディスプレイ(PDP)を作製した。このパネルに電圧を印加して表示を観察したところ、実施例1〜4のプラズマディスプレイ背面板を用いたPDPは全面良好な表示であるのに対し、比較例1〜2のプラズマディスプレイ背面板を用いたPDPはパネル上下端に不灯箇所が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明のプラズマディスプレイ用背面板と隔壁構造の模式図である。
【図2】本発明の補助隔壁頂部幅の違いによるディスペンサー法塗布時の影響を示した模式図である。
【図3】本発明の補助隔壁より外側に形成された主隔壁の長さを示した模式図である。
【図4】本発明の実施例1で得られたプラズマディスプレイ用背面板の模式図である。
【符号の説明】
【0083】
1:主隔壁
2:補助隔壁
3:基板
4:補助隔壁頂部幅
X:画像表示領域部
Y:画像非表示領域部
5:ノズル
6:吐出された蛍光体ペースト
L:補助隔壁より外側に形成された主隔壁長さ
(n=1〜10):端部からn本目の補助隔壁頂部幅
:基板中心部の補助隔壁頂部幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に赤色、緑色及び青色の蛍光体が形成された領域を仕切るストライプ状の主隔壁と、該主隔壁と垂直な方向に形成されたストライプ状の補助隔壁とを有するプラズマディスプレイ背面板において、主隔壁の長手方向端部に位置する画像非表示領域部に含まれる前記補助隔壁の頂部幅は、いずれも基板中心部に位置する補助隔壁の頂部幅より細いことを特徴とするプラズマディスプレイ背面板。
【請求項2】
前記補助隔壁は、前記主隔壁の長手方向最端部側に位置する1本目の補助隔壁の頂部幅が最も細く、主隔壁の中央部に向かって段階的に太くなるよう構成されていることを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイ背面板。
【請求項3】
前記補助隔壁は、画像非表示領域部における前記補助隔壁の頂部幅に次いで、画像表示領域部における補助隔壁の頂部幅も主隔壁の中央部に向かって段階的に太くなるよう構成されていることを特徴とする請求項2記載のプラズマディスプレイ背面板。
【請求項4】
前記主隔壁の長手方向終端部から15mm以内の範囲に位置する前記補助隔壁の頂部幅が、いずれも基板中心部に位置する補助隔壁の頂部幅より細いことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマディスプレイ背面板。
【請求項5】
主隔壁に対して前記補助隔壁の高さが3〜60μm低い、段違い形状で構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプラズマディスプレイ背面板。
【請求項6】
主隔壁の長手方向端部に位置する画像非表示領域部に含まれる補助隔壁の頂部幅は、全て基板中心部に位置する補助隔壁の頂部幅以下かつ基板中心部に位置する補助隔壁の頂部幅の1/5以上の太さを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のプラズマディスプレイ背面板。
【請求項7】
基板上にストライプ状の主隔壁と、該主隔壁と垂直な方向に形成されたストライプ状の補助隔壁とを設けたプラズマディスプレイ背面板用部材上の該主隔壁間に、ディスペンサー法により蛍光体ペーストを塗布することによって蛍光体層を設けるプラズマディスプレイ背面板の製造方法であって、該主隔壁の長手方向端部に位置する補助隔壁の頂部幅は、いずれも基板中心部に位置する補助隔壁の頂部幅より細いことを特徴とする、プラズマディスプレイ背面板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−181765(P2009−181765A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18710(P2008−18710)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】