説明

プラズマディスプレイ装置及びプラズマディスプレイパネルの駆動方法

【課題】本発明は、各サブフィールドにおいてライン毎の表示負荷に応じた輝度誤差を高精度に補正することができるプラズマディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】複数の維持電極を第1の電圧波形により駆動した後に第1の電圧波形と異なる第2の電圧波形により駆動する第1の駆動回路と、複数の走査電極を第1の電圧波形により駆動した後に第2の電圧波形により駆動する駆動する第2の駆動回路と、第1の駆動回路と第2の駆動回路とを制御して複数の維持電極と複数の走査電極との間に第1の電圧波形による第1の維持放電と第2の電圧波形による第2の維持放電とを発生させる際に、一つのサブフィールドにおける第1の維持放電の回数と第2の維持放電の回数とを表示データに応じて走査電極毎に制御する制御回路を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に画像表示装置及び画像表示装置の駆動方法に関し、詳しくは、プラズマディスプレイ装置及びプラズマディスプレイパネルの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマディスプレイ装置は、視認性に優れた表示パネル(薄型表示デバイス)として注目されており、高精細化および大画面化が進められている。一般にプラズマディスプレイ装置は走査電極とアドレス電極との間に書込みパルスを印加することにより、走査電極とアドレス電極との間でアドレス放電を行い、放電セルを選択する。そして放電セルを選択した後、走査電極(Y電極)と維持電極(X電極)との間に、交互に反転する周期的な維持パルスを印加することにより、走査電極と維持電極との間で維持放電を行い、所定の表示を行う。
【0003】
走査電極や維持電極はインピーダンスがゼロであることが理想的であるが、実際にはゼロでないインピーダンスが存在する。このインピーダンスの存在により、維持放電期間において各電極を電流が流れると電極に沿った電圧降下が生じ、放電の輝度が低下する場合がある。この際、ある電極を流れる電流量は、その電極に対応する表示ラインに表示するデータ内容に依存する。即ち、表示ライン上で点灯(放電)する表示セルの数が多いほど、その表示ラインに対応する電極を流れる電流量が大きくなる。このため、表示データの内容に応じて、各表示ライン毎に表示輝度が異なってしまう。
【0004】
図1は、表示ライン間で生じる輝度誤差について説明するための図である。プラズマディスプレイパネルの中心付近に黒表示部分101として黒を表示し、黒表示部分101の周囲全体に白を表示している。この場合、黒表示部分101の横に位置する白表示部分102の輝度が、その上に位置する白表示部分103の輝度よりも高くなるという現象が起きる。表示負荷率が大きい(即ち、白表示セルの数が多く、流れる電流量が大きい)表示ラインにおいては、表示負荷率が小さい(即ち、白表示セルの数が少なく、流れる電流量が小さい)表示ラインに比べて電極上の電圧降下が大きくなる。従って、表示負荷率が大きい表示ライン上にある白表示部分103の方が、表示負荷率の小さい表示ライン上にある白表示部分102よりも輝度が下がってしまう。
【0005】
このような表示ライン間の輝度誤差は、サステイン電流(維持放電電流)により引き起こされるXY電極での電圧降下が根本原因であり、通常はバス電極のインピーダンス或いはサステイン電流を低減することにより低減を図っている。しかしバス電極のインピーダンスやサステイン電流を完全になくすことは不可能であり限界がある。そこで駆動時に表示輝度を調整することにより、表示ライン間の輝度誤差を解決する方法が提案されている。例えば、ラインの表示内容に応じてラインの表示階調レベルを制御して、ライン間に生じる輝度差を低減及び解消させる方法がある(特許文献1)。また、ラインの電極毎に維持放電の回数を制御することにより、ライン間の輝度誤差を解消する方法も提案されている(特許文献2)。
【0006】
特許文献1の制御方法は、輝度が高いラインの表示階調レベルを下げるように制御することにより、フィールド毎に各表示ラインの輝度調整している。しかし表示ライン間の輝度誤差は本来一つ一つのサブフィールドにおいて発生するものであり、複数のサブフィールドの総和である一つのフィールドに視覚的に現れる表示ライン間の輝度誤差は、各サブフィールドに発生する輝度誤差に起因するものである。従って、フィールドの表示階調レベルを調整して全体で輝度誤差を解消しようとしても、階調レベル調整により放電状態が変わる個々のサブフィールドにおいて新たな輝度誤差が生じるために、調整動作が収束しない場合がある。また特許文献2の制御方法では、サステイン放電の1回分を最小単位とした調整しかできないので、表示データが低階調の場合には、補正の刻みが相対的に荒くなるという問題点があった。
【特許文献1】特開2005−257754号公報
【特許文献2】特開平9−68945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上を鑑みて本発明は、複数回のサステイン放電により各サブフィールドの表示を行なうプラズマディスプレイ装置において、各サブフィールドにおいてライン毎の表示負荷に応じた輝度誤差を高精度に補正することができるプラズマディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1フィールドを構成する複数のサブフィールド毎に表示データに応じて点灯の有無を制御して画像表示するプラズマディスプレイ装置は、複数の維持電極と複数の走査電極とを含むプラズマディスプレイパネルと、該複数の維持電極を第1の電圧波形により駆動した後に該第1の電圧波形と異なる第2の電圧波形により駆動する第1の駆動回路と、該複数の走査電極を該第1の電圧波形により駆動した後に該第2の電圧波形により駆動する駆動する第2の駆動回路と、該第1の駆動回路と該第2の駆動回路とを制御して該複数の維持電極と該複数の走査電極との間に該第1の電圧波形による第1の維持放電と該第2の電圧波形による第2の維持放電とを発生させる際に、一つのサブフィールドにおける該第1の維持放電の回数と該第2の維持放電の回数とを該表示データに応じて該走査電極毎に制御する制御回路を含むことを特徴とする。
【0009】
プラズマディスプレイパネルの駆動方法は、1フィールドを構成する複数のサブフィールド毎に表示データに応じて点灯の有無を制御しながら、プラズマディスプレイパネルの複数の維持電極と複数の走査電極との間に維持放電を発生させて画像表示するプラズマディスプレイ装置において、一つのサブフィールドにおける第1の維持放電の回数と第2の維持放電の回数とを該表示データに応じて該走査電極毎に決定し、該一つのサブフィールドにおいて該走査電極毎に決定された該第1の維持放電の回数だけ第1の電圧波形により維持放電を発生させ、該一つのサブフィールドにおいて該走査電極毎に決定された該第2の維持放電の回数だけ該第1の電圧波形とは異なる第2の電圧波形により維持放電を発生させる各段階を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の少なくとも一つの実施例によれば、各サブフィールドにおいて、他のサブフィールドに影響を与えることなく、表示ライン間の輝度誤差を高精度に補正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図2は、本発明によるプラズマディスプレイ装置の構成例を示す図である。図2のプラズマディスプレイ装置は、プラズマディスプレイパネル3、維持電極を駆動する維持電極駆動回路4、走査電極を駆動する走査電極駆動回路5、アドレス電極を駆動するアドレス電極駆動回路6、各駆動回路を制御する制御回路7、各駆動回路及び制御回路7に電源電圧を供給する電源回路8、維持電極11、走査電極12、及びアドレス電極15を含む。
【0012】
図3はプラズマディスプレイ3のパネル構造の一例を示す分解斜視図である。前面基板1には繰り返し放電を行なう維持(X)電極11、走査(Y)電極12が所定の間隔で平行に配置されている。各電極は片側に隣接する電極と対を成して放電するが、両側に隣接する電極と放電を行なう構造もある。また、各電極は交互に配置されているが、放電を行なわない側では維持電極11同士、あるいは走査電極12同士が隣接して配置される構造もある。この電極群は誘電体層13に覆われており、さらにその表面はMgO等の保護層14に覆われている。背面基板2には維持電極11、走査電極12とほぼ垂直方向にアドレス電極15が配置されており、さらに誘電体層16に覆われている。アドレス電極15の両側には隔壁17が配置され、列方向のセルを区分けしている。さらにアドレス電極15上の誘電体層16及び隔壁17の側面には紫外線により励起されて赤(R)、緑(d)、青(B)の可視光を発生する蛍光体18、19、20が塗布されている。この前面基板1と背面基板2を保護層14と隔壁17が接するように貼り合わせて、Ne−Xe等の放電ガスを封入し、パネルを構成している。尚、背面基板に行方向のセルを区分けする横隔壁を有するものもある。
【0013】
図2を再び参照し、制御回路7は、外部より入力されるクロック信号、表示データ、垂直同期信号、水平同期信号等に応じてパネル駆動を制御するための制御信号を生成する。具体的には、制御回路7は表示データを受け取りフレームメモリに格納し、クロックに同期してフレームメモリの表示データに応じたアドレス制御信号を生成する。アドレス制御信号は、アドレス電極駆動回路6に供給される。また制御回路7は、垂直同期信号及び水平同期信号に同期して、各駆動回路の動作を制御するための制御信号を走査電極駆動回路5及び維持電極駆動回路4に供給する。
【0014】
アドレス電極駆動回路6は、制御回路7からのアドレス制御信号に応じて動作し、表示データに対応したアドレス電圧パルスを各アドレス電極15に印加する。走査電極駆動回路5は、制御回路7からの制御信号に応じて動作し、各走査電極12を独立して駆動する。走査電極駆動回路5が走査電極12を順次駆動しながら、アドレス電極駆動回路6がアドレス電圧パルスを各アドレス電極15に印加することにより、表示するセルを選択して、各セル(画素)の発光・非発光(選択/非選択)を制御する。
【0015】
走査電極駆動回路5により走査電極12に維持電圧パルスを印加するとともに、維持電極駆動回路4により維持電極11に維持電圧パルスを印加する。維持電圧パルスを印加することで、表示セルとして選択されたセルにおいて、走査電極12と維持電極11の間に維持放電を発生させる。
【0016】
図4はプラズマディスプレイパネルに1つの画像を表示する際の駆動方式を示す模式図であり、アドレス・表示分離方式の一例を示している。プラズマディスプレイパネルの放電は、オン又はオフの2値の状態しかとれないので、発光の回数により各表示セルの明るさの濃淡即ち階調を表現する。
【0017】
1画像(1フィールド:1/60sec)は複数のサブフィールドから構成され、この例では10個のサブフィールド21〜30が設けられている。各サブフィールドはリセット期間31、アドレス期間32、及び維持期間33よりなる。リセット期間31では、それに続くアドレス期間32の放電を援助する目的でセル内の電荷の制御を行ない、アドレス期間32では発光させるセルを選択する放電を行なう。続く維持期間33では繰り返し放電を行ない、選択されたセルを発光させる。ここで、維持期間33の長さ即ち発光回数を、それぞれのサブフィールドで異ならせる。例えば、10個のサブフィールドの維持期間33の長さの比率を、1:2:4:8:〜:512に設定する。表示するセルの輝度に応じたサブフィールドの組み合わせを選択して放電させることにより、所望の階調でセルを表示することができる。
【0018】
本発明では、一つの維持期間33は、第1の維持電圧波形による第1の維持放電を行う期間34と第2の維持電圧波形による第2の維持放電を行う期間35とから構成される。後ほど詳細に説明するように、この第1の維持放電の回数と第2の維持放電の回数とを各表示ライン毎に表示データに応じて制御することで、表示ライン間の表示輝度誤差を補正する。
【0019】
図5は、各電極の駆動波形の一例を示す図である。(a)〜(d)は、それぞれリセット期間からサステイン期間において、維持電極、走査電極、アドレスの各電極に印加する電圧波形とその際の放電発光を示している。(a)は維持電極に印加される電圧波形、(b)は走査電極に印加される電圧波形、(c)は放電発光、(d)はアドレス電極に印加される電圧波形である。
【0020】
まず、(a)に示す維持電極に印加される電圧波形では、リセット期間において全セルに電圧波形41が印加される。(b)の走査電極に印加される電圧波形では、リセット期間において全セルに電荷を形成するY上昇傾斜波形trp1が印加される。さらに続いてセル内に形成された電荷を必要量残して消去するY下降傾斜波形trn1が印加される。
【0021】
次のアドレス期間において印加される電圧波形は、各表示ライン毎に表示セルを決める放電を行なう走査電極の走査パルス53と、本放電により壁電荷を形成するための維持電極のX電圧43である。この走査パルス53は表示ライン毎にタイミングをずらして印加される。サステイン期間(維持期間)には、第1のサステイン波形と、第1のサステイン波形とは異なる発光強度を持つ第2のサステイン波形とが印加される。第1のサステイン波形では一番初期のサステインパルスとして44、54、繰り返しサステインパルス45、46、47、55、56、57が印加される。第2のサステインでは61、62、63、64、71、72、73、74が印加される。(d)はアドレス電極に印加される波形で、放電させたいセルでは走査パルス53に合わせて、アドレスパルス100が印加される。
【0022】
(c)は(a)、(b)、(d)の電圧波形で放電したセルの発光を示す。尚、この発光は蛍光体の発光ではなく、放電によるNe光や赤外光などの発光である。
【0023】
リセット期間ではY上昇傾斜波形trp1により微弱な書き込み放電81が発生する。また、Y下降傾斜波形trn1ではやはり、微弱な放電82が発生する。このように電圧が徐々に変化する波形では微弱な放電になり、発光量も少ない。続くアドレス期間では走査パルス53とアドレスパルス100により、アドレス放電83が発生する。さらにサステイン期間ではサステイン放電84、85、86、87、88、89、90、91が発生する。
【0024】
図6は、本発明による輝度誤差補正方式の第1の実施例を説明するための図である。1フィールドの構成は、右方向を時間軸として、左からリセット期間R、アドレス期間A、サステイン期間Sとなっている。更にサステイン期間では第1のサステイン波形の期間と第2のサステイン波形の期間とに分かれている。第1のサステイン波形と第2のサステイン波形との主な違いは、互いに発光強度が異なるサステイン放電を生じるようなパルスである点である。ライン間の輝度誤差を減少させるような制御を行う際に、本実施例では、適切な制御ができる方のサステイン波形を選択してその放電回数(選択サステイン波形のパルス数)を減らすことにより、第1のサステイン波形による放電回数と第2のサステイン波形による放電回数との比率を変える。(a)に示すサステイン期間では第2のサステイン波形による維持放電数を減らしている。また(b)に示すサステイン期間では第1のサステイン波形による維持放電数を減らしている。なお図6において、斜線部分は維持放電を行わない期間である。このように第1のサステイン波形による放電回数(放電時間)と第2のサステイン波形による放電回数(放電時間)との比率を変化させて、表示輝度を調整することにより、表示ライン間の輝度誤差を補正する。
【0025】
従来のように、一種類のサステイン波形だけを用い、この一種類のサステイン波形による放電回数(波形のパルス数)を変化させて輝度調整する構成では、一種類のサステイン波形の放電一回の輝度を、輝度変化の最小単位として用いることになる。それに対して本実施例の場合には、第1のサステイン波形による放電回数と第2のサステイン波形による放電回数との何れを選択して変化させるかにより、例えば一回だけ放電回数を減らす場合にしても、輝度変化の度合いを2種類選択することができる。また後述の実施例のように、第1のサステイン波形による放電回数と第2のサステイン波形による放電回数とを両方調整可能とすれば、更に細かな最小単位での輝度変化を実現することが可能となる。
【0026】
図7は、第1の実施例の場合の制御回路7の構成例を示す図である。図7に示す制御回路7は、ライン負荷率計算手段700、負荷補正テーブル選択制御部701、第1のサステイン負荷補正係数テーブル702、及び第2のサステイン負荷補正係数テーブル703を含む。制御回路7は図7に示す以外にも種々の制御用ユニットを含むが、図7では、本発明における輝度誤差補正に関連する部分のみを示してある。
【0027】
プラズマディスプレイパネルに表示すべき表示データが制御回路7に供給されると、この表示データがライン負荷率計算手段700に供給される。ここで表示データはサブフィールド毎のデータとして供給される。例えば表示データSF0DATAは、第1のサブフィールドの点灯の有無を各表示セル(各画素)毎に示すデータである。同様に、表示データSF1DATAは第2のサブフィールドに関するデータである。
【0028】
ライン負荷率計算手段700は、各サブフィールドについて別々に、表示データに応じた各表示ライン毎(各走査電極毎)の表示負荷率を計算する。ここで各表示ラインに対して、白表示セルの数が多く、流れる電流量が大きい場合には表示負荷率が大きくなり、白表示セルの数が少なく、流れる電流量が小さい場合には表示負荷率が小さくなる。即ち、サブフィールド毎の各表示ラインの表示セル数(点灯画素数)に応じて、各表示ラインの表示負荷率を計算する。
【0029】
負荷補正テーブル選択制御部701は、ライン負荷率計算手段700が計算した表示負荷率に基づいて、電極間の輝度誤差を減少するに適したサステイン波形のテーブルを選択する。即ち、負荷補正テーブル選択制御部701は、第1のサステイン負荷補正係数テーブル702と第2のサステイン負荷補正係数テーブル703との何れか一方の負荷補正テーブルを、表示負荷率に基づいて選択する。
【0030】
第1のサステイン負荷補正係数テーブル702を選択した場合は、第1のサステイン波形のみサステインパルス数を変えることで、第1のサステイン波形と第2のサステイン波形の比率を変える。第2のサステイン負荷補正係数テーブル703を選択した場合は、第2のサステイン波形のみサステインパルス数を変えることで、第1のサステイン波形と第2のサステイン波形の比率を変える。
【0031】
図8は、負荷補正係数テーブルの一例を示す図である。(a)には第1のサステイン負荷補正係数テーブル702が示され、(b)には第2のサステイン負荷補正係数テーブル703が示される。各テーブルには、着目ラインの表示負荷率(ライン負荷率)毎に、第1のサステイン波形に対する負荷補正係数と第2のサステイン波形に対する負荷補正係数とが規定されている。第1のサステイン負荷補正係数テーブルを選択した場合、第2のサステイン波形のサステイン放電数は変化しないので、負荷補正係数は一律に1となる。この場合の第1のサステイン波形については、ライン負荷率に応じて負荷補正係数が変化する。また第2のサステイン負荷補正係数テーブルを選択した場合、第1のサステイン波形のサステイン放電数は変化しないので、負荷補正係数は一律に1となる。この場合の第2のサステイン波形については、ライン負荷率に応じて負荷補正係数が変化する。
【0032】
図9は、選択されたサステイン負荷補正係数テーブルの内容に応じた制御信号を走査電極駆動回路5に送信する部分の構成例を示す図である。図9に示される構成は、制御回路7に含まれるものである。
【0033】
図9に示す構成は、負荷補正係数算出部711、補正後サステイン数決定部712、及びSEL信号発生回路部713を含む。負荷補正係数算出部711は、選択された負荷補正係数テーブルを用いることにより、着目表示ラインの表示負荷率に応じた負荷補正係数を算出する。即ち、選択された負荷補正係数テーブルから、着目表示ラインの表示負荷率に対応する欄の負荷補正係数を取り出す。この負荷補正係数は、サステイン波形形状毎(第1のサステイン波形と第2のサステイン波形とのそれぞれについて)求められる。
【0034】
補正後サステイン数決定部712は、補正前のサステイン数(補正前のサステイン放電回数)と求められた負荷補正係数とをかけ合わせることで、補正後のサステイン放電回数を決定する。この補正後のサステイン放電回数に応じて、SEL信号発生回路部713が、SEL信号を生成して走査電極駆動回路5に供給する。このSEL信号は、補正後のサステイン放電回数に応じた信号(補正後のサステイン放電回数を示す信号)となる。例えば、SEL信号は補正後のサステイン放電回数に等しい数のパルスから構成される。なおこの際、SEL信号は、第1のサステイン波形と第2のサステイン波形とのそれぞれについて別個に放電回数を示すような信号であってよい。
【0035】
図10は、走査電極駆動回路5の構成の一例を示す図である。図10の走査電極駆動回路5は、ドライバIC800を含む。このドライバIC800は、リセット電圧波形、走査パルス波形、及び維持放電波形等を供給する駆動回路とプラズマディスプレイパネル3との間に設けられ、アドレス期間において各走査電極12(図10ではY1及びY2)を一本ごとに順次操作する際に駆動する回路である。一般に、一つのドライバIC800は比較的少ない数(例えば192本:図10の例では2本)の走査電極12を駆動する回路であり、複数のドライバIC800を並べて配置することにより、プラズマディスプレイパネル3全体の走査電極12を走査・駆動する。
【0036】
ドライバIC800は、駆動対象の複数の走査電極12の各々に対してサステイン放電回数制御回路802、スイッチSW1、スイッチSW2、ダイオードD1、及びダイオードD2を含む。ドライバIC800は、電源電圧VDH及びグランド電圧HGNDにより駆動し、制御回路7から供給される制御信号OC1及びOC2とクロック信号CLKに応じて上記の走査・駆動動作を実行する。
【0037】
補正後のサステインパルス数を示すSEL信号が、制御回路7のSEL信号発生回路部713から、サステイン放電回数制御回路802に送られてくる。サステイン放電回数制御回路802のパルスカウント回路802aは、SEL信号のパルス数をカウントする。サステイン放電回数制御回路802のサステイン制御回路802bは、パルスカウント回路802aのカウント値に応じた数だけ、各走査電極(図10の例ではY1又はY2)にサステイン電圧波形パルスを印加する。即ち、スイッチSW1、スイッチSW2、ダイオードD1、及びダイオードD2からなる回路部分から供給されるサステイン電圧波形パルスを、パルスカウント回路802aのカウント値に応じた数だけ通過させて、走査電極に供給する。この際、第1のサステイン波形と第2のサステイン波形とのそれぞれについて、別個のカウント値に応じた制御をする構成であってよい。
【0038】
図11は、アドレス期間におけるSEL信号の伝送時間と走査電極側のドライバICの駆動期間とを示した図である。まずドライバIC1が駆動し、その後ドライバCI2が駆動し、更にその後ドライバIC3が駆動するというように動作して、複数のドライバICが順次駆動されていく。これにより複数の走査電極12が順次走査されていく。期間900はドライバICの休止期間を示し、期間902はドライバICの駆動期間を示す。また各ドライバICが駆動した後の期間901を、SEL信号を伝送する期間とする。即ち、走査電極を走査・駆動するためにドライバICが駆動する期間902に続く期間901において、制御回路7から走査電極駆動回路5にSEL信号が供給される。
【0039】
図12は、第1の実施例の場合のサステイン期間の駆動波形を示す図である。第1のサステイン期間におけるパルスを44、45、46、47、54、55、56、57、第2のサステイン期間におけるパルスを61、62、63、64、71、72、73、74としている。(a)は第2負荷補正テーブルを選択した場合であり、第1のサステイン期間におけるサステインパルス数については維持電極側(X側)と走査電極側(Y側)とで同一であるが、第2のサステイン期間においては、走査電極側の電圧波形をサステイン波形パルス72の後、グランド電圧に固定している。グランド電圧の基準点はどこでもよいが、この例ではサステイン波形パルス72の位置をグランド電圧としている。このように第2のサステイン期間の一部において走査電極側の波形をグランド電圧に固定することで、第2のサステイン期間における放電の回数を制御している。
【0040】
(b)は第1負荷補正テーブルを選択した場合であり、第2のサステイン期間におけるサステインパルス数については維持電極側(X側)と走査電極側(Y側)とで同一であるが、第1のサステイン期間においては、走査電極側の電圧波形をサステイン波形パルス55の後、グランド電圧に固定している。このように第1のサステイン期間の一部において走査電極側の波形をグランド電圧に固定することで、第1のサステイン期間における放電の回数を制御している。
【0041】
図13は、本発明による輝度誤差補正方式の第2の実施例を説明するための図である。ライン間の輝度誤差を減少させるような制御を行う際に、本実施例では、第1のサステイン波形による放電回数と第2のサステイン波形による放電回数との両方を減らすことにより、第1のサステイン波形による放電回数と第2のサステイン波形による放電回数との比率を変える。(a)に示すのは補正前のサステイン期間であり、(b)に示すのは補正後のサステイン期間である。図13において、斜線部分は維持放電を行わない期間である。このように第1のサステイン波形による放電回数(放電時間)と第2のサステイン波形による放電回数(放電時間)との両方を減らして、表示輝度を調整することにより、表示ライン間の輝度誤差を補正する。
【0042】
図14は、第2の実施例の場合の制御回路の構成例を示す図である。図14において、図7と同一の構成要素は同一の番号で参照し、その説明は省略する。図7に示す制御回路7Bは、ライン負荷率計算手段700、第1のサステイン負荷補正係数テーブル702、及び第2のサステイン負荷補正係数テーブル703を含む。制御回路7Bは図7に示す以外にも種々の制御用ユニットを含むが、図7では、本発明における輝度誤差補正に関連する部分のみを示してある。
【0043】
ライン負荷率計算手段700は、各サブフィールドについて別々に、表示データに応じた各表示ライン毎(各走査電極毎)の表示負荷率を計算する。こうして計算された表示ライン毎の表示負荷率に基づいて、第1のサステイン負荷補正係数テーブル702から第1のサステイン波形の負荷補正係数を抽出し、また第2のサステイン負荷補正係数テーブル703から第2のサステイン波形の負荷補正係数を抽出する。これにより、第1のサステイン波形のサステインパルス数と第2のサステイン波形のサステインパルス数との両方を変化させる。制御回路からSEL信号を走査電極駆動回路5に供給して、走査電極12の放電回数を制御する構成は、図9及び図10を参照して説明した構成と同一である。
【0044】
図15は、第2の実施例の場合のサステイン期間の駆動波形を示す図である。第1のサステイン期間におけるパルスを44、45、46、47、54、55、56、第2のサステイン期間におけるパルスを61、62、63、64、71、72としている。第1のサステイン期間における走査電極側のサステイン波形パルス55と第2のサステイン期間における走査電極側のサステイン波形パルス72とは、双方ともに、次のサステインパルスに移ることなくグランド電圧に維持される。これにより、第1のサステイン期間と第2のサステイン期間との両方においてサステイン放電の回数を制御している。
【0045】
図16は、本発明による輝度誤差補正方式の第3の実施例を説明するための図である。ライン間の輝度誤差を減少させるような制御を行う際に、本実施例では、第1のサステイン波形による放電回数及び第2のサステイン波形による放電回数の一方を減らして他方を増やすことにより、第1のサステイン波形による放電回数と第2のサステイン波形による放電回数との比率を変える。(a)に示すのは補正前のサステイン期間であり、(b)に示すのは補正後のサステイン期間である。このように第1のサステイン波形による放電回数(放電時間)と第2のサステイン波形による放電回数(放電時間)との総和は一定としながら、両者の比率を変化させて表示輝度を調整することにより、表示ライン間の輝度誤差を補正する。
【0046】
第3の実施例の場合の制御回路の構成は、図14に示すものと同様の構成でよい。ライン負荷率計算手段700は、各サブフィールドについて別々に、表示データに応じた各表示ライン毎(各走査電極毎)の表示負荷率を計算する。こうして計算された表示ライン毎の表示負荷率に基づいて、第1のサステイン負荷補正係数テーブル702から第2のサステイン波形の負荷補正係数を抽出し、また第2のサステイン負荷補正係数テーブル703から第1のサステイン波形の負荷補正係数を抽出する。これにより、第1のサステイン波形のサステインパルス数及び第2のサステイン波形のサステインパルス数の一方を増やして他方を減らすように補正する。制御回路からSEL信号を走査電極駆動回路5に供給して、走査電極12の放電回数を制御する構成は、図9及び図10を参照して説明した構成と同一である。
【0047】
第3の実施例では、第1のサステイン波形による放電回数と第2のサステイン波形による放電回数との総和が、補正前後で一致するように構成することにより、両者のサステイン放電間の輝度の差分により制御することができる。即ち、発光強度の高い方のサステイン波形のパルスを1つ減らし、発光強度の低い方のサステイン波形のパルスを1つ増やすことで、発光強度の差分を単位として輝度を減らすことができる。サステインの放電回数を増加可能とするためには、以下のように構成すればよい。即ち、増やす方のサステイン波形についてのサステイン上限回数を、全ラインにおいてデフォールト回数よりも多くしておく。そして放電回数を増やしたいラインについてのみ、デフォールト回数よりも放電回数を増やす。
【0048】
図17は、第3の実施例の場合のサステイン期間の駆動波形を示す図である。第1のサステイン期間におけるパルスを44、45、46、47、54、55、56、57、第2のサステイン期間におけるパルスを61、62、63、64、71、72としている。トータルの放電回数を変化させることなく、第1のサステイン波形のパルス数と第2のサステイン波形のパルス数との割合を変えることで、サステイン波形パルスの発光強度の差分を単位とした輝度調整が可能となる。図17の例では走査電極側の第1のサステイン波形のパルスを補正前(デフォールトの状態)から2つ増やし(白丸で示したパルス)、走査電極側の第2のサステイン波形のパルスを補正前(デフォールトの状態)から2つ減らしている(黒丸で示した位置のパルス)。これにより、表示ラインにおけるサステインパルス数の総和を一定としながら、第1のサステイン波形のパルス数と第2のサステイン波形のパルス数との割合を変化させている。
【0049】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で様々な変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】表示ライン間で生じる輝度誤差について説明するための図である。
【図2】本発明によるプラズマディスプレイ装置の構成例を示す図である。
【図3】プラズマディスプレイのパネル構造の一例を示す分解斜視図である。
【図4】プラズマディスプレイパネルに1つの画像を表示する際の駆動方式を示す模式図である。
【図5】各電極の駆動波形の一例を示す図である。
【図6】本発明による輝度誤差補正方式の第1の実施例を説明するための図である。
【図7】第1の実施例の場合の制御回路の構成例を示す図である。
【図8】負荷補正係数テーブルの一例を示す図である。
【図9】選択されたサステイン負荷補正係数テーブルの内容に応じた制御信号を走査電極駆動回路に送信する部分の構成例を示す図である。
【図10】走査電極駆動回路の構成の一例を示す図である。
【図11】アドレス期間におけるSEL信号の伝送時間と走査電極側のドライバICの駆動期間とを示した図である。
【図12】第1の実施例の場合のサステイン期間の駆動波形を示す図である。
【図13】本発明による輝度誤差補正方式の第2の実施例を説明するための図である。
【図14】第2の実施例の場合の制御回路の構成例を示す図である。
【図15】第2の実施例の場合のサステイン期間の駆動波形を示す図である。
【図16】本発明による輝度誤差補正方式の第3の実施例を説明するための図である。
【図17】第3の実施例の場合のサステイン期間の駆動波形を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1…前面板
2…背面板
3…パネル
4…維持電極駆動回路
5…走査電極駆動回路
6…アドレス電極駆動回路
7…制御回路
8…電源回路
11…維持電極(X電極)
12…走査電極(Y電極)
15…アドレス電極
17…隔壁
18〜20…蛍光体
21〜30…サブフィールド
31…リセット期間
32…アドレス期間
33…サステイン期間
34…第1のサステイン波形
35…第2のサステイン波形
44〜49、54〜59…第1のサステインパルス
61〜64、71〜74…第2のサステインパルス
700…ライン負荷率計算手段
701…負荷補正テーブル選択制御部
702…第1のサステイン負荷補正係数テーブル
703…第2のサステイン負荷補正係数テーブル
800…ドライバIC
801…プラズマディスプレイパネル
900…ドライバICの休止期間
901…SEL信号の伝送タイミング
902…ドライバICの駆動期間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1フィールドを構成する複数のサブフィールド毎に表示データに応じて点灯の有無を制御して画像表示するプラズマディスプレイ装置であって、
複数の維持電極と複数の走査電極とを含むプラズマディスプレイパネルと、
該複数の維持電極を第1の電圧波形により駆動した後に該第1の電圧波形と異なる第2の電圧波形により駆動する第1の駆動回路と、
該複数の走査電極を該第1の電圧波形により駆動した後に該第2の電圧波形により駆動する駆動する第2の駆動回路と、
該第1の駆動回路と該第2の駆動回路とを制御して該複数の維持電極と該複数の走査電極との間に該第1の電圧波形による第1の維持放電と該第2の電圧波形による第2の維持放電とを発生させる際に、一つのサブフィールドにおける該第1の維持放電の回数と該第2の維持放電の回数とを該表示データに応じて該走査電極毎に制御する制御回路
を含むことを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項2】
該制御回路は、第1の走査電極に比べて第2の走査電極の表示負荷率が小さい場合に、該第1の走査電極に対する該第1の維持放電の回数及び該第2の維持放電の回数に比べて該第2の走査電極に対する該第1の維持放電の回数及び該第2の維持放電の回数の少なくとも一方を少なくすることを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイ装置。
【請求項3】
該第2の駆動回路は該走査電極毎に維持放電の回数を設定可能に構成され、該制御回路は、該表示データに応じて決定した該第1の維持放電の回数と該第2の維持放電の回数とを示す信号を該第2の駆動回路に供給することにより、該第1の維持放電の回数と該第2の維持放電の回数とを該走査電極毎に該第2の駆動回路に設定することを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイ装置。
【請求項4】
該プラズマディスプレイパネルは該複数の走査電極に略垂直に配置される複数のアドレス電極を更に含み、該制御回路は、表示セルを選択するために該複数のアドレス電極にアドレス電圧を印加するとともに該複数の走査電極に走査電圧を順次印加していくアドレス駆動動作の後、維持放電開始までの間に該信号を該第2の駆動回路に供給することを特徴とする請求項3記載のプラズマディスプレイ装置。
【請求項5】
該制御回路は、該第1の維持放電の回数と該第2の維持放電の回数とをサブフィールド毎の各表示ラインの表示セル数に応じて決定することを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイ装置。
【請求項6】
1フィールドを構成する複数のサブフィールド毎に表示データに応じて点灯の有無を制御しながら、プラズマディスプレイパネルの複数の維持電極と複数の走査電極との間に維持放電を発生させて画像表示するプラズマディスプレイ装置において、
一つのサブフィールドにおける第1の維持放電の回数と第2の維持放電の回数とを該表示データに応じて該走査電極毎に決定し、
該一つのサブフィールドにおいて該走査電極毎に決定された該第1の維持放電の回数だけ第1の電圧波形により維持放電を発生させ、
該一つのサブフィールドにおいて該走査電極毎に決定された該第2の維持放電の回数だけ該第1の電圧波形とは異なる第2の電圧波形により維持放電を発生させる
各段階を含むことを特徴とするプラズマディスプレイパネルの駆動方法。
【請求項7】
第1の走査電極に比べて第2の走査電極の表示負荷率が小さい場合に、該第1の走査電極に対する該第1の維持放電の回数及び該第2の維持放電の回数に比べて該第2の走査電極に対する該第1の維持放電の回数及び該第2の維持放電の回数の少なくとも一方を少なくすることを特徴とする請求項6記載のプラズマディスプレイパネルの駆動方法。
【請求項8】
該第1の維持放電の回数と該第2の維持放電の回数とをサブフィールド毎の各表示ラインの表示セル数に応じて決定することを特徴とする請求項6記載のプラズマディスプレイパネルの駆動方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2008−134441(P2008−134441A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−320440(P2006−320440)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(599132708)富士通日立プラズマディスプレイ株式会社 (328)
【Fターム(参考)】