説明

プラズマディスプレイ装置およびプラズマディスプレイパネルの駆動方法

【課題】書込みパルス電圧を高くすることなく、安定した書込み放電を発生させる。
【解決手段】走査電極と維持電極とからなる表示電極対を有する放電セルを複数備えたプラズマディスプレイパネル10と、初期化期間と書込み期間と維持期間とを有するサブフィールドを1フィールド期間内に複数設けるとともに、初期化期間において下降する下り傾斜波形電圧を発生させて走査電極に印加する走査電極駆動回路43と、プラズマディスプレイパネル10の全放電セルに対する点灯させるべき放電セルの割合を点灯率としてサブフィールド毎に検出する点灯率検出回路47とを備え、走査電極駆動回路43は、現サブフィールドの初期化期間において発生させる下り傾斜波形電圧の最低電圧を、点灯率検出回路47により検出された直前のサブフィールドの点灯率に応じて変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁掛けテレビや大型モニターに用いられるプラズマディスプレイ装置およびプラズマディスプレイパネルの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、「パネル」と略記する)として代表的な交流面放電型パネルは、対向配置された前面板と背面板との間に多数の放電セルが形成されている。前面板は、1対の走査電極と維持電極とからなる表示電極対が前面ガラス基板上に互いに平行に複数対形成され、それら表示電極対を覆うように誘電体層および保護層が形成されている。背面板は、背面ガラス基板上に複数の平行なデータ電極と、それらを覆うように誘電体層と、さらにその上にデータ電極と平行に複数の隔壁とがそれぞれ形成され、誘電体層の表面と隔壁の側面とに蛍光体層が形成されている。そして、表示電極対とデータ電極とが立体交差するように前面板と背面板とが対向配置されて密封され、内部の放電空間には、例えば分圧比で5%のキセノンを含む放電ガスが封入されている。ここで表示電極対とデータ電極とが対向する部分に放電セルが形成される。このような構成のパネルにおいて、各放電セル内でガス放電により紫外線を発生させ、この紫外線で赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色の蛍光体を励起発光させてカラー表示を行っている。
【0003】
パネルを駆動する方法としては一般にサブフィールド法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。サブフィールド法では、1フィールド期間を複数のサブフィールドに分割し、それぞれのサブフィールドで各放電セルを発光または非発光させることにより階調表示を行う。各サブフィールドは、初期化期間、書込み期間および維持期間を有する。
【0004】
初期化期間では、各走査電極に初期化波形を印加し、各放電セルで初期化放電を発生させる。それにより、各放電セルにおいて、続く書込み動作のために必要な壁電荷を形成する。
【0005】
書込み期間では、走査電極に順次走査パルスを印加(以下、この動作を「走査」とも記す)するとともに、データ電極には表示すべき画像信号に対応した書込みパルスを印加する(以下、これらの動作を総称して「書込み」とも記す)。それにより、走査電極とデータ電極との間で選択的に書込み放電を発生させ、選択的に壁電荷を形成する。
【0006】
続く維持期間では、表示させるべき輝度に応じた所定の回数の維持パルスを走査電極と維持電極とからなる表示電極対に交互に印加する。それにより、書込み放電による壁電荷形成が行われた放電セルで選択的に放電を起こし、その放電セルを発光させる。これにより画像表示を行う。
【0007】
複数の走査電極は走査電極駆動回路により駆動され、複数の維持電極は維持電極駆動回路により駆動され、複数のデータ電極はデータ電極駆動回路により駆動される。
【特許文献1】特開2006−18298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年においては、パネルの更なる高精細化が進められているが、パネルの高精細化にともない微細化された放電セルでは、初期化放電によって放電セル内に形成された壁電荷が失われる電荷抜けと呼ばれる現象が生じやすいことが確認されている。また、壁電荷は時間の経過とともに徐々に失われていくことがわかっており、さらに、壁電荷は、他の放電セルに書込み放電を発生させるためにデータ電極に印加される書込みパルスの影響を受けて減少することも確認されている。そのため、初期化放電が起こってから書込み期間で走査パルスが印加される順番が遅い放電セルでは、その放電セルに走査パルスおよび書込みパルスが印加されるまでにより多くの壁電荷が失われやすく、書込み動作時の放電不良が発生しやすい。特に、高精細化されたパネルでは、走査電極数の増加により走査に費やす時間がさらに長くなってしまうため、書込み期間の最後の方に書込みがなされる放電セルにおける壁電荷の減少はさらに大きくなりやすく、書込み放電が不安定になりやすい。
【0009】
したがって、安定した書込み放電を発生させるためには、初期化動作において壁電荷の調整を適正に行うことが重要である。しかし、初期化放電は、放電セルの点灯状態に影響を受けてばらつきを生じることがあるため、放電セルの点灯状態によらず壁電荷の調整を適正に行うことは困難であった。
【0010】
本発明は、これらの課題に鑑みなされたものであり、放電セルの点灯状態に応じて初期化放電を制御することで壁電荷の調整を適正に行うことができるので、安定した書込み放電を発生させることが可能なプラズマディスプレイ装置およびパネルの駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のプラズマディスプレイ装置は、走査電極と維持電極とからなる表示電極対を有する放電セルを複数備えたパネルと、初期化期間と書込み期間と維持期間とを有するサブフィールドを1フィールド期間内に複数設けるとともに、初期化期間において下降する下り傾斜波形電圧を発生させて走査電極に印加する走査電極駆動回路と、パネルの全放電セルに対する点灯させるべき放電セルの割合を点灯率としてサブフィールド毎に検出する点灯率検出回路とを備え、走査電極駆動回路は、現サブフィールドの初期化期間において発生させる下り傾斜波形電圧の最低電圧を、点灯率検出回路により検出された直前のサブフィールドの点灯率に応じて変更することを特徴とする。
【0012】
これにより、直前のサブフィールドの点灯率に応じて現サブフィールドの初期化放電を制御し壁電荷の調整を適正に行うことができるので、書込みパルス電圧を大きくすることなく、安定した書込み放電を発生させることが可能となる。
【0013】
また、このプラズマディスプレイ装置において、走査電極駆動回路は、1フィールド期間内に、パネルの全放電セルに初期化放電を発生させる全セル初期化動作を行うサブフィールドと、直前のサブフィールドの書込み期間において書込み放電を発生させた放電セルにのみ初期化放電を発生させる選択初期化動作を行うサブフィールドとを有し、全セル初期化動作を行うサブフィールドにおいては、直前のサブフィールドの点灯率にかかわらず、下り傾斜波形電圧の最低電圧を一定にする構成であってもよい。
【0014】
また、本発明のパネルの駆動方法は、走査電極と維持電極とからなる表示電極対を有する放電セルを複数備えたパネルを、初期化期間と書込み期間と維持期間とを有するサブフィールドを1フィールド期間内に複数設けるとともに、初期化期間において下降する下り傾斜波形電圧を発生させ走査電極に印加して駆動するパネルの駆動方法であって、パネルの全放電セルに対する点灯させるべき放電セルの割合を点灯率としてサブフィールド毎に検出し、現サブフィールドの初期化期間において発生させる下り傾斜波形電圧の最低電圧を、直前のサブフィールドの点灯率に応じて変更することを特徴とする。
【0015】
これにより、直前のサブフィールドの点灯率に応じて現サブフィールドの初期化放電を制御し壁電荷の調整を適正に行うことができるので、書込みパルス電圧を大きくすることなく、安定した書込み放電を発生させることが可能となる。
【0016】
また、本発明のパネルの駆動方法は、1フィールド期間内に、パネルの全放電セルに初期化放電を発生させる全セル初期化動作を行うサブフィールドと、直前のサブフィールドの書込み期間において書込み放電を発生させた放電セルにのみ初期化放電を発生させる選択初期化動作を行うサブフィールドとを設け、全セル初期化動作を行うサブフィールドにおいては、直前のサブフィールドの点灯率にかかわらず、下り傾斜波形電圧の最低電圧を一定にしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、放電セルの点灯状態に応じて初期化放電を制御することで壁電荷の調整を適正に行うことができるので、安定した書込み放電を発生させることが可能なプラズマディスプレイ装置およびパネルの駆動方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置について、図面を用いて説明する。
【0019】
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態におけるパネル10の構造を示す分解斜視図である。ガラス製の前面板21上には、走査電極22と維持電極23とからなる表示電極対24が複数形成されている。そして走査電極22と維持電極23とを覆うように誘電体層25が形成され、その誘電体層25上に保護層26が形成されている。
【0020】
また、保護層26は、放電セルにおける放電開始電圧を下げるために、パネルの材料として使用実績があり、ネオン(Ne)およびキセノン(Xe)ガスを封入した場合に2次電子放出係数が大きく耐久性に優れたMgOを主成分とする材料から形成されている。
【0021】
背面板31上にはデータ電極32が複数形成され、データ電極32を覆うように誘電体層33が形成され、さらにその上に井桁状の隔壁34が形成されている。そして、隔壁34の側面および誘電体層33上には赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色に発光する蛍光体層35が設けられている。
【0022】
これら前面板21と背面板31とは、微小な放電空間を挟んで表示電極対24とデータ電極32とが交差するように対向配置され、その外周部をガラスフリット等の封着材によって封着されている。そして、内部の放電空間には、ネオンとキセノンの混合ガスが放電ガスとして封入されている。なお、本実施の形態では、発光効率を向上させるためにキセノン分圧を約10%とした放電ガスを用いている。放電空間は隔壁34によって複数の区画に仕切られており、表示電極対24とデータ電極32とが交差する部分に放電セルが形成されている。そしてこれらの放電セルが放電、発光することにより画像が表示される。
【0023】
なお、パネル10の構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁を備えたものであってもよい。また、放電ガスの混合比率も上述した数値に限られるわけではなく、その他の混合比率であってもよい。
【0024】
図2は、本発明の一実施の形態におけるパネル10の電極配列図である。パネル10には、行方向に延長されたn本の走査電極SC1〜走査電極SCn(図1の走査電極22)およびn本の維持電極SU1〜維持電極SUn(図1の維持電極23)が配列され、列方向に延長されたm本のデータ電極D1〜データ電極Dm(図1のデータ電極32)が配列されている。そして、1対の走査電極SCi(i=1〜n)および維持電極SUiと1つのデータ電極Dj(j=1〜m)とが交差した部分に放電セルが形成され、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。そして、m×n個の放電セルが形成された領域がパネル10の表示領域となる。
【0025】
次に、本実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の構成について説明する。図3は、本発明の一実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置1の回路ブロック図である。プラズマディスプレイ装置1は、パネル10、画像信号処理回路41、データ電極駆動回路42、走査電極駆動回路43、維持電極駆動回路44、タイミング発生回路45、点灯率検出回路47、メモリ48および各回路ブロックに必要な電源を供給する電源回路(図示せず)を備えている。
【0026】
画像信号処理回路41は、パネル10の画素数に応じて、入力された画像信号sigをサブフィールド毎の発光・非発光を示す画像データに変換する。
【0027】
データ電極駆動回路42は、サブフィールド毎の画像データを各データ電極D1〜データ電極Dmに対応する信号に変換し、タイミング信号にもとづいて各データ電極D1〜データ電極Dmを駆動する。
【0028】
点灯率検出回路47は、サブフィールド毎の画像データにもとづき、全放電セル数に対する点灯させるべき放電セル数の割合、すなわち点灯率をサブフィールド毎に検出する。そして、検出した点灯率をあらかじめ定めた複数の点灯率しきい値(本実施の形態においては、40%、70%)と比較し、その結果を表す信号をタイミング発生回路45に出力する。なお、点灯率検出回路47から出力される信号は、メモリ48において1サブフィールド期間分だけ遅延されて、タイミング発生回路45に入力される。なお、この点灯率しきい値は何らこれらの数値に限定されるものではなく、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等にもとづいて最適な値に設定することが望ましい。
【0029】
タイミング発生回路45は、水平同期信号H、垂直同期信号Vおよび点灯率検出回路47からの出力にもとづき各回路ブロックの動作を制御する各種のタイミング信号を発生し、それぞれの回路ブロック(画像信号処理回路41、データ電極駆動回路42、走査電極駆動回路43および維持電極駆動回路44)へ供給する。
【0030】
走査電極駆動回路43は、初期化期間において走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する初期化波形を発生するための初期化波形発生回路(図示せず)、維持期間において走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する維持パルスを発生するための維持パルス発生回路(図示せず)、複数の走査ICを備え書込み期間において走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する走査パルスを発生するための走査パルス発生回路52を有する。そして、タイミング信号にもとづいて各走査電極SC1〜走査電極SCnをそれぞれ駆動する。
【0031】
維持電極駆動回路44は、維持パルス発生回路および電圧Ve1、電圧Ve2を発生するための回路(図示せず)を備え、タイミング信号にもとづいて維持電極SU1〜維持電極SUnを駆動する。
【0032】
なお、本実施の形態における走査電極駆動回路43は、初期化期間に走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する初期化波形を、点灯率検出回路47において検出された点灯率にもとづき変化させている。これにより、本実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置1では、初期化動作における壁電荷の調整を適正に行い、書込み放電の安定化を実現しているが、この詳細については後述する。
【0033】
次に、走査電極駆動回路43の詳細について説明する。図4は、本発明の一実施の形態における走査電極駆動回路43の回路図である。走査電極駆動回路43は、維持パルスを発生させる維持パルス発生回路50、初期化波形を発生させる初期化波形発生回路51、走査パルスを発生させる走査パルス発生回路52を備え、走査パルス発生回路52の各出力端子はパネル10の走査電極SC1〜走査電極SCnのそれぞれに接続されている。なお、図4には、負の電圧Vaを用いた回路(例えば、ミラー積分回路54)を動作させているときに、その回路と維持パルス発生回路50および電圧Vrを用いた回路(例えば、ミラー積分回路53)とを電気的に分離するためのスイッチング素子Q4を用いた分離回路を示している。また、以下の説明においてスイッチング素子を導通させる動作を「オン」、遮断させる動作を「オフ」と表記し、スイッチング素子をオンさせる信号を「Hi」、オフさせる信号を「Lo」と表記する。
【0034】
維持パルス発生回路50は、一般に用いられている電力回収回路(図示せず)とクランプ回路(図示せず)とを備え、タイミング発生回路45から出力されるタイミング信号にもとづき内部に備えた各スイッチング素子を切換えて維持パルスを発生させる。なお、図4では、タイミング信号の信号経路の詳細は省略する。また、上昇する傾斜波形電圧を発生させるためのミラー積分回路(図示せず)を備え、維持期間の最後に、後述する消去ランプ波形を発生させる。
【0035】
初期化波形発生回路51は、スイッチング素子Q1とコンデンサC1と抵抗R1とを有し走査パルス発生回路52の基準電位Aをランプ状に上昇させるミラー積分回路53、スイッチング素子Q2とコンデンサC2と抵抗R2とを有し走査パルス発生回路52の基準電位Aをランプ状に降下させるミラー積分回路54を備えている。そして、ミラー積分回路53は初期化動作時に上昇する傾斜波形電圧を発生させ、ミラー積分回路54は初期化動作時に下降する傾斜波形電圧を発生させる。なお、図4には、ミラー積分回路53の入力端子を入力端子IN1、ミラー積分回路54の入力端子を入力端子IN2として示している。
【0036】
なお、本実施の形態では、初期化波形発生回路51に、実用的であり比較的構成が簡単なFET(Field Effect Transistor)を用いたミラー積分回路を採用しているが、本実施の形態は何らこの構成に限定されるものではなく、基準電位Aをランプ状に上昇または降下させることができる回路であればどのような回路であってもよい。
【0037】
走査パルス発生回路52は、走査電極SC1〜走査電極SCnのそれぞれに走査パルスを出力する複数の走査IC55(本実施の形態では、走査IC(1)〜走査IC(12))と、書込み期間において基準電位Aを負の電圧Vaに接続するためのスイッチング素子Q5と、電圧Vaに電圧Vscnを重畳した電圧Vcを走査IC55の高電圧側に印加するためのダイオードD31およびコンデンサC31と、2つの入力端子に入力される入力信号の大小を比較する比較器CP1と、比較器CP1の一方の入力端子に電圧(Va+Vset2)を印加するためのスイッチング素子SW1と、比較器CP1の一方の入力端子に電圧(Va+Vset3)を印加するためのスイッチング素子SW2と、比較器CP1の一方の入力端子に電圧(Va+Vset4)を印加するためのスイッチング素子SW3とを備えている。なお、比較器CP1の他方の入力端子は基準電位Aに接続されている。
【0038】
走査IC55は、低電圧側の入力端子である入力端子INaと高電圧側の入力端子である入力端子INbとの2つの入力端子を有し、制御信号にもとづき、2つの入力端子に入力される信号のいずれかを出力する。そして、走査IC55のそれぞれには、制御信号として、タイミング発生回路45から出力される制御信号OC1、比較器CP1から出力される制御信号OC2が入力される。また、書込み期間において最初に走査を行う走査IC(1)には、書込み期間の開始直後にタイミング発生回路45から出力される走査開始信号SID(1)が入力される。また、全ての走査IC55(本実施の形態では、走査IC(1)〜走査IC(12))には、信号処理動作の同期をとるための同期信号であるクロック信号が共通して入力されるが、図4ではその経路は省略している。
【0039】
なお、走査パルス発生回路52は、初期化期間では初期化波形発生回路51の電圧波形を出力し、維持期間では維持パルス発生回路50の電圧波形を出力するように、タイミング発生回路45によって制御される。
【0040】
図5は、本発明の一実施の形態における走査電極駆動回路43の走査IC55と走査電極SC1〜走査電極SCnとの接続の様子を示す概略図である。なお、図5では、走査IC55(走査IC(1)〜走査IC(12))以外の回路は省略している。
【0041】
走査パルス発生回路52は、n本の走査電極SC1〜走査電極SCnのそれぞれに走査パルス電圧を印加するためのスイッチング素子QH1〜スイッチング素子QHnおよびスイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLnを備えている。スイッチング素子QH1〜スイッチング素子QHn、スイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLnは複数の出力毎にまとめられIC化されている。このICが走査IC55である。
【0042】
なお、本実施の形態では、90本の出力分のスイッチング素子を1つのモノリシックICとして集積し、パネル10は1080本の走査電極22を備えているものとする。すなわち、12個の走査IC(1)〜走査IC(12)を用いて走査パルス発生回路52を構成し、n=1080本の走査電極SC1〜走査電極SCnを駆動するものとする。このように多数のスイッチング素子QH1〜スイッチング素子QHn、スイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLnをIC化することにより部品点数を削減し、実装面積を低減することができる。ただし、本実施の形態で示した数値は単なる一例であり、本発明は何らこれらの数値に限定されるものではない。
【0043】
そして、書込み動作時には、まず、走査電極SC1〜走査電極SC90に接続された走査IC(1)を動作させ、その後に、走査電極SC91〜走査電極SC180に接続された走査IC(2)を動作させ、以降、走査IC(3)から走査IC(12)までを順次動作させる。
【0044】
なお、スイッチング素子QH1〜スイッチング素子QHnおよびスイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLnの切換えは、上述したように、走査開始信号SID、制御信号OC1、制御信号OC2により行われる。
【0045】
次に、走査IC55の動作について説明する。図6は、本発明の一実施の形態における制御信号OC1、制御信号OC2と走査IC55の動作状態との対応関係を示す図である。
【0046】
図6に示すように、制御信号OC1、制御信号OC2がともにハイレベル(以下、「Hi」と記す)のとき、走査IC55は、「All−Hi」の状態、すなわち、走査IC55の出力端子の全てが高電圧側の入力端子INbと電気的に接続されるように走査IC55の内部に備えられた全てのスイッチング素子が切換えられた状態となる。
【0047】
制御信号OC1が「Hi」、制御信号OC2がローレベル(以下、「Lo」と記す)のとき、走査IC55は、「All−Lo」の状態、すなわち、走査IC55の出力端子の全てが低電圧側の入力端子INaと電気的に接続されるように走査IC55の内部に備えられた全てのスイッチング素子が切換えられた状態となる。例えば、初期化波形発生回路51または維持パルス発生回路50を動作させているときは、制御信号OC1を「Hi」、制御信号OC2を「Lo」にして、走査IC55を「All−Lo」の状態にする。これにより、スイッチング素子QH1〜スイッチング素子QHnがオフ、スイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLnがオンになり、走査IC55の出力端子の全てが入力端子INaと電気的に接続され、スイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLnを経由して各走査電極SC1〜走査電極SCnに初期化波形または維持パルスを印加することができる。
【0048】
また、制御信号OC1、制御信号OC2がともに「Lo」のとき、走査IC55は、「ハイインピーダンス」(以下、「HiZ」と記す)の状態となる。この「HiZ」の状態では、走査IC55の各出力端子からは、走査IC55が「HiZ」の状態になった時点の出力電圧がそのまま保持されて出力される。
【0049】
また、制御信号OC1が「Lo」、制御信号OC2が「Hi」のとき、走査IC55は、「DATA」状態、すなわち、走査IC55に入力される走査開始信号SIDにもとづきあらかじめ定められた一連の動作を行う状態となる。
【0050】
具体的には、走査IC55が「DATA」状態のときに走査IC55に走査開始信号SIDが入力される(本実施の形態では、走査開始信号SIDが「Hi」から「Lo」に変化する)ことで、走査IC55は次の動作を行う。まず最初に、走査IC55の最初の出力端子だけが低電圧側の入力端子INaと電気的に接続され、残りの全ての出力端子は高電圧側の入力端子INbと電気的に接続される。その状態が所定時間(例えば、1μsec)継続された後、次に、走査IC55の2番目の出力端子だけが低電圧側の入力端子INaと電気的に接続され、残りの全ての出力端子は高電圧側の入力端子INbと電気的に接続される。そして、その状態が所定時間継続された後、続いて、走査IC55の3番目の出力端子だけが低電圧側の入力端子INaと電気的に接続される。このようにして、走査IC55の各出力端子が、順番に、所定時間ずつ、低電圧側の入力端子INaと電気的に接続されていく。書込み期間においては、走査IC55をこの動作状態にすることで、走査IC55の各出力端子から走査パルス電圧Vaを順次発生させ、走査電極SC1〜走査電極SCnの走査を行うことができる。
【0051】
なお、本実施の形態では、書込み期間の最初に走査を行う走査IC(1)に用いる走査開始信号SID(1)だけをタイミング発生回路45で発生させており、残りの走査開始信号、すなわち走査IC(2)に用いる走査開始信号SID(2)から走査IC(12)に用いる走査開始信号SID(12)までの各走査開始信号は、各走査IC55で発生させている。
【0052】
例えば、走査IC(1)は、走査IC(1)に接続された全ての走査電極22への走査が終了した後、シフトレジスター等を使って走査開始信号SID(1)を所定時間遅延させて作成した走査開始信号SID(2)を出力し、次段の走査IC(2)に供給する。走査IC(2)は、同様に、走査開始信号SID(2)を所定時間遅延させて作成した走査開始信号SID(3)を次段の走査IC(3)に供給する。以下、同様に、各走査IC55は、入力された走査開始信号SID(i)を所定時間遅延させて新たな走査開始信号SID(i+1)を作成し、次段の走査IC55に供給する。このような構成とすることで、走査開始信号SID(2)〜走査開始信号SID(12)をタイミング発生回路45で発生させなくともよくなり、タイミング発生回路45と走査電極駆動回路43とを結ぶ制御信号のための配線の数を削減することができる。
【0053】
また、制御信号OC2を出力する比較器CP1は、図4に示すように、スイッチング素子SW1がオン、スイッチング素子SW2およびスイッチング素子SW3がオフのときには電圧(Va+Vset2)と基準電位Aとを比較し、スイッチング素子SW2がオン、スイッチング素子SW1およびスイッチング素子SW3がオフのときには電圧(Va+Vset3)と基準電位Aとを比較し、スイッチング素子SW3がオン、スイッチング素子SW1およびスイッチング素子SW2がオフのときには電圧(Va+Vset4)と基準電位Aとを比較する。そして、基準電位Aの方が高い場合には「Lo」を、それ以外では「Hi」を出力し、走査IC(1)〜走査IC(12)に供給する。
【0054】
そして、走査IC55では、この制御信号OC2により、下降する傾斜波形電圧の最低電圧を電圧値の異なる複数の電圧で切換えている。なお、スイッチング素子SW1〜スイッチング素子SW3のオン/オフは、タイミング発生回路45によって制御されるものとする。
【0055】
次に、パネル10を駆動するための駆動電圧波形とその動作の概要について図7を用いて説明する。なお、本実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置は、サブフィールド法、すなわち1フィールド期間を時間軸上で複数のサブフィールドに分割し、各サブフィールドに輝度重みをそれぞれ設定し、サブフィールド毎に各放電セルの発光・非発光を制御することによって階調表示を行うものとする。
【0056】
このサブフィールド法では、例えば、1フィールドを8つのサブフィールド(第1SF、第2SF、・・・、第8SF)で構成し、各サブフィールドはそれぞれ(1、2、4、8、16、32、64、128)の輝度重みを有する構成とすることができる。また、複数のサブフィールドのうち、1つのサブフィールドの初期化期間においては全ての放電セルに初期化放電を発生させる全セル初期化動作を行い、他のサブフィールドの初期化期間においては直前のサブフィールドで維持放電を行った放電セルに対して選択的に初期化放電を発生させる選択初期化動作を行うことで、階調表示に関係しない発光を極力減らしコントラスト比を向上させることが可能である。
【0057】
そして、本実施の形態では、第1SFの初期化期間では全セル初期化動作を行い、第2SF〜第8SFの初期化期間では選択初期化動作を行うものとする。これにより、画像の表示に関係のない発光は第1SFにおける全セル初期化動作の放電にともなう発光のみとなり、維持放電を発生させない黒表示領域の輝度である黒輝度は全セル初期化動作における微弱発光だけとなって、コントラストの高い画像表示が可能となる。また、各サブフィールドの維持期間においては、それぞれのサブフィールドの輝度重みに所定の輝度倍率を乗じた数の維持パルスを表示電極対24のそれぞれに印加する。
【0058】
なお、本発明は、本実施の形態のように、サブフィールド数や各サブフィールドの輝度重みが上記の値に限定されるものではなく、また、画像信号等にもとづいてサブフィールド構成を切換える構成であってもよい。
【0059】
図7は、本発明の一実施の形態におけるパネル10の各電極に印加する駆動電圧波形図である。
【0060】
なお、図7には、書込み期間において最初に走査を行う走査電極SC1、書込み期間において最後に走査を行う走査電極SCn(例えば、走査電極SC1080)、維持電極SU1〜維持電極SUn、およびデータ電極D1〜データ電極Dmの駆動波形を示す。
【0061】
また、図7には、2つのサブフィールドの駆動電圧波形、すなわち全セル初期化動作を行うサブフィールド(「全セル初期化サブフィールド」と呼称する)の第1サブフィールド(第1SF)と、選択初期化動作を行うサブフィールド(「選択初期化サブフィールド」と呼称する)の第2サブフィールド(第2SF)とを示す。なお、他のサブフィールドにおける駆動電圧波形は、維持期間における維持パルス数が異なる以外は第2SFの駆動電圧波形とほぼ同様である。また、以下における走査電極SCi、維持電極SUi、データ電極Dkは、各電極の中から画像データにもとづき選択された電極を表す。
【0062】
まず、全セル初期化サブフィールドである第1SFについて説明する。
【0063】
第1SFの初期化期間前半部では、データ電極D1〜データ電極Dm、維持電極SU1〜維持電極SUnにそれぞれ0(V)を印加し、走査電極SC1〜走査電極SCnには、0(V)から維持電極SU1〜維持電極SUnに対して放電開始電圧以下の電圧Vi1を印加し、さらに電圧Vi1から、放電開始電圧を超える電圧Vi2に向かって緩やかに上昇する傾斜波形電圧(以下、「上りランプ波形」と呼称する)L1を印加する。
【0064】
この上りランプ波形L1が上昇する間に、走査電極SC1〜走査電極SCnと維持電極SU1〜維持電極SUnとの間、および走査電極SC1〜走査電極SCnとデータ電極D1〜データ電極Dmとの間でそれぞれ微弱な初期化放電が持続して起こる。そして、走査電極SC1〜走査電極SCn上部に負の壁電圧が蓄積されるとともに、データ電極D1〜データ電極Dm上部および維持電極SU1〜維持電極SUn上部には正の壁電圧が蓄積される。この電極上部の壁電圧とは、電極を覆う誘電体層上、保護層上、蛍光体層上等に蓄積された壁電荷により生じる電圧を表す。
【0065】
初期化期間後半部では、維持電極SU1〜維持電極SUnには正の電圧Ve1を印加し、データ電極D1〜データ電極Dmには0(V)を印加し、走査電極SC1〜走査電極SCnには、維持電極SU1〜維持電極SUnに対して放電開始電圧以下となる電圧Vi3から放電開始電圧を超える負の電圧に向かって緩やかに下降する下り傾斜波形電圧(以下、「下りランプ波形」と呼称する)L2を印加する。なお、本実施の形態では、下りランプ波形L2における最低電圧を電圧(Va+Vset2)としている。
【0066】
この間に、走査電極SC1〜走査電極SCnと維持電極SU1〜維持電極SUnとの間、および走査電極SC1〜走査電極SCnとデータ電極D1〜データ電極Dmとの間でそれぞれ微弱な初期化放電が起こる。そして、走査電極SC1〜走査電極SCn上部の負の壁電圧および維持電極SU1〜維持電極SUn上部の正の壁電圧が弱められ、データ電極D1〜データ電極Dm上部の正の壁電圧は書込み動作に適した値に調整される。以上により、全ての放電セルに対して初期化放電を行う全セル初期化動作が終了する。
【0067】
続く書込み期間では、走査電極SC1〜走査電極SCnに対しては順次走査パルス電圧を印加し、データ電極D1〜データ電極Dmに対しては発光させるべき放電セルに対応するデータ電極Dk(k=1〜m)に正の書込みパルス電圧Vdを印加して、各放電セルに選択的に書込み放電を発生させる。
【0068】
この書込み期間では、まず維持電極SU1〜維持電極SUnに電圧Ve2を、走査電極SC1〜走査電極SCnに電圧Vc(Vc=Va+Vscn)を印加する。
【0069】
そして、1行目の走査電極SC1に負の走査パルス電圧Vaを印加するとともに、データ電極D1〜データ電極Dmのうち1行目に発光させるべき放電セルのデータ電極Dk(k=1〜m)に正の書込みパルス電圧Vdを印加する。このときデータ電極Dk上と走査電極SC1上との交差部の電圧差は、外部印加電圧の差(Vd−Va)にデータ電極Dk上の壁電圧と走査電極SC1上の壁電圧との差が加算されたものとなり放電開始電圧を超える。これにより、データ電極Dkと走査電極SC1との間に放電が発生する。また、維持電極SU1〜維持電極SUnに電圧Ve2を印加しているため、維持電極SU1上と走査電極SC1上との電圧差は、外部印加電圧の差である(Ve2−Va)に維持電極SU1上の壁電圧と走査電極SC1上の壁電圧との差が加算されたものとなる。このとき、電圧Ve2を、放電開始電圧をやや下回る程度の電圧値に設定することで、維持電極SU1と走査電極SC1との間を、放電には至らないが放電が発生しやすい状態にすることができる。これにより、データ電極Dkと走査電極SC1との間に発生する放電を引き金にして、データ電極Dkと交差する領域にある維持電極SU1と走査電極SC1との間に放電を発生させることができる。こうして、発光させるべき放電セルに書込み放電が起こり、走査電極SC1上に正の壁電圧が蓄積され、維持電極SU1上に負の壁電圧が蓄積され、データ電極Dk上にも負の壁電圧が蓄積される。
【0070】
このようにして、1行目に発光させるべき放電セルで書込み放電を起こして各電極上に壁電圧を蓄積する書込み動作を行う。一方、書込みパルス電圧Vdを印加しなかったデータ電極D1〜データ電極Dmと走査電極SC1との交差部の電圧は放電開始電圧を超えないので、書込み放電は発生しない。以上の書込み動作をn行目の放電セルに至るまで順次行い、書込み期間が終了する。
【0071】
続く維持期間では、輝度重みに所定の輝度倍率を乗じた数の維持パルスを表示電極対24に交互に印加して、書込み放電を発生した放電セルで維持放電を発生させて発光させる。
【0072】
この維持期間では、まず走査電極SC1〜走査電極SCnに正の維持パルス電圧Vsを印加するとともに維持電極SU1〜維持電極SUnにベース電位となる接地電位、すなわち0(V)を印加する。すると書込み放電を起こした放電セルでは、走査電極SCi上と維持電極SUi上との電圧差が維持パルス電圧Vsに走査電極SCi上の壁電圧と維持電極SUi上の壁電圧との差が加算されたものとなり放電開始電圧を超える。
【0073】
そして、走査電極SCiと維持電極SUiとの間に維持放電が起こり、このとき発生した紫外線により蛍光体層35が発光する。そして走査電極SCi上に負の壁電圧が蓄積され、維持電極SUi上に正の壁電圧が蓄積される。さらにデータ電極Dk上にも正の壁電圧が蓄積される。書込み期間において書込み放電が起きなかった放電セルでは維持放電は発生せず、初期化期間の終了時における壁電圧が保たれる。
【0074】
続いて、走査電極SC1〜走査電極SCnにはベース電位となる0(V)を、維持電極SU1〜維持電極SUnには維持パルス電圧Vsをそれぞれ印加する。すると、維持放電を起こした放電セルでは、維持電極SUi上と走査電極SCi上との電圧差が放電開始電圧を超えるので再び維持電極SUiと走査電極SCiとの間に維持放電が起こり、維持電極SUi上に負の壁電圧が蓄積され走査電極SCi上に正の壁電圧が蓄積される。以降同様に、走査電極SC1〜走査電極SCnと維持電極SU1〜維持電極SUnとに輝度重みに輝度倍率を乗じた数の維持パルスを交互に印加し、表示電極対24の電極間に電位差を与えることにより、書込み期間において書込み放電を起こした放電セルで維持放電が継続して行われる。
【0075】
そして、維持期間の最後には、維持電極SU1〜維持電極SUnを0(V)に戻した後、ベース電位となる0(V)から放電開始電圧を超える電圧Versに向かって上昇する傾斜波形電圧(以下、「消去ランプ波形」と呼称する)L3を走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する。すると、維持放電を起こした放電セルの維持電極SUiと走査電極SCiとの間で微弱な放電(以下、「消去放電」と呼称する)が発生する。この消去放電で発生した荷電粒子は、維持電極SUiと走査電極SCiとの間の電圧差を緩和するように、維持電極SUi上および走査電極SCi上に壁電荷となって蓄積されていく。これにより、データ電極Dk上の正の壁電荷を残したまま、走査電極SCiおよび維持電極SUi上の壁電圧は、走査電極SCiに印加した電圧と放電開始電圧の差、すなわち(電圧Vers−放電開始電圧)の程度まで弱められる。
【0076】
その後、走査電極SC1〜走査電極SCnを0(V)に戻し、維持期間における維持動作が終了する。
【0077】
第2SFの初期化期間では、第1SFにおける初期化期間の前半部を省略した駆動電圧波形を各電極に印加する。すなわち、維持電極SU1〜維持電極SUnに電圧Ve1を、データ電極D1〜データ電極Dmに0(V)をそれぞれ印加し、走査電極SC1〜走査電極SCnに放電開始電圧以下となる電圧(例えば、0(V))から負の電圧Vi4に向かって緩やかに下降する下りランプ波形L4を印加する。
【0078】
これにより直前のサブフィールド(図7では、第1SF)の維持期間で維持放電を起こした放電セルでは微弱な初期化放電が発生し、走査電極SCi上部および維持電極SUi上部の壁電圧が弱められ、データ電極Dk(k=1〜m)上部の壁電圧も書込み動作に適した値に調整される。一方、前のサブフィールドで維持放電が起こらなかった放電セルについては放電することはなく、前のサブフィールドの初期化期間終了時における壁電荷の状態がそのまま保たれる。このように第2SFにおける初期化動作は、直前のサブフィールドの維持期間で維持動作を行った放電セルに対して初期化放電を行う選択初期化動作となる。
【0079】
なお、図7には、下りランプ波形L4における最低電圧Vi4を電圧(Va+Vset4)とする一例を示しているが、本実施の形態では、下りランプ波形L4における最低電圧Vi4の電圧値は可変であり、直前のサブフィールドの点灯率に応じて変更する構成としている。
【0080】
第2SFの書込み期間においては、走査電極SC1〜走査電極SCn、維持電極SU1〜維持電極SUnおよびデータ電極D1〜データ電極Dmに対して第1SFの書込み期間と同様の駆動波形を印加する。
【0081】
第2SFの維持期間においては、第1SFの維持期間と同様に、走査電極SC1〜走査電極SCnと維持電極SU1〜維持電極SUnとにあらかじめ定められた数の維持パルスを交互に印加する。これにより、書込み期間において書込み放電を発生させた放電セルで維持放電を発生させる。
【0082】
また、第3SF以降のサブフィールドでは、走査電極SC1〜走査電極SCn、維持電極SU1〜維持電極SUnおよびデータ電極D1〜データ電極Dmに対して、維持期間における維持パルス数が異なる以外は第2SFと同様の駆動波形を印加する。
【0083】
以上が、パネル10の各電極に印加する駆動電圧波形の概要である。
【0084】
次に、本実施の形態における下りランプ波形の最低電圧Vi4と点灯率との関係について説明する。
【0085】
図8は、本発明の一実施の形態における下りランプ波形の最低電圧Vi4と直前のサブフィールドの点灯率との関係の一例を示す図である。なお、図8(a)には、1フィールドを8つのサブフィールドで構成し、第1SFを全セル初期化サブフィールドとし、残りを選択初期化サブフィールドとした場合の、最低電圧Vi4を可変とするサブフィールドの一構成例を示し、図8(b)には、直前のサブフィールドにおける点灯率の検出値を3つの範囲に区分けした場合の一構成例を示している。
【0086】
本実施の形態では、図8(a)に示すように、選択初期化サブフィールド(第2SFから第8SF)における下りランプ波形L4の最低電圧Vi4を可変とし、直前のサブフィールドの点灯率に応じて、複数の異なる電圧値、例えば、電圧(Va+Vset2)、電圧(Va+Vset3)、電圧(Va+Vset4)の3つの異なる電圧値のいずれかに切換えている。
【0087】
そして、図8(b)に示すように、直前のサブフィールドの点灯率を、例えば、40%未満、40%以上70%未満、70%以上の3つの範囲に区分けし、直前のサブフィールドの点灯率が70%以上であれば、現サブフィールドにおいて、下りランプ波形L4の最低電圧Vi4を電圧(Va+Vset4)(例えば、Vset4=10(V))にして下りランプ波形L4を発生させる。また、直前のサブフィールドの点灯率が40%以上70%未満であれば、現サブフィールドにおいて、最低電圧Vi4を電圧(Va+Vset4)よりも低い電圧(Va+Vset3)(例えば、Vset3=8(V))にして下りランプ波形L4を発生させる。また、直前のサブフィールドの点灯率が40%未満であれば、現サブフィールドにおいて、最低電圧Vi4を電圧(Va+Vset3)よりもさらに低い電圧(Va+Vset2)(例えば、Vset2=6(V))にして下りランプ波形L4を発生させる。
【0088】
このように、本実施の形態では、選択初期化サブフィールドにおいて、直前のサブフィールドの点灯率に応じて、現サブフィールドの下りランプ波形L4の最低電圧Vi4を変更するものとする。これにより、本実施の形態では安定した書込み放電を実現しているが、これは、次のような理由による。
【0089】
なお、本実施の形態において、最低電圧Vi4の変更は、下りランプ波形L4における電圧降下の継続時間の変更を目的としたものである。そのため、最低電圧Vi4の変更にかかわらず、下りランプ波形L4の傾斜は一定(例えば、−1.3V/μsec)に保つものとするが、最低電圧Vi4の変更にともない発生する傾斜のばらつきは許容されるものとする。
【0090】
図9は、本発明の一実施の形態における点灯率と初期化放電との関係を概略的に示す図である。図9には、走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する維持パルス、消去ランプ波形L3、下りランプ波形L4の概略波形と、そのときの発光波形の概略を示しているが、点灯率が高いときと点灯率が低いときとの差を比較して示すために、図9の上図には点灯率が高いときの各概略波形を示し、下図には点灯率が低いときの各概略波形を示している。
【0091】
放電セルの点灯率と維持放電の放電強度とには関連性があり、例えば、点灯率が高いときには、図9の上図に示すように維持放電の放電強度は比較的弱くなり、逆に、点灯率が低いときには、図9の下図に示すように、維持放電の放電強度は比較的強くなることが確認された。これは、駆動回路から見たパネル10の駆動負荷が、放電セルの点灯・非点灯の組み合わせによって変動し、維持パルスの立ち上がり傾斜および立ち上がり波形の波形歪み、維持パルスの到達電位等に、点灯率に応じた違いが発生するためと考えられる。
【0092】
一方、維持動作においては、維持パルスの立ち下がりにおいて微弱な放電(以下、この放電を「自己消去放電」と呼称する)が発生することがあることが確認された。そして、この自己消去放電は、維持パルスの放電強度に依存して放電強度が変化し、維持パルスの立ち上がりで強い放電が発生すると、図9の下図に示すように、比較的強い自己消去放電が発生することが確認された。このような自己消去放電は、維持放電で形成された壁電荷を減少させるため、続く放電に必要な壁電荷を不足させるおそれがある。例えば、消去放電の直前の維持パルスにおいて、この自己消去放電が発生すると、消去放電に必要な壁電荷が不足することがある。そして、消去放電に必要な壁電荷が不足すると、図9の下図に示すように、消去ランプ波形L3において消去放電の発生するタイミングが、消去放電に必要な壁電荷が十分にある上図の場合と比較して、遅くなる。
【0093】
消去ランプ波形L3において消去放電の発生するタイミングが遅いと、消去放電が十分に行われず、その結果、図9の下図に示すように、下りランプ波形L4において初期化放電の発生するタイミングが、十分に消去放電が行われた上図の場合と比較して遅くなる。そして、下りランプ波形L4において初期化放電の発生するタイミングが遅くなると、初期化放電の持続時間が不十分なまま、すなわち壁電荷の調整時間が不足したまま、初期化動作が終了してしまう。
【0094】
壁電荷の調整が不十分なまま続く書込み期間が開始されると、書込み放電を安定に発生させることが難しくなる。また、高精細化されたパネルでは、走査電極数の増加により走査に費やす時間が長くなってしまうため、書込み期間の最後の方に書込みがなされる放電セルにおいて壁電荷がさらに不足するおそれがあり、書込み放電がより不安定になりやすい。
【0095】
このような場合に書込み放電を安定に発生させるためには、壁電荷の調整時間、すなわち下りランプ波形L4における初期化放電の持続時間の長さが適切に確保されるように調整すればよく、そのためには、下りランプ波形L4の最低電圧をより小さくし、下りランプ波形L4において電圧降下が継続される時間を延長してやればよい。
【0096】
しかしながら、下りランプ波形L4の最低電圧を単に小さくすることは、図9の上図に示すような、直前のサブフィールドの点灯率が比較的高く、下りランプ波形L4において比較的早いタイミングで初期化放電が発生するような場合に、初期化放電の持続時間を必要以上に長くしてしまい、壁電荷の調整を過剰にするだけでなく、消費電力の増加の原因ともなるため、望ましくない。
【0097】
そこで、本実施の形態では、上述したように、現サブフィールドの下りランプ波形L4の最低電圧Vi4を、直前のサブフィールドの点灯率に応じて変更する構成とする。すなわち、直前のサブフィールドの点灯率が低く現サブフィールドの初期化期間における初期化放電が比較的遅く発生すると判断されるようなときには、直前のサブフィールドの点灯率が高い場合と比較して、下りランプ波形L4の最低電圧Vi4を小さくし、下りランプ波形L4において電圧降下が継続される時間が延長されるようにする。これにより、初期化動作において初期化放電の持続時間を最適に制御し、壁電荷の調整を過不足なく行うことができるようになるので、放電セル内の壁電荷を適正な状態にすることができ、続く書込み動作を安定に発生させることが可能となる。
【0098】
図10は、本発明の一実施の形態における安定した書込み放電を発生させるために必要な書込みパルス電圧Vdと直前のサブフィールドの点灯率との関係を示す特性図である。なお、図10において、縦軸は安定した書込み放電を発生させるために必要な書込みパルス電圧Vdを表し、横軸は直前のサブフィールドの点灯率を表す。また、図10において、破線で示す特性は、下りランプ波形L4の最低電圧Vi4を電圧(Va+Vset4)で一定にしたときの測定結果であり、実線で示す特性は、下りランプ波形L4の最低電圧Vi4を直前のサブフィールドの点灯率に応じて図8(b)に示したように可変させたときの測定結果である。
【0099】
そして、図10に示すように、現サブフィールドの下りランプ波形L4の最低電圧Vi4を直前のサブフィールドの点灯率に応じて制御することで、安定した書込み放電を発生させるために必要な書込みパルス電圧Vdを低減できることが確認された。図10に示す測定結果では、例えば、直前のサブフィールドの点灯率が10%のときには、現サブフィールドにおいて安定した書込み放電を発生させるために必要な書込みパルス電圧Vdを、破線に示す特性と比較して約5(V)低減できる。
【0100】
このように、本実施の形態によれば、現サブフィールドの下りランプ波形L4の最低電圧Vi4を、直前のサブフィールドの点灯率に応じて変更する構成とすることで、下りランプL4による初期化放電の持続時間を最適に制御して放電セル内の壁電荷を適正な状態にすることができるようになり、書込み放電を発生させるために必要な書込みパルス電圧Vdを大きくすることなく、安定した書込み放電を発生させることが可能となる。
【0101】
なお、本実施の形態では、全セル初期化サブフィールドである第1SFでは、下りランプ波形L2の最低電圧を可変ではなく固定にする例を説明しているが、これは、全セル初期化サブフィールドでは、上りランプ波形L1により全ての放電セルに初期化放電を発生させているので、下りランプ波形L2によって初期化放電を発生させるときに、直前のサブフィールドの点灯率の影響を考慮する必要がないためである。また、下りランプ波形L2における最低電圧を電圧(Va+Vset2)としているが、これは、設定可能な最低電圧のうち最も小さい電圧値に設定することで、第1SFの初期化放電、すなわち1フィールド期間において最初に発生させる初期化放電による壁電荷調整をより確実に行わせるためである。
【0102】
なお、ここに挙げた各数値は単なる一例に過ぎず、本発明は何らこれらの数値に限定されるものではない。最低電圧Vi4や点灯率のしきい値に関してはパネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等にもとづいて最適な値に設定することが望ましい。
【0103】
次に、走査電極駆動回路43の動作と下りランプ波形の発生について、図11から図13を用いて説明する。まず、図11を用いて全セル初期化期間における初期化波形および下りランプ波形L2を発生する場合の動作を説明し、次に、図12、図13を用いて下りランプ波形L4を発生する場合の動作を説明する。
【0104】
なお、図11から図13では、電圧Vi1、電圧Vi3は電圧Vsに等しいものとし、電圧Vi2は電圧Vrに等しいものとして説明する。
【0105】
図11は、本発明の一実施の形態における全セル初期化期間の走査電極駆動回路43の動作の一例を説明するためのタイミングチャートである。なお、ここでは、全セル初期化動作を行う駆動電圧波形を期間T1、期間T2、期間T3、期間T41で示した4つの期間に分割し、それぞれの期間について説明する。
【0106】
(期間T1)
まず、維持パルス発生回路50の電力回収回路を動作させ走査電極SC1〜走査電極SCnの電圧を上昇させる。その後、維持パルス発生回路50のクランプ回路を動作させ、走査電極SC1〜走査電極SCnの電位を電圧Vs(本実施の形態では、電圧Vi1と等しい)にする。
【0107】
(期間T2)
次に、上りランプ波形を発生するミラー積分回路53の入力端子IN1を「Hi」にする。具体的には入力端子IN1に、所定の定電流を入力する。すると、抵抗R1からコンデンサC1に向かって一定の電流が流れ、スイッチング素子Q1のソース電圧がランプ状に上昇し、走査電極駆動回路43の出力電圧もランプ状に上昇し始める。そしてこの電圧上昇は、入力端子IN1が「Hi」の間継続する。
【0108】
この出力電圧が電圧Vr(本実施の形態では、電圧Vi2と等しい)まで上昇したら、その後、入力端子IN1を「Lo」にする。具体的には入力端子IN1に、例えば0(V)を印加する。
【0109】
このようにして、放電開始電圧以下となる電圧Vs(本実施の形態では、電圧Vi1と等しい)から、放電開始電圧を超える電圧Vr(本実施の形態では、電圧Vi2と等しい)に向かって緩やかに上昇する上りランプ波形電圧を走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する。
【0110】
(期間T3)
入力端子IN1を「Lo」にすると走査電極SC1〜走査電極SCnの電圧が電圧Vs(本実施の形態では、電圧Vi3と等しい)まで低下する。
【0111】
(期間T41)
次に、下りランプ波形電圧を発生するミラー積分回路54の入力端子IN2を「Hi」にする。具体的には入力端子IN2に、所定の定電流を入力する。すると、抵抗R2からコンデンサC2に向かって一定の電流が流れ、スイッチング素子Q2のドレイン電圧がランプ状に下降し、走査電極駆動回路43の出力電圧もランプ状に下降し始める。
【0112】
なお、下りランプ波形L2を発生させるときには、比較器CP1では、基準電位A、すなわち初期化波形発生回路51から出力される下りランプ波形と、電圧Vaに電圧Vset2が加えられた電圧(Va+Vset2)との比較を行わせ、その比較結果を制御信号OC2として用いる。そのために、期間T41では、スイッチング素子SW1はオンにし、スイッチング素子SW2、スイッチング素子SW3はオフにする。これにより、比較器CP1からの出力信号、すなわち制御信号OC2は、基準電位Aにおける下りランプ波形が電圧(Va+Vset2)以下となる時刻t41において「Lo」から「Hi」に切換わる。
【0113】
したがって、時刻t41で、制御信号OC1、制御信号OC2はともに「Hi」となり、走査IC55は「All−Hi」状態となる。すなわち、走査IC55からの出力電圧は、入力端子INbに入力される電圧(図4に示した構成では、基準電位Aに電圧Vscnが重畳された電圧)となり、それまでの電圧降下が時刻t41で電圧上昇に切換わる。これにより、走査電極SC1〜走査電極SCnに印加される下りランプ波形は最低電圧が電圧(Va+Vset2)の下りランプ波形L2となる。
【0114】
そして、初期化期間が終了する直前に、入力端子IN2に、例えば0(V)を印加して、入力端子IN2を「Lo」にする。
【0115】
以上のようにして、走査電極駆動回路43は、走査電極SC1〜走査電極SCnに対して、放電開始電圧以下となる電圧Vi1から放電開始電圧を超える電圧Vi2に向かって緩やかに上昇する上りランプ波形を発生させ、その後、電圧Vi3から電圧(Va+Vset2)に向かって緩やかに下降する下りランプ波形L2を発生させて走査電極SC1〜走査電極SCnに印加することができる。
【0116】
次に、図12を用いて下りランプ波形L4を発生させる場合の動作を説明する。図12は、本発明の一実施の形態における選択初期化期間の走査電極駆動回路43の動作の一例を説明するためのタイミングチャートであり、最低電圧Vi4を電圧(Va+Vset3)にして下りランプ波形L4を発生させるときの動作を説明するタイミングチャートである。
【0117】
(維持期間)
詳細は省略するが維持パルス発生回路50の電力回収回路およびクランプ回路を交互に動作させ、あらかじめ定められた回数の維持パルスを発生させる。そして、維持期間の最後に、消去ランプ波形L3を発生させる。こうして、維持期間が終了する。
【0118】
(初期化期間)
続く初期化期間T42では、下りランプ波形電圧を発生するミラー積分回路54の入力端子IN2を「Hi」にする。これにより、走査電極駆動回路43の出力電圧がランプ状に下降し始める。
【0119】
なお、最低電圧Vi4を電圧(Va+Vset3)にして下りランプ波形L4を発生させるときには、比較器CP1では、基準電位Aにおける下りランプ波形と電圧(Va+Vset3)との比較を行わせ、その比較結果を制御信号OC2として用いる。そのために、期間T42では、スイッチング素子SW2はオンにし、スイッチング素子SW1、スイッチング素子SW3はオフにする。これにより、比較器CP1からの出力信号、すなわち制御信号OC2は、基準電位Aにおける下りランプ波形が電圧(Va+Vset3)以下となる時刻t42において「Lo」から「Hi」に切換わる。
【0120】
したがって、時刻t42で、制御信号OC1、制御信号OC2はともに「Hi」となり、走査IC55は「All−Hi」状態となる。すなわち、走査IC55からの出力電圧は、入力端子INbに入力される電圧(基準電位Aに電圧Vscnが重畳された電圧)となり、それまでの電圧降下が時刻t42で電圧上昇に切換わるので、走査電極SC1〜走査電極SCnに印加される下りランプ波形は、最低電圧Vi4が電圧(Va+Vset3)の下りランプ波形L4となる。
【0121】
図13は、本発明の一実施の形態における選択初期化期間の走査電極駆動回路43の動作の他の一例を説明するためのタイミングチャートであり、最低電圧Vi4を電圧(Va+Vset4)にして下りランプ波形L4を発生させるときの動作を説明するタイミングチャートである。なお、維持期間における動作は、図12と同様であるので、説明は省略する。
【0122】
(初期化期間)
期間T43では、期間T42と同様に、下りランプ波形電圧を発生するミラー積分回路54の入力端子IN2を「Hi」にする。これにより、走査電極駆動回路43の出力電圧がランプ状に下降し始める。
【0123】
なお、最低電圧Vi4を電圧(Va+Vset4)にして下りランプ波形L4を発生させるときには、比較器CP1において、基準電位Aにおける下りランプ波形と、電圧(Va+Vset4)との比較を行わせる。そのために、期間T43では、スイッチング素子SW3はオンにし、スイッチング素子SW1、スイッチング素子SW2はオフにする。これにより、比較器CP1からの出力信号、すなわち制御信号OC2は、基準電位Aにおける下りランプ波形が電圧(Va+Vset4)以下となる時刻t43において「Lo」から「Hi」に切換わる。
【0124】
したがって、時刻t43で、制御信号OC1、制御信号OC2はともに「Hi」となり、走査IC55は「All−Hi」状態となる。すなわち、走査IC55から出力される下りランプ波形は、電圧降下が時刻t43で電圧上昇に切換わり、最低電圧Vi4が電圧(Va+Vset4)となる下りランプ波形L4となる。
【0125】
なお、図面を用いての説明は省略するが、選択初期化期間においてスイッチング素子SW1をオンにし、スイッチング素子SW2、スイッチング素子SW3をオフにすることで、比較器CP1において、基準電位Aにおける下りランプ波形と、電圧(Va+Vset2)との比較を行わせることができる。これにより、基準電位Aにおける下りランプ波形が電圧(Va+Vset2)以下になるときに制御信号OC1、制御信号OC2をともに「Hi」にすることができるので、最低電圧Vi4を電圧(Va+Vset2)にした下りランプ波形L4を走査IC55から出力させることができる。
【0126】
以上説明したように、本実施の形態においては、現サブフィールドの下りランプ波形L4の最低電圧Vi4を、直前のサブフィールドの点灯率に応じて変更することにより、下りランプL4による初期化放電の持続時間を最適に制御して放電セル内の壁電荷を適正な状態にすることができるので、安定した書込み放電を発生させるために必要な書込みパルス電圧Vdを低減することが可能となり、安定した書込み動作を行うことが可能となる。
【0127】
なお、本実施の形態では、下りランプ波形L2、下りランプ波形L4を、下りランプ波形の電圧が最低電圧に到達した後、すぐに電圧上昇に切換わるような波形形状として示した。しかし、これは、走査電極駆動回路43の回路構成上、このような波形形状になったものに過ぎず、本実施の形態は何らこの波形形状に限定されるものではない。例えば、下りランプ波形の電圧が最低電圧に到達した後、その電圧を一定期間保持するような波形形状であってもかまわない。
【0128】
なお、本実施の形態では、電圧Vset2を6(V)とし、電圧Vset3を8(V)とし、電圧Vset4を10(V)としたが、これらの数値は単なる一例に過ぎず、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等に応じて最適な電圧値に設定すればよい。
【0129】
また、図11から図13に示したタイミングチャートは実施の形態における一例を示したものに過ぎず、何らこれらのタイミングチャートに限定されるものではない。
【0130】
なお、本実施の形態では、選択初期化期間において、下りランプ波形L4の最低電圧Vi4を、電圧(Va+Vset2)、電圧(Va+Vset3)、電圧(Va+Vset4)の異なる3つの電圧値で切換える構成を説明したが、本発明は何らこの構成に限定されるものではない。例えば、電圧(Va+Vset5)、電圧(Va+Vset6)といった電圧値を設けるとともに、点灯率を4つ、あるいはそれ以上の領域に分けて、下りランプ波形L4の最低電圧Vi4をより細かく制御する構成としてもよい。
【0131】
なお、本実施の形態において示した点灯率のしきい値や下りランプ波形の最低電圧、サブフィールド数、書込みパルス電圧等の具体的な数値は単なる一例であり、本発明は、何らこれらの数値に限定されるものではない。
【0132】
なお、本発明における実施の形態の他の例としては、下りランプ波形の最低電圧を変更するサブフィールド、あるいは下りランプ波形の最低電圧の電圧値、または点灯率のしきい値等を決定する際に、所定の条件を用いて重み付けする構成としてもよい。この重み付けの例としては、例えば、パネルの温度分布を検出しその検出結果を反映させるといったことが考えられる。
【0133】
なお、本発明における実施の形態は、走査電極と走査電極とが隣り合い、維持電極と維持電極とが隣り合う電極構造、すなわち前面板21に設けられる電極の配列が、「・・・走査電極、走査電極、維持電極、維持電極、走査電極、走査電極、・・・」となる電極構造(「ABBA電極構造」と呼称する)のパネルにおいても、有効である。
【0134】
なお、本発明の一実施の形態において示した具体的な各数値は、50インチ、表示電極対数1080対のパネルの特性にもとづき設定したものであって、実施の形態における一例を示したものに過ぎない。本発明はこれらの数値に何ら限定されるものではなく、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等に合わせて最適に設定することが望ましい。また、これらの各数値は、上述した効果を得られる範囲でのばらつきを許容するものとする。また、走査IC55の動作を説明する際に示した各制御信号の極性は、単なる一例であり、説明で示した極性とは逆の極性であってもかまわない。
【0135】
なお、本発明の一実施の形態では、消去ランプ波形電圧を走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する構成を説明したが、消去ランプ波形電圧を維持電極SU1〜維持電極SUnに印加する構成とすることもできる。あるいは、消去ランプ波形電圧ではなく、いわゆる細幅消去パルスにより消去放電を発生させる構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明は、放電セルの点灯状態に応じて初期化放電を制御することで壁電荷の調整を適正に行うことができるので、書込み放電を発生させるために必要な書込みパルス電圧を高くすることなく、安定した書込み放電を発生させることが可能となり、プラズマディスプレイ装置およびパネルの駆動方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】本発明の一実施の形態におけるパネルの構造を示す分解斜視図
【図2】同パネルの電極配列図
【図3】本発明の一実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の回路ブロック図
【図4】本発明の一実施の形態における走査電極駆動回路の回路図
【図5】本発明の一実施の形態における走査電極駆動回路の走査ICと走査電極との接続の様子を示す概略図
【図6】本発明の一実施の形態における制御信号OC1、制御信号OC2と走査ICの動作状態との対応関係を示す図
【図7】本発明の一実施の形態におけるパネルの各電極に印加する駆動電圧波形図
【図8】本発明の一実施の形態における下りランプ波形の最低電圧と直前のサブフィールドの点灯率との関係の一例を示す図
【図9】本発明の一実施の形態における点灯率と初期化放電との関係を概略的に示す図
【図10】本発明の一実施の形態における安定した書込み放電を発生させるために必要な書込みパルス電圧と直前のサブフィールドの点灯率との関係を示す特性図
【図11】本発明の一実施の形態における全セル初期化期間の走査電極駆動回路の動作の一例を説明するためのタイミングチャート
【図12】本発明の一実施の形態における選択初期化期間の走査電極駆動回路の動作の一例を説明するためのタイミングチャート
【図13】本発明の一実施の形態における選択初期化期間の走査電極駆動回路の動作の他の一例を説明するためのタイミングチャート
【符号の説明】
【0138】
1 プラズマディスプレイ装置
10 パネル(プラズマディスプレイパネル)
21 (ガラス製の)前面板
22 走査電極
23 維持電極
24 表示電極対
25,33 誘電体層
26 保護層
31 背面板
32 データ電極
34 隔壁
35 蛍光体層
41 画像信号処理回路
42 データ電極駆動回路
43 走査電極駆動回路
44 維持電極駆動回路
45 タイミング発生回路
47 点灯率検出回路
48 メモリ
50 維持パルス発生回路
51 初期化波形発生回路
52 走査パルス発生回路
53,54 ミラー積分回路
55 走査IC
CP1 比較器
C1,C2,C31 コンデンサ
SW1,SW2,SW3,Q1,Q2,Q4,Q5,QH1〜QHn,QL1〜QLn スイッチング素子
R1,R2 抵抗
D31 ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査電極と維持電極とからなる表示電極対を有する放電セルを複数備えたプラズマディスプレイパネルと、
初期化期間と書込み期間と維持期間とを有するサブフィールドを1フィールド期間内に複数設けるとともに、前記初期化期間において下降する下り傾斜波形電圧を発生させて前記走査電極に印加する走査電極駆動回路と、
前記プラズマディスプレイパネルの全放電セルに対する点灯させるべき放電セルの割合を点灯率としてサブフィールド毎に検出する点灯率検出回路とを備え、
前記走査電極駆動回路は、
現サブフィールドの前記初期化期間において発生させる前記下り傾斜波形電圧の最低電圧を、前記点灯率検出回路により検出された直前のサブフィールドの点灯率に応じて変更することを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項2】
前記走査電極駆動回路は、1フィールド期間内に、
前記プラズマディスプレイパネルの全放電セルに初期化放電を発生させる全セル初期化動作を行うサブフィールドと、直前のサブフィールドの書込み期間において書込み放電を発生させた放電セルにのみ初期化放電を発生させる選択初期化動作を行うサブフィールドとを有し、
前記全セル初期化動作を行うサブフィールドにおいては、直前のサブフィールドの点灯率にかかわらず、前記下り傾斜波形電圧の最低電圧を一定にすることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイ装置。
【請求項3】
走査電極と維持電極とからなる表示電極対を有する放電セルを複数備えたプラズマディスプレイパネルを、
初期化期間と書込み期間と維持期間とを有するサブフィールドを1フィールド期間内に複数設けるとともに、前記初期化期間において下降する下り傾斜波形電圧を発生させ前記走査電極に印加して駆動するプラズマディスプレイパネルの駆動方法であって、
前記プラズマディスプレイパネルの全放電セルに対する点灯させるべき放電セルの割合を点灯率としてサブフィールド毎に検出し、現サブフィールドの前記初期化期間において発生させる前記下り傾斜波形電圧の最低電圧を、直前のサブフィールドの前記点灯率に応じて変更することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの駆動方法。
【請求項4】
1フィールド期間内に、前記プラズマディスプレイパネルの全放電セルに初期化放電を発生させる全セル初期化動作を行うサブフィールドと、直前のサブフィールドの書込み期間において書込み放電を発生させた放電セルにのみ初期化放電を発生させる選択初期化動作を行うサブフィールドとを設け、
前記全セル初期化動作を行うサブフィールドにおいては、直前のサブフィールドの点灯率にかかわらず、前記下り傾斜波形電圧の最低電圧を一定にすることを特徴とする請求項3に記載のプラズマディスプレイパネルの駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−236989(P2009−236989A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−79613(P2008−79613)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】